【文献】
UEMICHI Yusuke, et. al.,Compact and Low-Loss Bandpass Filter Realized in Silica-Based Post-Wall Waveguide for 60-GHz applications,2015 IEEE MTT-S International Microwave Symposium,2015年 5月22日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1導体ポスト群を構成する前記複数の導体ポストのうち、前記第1広壁と前記第2広壁とを短絡し、且つ、前記第1広壁及び前記第2広壁の各々の縁のうち前記第1ショート壁に沿った部分に最も近い導体ポストと、前記第1広壁及び前記第2広壁の各々の縁のうち前記第1ショート壁に沿った部分までの距離は、前記第1ショート壁を構成する複数の導体ポストのうち互いに隣接する導体ポスト同士の中心間距離以下である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のバンドパスフィルタ。
前記ビア形成工程は、前記ポスト壁用貫通ビア群、前記第1貫通ビア群、及び前記第1ブラインドビアに加えて、前記導波領域の他方の端面を構成する第2ショート壁の外側に配置された複数の貫通ビアからなる第2貫通ビア群と、前記導波領域の他方の端面を構成する第2ショート壁の近傍に設けられた、前記導波領域から電磁波を出力するための出力部として機能する第2ブラインドビアとを前記誘電体基板の内部に形成し、
前記導体膜形成工程は、前記ポスト壁用貫通ビア群、前記第1貫通ビア群、前記第1ブラインドビア、前記第2貫通ビア群、及び前記第2ブラインドビアが形成された誘電体基板の表面上及び前記ポスト壁用貫通ビア群、前記第1貫通ビア群、前記第1ブラインドビア、前記第2貫通ビア群、及び前記第2ブラインドビアの各々の内壁とを覆う導体膜を形成し、
前記切り出し工程は、前記第1貫通ビア群が形成されている領域を分断するように、且つ、前記第2貫通ビア群が形成されている領域を分断するように前記導体膜が形成された誘電体基板を切断することによって前記バンドパスフィルタを切り出す、
ことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
前記ビア形成工程は、(1)複数の前記バンドパスフィルタの各々の導波領域が互いに近接し、且つ、マトリクス状に配置されるように、各バンドパスフィルタのポスト壁に対応するポスト壁用貫通ビア群を形成し、(2)前記マトリクス状に配置された複数の導波領域の前記第1ショート壁に対応する位置の外側に前記第1貫通ビア群、及び、前記マトリクス状に配置された複数の導波領域の前記第2ショート壁に対応する位置の外側に前記第2貫通ビア群を形成し、
前記切り出し工程は、前記第1貫通ビア群が形成された領域、前記第2貫通ビア群が形成された領域、及び、前記第1貫通ビア群と前記第2貫通ビア群が連続して形成された領域の各々を分断するように、前記導体膜が形成された誘電体基板を切断する、
ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポスト壁導波路型のバンドパスフィルタにおいては、後述するエッジ領域がバイパス導波路として機能することによって、通過帯域外の電磁波がバンドパスフィルタを通過するバイパス現象が起こり得ることを、本願発明者らは発見した。このようなバイパス現象が起こると、バンドパスフィルタのアイソレーション性能が劣化する。
【0006】
ポスト壁導波路型のバンドパスフィルタにおいて起こり得るバイパス現象について、
図8及び
図9を参照してより具体的に説明すれば、以下のとおりである。なお、以下の説明においては、図示した座標系において、x軸正方向を「右」、x軸負方向を「左」、y軸正方向を「前」、y軸負方向を「後」、z軸正方向を「上」、z軸負方向を「下」と呼ぶ。
【0007】
図8は、バンドパスフィルタ9の分解斜視図である。
図8に示すように、バンドパスフィルタ9は、誘電体基板91と、誘電体基板91の上面に形成された上広壁92aと、誘電体基板91の下面に形成された下広壁92bと、誘電体基板91の内部に形成されたポスト壁93と、を備えている。ポスト壁93は、柵状に並べられた導体ポストP1,P2,…の集合である。
【0008】
図9は、バンドパスフィルタ9の平面図である。
図9に示すように、ポスト壁93は、右狭壁930a、左狭壁930b、前狭壁930c、及び後狭壁930dに加えて、6組の隔壁対931〜936を含んでいる。上下を広壁92a,92b(不図示)で挟まれ、前後左右を狭壁930a〜930dに囲まれた直方体状の領域D1は、電磁波を導波する方形導波路として機能する。以下、この領域D1のことを、「導波領域」と呼ぶ。
【0009】
導波領域D1は、6組の隔壁対931〜936によって7つの小領域D11〜D17に区画されている。小領域D11には、電磁波を第1マイクロストリップ線路5から導波領域D1に入力するための入力部90aが形成されている。以下、この小領域D11のことを、「入力領域」と呼ぶ。また、5個の小領域D12〜D16の各々は、共振器として機能する。以下、これらの小領域D12〜D16の各々のことを、「共振領域」と呼ぶ。また、小領域D17には、電磁波を導波領域D1から第2マイクロストリップ線路6に出力するための出力部90bが形成されている。以下、この小領域D17のことを、「出力領域」と呼ぶ。
【0010】
バンドパスフィルタ9においては、直列結合された5個の共振領域D12〜D16が、特定の通過帯域内の電磁波を選択的に通過させるチェビシェフ型のバンドパスフィルタとして機能する。このため、入力部90aを介して第1マイクロストリップ線路5から入力領域D11へと入力された電磁波のうち、特定の通過帯域内の電磁波のみが、出力部90bを介して出力領域D17から第2マイクロストリップ線路6へと出力される。
【0011】
ところが、このようなバンドパスフィルタ9においては、バイパス現象、すなわち、導波領域D1を介して第1マイクロストリップ線路5から第2マイクロストリップ線路6へと導波されるべき電磁波の一部が、導波領域D1の外部に存在するエッジ領域D2を介して第1マイクロストリップ線路5から第2マイクロストリップ線路6へと導波される現象が生じ得る。ここで、エッジ領域D2とは、
図9に示すように、誘電体基板91において、上広壁92aの外縁と下広壁92bの外縁とに挟まれた領域近傍のことを指す。
【0012】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、バイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタは、誘電体基板と、前記誘電体基板の第1主面に形成された第1広壁と、前記誘電体基板の第2主面に形成された第2広壁と、前記誘電体基板の内部に形成されたポスト壁と、を備え、前記第1広壁、前記第2広壁、及び前記ポスト壁によって、前記誘電体基板の内部に複数の共振領域を含む導波領域が形成されたバンドパスフィルタである。本バンドパスフィルタは、前記導波領域の一方の端面を構成する第1ショート壁の近傍に設けられた、前記導波領域に電磁波を入力するための入力部を更に備え、前記第1ショート壁と、前記誘電体基板の側面のうち該第1ショート壁に対向している側面である第1側面との間に、複数の導体ポストからなる第1導体ポスト群が形成されている、ことを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、第1ショート壁と第1側面との間に第1導体ポスト群が形成されているため、入力部から第1ショート壁近傍のエッジ領域に結合される電磁波を抑制することができる。したがって、本バンドパスフィルタは、バイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタにおいて、前記第1導体ポスト群は、前記第1ショート壁に沿って配置された1列又は複数列の導体ポスト列からなる、
