特許第6633191号(P6633191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6633191可撓性基材用の不粘着性コーティングを製造するための架橋性シリコーン組成物及びこの組成物に含有される付着促進用添加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633191
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】可撓性基材用の不粘着性コーティングを製造するための架橋性シリコーン組成物及びこの組成物に含有される付着促進用添加剤
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/06 20060101AFI20200109BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20200109BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20200109BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   C09D183/06CFH
   C08J5/18
   C08L83/07
   C08L83/06
【請求項の数】14
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-515767(P2018-515767)
(86)(22)【出願日】2016年9月22日
(65)【公表番号】特表2018-538372(P2018-538372A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】FR2016000145
(87)【国際公開番号】WO2017051084
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2018年5月28日
(31)【優先権主張番号】1501991
(32)【優先日】2015年9月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507421304
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・フランス・エスアエス
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES France SAS
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・フェデ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・マロ
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−118537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 183/06
C08J 5/18
C08L 83/06
C08L 83/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性支持体用の撥水性剥離コーティング又はフィルムを形成させるための、重付加によって架橋又は硬化可能なシリコーンベースBを含むシリコーン組成物Aであって、
下記の式を有するシロキシル単位(I.1)〜(I.3)を含みしかし式(I.4)の単位を含まない線状オルガノポリシロキサンである少なくとも1種の添加剤X:
【化1】
【化2】
(ここで、
aは1であり、bは1又は2であり、
dは1であり、eは1又は2であり、
記号Yは、2〜20個の炭素原子及びエポキシ官能基を随意に酸素原子等の1個以上のヘテロ原子と共に有する炭化水素系基を含む基を表し、好ましくは記号Yはアルキルグリシジルエーテル、直鎖状、分岐鎖状又は環状エポキシアルキル、直鎖状、分岐鎖状又は環状エポキシアルケニル及びカルボン酸グリシジルエステル基より成る基から選択され、
記号Z1、Z2及びZ3は同一であっても異なっていてもよく、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及び6〜12個の炭素原子を有するアリール基より成る群から選択され、さらにより一層好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より成る群から選択される)
を含み、但し、
該添加剤Xは、1分子当たりに、エポキシ官能性の炭化水素系基を有するシロキシル単位(I.1)を少なくとも2個、ヒドロシロキシル基を有するシロキシル単位(I.3)を少なくとも3個含み、且つシロキシル単位の総数Nが7〜30の範囲であり、
該添加剤Xは、添加剤X100g当たり0.2モル以上のシロキシル単位(I.1)含有率を有し、
前記添加剤Xは、シロキサン鎖のケイ素原子に結合したアルコキシシリルアルキル基を含まない
ことを条件とする:
ことを特徴とする、前記シリコーン組成物A。
【請求項2】
前記添加剤Xが、該添加剤X100g当たり0.2モル以上のシロキシル単位(I.1)含有率及び該添加剤X100g当たり0.3モル以上のシロキシル単位(I.3)含有率を有する、請求項1に記載のシリコーン組成物A。
【請求項3】
前記添加剤Xのシロキシル単位(I.1)の数N1及びシロキシル単位(I.3)の数N3が次の条件:
・2≦N1≦10、好ましくは3≦N1≦7、及び
・3≦N3≦20、好ましくは5≦N3≦20
を満たす、請求項1に記載のシリコーン組成物A。
【請求項4】
