特許第6633183号(P6633183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633183
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】繊維処理剤
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/263 20060101AFI20200109BHJP
   D06M 15/347 20060101ALI20200109BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20200109BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20200109BHJP
【FI】
   D06M15/263
   D06M15/347
   C08F220/06
   D06M101:32
【請求項の数】28
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2018-507275(P2018-507275)
(86)(22)【出願日】2017年3月16日
(86)【国際出願番号】JP2017010608
(87)【国際公開番号】WO2017164058
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2018年8月31日
(31)【優先権主張番号】特願2016-61321(P2016-61321)
(32)【優先日】2016年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】黒木 智也
(72)【発明者】
【氏名】大谷 真理
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−348780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 15/263
D06M 15/347
C08F 220/06
D06M 101/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有単量体(a)由来の構造単位(I)と水酸基含有単量体(b)由来の構造単位(II)とを有する共重合体(A)を含む、繊維への吸放湿性付与用繊維処理剤であって、
該カルボキシル基含有単量体(a)が一般式(a−1)で表され、該構造単位(I)が一般式(I−1)で表され、
【化1】
(一般式(a−1)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CHCOOM基を表し、−(CHCOOM基は−COOX基または他の−(CHCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表し、Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
【化2】
(一般式(I−1)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CHCOOM基を表し、−(CHCOOM基は−COOX基または他の−(CHCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表し、Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
該水酸基含有単量体(b)が一般式(2)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を含む、
【化3】
(一般式(2)中、R10およびR11は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは1〜500の数であり、xは0〜2の整数である。)
繊維処理剤。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有単量体(a)がモノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a1)である、請求項1に記載の繊維処理剤。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有単量体(a)が(メタ)アクリル酸(塩)である、請求項2に記載の繊維処理剤。
【請求項4】
前記水酸基含有単量体(b)が、3−メチル−3−ブテン−1−オールにアルキレンオキシドを平均1〜500モル付加した化合物である、請求項1から3までのいずれかに記載の繊維処理剤。
【請求項5】
前記アルキレンオキシドの平均付加モル数が8〜500モルである、請求項4に記載の繊維処理剤。
【請求項6】
前記水酸基含有単量体(b)が、一般式(1)で表されるスルホン酸基含有エーテル化合物を含む、請求項1から5までのいずれかに記載の繊維処理剤。
【化4】
(一般式(1)中、Rは、単結合、CH、CHCHのいずれかであり、Rは、H、CHのいずれかであり、X、Yのいずれか一方は水酸基であり、もう一方はスルホン酸(塩)基である。)
【請求項7】
オキサゾリン基を有する架橋剤(B)を含む、請求項1から6までのいずれかに記載の繊維処理剤。
【請求項8】
繊維生地を該繊維処理剤の水溶液にディッピングした後に脱水し、加熱乾燥することで、繊維生地に該繊維処理剤を固定するための、請求項1から7までのいずれかに記載の繊維処理剤。
【請求項9】
前記繊維生地が乾燥した繊維生地である、請求項8に記載の繊維処理剤。
【請求項10】
ポリエステル繊維を処理する、請求項1から9までのいずれかに記載の繊維処理剤。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれかに記載の繊維処理剤を用いて繊維を処理する、繊維処理方法。
【請求項12】
繊維生地を前記繊維処理剤の水溶液にディッピングする工程と、その後に脱水する工程と、加熱乾燥によって繊維生地に該繊維処理剤を固定化する工程とを含む、請求項11に記載の繊維処理方法。
【請求項13】
前記ディッピングする工程の前に、繊維生地を乾燥させる、請求項12に記載の繊維処理方法。
【請求項14】
前記固定化する工程における加熱乾燥の温度が100℃〜160℃である、請求項12または13に記載の繊維処理方法。
【請求項15】
カルボキシル基含有単量体(a)由来の構造単位(I)と水酸基含有単量体(b)由来の構造単位(II)とを有する共重合体(A)を含む、繊維への洗濯耐久性付与用繊維処理剤であって、
該カルボキシル基含有単量体(a)が一般式(a−1)で表され、該構造単位(I)が一般式(I−1)で表され、
【化5】
(一般式(a−1)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CHCOOM基を表し、−(CHCOOM基は−COOX基または他の−(CHCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表し、Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
【化6】
(一般式(I−1)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CHCOOM基を表し、−(CHCOOM基は−COOX基または他の−(CHCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表し、Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
該水酸基含有単量体(b)が、3−メチル−3−ブテン−1−オールにアルキレンオキシドを平均1〜500モル付加した化合物および一般式(1)で表されるスルホン酸基含有エーテル化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、
【化7】
(一般式(1)中、Rは、単結合、CH、CHCHのいずれかであり、Rは、H、CHのいずれかであり、X、Yのいずれか一方は水酸基であり、もう一方はスルホン酸(塩)基である。)
繊維処理剤。
【請求項16】
前記カルボキシル基含有単量体(a)がモノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a1)である、請求項15に記載の繊維処理剤。
【請求項17】
前記カルボキシル基含有単量体(a)が(メタ)アクリル酸(塩)である、請求項16に記載の繊維処理剤。
【請求項18】
前記アルキレンオキシドの平均付加モル数が8〜500モルである、請求項15から17までのいずれかに記載の繊維処理剤。
【請求項19】
オキサゾリン基を有する架橋剤(B)を含む、請求項15から18までのいずれかに記載の繊維処理剤。
【請求項20】
繊維生地を該繊維処理剤の水溶液にディッピングした後に脱水し、加熱乾燥することで、繊維生地に該繊維処理剤を固定するための、請求項15から19までのいずれかに記載の繊維処理剤。
【請求項21】
前記繊維生地が乾燥した繊維生地である、請求項20に記載の繊維処理剤。
【請求項22】
ポリエステル繊維を処理する、請求項15から21までのいずれかに記載の繊維処理剤。
【請求項23】
請求項22に記載の繊維処理剤で処理されてなる、ポリエステル繊維。
【請求項24】
繊維と請求項15から21までのいずれかに記載の繊維処理剤とを含む、繊維処理剤組成物。
【請求項25】
請求項15から21までのいずれかに記載の繊維処理剤を用いて繊維を処理する、繊維処理方法。
【請求項26】
繊維生地を前記繊維処理剤の水溶液にディッピングする工程と、その後に脱水する工程と、加熱乾燥によって繊維生地に該繊維処理剤を固定化する工程とを含む、請求項25に記載の繊維処理方法。
【請求項27】
前記ディッピングする工程の前に、繊維生地を乾燥させる、請求項26に記載の繊維処理方法。
【請求項28】
前記固定化する工程における加熱乾燥の温度が100℃〜160℃である、請求項26または27に記載の繊維処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、セルロース繊維やポリエステル繊維などを用いたドライ系繊維の需要が高くなっている。このような従来のドライ系繊維に対して、さらに優れた吸放湿性を付与できる技術が求められている。
【0003】
従来、繊維への繊維処理剤のコーティングによって各種機能性を付与する技術が知られている(例えば、特許文献1)。しかし、このようにコーティングによって各種機能性が付与された繊維は、洗濯耐久性に劣り、洗濯によって各種機能性が大きく低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−280652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、優れた吸放湿性を付与できるとともに洗濯耐久性に優れる繊維処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の繊維処理剤は、
