(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記複数の高周波伝送基板の各々は、上記表面側のグランドパターンの上記表面側の信号ラインに対向する辺に沿って柵状に配置された第1の短絡ポスト群であって、上記表面側のグランドパターンと上記裏面側のグランドパターンとを短絡する第1の短絡ポスト群を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波伝送装置。
上記複数の高周波伝送基板の各々において、上記表面側の信号ラインと、上記裏面側のグランドパターンとは、互いに対向しており、且つ、上記裏面側の信号ラインと、上記表面側のグランドパターンとは、互いに対向している、
ことを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載の高周波伝送装置。
上記複数の高周波伝送基板の各々は、第1の誘電体層、第2の誘電体層、及び、上記第1の誘電体層と上記第2の誘電体層との間に介在し、且つ、上記第1の誘電体層と上記第2の誘電体層とを隔てる内層であって、導電体からなる内層を備えている、
ことを特徴とする請求項7〜10の何れか1項に記載の高周波伝送装置。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係る高周波伝送装置1について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1の(a)は、本実施形態に係る高周波伝送装置1の構成を示す斜視図である。
図1の(b)は、
図1の(a)に示した高周波伝送装置1が備えている高周波伝送基板10の構成を示す斜視図である。
図2の(a)は、
図1の(b)に示した高周波伝送基板10の構成を示す上面図である。
図2の(b)は、
図1の(b)に示した高周波伝送基板10の構成を示す断面図であって、
図2の(a)に示したA−A’線における断面図である。
【0031】
高周波伝送装置1は、複数の高周波信号を伝送する多チャンネル高周波伝送装置であり、
図1の(a)に示すように、複数の高周波伝送基板10と筐体20とを備えている。
【0032】
高周波伝送基板10のそれぞれは、
図1の(b)に示すように、誘電体基板11、信号ライン12、1対のグランドパターン13、及びグランドパターン14を備えている。
【0033】
誘電体基板11は、例えばガラスエポキシなどの誘電体からなる基板である。誘電体基板11は、
図1に図示された座標系において、表(おもて)面11a及び裏面11bがxy面と平行になり、裏面11bから表面11aに向かう向きがz軸正方向と一致するように配置される。
【0034】
誘電体基板11の表面11aには、信号ライン12と1対のグランドパターン13とが形成されている。
図2の(a)に示すように、1対のグランドパターン13は、信号ライン12を挟み込むように配置されたグランドパターンであり、グランドパターン131とグランドパターン132とからなる。信号ライン12と1対のグランドパターン13とは、コプレナーウェーブガイドを構成する。本実施形態において、信号ライン12及び1対のグランドパターン13は、
図2の(a)に図示された座標軸においてy軸方向に延伸している。
【0035】
誘電体基板11の裏面11bには、裏面側のグランドパターン14が形成されている。
図2の(b)に示すように、グランドパターン14は、誘電体基板11を介して信号ライン12と対向するように配置されている。
【0036】
グランドパターン13,14は、後述するように筐体20の把持部21を介して接地されている。
【0037】
信号ライン12、グランドパターン13、及びグランドパターン14は、何れも銅、アルミニウムなどの導電体からなる薄膜である。
【0038】
本実施形態において、筐体20は、
図1の(a)に示すように、4枚の高周波伝送基板10を支持するとともに収容する。また、本実施形態において、筐体20は、導電体からなり接地されている。
【0039】
本実施形態において、筐体20が収容する4枚の高周波伝送基板10を互いに区別する場合には、z軸負方向側の高周波伝送基板10から順番にa〜dの添え字を付すことによって区別する。すなわち、最もz軸負方向側に配置された高周波伝送基板から順番に、高周波伝送基板10a,10b,10c,10dとする。
【0040】
筐体20は、高周波伝送基板10a〜10dを次のように支持するとともに収容する。すなわち、筐体20は、
(1)筐体20の側壁と、高周波伝送基板10aのグランドパターン14とが対向し、
(2)高周波伝送基板10aの信号ライン12と、隣接する高周波伝送基板10bのグランドパターン14とが対向し、
(3)高周波伝送基板10bの信号ライン12と、隣接する高周波伝送基板10cのグランドパターン14とが対向し、
(4)高周波伝送基板10cの信号ライン12と、隣接する高周波伝送基板10dのグランドパターン14とが対向し、
(5)高周波伝送基板10cの信号ライン12と、筐体20の側壁とが対向するように、高周波伝送基板10a〜10dを支持するとともに収容する。
【0041】
換言すれば、複数の高周波伝送基板10a〜10dは、互いに隣接する2つの高周波伝送基板のうち、一方の高周波伝送基板10の信号ライン12が他方の高周波伝送基板10のグランドパターン14に対向するように、筐体20により支持されている。
【0042】
上述のように高周波伝送基板10a〜10dを支持するために、筐体20は、把持部21を備えている(
図1の(a)参照)。把持部21は、高周波伝送基板10a〜10dを把持する。本実施形態において、把持部21は、筐体20の下壁に設けられた、高周波伝送基板10a〜10dの下端を把持する把持部21aと、筐体20の上壁に設けられた、高周波伝送基板10a〜10dの上端を把持する把持部21bとにより構成されている。
【0043】
上述のように、筐体20は、導電体からなり且つ接地されているため、筐体20の一部である把持部21も導電体からなり接地されている。したがって、高周波伝送基板10が備えている誘電体基板11の表裏両面に形成されたグランドパターン13,14は、把持部21を介して接地されている。
【0044】
なお、本実実施形態において、把持部21は、筐体20の上壁及び下壁に設けられており、高周波伝送基板10a〜10dの上端及び下端を把持することによって高周波伝送基板10a〜10dを支持するものとして説明した。しかし、把持部21は、筐体20の上壁又は下壁の何れかに設けられており、高周波伝送基板10a〜10dの上端又は下端の何れかを把持することによって高周波伝送基板10a〜10dを支持するように構成されていてもよい。
【0045】