前記添加剤Xのシロキシル単位の総数Nが7〜25の範囲(境界を含む)、さらにより一層好ましくは7〜15の範囲である、請求項1に記載のシリコーン組成物A。
【請求項5】
前記添加剤Xの含有量が組成物A総重量に対して0.3〜10重量%の範囲、好ましくは0.3〜7重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のシリコーン組成物A。
【請求項6】
前記シリコーンベースBが、
(A)次式:
【化3】
(ここで、
aは1又は2であり、bは0、1又は2であり、a+bは1、2又は3であり、
Wは独立して、アルケニル基、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するもの、さらにより一層好ましくはビニル又はアリル基を表し、
Zは独立して、1〜30個の炭素原子を有する一価炭化水素基を表し、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及びアリール基より成る群から選択され、より一層好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より成る群から選択される)
を有するシロキシル単位(I.5)を少なくとも2個含む少なくとも1種のアルケニル化オルガノポリシロキサンE、
(B)随意としての、ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個含む少なくとも1種の架橋用シリコーンオイルD、
(C) 少なくとも1種の重付加触媒F(好ましくは白金族に属する少なくとも1種の金属の化合物)、
(D)随意としての、1種以上の架橋抑制剤G、
(E)随意としての、粘着性調整剤系H、
(F)随意としての、1種以上の希釈剤I、
(G)随意としての、1種以上のミスティング防止用添加剤J、
(H)随意としての、1種以上のオルガノポリシロキサン樹脂K、及び
(I)随意としての、1種以上の、次式:
【化4】
(ここで、
aは0、1、2又は3であり、
1は独立して、1〜30個の炭素原子を有する一価炭化水素基を表し、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及びアリール基より成る群から選択され、さらにより一層好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より成る群から選択される)
のシロキシル単位(I.6)から成る非官能化オルガノポリシロキサンL
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のシリコーン組成物A。
【請求項7】
前記添加剤Xのシロキシル単位(I.1)中のYが下記の式:
【化5】
を有する基(R−1)〜(R−6)より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のシリコーン組成物A。
【請求項8】
前記添加剤Xのシロキシル単位(I.1)中のYが下記の式:
【化6】
を有する基(R−4)であることを特徴とする、請求項1に記載のシリコーン組成物A。
【請求項9】
構成成分の量が、モル比[≡SiH]/[≡Siアルケニル]
(ここで、
・[≡SiH]はケイ素に結合した水素原子を含むシロキシル単位の総モル数であり、
・[≡Siアルケニル]はケイ素に結合したアルケニル基を含むシロキシル単位の総モル数である)
が1〜7の範囲、好ましくは1〜5の範囲となるような量である、請求項1〜8のいずれかに記載のシリコーン組成物A。
【請求項10】
前記添加剤Xが10〜700mPa・sの範囲、好ましくは15〜300mPa・sの範囲の25℃における動的粘度を有する、請求項1に記載のシリコーン組成物A。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のシリコーン組成物Aを架橋及び/又は硬化させることによって得ることができる、可撓性支持体用の撥水性剥離コーティング又はフィルムとしてのシリコーンエラストマー。
【請求項12】
支持体上に撥水性剥離コーティングを製造するための方法であって、この支持体の少なくとも1つの上に請求項1〜10のいずれかに記載のシリコーン組成物Aの少なくとも1つの層を塗布し、この層を(好ましくは熱活性化することによって)架橋させることから成ることを特徴とする、前記方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法に従って、又は請求項1〜10のいずれかに記載のシリコーン組成物Aから、得られる少なくとも1つの撥水性剥離コーティングを含むことを特徴とする支持体。
【請求項14】
紙、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリエステルタイプのポリマーフィルム及び自己粘着性又は感圧粘着性エレメントの粘着面を保護するためのポリマーフィルムより成る群から選択される可撓性支持体であることを特徴とする、請求項13に記載の支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、特に可撓性支持体(例えば紙や類似のものから作られたもの及び天然又は合成ポリマーフィルムの形のもの)用の撥水性且つ剥離性(anti-adhe'rent)(不粘着性)のコーティング又はフィルムを形成させるために用いることができる、架橋し得る(「架橋性」と言う)又は架橋したシリコーン組成物の分野である。
【背景技術】
【0002】
これらの硬化可能なシリコーン剥離組成物は、これらの支持体上に可逆的に積層された粘着性材料の除去を容易にするために、かかる支持体上に適用される。
【0003】