カルボキシル基含有単量体(a)由来の構造単位(I)と水酸基含有単量体(b)由来の構造単位(II)とを有する共重合体(A)を含む。
【0007】
一つの実施形態においては、上記カルボキシル基含有単量体(a)が一般式(a−1)で表され、上記構造単位(I)が一般式(I−1)で表される。
【化1】
(一般式(a−1)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CHCOOM基を表し、−(CHCOOM基は−COOX基または他の−(CHCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表し、Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
【化2】
(一般式(I−1)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CHCOOM基を表し、−(CHCOOM基は−COOX基または他の−(CHCOOM基と無水物を形成していても良く、zは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表し、Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。)
【0008】
一つの実施形態においては、上記カルボキシル基含有単量体(a)が(メタ)アクリル酸(塩)である。
【0009】
一つの実施形態においては、上記水酸基含有単量体(b)が一般式(b−1)で表され、上記構造単位(II)が一般式(II−1)で表される。
【化3】
(一般式(b−1)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、pは0〜2の整数であり、Rは、水酸基を有し、ヘテロ原子を有していてもよい有機基を表す。)
【化4】
(一般式(II−1)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、pは0〜2の整数であり、Rは、水酸基を有し、ヘテロ原子を有していてもよい有機基を表す。)
【0010】
一つの実施形態においては、上記水酸基含有単量体(b)が一般式(1)で表されるスルホン酸基含有エーテル化合物である。
【化5】
(一般式(1)中、Rは、単結合、CH、CHCHのいずれかであり、Rは、H、CHのいずれかであり、X、Yのいずれか一方は水酸基であり、もう一方はスルホン酸(塩)基である。)
【0011】
一つの実施形態においては、上記水酸基含有単量体(b)が一般式(2)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体である。
【化6】
(一般式(2)中、R10およびR11は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは1〜500の数であり、xは0〜2の整数である。)
【0012】
一つの実施形態においては、本発明の繊維処理剤は、オキサゾリン基を有する架橋剤(B)を含む。
【0013】
一つの実施形態においては、本発明の繊維処理剤は、セルロース繊維を処理する。
【0014】
一つの実施形態においては、本発明の繊維処理剤は、ポリエステル繊維を処理する。
【0015】
本発明のセルロース繊維は、本発明の繊維処理剤で処理されてなる。
【0016】
本発明のポリエステル繊維は、本発明の繊維処理剤で処理されてなる。
【0017】
本発明の繊維処理剤組成物は、繊維と本発明の繊維処理剤とを含む。
【0018】
本発明の繊維処理方法は、本発明の繊維処理剤を用いて繊維を処理する。
【0019】
一つの実施形態においては、本発明の繊維処理方法は、上記繊維処理剤によって繊維の表面をコーティングする工程と加熱乾燥する工程とを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた吸放湿性を付与できるとともに洗濯耐久性に優れる繊維処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書中で重さを示すSI系単位として知られている「質量」との表現がある場合は、従来一般に重さの単位として慣用されている「重量」と読み替えてもよく、逆に、本明細書中で従来一般に重さの単位として慣用されている「重量」との表現がある場合は、重さを示すSI系単位として知られている「質量」と読み替えてもよい。
【0022】
本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、酸および/または酸塩を意味する。「塩」としては、好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の有機アミン塩;などが挙げられる。「塩」は、1種のみであっても良いし、2種以上の混合物であっても良い。「塩」としては、より好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩であり、さらに好ましくは、ナトリウム塩である。
【0023】
本明細書中で「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」との表現がある場合は、「アリルおよび/またはメタリル」を意味し、「(メタ)アクロレイン」との表現がある場合は、「アクロレインおよび/またはメタクロレイン」を意味する。
【0024】
「単量体由来の構造単位」とは、単量体中の重合反応に関与する不飽和二重結合が重合反応によって単結合となった構造単位を意味し、具体的には、単量体を「RC=CR」で表した場合、共重合体中の「−RC−CR−」で表される構造単位を意味する。例えば、アクリル酸由来の構造単位は、「−CH−CH(COOH)−」で表され、マレイン酸由来の構造単位は、「−CH(COOH)−CH(COOH)−」で表される。
【0025】
≪≪繊維処理剤≫≫
本発明の繊維処理剤は、カルボキシル基含有単量体(a)由来の構造単位(I)と水酸基含有単量体(b)由来の構造単位(II)とを有する共重合体(A)を含む。このような共重合体(A)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0026】
本発明の繊維処理剤中に含まれる共重合体(A)の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは70質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは90質量%〜100質量%であり、特に好ましくは95質量%〜100質量%であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。なお、「実質的に100質量%」とは、本発明の効果の発現に影響しない成分を極微量含むような場合を意味する。本発明の繊維処理剤中に含まれる共重合体(A)の含有割合が上記範囲内にあれば、本発明の繊維処理剤は、より優れた吸放湿性を付与できるとともに洗濯耐久性により優れる。
【0027】
本発明の繊維処理剤中には、共重合体(A)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含んでいてもよい。このようなその他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0028】
本発明の繊維処理剤は、水溶液として使用してもよい。水溶液とする場合、該水溶液中の繊維処理剤の含有割合は、固形分濃度で、好ましくは3質量%〜80質量%であり、より好ましくは5質量%〜70質量%であり、さらに好ましくは7質量%〜60質量%であり、特に好ましくは10質量%〜55質量%である。
【0029】
共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは500〜1,500,000であり、より好ましくは1,000〜1,200,000であり、さらに好ましくは1,500〜1,000,000であり、特に好ましくは2,000〜800,000であり、最も好ましくは2,500〜600,000である。共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)が上記範囲内にあれば、本発明の繊維処理剤は、より優れた吸放湿性を付与できるとともに洗濯耐久性により優れる。なお、共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)の測定方法の詳細は後述する。
【0030】
共重合体(A)は、カルボキシル基含有単量体(a)由来の構造単位(I)と水酸基含有単量体(b)由来の構造単位(II)とを有していれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の単量体(c)由来の構造単位(III)を有していてもよい。カルボキシル基含有単量体(a)由来の構造単位(I)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。水酸基含有単量体(b)由来の構造単位(II)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。他の単量体(c)由来の構造単位(III)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0031】
共重合体(A)の全構造単位中の、構造単位(I)と構造単位(II)の合計の含有割合は、モル割合で、好ましくは10モル%〜100モル%であり、より好ましくは20モル%〜100モル%であり、さらに好ましくは25モル%〜100モル%であり、特に好ましくは30モル%〜100モル%であり、最も好ましくは35モル%〜100モル%である。共重合体(A)の全構造単位中の、構造単位(I)と構造単位(II)の合計の含有割合が、上記範囲内にあれば、本発明の繊維処理剤は、より優れた吸放湿性を付与できるとともに洗濯耐久性により優れる。
【0032】
共重合体(A)中、構造単位(I)と構造単位(II)の含有比率は、モル比で、(I):(II)が、好ましくは99:1〜1:99であり、より好ましくは99:1〜5:95であり、さらに好ましくは99:1〜10:90であり、特に好ましくは98:2〜15:85であり、最も好ましくは98:2〜20:80である。構造単位(I)と構造単位(II)の含有比率が上記範囲内にあれば、本発明の繊維処理剤は、より優れた吸放湿性を付与できるとともに洗濯耐久性により優れる。
【0033】
本発明の繊維処理剤は、それに含まれる共重合体(A)が有する構造単位(I)の有するカルボキシル基と構造単位(II)の有する水酸基が、好ましくは加熱処理によって、自己架橋反応を起こし得る。また、本発明の繊維処理剤は、それに含まれる共重合体(A)が有する構造単位(I)の有するカルボキシル基が、処理する繊維(例えば、セルロース繊維)の表面に有し得る水酸基と、好ましくは加熱処理によって、架橋反応を起こし得る。また、本発明の繊維処理剤は、それに含まれる共重合体(A)が有する構造単位(II)の有する水酸基が、処理する繊維(例えば、ポリエステル繊維)の表面に有し得るカルボキシル基と、好ましくは加熱処理によって、架橋反応を起こし得る。このような自己架橋反応や架橋反応により、本発明の繊維処理剤は、より優れた吸放湿性を付与できるとともに洗濯耐久性により優れる。