高周波伝送装置1によれば、複数の高周波伝送基板10が重ねて配置される。したがって、複数の高周波伝送基板が並べて配置される場合と比べて、高周波信号伝送装置の実装に要する面積を小さくすることができる。しかも、高周波伝送基板10aを例にすると、高周波伝送基板10aの信号ライン12は、高周波伝送基板10aのグランドパターン14と、高周波伝送基板10aに隣接する高周波伝送基板10bのグランドパターン14とに挟まれ、これら2つのグランドパターンにより遮蔽されている。高周波伝送基板10b〜10dの信号ライン12についても、高周波伝送基板10aの信号ライン12と同様に、2つのグランドパターンにより遮蔽されている。したがって、高周波伝送装置1によれば、各高周波伝送基板10の信号ライン12間のクロストークを抑制することができる。
【0046】
したがって、上記高周波伝送装置は、複数の信号ラインを備えた高周波伝送装置において、信号ライン間に生じるクロストークを抑制しつつ、その実装に要する面積を小さくすることができる。
【0047】
更に、高周波伝送基板10の各々が備える信号ライン12は、誘電体基板11の表面11aに設けられた1対のグランドパターン13に挟み込まれている。換言すれば、高周波伝送基板10の各々が備える信号ライン12は、その四方を接地された導電体に囲まれている。したがって、高周波伝送装置1は、信号ライン12間に生じるクロストークを更に抑制することができる。
【0048】
また、高周波伝送装置1は、その実装に要する面積を小さくするために1対のグランドパターン13の幅を狭める必要がないため、抑制された低いクロストークを、(1)高周波信号の周波数が高くなっても維持することができ、(2)高周波信号の信号電力が高くなっても維持することができる。
【0049】
また、上記のように構成された高周波伝送装置1は、信号ライン12が延伸する方向から平面視した場合の形状を正方形に近づけることができる。換言すれば、高周波伝送装置1は、信号ライン12が延伸する方向から平面視した場合に、幅に対する高さの比であるアスペクト比を大きくすることができる。
【0050】
高周波伝送装置1を適用する一例として、その一方の端部に統合アンテナを接続し、その他方の端部に高周波信号を伝送するケーブルを接続した高周波信号送信装置があげられる。より具体的には、自動車に搭載される車載用統合アンテナシステムがあげられる。このような適用例においては、ケーブルが接続された高周波伝送装置1を狭い空間に通すことによって自動車の車体に実装することが求められる。上述のように高周波伝送装置1の実装に要する面積が小さくされており、かつ、上記アスペクト比が大きいことによって、高周波伝送装置1を狭い空間に通すことが容易になり、その結果として自動車の車体などに実装することが容易になる。
【0051】
(表側のグランドパターン同士の間隔)
以下において、高周波伝送基板10a〜10dのそれぞれに設けられた各信号ライン12が伝送する高周波信号の実効波長のうち、最も短い実効波長をλ
1とする。各信号ライン12を挟み込む表面側のグランドパターン13の間隔、より具体的には、グランドパターン131とグランドパターン132との間隔を幅W
13とする。高周波伝送装置1において、幅W
13は、0.1×λ
1以下であることが好ましい。
【0052】
上記の構成によれば、信号ライン12とグランドパターン13とは、より良好なコプレナーウェーブガイドを形成する。したがって、信号ライン12間におけるクロストークをより低減することができる。
【0053】
(通風口)
また、
図1の(a)に示すように、筐体20は、その壁面に設けられた通風口22を備えていることが好ましい。通風口22は、特許請求の範囲に記載の筐体の壁面に形成された開口に対応する。本実施形態においては、筐体20は、その上側壁面に設けられた通風口22aと、その側方壁面に設けられた通風口22bとを備えている。
【0054】
そして、筐体20の上下壁面が水平面とおよそ平行になるように高周波伝送装置1を配置した場合、高周波伝送基板10の主面(表面及び裏面)は、鉛直方向と平行に配置されるように、4枚の高周波伝送基板10が筐体20に収容されている。
【0055】
上記の構成によれば、高周波伝送基板10同士を隔てる空間において空気の対流が起こりやすく、筐体20の内部の空気を循環させることができる。したがって、大電力の高周波信号が信号ライン12のそれぞれに入力される場合であっても、高周波伝送基板10を冷却することができる。
【0056】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係る高周波伝送装置について、
図3を参照して説明する。本実施形態に係る高周波伝送装置は、第1の実施形態に係る高周波伝送装置1が備えている高周波伝送基板10(
図1参照)を、
図3に示す高周波伝送基板30で置き換えたものである。以下では、本実施形態に係る高周波伝送基板30について説明する。なお、上述した高周波伝送基板10と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。また、
図3に示す高周波伝送基板30を筐体20に収容した本実施形態に係る高周波伝送装置3に関しては、その図示を省略する。
【0057】
高周波伝送基板30は、具体的には
図3に示すように構成されている。
図3の(a)は、高周波伝送基板30の構成を示す上面図である。
図3の(b)は、高周波伝送基板30の構成を示す断面図であって、
図3の(a)に示したB−B’線における断面図である。第1の実施形態に係る高周波伝送基板10と比較して、高周波伝送基板30の各々においては、信号ライン32に、信号ライン32が伝送する高周波信号を増幅する増幅器群35(特許請求の範囲に記載の増幅器)が挿入されている。
【0058】
本実施形態において、増幅器群35は、信号ライン32に挿入された増幅器であって初段の増幅器である増幅器351と、信号ライン32に挿入された増幅器であって次段の増幅器である増幅器352とを備えている。また、信号ライン32は、高周波信号を入力される入力側の信号ライン321と、増幅器351と増幅器352とを接続する信号ライン322と、高周波信号を出力する出力側の信号ライン323とを備えている。
【0059】
初段の増幅器351は、入力端子、出力端子、及び2つのグランド端子を備えている。増幅器351の入力端子は信号ライン321に接続されており、出力端子は信号ライン322に接続されており、2つのグランド端子は、それぞれグランドパターン131及びグランドパターン132に接続されている。
【0060】
また、次段の増幅器352も同様に、入力端子、出力端子、及び2つのグランド端子を備えている。増幅器352の入力端子は信号ライン322に接続されており、出力端子は信号ライン323に接続されており、2つのグランド端子は、それぞれグランドパターン131及びグランドパターン132に接続されている。
【0061】
初段の増幅器351は、信号ライン321から入力された高周波信号を所定のゲインで増幅した後に信号ライン322に出力する。次段の増幅器352は、増幅器351が増幅した高周波信号を、更に所定のゲインで増幅した後に信号ライン323に出力する。
【0062】