これらの液状シリコーン組成物は、非常に高速(例えば600m/分)で動作させるロールを含む工業用コーティング装置を用いて支持体フィルムに適用される。これらの非常に高速のコーティング操作においては、もちろん、液状シリコーンコーティング組成物の粘度を綿密にコーティング操作条件に適合させなければならない。
【0004】
実際上は、剥離性シリコーンの塗布速度は、0.1〜2g/m2の範囲、好ましくは0.3〜1g/m2の範囲であり、これはμmの桁の厚さに相当する。ひとたび可撓性支持体に適用されたら、シリコーン組成物は架橋して固体状の撥水性且つ/又は剥離性シリコーンコーティング(例えばエラストマー)を形成する。
【0005】
非常に高速の工業的コーティング速度の場合には、適切な架橋をもたらすために架橋速度は極めて迅速でなければならず、即ちシリコーン剥離フィルムは、できるだけうまくそれらの剥離機能を発揮することができ且つ所望の機械的品質を有することができるのに充分に架橋しなければならない。シリコーン剥離コーティングの架橋の品質の評価は、特に、架橋していない抽出可能な化合物の分析によって行うことができ、その量はできるだけ少なくなければならない。例えば、抽出可能な化合物の量は、通常の工業的架橋条件下において、5%未満であるのが好ましい。
【0006】
シリコーンコーティングの外側自由面の不粘着性は、シリコーン剥離フィルムでコーティングされた支持体上に置かれることが予定される構成要素についての剥離力で表され、これは弱く且つ制御されていなければならない。通常、この構成要素は、同じ種類のラベル又はテープの粘着面であることができる。
【0007】
かくして、この弱く且つ制御された不粘着性に加えて、その支持体上のシリコーンコーティングの粘着性は、非常に強くなければならない。この粘着性は、例えば「ラブオフ(rub-off)(擦り取り)」技術試験を用いて評価される。この試験は、コーティングの表面を指で擦り、コーティングに傷ができるまでに擦った回数を数えることから成る。
【0008】
これらのシリコーンコーティング組成物であってヒドロシリル化(例えばSi−H/Si−Vi)によって架橋させることができるものは、工業用コーティング機においてコーティング浴の形にある時に、周囲温度においてできるだけ長い可使寿命を有することも重要である。
【0009】
シリコーン剥離フィルムでコーティングされる可撓性支持体は、例えば以下のものであることができる:
・紙又はポリオレフィン(ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン若しくはポリエチレン)タイプ若しくはポリエステル(ポリエチレンテレフタレートPET)タイプのポリマーフィルム;
・内側面が感圧接着剤の層でコーティングされ、外側面がシリコーン剥離コーティングを含む粘着テープ;或は
・自己粘着性又は感圧粘着性の構成要素の粘着面を保護するためのポリマーフィルム。
【0010】
取扱いの安全性及び毒性という明らかな理由で、本発明は溶剤フリーのシリコーン組成物に関するものであるのが有利である。
【0011】
この局面の他に、費用上の観点から、これらの溶剤フリーであるのが有利なシリコーンコーティング組成物は、可撓性紙支持体に適した標準的な工業用コーティング装置に対して用いることができることが好ましい。これは、取扱いを容易にするため、良好なコーティング品質を有するため、及び非常に速い工業的コーティング速度において発現するミスト形成(ミスティング)の問題を低減させるために、この組成物が比較的低粘度(例えば1000mPa・s以下)を有することを想定する。
【0012】
液状シリコーンコーティング組成物の配合のために考慮すべきである別の要件は、ラベル用のライナーとして有用なポリマー(特にPETのようなポリエステル)製の可撓性支持体を巻きつけたりほどいたりする操作を容易にするために、架橋したシリコーンエラストマーコーティングの摩擦係数が制御可能であるべきであるということである。
【0013】
この用途にとっては、エラストマーシリコーンコーティングが、滑らかな外観や支持体の透明性又は機械的特性に悪影響を及ぼさないことが重要である。滑らかな外観及び機械的特性は、非常に高速で高精度で剥がすために必要である。透明性は、光学検出器を用いてフィルムの均一性を非常に高速で検査するために、望ましい。
【0014】
剥離コーティングにおいては、剥離力の制御が重要である。有利には、この制御は低速及び高速において有効であるべきである。低速における剥離力と高速における剥離力との間の釣り合いは通常、剥離性プロファイルと称される。
【0015】
上に挙げた特性の他に、すべての支持体について、支持体上のシリコーンコーティングの粘着又は付着(耐摩耗性によって測られる)が最適なものであり且つ経時持続性であることが、一番最初に望まれることであり、これはラベル用の接着剤が存在する場合にも同じである。
【0016】
そこで、本発明の範疇において特に興味が集まっているのは、シリコーンコーティング組成物の架橋速度、及び高温多湿条件(例えば50℃、相対湿度70%)に付された時でさえ支持体上へのシリコーンコーティングの粘着又は付着が最適化できること、である。
【0017】
欧州特許公開第1594693号公報には、付着促進用添加剤として少なくとも1つのエポキシ単位又は無水カルボン酸単位と少なくとも1つのSiH単位とを有するオルガノポリシロキサンを含み、紙又はポリマー支持体上への改善された接着性を有するシリコーン剥離組成物が記載されている。欧州特許公開第2563870号公報には、エポキシ官能性単位及びSiH単位を含み付着促進用添加剤(単に付着用添加剤とも言う)であって、付着用添加剤1g当たり100ミリモル以下のエポキシ単位含有量を特徴とするものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】欧州特許公開第1594693号公報