【0034】
カルボキシル基含有単量体(a)としては、カルボキシル基と重合性不飽和二重結合を有する単量体であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な単量体を採用し得る。
【0035】
カルボキシル基含有単量体(a)としては、好ましくは、一般式(a−1)で表される単量体が挙げられる。この場合、カルボキシル基含有単量体(a)由来の構造単位(I)としては、好ましくは、一般式(I−1)で表される構造単位が挙げられる。このような一般式(a−1)で表される単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0036】
【化1】
【0037】
【化2】
【0038】
一般式(a−1)および一般式(I−1)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CHCOOM基を表す。−(CHCOOM基は−COOX基または他の−(CHCOOM基と無水物を形成していても良い。zは0〜2の整数である。
【0039】
Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
【0040】
一般式(a−1)および一般式(I−1)中、Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
【0041】
一般式(a−1)で表されるカルボキシル基含有単量体としては、例えば、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a1)、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(a2)などが挙げられる。
【0042】
モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a1)としては、好ましくは、炭素数3〜8個のモノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体である。このようなモノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸(塩)、クロトン酸(塩)、イソクロトン酸(塩)、α−ヒドロキシアクリル酸(塩)などが挙げられる。モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a1)としては、好ましくは、(メタ)アクリル酸(塩)であり、より好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0043】
モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(a2)としては、好ましくは、炭素数4〜6個のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である。このようなモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(a2)としては、例えば、マレイン酸(塩)、イタコン酸(塩)、メサコン酸(塩)、フマル酸(塩)、シトラコン酸(塩)、これらの中で無水物の形を有し得るものはその無水物などが挙げられる。モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(a2)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(a2)としては、好ましくは、マレイン酸(塩)、無水マレイン酸(塩)である。
【0044】
モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a1)やモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(a2)における「塩」としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩、有機アミン塩などが挙げられる。
【0045】
アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
【0046】
有機アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0047】
有機アミン塩としては、例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩、ジヒドロキシエチルイソプロパノールアミン塩、テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ジエタノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩、テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン塩、ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン塩であり、より好ましくは、ジエタノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩、ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン塩である。
【0048】
水酸基含有単量体(b)としては、水酸基と重合性不飽和二重結合を有する単量体であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な単量体を採用し得る。
【0049】
水酸基含有単量体(b)としては、好ましくは、一般式(b−1)で表される単量体が挙げられる。この場合、水酸基含有単量体(b)由来の構造単位(II)としては、好ましくは、一般式(II−1)で表される構造単位が挙げられる。このような一般式(b−1)で表される単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0050】
【化3】
【0051】
【化4】
【0052】
一般式(b−1)および一般式(II−1)中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。
【0053】
一般式(b−1)および一般式(II−1)中、pは0〜2の整数である。
【0054】
一般式(b−1)および一般式(II−1)中、Rは、水酸基を有し、ヘテロ原子を有していてもよい有機基を表す。Rは、より具体的には、水酸基を少なくとも1つ有する有機基であり、該有機基は、酸素原子や硫黄原子や窒素原子などのヘテロ原子を有していてもよいものである。
【0055】
このような水酸基含有単量体(b)としては、例えば、一般式(1)で表されるスルホン酸基含有エーテル化合物、一般式(2)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体、化学式(3)で表される1−アリルオキシ−3−ブトキシプロパン−2−オール、化学式(4)で表されるイソプレノールのヘキセンオキサイド付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、イソプレノール、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、3−(メタ)アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン1モルに対してエチレンオキサイドを1モル〜200モル付加させた化合物(3−アリルオキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン等)、(メタ)アリルアルコール、(メタ)アリルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを1モル〜100モル付加させた化合物などが挙げられる。水酸基含有単量体(b)としてこれらのものを採用する場合、これらの中の1種のみであってもよいし、これらの中からの2種以上であってもよい。
【0056】
【化5】
【0057】
一般式(1)中、Rは、単結合、CH、CHCHのいずれかである。本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、Rは、好ましくはCHである。
【0058】
一般式(1)中、Rは、H、CHのいずれかである。
【0059】
一般式(1)中、X、Yのいずれか一方は水酸基であり、もう一方はスルホン酸(塩)基である。ここで、スルホン酸(塩)基とは、スルホン酸基および/またはスルホン酸塩基を意味する。本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、好ましくは、Xが水酸基であり、Yがスルホン酸(塩)基である。
【0060】
スルホン酸基は、SOHで表される。スルホン酸塩基SOMで表される。Mは、金属原子、アンモニウム基(アンモニウム塩、すなわち、SONHを構成)、または有機アミノ基(有機アミン塩を構成)である。金属原子としては、ナトリウム原子やカリウム原子などのアルカリ金属、カルシウム原子などのアルカリ土類金属、鉄原子などの遷移金属などが挙げられる。有機アミン塩としては、メチルアミン塩、n−ブチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、ジメチルアミン塩、ジエタノールアミン塩、モルホリン塩、トリメチルアミン塩などの、1級〜4級のアミン塩が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果を十分に発現させるためには、Mは、ナトリウム原子、カリウム原子が好ましい。
【0061】
一般式(1)で表されるスルホン酸基含有エーテル化合物は、本発明の効果をより効果的に発現させ得る点で、具体的には、好ましくは、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウムであり、より好ましくは、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(以下、「HAPS」と称することがある)である。ここで、「(メタ)アリル」とは、アリルおよび/またはメタリルを意味する。
【0062】
【化6】
【0063】
一般式(2)中、R10およびR11は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。
【0064】
