特許第6633182号(P6633182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633182
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】セルロース微細繊維およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/18 20060101AFI20200109BHJP
   D21H 15/02 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   D21H11/18
   D21H15/02
【請求項の数】11
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-506024(P2018-506024)
(86)(22)【出願日】2017年3月16日
(86)【国際出願番号】JP2017010789
(87)【国際公開番号】WO2017159823
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2018年9月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-52542(P2016-52542)
(32)【優先日】2016年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-86124(P2016-86124)
(32)【優先日】2016年4月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】林 蓮貞
(72)【発明者】
【氏名】丸田 彩子
(72)【発明者】
【氏名】堀 正典
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−043984(JP,A)
【文献】 特開昭54−116412(JP,A)
【文献】 特開昭61−296037(JP,A)
【文献】 特開2010−104768(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/010016(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00〜D21J7/00
C08B1/00〜37/18
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナー数26以上の非プロトン性溶媒と、カルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒドとを含む解繊溶液をセルロースに浸透させて、セルロースを解繊することを含むセルロース微細繊維の製造方法であって、
該アルデヒドが、下記式(1)で表されるアルデヒド、シンナムアルデヒド、ペリルアルデヒド、バニリンおよびグリオキサールからなる群より選択される少なくとも1種のアルデヒドであり、
該解繊溶液が酸触媒または塩基触媒をさらに含み、
該酸触媒または塩基触媒の含有割合が、解繊溶液全体に対して0.001重量%〜30重量%である、製造方法:
−CHO (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表わす)。
【請求項2】
前記カルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒドの含有割合が、解繊溶液全体に対して0.05重量%〜50重量%である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ドナー数26以上の非プロトン性溶媒が、スルホキシド類、ピリジン類、ピロリドン類およびアミド類からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記アルデヒドが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、イソブタナール、2−メチルブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、アクロレイン、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、ペリルアルデヒド、バニリンおよびグリオキサールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記カルボン酸ビニルエステルが、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルアジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、安息香酸ビニルおよび桂皮酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記カルボン酸ビニルエステルが、下記式(2)で表される化合物である、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法:
−COO−CH=CH (2)
(式中、Rは炭素数1〜24のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基またはアリール基を表わす)。
【請求項7】
前記解繊溶液がセルロース修飾反応化剤をさらに含む、請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記セルロース修飾反応化剤がカルボン酸ハロゲン化物類、カルボン酸無水物類、カルボン酸、イソシアネート類、エポキシ類およびハロゲン化アルキルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記酸触媒がパラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸ピリジウム、無機酸および有機酸からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1から8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記塩基触媒がアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸水素塩、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のカルボン酸塩、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のホウ酸塩、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のリン酸塩、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のリン酸水素塩、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のテトラアルキルアンモニウム酢酸塩、ピリジン類、イミダゾール類およびアミン類からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1から9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
セルロースと前記解繊溶液との重量比が、0.5/99.5〜25/75である、請求項1から10のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース微細繊維およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース繊維(細胞壁単位)は、セルロース微細繊維(ミクロフィブリル)の集合体である。ミクロフィブリルは鋼鉄に匹敵する機械特性を持ち、直径約2nm〜20nmのナノ構造を持つため補強材として社会的に熱く注目されている。しかし、微細繊維は繊維間が水素結合により結束されている。そのため、微細繊維を取り出すために、水素結合を切断しミクロフィブリルを分離すること(以下、解繊という)が必要である。そのため、激しい物理力を加える機械解繊法が用いられている。
【0003】
セルロースナノファイバーを製造する方法としては、水中機械解繊法が知られている。この方法では、セルロースは水により膨潤され、柔らかい状態で高圧ホモジナイザーやウォータージェット等の強力な機械せん断によりナノ化する。天然のセルロースミクロフィブリルは結晶ゾーンと非結晶性ゾーンとから構成され、非結晶ゾーンは水等の膨潤性溶媒を吸収し、膨潤した状態になると、強力なせん断により変形する。そのため、得られたセルロース微細繊維にはダメージが存在し、絡み合い、引っかかりしやすい形状となる。
【0004】
また、ボールミル等の強力な機械粉砕法を用いる場合、固体状態特有のメカノケミカル反応が起こり得る。この反応により、セルロースの結晶構造が破壊されたり、溶解されたりすることが避けられなくなる。その結果、収率が低くなり、得られる繊維の結晶化度が低くなる場合がある。
【0005】
水中解繊の他の問題としては、得られたセルロースと樹脂とを複合化するためには、解繊の後、脱水し、表面疎水化修飾等の処理をする必要がある。この脱水工程には高いエネルギーを要する。
【0006】
また、表面をエステル化したセルロース微細繊維の製造方法として、イオン液体と有機溶媒とを含有する混合溶媒を用いてセルロース系物質を膨潤および/または部分溶解させた後、エステル化する方法がある(特許文献1)。しかし、特許文献1のイオン液体と有機溶媒とを含有する混合溶媒を用いる場合、イオン液体の回収や再利用に関するコストが高くなるという課題がある。
【0007】
また、表面をエステル化したセルロース微細繊維の製造方法として、セルロースと有機溶剤とを混合して、エステル化剤を加えた後、強力な機械的破砕とともにエステル化反応をすることにより、セルロース表面をエステル化し、解離する方法が知られている(特許文献2)。しかし、エステル化剤と有機溶媒とを含む解繊用溶液はセルロースへの浸透性が低く、機械的粉砕処理の間にセルロース内部へほとんど浸透しない。したがって、この方法でも化学的解繊はされておらず、強力な機械力が必要となる機械解繊方法により繊維を製造している。強力な機械的破砕はセルロースナノファイバーを損傷する可能性がある。また、セルロース繊維の内部になるほど有機溶剤とエステル化剤は浸透しにくいため、セルロース繊維内部はエステル化修飾されにくくなる。そのため、セルロース繊維内部の微細繊維は機械解繊により解繊されても、表面修飾がほとんどできていないと考えられる。また、表面芳香置換基で修飾するセルロース微細繊維の製造方法が知られている(特許文献3)。しかし、この化学修飾工程のみでは解繊できず、強力な機械解繊工程が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−104768号公報