初段の増幅器351には、LNA(Low Noise Amplifier)と呼ばれるタイプの増幅器を用いることが好ましい。LNAは、ゲインが小さいものの発生するノイズが少ない増幅器であり、入力された第1高周波信号のS/N比をより向上させることができる。
【0063】
次段の増幅器352には、LNAと比較してゲインの大きな増幅器を用いることが好ましい。ゲインの大きな増幅器を用いることによって、高周波伝送基板30の後段、に好適な振幅を有する高周波信号を出力することができる。
【0064】
このように構成されていることによって、高周波伝送基板30は、信号ライン32に入力された高周波信号を伝送し、且つ、増幅して後段に出力することができる。換言すれば、高周波伝送基板30は、高周波増幅基板としても機能する。したがって、本実施形態に係る高周波伝送装置3は、高周波増幅装置としても機能する。
【0065】
高周波伝送基板30を平面視した場合に、表面側の信号ライン32と裏面側のグランドパターン14とが互いに対向している。したがって、
図3の(b)に示すように、高周波伝送基板30を断面視した場合に、信号ライン32に挿入された増幅器群35は、誘電体基板11を介してグランドパターン14に対向する。また、
図1の(a)から明らかなように、ある誘電体基板11の表面側に設けられた増幅器群35は、隣接する誘電体基板11の裏面側に設けられたグランドパターン14に対向する。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る高周波伝送装置3において、増幅器群35は、その上下方向からグランドパターン14によって挟み込まれている。また、増幅器群35は、その左右方向から筐体20の上下壁面によって囲まれている。
【0067】
増幅器群35がその四方を接地された導電体に囲まれていることによって、増幅器群35が高周波信号を増幅することに伴って生じるノイズや、増幅された高周波信号がつくる電界は、上記接地された導電体によって遮蔽される。したがって、本実施形態に係る高周波伝送装置3は、該ノイズなどが他の誘電体基板11上に設けられた信号ライン32が伝送する高周波信号に乗り移ることを抑制することができる。したがって、本実施形態に係る高周波伝送装置3のように信号ライン32に高周波信号を増幅する増幅器が挿入されている場合であっても、信号ライン32間に生じるクロストークを抑制することができる。
【0068】
また、筐体20の上下壁面が水平面とおよそ平行になるように高周波伝送装置3を配置した場合、高周波伝送基板30の主面(表面及び裏面)は、鉛直方向と平行に配置される。この場合、高周波伝送基板30同士を隔てる空間において空気の対流が起こりやすいので、高周波伝送基板30の放熱効率を高めることができ、結果として、増幅器群35の動作安定性が高まる。
【0069】
また、グランドパターン13及びグランドパターン14は、増幅器群35が高周波信号を増幅する際に発する熱を筐体20へ散逸させる散逸層としても機能する。したがって、増幅器群35の発熱量が多い場合であっても、増幅器群35を効率よく冷却することができる。
【0070】
また、本実施形態に係る高周波伝送装置3においても、筐体20は、壁面に設けられた通風口22を備えていることが好ましい。通風口22を備えていることによって、筐体20の内部の空気を循環することができるため、増幅器群35をより効率よく冷却することができる。
【0071】
このように増幅器群35をより効率よく冷却することができることによって、熱雑音によるS/N比の劣化を抑制することができる。
【0072】
なお、本実施形態において、増幅器群35は、2段の増幅器351,352によって構成されるものとして記載した。しかし、増幅器群35を構成する増幅器の段数は、2段に限定されるものではない。増幅器群35は、単独の増幅器によって構成されてもよいし、3段以上の増幅器によって構成されてもよい。
【0073】
〔第1の変形例〕
第2の実施形態の第1の変形例に係る高周波伝送装置について、
図4を参照して説明する。本変形例に係る高周波伝送装置4は、
図3に示す高周波伝送基板30における信号ライン32及び増幅器群35の配置を、
図4に示す高周波伝送基板40のように変形することによって得られる。以下では、本変形例に係る高周波伝送基板40について説明する。
【0074】
図4の(a)は、高周波伝送基板40の構成を示す上面図である。
図4の(b)は、本変形例に係る高周波伝送装置4の正面図であって、高周波伝送装置4に収容された4枚の高周波伝送基板40a,40b,40c,40dの配置を示す正面図である。高周波伝送装置4の正面図とは、高周波伝送装置4を、信号ライン42が延設されている方向である第1の方向(
図4の(b)に図示された座標系におけるy軸方向)の負方向側から見た場合に得られる平面図のことを意味する。なお、
図4の(b)においては、説明を分かりやすくするために筐体20を図示してない。これらは、後述する
図5、
図6及び
図9についても同様である。
【0075】
図4の(a)に示すように、高周波伝送基板40の誘電体基板11の表面側には、信号ライン42と、信号ライン42を挟み込むように設けられたグランドパターン43と、信号ライン42に挿入された増幅器群45とが設けられている。信号ライン42は、信号ライン421,422,423からなる。増幅器群45は、初段の増幅器451と次段の増幅器452とからなる。高周波伝送基板40の誘電体基板11の裏面側には、信号ライン42に対向するグランドパターン14が設けられている。
【0076】
高周波伝送基板40において、表面側のグランドパターン43のうち、一方のグランドパターン431の幅は、他方のグランドパターン432の幅より広くなるように形成されている。
【0077】
高周波伝送基板40が高周波伝送装置4の筐体20に収容された場合、
図4の(b)に示すように、増幅器群45(増幅器451,452)は、筐体20の内部における低い位置に配置される。換言すれば、複数の高周波伝送基板40は、表面及び裏面が
図4の(b)に図示された座標系におけるxy面と平行になるように配置されており、複数の高周波伝送基板40の各々において、信号ライン42はy軸方向に延設されており、複数の高周波伝送基板40の各々において信号ライン42に挿入された増幅器群45(特許請求の範囲に記載の増幅器)は、x軸方向に偏心して配置されている。
【0078】
この場合、高周波伝送基板40において放熱フィンとして機能するグランドパターン431の幅は、
図3に示した高周波伝送基板30が備えるグランドパターン131の幅と比較して広い。したがって、グランドパターン431は、より効率よく増幅器群45の熱を空気中に散逸させ、より効率よく増幅器群45を冷却することができる。
【0079】
また、筐体20の内部において、増幅器群45が発する熱によって暖められた空気は筐体20の内部の高い位置に対流し、筐体20の内部の低い位置には、筐体20の外部からより冷たい空気が流れ込んでくる。