一般式(2)中、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。また、AOが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等の中から選ばれる任意の2種類以上の場合は、AOの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基が必須成分として含まれることが好ましく、オキシアルキレン基全体の50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、オキシアルキレン基全体の90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましく、オキシアルキレン基全体の100モル%がオキシエチレン基であることが特に好ましい。
【0065】
一般式(2)中、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数(「鎖長」と称することがある)を表し、1〜500の数であり、好ましくは2〜200の数であり、より好ましくは5〜200の数であり、さらに好ましくは8〜100の数であり、特に好ましくは8〜70の数であり、最も好ましくは8〜60の数である。
【0066】
一般式(2)中、xは0〜2の整数である。
【0067】
一般式(2)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体としては、例えば、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オールのいずれかにアルキレンオキシドを平均1〜500モル付加した化合物が挙げられ、好ましくは、3−メチル−3−ブテン−1−オールにアルキレンオキシドを平均1〜500モル付加した化合物、メタリルアルコールにアルキレンオキシドを平均1〜500モル付加した化合物である。
【0068】
一般式(2)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を採用すると、本発明の繊維処理剤で処理されてなる繊維は、例えば、風合いが改善された繊維となり得る。
【0069】
【化7】
【0070】
【化8】
【0071】
他の単量体(c)としては、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−メチル−1,3−ブタジエン−1−スルホン酸等の共役ジエンスルホン酸等のスルホン酸系単量体、およびそれらの塩;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアミド系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;等が挙げられる。
【0072】
共重合体(A)は、カルボキシル基含有単量体(a)と水酸基含有単量体(b)とを含み、必要に応じて他の単量体(c)を含む単量体成分を重合して製造し得る。
【0073】
単量体成分中の、カルボキシル基含有単量体(a)と水酸基含有単量体(b)の合計の含有割合は、モル割合で、好ましくは10モル%〜100モル%であり、より好ましくは20モル%〜100モル%であり、さらに好ましくは25モル%〜100モル%であり、特に好ましくは30モル%〜100モル%であり、最も好ましくは35モル%〜100モル%である。単量体成分中の、カルボキシル基含有単量体(a)と水酸基含有単量体(b)の合計の含有割合が、上記範囲内にあれば、本発明の繊維処理剤は、より優れた吸放湿性を付与できるとともに洗濯耐久性により優れる。
【0074】
単量体成分中、カルボキシル基含有単量体(a)と水酸基含有単量体(b)の含有比率は、モル比で、(a):(b)が、好ましくは99:1〜1:99であり、より好ましくは99:1〜5:95であり、さらに好ましくは99:1〜10:90であり、特に好ましくは98:2〜15:85であり、最も好ましくは98:2〜20:80である。構造単位(a)と構造単位(b)の含有比率が上記範囲内にあれば、本発明の繊維処理剤は、より優れた吸放湿性を付与できるとともに洗濯耐久性により優れる。
【0075】
共重合体(A)を製造する際において採用し得る重合方法については、任意の適切な重合方法を採用し得る。このような重合方法としては、例えば、水性溶媒中で重合開始剤の存在下、場合により連鎖移動剤を用いて、重合を行う方法が挙げられる。
【0076】
共重合体(A)を製造する際において用い得る溶媒としては、好ましくは水性溶媒である。水性溶媒としては、例えば、水、アルコール、グリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、好ましくは水である。なお、単量体の溶媒への溶解性向上のため、必要に応じて、重合に悪影響を及ぼさない範囲で、任意の適切な有機溶媒を適宜加えてもよい。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;などが挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0077】
共重合体(A)を製造する際において用い得る溶媒の使用量は、単量体成分の全量に対して、好ましくは25質量%〜500質量%であり、より好ましくは40質量%〜400質量%であり、さらに好ましくは60質量%〜350質量%である。溶媒の使用量が単量体成分の全量に対して25質量%未満の場合、重合中に粘度が上昇して混合が不十分となってゲルが生成するという問題が生じるおそれがある。溶媒の使用量が単量体成分の全量に対して500質量%を超えると、所望の分子量の共重合体を得ることが困難になるという問題が生じるおそれがある。
【0078】
溶媒の多くまたは全量は、重合初期に反応容器内に仕込んでおけば良いし、例えば、溶媒の一部を、単独で重合中に反応系内に適当に添加(滴下)しても良いし、単量体や重合開始剤や連鎖移動剤やその他の添加剤を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合中に反応系内に適当に添加(滴下)しても良い。
【0079】
重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合開始剤を採用し得る。このような重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、本発明の効果を十分に発現し得る点で、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩が好ましい。
【0080】
重合開始剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0081】
重合開始剤の使用量は、共重合反応が適切に開始できる量であれば、任意の適切な量を採用し得る。このような量としては、例えば、単量体全量1モルに対して、好ましくは15g以下であり、より好ましくは0.5g〜12gである。また、本発明の共重合体を製造する場合において、マレイン酸比率を20モル%以上とする場合は、例えば、単量体全量1モルに対して、好ましくは、20g以下であり、より好ましくは、1g〜15gであり、鉄触媒と組み合わせて使用することがより好ましい。
【0082】
共重合体(A)を製造する際においては、必要に応じ、共重合反応に悪影響を及ぼさない範囲内で、得られる共重合体(A)の分子量調整等を目的として、連鎖移動剤を用いても良い。
【0083】
連鎖移動剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な連鎖移動剤を採用し得る。このような連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、重亜硫酸、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物およびその塩;などが挙げられる。これらの連鎖移動剤の中でも、本発明の効果を十分に発現し得る点で、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等の重亜硫酸塩、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)が好ましい。
【0084】
連鎖移動剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0085】
連鎖移動剤の使用量は、単量体の共重合反応を適切に進行させ得る量であれば、任意の適切な量を採用し得る。このような量としては、例えば、単量体全量1モルに対して、好ましくは0.5g〜20gであり、より好ましくは1g〜15gであり、さらに好ましくは1g〜10gである。
【0086】
重合開始剤および連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、例えば、滴下、分割投入等の連続投入方法を適用することができる。また、連鎖移動剤を単独で反応容器へ導入しても良く、単量体成分を構成する各単量体、溶媒等とあらかじめ混同しておいても良い。
【0087】
共重合体(A)を製造する際においては、重合反応の際、重合反応系内に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の添加剤を使用し得る。このような他の添加剤としては、例えば、反応促進剤、重金属濃度調整剤、pH調整剤などが挙げられる。反応促進剤は、例えば、重合開始剤などの使用量を低減する等の目的で用いられる。重金属濃度調整剤は、例えば、反応容器等から微量に金属が溶出した場合に起こる、重合反応への影響を軽減する等の目的で用いられる。pH調整剤は、例えば、重合反応を効率化し、開始剤系として重亜硫酸塩を使用する場合に亜硫酸ガスの発生および装置の腐食を防ぐ等の目的で用いられる。
【0088】
反応促進剤としては、例えば、重金属化合物が利用できる。具体的には、例えば、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジル、硫酸バナジル、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス[(NHSO・VSO・6HO]、硫酸アンモニウムバナダス[(NH)V(SO・12HO]、酢酸銅(II)、銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅アンモニウム、塩化銅アンモニウム、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第一銅、シアン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、鉄アセチルアセナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸鉄アンモニウム、モール塩、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性多価金属塩;五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄等の多価金属酸化物;硫化鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化銅等の多価金属硫化物;銅粉末;鉄粉末;などを挙げることができる。反応促進剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0089】