ことが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、第1ショート壁と第1側面との間には、1列又は複数列の導体ポスト列からなる第1導体ポスト群が形成されている。そのため、誘電体基板の第1主面及び第2主面の各々に第1広壁及び第2広壁を形成するときに、第1広壁及び第2広壁の位置が所定の位置からずれた場合であっても、第1ショート壁近傍のエッジ領域に第1導体ポスト群を配置することができる。
【0017】
また、バンドパスフィルタの製造時に用いる大きな誘電体基板から本バンドパスフィルタを広壁とともに切り出す場合に、誘電体基板を切断するラインが所定の位置からずれた場合であっても、第1ショート壁近傍のエッジ領域に第1導体ポスト群を配置することができる。したがって、本バンドパスフィルタは、バイパス現象が更に生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタにおいて、前記第1導体ポスト群を構成する前記複数の導体ポストのうち、前記第1広壁と前記第2広壁とを短絡し、且つ、前記第1広壁及び前記第2広壁の各々の縁のうち前記第1ショート壁に沿った部分に最も近い導体ポストと、前記第1広壁及び前記第2広壁の各々の縁のうち前記第1ショート壁に沿った部分までの距離は、前記ポスト壁を構成する複数の導体ポストのうち互いに隣接する導体ポスト同士の中心間距離のうち最も長いポスト間隔以下である、ことが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、前記第1導体ポスト群を構成する前記複数の導体ポストのうち、前記第1広壁と前記第2広壁とを短絡し、且つ前記第1広壁及び前記第2広壁の各々の縁のうち前記第1ショート壁に沿った部分に最も近い導体ポストと、前記第1広壁及び前記第2広壁の各々の縁のうち前記第1ショート壁に沿った部分とが互いに近接しているため、入力部から第1ショート壁近傍のエッジ領域に結合される電磁波を確実に抑制することができる。したがって、本バンドパスフィルタは、バイパス現象が更に生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0020】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタにおいて、前記第1側面には、前記第1導体ポスト群を構成する前記複数の導体ポストのうち1又は複数の導体ポストが露出している、構成であってもよい。
【0021】
本発明の一態様に係るバンドパスフィルタは、上述のように第1側面に前記第1導体ポスト群を構成する前記複数の導体ポストのうち1又は複数の導体ポストが露出している場合であってもバイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0022】
また、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタは、前記導波領域の他方の端面を構成する第2ショート壁の近傍に設けられた、前記導波領域から電磁波を出力するための出力部を更に備え、前記第2ショート壁と、前記誘電体基板の側面のうち該第2ショート壁に対向している側面である第2側面との間に、複数の導体ポストからなる第2導体ポスト群が形成されている、ことが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、第2ショート壁と第2側面との間に第2導体ポスト群が形成されているため、第2ショート壁近傍の出力部からエッジ領域に結合される電磁波を抑制することができる。したがって、本バンドパスフィルタは、バイパス現象が更に生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0024】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタの製造方法は、上述した各態様に係るバンドパスフィルタの製造方法である。本製造方法は、(1)前記ポスト壁に対応するように配置された複数の貫通ビアからなるポスト壁用貫通ビア群と、(2)前記導波領域の一方の端面を構成する第1ショート壁に対応する位置の外側に配置された複数の貫通ビアからなる第1貫通ビア群と、(3)前記入力部として機能する第1ブラインドビアとを誘電体基板の内部に形成するビア形成工程と、前記ポスト壁用貫通ビア群、前記第1貫通ビア群、及び前記第1ブラインドビアが形成された誘電体基板の表面上及び前記ポスト壁用貫通ビア群、前記第1貫通ビア群、及び前記第1ブラインドビアの各々の内壁に、導体膜を形成する導体膜形成工程と、前記第1貫通ビア群が形成されている領域を分断するように前記導体膜が形成された誘電体基板を切断することによって前記バンドパスフィルタを切り出す切り出し工程と、を含む、ことを特徴とする。
【0025】
また、本発明の一態様に係る製造方法において、
前記ビア形成工程は、前記ポスト壁用貫通ビア群、前記第1貫通ビア群、及び前記第1ブラインドビアに加えて、前記導波領域の他方の端面を構成する第2ショート壁の外側に配置された複数の貫通ビアからなる第2貫通ビア群と、前記導波領域の他方の端面を構成する第2ショート壁の近傍に設けられた、前記導波領域から電磁波を出力するための出力部として機能する第2ブラインドビアとを前記誘電体基板の内部に形成し、前記導体膜形成工程は、前記ポスト壁用貫通ビア群、前記第1貫通ビア群、前記第1ブラインドビア、前記第2貫通ビア群、及び前記第2ブラインドビアが形成された誘電体基板の表面上及び前記ポスト壁用貫通ビア群、前記第1貫通ビア群、前記第1ブラインドビア、前記第2貫通ビア群、及び前記第2ブラインドビアの各々の内壁とを覆う導体膜を形成し、前記切り出し工程は、前記第1貫通ビア群が形成されている領域を分断するように、且つ、前記第2貫通ビア群が形成されている領域を分断するように前記導体膜が形成された誘電体基板を切断することによって前記バンドパスフィルタを切り出す、ことが好ましい。
【0026】
これらの製造方法によれば、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタと同様の効果を奏する。また、これらの製造方法によれば、切り出し工程において導体膜が形成された誘電体基板を切断するラインが所定の位置からわずかにずれた場合であっても、バイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを得ることができる。したがって、容易にバイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを得ることができる。
【0027】
また、本発明の一態様に係る製造方法において、前記貫通ビア群形成工程は、(1)複数の前記バンドパスフィルタの各々の導波領域が互いに近接し、且つ、マトリクス状に配置されるように、各バンドパスフィルタのポスト壁に対応するポスト壁用貫通ビア群を形成し、(2)前記マトリクス状に配置された複数の導波領域の前記第1ショート壁に対応する位置の外側に前記第1貫通ビア群、及び、前記マトリクス状に配置された複数の導波領域の前記第2ショート壁に対応する位置の外側に前記第2貫通ビア群を形成し、前記切り出し工程は、前記第1貫通ビア群が形成された領域、前記第2貫通ビア群が形成された領域、及び、前記第1貫通ビア群と前記第2貫通ビア群が連続して形成された領域の各々を分断するように、前記導体膜が形成された誘電体基板を切断する、ことが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、本発明の一態様に係る複数のバンドパスフィルタを一括して製造することができる。したがって、本製造方法は、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタの製造効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様によれば、バイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔第1の実施形態〕