【0080】
したがって、高周波伝送装置4によれば、筐体20の内部のより温度が低い位置に増幅器群45を配置することができる。したがって、増幅器群45の無用な温度の上昇を避けることができる。
【0081】
〔第2の変形例〕
第2の実施形態の第2の変形例に係る高周波伝送装置について、
図5を参照して説明する。本変形例に係る高周波伝送装置5は、
図3に示す高周波伝送基板30における信号ライン32及び増幅器群35の配置を、
図5に示す高周波伝送基板50のように変形することによって得られる。以下では、本変形例に係る高周波伝送基板50について説明する。
【0082】
図5の(a)及び(b)は、高周波伝送基板50の構成を示す上面図である。
図5の(c)は、本変形例に係る高周波伝送装置5の構成を示す正面図(筐体20を図示せず)であって、高周波伝送装置5に収容された4枚の高周波伝送基板50a,50b,50c,50dの配置を示す正面図である。
【0083】
図5の(a)及び(c)に示すように、高周波伝送基板50a,50cの誘電体基板11の表面側には、信号ライン52aと、信号ライン52aを挟み込むように設けられたグランドパターン53aと、信号ライン52aに挿入された増幅器群55aとが設けられている。信号ライン52aは、信号ライン521,522,523からなる。増幅器群55aは、初段の増幅器551と次段の増幅器552とからなる。高周波伝送基板50a,50cの誘電体基板11の裏面側には、信号ライン52aに対向するグランドパターン14が設けられている。
【0084】
高周波伝送基板50a,50cにおいて、表面側のグランドパターン53aのうち、一方のグランドパターン531の幅は、他方のグランドパターン532の幅より広くなるように形成されている。
【0085】
一方、
図5の(b)及び(c)に示すように、高周波伝送基板50b,50dの誘電体基板11の表面側には、信号ライン52bと、信号ライン52bを挟み込むように設けられたグランドパターン53bと、信号ライン52bに挿入された増幅器群55bとが設けられている。信号ライン52bは、信号ライン524,525,526からなる。増幅器群55bは、初段の増幅器553と次段の増幅器554とからなる。高周波伝送基板50b,50dの誘電体基板11の裏面側には、信号ライン52bに対向するグランドパターン14が設けられている。
【0086】
高周波伝送基板50b,50dにおいて、表面側のグランドパターン53bのうち、一方のグランドパターン533の幅は、他方のグランドパターン534の幅より狭くなるように形成されている。
【0087】
高周波伝送基板50が高周波伝送装置5の筐体20に収容された場合、
図5の(b)に示すように、高周波伝送基板50a,50cの増幅器群55a(増幅器551,552)は、筐体20の内部における低い位置に配置され、高周波伝送基板50b,50dの増幅器群55b(増幅器553,554)は、筐体20の内部の高い位置に配置される。
【0088】
換言すれば、複数の高周波伝送基板50は、表面及び裏面が
図5の(b)に図示された座標系におけるxy面と平行になるように配置されており、複数の高周波伝送基板50の各々において、信号ライン52a,52bはy軸方向に延設されており、複数の高周波伝送基板50の各々において信号ライン52a,52bにそれぞれ挿入された増幅器群55a,55b(特許請求の範囲に記載の増幅器)は、x軸方向にずれて配置されている。
【0089】
上記の構成によれば、第2の実施形態に係る高周波伝送装置3及び第1の変形例に係る高周波伝送装置4と比較して、隣接した誘電体基板11に配置された各増幅器(増幅器群55a及び増幅器群55b)間の距離を遠ざけることができる。
【0090】
したがって、高周波伝送装置5は、隣接した誘電体基板11に配置された各増幅器(増幅器群55a及び増幅器群55b)間における熱の影響を更に抑制することができる。結果として、熱雑音によるS/N比の劣化を更に抑制することができる。
【0091】
〔第3の変形例〕
第2の実施形態の第3の変形例に係る高周波伝送装置について、
図6を参照して説明する。本変形例に係る高周波伝送装置6は、
図3に示す高周波伝送基板30における信号ライン32及び増幅器群35の配置を、
図6の(a)及び(b)に示す高周波伝送基板60のように変形することによって得られる。換言すると、本変形例に係る高周波伝送装置6は、
図5に示す第2の変形例に係る高周波伝送装置5に収容されている高周波伝送基板50a,50b,50c,50dを、
図6の(a)及び(b)に示す高周波伝送基板60a,60b,60c,60dに置き換えたものであり、第2の変形例に係る高周波伝送基板50における増幅器群55a,55bを、信号ライン52a,52bが延設されている方向である第1の方向にずらして配置することによって得られる。以下では、本変形例に係る高周波伝送基板60について説明する。
【0092】
図6の(a)及び(b)は、高周波伝送基板60の構成を示す上面図である。
図6の(c)は、本変形例に係る高周波伝送装置6の構成を示す側面図(筐体20を図示せず)であって、高周波伝送装置6に収容された4枚の高周波伝送基板60a,60b,60c,60dに配置された増幅器群65a,65bのxy面上の相対関係を示す側面図である。
【0093】
図6の(a)に示すように、高周波伝送基板60a,60cの誘電体基板11の表面側には、信号ライン62aと、信号ライン62aを挟み込むように設けられたグランドパターン53aと、信号ライン62aに挿入された増幅器群65aとが設けられている。信号ライン62aは、信号ライン621,622,623からなる。増幅器群65aは、初段の増幅器651と次段の増幅器652とからなる。高周波伝送基板60a,60cの誘電体基板11の裏面側には、信号ライン62aに対向するグランドパターン14が設けられている。高周波伝送基板60a,60cにおいて、増幅器群65aがy軸負方向側に偏心して配置されている。
【0094】
一方、
図6の(b)に示すように、高周波伝送基板60b,60dの誘電体基板11の表面側には、信号ライン62bと、信号ライン62bを挟み込むように設けられたグランドパターン53bと、信号ライン62bに挿入された増幅器群65bとが設けられている。信号ライン62bは、信号ライン624,625,626からなる。増幅器群65bは、初段の増幅器653と次段の増幅器654とからなる。高周波伝送基板60b,60dの誘電体基板11の裏面側には、信号ライン62bに対向するグランドパターン14が設けられている。高周波伝送基板60b,60dにおいて、増幅器群65bがy軸正方向側に偏心して配置されている。
【0095】
換言すれば、複数の高周波伝送基板60は、表面及び裏面が
図6の(b)に図示された座標系におけるxy面と平行になるように配置されており、複数の高周波伝送基板60の各々において、信号ライン62a,62bはy軸方向に延設されており、複数の高周波伝送基板60の各々において信号ライン62a,62bにそれぞれ挿入された増幅器群65a,65b(特許請求の範囲に記載の増幅器)は、x軸方向及びy軸方向にずれて配置されている。増幅器群65a,65bがx軸方向及びy軸方向に互いにずれて配置されていることによって、