重金属濃度調整剤としては、例えば、多価金属化合物または単体が利用できる。具体的には、例えば、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジル、硫酸バナジル、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス[(NHSO・VSO・6HO]、硫酸アンモニウムバナダス[(NH)V(SO・12HO]、酢酸銅(II)、銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅アンモニウム、塩化銅アンモニウム、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第一銅、シアン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、鉄アセチルアセナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸鉄アンモニウム、モール塩、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性多価金属塩;五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄等の多価金属酸化物;硫化鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化銅等の多価金属硫化物;銅粉末;鉄粉末;などを挙げることができる。重金属濃度調整剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0090】
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩;などが挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。なお、pH調整剤は、「中和剤」と称される場合がある。pH調整剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0091】
共重合体(A)を製造する際において、重合反応の重合温度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な温度に設定し得る。効率よく共重合体を製造し得る点で、重合温度の下限は、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは60℃以上であり、重合温度の上限は、好ましくは110℃以下であり、より好ましくは105℃以下である。また、重合温度の上限は、重合反応溶液の沸点以下の任意の適切な温度に設定してもよい。
【0092】
共重合体(A)を製造する際においては、室温から重合を開始する方法(室温開始法)の場合、例えば、1バッチ当たり240分で重合を行なう場合(180分処方)であれば、好ましくは0分〜70分の間に、より好ましくは0分〜50分の間に、さらに好ましくは0分〜30分の間に、設定温度(重合温度の範囲内であり、好ましくは70℃〜110℃であり、より好ましくは80℃〜105℃)に達するようにする。その後、重合終了までこの設定温度を維持することが好ましい。
【0093】
共重合体(A)を製造する際においては、反応系内の圧力は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な圧力に設定し得る。このような圧力としては、例えば、常圧(大気圧)、減圧、加圧が挙げられる。
【0094】
共重合体(A)を製造する際においては、反応系内の雰囲気は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な雰囲気に設定し得る。このような雰囲気としては、例えば、空気雰囲気、不活性ガス雰囲気が挙げられる。
【0095】
共重合体(A)を製造する際においては、単量体の重合反応は、酸性条件下で行うことが好ましい。酸性条件下で重合反応を行うことによって、重合反応系内の溶液の粘度の上昇を抑制し、低分子量の共重合体を良好に製造することができる。しかも、従来よりも高濃度の条件下で重合反応を進行させることができるため、製造効率を大幅に上昇させることができる。例えば、重合中の中和度を0mol%〜50mol%の範囲内に調整することで、重合開始剤量低減による効果を相乗的に高めることができ、不純物の低減効果を格段に向上させることができる。さらに、重合中の反応溶液の25℃でのpHを1〜6の範囲内に調整することが好ましい。このような酸性条件下で重合反応を行うことにより、高濃度かつ一段で重合を行うことができる。このため、従来の製造方法では場合によっては必要であった濃縮工程を省略することも可能である。したがって、共重合体の生産性が大幅に向上し、製造コストの上昇も抑制し得る。
【0096】
重合中の反応溶液の25℃でのpHは、好ましくは1〜6の範囲内であり、より好ましくは1〜5の範囲内であり、さらに好ましくは1〜4の範囲内である。重合中の反応溶液の25℃でのpHが1未満の場合、例えば、開始剤系として重亜硫酸塩を使用する場合に、亜硫酸ガスの発生や装置の腐食が生じるおそれがある。重合中の反応溶液の25℃でのpHが6を超える場合には、開始剤系として重亜硫酸塩を使用する場合に、重亜硫酸塩の使用効率が低下するおそれがあり、分子量が増大するおそれがある。
【0097】
重合中の反応溶液の25℃でのpHの調整は、例えば、前述のpH調整剤を用いれば良い。
【0098】
重合中の中和度は、好ましくは0mol%〜50mol%の範囲内であり、より好ましくは0mol%〜25mol%の範囲内であり、さらに好ましくは0mol%〜20mol%の範囲内である。重合中の中和度がこのような範囲内にあれば、単量体を良好に共重合させることが可能であり、不純物を低減させることが可能になる。
【0099】
中和の方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、(メタ)アクリル酸ナトリウムなどの(メタ)アクリル酸の塩を原料の一部として使用しても良いし、中和剤として、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物等を用いて重合中に中和してもよいし、これらを併用してもよい。また、中和の際の中和剤の添加形態は、固体で添加する形態であってもよいし、適当な溶媒(好ましくは水)に溶解した水溶液で添加する形態であってもよい。
【0100】
水溶液の形態で重合反応を行う場合の水溶液の濃度は、好ましくは10質量%〜80質量%であり、より好ましくは20質量%〜70質量%であり、さらに好ましくは30質量%〜60質量%である。水溶液の濃度が10質量%未満の場合、輸送および保管が煩雑となるおそれがある。水溶液の濃度が80質量%を超える場合、取り扱いが難しくなるおそれがある。
【0101】
重合に際しては、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、および、必要に応じて、その他の添加剤は、これらを予め適当な溶媒(好ましくは被滴下液用の溶媒と同種の溶媒)に溶解し、単量体溶液、重合開始剤溶液、連鎖移動剤溶液、および、必要に応じて、その他の添加剤溶液として、それぞれを反応容器内に仕込んだ溶媒(必要があれば所定の温度に調節したもの)に対して、所定の滴下時間に渡って連続的に滴下しながら重合することが好ましい。さらに溶媒の一部についても、反応系内の容器に予め仕込んでなる初期仕込みの溶媒とは別に、後から滴下してもよい。滴下方法に関しては、連続的に滴下しても良いし、断続的に何度かに小分けして滴下してもよい。また、単量体の1種または2種以上の一部または全量を初期仕込みしてもよい。また、単量体の1種または2種以上の滴下速度は、滴下の開始から終了まで常に一定としてもよいし、重合温度等に応じて経時的に滴下速度を変化させてもよい。また、全ての滴下成分を同じように滴下しなくても良く、滴下成分ごとに開始時や終了時をずらしてもよいし、滴下時間を短縮させたり延長させたりしてもよい。また、溶液の形態で各成分を滴下する場合には、反応系内の重合温度と同程度まで滴下溶液を加温しておいてもよい。このようにしておくと、重合温度を一定に保持する場合に、温度変動が少なくなり、温度調整が容易である。
【0102】
開始剤系として重亜硫酸塩を使用する場合、重亜硫酸塩は、重合初期の共重合体の重量平均分子量が最終の重量平均分子量に影響する。このため、重合初期の共重合体の重量平均分子量を低下させるために、重亜硫酸塩あるいはその溶液を、重合開始時より、好ましくは60分以内で、より好ましくは30分以内で、さらに好ましくは10分以内で、5質量%〜35質量%添加(滴下)することが好ましい。
【0103】
開始剤系として重亜硫酸塩を使用する場合、重亜硫酸塩あるいはその溶液の滴下終了時間は、単量体の滴下終了時間よりも、好ましくは1分〜30分、より好ましくは1分〜20分、さらに好ましくは1分〜15分、早めることがよい。これにより、重合終了後に残存する重亜硫酸塩の量を低減でき、このような残存重亜硫酸塩による亜硫酸ガスの発生や不純物の形成を有効かつ効果的に抑制することができる。
【0104】
開始剤系として過硫酸塩を使用する場合、過硫酸塩あるいはその溶液の滴下終了時間は、単量体の滴下終了時間よりも、好ましくは1分〜60分、より好ましくは1分〜45分、さらに好ましくは1分〜20分、遅らせることがよい。これにより、重合終了後に残存する単量体の量を低減でき、このような残存単量体に起因する不純物を低減することができる。
【0105】
重合反応が終了した時点での、重合溶液中の固形分濃度は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25質量%〜70質量%であり、さらに好ましくは30質量%〜60質量%である。重合反応終了時の重合溶液中の固形分濃度が20質量%以上であれば、高濃度かつ一段で重合を行うことができ、効率よく共重合体(A)を得ることができる。例えば、濃縮工程を省略することができ、製造効率を上昇させることができる。その結果、共重合体(A)の生産性が向上し、製造コストの上昇を抑制することが可能となる。ここで、重合反応が終了した時点とは、全ての滴下成分の滴下が終了した時点であってもよいが、好ましくは、その後、所定の熟成時間を経過した時点(重合が完結した時点)を意味する。
【0106】
共重合体(A)を製造する際においては、重合反応が終了した後に、重合を効果的に完結させるために、重合反応溶液を熟成させる熟成工程を設けてもよい。熟成工程における熟成時間は、重合を効果的に完結させる点で、好ましくは1分〜120分であり、より好ましくは5分〜90分であり、さらに好ましくは10分〜60分である。なお、熟成工程における温度は、好ましくは、上記の重合温度が適用される。共重合体(A)を製造する際においては、熟成工程が存在する場合は、重合時間は、上記の総滴下時間+熟成時間を意味する。
【0107】
本発明の繊維処理剤中に含み得るその他の成分としては、例えば、オキサゾリン基を有する架橋剤(B)が挙げられる。
【0108】