〔実施形態〕
(バンドパスフィルタの構成)
本発明の実施形態に係るバンドパスフィルタ1の構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、バンドパスフィルタ1の分解斜視図である。
図2の(a)は、バンドパスフィルタ1の平面図であり、
図2の(b)は、バンドパスフィルタ1の断面図である。なお、
図1においては、バンドパスフィルタ1に接続されるマイクロストリップ線路5,6を併せて示している。また、
図2の(b)に示す断面は、
図2の(a)に示すA−A’線におけるバンドパスフィルタ1の断面である。
【0032】
バンドパスフィルタ1は、
図1に示すように、誘電体基板11と、誘電体基板11の上面に形成された上広壁12aと、誘電体基板11の下面に形成された下広壁12bと、誘電体基板11の内部に形成されたポスト壁13と、を備えている。誘電体基板11の上面及び下面の各々は、それぞれ、請求の範囲に記載の第1主面及び第2主面の一態様である。また、誘電体基板11の上面及び下面に交わる(本実施形態においては直交する)側面のうち短辺に沿った側面を前側面111及び後側面112と称する。前側面111は、後述する前狭壁130cに対向している側面であり、後側面112は、後述する後狭壁130dに対向している側面である。
【0033】
誘電体基板11は、誘電体により構成された板状部材である。本実施形態においては、誘電体基板11として、石英基板を用いている。ただし、誘電体基板11の材料は、誘電体であればよく、石英に限定されない。例えば、誘電体基板11の材料は、樹脂(例えば、テフロン(登録商標)系樹脂や液晶ポリマー樹脂など)であっても構わない。
【0034】
なお、以下の説明においては、誘電体基板11の表面を構成する6つの面のうち、面積が最も大きな2つの面を「主面」と呼ぶ。特に、これら2つの主面を区別する必要がある場合は、第1の主面を「上面」と呼び、第1の主面に対向する第2の主面を「下面」と呼ぶ。また、誘電体基板11の表面を構成する6つの面のうち、主面以外の4つの面を「側面」と呼ぶ。特に、これら4つの側面を区別する必要がある場合には、第1の側面を「右側面」と呼び、第1の側面に対向する第2の側面を「左側面」と呼び、第1の側面及び第2の側面に直交する第3の側面を「前側面」と呼び、第3の側面に対向する第4の側面を「後側面」と呼ぶ。ただし、これらの呼称は、説明の便宜上のものであり、バンドパスフィルタ1の配置に制約を課すものではない。また、以下の説明においては、誘電体基板11の左側面から右側面に向かう方向をx軸正方向とし、誘電体基板11の後側面から前側面に向かう方向をy軸正方向とし、誘電体基板11の下面から上面に向かう方向をz軸正方向とする直交座標系を利用する。
【0035】
上広壁12aは、誘電体基板11の上面に形成された長方形の膜状導体であり、下広壁12bは、上広壁12aと対向するように、誘電体基板11の下面に形成された長方形の膜状導体である。
図1に示すように、上広壁12aの外縁を構成する4つの辺のうち前方(y軸正方向側)の短辺を短辺12a1と称し、後方(y軸負方向側)の短辺を短辺12a2と称し、下広壁12bの外縁を構成する4つの辺のうち前方(y軸正方向側)の短辺を短辺12b1と称し、後方(y軸負方向側)の短辺を短辺12b2と称する。上広壁12a及び下広壁12bの各々は、それぞれ、請求の範囲に記載の第1広壁及び第2広壁の一態様である。上広壁12aの外縁及び下広壁12bの外縁の各々は、それぞれ、請求の範囲に記載の第1広壁の縁及び第2広壁の縁の一態様である。
【0036】
本実施形態においては、上広壁12a及び下広壁12bとして、銅膜を用いる。ただし、上広壁12a及び下広壁12bの材料は、導体であればよく、銅に限定されない。例えば、上広壁12a及び下広壁12bの材料は、銅以外の金属(例えば、アルミニウムや金など)であっても構わない。また、上広壁12a及び下広壁12bは、十分な厚みを有する板状導体であっても構わない。
【0037】
以下、ポスト壁13の構成について、
図2の(a)を参照して説明する。ポスト壁13は、誘電体基板11の内部に形成された複数の導体ポストP1,P2,…の集合である。各導体ポストPi(i=1,2,…)は、
図2の(b)に示すように、誘電体基板11を上下に貫通する貫通孔の内壁を覆う膜状(円筒状)導体である(
図2の(b)においては、導体ポストPiの一態様である導体ポスト133a1〜P133a3,P133b1〜P133b3を例示している)。各導体ポストPiの上端及び下端は、それぞれ、上広壁12a及び下広壁12bに接触しており、各導体ポストPiは、上広壁12aと下広壁12bとを短絡している。本実施形態においては、各導体ポストPiの材料として、銅を用いている。ただし、各導体ポストPiの材料は、導体であればよく、銅に限定されない。例えば、各導体ポストPiの材料は、銅以外の金属(例えば、アルミニウムや金など)であっても構わない。また、各導体ポストPiは、誘電体基板11を上下に貫通する貫通孔に充填された塊状(円柱状)の導体であっても構わない。これらの導体ポストP1,P2,…は、柵状に並べられており、これらの導体ポストP1,P2,…により構成されるポスト壁13は、ポスト間隔よりも十分に長い波長を有する電磁波を反射する導体壁として機能する。
【0038】
ポスト壁13は、
図2の(a)に示すように、右狭壁130a、左狭壁130b、前狭壁130c、及び後狭壁130dに加えて、6組の隔壁対131〜136を含んでいる。なお、前狭壁130c及び後狭壁130dは、ショート壁と呼ばれることもある。前狭壁130c及び後狭壁130dの各々は、それぞれ、請求の範囲に記載の第1ショート壁及び第2ショート壁の一態様である。
【0039】
右狭壁130a及び左狭壁130bは、それぞれ、導体ポストP1,P2,…の部分集合であって、y軸に沿って柵状に並べられた複数の導体ポストからなる。右狭壁130aは、yz面と平行に、誘電体基板11の中心よりも右側(x軸正方向側)に配置されている。一方、左狭壁130bは、yz面と平行に、誘電体基板11の中心よりも左側(x軸負方向側)に配置されている。
【0040】
前狭壁130c及び後狭壁130dは、それぞれ、導体ポストP1,P2,…の部分集合であって、x軸に沿って柵状に並べられた複数の導体ポストからなる。前狭壁130cは、zx面と平行に、誘電体基板11の中心よりも前側(y軸正方向側)に配置されている。一方、後狭壁130dは、zx面と平行に、誘電体基板11の中心よりも後側(y軸負方向側)に配置されている。
【0041】
上下を広壁12a,12bで挟まれ、前後左右を狭壁130a〜130dに囲まれた直方体状の領域D1は、後述する入力部10aを介して入力された電磁波を導波する方形導波路として機能する。以下、この領域D1のことを、「導波領域」と呼ぶ。
【0042】
第1隔壁対131は、第1右隔壁131a及び第1左隔壁131bにより構成される。第1右隔壁131a及び第1左隔壁131bは、それぞれ、導体ポストP1,P2,…の部分集合であって、x軸に沿って柵状に並べられた複数(本実施形態においては2つ)の導体ポストからなる。第1右隔壁131aは、前狭壁130cの後方において、zx面と平行に、誘電体基板11の中心よりも右側(x軸正方向側)に配置されている。一方、第1左隔壁131bは、前狭壁130cの後方において、zx面と平行に、誘電体基板11の中心よりも左側(x軸負方向側)に配置されている。前狭壁130cから第1右隔壁131aまでの距離と前狭壁130cから第1左隔壁131bまでの距離とは、互いに一致している。また、第1右隔壁131aの左端(x軸負方向側の端部)と第1左隔壁131bの右端(x軸正方向側の端部)とは、互いに離間している。
【0043】