【特許文献2】欧州特許公開第2563870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
鎖中に存在するすべてのシロキシル単位がエポキシ単位又はSiH単位を有する線状オルガノポリシロキサンを付着用添加剤として用いることによって、ラベルの接着剤が存在する場合にさえ、支持体へのシリコーンコーティングの最良の付着が、高められた経時安定性と共に、可能になるということが、ここに見出された。
【0020】
この意味で、本発明の本質的な目的は、即座に架橋して可撓性支持体用の剥離性且つ/又は撥水性コーティングになることができる新規の液状シリコーンコーティング組成物であって、有利には溶剤フリーであり、得られる架橋したシリコーンコーティングが(特に支持体に対する付着/粘着及び剥離プロファイルに関して)非常に良好な品質を有し、しかも非常に良好な経時安定性をも有するものを提供することにある。
【0021】
本発明の別の本質的な目的は、改良型付着促進剤が添加された新規の液状シリコーンコーティング組成物であって、有利には溶剤フリーであり、迅速に架橋して紙やポリオレフィンタイプ(ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン若しくはポリエチレン)又はポリエステルタイプ(ポリエチレンテレフタレートPET)のポリマーフィルム等の可撓性支持体用の剥離性且つ/又は撥水性コーティングになり、しかも触媒濃度を低くすることもできるものを提供することにある。
【0022】
本発明の別の本質的な目的は、改良型付着促進剤を添加された新規の液状シリコーンコーティング組成物であって、可撓性支持体上に次の特徴を有する架橋したコーティングを製造することを可能にするものを提供することにある:
・一方で、コーティングの好適な機械的特性及び粘着特性を得るのに充分な架橋;
・他方で、剥離特性の良好な持続のための、低い抽出可能化合物含有量(これは、これらの複合物から得られる粘着性ラベルの調製及び使用のために特に好ましい)。
【0023】
本発明の別の本質的な目的は、改良型付着促進剤を添加され、架橋して可撓性支持体用の剥離性且つ/又は撥水性コーティングになることができる新規の液状シリコーンコーティング組成物であって、有利には溶剤フリーであり、周囲温度において長い浴寿命を有し、しかも前記架橋が中庸温度において素早く達成されるものを提供することにある。
【0024】
本発明の別の本質的な目的は、改良型付着促進剤を添加され、架橋して可撓性支持体用の剥離性且つ/又は撥水性コーティングになることができる新規の液状シリコーンコーティング組成物であって、調製するのが容易であり且つ高価ではないものを提供することにある。
【0025】
本発明の別の本質的な目的は、可撓性支持体(例えば紙やポリマー)上に撥水性の剥離コーティングを製造するための新規の方法であって、ミスティングなしでの高速コーティングに適合する粘度を有し且つ有利には溶剤フリーである出発組成物を用いて実施され、該コーティングが特に付着促進用添加剤のおかげで改善された付着特性を有しつつ、さらに剥離力プロファイルの制御、少ない量の抽出可能化合物及び適切な摩擦係数といった要件を満たすものである、前記方法を提供することにある。
【0026】
本発明の別の本質的な目的は、任意の支持体(例えば紙やポリマー)に適用される架橋/硬化した撥水性シリコーン剥離コーティングの付着性(即ち耐摩擦性)を高めるための新規の方法であって、前記コーティングが、重付加によって架橋/硬化することができ且つ改良型の有効な粘着促進用添加剤を含むシリコーン組成物から得られるものである、前記方法を提供することにある。
【0027】
本発明の別の本質的な目的は、重付加によって架橋/硬化したシリコーン組成物をベースとし、付着性、剥離力プロファイルの制御、硬度(抽出可能化合物の%)及び適切な摩擦係数の点で優れた特性を有する少なくとも1つの撥水性剥離コーティングを有する新規の可撓性支持体(例えば紙やポリマー)を、有利には溶剤フリーであり且つミスティングなしでの高速コーティングに適合する粘度を有する出発組成物から出発して、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
これらの目的及び他の目的は、本発明によって達成される。本発明は、まず最初に、重付加によって架橋又は硬化可能なシリコーンベースBを含むシリコーン組成物Aであって、
下記の式を有するシロキシル単位(I.1)〜(I.3)を含みしかし式(I.4)の単位を含まない線状オルガノポリシロキサンである少なくとも1種の添加剤X:
【化1】
【化2】
(ここで、
aは1であり、bは1又は2であり、
dは1であり、eは1又は2であり、
記号Yは、2〜20個の炭素原子及びエポキシ官能基を随意に酸素原子等の1個以上のヘテロ原子と共に有する炭化水素系基を含む基を表し、好ましくは記号Yはアルキルグリシジルエーテル、直鎖状、分岐鎖状又は環状エポキシアルキル、直鎖状、分岐鎖状又は環状エポキシアルケニル及びカルボン酸グリシジルエステル基より成る基から選択され、
記号Z1、Z2及びZ3は同一であっても異なっていてもよく、1〜30個の炭素原子を有する一価炭化水素基を表し、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及び6〜12個の炭素原子を有するアリール基より成る群から選択され、さらにより一層好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より成る群から選択される)
を含み、但し、