図6の(c)の側面図に示すように増幅器群65aと増幅器群65bとの距離をより遠ざけることができる。
【0096】
したがって、高周波伝送装置6によれば、隣接した誘電体基板11に配置された各増幅器(増幅器群65a及び増幅器群65b)間における熱の影響を、第2の変形例に係る高周波伝送装置5に比べて更に抑制することができる。結果として、熱雑音によるS/N比の劣化を更に抑制することができる。
【0097】
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態に係る高周波伝送装置について、
図7を参照して説明する。
図7の(a)は、本実施形態に係る高周波伝送装置7が備えている高周波伝送基板70の構成を示す上面図である。
図7の(b)は、高周波伝送基板70の構成を示す断面図であって、
図7の(a)に示したC−C’線における断面図である。
【0098】
本実施形態に係る高周波伝送装置7は、第1の実施形態に係る高周波伝送装置1が備えている高周波伝送基板10(
図1参照)を、
図7に示す高周波伝送基板70で置き換えたものである。以下では、本実施形態に係る高周波伝送基板70について説明する。なお、上述した高周波伝送基板10と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。また、
図7に示す高周波伝送基板70を筐体20に収容した本実施形態に係る高周波伝送装置7に関しては、その図示を省略する。
【0099】
図7の(a)に示すように、高周波伝送基板70は、第1の実施形態に係る高周波伝送基板10と比較して、表面側のグランドパターン131,132の信号ラインに対向する辺に沿って柵状に配置された短絡ポスト群16aを更に備えている点が異なる。短絡ポスト群16aは、複数の短絡ポスト16ai(iは正の整数)からなる。
【0100】
また、高周波伝送基板70の各々は、誘電体基板71の表面側のグランドパターン13を構成する4辺のうち筐体20の把持部21によって把持される辺に沿って柵状に配置された短絡ポスト群16bを備えていてもよい。短絡ポスト群16bは、複数の短絡ポスト16bi(iは正の整数)からなる。
【0101】
短絡ポスト群16a,16bは、何れも、表側のグランドパターン13と裏側のグランドパターン14とを短絡する。なお、本実施形態において、短絡ポスト群16a,16bを区別する必要がない場合には、単に短絡ポスト群16と総称する。
【0102】
短絡ポスト群16を構成する複数の短絡ポストの各々は、誘電体基板71を貫通するように形成されたスルーホールの内側に充填された導電体、又は、上記スルーホールの内壁に形成された導電体からなる。短絡ポスト群16の上端は、グランドパターン13に接触し、短絡ポスト群16の下端は、グランドパターン14に接触している。すなわち、短絡ポスト群16は、互いに対向するグランドパターン13とグランドパターン15とを短絡する。
【0103】
複数の短絡ポスト群16aが信号ライン12を挟み込むグランドパターン131とグランドパターン132とをグランドパターン14を介して短絡することによって、短絡ポスト群16aを備えない場合と比較して、コプレナーウェーブガイドにおけるグランドパターンとして機能するグランドパターン131,132の電位を互いによく一致させることができる。
【0104】
上記の構成によれば、信号ライン12とグランドパターン131,132とからなるコプレナーウェーブガイドの伝送特性をより向上させることができる。
【0105】
また、複数の短絡ポスト群16bを備えていることによって、グランドパターン13は、信号ライン12に対向する辺に加えて、筐体20の把持部21によって把持される辺に沿ってグランドパターン14と短絡される。したがって、グランドパターン13とグランドパターン14とをより多くの短絡ポストで短絡できるため、グランドパターン13の電位分布とグランドパターン14の電位分布をより均一にすることができる。
【0106】
(短絡ポスト同士の間隔)
ここでは、4枚の高周波伝送基板70の各々が備える信号ライン12が伝送する高周波信号の実効波長のうち最も短い実効波長をλ
1とする。また、
図7の(a)及び(b)に示すように、短絡ポスト群16aに属する2つの短絡ポストのうち、信号ライン12を介して対向する2つの短絡ポスト16a
iの中心軸間隔を幅W
16axとする。高周波伝送装置7において、幅W
16axは、0.1×λ
1以下であることが好ましい。
【0107】
上記の構成によれば、信号ライン12を伝送する高周波信号は、その信号ライン12を挟み込むグランドパターン131,132が一点接地されているものと見なすことができる。したがって、高周波伝送基板70は、高周波伝送基板10と比較してよりよいコプレナーウェーブガイドとして機能する。
【0108】
また、
図7の(a)に示すように、短絡ポスト群16aに属する2つの短絡ポストのうち表面側のグランドパターン13の同一の辺に沿って配置された互いに隣接する2つの短絡ポスト16a
i,16a
i+1の中心軸間隔を幅W
16ayとする。高周波伝送装置7において、幅W
16ayは、0.1×λ
1以下であることが好ましい。
【0109】
上記の構成によれば、信号ライン12に沿った一対の短絡ポスト群である短絡ポスト群16aは、信号ライン12が伝送する高周波信号がつくる電界の遮蔽壁として機能する。したがって、短絡ポスト群16aは、信号ライン12が伝送する高周波信号と、隣接する誘電体基板71に設けられた信号ライン12が伝送する高周波信号とにおけるクロストークを更に抑制することができる。
【0110】
なお、本実施形態においては、短絡ポスト群16bに属する2つの短絡ポストのうち互いに隣接する2つの短絡ポストの中心軸間隔は、幅W
16ayと等しいように構成されている。
【0111】
〔第4の実施形態〕
本発明の第4の実施形態に係る高周波伝送装置について、
図8を参照して説明する。
図8は、本実施形態に係る高周波伝送装置8が備えている高周波伝送基板80の構成を示す上面図である。本実施形態に係る高周波伝送装置8は、第1の実施形態に係る高周波伝送装置1が備えている高周波伝送基板10(
図1参照)を、
図8に示す高周波伝送基板80で置き換えたものである。以下では、本実施形態に係る高周波伝送基板80について説明する。なお、上述した高周波伝送基板10と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。また、
図8に示す高周波伝送基板80を筐体20に収容した本実施形態に係る高周波伝送装置8に関しては、その図示を省略する。
【0112】
本実施形態に係る高周波伝送基板80は、第1の変形例に係る高周波伝送基板40に切欠801を追加することによって得られる。具体的には、