【特許文献2】特表2015−500354号公報
【特許文献3】特開2011−16995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、強力な物理粉砕を必要としない省エネルギーな方法で、ナノサイズで結晶化度が高く、繊維形状の損傷が少ないセルロース微細繊維の製造方法および修飾セルロース微細繊維の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、機械的に破砕することなく、カルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒドを含む解繊溶液をセルロースに浸透させて、セルロースを解繊し、ナノサイズで結晶化度が高く、繊維形状の損傷が少ないセルロース微細繊維の製造方法を見出した。
【0011】
本発明のセルロース微細繊維の製造方法は、ドナー数26以上の非プロトン性溶媒と、カルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒドとを含む解繊溶液をセルロースに浸透させて、セルロースを解繊することを含む。このアルデヒドは、下記式(1)で表されるアルデヒド、パラホルムアルデヒド、シンナムアルデヒド、ペリルアルデヒド、バニリンおよびグリオキサールからなる群より選択される少なくとも1種のアルデヒドである:
−CHO (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表わす)。
1つの実施形態において、上記アルデヒドまたはカルボン酸ビニルエステルの含有割合は、解繊溶液全体に対して0.05重量%〜50重量%である。
1つの実施形態において、上記ドナー数26以上の非プロトン性溶媒は、スルホキシド類、ピリジン類、ピロリドン類およびアミド類からなる群より選択される少なくとも1種である。
1つの実施形態において、上記アルデヒドは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、イソブタナール、2−メチルブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、アクロレイン、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、ペリルアルデヒド、バニリンおよびグリオキサールからなる群より選択される少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記カルボン酸ビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、安息香酸ビニルおよび桂皮酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記カルボン酸ビニルエステルは、下記式(2)で表される化合物である
−COO−CH=CH (2)
(式中、Rは炭素数1〜24のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基またはアリール基のいずれかを表わす)。
1つの実施形態においては、上記解繊溶液はセルロース修飾反応化剤をさらに含む。
1つの実施形態においては、上記セルロース修飾反応化剤はカルボン酸ハロゲン化物類、カルボン酸無水物類、カルボン酸、イソシアネート類、エポキシ類およびハロゲン化アルキルからなる群より選択される少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記解繊溶液は酸触媒または塩基触媒をさらに含む。
1つの実施形態においては、上記酸触媒はパラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸ピリジウム、無機酸および有機酸からなる群より選択される少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記塩基触媒はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸水素塩、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のカルボン酸塩、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のホウ酸塩、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のリン酸塩、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のリン酸水素塩、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のテトラアルキルアンモニウム酢酸塩、ピリジン類、イミダゾール類およびアミン類からなる群より選択される少なくとも1種である。
1つの実施形態において、上記酸触媒または塩基触媒の含有割合は、解繊溶液全体に対して0.001重量%〜30重量%である。
1つの実施形態において、セルロースと上記解繊溶液との重量比は、0.5/99.5〜25/75である。
本発明の別の局面においては、表面修飾セルロース微細繊維が提供される。この表面修飾セルロース微細繊維は、平均繊維径が2nm〜800nm、かつ、アスペクト比が40〜1000であって、SP値10以下の有機溶媒または樹脂に分散可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高圧ホモジナイザーやウォータージェット等を用いて強力に解繊することなく、ドナー数26以上の非プロトン性溶媒とカルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒドとを含む解繊溶液をセルロースに浸透させて、セルロースを解繊するため、セルロースのミクロフィブリルに与える損傷が少なく、アスペクト比が大きいセルロース微細繊維を製造することができる。さらに、解繊溶液に触媒または修飾反応化剤および触媒を添加することにより、ミクロフィブリルの表面の水酸基を修飾反応させて表面修飾セルロース微細繊維を製造することができる。本発明では、解繊溶液をセルロースに浸透させて繊維間、ラメラ間およびミクロフィブリル間の水素結合を切断しながらミクロフィブリルの表面を修飾するため、天然由来のセルロースの結晶構造やミクロフィブリル構造を破壊することなく、セルロースを解繊し、ミクロフィブリルの表面を効率よく修飾することができる。そのため、ナノサイズで結晶化度が高く、繊維形状の損傷が少なく、アスペクト比が大きいセルロース微細繊維を省エネルギーな方法で、簡便かつ効率よく、製造することができる。本発明の製造方法により得られるセルロース微細繊維および修飾セルロース微細繊維は、溶媒や樹脂への再分散性に優れる。本発明の解繊溶液は非プロトン性であるため、セルロース微細繊維表面の水酸基は様々な修飾反応化剤と反応できる。そのため、用途に応じて様々な修飾官能基を導入することが可能である。例えば、疎水性官能基を導入することによりセルロース微細繊維と樹脂などの有機媒体との親和性をさらに向上できる。また、修飾官能基の末端をアクリル基、エポキシ基、イソシアネート基又はビニル基等の反応性基を有する修飾反応化剤で修飾することにより、得られるセルロース微細繊維の表面は反応性基を有する。そのため、その機能性や用途を一層拡大することができる。例えば、複合化の際にセルロース微細繊維と樹脂との間に化学反応が起こることにより界面の接着性を改善し、補強効果を上げることも期待できる。
【0013】
さらに、本発明のセルロース微細繊維の製造方法は、高圧ホモジナイザーやウォータージェット等の強力な解繊手段を用いることなくセルロース物質を解繊することができる。そのため、得られるセルロース微細繊維は天然のミクロフィブリルに近い構造を持ちダメージが少ないため、高い強度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で得られたセルロース微細繊維のSEM写真(50000倍)
図2】実施例2で得られたセルロース微細繊維のSEM写真(50000倍)
図3】実施例3で得られたセルロース微細繊維のSEM写真(50000倍)
図4】実施例10で得られたセルロース微細繊維のSEM写真(50000倍)
図5】比較例1で得られたセルロース繊維の光学顕微鏡写真(光学40倍)
図6】比較例2で得られたセルロース繊維の光学顕微鏡写真(光学40倍)
図7】比較例3で得られたセルロース繊維の光学顕微鏡写真(光学40倍)
図8】実施例12で得られたセルロース微細繊維のIRスペクトル
図9】実施例12で得られたセルロース微細繊維の光学顕微鏡画像(400倍)
図10】実施例15で得られたセルロース微細繊維の光学顕微鏡画像(400倍)
図11】実施例15で得られたセルロース微細繊維のIRスペクトル
図12】実施例18で得られたセルロース微細繊維の光学顕微鏡画像(400倍)
図13】実施例18で得られたセルロース微細繊維のIRスペクトル
図14】実施例19で得られたセルロース微細繊維の光学顕微鏡画像(400倍)
図15】比較例6で得られたセルロース微細繊維の光学顕微鏡画像(400倍)
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.本発明の概要
本発明のセルロース微細繊維の製造方法は、ドナー数26以上の非プロトン性極性溶媒と、カルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒドとを含む解繊溶液を用いる。このアルデヒドは、下記式(1)で表されるアルデヒド、パラホルムアルデヒド、シンナムアルデヒド(桂皮アルデヒド)、ペリルアルデヒド、バニリンおよびグリオキサール(ジアルデヒド)からなる群より選択される少なくとも1種のアルデヒド(以下、アルデヒド類ともいう)である:
−CHO (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表わす)。
【0016】
本発明の製造方法は、上記解繊溶液をセルロースに浸透させて、セルロースを解繊することを含む。上記解繊溶液をセルロースに浸透させ、セルロースを膨潤しながらミクロフィブリルの間の水素結合を切断することにより、ミクロフィブリルが自ら解してセルロース微細繊維を得ることができる。そのため、高圧ホモジナイザーやウォータージェットのような強力な解繊機器を用いず、機械解繊や破砕により解することなく、セルロースを解繊し、ナノサイズで結晶化度が高く、繊維形状の損傷が少ないセルロース微細繊維が得られる。