・該添加剤Xは、1分子当たりに、エポキシ官能性の炭化水素系基を有する有するシロキシル単位(I.1)を少なくとも2個、ヒドロシロキシル基を有するシロキシル単位(I.3)を少なくとも3個含み、且つシロキシル単位の総数Nが7〜30の範囲であり;
・該添加剤Xは、添加剤X100g当たり0.2モル以上のシロキシル単位(I.1)含有率を有する:
ことを条件とする:
ことを特徴とする、前記シリコーン組成物Aに関する。
【発明の効果】
【0029】
本発明者らは、鎖中のすべてのシロキシル単位がSi−H単位(I−3)又はSiエポキシ単位(I−1)のいずれかで官能化され且つシロキシル単位の総数Nが7〜30の範囲である線状オルガノポリシロキサンである架橋用且つ付着促進用添加剤Xを開発するという功績をあげた。
【0030】
この新規の添加剤Xのおかげで、可撓性支持体へのシリコーンコーティングの付着性が改善され、優れた経時付着維持性も得られる。これはラベル用の接着剤(粘着剤とも言う)が存在する場合にも同じである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
好ましくは、添加剤Xは、アルコキシ、ビニル、ヒドロキシル又はメタクリルオキシ官能基を含有しない。
【0032】
支持体上への付着性は、厳しい湿度及び温度条件下で数週間から数か月の長期間耐えるので、より一層ポジティブであることに注目すべきである。この耐久性は、剥離コーティングが粘着剤、特にアクリル系の粘着剤と接触される時にも観察されるので、より一層注目すべきことである。
【0033】
本発明に従う組成物A中の付着用且つ架橋用添加剤Xの使用の1つの利点は、50℃、相対湿度70%で少なくとも21日間の貯蔵後に優れた耐摩耗性を有する撥水性剥離コーティングを少なくとも1つ含む可撓性支持体(例えば紙やポリマー)を得ることが可能になるということである。可撓性支持体上のシリコーンコーティングのこの優れた耐摩耗性は、50℃、相対湿度70%で160日間の貯蔵の後でも立証されている。
【0034】
本発明に従う付着用且つ架橋用添加剤Xの使用の別の利点は、この添加剤Xが優れた反応性を示すこと、及び組成物Aの架橋速度を向上させることである。結果として、良好な反応性及び支持体上へのシリコーンコーティングの良好な付着性を維持しつつ、組成物A中に用いられる触媒の量を減らすことができる。
【0035】
本発明の好ましい態様に従えば、添加剤X中のシロキシル単位(I.1)とシロキシル単位(I.3)との間のモル比は、0.5〜4の範囲、好ましくは0.8〜3.5の範囲、さらにより一層好ましくは1〜3.5の範囲である。
【0036】
1つの好ましい実施形態に従えば、添加剤Xは、下記の式を有するシロキシル単位(I.1)〜(I.3)から選択されるシロキシル単位から成る。
【化3】
(ここで、
aは1であり、bは1又は2であり、
dは1であり、eは1又は2であり、
記号Y、Z1、Z2及びZ3は上で定義した通りである)。
【0037】
別の好ましい実施形態に従えば、添加剤Xは、下記の式を有するシロキシル単位(I.1)〜(I.3)から選択されるシロキシル単位から成る。
【化4】
(ここで、
aは1であり、bは1又は2であり、
dは1であり、eは1であり、
記号Y、Z1、Z2及びZ3は上で定義した通りである)。
【0038】
添加剤Xは、前記の単位(I.4)を含まない線状オルガノポリヒドロシロキサンにより、酸素原子が含まれた炭化水素系環を少なくとも1個含む有機シントンをヒドロシリル化することによって、得ることができる。これらのヒドロシリル反応は、白金、特に欧州特許公開第0904315号に記載されたカーボンに担持された白金又は欧州特許公開第1309647号に記載された白金とカルベンリガンドとの錯体によって、触媒され得る。ヒドロシリル化反応がより良好に制御され且つ得られる添加剤Xの貯蔵安定性が向上するという理由で、白金とカルベンリガンドとの錯体を触媒として用いるのが好ましい。
【0039】
好ましくは、添加剤Xは、添加剤X100g当たり0.20〜0.45モルの範囲のシロキシル単位(I.1)含有率を有する。
【0040】
さらにより一層有利には、添加剤Xは、添加剤X100g当たり0.2モル以上のシロキシル単位(I.1)含有率及び添加剤X100g当たり0.3モル以上のシロキシル単位(I.3)含有率を有する。
【0041】
さらにより一層有利な実施形態に従えば、添加剤Xは、添加剤X100g当たり0.20〜0.45モルの範囲のシロキシル単位(I.1)含有率及び添加剤X100g当たり0.3〜0.85モルの範囲のシロキシル単位(I.3)含有率を有する。
【0042】
この添加剤はまた、ゲル化していない液体の状態で長持ちするという利点をも有し、剥離コーティングを形成させるように支持体上に塗布される組成物中に用いるのに好適である。
【0043】
本発明によれば、得られるコーティングは、優れた付着性(「ラブオフ」)を有するだけではなく、充分に高い高速剥離力並びに良好な機械的及び物理的特性(滑らかな外観、透明性及び良好な摩擦係数)をも有する。
【0044】
重付加による架橋の品質;反応性/架橋レベル/速度に関して、本発明によって達成される性能は、反応性及び架橋レベルに関して、得られる抽出可能な化合物の低い量によって示されるように、特に有利である。
【0045】
得られるコーティングは、支持体に対して特に粘着性であり、感圧接着剤タイプの接着剤に関して、剥離特性を提供することができ、アクリル系接着剤を含むこれらの接着剤との長期間の接触の際に優れた機械的強度を示す。
【0046】
これらの有利な特徴は、可撓性支持体(例えば紙又はポリマー支持体)の剥離性をもたらすために特に有用であり、これは例えば、非常に高速で製造される(例えばフィルムロールやリールの形で提供される)自己粘着性ラベル(感圧接着剤)用のライナーとして、有用である。