図8に示すように、高周波伝送基板80の各々には、誘電体基板81の表面側の空間と裏面側の空間とを連通させるための切欠801が形成されている。
【0113】
以上のように、高周波伝送基板80が切欠801を備えていることによって、表面側の空間の空気と裏面側の空間の空気とは、互いに対流可能となる。換言すれば、4枚の高周波伝送基板80が筐体20に収容された高周波伝送装置8において、筐体20の内部の空間であって、4枚の高周波伝送基板80によって区切られた空間は、すべて連通した状態になる。また、筐体20の壁面に形成された通風口22を介して、筐体20の内部の空間と外部の空間とは、連通した状態になる。
【0114】
このように構成された高周波伝送装置8によれば、筐体20の外部に存在する冷たい空気は、(1)筐体20の側面に設けられた通風口22bから筐体20の内部に流入し、(2)高周波伝送基板80に設けられた切欠801を介して上記4枚の高周波伝送基板80によって区切られた空間のそれぞれに拡散する。
【0115】
上記4枚の高周波伝送基板80によって区切られた空間に拡散した冷たい空気は、主たる発熱源である増幅器群45を冷却することによって暖かい空気に変化する。この暖かい空気は、(3)上記4枚の高周波伝送基板80によって区切られた空間の上部に対流し、(4)筐体20の上面に設けられた通風口22aから筐体20の外部に排出される。
【0116】
したがって、高周波伝送装置8は、筐体20の内部において発生する熱(主に増幅器群45が発生する熱)を効率よく筐体20の外部に排出することができる。換言すれば、高周波伝送装置8は、効率よく高周波伝送基板80(主に増幅器群45)を冷却することができる。
【0117】
本実施形態において、高周波伝送基板80の各々は、3個の切欠801を備えている。しかし、高周波伝送基板80の各々が備える切欠801の数は、3個に限定されるものではない。
【0118】
また、本実施形態において、切欠801は、高周波伝送基板80の2つの長辺(筐体20の把持部21によって把持される辺)のうち一方の辺から切り込むように形成されている。しかし、高周波伝送基板80は、切欠801の代わりに、誘電体基板81の表面側の空間と裏面側の空間とを連通させるための開口を備えていてもよい。なお、切欠801及び高周波伝送基板80に形成された開口の形状は、矩形に限定されるものではない。
【0119】
また、本実施形態において、切欠801は、信号ライン42を挟み込むグランドパターン83の一方のグランドパターン831にのみ設けられている。しかし、切欠801は、グランドパターン83の両方のグランドパターン831,832に設けられていてもよい。
【0120】
〔第5の実施形態〕
本発明の第5の実施形態に係る高周波伝送装置について、
図9を参照して説明する。
図9の(a)は、本実施形態に係る高周波伝送装置9が備えている高周波伝送基板90の構成を示す上面図である。
図9の(b)は、高周波伝送装置9の構成を示す正面図(筐体20を図示せず)であって、高周波伝送装置9に収容された4枚の高周波伝送基板90の配置を示す正面図である。
【0121】
本実施形態に係る高周波伝送装置は、第1の実施形態に係る高周波伝送装置1が備えている高周波伝送基板10(
図1参照)を、
図9に示す高周波伝送基板90で置き換えたものである。以下では、本実施形態に係る高周波伝送基板90について説明する。
【0122】
本実施形態に係る高周波伝送基板90は、第1の実施形態に係る高周波伝送基板10と比較して、誘電体基板の表裏に、それぞれ信号ラインが設けられている点が異なる。以下では、この点について
図9を参照して説明する。
【0123】
高周波伝送基板90の誘電体基板91は、信号ライン92と、グランドパターン93と、信号ライン96と、グランドパターン97とを備えている。
【0124】
信号ライン92は、誘電体基板91の表面に設けられた信号ラインであって、
図9の(a)に図示された座標系のy軸方向に延伸する信号ラインである。
【0125】
グランドパターン93は、誘電体基板91の表面に設けられたグランドパターンであって、信号ライン92を挟み込むように設けられている。グランドパターン93は、グランドパターン931,932からなる。
【0126】
信号ライン96は、誘電体基板91の裏面に設けられた信号ラインであって、
図9の(a)に図示された座標系のy軸方向に延伸する信号ラインである。
【0127】
グランドパターン97は、誘電体基板91の裏面に設けられたグランドパターンであって、信号ライン96を挟み込むように設けられている。グランドパターン97は、グランドパターン971,972からなる。
【0128】
図9の(a)及び(b)に示すように、信号ライン92は、誘電体基板91を介してグランドパターン972に対向しており、信号ライン96は、誘電体基板91を介してグランドパターン931に対向している。
【0129】
したがって、高周波伝送基板90を第1の実施形態に係る高周波伝送基板10と比較した場合に、誘電体基板91は、裏面側に配置された高周波信号を伝送する信号ライン96を更に備え、裏面側の信号ライン96は、裏面側のグランドパターン97に挟み込まれるとともに、表面側のグランドパターン93に対向するとも表現できる。
【0130】
図9の(b)に示すように、4枚の高周波伝送基板90のうち高周波伝送基板90a〜90cにおいて、表面側の信号ライン92は、(1)その上下方向(
図9の(b)に図示された座標系におけるz軸方向)を裏面側のグランドパターン972によって挟まれており、(2)その左右方向(
図9の(b)に図示された座標系におけるx軸方向)を表面側のグランドパターン93によって挟み込まれている。
【0131】
また、4枚の高周波伝送基板90のうち高周波伝送基板90dにおいて、表面側の信号ライン92は、(1)その上下方向を裏面側のグランドパターン972と筐体20の壁面とによって挟まれており、(2)その左右方向(
図9の(b)に図示された座標系におけるx軸方向)を表面側のグランドパターン93によって挟み込まれている。
【0132】
したがって、高周波伝送基板90の表面側の信号ライン92は、その四方を接地された導電体によって囲まれていると表現できる。
【0133】
一方、4枚の高周波伝送基板90の裏面側の信号ライン96についても、表面側の信号ライン92と等価に構成されているため、裏面側の信号ライン96は、その四方を接地された導電体によって囲まれていると表現できる。
【0134】
また、信号ライン92がグランドパターン97に対向し、信号ライン96がグランドパターン93に対向するため、信号ライン92と信号ライン96とは、対向しない。したがって、隣接する高周波伝送基板90のそれぞれに形成された信号ライン92と信号ライン96との距離は、隣接する高周波伝送基板90のそれぞれに形成された表面側の信号ラインと裏面側の信号ラインとが対向する場合と比較して離れている。
【0135】