第2隔壁対132は、第2右隔壁132a及び第2左隔壁132bにより構成される。第2右隔壁132a及び第2左隔壁132bは、それぞれ、導体ポストP1,P2,…の部分集合であって、x軸に沿って柵状に並べられた複数(本実施形態においては3つ)の導体ポストからなる。第2右隔壁132aは、第1右隔壁131aの後方において、zx面と平行に、誘電体基板11の中心よりも右側(x軸正方向側)に配置されている。一方、第2左隔壁132bは、第1左隔壁131bの後方において、zx面と平行に、誘電体基板11の中心よりも左側(x軸負方向側)に配置されている。前狭壁130cから第2右隔壁132aまでの距離と前狭壁130cからから第2左隔壁132bまでの距離とは、互いに一致している。また、第2右隔壁132aの左端(x軸負方向側の端部)と第2左隔壁132bの右端(x軸正方向側の端部)とは、互いに離間している。
【0044】
第3隔壁対133は、第2隔壁対132の後方において、第2隔壁対132と同様に構成されている。第4隔壁対134は、第3隔壁対133の後方において、第2隔壁対132と同様に構成されている。第5隔壁対135は、第4隔壁対134の後方において、第2隔壁対132と同様に構成されている。第6隔壁対136は、第5隔壁対135の後方において、第1隔壁対131と同様に構成されている。これら6組の隔壁対131〜136は、y軸に沿って等間隔に並べられている。
【0045】
上述した導波領域D1は、これら6組の隔壁対131〜136によって、7つの小領域D11〜D17に区画される。
【0046】
導波領域D1のうち、前後を前狭壁130cと第1隔壁対131とで挟まれた小領域D11には、入力部10aが形成されている。入力部10aは、上広壁12aに形成された開口10a1と、開口10a1を通って誘電体基板11に挿入されたブラインドビア10a2と、により構成されている。ブラインドビア10a2は、上広壁12aからも下広壁12bからも絶縁されている。ブラインドビア10a2は、
図1に示すように、第1マイクロストリップ線路5の誘電体層51を貫通して、第1マイクロストリップ線路5の信号ライン52と接続される。この場合、第1マイクロストリップ線路5を導波された電磁波は、入力部10aを介して小領域D11に入力される。以下、この小領域D11のことを、「入力領域」と呼ぶ。ブラインドビア10a2は、誘電体基板11を貫通しておらず、その一方の端部(z軸負方向側の端部)が誘電体基板11の内部に位置することを除いて、各導体ポストPiと同様に構成されている。
【0047】
導波領域D1のうち、前後を第1隔壁対131と第2隔壁対132とで挟まれた小領域D12は、第1共振器として機能する。以下、この小領域D12のことを、「第1共振領域」と呼ぶ。第1共振領域D12は、第1右隔壁131aと第1左隔壁131bとの間の隙間を結合窓として、上述した入力領域D11と結合している。
【0048】
導波領域D1のうち、前後を第2隔壁対132と第3隔壁対133とで挟まれた小領域D13は、第2共振器として機能する。以下、この小領域D13のことを、「第2共振領域」と呼ぶ。第2共振領域D13は、第2右隔壁132aと第2左隔壁132bとの間の隙間を結合窓として、上述した第1共振領域D12と結合している。
【0049】
導波領域D1のうち、前後を第3隔壁対133と第4隔壁対134とで挟まれた小領域D14は、第3共振器として機能する。以下、この小領域D14のことを、「第3共振領域」と呼ぶ。第3共振領域D14は、第3右隔壁133aと第3左隔壁133bとの間の隙間を結合窓として、上述した第2共振領域D13と結合している。
【0050】
導波領域D1のうち、前後を第4隔壁対134と第5隔壁対135とで挟まれた小領域D15は、第4共振器として機能する。以下、この小領域D15のことを、「第4共振領域」と呼ぶ。第4共振領域D15は、第4右隔壁134aと第4左隔壁134bとの間の隙間を結合窓として、上述した第3共振領域D14と結合している。
【0051】
導波領域D1のうち、前後を第5隔壁対135と第6隔壁対136とで挟まれた小領域D16は、第5共振器として機能する。以下、この小領域D16のことを、「第5共振領域」と呼ぶ。第5共振領域D16は、第5右隔壁135aと第5左隔壁135bとの間の隙間を結合窓として、上述した第4共振領域D15と結合している。
【0052】
導波領域D1のうち、前後を第6隔壁対136と後狭壁130dとで挟まれた小領域D17には、出力部10bが形成されている。出力部10bは、上広壁12aに形成された開口10b1と、開口10b1を通って誘電体基板11に挿入されたブラインドビア10b2と、により構成されている。ブラインドビア10b2は、上広壁12aからも下広壁12bからも絶縁されている。ブラインドビア10b2は、
図1に示すように、第2マイクロストリップ線路6の誘電体層61を貫通して、第2マイクロストリップ線路6の信号ライン62と接続される。この場合、小領域D17を導波された電磁波は、出力部10bを介して第2マイクロストリップ線路6に出力される。以下、この小領域D17のことを、「出力領域」と呼ぶ。出力領域D17は、第6右隔壁136aと第6左隔壁136bとの間の隙間を結合窓として、上述した第5共振領域D16と結合している。ブラインドビア10b2は、ブラインドビア10a2と同一に構成されている。
【0053】
バンドパスフィルタ1においては、直列結合された5個の共振領域D12〜D16が、特定の通過帯域内の電磁波を選択的に通過させるチェビシェフ型のバンドパスフィルタとして機能する。このため、入力部10aを介して第1マイクロストリップ線路5から入力領域D11へと入力された電磁波のうち、特定の通過帯域内の電磁波のみが、出力部10bを介して出力領域D17から第2マイクロストリップ線路6へと出力される。
【0054】
なお、本実施形態においては、導波領域D1を6組の隔壁対131〜136で区画することによって、5個の共振領域D12〜D15を含むバンドパスフィルタを実現しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、nを3以上の任意の自然数として、導波領域D1をn組の隔壁対で区画することによって、n−1個の共振領域を含むバンドパスフィルタを実現することができる。例えば、(1)導波領域D1を3組の隔壁対で区画することによって、2個の共振領域を含むバンドパスフィルタを実現してもよいし、(2)導波領域D1を4組の隔壁対で区画することによって、3個の共振領域を含むバンドパスフィルタを実現してもよいし、(3)導波領域D1を5組の隔壁対で区画することによって、4個の共振領域を含むバンドパスフィルタを実現してもよい。
【0055】
また、本実施形態においては、第1マイクロストリップ線路5を導波された電磁波をバンドパスフィルタ1に入力するために、入力部10aを開口10a1とブラインドビア10a2とにより実現しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、導波管を導波された電磁波をバンドパスフィルタ1に入力するために、入力部10aを開口10a1のみにより実現しても構わない。この場合、開口10a1の形状及びサイズは、導波管の出力開口の形状及びサイズに応じて決められる。なお、コプレーナ線路を導波された電磁波をバンドパスフィルタ1に入力する場合には、本実施形態と同様、入力部10aを開口10a1とブラインドビア10a2とにより構成すればよい。
【0056】
同様に、本実施形態においては、バンドパスフィルタ1を通過した電磁波を第2マイクロストリップ線路6に出力するために、出力部10bを開口10b1とブラインドビア10b2とにより実現しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、バンドパスフィルタ1を通過した電磁波を導波管に出力するために、出力部10bを開口10b1のみにより実現しても構わない。この場合、開口10b1の形状及びサイズは、導波管の入力開口の形状及びサイズに応じて決められる。なお、バンドパスフィルタ1を通過した電磁波をコプレーナ線路に入力する場合には、本実施形態と同様、出力部10bを開口10b1とブラインドビア10b2とにより構成すればよい。