【0017】
また、上記解繊溶液は、ミクロフィブリルの結晶ゾーン(ドメイン)に浸透しないため、得られるセルロース微細繊維は、ダメージが少なく、天然のミクロフィブリルに近い構造を有する。同時に、本発明の製造方法では、強力な剪断力の働きによる機械的解繊手段を用いることなく、セルロースを解繊できるため、物理的な作用によるダメージも少ない。そのため、得られるセルロース微細繊維および修飾セルロース微細繊維は、高い強度を保持していると考えられる。さらに、表面の粗さが少ないため一旦乾燥しても溶媒や樹脂への再分散が容易である。
【0018】
B.解繊溶液
本発明の製造方法で用いる解繊溶液は、ドナー数26以上の非プロトン性極性溶媒と、カルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒドとを含む。このアルデヒドは、下記式(1)で表されるアルデヒド、パラホルムアルデヒド、シンナムアルデヒド(桂皮アルデヒド)、ペリルアルデヒド、バニリンおよびグリオキサール(ジアルデヒド)からなる群より選択される少なくとも1種のアルデヒドである:
−CHO (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表わす)。
【0019】
上記解繊溶液に含まれるカルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒド類の含有割合は、解繊溶液全体に対して、好ましくは0.05重量%〜50重量%である。カルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒドの含有割合が0.05重量%未満である場合、解繊が不十分となる、または、修飾率が十分でないおそれがある。また、カルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒド類の含有割合が50重量%を超える場合、解繊溶液のセルロースへの浸透性が低下するおそれがある。カルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒド類の含有割合は、より好ましくは1重量%〜40重量%であり、さらに好ましくは2重量%〜30重量%である。このような範囲であることにより、ミクロフィブリル間への浸透性とセルロースの水酸基に対する反応性のバランスがさらに向上し得る。
【0020】
以下、本発明の解繊溶液について、カルボン酸ビニルエステルを含む形態とアルデヒドを含む形態のそれぞれについて、詳細に説明する。
【0021】
B−1.カルボン酸ビニルエステルを含む解繊溶液
1つの実施形態においては、本発明の解繊溶液はカルボン酸ビニルエステルとドナー数26以上の非プロトン性極性溶媒とを含む。カルボン酸ビニルエステルは、セルロースの修飾反応化剤としても機能し得る。
【0022】
B−1−1.カルボン酸ビニルエステル
カルボン酸ビニルエステルとしては任意の適切なカルボン酸ビニルエステルを用いることができる。カルボン酸ビニルエステルは、好ましくは下記式(2)で表される化合物である。
−COO−CH=CH (2)
(式中、Rは炭素数1〜24のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基またはアリール基を表わす)。
【0023】
カルボン酸ビニルエステルは、解繊性と反応性の観点から、好ましくは、式(2)においてRが炭素数1〜7のアルキル基である低級脂肪族カルボン酸ビニルエステルであり、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であるカルボン酸ビニルエステルであり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であるカルボン酸ビニルエステルである。このようなカルボン酸ビニルエステルを用いることにより、ミクロフィブリル間への浸透性とセルロースの水酸基に対する反応性とが向上し得る。
【0024】
また、得られるセルロース微細繊維の疎水性溶媒や樹脂への分散性の観点からは、高級脂肪族カルボン酸ビニルエステル、環状脂肪族官能基を持つカルボン酸ビニルエステル又は芳香族官能基を持つカルボン酸ビニルが好ましい。これらのカルボン酸ビニルを用いた場合、ミクロフィブリル間への浸透性とセルロースの水酸基に対する反応性を確保する観点から、低級脂肪族カルボン酸ビニルエステルと併用することが好ましい。
【0025】
カルボン酸ビニルエステルは、具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0026】
B−1−2.非プロトン性極性溶媒
上記非プロトン性極性溶媒としては、ドナー数26以上の非プロトン性極性溶媒を用いることができる。非プロトン性極性溶媒のドナー数は、好ましくは26〜35であり、より好ましくは26.5〜33、さらに好ましくは27〜32である。ドナー数が26未満である場合、解繊溶液のミクロフィブリル間への浸透性が十分に向上しないおそれがある。なお、ドナー数については、文献「Netsu Sokutei 28(3)、2001、P135−143」に開示されており、この文献の記載は本明細書に参考として援用される。
【0027】
上記非プロトン性極性溶媒としては、任意の適切な溶媒を用いることができる。例えば、スルホキシド類、ピリジン類、ピロリドン類、および、アミド類等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
非プロトン性極性溶媒は、好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)(ドナー数:29.8)、ピリジン(ドナー数:33.1)、N,N−ジメチルアセトアミド(ドナー数:27.8)、N,N−ジメチルホルムアミド(ドナー数:26.6)およびN−メチル−2−ピロリドン(ドナー数:27.3)からなる群より選択される少なくとも1種である。これらの溶媒を用いることにより、解繊溶液のミクロフィブリル間への浸透性を高度に促進することができる。これらのなかでも、解繊溶液の浸透性をさらに促進できるという点から、ジメチルスルホキシドがより好ましい。
【0029】
上記解繊溶液は、本発明の効果を損なわない範囲で、ドナー数26未満の非プロトン性極性溶媒を含んでいてもよい。上記解繊溶液に含まれ得るドナー数26未満の非プロトン性極性溶媒としては、例えば、アセトニトリル、ジオキサン、アセトン、テトラヒドフラン等が挙げられる。これらの溶媒を含む場合、解繊溶液における含有割合は、例えば、50重量%以下である。
【0030】
B−1−3.カルボン酸ビニルエステル以外のセルロース修飾反応化剤
上記解繊溶液は、カルボン酸ビニルエステル以外のセルロース修飾反応化剤(以下、他の修飾反応化剤ともいう)をさらに含むことが好ましい。他のセルロース修飾反応化剤をさらに含むことにより、セルロースを解繊しながら、セルロースのミクロフィブリル表面を2種以上の官能基で化学修飾することができる。
【0031】
この実施形態の解繊溶液におけるセルロース修飾反応化剤の含有割合は、解繊溶液のセルロースへの浸透性が低下しない限り、任意の適切な割合で用いられる。例えば、解繊溶液100重量部に対して30重量部以下であり、好ましくは0.1重量部〜30重量部、より好ましくは0.1重量部〜20重量部、さらに好ましくは0.5重量部〜15重量部である。他の修飾反応化剤の割合が多すぎると、解繊度合が低下する場合がある。
【0032】
上記他のセルロース修飾反応化剤としては、任意の適切な化合物を用いることができる。好ましくは、カルボン酸ハロゲン化物類、カルボン酸無水物類、カルボン酸、イソシアネート類、エポキシ類およびハロゲン化アルキルが用いられる。セルロース修飾反応化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0033】
カルボン酸ビニルエステルを用いる実施形態においては、他の修飾反応化剤としてカルボン酸類、エポキシ類、イソシアネート類およびハロゲン化アルキルを用いることが好ましい。カルボン酸ハロゲンおよびカルボン酸無水物を用いる場合、変色や分解反応が起こる可能性がある。
【0034】
カルボン酸ハロゲン化物としては、任意の適切な化合物を用いることができる。例えばカルボン酸塩化物、カルボン酸臭化物、カルボン酸ヨウ化物が挙げられる。具体的には、カルボン酸ハロゲン化物類としては、下記式(3)で表されるカルボン酸ハロゲン化物が挙げられる:
−C(=O)−X (3)
(式中、Rは炭素数1〜24のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基またはアリール基を表わす。XはCl、BrまたはIを表す)。
【0035】
より具体的には、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化ベンゾイル等のカルボン酸塩化物;臭化アセチル、臭化プロピオニル、臭化ブチリル、臭化ベンゾイル等のカルボン酸臭化物;ヨウ化アセチル、ヨウ化プロピオニル、ヨウ化ブチリル、ヨウ化ベンゾイル等のカルボン酸ヨウ化物などが挙げられる。なお、これら以外のカルボン酸ハロゲン化物を用いてもよい。なかでも、反応性と取り扱い性の点から、好ましくはカルボン酸塩化物が用いられる。なお、カルボン酸ハロゲン類を用いる場合、後述する触媒を用いなくてもよい。
【0036】
カルボン酸無水物類としては、任意の適切な化合物を用いることができる。例えば、プロピオン酸、(イソ)酪酸、吉草酸などの飽和脂肪族モノカルボン酸無水物;(メタ)アクリル酸、オレイン酸などの不飽和脂肪族モノカルボン酸無水物;シクロヘキサンカルボン酸、テトラヒドロ安息香酸などの脂環族モノカルボン酸無水物;安息香酸、4−メチル安息香酸などの芳香族モノカルボン酸無水物等のカルボン酸無水物、無水コハク酸、アジピン酸などの無水飽和脂肪族ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの無水不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物;無水1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸などの無水脂環族ジカルボン酸;無水フタル酸、無水ナフタル酸などの無水芳香族ジカルボン酸無水物などの二塩基カルボン酸無水物、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの(無水)ポリカルボン酸などの多塩基カルボン酸無水物類等が挙げられる。セルロース微細繊維の疎水化という点から、炭素数4以上の脂肪族カルボン酸無水物またはアリール基を有するカルボン酸無水物が好ましい。
【0037】