上記の構成によれば、信号ライン92,96の四方が接地された導電体によって囲まれており、且つ、信号ライン92,96間の距離が離れているため、信号ライン92,96間に生じ得るクロストークを抑制することができる。
【0136】
また、4枚の高周波伝送基板90を備えた高周波伝送装置9は、誘電体基板91の表裏にそれぞれ信号ライン92,96を備えるため、第1の実施形態に係る高周波伝送装置1と比較して2倍の数の信号ラインを備えている。換言すれば、本実施形態に係る高周波伝送装置9は、第1の実施形態に係る高周波伝送装置1(
図1参照)と同じサイズでありながら信号ラインの実装密度を2倍に高めることができる。
【0137】
別の言い方をすれば、
図1に示す高周波伝送装置1と同じ数の信号ラインを備えた高周波伝送装置を、
図9に示す高周波伝送基板90を用いて実現する場合、該高周波伝送装置は、2枚の高周波伝送基板90を備えていればよい。したがって、上記高周波伝送装置は、信号ラインの数を減らすことなくそのサイズを更に小型化することができる。
【0138】
以上のように、本実施形態に係る高周波伝送装置は、第1の実施形態に係る高周波伝送装置1と比較して、信号ライン間に生じるクロストークを抑制しつつ、信号ラインの実装密度を2倍に高めることができる。別の言い方をすれば、信号ライン間に生じるクロストークを抑制しつつ、そのサイズを更に小型化することができる。
【0139】
なお、本実施形態に係る高周波伝送装置において、第2〜第4の各実施形態に記載したように、信号ラインのそれぞれには、増幅器(又は増幅器群)が挿入されていてもよい。
【0140】
信号ライン92,96のそれぞれに増幅器が挿入されている場合、これらの増幅器が誘電体基板91の表裏両面にバランスよく配置される。したがって、発熱源である増幅器が誘電体基板91の片面に集中することがないため、誘電体基板91の熱収縮による反りという課題を解決できる。また、誘電体基板91の表裏両面にバランスよく増幅器が配置されるため、誘電体基板の片面の温度が上昇することに起因して増幅器の動作が不安定になる、及び、増幅器における熱雑音が増加して高周波信号のS/N比が劣化するという課題を解決することができる。
【0141】
(内層)
また、高周波伝送基板90の誘電体基板91は、
図9の(b)に示すように、第1の誘電体層911と第2の誘電体層912とを隔てる内層913を備えていることが好ましい。内層913は、導電体からなる薄膜又は薄板であって、把持部21を介して接地されている。すなわち、内層913は、グランドとして機能する。
【0142】
誘電体基板91に設けられた内層913は、誘電体基板91の表裏に設けられた信号ライン92と信号ライン96とを、電磁気的に遮蔽する。したがって、誘電体基板91が内層913を備えていることによって、同じ誘電体基板91に設けられた信号ライン92,96間のクロストークを抑制することができる。
【0143】
〔本発明の適用例〕
本発明の適用例について、
図10を参照しながら説明する。
図10の(a)は、第2の実施形態に係る高周波伝送装置3を含む高周波信号送信システム100の構成を示すブロック図であり、
図10の(b)は、高周波伝送装置3を含む高周波信号送受信システム110の構成を示すブロック図である。
【0144】
高周波信号送信システム100は、基地局から送信された高周波信号を受信するアンテナ101と、アンテナ101が受信した高周波信号を受信する受信機102と、アンテナ101から受信機102へ高周波信号を伝送する伝送ケーブル103とを備えている(
図10の(a)参照)。伝送ケーブル103は、メタルケーブルであってもよいし、アクティブ光ケーブルであってもよい。
【0145】
このような高周波信号送信システム100において、高周波伝送装置3は、アンテナ101と伝送ケーブル103との接続部、及び、伝送ケーブル103と受信機102との接続部に挿入して利用することができる。
【0146】
なお、本適用例では、信号ラインが伝送する高周波信号を増幅する増幅器を含む高周波伝送基板30(
図3参照)を筐体20に収容した高周波伝送装置3を例として説明しているが、
図3に示す高周波伝送基板30の代わりに、増幅器を含まない高周波伝送基板を筐体20に収容した高周波伝送装置を適用することもでき、例えば、
図1及び
図2に示す高周波伝送基板10を筐体20に収容した第1の実施形態に係る高周波伝送装置1や、
図9に示す高周波伝送基板90を筐体20に収容した第5の実施形態に係る高周波伝送装置9を上述の高周波信号送信システムに適用することもできる。その場合は、高周波伝送装置1及び9の後段に別個の増幅器を挿入してもよい。
【0147】
もちろん、その他にも、
図7に示す高周波伝送基板70を筐体20に収容した第3の実施形態に係る高周波伝送装置7や、
図8に示す高周波伝送基板80を筐体20に収容した第4の実施形態に係る高周波伝送装置8を上述の高周波信号送信システムに適用することもできる。
【0148】
また、高周波信号送受信システム110は、アンテナ111と、高周波送受信機112と、伝送ケーブル113a、113bと、デュプレクサ114とを備えている。アンテナ111は、高周波信号を送受信可能なアンテナである。高周波送受信機112は、アンテナ111が受信した高周波信号を受信し、また、アンテナ111を介して送信する高周波信号を生成する。伝送ケーブル113aは、アンテナ111から高周波送受信機112へ高周波信号を伝送する伝送ケーブルであり、伝送ケーブル113bは、高周波送受信機112からアンテナ111へ高周波信号を伝送する伝送ケーブルである。デュプレクサ114は、高周波信号の受信経路と送信経路とを電気的に分離し、アンテナ111の共用を可能にするものである。
【0149】
このような高周波信号送受信システム110においても、高周波伝送装置3は、デュプレクサ114と伝送ケーブル113aとの接続部、伝送ケーブル113aと高周波送受信機112との接続部、高周波送受信機112と伝送ケーブル113bとの接続部、及び、伝送ケーブル113bとデュプレクサ114との接続部に挿入して利用することができる。
【0150】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0151】
〔まとめ〕
信号ライン間に生じるクロストークを抑制しつつ、その実装に要する面積を小さくするために、本発明の一実施形態に係る高周波伝送装置は、複数の高周波伝送基板と、上記複数の高周波伝送基板を収容する筐体とを備え、上記複数の高周波伝送基板の各々は、誘電体基板と、該誘電体基板の表面に形成された信号ラインと、該信号ラインと対向するように該誘電体基板の裏面に形成されたグランドパターンとを備えており、上記複数の高周波伝送基板は、互いに隣接する2つの高周波伝送基板のうち、一方の高周波伝送基板の信号ラインが他方の高周波伝送基板のグランドパターンに対向するように、上記筐体により支持されていることを特徴とする。
【0152】