【0057】
また、バンドパスフィルタ1は、第3共振領域D14の中央を通り、且つ、zx面に平行な面を対称面として、鏡映対称な構造を有する。したがって、(1)入力部10aを含む入力領域D11と出力部10bを含む出力領域D17とは同じ構造であり、(2)共振領域D12と共振領域D16とは同じ構造であり、(3)共振領域D13と共振領域D15とは同じ構造であり、共振領域D14は、上記対称面に対して鏡映対称な構造を有する。
【0058】
このように、バンドパスフィルタ1は、入力部10aからみた場合の構造と、出力部10bからみた場合の構造とが等価である。したがって、バンドパスフィルタ1においては、入力ポートとして入力部10a及び出力部10bの何れを採用した場合であっても同じ機能を発揮する。
【0059】
なお、
図1及び
図2の(a)に図示されている第1導体ポスト群15a及び第2導体ポスト群15bについては、
図3の(a)を参照して後述する。
【0060】
(バンドパスフィルタの特徴)
バンドパスフィルタ1において注目すべき点ついて、
図3の(a)を参照して説明する。
図3の(a)は、バンドパスフィルタ1の前狭壁130c近傍を拡大した拡大平面図である。なお、
図3の(b)及び(c)は、それぞれ、バンドパスフィルタ1の第1の変形例及び第2の変形例の前狭壁130c近傍を拡大した拡大平面図である。第1の変形例及び第2の変形例については、変形例の項において後述する。
【0061】
バンドパスフィルタ1において注目すべきは、
図3の(a)に示すように、前狭壁130cと、前側面111との間に第1導体ポスト群15aが形成されていることである。第1導体ポスト群15aは、複数の導体ポストにより構成されているポスト壁である。
【0062】
このように、前狭壁130cと前側面111との間に第1導体ポスト群15aが形成されていることにより、バンドパスフィルタ1においては、入力部10aから、上広壁12aの短辺12a1近傍及び下広壁12bの短辺12b1近傍のエッジ領域に結合される電磁波を抑制することができる。したがって、バンドパスフィルタ1は、バイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0063】
本実施形態において、第1導体ポスト群15aは、前狭壁130cに沿って配置された1列の導体ポスト列からなる。また、前狭壁130cの壁芯(
図3の(a)に示すB−B’線)と第1導体ポスト群15aが構成するポスト壁の壁芯(
図3の(a)に示すC−C’線)との距離である距離Y1は、前狭壁130cを構成する複数の導体ポストのうち互いに隣接する導体ポスト同士の中心間距離であるポスト間隔d以下であることが好ましい。本実施形態において、距離Y1は、ポスト間隔dと一致している。
【0064】
前狭壁130cから最も離れている導体ポスト(本実施形態においては、第1導体ポスト群15aを構成する導体ポスト)の壁芯から、上広壁12aの短辺12a1までの距離Y21は、ポスト間隔d以下であることが好ましい。本実施形態において、距離Y21は、ポスト間隔dを下回るように構成されている。
【0065】
この構成によれば、第1導体ポスト群15aを構成する複数の導体ポストと、短辺12a1とが互いに近接しているため、入力部10aから前狭壁130c近傍のエッジ領域に結合される電磁波を確実に抑制することができる。したがって、バンドパスフィルタ1は、距離Y21がポスト間隔dを上回る場合と比較して、バイパス現象が更に生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0066】
本実施形態においては、上広壁12aと下広壁12bとは合同であり、且つ、平面視した場合にその外縁が一致するように配置されている。したがって、
図3の(a)において下広壁12bは図示されていないものの、短辺12b1の位置は、短辺12a1の位置(すなわちD−D’線の位置)と一致している。したがって、第1導体ポスト群15aの壁芯から短辺12b1までの距離Y22は、Y21と等しい。
【0067】
なお、上述したように、バンドパスフィルタ1は、上記対称面に対して鏡映対称な構造を有する。したがって、後狭壁130dと、後側面112との間には、第2導体ポスト群15bが形成されている(
図1及び
図2の(a)参照)。第2導体ポスト群15bは、複数の導体ポストにより構成されているポスト壁である。このように、バンドパスフィルタ1において、第1導体ポスト群15aと第2導体ポスト群15bとは、上記対称面に対して鏡映対称となるように配置されていることが好ましい。上記対称面は、前狭壁130c及び後狭壁130dに対して平行な平面のうち前狭壁130c及び後狭壁130dの各々から等距離にある平面である。
【0068】
この構成によれば、後狭壁130dと後側面112との間に第2導体ポスト群15bが形成されているため、バンドパスフィルタ1は、出力部10bから後狭壁130d近傍のエッジ領域に結合される電磁波を抑制することができる。すなわち、バンドパスフィルタ1は、前狭壁130c近傍と、後狭壁130d近傍との2箇所でエッジ領域に結合する電磁波を抑制することができる。したがって、バンドパスフィルタ1は、バイパス現象が更に生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、前狭壁130cの近傍と、後狭壁130dの近傍とが上記対称面に対して鏡映対称に構成されている場合を用いて説明した。しかし、前狭壁130cの近傍と、後狭壁130dの近傍とは、異なる構成であってもよい。例えば、バンドパスフィルタ1において出力部10bを省略してもよいし、出力部10bが設けられている場合であっても第2導体ポスト群15bを省略してもよい。すなわち、本発明の一態様に係るバンドパスフィルタは、導波領域の一方の端面を構成する前狭壁130cの近傍に設けられた、入力部10aを備え、前狭壁130cと前側面111との間に第1導体ポスト群15aが形成されていればよい。
【0070】
(第1の変形例及び第2の変形例)
バンドパスフィルタ1の第1の変形例及び第2の変形例について、
図3の(b)及び(c)を参照して説明する。
図3の(b)に示すバンドパスフィルタ1Aは、バンドパスフィルタ1の第1の変形例である。
図3の(c)に示すバンドパスフィルタ1Bは、バンドパスフィルタ1の第2の変形例である。バンドパスフィルタ1Aが備えている誘電体基板11A、上広壁12aA、及び第1導体ポスト群15aAの各々は、それぞれ、バンドパスフィルタ1が備えている誘電体基板11、上広壁12a、及び第1導体ポスト群15aを変形することによって得られる。バンドパスフィルタ1Bが備えている誘電体基板11B、上広壁12aB、及び第1導体ポスト群15aBの各々は、それぞれ、バンドパスフィルタ1が備えている誘電体基板11、上広壁12a、及び第1導体ポスト群15aを変形することによって得られる。
【0071】
図3の(b)に示すように、バンドパスフィルタ1Aにおいて、誘電体基板11Aの前側面111Aの位置、及び、上広壁12aAの短辺12a1Aの位置の各々は、第1導体ポスト群15aAが構成するポスト壁の壁芯(
図3の(a)に示すC−C’線)と一致するように構成されている。すなわち、バンドパスフィルタ1Aにおいては、距離Y21及び距離Y22がY21=0及びY22=0である。なお、バンドパスフィルタ1Aの距離Y1は、バンドパスフィルタ1の距離Y1と同じであり、ポスト間隔dと一致している。
【0072】
以上のように構成されたバンドパスフィルタ1Aにおいて、前側面111Aには第1導体ポスト群15aAを構成する全ての導体ポストが、その内壁に導体膜を形成された状態で露出している。
【0073】
この構成によれば、上広壁12aA及び下広壁12bA(