イソシアネート類としては、任意の適切な化合物を用いることができる。イソシアネート類としては、例えば、下記式(4)または(5)で表されるイソシアネートが挙げられる。
−N=C=O (4)
O=C=N−R−N=C=O (5)
(式中、RまたはRとしては炭素数1〜24のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基またはアリール基を表わす)。
【0038】
イソシアネートとしては、具体的には、イソシアン酸メチル(MIC)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2−イソシアナトエチルメタクリレート(MOI)、2−イソシアナトエチルアクリレート(AOI)等のイソシアネート類が挙げられる。アクリル系樹脂との複合化という点から、MOIおよびAOIが好ましい。また、ウレタン樹脂との複合化という点からは、MIC、MDI、HDI、TDI、IPDIが好ましい。
【0039】
エポキシ類としては、任意の適切な化合物を用いることができる。例えば、下記式(6)または(7)で表されるエポキシからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【化1】
(式中、RまたはRは、炭素数1〜24のアルキル基、アルキレン基、エチレングリコールに由来する置換基、ビスフェノールAに由来する置換基、ビスフェノールFに由来する置換基、シクロアルキル基またはアリール基を表わす)。
【0040】
エポキシ類としては、具体的には、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、4−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ラウリルアルコール(EO)15グリシジルエーテル等の単官能基のエポキシ修飾反応化剤、ビスフェノールAエポキシ、ビスフェノールFエポキシ、テレフタル酸ビスグリシジル、ジグリシジルOフタレート等の2官能基エポキシ修飾反応化剤等が挙げられる。エポキシ樹脂との複合化という点から、2官能基エポキシ修飾反応化剤が好ましい。
【0041】
ハロゲン化アルキル類としては、任意の適切な化合物を用いることができる。例えば、下記式(8)で表されるハロゲン化アルキルが挙げられる。
−X (8)
(式中、Rは炭素数1〜24のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基、カルボン酸アルキル基またはアリール基を表わす。XはCl、BrまたはIである。)
【0042】
ハロゲン化アルキルの具体例としては、クロロ酢酸、メチルクロライド、エチルクロライド、ベンジルブロマイド等が挙げられる。セルロース微細繊維の表面に親水性のカルボン酸基を導入するという点からクロロ酢酸が好ましい。
【0043】
カルボン酸としては、任意の適切な化合物を用いることができる。例えば、脂肪族カルボン酸、又は、アリール基を有するカルボン酸が挙げられる。具体的には、下記式(9)で表されるカルボン酸が挙げられる。
−COOH (9)
(式中、Rは炭素数1〜24のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基またはアリール基を表す)。
【0044】
上記修飾反応化剤は、解繊性と反応性の点から、セルロースと混合する前の解繊溶液に添加して用いてもよい。一方、炭素数が大きい(例えば、炭素数8以上の修飾反応化剤)修飾反応化剤は、ミクロフィブリル間への浸透性とセルロースの水酸基に対する反応性が低下するおそれがある。そのため、解繊途中または解繊完了の後に解繊溶液に加えることが好ましい。また、炭素数が大きい修飾反応化剤は、炭素数の小さい修飾反応化剤と併用することが好ましい。
【0045】
B−1−4.酸触媒または塩基触媒
上記解繊溶液は、修飾反応化剤の種類に応じて、塩基触媒または酸触媒をさらに含んでいてもよい。解繊溶液が触媒を含むことにより、修飾反応を促進すると共に、解繊溶液の極性が向上し、解繊をさらに促進することができる。塩基触媒および酸触媒は誘電率が高く、これらを添加することにより解繊溶液の誘電率が大きくなる。そのため、解繊溶液のセルロースに対する親和性が増大し、解繊溶液の浸透速度と膨潤率が向上する。さらに、セルロース中に含まれる可溶性のヘミセルロースなどの非結晶性成分の溶解を促進し、ミクロフィブリルの解繊を加速する作用を有し得る。
【0046】
上記の通り、解繊溶液がカルボン酸ビニルエステルを含む場合、解繊溶液にさらに触媒を加えることにより、セルロースが解繊されると共に、カルボン酸ビニルエステルがセルロースの水酸基とエステル交換反応するため、エステル化された修飾セルロース微細繊維が得られる。触媒は酸触媒および塩基触媒のいずれであっても良いが、塩基触媒を用いることが好ましい。
【0047】
解繊溶液における塩基触媒または酸触媒の含有割合は、好ましくは解繊溶液全体に対して0.001重量%〜30重量%である。
【0048】
塩基触媒を用いる場合、塩基触媒のアルカリ性が高すぎると、解繊溶液が結晶内まで浸透し、セルロース微細繊維の結晶化度を低下させるおそれがある。そのため、塩基触媒としては、セルロースの結晶構造を破壊しない、任意の適切な塩基触媒を用いることができる。塩基触媒としては、好ましくは炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩等のカルボン酸塩;ホウ酸塩;リン酸塩;リン酸水素塩;テトラアルキルアンモニウム酢酸塩等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、ピリジン類、イミダゾール類およびアミン類が挙げられる。これらの塩基触媒を含有することにより、溶媒の極性(誘電率)が増大し、浸透速度が向上する効果もあるため好ましい。塩基性の強い(強アルカリ性)触媒はセルロースの安定性が低下するおそれがある。そのため、塩基性の強い触媒を用いる場合、解繊溶液における塩基触媒の含有割合が0.1重量%以下とすることが好ましい。塩基触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0049】
塩基触媒の添加量が多すぎる場合、得られたセルロース微細繊維の結晶化度が低下するおそれがある。解繊溶液中の塩基触媒の濃度(重量割合)は、上記塩基触媒の含有割合が、解繊溶液全体に対して例えば、0.001重量%〜30重量%であり、好ましくは0.001重量%〜20重量%である。また、塩基触媒が炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩等のカルボン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩またはリン酸水素塩等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩である場合、好ましくは0.001重量%〜8重量%であり、より好ましくは0.05重量%〜6重量%である。なかでも、炭酸塩を用いる場合は、0.005重量%〜5重量%が好ましい。塩基触媒がピリジン類(溶媒としてピリジン類としない場合)、アミン類、イミダゾール類の場合、好ましくは3重量%〜20重量%であり、より好ましくは10重量%〜20重量%である。なお、これらの触媒はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩に比べてエステル化反応が遅く、通常エステル化に長い反応時間(例えば、8時間以上)が必要である。また、ピリジン類を溶媒とした場合、ピリジン類は触媒としても作用するが、この場合もエステル化反応が遅く、通常エステル化に長い反応時間(例えば、8時間以上)が必要である。
【0050】
酸触媒としては、任意の適切な化合物を用いることができる。好ましくは、パラトルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸ピリジウム、硫酸、塩酸およびリン酸などの無機酸、またはシュウ酸やギ酸等の有機酸が挙げられる。これらの酸触媒は単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0051】
解繊溶液への酸触媒の添加量は用いる触媒の種類と修飾反応化剤の種類により任意の適切な値に調整され得る。例えば、解繊溶液全体の0.01重量%〜30重量%であり、好ましくは0.05重量%〜20重量%であり、より好ましくは0.1重量%〜10重量%である。
【0052】
酸触媒として、硫酸、パラトルエンスルホン酸、塩酸、またはリン酸を用いる場合、解繊溶液全体の15重量%以下であることが好ましい。シュウ酸またはギ酸の場合、30重量%以下がより好ましい。また、2種以上の酸触媒を組み合せて用いてもよい。この場合、酸触媒の合計の含有割合が0.01重量%〜30重量%となるよう、含有割合が調整され得る。
【0053】
上記解繊溶液において、カルボン酸ビニルエステルと他の修飾反応化剤とを組み合せて用いる場合、触媒としては塩基触媒を用いることが好ましい。
【0054】
B−2.アルデヒド類を含む解繊溶液
1つの実施形態においては、本発明の解繊溶液は式(1)で表されるアルデヒド、パラホルムアルデヒド、シンナムアルデヒド(桂皮アルデヒド)、ペリルアルデヒド、バニリンおよびグリオキサール(ジアルデヒド)からなる群より選択される少なくとも1種のアルデヒドとドナー数26以上の非プロトン性極性溶媒とを含む:
−CHO (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表わす)。
【0055】
B−2−1.アルデヒド類
上記アルデヒドとしては、下記式(1)で表されるアルデヒド、パラホルムアルデヒド、シンナムアルデヒド(桂皮アルデヒド)、ペリルアルデヒド、バニリンおよびグリオキサール(ジアルデヒド)からなる群より選択される少なくとも1種のアルデヒドが用いられる。
−CHO (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表わす)。
【0056】
上記アルデヒドとしては、具体的には、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、イソブタナール、2−メチルブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、アクロレイン(ビニルアルデヒド)、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド(桂皮アルデヒド)、ペリルアルデヒド、バニリンおよびグリオキサール(ジアルデヒド)等が挙げられる。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0057】