上記の構成によれば、複数の高周波伝送基板が重ねて配置される。したがって、複数の高周波伝送基板が並べて配置される場合と比べて、高周波信号伝送装置の実装に要する面積を小さくすることができる。しかも、各高周波伝送基板の信号ラインは、該高周波伝送基板のグランドパターンと、該高周波伝送基板に隣接する高周波伝送基板のグランドパターンとに挟まれ、これら2つのグランドパターンにより遮蔽されている。したがって、各高周波伝送基板の信号ライン間のクロストークを抑制することができる。
【0153】
したがって、本高周波伝送装置は、複数の信号ラインを備えた高周波伝送装置において、信号ライン間に生じるクロストークを抑制しつつ、その実装に要する面積を小さくすることができる。
【0154】
また、本発明の一実施形態に係る高周波伝送装置において、上記複数の高周波伝送基板の各々は、上記誘電体基板の表面に形成されたグランドパターンであって、上記信号ラインを挟み込むように配置された1対のグランドパターンを更に備えていることが好ましい。
【0155】
上記の構成によれば、誘電体基板の表面に形成された信号ラインと、1対のグランドパターンとにより、コプレナーウェーブガイドを構成することができる。
【0156】
また、本発明の一実施形態に係る高周波伝送装置において、上記複数の高周波伝送基板の各々において、上記信号ラインが伝送する高周波信号の実効波長をλ
1として、該信号ラインを挟み込む上記1対のグランドパターンの間隔は、0.1×λ
1以下であることが好ましい。
【0157】
上記の構成によれば、誘電体基板の表面に形成された信号ライン及び1対のグランドパターンは、良好なコプレナーウェーブガイドとして機能する。したがって、上記高周波伝送基板は、表面側の信号ラインと裏面側の信号ラインとにおけるクロストークをより抑制することができる。
【0158】
また、本発明の一実施形態に係る高周波伝送装置において、上記複数の高周波伝送基板の各々は、上記1対のグランドパターンの上記信号ラインに対向する辺に沿って柵状に配置された短絡ポストであって、上記1対のグランドパターンと上記グランドパターンとを短絡する短絡ポスト群を更に備えていることが好ましい。
【0159】
上記の構成によれば、信号ラインを挟み込む1対のグランドパターンは、裏面に形成されたグランドパターンを介して短絡される。そのため、信号ラインを挟み込む1対のグランドパターンの電位は、信号ラインの近傍領域においてよりよく一致する。これにより、本高周波伝送回路は、よりよいコプレナーウェーブガイドとして機能する。
【0160】
また、本発明の一実施形態に係る高周波伝送装置において、上記複数の高周波伝送基板の各々において、上記信号ラインが伝送する高周波信号の実効波長をλ
1として、上記短絡ポスト群に属する2つの短絡ポストのうち、上記信号ラインを介して対向する2つの短絡ポストの中心軸間隔は、0.1×λ
1以下であることが好ましい。
【0161】
上記の構成によれば、信号ラインの各々を挟み込む2つのグランドパターンを一点接地された状態と見なすことができる。これにより、本高周波伝送回路は、よりよいコプレナーウェーブガイドとして機能する。
【0162】
また、本発明の一実施形態に係る高周波伝送装置において、上記複数の高周波伝送基板の各々において、上記信号ラインが伝送する高周波信号の実効波長をλ
1として、上記短絡ポスト群に属する2つの短絡ポストのうち、上記1対のグランドパターンの同一の辺に沿って配置された互いに隣接する2つの短絡ポストの中心軸間隔は、0.1×λ
1以下であることが好ましい。
【0163】
上記の構成によれば、短絡ポスト群は、信号ラインが伝送する高周波信号がつくる電界の遮蔽壁として機能する。これにより、信号ラインが伝送する高周波信号が、隣接する高周波伝送基板の誘電体基板に設けられた信号ラインが伝送する別の高周波信号に乗り移ることを抑制することができる。したがって、本高周波伝送装置は、信号ライン間のクロストークを更に抑制することができる。
【0164】
また、本発明の一実施形態に係る高周波伝送装置においては、上記複数の高周波伝送基板の各々において、上記信号ラインに、該信号ラインが伝送する高周波信号を増幅する増幅器が挿入されていることが好ましい。
【0165】
上記の構成によれば、表面側の信号ラインが伝送する高周波信号を増幅することができる。すなわち、本高周波伝送装置は、高周波増幅装置としても機能する。
【0166】
また、本発明の一実施形態に係る高周波伝送装置において、上記複数の高周波伝送基板の各々は、上記誘電体基板の表面及び裏面がxy面と平行になるように配置されており、上記複数の高周波伝送基板の各々において、上記信号ラインはy軸方向に延設されており、上記複数の高周波伝送基板の各々において上記信号ラインに挿入された増幅器は、x軸方向及び/又はy軸方向にずれて配置されていることが好ましい。
【0167】
上記の構成によれば、隣接する高周波伝送基板のそれぞれに設けられている増幅器同士の距離を遠ざけることができる。これによれば、隣接する誘電体基板のそれぞれに設けられている増幅器同士における熱の影響を更に抑制することができるため、熱雑音によるS/N比の劣化を更に抑制することができる。
【0168】
また、本発明の一実施形態に係る高周波伝送装置において、上記複数の高周波伝送基板の各々には、該高周波伝送基板の表面側の空間と裏面側の空間とを連通させるための開口又は切欠が形成されていることが好ましい。
【0169】
上記の構成によれば、筐体の内部の空間であって、誘電体基板によって区切られている空間は、互いに連通する。これによれば、誘電体基板によって区切られている空間同士における空気の流れが促進されるため、筐体の内部の各部をより効率よく冷却することができる。
【0170】
また、本発明の一実施形態に係る高周波伝送装置において、上記複数の高周波伝送基板の各々は、上記誘電体基板の表面及び裏面が鉛直方向と平行になるように配置されており、上記筐体の壁面には、開口が形成されていることが好ましい。
【0171】
上記の構成によれば、筐体の外部の冷たい空気は、筐体の開口を介して容易に筐体の内部に流入できる。また、筐体の内部において高周波伝送基板によって暖められた空気は、筐体の開口を介して容易に筐体の外部に流出できる。これによれば、筐体内外の空気の自然対流(鉛直方向の循環)が容易になるため、高周波伝送基板をより効率よく冷却することができる。
【0172】
また、本発明の一実施形態に係る高周波伝送装置において、上記筐体は、導電体からなり接地され、上記複数の高周波伝送基板の各々は、上記グランドパターンが上記筐体を介して接地されていることが好ましい。
【0173】
上記の構成によれば、複数の高周波伝送基板の各々が備える信号ラインは、その四方を接地された導電体に囲まれる。これにより、遮蔽効果をより向上することができる。
【0174】
なお、本明細書において「A及び/又はB」は、「A及びB」及び「A又はB」の双方を表す。また、本明細書において「A且つ/又はB」は、「A且つB」及び「A又はB」の双方を表す。