図3の(b)には不図示)は、前側面111Aに露出した複数の導体ポストにより短絡されているため、入力部10aから前狭壁130cA近傍のエッジ領域に結合される電磁波をより確実に抑制することができる。したがって、バンドパスフィルタ1Aは、バイパス現象がより一層生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0074】
なお、バンドパスフィルタ1Aは、バンドパスフィルタ1と同様に、上記対称面に対して鏡映対称な構造を有する。すなわち、バンドパスフィルタ1Aは、前狭壁130c近傍と、後狭壁130d近傍との2箇所でエッジ領域に結合する電磁波を抑制することができる。したがって、バンドパスフィルタ1Aは、バイパス現象が更に生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0075】
図3の(c)に示すように、バンドパスフィルタ1Bにおいて、第1導体ポスト群15aBは、前狭壁130cに沿って配置された2列の導体ポスト列15a1B,15a2Bからなる。導体ポスト列15a1B,15a2Bは、それぞれ、複数の導体ポストにより構成されている。導体ポスト列15a1Bは、前狭壁130cに近い側(y軸負方向側)に位置し、導体ポスト列15a2Bは、前狭壁130cから遠い側(y軸正方向側)に位置する。
【0076】
バンドパスフィルタ1Bにおいて、前狭壁130cの壁芯(
図3の(c)のB−B’線)から導体ポスト列15a1Bが構成するポスト壁の壁芯(
図3の(c)のC
1−C
1’線)までの距離、及び、導体ポスト列15a1Bが構成するポスト壁の壁芯から導体ポスト列15a2Bが構成するポスト壁の壁芯(
図3の(c)のC
2−C
2’線)までの距離は、それぞれ、バンドパスフィルタ1,1Aにおける距離Y1と同じである。
【0077】
バンドパスフィルタ1Bにおいて、前側面111Bは、前狭壁130cの壁芯、導体ポスト列15a1Bが構成するポスト壁の壁芯、及び、導体ポスト列15a2Bが構成するポスト壁の壁芯の各々に対して小さな傾きを有するように形成されている。このような状況は、1枚の大きな誘電体基板からバンドパスフィルタ1Bを切り出す場合に、予定されていた切断線から角度がズレていた場合などに生じ得る。
【0078】
バンドパスフィルタ1Bにおいて、第1導体ポスト群15aBを構成する複数の導体ポストのうち前狭壁130cから最も離れている導体ポストは、導体ポスト列15a2Bを構成する2本の導体ポストである。これら2本の導体ポストの内壁は、前側面111Bに露出している。したがって、これら2本の導体ポストと上広壁12aBの短辺12a1Bとの距離である距離Y21、及び、これら2本の導体ポストと下広壁12bB(
図3の(c)には不図示)の短辺12b1Bとの距離である距離Y22は、いずれも、Y21=0及びY22=0と見做すことができる。ここで、短辺12a1Bは、上広壁12aBの縁のうち前狭壁130cにおおよそ沿った部分であり、短辺12b1Bは、下広壁12bBの縁のうち前狭壁130cにおおよそ沿った部分である。
【0079】
この構成によれば、導体ポスト列15a2Bを構成する2本の導体ポストと、短辺12a1B及び短辺12b1Bの各々とは、何れも近接しているため、入力部10aから前狭壁130cB近傍のエッジ領域に結合される電磁波を確実に抑制することができる。したがって、バンドパスフィルタ1Bは、バイパス現象が更に生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0080】
(第3の変形例)
バンドパスフィルタ1の第3の変形例について、
図4の(a)〜(c)を参照して説明する。
図4の(a)は、バンドパスフィルタ1の第3の変形例であるバンドパスフィルタ1Cの平面図である。
図4の(b)は、バンドパスフィルタ1Cの前狭壁130c近傍を拡大した拡大平面図である。バンドパスフィルタ1Cが備えている誘電体基板11C、上広壁12aC、及び第1導体ポスト群15aCの各々は、それぞれ、バンドパスフィルタ1が備えている誘電体基板11、上広壁12a、及び第1導体ポスト群15aを変形することによって得られる。
【0081】
図4の(a)及び(b)に示すように、バンドパスフィルタ1Cにおいて、第1導体ポスト群15aCは、前狭壁130cに沿って配置された3列の導体ポスト列15a1C,15a2C,15a3Cからなる。導体ポスト列15a1C,15a2C,15a3Cは、それぞれ、複数の導体ポストにより構成されている。導体ポスト列15a1C,15a2C,15a3Cは、それぞれ、前狭壁130cに近い側(y軸負方向側)から、前狭壁130cから遠い側(y軸正方向側)に向かって順番に配置されている。
【0082】
バンドパスフィルタ1Cにおいては、
図4の(b)に示すように、上広壁12aCの短辺12a1Cは、前狭壁130cを構成するポスト壁と、導体ポスト列15a1Cとの間に位置する。すなわち、上広壁12aCは、導波領域を構成するポスト壁13が形成されている領域を包含するように設けられている。したがって、第1導体ポスト群15aCは、平面視した場合に、上広壁12aCが設けられていない領域である領域R
15a内に形成されている。
【0083】
バンドパスフィルタ1Cにおいて、(1)前狭壁130cの壁芯(
図4の(b)のB−B’線)から導体ポスト列15a1Cが構成するポスト壁の壁芯(
図4の(b)のC
1−C
1’線)までの距離、(2)導体ポスト列15a1Cが構成するポスト壁の壁芯から導体ポスト列15a2Cが構成するポスト壁の壁芯(
図4の(b)のC
2−C
2’線)までの距離、及び(3)導体ポスト列15a2Cが構成するポスト壁の壁芯から導体ポスト列15a3Cが構成するポスト壁の壁芯(
図4の(b)のC
3−C
3’線)までの距離は、それぞれ、バンドパスフィルタ1,1A,1Bにおける距離Y1と同じである。
【0084】
バンドパスフィルタ1Cにおいて、前狭壁130cの壁芯から上広壁12aCの短辺12a1C(
図4の(b)に示すD−D’線)までの距離である距離Y21は、ポスト間隔dを下回るように構成されている。
【0085】
この構成によれば、距離Y21がポスト間隔dを下回るように構成されているため、入力部10aから、上広壁12aCの短辺12a1C近傍のエッジ領域に結合される電磁波を抑制することができる。したがって、バンドパスフィルタ1Cは、バイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0086】
また、誘電体基板11Cの上面のうち領域R
15a内には、第1導体ポスト群15aCが形成されている。したがって、上広壁12aCが設けられていない領域R
15aが前狭壁130cの外側に存在する場合であっても、バンドパスフィルタ1Cは、バイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0087】
また、
図4の(a)及び(c)に示すように、バンドパスフィルタ1Cにおいて、第2導体ポスト群15bCは、後狭壁130dに沿って配置された3列の導体ポスト列15b1C,15b2C,15b3Cからなる。導体ポスト列15b1C,15b2C,15b3Cは、それぞれ、複数の導体ポストにより構成されている。導体ポスト列15b1C,15b2C,15b3Cは、それぞれ、後狭壁130dに近い側(y軸正方向側)から後狭壁130dから遠い側(y軸負方向側)に向かって順番に配置されている。
【0088】
バンドパスフィルタ1Cにおいては、
図4の(c)に示すように、上広壁12aCの短辺12a2Cは、導体ポスト列15b2Cと、導体ポスト列15b3Cとの間に位置する。すなわち、上広壁12aCは、導波領域を構成するポスト壁13が形成されている領域と、導体ポスト列15b1C,15b2Cが形成されている領域とを包含するように設けられている。したがって、第2導体ポスト群15bCは、平面視した場合に、上広壁12aCが設けられている領域と、上広壁12aCが設けられていない領域である領域R
15bとにまたがって形成されている。
【0089】