上記アルデヒドとしては、膨潤性と解繊性の点から、式(1)において、好ましくはRが水素原子、または、炭素数1〜7のアルキル基であるアルデヒド等の低級脂肪族アルデヒドであり、より好ましくはRが炭素数2〜5のアルキル基である低級脂肪族アルデヒドであり、さらに好ましくはRが炭素数2〜4のアルキル基である。このようなアルデヒドを用いることにより、ミクロフィブリル間への浸透性とセルロースの水酸基に対する反応性とが向上し得る。上記低級脂肪族アルデヒド以外のアルデヒドを用いる場合、ミクロフィブリル間への浸透性とセルロースの水酸基に対する反応性を確保する観点から、低級脂肪族アルデヒドと併用することが好ましい。
【0058】
B−2−2.非プロトン性極性溶媒
ドナー数26以上の非プロトン性極性溶媒としては、任意の適切な溶媒を用いることができる。例えば、上記B−1−2項で具体的に記載した溶媒を用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、ドナー数が26未満である非プロトン性極性溶媒を含んでいてもよい。具体的な溶媒としては、カルボン酸ビニルエステルを含む解繊溶液で例示したものが挙げられる。これらの溶媒を含む場合、解繊溶液における含有割合は、例えば、50重量%以下である。
【0059】
B−2−3.修飾反応化剤
アルデヒドを含む解繊溶液は修飾反応化剤をさらに含んでいてもよい。修飾反応化剤としては、上記B−1−3項で具体的に記載した修飾反応化剤が挙げられる。アルデヒドを含む解繊溶液に含まれる修飾反応化剤の含有量についても上記カルボン酸ビニルエステルを含む解繊溶液で開示した含有量と同じ範囲で用いることができる。
【0060】
B−2−4.塩基触媒または酸触媒
アルデヒドを含む解繊溶液は、修飾反応化剤の種類に応じて、塩基触媒または酸触媒をさらに含んでいてもよい。塩基触媒または酸触媒としては、上記B−1−4項で具体的に記載したものが挙げられる。アルデヒドを含む解繊溶液における塩基触媒または酸触媒の含有量、修飾反応化剤と触媒との組み合わせ等についても、上記カルボン酸ビニルエステルを含む解繊溶液で開示した範囲および種類を用いることができる。
【0061】
1つの実施形態においては、アルデヒドを含む解繊溶液は、酸触媒または塩基触媒と上記セルロース修飾反応化剤とを組み合せて用いることが好ましい。上記セルロース修飾反応化剤を含む解繊溶液に触媒を添加することにより、修飾反応化剤とセルロースの水酸基との反応速度を促進し、高い修飾率を有する表面修飾セルロース微細繊維が得られ得る。
【0062】
修飾反応化剤と組み合せて用いる場合、解繊溶液中の塩基触媒の重量割合は、用いる触媒の種類と修飾反応化剤の種類により、任意の適切な値に調整され得る。例えば、解繊溶液全体に対して、0.001重量%〜30重量%である。塩基触媒が炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩等のカルボン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩またはリン酸水素塩等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩である場合、含有割合は解繊溶液全体に対して、好ましくは0.001重量%〜8重量%であり、より好ましくは0.05重量%〜6重量%である。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩を用いる場合は、好ましくは0.005重量%〜5重量%である。
【0063】
塩基触媒がピリジン類(溶媒としてピリジン類を用いない場合)、アミン類、イミダゾール類の場合、含有割合は解繊溶液全体に対して、好ましくは3重量%〜20重量%である、より好ましくは10〜20重量%である。これらの触媒はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩に比べて修飾反応が遅く、通常、修飾に長い反応時間(例えば、8時間以上)が必要である。また、溶媒としてピリジン類を用いる場合、ピリジン類は触媒としても作用し得る。しかしながら、この場合も修飾反応が遅く、通常長い反応時間(例えば、8時間以上)、または反応時間を維持するために反応温度を高める必要がある。
【0064】
この実施形態において、解繊溶液への酸触媒の添加量は用いる触媒の種類と修飾反応化剤の種類により任意の適切な値に調整され得る。例えば、解繊溶液全体の0.01重量%〜30重量%であり、好ましくは0.05重量%〜20重量%であり、より好ましくは0.1重量%〜10重量%である。酸触媒として、硫酸、パラトルエンスルホン酸、塩酸、またはリン酸を用いる場合、解繊溶液全体の15重量%以下であることが好ましい。シュウ酸またはギ酸の場合、30重量%以下がより好ましい。また、2種以上の酸触媒を組み合せて用いてもよい。この場合、酸触媒の合計の含有割合が0.01重量%〜30重量%となるよう、含有割合が調整され得る。
【0065】
修飾反応化剤と組み合せて用いる場合、修飾反応化剤に応じて、任意の適切な触媒が選択される。例えば、カルボン酸無水物、イソシアネートまたはエポキシ類を修飾反応化剤として用いる場合、塩基触媒が好ましい。
【0066】
上記修飾反応化剤と触媒との組み合わせについて、より詳細に説明する。修飾反応化剤としてカルボン酸ハロゲン類を用いる場合、修飾反応をさらに促進できるという点から塩基触媒が好ましい。この場合、解繊溶液における触媒の含有量は、例えば、0.05重量%〜10重量%である。
【0067】
カルボン酸無水物を修飾反応剤として用いる場合、塩基触媒が好ましく、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が好ましい。この場合、解繊溶液における触媒の含有量は、例えば、0.05重量%〜8重量%である。
【0068】
カルボン酸を修飾反応化剤として用いる場合、酸触媒が好ましい。具体的には、硫酸、塩酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。この場合、解繊溶液における触媒の含有量は、例えば、0.01重量%〜10重量%である。
【0069】
イソシアネートを修飾反応化剤として用いる場合、塩基触媒が好ましい。例えば、アミンまたはイミダゾールが挙げられる。この場合、解繊溶液における触媒の含有量は、例えば、0.5重量%〜20重量%である。
【0070】
エポキシ類を修飾反応化剤として用いる場合、塩基触媒が好ましい。例えば、アミンまたはイミダゾールが挙げられる。この場合、解繊溶液における触媒の含有量は、例えば、0.5重量%〜20重量%である。
【0071】
ハロゲン化アルキルを修飾反応化剤として用いる場合、塩基触媒が好ましい。塩基触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが挙げられる。この場合、解繊溶液における触媒の含有量は、例えば、0.5重量%〜10重量%である。
【0072】
C.解繊溶液の調製方法
上記解繊溶液は、任意の適切な方法により調製することができる。例えば、上記カルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒド類とドナー数26以上の非プロトン性極性溶媒とを撹拌などにより混合することにより調製することができる。
【0073】
解繊溶液に修飾反応化剤をさらに加える場合、例えば、上記溶媒、上記カルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒド類および修飾反応化剤を撹拌などによって混合し、均一に溶解させることにより、解繊溶液を調製することができる。これらの混合の順序は、全てを同時に添加してもよく、撹拌しながら順次添加し、混合してもよい。通常は、上記溶媒に他の物質を順次添加する方法が用いられる。なお、極性が低い修飾反応化剤を用いる場合、解繊溶液の浸透速度、セルロースの膨潤速度および解繊速度が低下する場合がある。そのため、修飾反応化剤を含まない解繊溶液をセルロースに浸透させて、解繊がある程度進んだ状態で、解繊溶液に修飾反応化剤を加えることが好ましい。また、修飾反応化剤として炭素数が大きいものを用いる場合、ミクロフィブリル間への浸透性とセルロース水酸基に対する反応性が低下するおそれがあるため、解繊途中または解繊完了の後に加えることが好ましい。
【0074】
解繊溶液に触媒を加える場合、例えば、上記溶媒、上記カルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒド類、および、触媒を撹拌などによって混合し、均一に溶解または懸濁させることにより、解繊溶液を調製することができる。触媒を添加することにより、解繊溶液の極性が向上し解繊をさらに促進することができる。これらの混合の順序は、全てを同時に添加してもよく、撹拌しながら順次添加し、混合してもよい。通常は、上記溶媒に他の物質を順次添加する方法が用いられる。また、触媒は、触媒を含まない解繊溶液をセルロースに浸透させて、解繊がある程度進んだ状態で、解繊溶液に触媒を添加してもよい。
【0075】
修飾反応化剤および触媒を用いる場合、例えば、上記溶媒、上記カルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒド類、修飾反応化剤、および、触媒を撹拌などによって混合し、均一に溶解または懸濁させることにより、解繊溶液を調製することができる。これらの混合の順序は、全てを同時に添加してもよく、撹拌しながら順次添加し、混合してもよい。また、修飾反応化剤および触媒以外を含む解繊溶液をセルロースに浸透させた後、修飾反応化剤および触媒を添加してもよい。この際、修飾反応化剤および触媒は、同時に添加してもよく、任意の適切な順序で添加してもよい。さらに、触媒以外を含む解繊溶液をセルロースに浸透させた後、触媒を添加してもよい。また、修飾反応化剤以外を含む解繊溶液をセルロースに浸透させた後、修飾反応化剤を添加してもよい。
【0076】
上記の調製方法において、解繊溶液をセルロースに浸透させた後に、修飾反応化剤および/または触媒を加える場合、解繊溶液に修飾反応化剤および/または触媒を直接添加してもよく、修飾反応化剤および/または触媒を任意の適切な溶媒に溶解して添加してもよい。溶媒としては、上記の解繊溶液の溶媒として用いられ得る溶媒が挙げられる。
【0077】
D.セルロースの解繊方法
本発明の製造方法では、上記解繊溶液をセルロースに浸透させて、解繊することを含む。セルロースが本発明の解繊溶液により解繊される理由は次のように考えられる。すなわち、解繊溶液がセルロース内部に浸透しながらセルロース繊維間、ラメラ間およびミクロフィブリル間の水素結合を切断することによって解繊が引き起こされると考えられる。解繊溶液のドナー数または電気伝導度が高いほど、膨潤により引き起こされるセルロース繊維間、ラメラ間およびミクロフィブリル間の空隙体積が大きく、解繊度合いが向上すると考えられる。