【0047】
このことは、これらの結果がシリコーン組成物について得られれば、シリコーン組成物の流動学的挙動が影響を受けず(粘性過ぎず)、任意の支持体上、特に任意の可撓性支持体上をコーティングするのに完全に好適であることができ、工業的コーティング条件下でミスティングが殆ど又は全く起こらないので、より一層有利である。
【0048】
さらに、本発明に従うシリコーンコーティング組成物は、有利なことに「溶剤フリー」であることができる。このことは、それらが溶媒を何ら含有しないことを意味し、特に有機溶剤を含まないことを意味する。このことによって健康及び安全性に関する利点が得られるということは、容易にわかることである。
【0049】
1つの好ましい実施形態に従えば、添加剤Xは、シロキシル単位(I.1)の数N1及びシロキシル単位(I.3)の数N3が次の条件:
・2≦N1≦10、好ましくは3≦N1≦7、及び
・3≦N3≦20、好ましくは5≦N3≦20
を満たすものである。
【0050】
シロキシル単位の総数Nが7〜25(境界を含む)の範囲、さらにより一層好ましくは7〜15の範囲である添加剤Xを用いるのが特に有利である。
【0051】
好ましくは、添加剤Xは、25℃において10〜700mPa・sの範囲、好ましくは15〜300mPa・sの範囲の動的粘度を有する。
【0052】
量的観点から、架橋用且つ付着促進用添加剤Xの含有量は、組成物Aの総重量に対して0.3〜10重量%の範囲、好ましくは0.3〜7重量%の範囲であるのが有利である。
【0053】
本明細書において言及されるすべての粘度は、25℃におけるいわゆる「ニュートン」動的粘度、即ち測定される粘度が剪断速度勾配に依存しなくなるのに充分低い剪断速度勾配においてそれ自体既知の態様でBrookfield粘度計を用いて測定される動的粘度である。
【0054】
好ましくは、シロキシル単位(I.1)について、Yは下記の式を有する基(R−1)〜(R−6)より成る群から選択される。
【化5】
【0055】
1つの特に好ましい実施形態に従えば、シロキシル単位(I.1)においてYは下記の式を有する基(R−4)である。
【化6】
【0056】
本明細書全体において、オルガノポリシロキサンのシロキシル単位M、D、T及びQを示す標準的な命名エレメントを参照する。参照研究として、NOLLの著書“Chemistry and Technology of Silicones”, chapter 1.1, pages 1-9, Academic Press, 1968年、第2版を参照することができる。
【0057】
好ましくは、シリコーンベースBは、以下のものを含む:
(A)次式:
【化7】
(ここで、
aは1又は2であり、bは0、1又は2であり、a+bは1、2又は3であり、
Wは独立して、アルケニル基、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するもの、さらにより一層好ましくはビニル又はアリル基を表し、そして
Zは独立して、1〜30個の炭素原子を有する一価炭化水素基を表し、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及びアリール基より成る群から選択され、より一層好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より成る群から選択される)
を有するシロキシル単位(I.5)を少なくとも2個含む少なくとも1種のアルケニル化オルガノポリシロキサンE、
(B)随意としての、ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個含む1種以上の架橋用シリコーンオイルD、
(C)少なくとも1種の重付加触媒F(好ましくは白金族に属する少なくとも1種の金属の化合物)、
(D)随意としての、1種以上の架橋抑制剤G、
(E)随意としての、粘着性調整剤系H、
(F)随意としての、1種以上の希釈剤I、
(G)随意としての、1種以上のミスティング防止用添加剤J、
(H)随意としての、1種以上のオルガノポリシロキサン樹脂K、及び
(I)随意としての、1種以上の、次式:
【化8】
(ここで、
aは0、1、2又は3であり、
1は独立して、1〜30個の炭素原子を有する一価炭化水素基を表し、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及びアリール基より成る群から選択され、さらにより一層好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より成る群から選択される)
のシロキシル単位(I.6)から成る非官能化オルガノポリシロキサンL。
【0058】
本発明の別の実施形態に従えば、シリコーンベースBは、以下のものを含む:
(A)下記の式:
【化9】
(ここで、
aは1又は2であり、bは0、1又は2であり、a+bは1、2又は3であり、
Wは独立して、アルケニル基、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するもの、さらにより一層好ましくはビニル又はアリル基を表し、
Zは独立して、1〜30個の炭素原子を有する一価炭化水素基を表し、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及びアリール基より成る群から選択され、より一層好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より成る群から選択される)
を有するシロキシル単位(I.5)を少なくとも2個含む少なくとも1種のアルケニル化オルガノポリシロキサンE、