また、本変形例では、上広壁12aCを用いて第1導体ポスト群15aC及び第2導体ポスト群15bCの配置について説明した。本変形例においても、下広壁12bC(
図4に不図示)は、上広壁12aCと対向する領域に形成された長方形の膜状導体である。したがって、平面視した場合の領域R
15aは、上広壁12aCが設けられていない領域でもあり、同時に下広壁12bCが設けられていない領域でもある。したがって、第1導体ポスト群15aC及び第2導体ポスト群15bCは、下広壁12bCが設けられていない領域にも配置されている。
【0090】
また、バンドパスフィルタ1Cは、バンドパスフィルタ1などと同様に、上記対称面に対して鏡映対称な構造を有する。すな わち、バンドパスフィルタ1Cは、前狭壁130c近傍と、後狭壁130d近傍との2箇所でエッジ領域に結合する電磁波を抑制することができる。したがって、バンドパスフィルタ1Cは、バイパス現象が更に生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0091】
ところで、
図4の(a)〜(c)に図示したバンドパスフィルタ1Cにおいて上広壁12aCが形成されている位置は、バンドパスフィルタ1Cの設計段階において定められた所定の位置である設計位置からy軸負方向側にズレている。なお、(1)上広壁12aCの短辺12aC1が導体ポスト列15aC1と導体ポスト列15aC2との間に存在し、且つ、(2)上広壁12aCの短辺12aC2が導体ポスト列15bC1と導体ポスト列15bC2との間に存在する位置が設計位置である。このような位置ずれは、バンドパスフィルタ1Cの製造時に生じ得るものである。
【0092】
バンドパスフィルタ1Cは、第1導体ポスト群15aC及び第2導体ポスト群15bCを備えているため、上述したような上広壁12aC(あるいは下広壁12bC)の位置すれが生じた場合であっても、バイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができる。
【0093】
〔実施例〕
次に、
図1、
図2、及び
図3の(a)に示したバンドパスフィルタ1をモデルとして用い、バンドパスフィルタ1の透過特性をシミュレーションした結果を
図5に示す。以下において、透過係数(S21ともいう)の周波数依存性のことを透過特性と称する。
【0094】
バンドパスフィルタ1は、Eバンドに含まれるローバンド(71GHz以上76GHz以下の帯域)を通過帯域とするように設計されている。また、各実施例において、低周波側の遮断帯域(71GHz未満の帯域)に含まれる所定の周波数を65GHzに定める。65GHzは、低周波側の遮断帯域の上限周波数(動作帯域の下限周波数とも言える)の凡そ90%に相当する。周波数が65GHzである電磁波の自由空間波長λ
0は、4.62mm(有効数字3桁の場合)である。したがって、自由空間波長λ
0の1/4は、1.15mm(有効数字3桁の場合)である。
【0095】
本実施例は、誘電体基板11として厚さが520μmである石英基板を採用している。誘電体基板11の2つの主面上には、厚さが10μmである銅製の導体膜が形成されている。これらの導体膜の各々は、上広壁12a及び下広壁12bとして機能する。
【0096】
また、本実施例において、ポスト壁を構成する右狭壁130a、左狭壁130b、前狭壁130c、後狭壁130d、及び6組の隔壁対131〜136における導体ポストの各々は、誘電体基板11を貫通する貫通ビアの内壁に銅製の導体膜を形成することによって構成されている。また、これらの導体ポストの直径は100μmであり、ポスト間隔dは200μmである。上述したように、ポスト間隔dは、隣接する導体ポスト同士の中心間距離である(例えば
図3参照)。
【0097】
また、本実施例において、第1マイクロストリップ線路5を構成する誘電体層51、及び、第2マイクロストリップ線路6を構成する誘電体層61として、厚さが17.5μmであるポリイミド系の樹脂を採用している。
【0098】
また、各実施例において、入力部10aを構成する開口10a1は、直径340μmの円形である。また、ブラインドビア10a2は、誘電体基板11に形成されたブラインドビアの内壁に銅製の導体膜を形成することによって構成されている。また、出力部10bを構成する開口10b1は、直径340μmの円形である。また、ブラインドビア10b2は、誘電体基板11に形成されたブラインドビアの内壁に銅製の導体膜を形成することによって構成されている。
【0099】
また、各実施例において、誘電体層51の上側の表面上には、銅製の帯状薄膜からなる信号ライン52が形成されている。信号ライン52の端部のうちブラインドビア10a2に接する端部には、直径200μmであり、円形のランドが形成されている。このランドは、開口10a1の内部であって、且つ、平面視したときにブラインドビア10a2と重なる位置に形成されている。また、誘電体層61の上側の表面上には、銅製の帯状薄膜からなる信号ライン62が形成されている。信号ライン62の端部のうちブラインドビア10b2に接する端部には、直径200μmであり、円形のランドが形成されている。このランドは、開口10b1の内部であって、且つ、平面視したときにブラインドビア10b2と重なる位置に形成されている。
【0100】
バンドパスフィルタ1は、
図2の(a)に示すように、前狭壁130cと前側面111との間に形成された第1導体ポスト群15aと、後狭壁130dと後側面112との間に形成された第2導体ポスト群15bとを備えている。
【0101】
本実施例において、前狭壁130cの壁芯(
図3の(a)に図示したB−B’線の位置)から第1導体ポスト群15aの壁芯(
図3の(a)に図示したC
1−C
1’線の位置)までの距離である距離Y1は、200μmである。なお、第2導体ポスト群15bは、第1導体ポスト群15aと同様に構成されている。
【0102】
(比較例)
上述した実施例に対する比較例として、
図8及び
図9に示したバンドパスフィルタ9の構成をシミュレーションのためのモデルとして用いた。
図8は、バンドパスフィルタ9の分解斜視図である。
図9は、バンドパスフィルタ9の平面図である。
【0103】
本比較例は、本実施例のバンドパスフィルタ1から第1導体ポスト群15a及び第2導体ポスト群15bを省略することによって得られる。
【0104】
(透過特性)
図5は、本実施例及び比較例の透過特性を示すグラフである。
図5に示すように、比較例の透過特性は、遮断帯域内の65.5GHz近傍においてピークを有することが分かった。65.5GHz近傍における透過係数は、およそ−53dBであった。
【0105】
これに対して、本実施例は、65.5GHz近傍における透過係数を抑制可能であることが分かった。比較例と比較した場合に、本実施例においては、遮断帯域内に確認されるピークが65.5GHz近傍から63.5GHz近傍へ、すなわち低周波側へシフトしており、且つ、そのピークにおける透過係数が−53dBから−69dB程度に低減されている。
【0106】
以上のように、比較例と比較して、本実施例は、バイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを実現することができた。
【0107】
なお、本実施例においては、Eバンドのうちローバンド(71GHz以上76GHz以下の帯域)を通過帯域とするようにバンドパスフィルタ1を設計した。しかし、本実施例のバンドパスフィルタ1は、本発明の一例に過ぎず、他の帯域を通過帯域とするバンドパスフィルタにも本発明の構成を適用可能である。たとえば、Eバンドのうちハイバンド(81GHz以上86GHz以下の帯域)を通過帯域とするバンドパスフィルタにも本発明の構成を適用可能である。
【0108】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態である製造方法S11について、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は、バンドパスフィルタ1Dの製造方法S11のフローチャートである。