【0078】
解繊溶液がカルボン酸ビニルエステルを含む場合、カルボン酸ビニルエステルがセルロースの水酸基やセルロースに含まれる水と反応し、副生成物としてアセトアルデヒドが生成する。このアセトアルデヒドはミクロフィブリル表面の一部の水酸基とヘミアセタールまたはアセタールを形成してミクロフィブリル間の水素結合を切断する。そのため、ミクロフィブリル同士は容易に離れ、解繊されると考えられる。また、解繊溶液がさらに修飾反応化剤を含む場合、ヘミアセタールまたはアセタールは不安定であるため、修飾反応化剤の攻撃によりアセトアルデヒドに戻り、セルロースの水酸基が修飾されると考えられる。
【0079】
解繊溶液がアルデヒドを含む場合、アルデヒドはミクロフィブリル表面の水酸基とヘミアセタールまたはアセタールを形成してミクロフィブリル間の水素結合を切断する。そのため、ミクロフィブリル同士は容易に離れ、解繊されると考えられる。また、解繊溶液がさらに修飾反応化剤を含む場合、ヘミアセタールまたはアセタールは不安定であるため、修飾反応化剤の攻撃によりアセトアルデヒドに戻り、セルロースの水酸基が修飾されると考えられる。
【0080】
解繊に用いられるセルロースは、セルロース単独の形態であってもよく、リグニンやヘミセルロースなどの非セルロース成分を含む混合形態であってもよい。セルロースとしては、好ましくはI結晶型セルロース構造を含むセルロースであり、例えば、木材由来パルプ、木材、竹、リンダーパルプ、綿、セルロースパウダーを含む物質等が挙げられる。
【0081】
セルロースと解繊溶液との重量比は、例えば、セルロース/解繊溶液=0.5/99.5〜25/75であり、好ましくは1.0/99.0〜20/80、より好ましくは1.5/98.5〜15/85、さらに好ましくは2.0/98〜15/85であり、特に好ましくは2.0/98〜12/88である。セルロースの割合が少なすぎると、セルロース微細繊維の生産効率が低くなる場合がある。また、セルロースの割合が多すぎると、解繊溶液のセルロース繊維間、ラメラ間およびミクロフィブリル間への浸透が不十分であるため、解繊度合いが低下するおそれがある。また、粘度が高いため反応時間が長くなる。これらのいずれにしても生産性が低下するおそれがある。さらに、修飾セルロース微細繊維を得る場合には、セルロースの割合が多すぎると得られた微細繊維のサイズと修飾率の均一性が低下するおそれがある。
【0082】
本発明の製造方法では、セルロース繊維間、ラメラ間およびミクロフィブリル間の水素結合を切断したり、表面にある水酸基を修飾するために、任意の適切な手段を用いることができる。このような化学解繊方法は、例えば、上記解繊溶液を調製し、調製した解繊溶液にセルロースを添加して混合する方法が挙げられる。
【0083】
上記解繊溶液は、セルロースに対する浸透性が高いため、セルロースを解繊溶液に添加して混合することにより、解繊溶液は、ミクロフィブリル間に浸入して、ミクロフィブリル間の水素結合を切断することにより、セルロースを解繊できる。さらに修飾反応化および/または触媒を併用することにより、微細繊維の表面を修飾することができる。
【0084】
セルロースの解繊は、例えば、解繊溶液にセルロースを混合して0.5〜1時間以上放置してもよい。また、混合後、さらに解繊溶液中でセルロースが均一な状態を維持できる程度の撹拌を行ってもよい。解繊は、解繊溶液にセルロースを混合して放置するだけでも進行するが、解繊溶液の浸透または均一性を促進するために、撹拌手段を用いて撹拌を行ってもよい。撹拌機は任意の適切な装置を用いることができる。通常、撹拌またはブレンドや混練できる装置であればよい。例えば、通常、有機合成で汎用されている撹拌機を用いることができる。また、ニーダーや押出機のような混練機でもよい。セルロースの含有割合が高い場合、高粘度に対応できるニーダーや押出機が好ましい。また、撹拌は、連続的に撹拌してもよいいし、断続的に撹拌してもよい。
【0085】
本発明での解繊における反応温度は、加熱する必要はなく、室温で反応させればよい。例えば、2時間以上反応させることにより、剪断力の働きによる機械的解繊手段を用いることなく、上記のようにセルロースを化学的に解繊できる。そのため、本発明では、余分なエネルギーを使用することなくセルロースを解繊できる。なお、反応を促進するために、加熱してもよい。加熱温度は、例えば90℃以下、好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。また、加熱温度は、例えば、40℃以上である。特に常圧の場合、65℃以下である。
【0086】
本発明での解繊処理時間は、解繊溶液に含まれる溶媒のドナー数、アルデヒド類またはカルボン酸ビニルエステルの種類、および、触媒の種類によって任意の適切時間に設定され得る。例えば、0.5〜50時間、好ましくは1〜36時間、さらに好ましくは1.5〜24時間である。低級アルデヒド(例えば、アセトアルデヒド)または低級カルボン酸ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル)とドナー数の高い非プロトン性極性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO))を用いる場合、数時間(例えば、0.5時間〜6時間)程度の時間であってもよく、好ましくは1〜5時間程度である。さらに、上記の通り、処理温度(反応温度)を高めたり、撹拌速度を増加したりすることで反応時間を短くしてもよい。反応時間が短すぎると、解繊溶液のミクロフィブリル間まで十分に浸透せず、反応が不十分となり、解繊度合いも低下するおそれがある。また、解繊溶液が触媒を含む場合、反応時間が長すぎたり、温度が高すぎたりすることによる過修飾により、セルロース微細繊維の収率が低下するおそれがある。また、修飾反応化剤を途中から加える場合、修飾反応化剤を加えてからさらに0.5〜5時間以上反応させることが好ましい。
【0087】
セルロースの解繊は、カルボン酸ビニルエステルまたはアルデヒド類の蒸発を避けるため、密閉系統または加圧系統で行うことが好ましい。さらに、カルボン酸ビニルエステルおよび副生成物であるアセトアルデヒドまたはアルデヒド類等の低沸点成分の蒸発を避けるため、加圧することが好ましい。
【0088】
解繊して得られるセルロース微細繊維は、任意の適切な方法により分離精製してもよい。分離精製方法としては、例えば、遠心分離、濾過、濃縮、沈殿などが挙げられる。例えば、解繊混合物(解繊されたセルロースを含む解繊溶液)を遠心分離または濾過することにより、セルロース微細繊維と解繊溶液を分離してもよい。または、触媒および溶媒を溶解可能な溶媒(水、アルコール類、ケトン類など)を解繊混合物に添加し、遠心分離、濾過、沈殿などの分離法(任意の適切な方法)で分離精製(洗浄)してもよい。なお、分離操作は複数回(例えば、2〜5回程度)行うことができる。修飾反応化剤を添加した場合、反応終了後、水またはメタノールなどで修飾反応化剤を失活させてもよく、再利用の観点から失活せずに蒸留により回収して再利用してもよい。
【0089】
E.セルロース微細繊維
本発明の製造方法で得られるセルロース微細繊維は、平均繊維径が2nm〜800nm、アスペクト比が40〜1000であることを特徴とする。
【0090】
得られたセルロース微細繊維は、ナノサイズまたはサブミクロンメーターに解繊されており、平均繊維径は、例えば、2nm〜800nm、好ましくは3nm〜600nm、より好ましくは5nm〜500nm、さらに好ましくは10nm〜300nmである。繊維径が大きすぎると、補強材としての効果が低下するおそれがある。繊維径が小さすぎると、微細繊維の取り扱い性や耐熱性も低下するおそれがある。
【0091】
得られたセルロース微細繊維は、強力な機械せん断力を加えないため、従来の機械解繊法で得られた微細繊維よりも長い繊維長を有しており、平均繊維長は、例えば、1μm以上である。そして、得られるセルロース微細繊維は、例えば、1μm〜200μm程度の平均繊維長の範囲になっているが、その用途に応じて反応条件をコントロールして適当な平均繊維長のセルロース微細繊維を得ることができる。一般的には、平均繊維長は、例えば、1μm〜100μm、好ましくは2μm〜60μm、さらに好ましくは3μm〜50μmである。繊維長が短すぎると、補強効果や成膜機能が低下するおそれがある。また、長すぎると、繊維が絡み易くなるため溶媒や樹脂への分散性が低下するおそれがある。
【0092】
微細繊維のアスペクト比は、解繊溶液の組成と浸透時間により容易に制御できる。一般的には、アスペクト比は40〜1000が好ましい。分散性と補強効果の観点から、アスペクト比は、より好ましくは50〜800、さらに好ましくは80〜600である。アスペクト比が40未満になると、分散しやすいものの補強効果や自立膜の強度が低いため好ましくない。一方、アスペクト比が1000を超えると繊維の絡み合いにより分散性が低下するおそれがある。
【0093】
また、セルロース微細繊維の平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は用途に応じて対応できる。例えば樹脂と複合化する場合、例えば40〜1000、好ましくは50〜500、さらに好ましくは60〜200、特に80〜150であってもよい。また、樹脂と複合化する場合、アスペクト比は50以上であってもよい。
【0094】
F.表面修飾セルロース微細繊維
本発明の製造方法で得られる表面修飾セルロース微細繊維は、平均繊維径が2nm〜800nm、アスペクト比が40〜1000であって、SP値10以下の有溶溶媒または樹脂に分散可能なことを特徴とする。
【0095】
表面修飾セルロース微細繊維の平均繊維径、アスペクト比、および、平均繊維長は上記セルロース微細繊維と同じ範囲であることが好ましい。
【0096】
修飾セルロース微細繊維の平均繊維径、平均繊維長およびアスペクト比を求める方法としては、任意の適切な方法を用いることができる。なお、本明細書では、修飾セルロース微細繊維の平均繊維径、平均繊維長およびアスペクト比を求める方法としては、走査型電子顕微鏡写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出する方法を用いる。
【0097】
また、カルボン酸ビニルエステルまたは他のセルロース修飾反応化剤を含む解繊溶液を用いる製造方法で製造されたエステル化等により修飾された微細繊維は、SP値10以下の有機溶媒または樹脂に分散が可能である。
【0098】