本発明の繊維処理剤が、共重合体(A)とオキサゾリン基を有する架橋剤(B)を含むと、共重合体(A)が有するカルボキシル基と架橋剤(B)が有するオキサゾリン基とによって架橋構造を形成することができるため、本発明の繊維処理剤の自己架橋反応が短時間で十分に進行し得る。
【0109】
オキサゾリン基を有する架橋剤(B)としては、オキサゾリン基を有するものであれば任意の適切な架橋剤を採用し得る。このような架橋剤(B)においては、オキサゾリン基量(架橋剤1g当たりのオキサゾリン基の数)が、好ましくは0.1mmol/g〜10mmol/gであり、より好ましくは0.5mmol/g〜8mmol/gである。
【0110】
オキサゾリン基を有する架橋剤(B)は、オキサゾリン基を有する重合体(以下、オキサゾリン基含有重合体とも称する。)であることが好ましい。
【0111】
オキサゾリン基含有重合体は、好ましくは、オキサゾリン基含有単量体由来の構造単位を有する。オキサゾリン基含有重合体は、より好ましくは、オキサゾリン基含有単量体由来の構造単位とオキサゾリン基含有単量体以外のその他の単量体由来の構造単位とを有する。
【0112】
オキサゾリン基含有単量体としては、エチレン性不飽和炭化水素基とオキサゾリン基とを有するものであれば任意の適切な単量体を採用し得る。このようなオキサゾリン基含有単量体としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−ビニル−5,5−ジヒドロ−4H−1,3−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリンなどが挙げられ、好ましくは、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4,4−ジメチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリンである。
【0113】
その他の単量体は、オキサゾリン基を有しない単量体であれば任意の適切な単量体を採用し得る。このようなその他の単量体としては、例えば、N−ビニルピロリドン等のN−ビニルラクタム系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸iso−ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN置換または無置換の(メタ)アクリルアミド;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、フェニルマレイミド、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、オクテン等のアルケン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;ビニルエチレンカーボネートおよびその誘導体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールおよびこれらの塩またはこれらの4級化物等の不飽和アミン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;などが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルアリール単量体、シアン化ビニル系単量体であり、より好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルである。
【0114】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくは、脂肪族アルキル(メタ)アクリレートであり、より好ましくは、(メタ)アクリル酸メチルである。
【0115】
ビニルアリール単量体としては、好ましくは、スチレン、α−メチルスチレンであり、より好ましくは、スチレンである。
【0116】
シアン化ビニル系単量体としては、好ましくは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルであり、より好ましくは、アクリロニトリルである。
【0117】
オキサゾリン基含有重合体においては、オキサゾリン基含有単量体由来の構造単位の割合が、全構造単位100モル%に対して、好ましくは20モル%〜95モル%であり、より好ましくは30モル%〜90モル%であり、さらに好ましくは40モル%〜85モル%である。
【0118】
オキサゾリン基含有重合体の質量平均分子量は、好ましくは10,000〜150,000であり、より好ましくは30,000〜130,000である。なお、オキサゾリン基含有重合体の質量平均分子量(Mw)の測定方法の詳細は後述する。
【0119】
オキサゾリン基含有重合体は、単量体成分から製造したものを用いてもよく、市販の重合体を用いてもよい。
【0120】
本発明の繊維処理剤を使用し得る対象である繊維としては、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは、有機物繊維や衣料用繊維である。すなわち、本発明の繊維処理剤を使用し得る対象である繊維は、好ましくは、ガラス繊維などの無機物繊維や鉱物性繊維を含まない。有機物繊維や衣料用繊維としては、例えば、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、キュプラなどのセルロース繊維;ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維などの合成繊維;などが挙げられる。
【0121】
本発明の繊維処理剤で処理されてなる繊維は、例えば、吸放湿性を有する繊維、洗濯耐久性を有する繊維、風合いが改善された繊維となり得る。
【0122】
本発明の繊維処理剤は、好ましくは、セルロース繊維またはポリエステル繊維を処理する。セルロース繊維としては、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、キュプラなどが挙げられる。セルロース繊維の表面には水酸基を有し得るので、本発明の繊維処理剤は、それに含まれる共重合体(A)が有する構造単位(I)の有するカルボキシル基が、該水酸基と架橋反応を起こし得る。ポリエステル繊維の表面にはカルボキシル基を有し得るので、本発明の繊維処理剤は、それに含まれる共重合体(A)が有する構造単位(II)の有する水酸基が、該カルボキシル基と架橋反応を起こし得る。これにより、本発明の繊維処理剤は、それに含まれる共重合体(A)が有する構造単位(I)の有するカルボキシル基と構造単位(II)の有する水酸基との自己架橋が起こり得るともに、上記のような繊維との架橋が起こり得ることにより、より優れた吸放湿性を付与できるとともに洗濯耐久性により優れる。このようにして得られる、本発明の繊維処理剤で処理されてなるセルロース繊維は本発明のセルロース繊維であり、本発明の繊維処理剤で処理されてなるポリエステル繊維は本発明のポリエステル繊維である。
【0123】
≪≪繊維処理剤組成物≫≫
本発明の繊維処理剤組成物は、繊維と本発明の繊維処理剤とを含む。
【0124】
繊維としては、好ましくは、上述したような、有機物繊維や衣料用繊維である。
【0125】
本発明の繊維処理剤組成物中の、繊維に対する繊維処理剤の割合は、使用する繊維や繊維処理剤の種類によって、また、目的とする処理の程度によって、任意の適切な割合を採用し得る。
【0126】
≪≪繊維処理方法≫≫
本発明の繊維処理剤により、各種繊維は、任意の適切な方法によって繊維処理され得る。すなわち、本発明の繊維処理方法は、本発明の繊維処理剤を用いて繊維を処理する。
【0127】
本発明の繊維処理剤を用いた本発明の繊維処理方法としては、例えば、繊維生地を乾燥した後(前乾燥工程)、乾燥した繊維生地を繊維処理剤の水溶液にディッピングし(ディッピング工程)、その後に脱水し(脱水工程)、その後に必要に応じて乾燥し(中乾燥工程)、ディッピングした繊維処理剤を加熱乾燥によって繊維生地に固定化する(固定化工程)。
【0128】
上記のディッピング工程および脱水工程および必要に応じて行う中乾燥工程によって、好ましくは、繊維の表面が繊維処理剤によってコーティングされる。すなわち、本発明の繊維処理方法は、繊維処理剤によって繊維の表面をコーティングする工程と加熱乾燥する工程とを含む。
【0129】
前乾燥工程においては、好ましくは80℃〜150℃において、好ましくは60分〜180分、乾燥させる。
【0130】
ディッピング工程においては、繊維処理剤の水溶液の濃度は、好ましくは1質量%〜15質量%であり、繊維生地のディッピング時間は、好ましくは1分〜30分である。
【0131】
脱水工程においては、例えば、脱水機、マングルを用いて脱水を行う。
【0132】
中乾燥工程においては、好ましくは80℃〜150℃において、好ましくは1分〜180分、乾燥させる。
【0133】
固定化工程においては、例えば、繊維生地がセルロース繊維の生地の場合、好ましくは100℃〜160℃において、好ましくは1分〜120分、加熱乾燥させ、繊維生地がポリエステル繊維の生地の場合、好ましくは100℃〜200℃において、好ましくは1分〜120分、加熱乾燥させる。
【実施例】
【0134】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、実施例における部及び%は質量基準である。
【0135】
<重合体の質量平均分子量(Mw)の測定方法>
(1)GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。測定に用いたカラムはGF−7M HQ(昭和電工株式会社製)であり、移動相はリン酸水素二ナトリウム12水和物34.5gおよびリン酸二水素ナトリウム2水和物46.2g(いずれも試薬特級、以下測定に用いる試薬は全て特級を使用)に純水を加えて全量を5000gとし、その後0.45ミクロンのメンブランフィルターで濾過し、水溶液として用いた。
(2)ポンプはL−7110(株式会社日立製作所製)を使用し、移動相の流量を0.5ml/分に設定して、検出器としてはUV(株式会社日立製作所製L−2400)を用い、波長214nmとした。その際、カラム温度は35℃一定とした。
(3)さらに、検量線としては、ポリアクリル酸ナトリウム標準サンプル(創和科学株式会社製)を用いた。
(4)サンプルを移動相の溶媒で希釈し0.1質量%サンプル溶液を調製した。
(5)解析ソフトには、sic480II(昭和電工株式会社製)を用いた。これらにより重合体の質量平均分子量を測定した。
【0136】
<重合体水溶液の固形分測定方法>
重合反応が終了した時点での重合溶液1gを1gの脱イオン水で希釈して120℃で2時間乾燥させ、その蒸発残分を測定して、下記式(1)より求めた。
固形分(%)=〔乾燥後の蒸発残分(g)/乾燥前の重合溶液の質量(g)〕×100
・・・(式1)
【0137】
<再生セルロース生地の繊維処理剤による繊維処理>
10cm四方の再生セルロース試験布を用意し、105℃、120分間の予備乾燥を行い、試験布の質量(X)を測定した。繊維処理剤を10質量%濃度となるように水で溶解した。この溶液に試験布を浸漬し、試験布に残る繊維処理剤水溶液の量が布に対して100±10%となるように脱水を行い、130℃で60分間乾燥(実施例1、3、5、9、10、12)、または、130℃で15分間乾燥(実施例14、16)して、質量(Y)を測定した。