図7は、製造方法S11が含む導体膜形成工程(工程S102〜工程S104)を実施したあとの時点における誘電体基板Sの平面図である。
【0109】
なお、バンドパスフィルタ1Dは、
図4の(a)〜(c)に示したバンドパスフィルタ1Cを変形することによって得られる。具体的には、バンドパスフィルタ1Cにおいて上広壁12aC及び下広壁12bC(
図4の(a)〜(c)には不図示)の各々を誘電体基板11Cの表面のほぼ全域に形成することによって、バンドパスフィルタ1Dは、得られる。なお、説明の便宜上、
図7において、
図4に示したバンドパスフィルタ1Cと同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記している。
【0110】
図7に示した状態の誘電体基板Sを、切断線S
1S
1’、切断線S
2S
2’、切断線S
3S
3’、切断線S
4S
4’、切断線S
5S
5’、切断線S
6S
6’、及び切断線S
7S
7’に沿って切断することによって(後述する工程S107を実施することによって)、誘電体基板Sから4つのバンドパスフィルタ1Dを切り出すことができる。
【0111】
図6に示すように、製造方法S11は、工程S101〜工程S107を含んでいる。
【0112】
工程S101は、(1)ポスト壁13に対応するように配置された複数の貫通ビアからなるポスト壁用貫通ビア群と、(2)導波領域の一方の端面を構成する前狭壁130cに対応する位置の外側に配置された複数の貫通ビアからなる第1貫通ビア群と、(3)入力部10aとして機能するブラインドビア10a2(第1ブラインドビア)と、(4)導波領域の他方の端面を構成する後狭壁130dの外側に配置された複数の貫通ビアからなる第2貫通ビア群と、(5)出力部10bとして機能するブラインドビア10b2(第2ブラインドビア)と、を誘電体基板Sの内部に形成するビア形成工程である。
【0113】
本実施形態において、製造方法S11は、上述したように複数のバンドパスフィルタ1Dを一括して製造するように構成されている。複数のバンドパスフィルタ1Dを一括して製造するために、工程S101は、(1)複数のバンドパスフィルタ1Dの各々の導波領域が互いに近接し、且つ、マトリクス状に配置されるように、各バンドパスフィルタ1Dのポスト壁13に対応するポスト壁用貫通ビア群を形成し、(2)マトリクス状に配置された複数の導波領域の前狭壁130cに対応する位置の外側に第1貫通ビア群、及び、マトリクス状に配置された複数の導波領域の後狭壁130dに対応する位置の外側に第2貫通ビア群を形成する。前記第1貫通ビア群と前記第2貫通ビア群が連続している箇所は、後述する工程S107によって分断されることによって第1導体ポスト群15aD及び第2導体ポスト群15bDとなる。
【0114】
工程S102〜工程S104は、請求の範囲に記載の導体膜形成工程の一態様である。
【0115】
工程S102は、工程S101が実施された誘電体基板Sの表面に下地層となる第1の導体膜層を形成する工程である。例えば、誘電体基板Sとして石英基板を採用する場合、下地層を構成する材料としては、例えばチタンを採用することができる。ただし、下地層を構成する材料は、チタンに限定されるものではなく、クロムを採用してもよいし、チタンとクロムとの多層積層膜を採用してもよい。下地層を構成する材料としては、石英基板の表面と後述する第2導体層(例えば銅)との密着性を高めることができる材料であれば、いかなる材料を採用してもよい。なお、工程S102において採用する成膜方法は、如何なるものであってもよいが、例えばスパッタリングが好適である。
【0116】
工程S103は、下地層が形成された誘電体基板Sに対して、メッキレジストのマスクパターンを形成する工程である。マスクパターンは、例えば、下地層の上にレジスト層を形成したうえで、フォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることによって形成可能である。マスクパターンは、次に述べる工程S104において、電解メッキを施す材料がメッキされてほしくない領域を覆い、電解メッキを施す材料がメッキされてほしい領域を露出させるように、パターニングされている。
【0117】
工程S104は、下地層とマスクパターンとが形成された誘電体基板Sに対して電解メッキを施す工程である。電解メッキを施す材料としては、高い導電率と、高い安定性とを有する材料が好ましい。本実施形態では、電解メッキを施す材料として銅を採用しているが、銅に限定されるものではない。電解メッキを施す材料としては、例えば、金や銀などを採用してもよい。工程S102〜工程S104を実施することによって、誘電体基板Sの表面のほぼ全域にチタン/銅の積層構造を有する導体膜CLが形成される。
【0118】
工程S105及び工程S106は、マイクロストリップ線路5,6を形成するための工程である。工程S105は、
図7に示した誘電体基板Sの上面に誘電体層51及び誘電体層61を形成する工程である。
【0119】
工程S106は、誘電体層51の上面に信号ライン52を形成し、誘電体層61の上面に信号ライン62を形成する工程である。
【0120】
工程S107は、第1貫通ビア群、第2貫通ビア群、及び第1貫通ビア群と第2貫通ビア群が連続して形成された領域の各々を分断するように、導体膜が形成された誘電体基板を切断する工程である。具体的には、
図7に示した切断線S
1S
1’、切断線S
2S
2’、切断線S
3S
3’、切断線S
4S
4’、切断線S
5S
5’、切断線S
6S
6’、及び切断線S
7S
7’に沿って切断することによって、誘電体基板Sから4つのバンドパスフィルタ1Cを切り出すことができる。なお、第1貫通ビア群と第2貫通ビア群が連続して形成された領域は、切断線S
2S
2’に沿って誘電体基板Sが切断されることによって、第1導体ポスト群15aD及び第2導体ポスト群15bDとなる。
【0121】
以上のように、工程S107は、第1貫通ビア群、第2貫通ビア群、及び第1貫通ビア群と第2貫通ビア群が連続して形成された領域の各々を分断することによって各バンドパスフィルタ1Dを切り出す。したがって、切断線S
1S
1’、切断線S
2S
2’、及び切断線S
3S
3’の各々が、y軸方向の何れかにわずかにずれた場合であっても、また、x軸方向に平行な方向に対してわずかに角度がついた場合であっても、4つのバンドパスフィルタ1Dの各々は、前狭壁130cと前側面111との間に形成された第1導体ポスト群15aと、且つ、後狭壁130dと後側面112との間に形成された第2導体ポスト群15bと、を含む。したがって、製造方法S11によって製造されたバンドパスフィルタ1Dは、バイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを得ることができる。したがって、容易にバイパス現象が生じ難いポスト壁導波路型のバンドパスフィルタを得ることができる。
【0122】
また、製造方法S11によれば、複数のバンドパスフィルタ1Dを一括して製造することができるので、バンドパスフィルタ1Dの製造効率を高めることができる。
【0123】
なお、本実施形態では、前狭壁130cの近傍と、後狭壁130dの近傍とが鏡映対称に構成されている場合を用いて説明した。しかし、前狭壁130cの近傍と、後狭壁130dの近傍とは、異なる構成であってもよい。例えば、バンドパスフィルタ1Dにおいて出力部10bを省略する場合、製造方法S11の工程S101は、ポスト壁用貫通ビア群と、第1貫通ビア群と、導体ポスト10a2とを誘電体基板Sの内部に形成すればよい。
【0124】
この場合、導体膜形成工程(工程S102〜工程S104)は、誘電体基板Sの表面と、ポスト壁用貫通ビア群、第1貫通ビア群、及び導体ポスト10a2の内壁とを覆う導体膜を形成すればよい。
【0125】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。