分散可能なSP値10以下の溶媒としては、例えば、アセトン(9.9)、1,4−ジオキサン(10)、1−ドデカノール(9.8)、テトラヒドロフラン(9.4)、メチルエチルケトン(MEK)(9.3)、酢酸エチル(9.1)、トルエン(8.8)、酢酸−ブチル(8.7)、メチルイソブチルケトン(MIBK)(8.6)等が挙げられる。SP値10以下の樹脂としては、例えば、ポリウレタン(10.0)、エポキシ樹脂(9〜10)、ポリ塩化ビニル(9.5〜9.7)、ポリカーボネート(9.7)、ポリ酢酸ビニル(9.4)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(9.2)、ポリスチレン(8.6〜9.7)、NBRゴム(8.8〜9.5)、ポリプロピレン(8.0)およびポリエチレン(7.9)等が挙げられる。
【0099】
本発明により得られる修飾された微細繊維の表面は均一に修飾されているため、有機溶媒、樹脂によく分散できる。特に、従来技術で実現できないSP値10以下の溶媒や樹脂への分散が可能となる。その理由としては、本発明の微細繊維は伸びた状態で解繊溶液中で修飾されることにより表面の水酸基はムラなく(均一に)修飾されるため、乾燥した後も伸びた状態を維持できることが考える。一方、先行技術では、表面修飾セルロース微細繊維を調製するため、まず水中でセルロースを強力な機械粉砕またはせん断力により解繊した後、アセトンやトルエンなどの非プロトン性極性溶媒で水を置換し、修飾反応する。未修飾セルロース微細繊維は、溶媒置換の際、微細繊維同士が結合したり、寄り集まったり、または微細繊維が自ら絡み合いしたりすることにより。微細繊維が塊になった凝集態になる。この状態で反応溶媒中に入れても凝集の塊として存在するため、塊の表面の水酸基しか修飾されないため得られる修飾微細繊維は、溶媒や樹脂に良好に分散させることができない。
【0100】
本発明の表面修飾セルロース微細繊維は、例えば、塗料、接着剤、複合化材などの分野への用途に用いることができる。そして、樹脂に添加した場合は、従来の修飾セルロース微細繊維に比べて分散効果が高いため、本発明の表面修飾セルロース微細繊維を樹脂に分散させることによる補強効果が高くなることが期待できる。
【0101】
カルボン酸ビニルエステルと触媒を含む解繊溶液、または、アルデヒド類と修飾反応化剤と触媒とを含む解繊溶液で処理して得られる表面修飾されたセルロース微細繊維は、ムラ無く修飾されているため、有機溶媒や樹脂などの有機媒体によく分散できる。表面修飾セルロース微細繊維の特性(例えば、低線膨張特性、強度、耐熱性など)を樹脂に有効に発現させるためには、結晶性の高い表面修飾セルロース微細繊維が好ましい。
【0102】
本発明の表面修飾セルロース微細繊維は、化学解繊され、原料セルロースの結晶性を高度に維持できるため、表面修飾セルロース微細繊維の結晶化度は用いるセルロースの数値をそのまま参照できる。表面修飾セルロース微細繊維の結晶化度は、例えば50%以上であり、好ましくは50%〜98%、より好ましくは55%〜95%、さらに好ましくは60%〜92%、特に好ましくは65%〜90%である。結晶化度が小さすぎると、線膨張特性や強度などの特性を低下させるおそれがある。なお、結晶化度は、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0103】
表面修飾セルロース微細繊維の平均置換度(セルロースの基本構成単位であるグルコース当たりの置換された水酸基の平均数)は、微細繊維径と修飾反応化剤の種類により、変わり得る。平均置換度は、例えば、1.5以下であり、好ましくは0.02〜1.2であり、より好ましくは0.05〜1.2であり、さらに好ましくは0.1〜1.2であり、さらに好ましくは0.15〜1.0であり、さらに好ましくは0.25〜0.9であり、特に好ましくは0.3〜0.9である。平均置換度が大きすぎると、微細繊維の結晶化度または収率が低下するおそれがある。平均置換度(DS:degree of substitution)は、セルロースの基本構成単位であるグルコース当たりの置換された水酸基の平均数であり、Biomacromolecules 2007,8,1973−1978、WO2012/124652A1またはWO2014/142166A1等に開示されており、これらの記載は本明細書に参考として援用される。
【実施例】
【0104】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、用いた原料の詳細は以下の通りであり、得られた修飾セルロース微細繊維の特性は以下のようにして測定した。明記しない実施例または比較例では解繊を室温で行った。
【0105】
(用いた原料、触媒および溶媒)
セルロースパルプ:市販木材パルプ(Georgia Pacific社製、商品名:フラッフパルプARC48000GP)をサンプル瓶に入るサイズまで千切ったパルプ。
他の原料、触媒および溶媒:ナカライテスク(株)製の試薬。
【0106】
<解繊度合の評価1>
実施例1〜11および比較例1〜3で得られたカルボキシル基含有セルロースナノファイバーをFE−SEM(日本電子(株)製「JSM−6700F」で、25〜50000倍の範囲でセルロースの解繊度合を観察し、以下の基準で評価した。なお、20mA、60秒の測定条件を用いた。
◎:繊維径500nm以上の微細繊維がほとんど観察されない。
○:ほとんどの繊維径が500nm以下であるが、繊維径500nm以上の微細繊維も多く観察される。
×:ほとんどの繊維は原料のセルロース繊維と同じ繊維径を有する。
<解繊度合の評価2>
実施例12〜22および比較例4〜6で得られたセルロース微細繊維を光学顕微鏡を用いて、400倍の範囲でセルロースの解繊度合を観察し、以下の基準で評価した。
◎:繊維径がサブミクロン以上の微細繊維がほとんど観察されない。
○:ほとんどの繊維径がサブミクロン以下であるが、繊維径数ミクロン以上の微細繊維も多く観察される。
×:ほとんどの繊維は原料のセルロース繊維と同じ繊維径を有する。
<修飾セルロース微細繊維の表面飾率または平均置換度>
修飾セルロース微細繊維の表面修飾率は、平均置換度で示し、固体NMRにより測定した。測定モ−ドとして、固体13C−CP/MAS法と固体DP/MAS法の2法を併用した。なお、平均置換度とは、セルロースの繰り返し単位1個当たりの修飾された水酸基の数(置換基の数)の平均値である。
セルロース微細繊維のIRスペクトルはフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)で測定した。なお、測定は、NICOLET社製「NICOLET MAGNA−IR760 Spectrometer」を用い、反射モードで分析した。
<セルロース繊維の形状観察>
セルロース微細繊維の形状はFE−SEM(日本電子(株)製「JSM−6700F」、測定条件:20mA、60秒)を用いて観察した。なお、平均繊維径および平均繊維長は、SEM写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出した。
<溶剤分散性>
乾燥したセルロース微細繊維0.05gと分散用溶媒(表1に示す)10gとを20mlのサンプル瓶に入れ、スターラーでよく撹拌した後、均一な分散液になる場合は分散可能と判断した。一方、沈殿したり、乾燥状態(塊またはチップ状)のままで残る場合は分散不可と評価した。
【0107】
<結晶化度>
得られたセルロース微細繊維の結晶化度は、Textile Res.J.29:786−794(1959)を参考にして、XRD分析法(Segal法)により測定し、下記式により算出した。
結晶化度(%)=[(I200−IAM)/I200]×100%
(式中、I200はX線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、IAMはアモルファス部(002面と110面間の最低部、回折角2θ=18.5°)の回折強度である)。
【0108】
[実施例1]
酢酸ビニル1gとDMSO9gとを20mlのサンプル瓶に入れ、磁性スターラーで混合液が均一に混ざるまで撹拌した。次に、セルロースパルプ0.3gを加え、さらに3時間撹拌した後、蒸留水で洗浄することにより解繊溶液(酢酸ビニルとDMSO)と副生物(アセトアルデヒドまたは酢酸)を除いた。得られたセルロース微細繊維について、修飾有無をFT−IR分析で確認し、走査型電子顕微鏡(SEM)で形状を観察し、XRD分析法で結晶化度を測定し、解繊度合および溶剤分散性を評価した。FT−IR分析の結果によりセルロース微細繊維の表面が修飾されないことが分った。SEM写真を図1に示す。SEM観察の結果、ほとんどの繊維径は100nm以下であり、平均繊維長は5μm以上であった。水への分散性を評価した結果、水またはジメチルアセトアミドによく分散できることを確認した。
【0109】
[実施例2]
酢酸ナトリウム0.01gをさらに加えた以外、実施例1と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例1と同様に評価した。結果は表1と図2に示すように、微細繊維の繊維径は100nm以下であり、FT−IR分析によりカルボニル基が確認された。さらに固体NMRを用いて定量分析した結果、表面の平均エステル置換度は0.25であった。また、乾燥した微細繊維はジメチルアセトアミドまたはアセトンに分散することを確認した。
【0110】
[実施例3]
酢酸カリウム0.01gをさらに加えた以外、実施例1と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例1と同様に評価した。結果は表1と図3に示すように、微細繊維の繊維径は100nm以下であり、表面の平均エステル置換度は0.3であった。また、乾燥した微細繊維はジメチルアセトアミドまたはアセトンに分散することを確認した。
【0111】
[実施例4]
炭酸水素ナトリウム0.15gをさらに加えた以外、実施例1と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例1と同様に評価した。微細繊維の繊維径は100nm以下であり、表面の平均エステル置換度は0.42であった。また、乾燥した微細繊維はジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフランに分散することを確認した。
【0112】
[実施例5]
炭酸ナトリウム0.01gをさらに加えた以外、実施例1と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例1と同様に評価した。微細繊維の繊維径は100nm以下であり、表面の平均エステル置換度は0.40であった。また、乾燥した微細繊維はジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフランに分散することを確認した。
【0113】
[実施例6]
炭酸カリウム0.01gをさらに加えた以外、実施例1と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例1と同様に評価した。微細繊維の繊維径は100nm以下であり、表面の平均エステル置換度は0.53であった。また、乾燥した微細繊維はジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトンに分散することを確認した。