試験布に対して固定化された繊維処理剤の割合は以下の計算式より算出した。
固定化量(%)=〔(Y/X)−1〕×100
【0138】
<ポリエステル生地の繊維処理剤による繊維処理>
上記再生セルロース生地の繊維処理剤による繊維処理において、脱水後、130℃で60分間乾燥した後にさらに190℃で30分間の乾燥(実施例2、4、6〜8、11、13)、または、130℃で5分間乾燥した後にさらに190℃で1分間の乾燥(実施例15、17)を行った以外は、上記再生セルロース生地の繊維処理剤による繊維処理と同一の方法を行い、固定化量を算出した。
【0139】
<洗濯耐久性評価>
繊維処理剤が固定化された試験布を1回洗濯した後に130℃で60分間乾燥して質量を測定した(Y’)
洗濯後における試験布に対して固定化された繊維処理剤の割合は以下の計算式より算出した。
固定化量(%)=〔(Y’/X)−1〕×100
【0140】
<吸湿性評価>
洗濯耐久性評価後の試験布(比較例については繊維処理していない試験布)を105℃で2時間乾燥し、質量(M)を測定した。続いて、試験布を秤量瓶に入れ、30℃、相対湿度90%の恒温槽にて保管し、24時間後に取り出して、吸湿後の質量(N)を測定した。吸湿率は以下の計算式で計算した。
吸湿率(%)=〔(N−M)/M〕×100
【0141】
〔実施例1〕
還流冷却器、攪拌機を備えた容量25LのSUS製反応容器に、40質量%3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム水溶液(以下、40%HAPSと略す)6024gを装入し、攪拌下で沸点還流状態まで昇温した。次いで攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80質量%アクリル酸水溶液(以下、80%AAと略す)5670gと40%HAPS:6024g、15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、15%NaPSと略す)2128g(単量体成分中の単量体1モルに対して3.8gに相当)を滴下した。80%AAの添加を開始する時点を基準(0分)として、80%AAを0分〜90分の間、40%HAPSを0分〜60分の間、それぞれ一定速度で滴下した。開始剤である15%NaPSは、添加速度9.7g/分で滴下し、開始55分で添加速度を3倍の29.1g/分に変更し、0分〜110分の間滴下した。次いで、脱イオン水(希釈水)4940gを50分〜90分の間、一定速度で滴下した。それぞれ別個のノズルから滴下し、反応液は、攪拌下、沸点還流状態に保った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を沸点還流状態に保持(熟成)し、重合を完結させ、重合体Aである繊維処理剤(1)の水溶液を得た。重合体Aの水溶液の固形分濃度は40質量%、残存単量体(残存HAPS)は固形分100質量%に対し0.9質量%であった。また重合体Aの質量平均分子量は95,000であった。
繊維処理剤(1)を用いて、再生セルロース生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表1に示した。
【0142】
〔実施例2〕
実施例1で得られた繊維処理剤(1)を用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表1に示した。
【0143】
〔実施例3〕
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製反応容器に、脱イオン水350.8gを装入し、攪拌下で沸点還流状態まで昇温した。次いで攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80%AA:630.0g、40%HAPS:545.0g、100%2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、100%HEMAと略す)260.0g、15質量%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、15%NaPSと略す)267.0g(単量体成分中の単量体1モルに対して4.0gに相当)、45%次亜リン酸ナトリウム・1水和物(以下、45%SHPと略す)133.3gを滴下した。80%AAの添加を開始する時点を基準(0分)として、80%AAを0分〜180分の間一定速度で滴下した。40%HAPSについては0分〜30分を6.06g/分の添加速度で、30分〜140分を3.30g/分の添加速度で滴下した。開始剤である15%NaPSは、0分〜130分の間を添加速度0.97g/分で滴下し、130分〜200分の間を2.00g/分の添加速度で滴下した。連鎖移動剤である45%SHPは0分〜180分の間一定速度で滴下した。それぞれ別個のノズルから滴下し、反応液は、攪拌下、沸点還流状態に保った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに80分間、上記反応液を沸点還流状態に保持(熟成)し、重合を完結させ、重合体Bである繊維処理剤(2)の水溶液を得た。重合体Bの水溶液の固形分濃度は50.0質量%、残存単量体(残存HAPS)は固形分100質量%に対し0.3質量%であった。また重合体Bの質量平均分子量は4,800であった。
繊維処理剤(2)を用いて、再生セルロース生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表1に示した。
【0144】
〔実施例4〕
実施例3で得られた繊維処理剤(2)を用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表1に示した。
【0145】
〔実施例5〕
還流冷却器、攪拌機を備えた容量1LのSUS製反応容器に、脱イオン水190.8gとモール塩0.02gを装入し、攪拌下で87℃まで昇温した。次いで攪拌下、87℃の重合反応系中に、80%AA:276.9g、40%HAPS:191.7g、81%1‐アリルオキシ‐3‐ブトキシプロパン‐2‐オール(以下、81%A1Bと略す)16.5g、15%NaPS:75.4g(単量体成分中の単量体1モルに対して3.3gに相当)、32.5%亜硫酸水素ナトリウム(以下、32.5%SBSと略す)43.3gを滴下した。80%AAの添加を開始する時点を基準(0分)として、80%AAを0分〜180分の間一定速度で滴下した。40%HAPSについては0分〜25分を2.6g/分の添加速度で、25分〜130分を1.2g/分の添加速度で滴下した。81%A1Bについては0分〜130分の間一定速度で滴下した。開始剤である15%NaPSは、0分〜130分の間を添加速度0.30g/分で滴下し、130分〜200分の間を0.52g/分の添加速度で滴下した。還元剤である32.5%SBSは0分〜170分の間一定速度で滴下した。それぞれ別個のノズルから滴下し、反応液は、攪拌下、87℃に保った。
80%AAの滴下開始から185分で35%の過酸化水素水2.5gを投入した。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を87℃に保持(熟成)し、重合を完結させ、重合体Cである繊維処理剤(3)の水溶液を得た。重合体Cの水溶液の固形分濃度は45.6質量%、残存単量体(残存HAPS)は固形分100質量%に対し0.39質量%であった。また重合体Cの質量平均分子量は11,000であった。
繊維処理剤(3)を用いて、再生セルロース生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表1に示した。
【0146】
〔実施例6〕
実施例5で得られた繊維処理剤(3)を用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表1に示した。
【0147】
〔実施例7〕
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製反応容器に、脱イオン水503.5gとモール塩0.03gを装入し、攪拌下で87℃まで昇温した。次いで攪拌下、87℃の重合反応系中に、80%AA:292.4g、40%HAPS:295.1g、イソプレノールのエチレンオキサイド10モル付加物(以下、IPN10と略す)285.2g、15%NaPS:202.2g(単量体成分中の単量体1モルに対して7.0gに相当)、32.5%SBS:16.0gを滴下した。80%AAの添加を開始する時点を基準(0分)として、80%AAを0分〜180分の間、40%HAPSについては0分〜40分の間、一定速度で滴下した。IPN10については0分〜170分の間一定速度で滴下した。開始剤である15%NaPSは、0分〜130分の間を添加速度0.73g/分で滴下し、130分〜200分の間を1.53g/分の添加速度で滴下した。還元剤である32.5%SBSは0分〜170分の間一定速度で滴下した。それぞれ別個のノズルから滴下し、反応液は、攪拌下、87℃に保った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を87℃に保持(熟成)し、重合を完結させ、重合体Dである繊維処理剤(4)の水溶液を得た。重合体Dの水溶液の固形分濃度は50.1質量%、残存単量体(残存HAPS)は固形分100質量%に対し1.1質量%であった。また重合体Dの質量平均分子量は11,700であった。
繊維処理剤(4)を用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表1に示した。
【0148】
〔実施例8〕
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製反応容器に、40%HAPS:172.9gを装入し、攪拌下で沸点還流状態まで昇温した。次いで攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80%AA:247.5g、溶融した無水マレイン酸(以下、無水MAと略す)83.0g、40%HAPS:172.9g、15%NaPS:90.3g(単量体成分中の単量体1モルに対して3.2gに相当)、脱イオン水833.3を滴下した。無水マレイン酸についてはジャケット付きの滴下漏斗を温水にて60℃〜70℃に保ち溶融した。80%AAの添加を開始する時点を基準(0分)として、80%AA及を0分〜90分の間、無水MA及び40%HAPSを0分〜60分の間一定速度で滴下した。開始剤である15%NaPSは、0分〜55分の間を添加速度0.41g/分で滴下し、55分〜110分の間を1.23g/分の添加速度で滴下した。脱イオン水は50分〜90分の間一定速度で滴下した。それぞれ別個のノズルから滴下し、反応液は、攪拌下、沸点還流状態に保った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を沸点還流状態に保持(熟成)し、重合を完結させ、重合体Eである繊維処理剤(5)の水溶液を得た。重合体Eの水溶液の固形分濃度は29.7質量%、残存単量体(残存HAPS)は固形分100質量%に対し0.10質量%であった。また重合体Eの質量平均分子量は77,200であった。