(B)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個含む少なくとも1種の架橋用シリコーンオイルD、
(C) 少なくとも1種の重付加触媒F(好ましくは白金族に属する少なくとも1種の金属の化合物)、
(D)随意としての、1種以上の架橋抑制剤G、
(E)随意としての、粘着性調整剤系H、
(F)随意としての、1種以上の希釈剤I、
(G)随意としての、1種以上のミスティング防止用添加剤J、
(H)随意としての、1種以上のオルガノポリシロキサン樹脂K、及び
(I)随意としての、1種以上の、次式:
【化10】
(ここで、
aは0、1、2又は3であり、
1は独立して、1〜30個の炭素原子を有する一価炭化水素基を表し、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及びアリール基より成る群から選択され、さらにより一層好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より成る群から選択される)
のシロキシル単位(I.6)から成る非官能化オルガノポリシロキサンL。
【0059】
架橋用シリコーンオイルDは好ましくは、次の式(I.7)のシロキシル単位及び随意としての式(I.8)のシロキシル単位を含むオルガノポリシロキサンである。
【化11】
(ここで、
aは1又は2であり、bは0、1又は2であり、a+bは1、2又は3であり、
Hは水素原子を表し、
1は独立して1〜30個の炭素原子を有する一価炭化水素基を表し、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及びアリール基より成る群から選択され、さらにより一層好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より成る群から選択され、
cは0、1、2又は3であり、
1は独立して1〜30個の炭素原子を有する一価炭化水素基を表し、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基及びアリール基より成る群から選択され、さらにより一層好ましくはメチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニル基より成る群から選択される。)
【0060】
架橋用シリコーンオイルDの動的粘度は、5mPa・s以上、好ましくは10mPa・s以上、さらにより一層好ましくは20〜1000mPa・sの範囲である。
【0061】
架橋用シリコーンオイルDは、線状、分岐鎖状又は環状構造を有することができる。重合度は2以上である。より一般的には、重合度は5000以下である。
【0062】
式(I.7)のヒドロシロキシル単位の例には、次のものがある:
M':H(CH3)2SiO1/2
D': HCH3SiO2/2、及び
フェニル化された基を持つD':H(C65)SiO2/2
【0063】
架橋用シリコーンオイルDの例には、次のものがある:
・M2'Dxy':ヒドロジメチルシリル末端基を有するジメチルポリシロキサン、ポリ(ジメチルシロキサン)(メチルヒドロシロキシ)α,ω−ジメチルヒドロシロキサン、
・M2xy':トリメチルシリル末端基を有するジメチルヒドロメチルポリシロキサン(ジメチル)単位を持つコポリマー、
・M2'Dxy':ヒドロジメチルシリル末端を有するジメチルヒドロメチルポリシロキサン単位を持つコポリマー、
・M2x':トリメチルシリル末端を有するヒドロメチルポリシロキサン、
・D'4:環状ヒドロメチルポリシロキサン
(ここで、x及びyは採用する構造に応じて変化する整数又は小数(平均値)であり、当技術分野における慣用の技術に従って決定される)。
【0064】
前記のアルケニル化オルガノポリシロキサンEは、少なくとも10mPa・s、好ましくは50〜1000mPa・sの範囲の25℃における粘度を有するのが有利である。
【0065】
前記アルケニル化オルガノポリシロキサンEは、線状、分岐鎖状又は環状構造を有することができる。その重合度は、2〜5000の範囲であるのが好ましい。式(I.5)のシロキシル単位の例には、ビニルジメチルシロキサン単位、ビニルフェニルメチルシロキサン単位及びビニルシロキサン単位がある。
【0066】
オルガノポリシロキサンEの例には、ジメチルビニルシリル末端基を有するジメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を有するメチルビニルジメチルポリシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシリル末端基を有するメチルビニルジメチルポリシロキサンコポリマー、及び環状メチルビニルポリシロキサンがある。
【0067】
重付加触媒Fもまたよく知られている。白金化合物及びロジウム化合物を用いるのが好ましい。特に、米国特許第3159601号、同第3159602号及び同第3220972号並びに欧州特許公開第0057459A号、同第0188978A号及び同第0190530A号に記載された白金と有機化合物との錯体、米国特許第3419593号、同第3715334号、同第3377432号及び同第3814730号に記載された白金とビニル化オルガノシロキサンとの錯体を用いることができる。一般的に好ましい触媒Fは、白金である。この場合、白金金属の重量として計算した触媒Fの重量による量は、組成物Aの総重量を基準として一般的に2〜400ppmの範囲、好ましくは5〜200ppmの範囲である。
【0068】