【0114】
[実施例7]
酢酸ビニル1gに代えてプロピオン酸ビニル1gを、酢酸ナトリウム0.01gに代えて酢酸ナトリウム0.02gを用いた以外、実施例2と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例1と同様に評価した。微細繊維の繊維径は100nm以下であり、表面の平均エステル置換度は0.43であった。また、乾燥した微細繊維はジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトンに分散することを確認した。
【0115】
[実施例8]
プロピオン酸ビニルに代えて酪酸ビニルを用いた以外、実施例7と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例7と同様に評価した。得られたセルロース微細繊維を実施例7と同様に評価した。微細繊維の繊維径は100nm以下であり、表面の平均エステル置換度は0.40であった。また、乾燥した微細繊維はジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトンに分散することを確認した。
【0116】
[実施例9]
酢酸ビニルの含有量を0.2gに、DMSOの含有量を9.8gにそれぞれ変更した以外は実施例4と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例4と同様に評価した。繊維径と修飾率は実施例4とほぼ同等であった。また、乾燥した微細繊維はジメチルアセトアミド、アセトン、テトラヒドロフランに分散することを確認した。
【0117】
[実施例10]
DMSOの含有量を9gから8gにしたこと、および、ピリジン1gをさらに添加したこと、撹拌時間を2時間に変更した以外は実施例1と同様にしてセルロース微細繊維を得た。IRスペクトルによりカルボニル基の吸収バンドを確認できなかったが、得られたセルロース微細繊維のSEM写真は図4に示す。繊維径は実施例1と比べ小さかった。溶媒分散性は実施例1とほぼ同等で水またはジメチルアセトアミドに分散可能であった。ピリジンの添加により解繊を促進できると判明した。
【0118】
[実施例11]
炭酸ナトリウムの含有量を0.01gから0.08gに変更した以外は実施例3と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例3と同様に評価した。微細繊維の形状は実施例3で得られた微細繊維とほぼ同等であったが、エステル化置換度は0.51まで増大した。
【0119】
(比較例1)
DMSOをアセトンに変更した以外は実施例1と同様にして解繊を行った。パルプはほとんど膨潤しなかった。実施例1と同様に洗浄し固形分を回収した。回収した固形分の光学顕微鏡写真を図5に示す。繊維のほとんどは数μm〜数十μmの大きい繊維であった。
【0120】
(比較例2)
DMSOをジオキサンに変更した以外は実施例1と同様にして解繊を行った。パルプはほとんど膨潤しなかった。実施例1と同様に洗浄し固形分を回収した。回収した固形分の光学顕微鏡写真を図6に示す。ほとんどは数μm〜数十μmの大きい繊維であった。
【0121】
(比較例3)
酢酸ビニルを塩化ラウロイルに変更した以外は実施例1と同様にして解繊を行った。実施例1と同様に洗浄し固形分を回収した。固形分の平均置換度は実施例2と同様に評価した。また、形状は比較例1と同様に光学顕微鏡で観察した。結果を図7に示す。ほとんどは数μm〜数十μmの大きい繊維であった。エステル平均置換度は0.6であったので、修飾反応が先に繊維の表面に進んで、繊維の内部に浸透しあにため解繊がほとんど進まなかった。
【0122】
実施例および比較例で得られた修飾セルロース微細繊維の評価結果を表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
[実施例12]
プロピオンアルデヒド1gとDMSO9gとを20mlのサンプル瓶に入れ、磁性スターラーで混合液が均一に混ざるまで撹拌した。次に、セルロースパルプ0.35gを加え、さらに3時間撹拌した後、蒸留水で洗浄することにより解繊溶液(プロピオンアルデヒドとDMSO)を除いた。得られたセルロース微細繊維について、修飾有無をFT−IR分析で確認し、光学顕微鏡で解繊度合を観察し、XRD分析法で結晶化度を測定した。FT−IR分析の結果(図8)によりセルロース微細繊維の表面が修飾されないことが分った。光学顕微鏡画像の写真を図9に示す。XRD分析により、セルロース微細繊維の結晶化度は87%であることがわかった。光顕観察の結果、セルロース微細繊維の繊維径はサブミクロン以下であった。得られた微細繊維は105℃で乾燥した後、水に再び分散できた。
【0125】
[実施例13]
解繊溶液においてプロピオンアルデヒドの含有量を0.5gにした以外は、実施例12と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例12と同様に評価した。セルロース微細繊維の形状、結晶化度およびIRスペクトルは実施例12とほぼ同等であった。
【0126】
[実施例14]
解繊溶液においてプロピオンアルデヒドの含有量を0.1gにした以外は、実施例12と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例12と同様に評価した。セルロース微細繊維の形状、結晶化度およびIRスペクトルは実施例12とほぼ同等であった。
【0127】
[実施例15]
解繊溶液に無水酢酸1gと炭酸水素ナトリウム0.15gをさらに加えた以外、実施例12と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例12と同様に評価した。微細繊維の光学顕微鏡画像の写真を図10に示す。IRスペクトルを図11に示す。表面の平均エステル置換度は0.32であった。また、乾燥した微細繊維はジメチルアセトアミドまたはエタノールに再分散することを確認した。
【0128】
[実施例16]
無水酢酸に代えて、無水プロピオン酸1.5gを加えた以外、実施例15と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例12と同様に評価した。微細繊維の表面の平均エステル置換度は0.25であった。また、乾燥した微細繊維はジメチルアセトアミド、アセトンに分散することを確認した。
【0129】
[実施例17]
無水酢酸に代えて、無水酪酸1.8gを加えた以外、実施例15と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例12と同様に評価した。微細繊維の表面の平均エステル置換度は0.20であった。また、乾燥した微細繊維はジメチルアセトアミド、アセトンに分散することを確認した。
【0130】
[実施例18]
解繊の後にプロピオンアルデヒドと水分を蒸留し、次いでN−メチル−2−ピロリドン(NMP)6g、(2−イソシアナトエチルメタクリレート)MOI1.5gとトリエチルアミン0.8gを加え、60℃で2時間撹拌した以外、実施例12と同様にしてセルロース微細繊維を洗浄した。得られたセルロース微細繊維を実施例12と同様に評価した。微細繊維の光学顕微鏡画像の写真を図12、IRスペクトルを図13に示す。微細繊維の形状と結晶化度は実施例12で得られた微細繊維とほぼ同等であった。FT−IR分析で確認したところ、周波数1700〜1760cm−1付近のエステル結合(C=O)の吸収バンドと、周波数1550cm−1付近のイソシアネート結合の吸収バンドが強く検出されたため、MOIによる修飾ができたと確認した。また、乾燥した微細繊維はアセトンとメチルエチルケトンに分散することを確認した。
【0131】
[実施例19]
DMSOの含有量を9gから8gにしたこととピリジン1gをさらに加えた以外は実施例12と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例12と同様に評価した。IRスペクトルは実施例と同等であったが、光学顕微鏡画像(図14)から改善度合が実施例12より改善できると判明した。
【0132】
[実施例20]
炭酸水素ナトリウムに代えて炭酸ナトリウムを用いた以外は実施例15と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例15と同様に評価した。微細繊維の形状、結晶化度および修飾率は実施例15で得られた微細繊維とほぼ同等であった。
【0133】
[実施例21]
炭酸水素ナトリウムに代えて酢酸ナトリウムを用いた以外は実施例15と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例15と同様に評価した。微細繊維の形状、結晶化度および修飾率は実施例15で得られた微細繊維とほぼ同等であった。
【0134】
[実施例22]
炭酸水素ナトリウムに代えて酢酸カリウムを用いた以外は実施例15と同様にしてセルロース微細繊維を得た。得られたセルロース微細繊維を実施例15と同様に評価した。微細繊維の形状、結晶化度および修飾率は実施例15で得られた微細繊維とほぼ同等であった。
【0135】
(比較例4)
DMSOに代えてアセトンを用いた以外は実施例12と同様にして解繊を行った。パルプはチップのまま全く分散または膨潤しなかった。
【0136】
(比較例5)
DMSOに代えてジオキサンを用いた以外は実施例12と同様にして解繊を行った。パルプは比較例4と同様に、ほとんどチップのまま全く分散または膨潤しなかった。実施例12と同様に洗浄し固形分を回収した。回収した固形分の外観は比較例4とほぼ同等であった。
【0137】
(比較例6)
プロピオンアルデヒドを添加しない以外は実施例12と同様にして解繊を行った。実施例12と同様に洗浄し固形分を回収した。固形分の形状は実施例12と同様に光学顕微鏡で観察した。光学顕微鏡画像の写真を図15に示す。一部はサブミクロンサイズまで解繊されたものの、数μm〜数十μmの繊維径の大きな繊維が多く残留することが判明した。
【0138】
【表2】
【0139】
表1および表2の結果から明らかなように、実施例で得られたセルロース微細繊維は、解繊が進んでいるのに対して、比較例で得られた修飾セルロース微細繊維は、解繊がほとんど進んでいなかった。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の製造方法により得られるセルロース微細繊維および修飾セルロース微細繊維は、各種複合材料、コーティング剤に利用でき、シートやフィルムに成形して利用することもできる。
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図15