繊維処理剤(5)を用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表1に示した。
【0149】
〔実施例9〕
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製反応容器に、脱イオン水308.2gを装入し、攪拌下で87℃まで昇温した。次いで攪拌下、87℃の重合反応系中に、80%AA:180.5g、80質量%IPN10水溶液(イソプレノールのエチレンオキサイド10モル付加物の80質量%水溶液):270.7g、15%NaPS:48.3g(単量体成分中の単量体1モルに対して3.0gに相当)、15%SHP:29.0gを滴下した。80%AAの添加を開始する時点を基準(0分)として、80%AAを0分〜120分の間、80質量%IPN10水溶液を0分〜110分の間、開始剤である15%NaPSを0分〜130分の間一定速度で滴下した。連鎖移動剤である15%SHPは、0分〜18分の間を添加速度0.54g/分で滴下し、18分〜110分の間を0.21g/分の添加速度で滴下した。それぞれ別個のノズルから滴下し、反応液は、攪拌下、87℃に保った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を87℃に保持(熟成)し、重合を完結させた後、48質量%水酸化ナトリウム水溶液(以下、48%NaOHと略す)を13.4g添加することで重合体Fである繊維処理剤(6)の水溶液を得た。重合体Fの水溶液の固形分濃度は44.6質量%であった。また重合体Fの質量平均分子量は53,000であった。
繊維処理剤(6)を用いて、再生セルロース生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表1に示した。
【0150】
〔実施例10〕
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製反応容器に、脱イオン水326.6gを装入し、攪拌下で87℃まで昇温した。次いで攪拌下、87℃の重合反応系中に、80%AA:302.7g、80質量%IPN10水溶液(イソプレノールのエチレンオキサイド10モル付加物の80質量%水溶液):129.7g、15%NaPS:71.2g(単量体成分中の単量体1モルに対して3.0gに相当)、45%SHP:19.7gを滴下した。80%AAの添加を開始する時点を基準(0分)として、80%AAを0分〜120分の間、80質量%IPN10水溶液を0分〜110分の間、開始剤である15%NaPSを0分〜130分の間一定速度で滴下した。連鎖移動剤である45%SHPは、0分〜18分の間を添加速度0.36g/分で滴下し、18分〜110分の間を0.14g/分の添加速度で滴下した。それぞれ別個のノズルから滴下し、反応液は、攪拌下、87℃に保った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を87℃に保持(熟成)し、重合を完結させ、重合体Gである繊維処理剤(7)の水溶液を得た。重合体Gの水溶液の固形分濃度は42.8質量%であった。また重合体Gの質量平均分子量は26,000であった。
繊維処理剤(7)を用いて、再生セルロース生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表1に示した。
【0151】
〔実施例11〕
実施例10で得られた繊維処理剤(7)を用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表1に示した。
【0152】
〔実施例12〕
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製反応容器に、脱イオン水248.9gを装入し、攪拌下で87℃まで昇温した。次いで攪拌下、87℃の重合反応系中に、80%AA:169.5g、60質量%IPN50水溶液(イソプレノールのエチレンオキサイド50モル付加物の60質量%水溶液):339.1g、15%NaPS:40.0g(単量体成分中の単量体1モルに対して3.0gに相当)、15%SHP:39.9gを滴下した。80%AAの添加を開始する時点を基準(0分)として、80%AAを0分〜120分の間、60%IPN50を0分〜110分の間、開始剤である15%NaPSを0分〜130分の間一定速度で滴下した。連鎖移動剤である15%SHPは、0分〜18分の間を添加速度0.74g/分で滴下し、18分〜110分の間を0.29g/分の添加速度で滴下した。それぞれ別個のノズルから滴下し、反応液は、攪拌下、87℃に保った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を87℃に保持(熟成)し、重合を完結させた後、48%NaOH:12.6g添加することで重合体Hである繊維処理剤(8)の水溶液を得た。重合体Hの水溶液の固形分濃度は41.8質量%であった。また重合体Hの質量平均分子量は50,000であった。
繊維処理剤(8)を用いて、再生セルロース生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表1に示した。
【0153】
〔実施例13〕
実施例12で得られた繊維処理剤(8)を用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表1に示した。
【0154】
〔比較例1〕
繊維処理剤(1)を用いない以外は、実施例1と同様にし、再生セルロース生地についての洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表1に示した。
【0155】
〔比較例2〕
繊維処理剤(1)を用いない以外は、実施例2と同様にし、ポリエステル生地についての洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表1に示した。
【0156】
【表1】
【0157】
表1に示すように、試験布として再生セルロース、ポリエステルいずれを用いた場合であっても、本発明の繊維処理剤を用いて繊維処理した場合には、吸湿率が向上している(比較例1に対して実施例1、3、5、9、10、12、比較例2に対して実施例2、4、6、7、8、11、13)。また、本発明の繊維処理剤を用いて繊維処理した場合には、試験布として再生セルロース、ポリエステルいずれを用いた場合であっても、従来の繊維処理剤による繊維処理において見られていたような洗濯耐久性評価による固定化量の大幅な低下が抑えられていることがわかる。
【0158】
〔実施例14〕
実施例1で得られた重合体Aの水溶液10.0gとエポクロスWS−700(株式会社日本触媒製、オキサゾリン基含有重合体、以下、WS−700と略す)1.1gをよく混合し、繊維処理剤(9)の水溶液を得た。
繊維処理剤(9)を用いて、再生セルロース生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表2に示した。
【0159】
〔実施例15〕
実施例14で得られた繊維処理剤(9)を用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表2に示した。
【0160】
〔実施例16〕
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製反応容器に、脱イオン水220.8gを装入し、攪拌下で沸点還流状態まで昇温した。次いで攪拌下、沸点還流状態の重合反応系中に、80%AA:151.0g、40%HAPS:152.4g、IPN10(イソプレノールのエチレンオキサイド10モル付加物):147.3g、15%NaPS:97.0g、1%SHP:31.3gを滴下した。80%AAの添加を開始する時点を基準(0分)として、80%AAを0分〜180分の間、40%HAPSについては0分〜40分の間、一定速度で滴下した。IPN10については0分〜170分の間一定速度で滴下した。開始剤である15%NaPSは、0分〜130分の間を添加速度0.32g/分で滴下し、130分〜200分の間を0.79g/分の添加速度で滴下した。還元剤である1%SHPは0分〜170分の間一定速度で滴下した。それぞれ別個のノズルから滴下し、反応液は、攪拌下、沸点還流状態に保った。
上記15%NaPSの滴下終了後、さらに30分間、上記反応液を沸点還流状態に保持(熟成)し、重合を完結させ、重合体Iの水溶液を得た。重合体Iの水溶液の固形分濃度は44.1質量%、質量平均分子量は38,100であった。
重合体Iの水溶液10.0gとエポクロスWS−300(株式会社日本触媒製、オキサゾリン基含有重合体、以下、WS−300と略す)0.7gをよく混合し、繊維処理剤(10)の水溶液を得た。
繊維処理剤(10)を用いて、再生セルロース生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表2に示した。
【0161】
〔実施例17〕
実施例16で得られた繊維処理剤(10)を用いて、ポリエステル生地に対する繊維処理を行い、洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表2に示した。
【0162】
〔比較例3〕
繊維処理剤(9)を用いない以外は、実施例14と同様にし、再生セルロース生地についての洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表2に示した。
【0163】
〔比較例4〕
繊維処理剤(9)を用いない以外は、実施例15と同様にし、ポリエステル生地についての洗濯耐久性評価および吸湿性評価を行った。
結果を表2に示した。
【0164】
【表2】
【0165】
〔参考例1〜7〕
<繊維処理後ポリエステル生地の風合い評価>
実施例2、4、6〜8、11、13で得られた洗濯前のポリエステル生地について触感にて評価した。
柔らかい感触には◎、やや柔らかい感触には○、やや硬い感触には△、硬い感触には×として評価した。
結果を表3に示した。
【0166】
【表3】
【0167】
参考例1〜7の結果により、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を共重合させて得られた共重合体を用いて繊維処理すると、風合い評価が良好であることが示された。
【0168】
〔参考例8〜11〕
<繊維処理後再生セルロース生地の風合い評価>
実施例1、9、10、12で得られた洗濯前の再生セルロース生地について触感にて評価した。
柔らかい感触には◎、やや柔らかい感触には○、やや硬い感触には△、硬い感触には×として評価した。
結果を表4に示した。
【0169】
【表4】
【0170】
参考例8〜11の結果により、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を共重合させて得られた共重合体を用いて繊維処理すると、風合い評価が良好であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明の繊維処理剤は、例えば、セルロース繊維またはポリエステル繊維の繊維処理に利用できる。