本発明に従う組成物の1つの利点は、白金タイプの触媒を少ない量で用いることができることである。例えば、有利には、組成物Aの白金金属含有量は、組成物Aの総重量を基準とした重量として10〜120ppmの範囲、好ましくは10〜95ppmの範囲、より一層好ましくは10〜70ppmの範囲、さらにより一層好ましくは10〜45ppmの範囲である。
【0069】
特定的な実施形態に従えば、構成成分の量は、[≡SiH]/[≡Siアルケニル]のモル比が1〜7の範囲、好ましくは1〜5の範囲となるような量とする。ここで、
・[≡SiH]はケイ素に結合した水素原子を含むシロキシル単位の総モル数であり、
・[≡Siアルケニル]はケイ素に結合したアルケニル基を含むシロキシル単位の総モル数である。
【0070】
架橋抑制剤G(又は付加反応遅延剤)は、次の化合物から選択することができる:
・少なくとも1つのアルケニルで置換された(有利には環状の)オルガノポリシロキサン(テトラメチルビニルテトラシロキサンが特に好ましい)、
・ピリジン、
・有機ホスフィン及びホスファイト、
・不飽和アミド、
・アルキル化マレエート、並びに
・アセチレン性アルコール。
【0071】
これらのアセチレン性アルコール(仏国特許第1528464B号及び同第2372874A号)はヒドロシリル化反応用の好適な熱ブロッカーであり、次式を有する。
(R1)(R2)C(OH)−C≡CH
(式中、
1は直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又はフェニル基であり、
2は水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又はフェニル基であり、
基R1とR2と三重結合に対してα位に位置する炭素原子とが随意に環を形成することもでき、
1及びR2中に含有される炭素原子の総数は、少なくとも5、好ましくは9〜20である。)
【0072】
前記アルコールは、250℃超の沸点を有するものから選択するのが好ましい。例として、次のものを挙げることができる。
・1−エチニル−1−シクロヘキサノール;
・3−メチル−1−ドデシン−3−オール;
・3,7,11−トリメチル−1−ドデシン−3−オール;
・1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール;
・3−エチル−6−エチル−1−ノニン−3−オール;
・3−メチル−1−ペンタデシン−3−オール。
これらのα−アセチレン性アルコールは、工業製品である。
【0073】
かかる架橋抑制剤は、組成物Aの総重量に対して最大3000ppmの量、好ましくは100〜2000ppmの量で、存在させる。
【0074】
粘着性調整剤系Hは、既知の系から選択される。これには、仏国特許第2450642B号、米国特許第3772247号又は欧州特許公開第0601938号に記載されたものが包含され得る。例として、
・タイプMDViQ、MMViQ、MDViT、M[MHexenyl]Q又はM[MAllyloxypropyl]Qの少なくとも1種のオルガノポリシロキサン樹脂(A)96〜85重量部、
・タイプMD'Q、MDD'Q、MDT'、MQ又はMDQの少なくとも1種の樹脂(B)4〜15重量部
をベースとする調整剤を挙げることができる
(ここで、
・T':HSiO3/2
・D':H(CH3)SiO2/2
・M:(CH3)3SiO1/2
・Q:SiO4/2
・D:(CH3)2SiO2/2
・DVi:(CH3)(ビニル)SiO2/2
・M:(CH3)3SiO1/2
・MVi:(CH3)2(ビニル)SiO1/2
・MHexenyl:(CH3)2(ヘキセニル)SiO1/2)。
【0075】
前記組成物はまた、別の付着促進用添加剤を含むこともできる。この添加剤は好ましくはエポキシ官能性シランから、好ましくは次のものを含む群から選択される:
・(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン[Coatosil(登録商標)1770]、
・トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート[A-Link 597]、
・(γ−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン[Dynasilan(登録商標)GLYMO]、
・(γ−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン[Dynasilan(登録商標)MEMO]、
・SiVi基及びエポキシ官能基の両方を含有するシリコーン化合物、並びに
・それらの混合物。
【0076】
この別の付着促進用添加剤について好適な濃度は、例えば、組成物Aの総重量に対して0.5〜5重量%の範囲、好ましくは1〜3重量%の範囲である。
【0077】
組成物中に随意に存在させる希釈剤Iは、有利にはα−オレフィンから、特に1分子当たり4〜15個の炭素原子を有するものから、選択される。
【0078】
その他の官能性添加剤を組成物中に組み込むこともできる。これらの添加剤は、例えばガラスミクロビーズのようなフィラー、ミスティング防止剤J(当技術分野においてよく知られたもの)から選択することができる。
【0079】
本発明に従う組成物Aはまた、少なくとも1種の光開始剤(例えばカチオン性のもの)、好ましくはオニウムホウ酸塩から選択されるもの、より一層好ましくはホウ酸ヨードニウム及び/又はボランから選択されるものを含むことができる。
【0080】
光開始剤の例としては、次式:
【化12】
に相当するものを挙げることができる。
【0081】
好適なオニウムホウ酸塩についてのさらなる詳細については、例えば次の特許文献を参照することができる:米国特許第6864311号;同第6291540号及び同第5468902号の各明細書。
【0082】
光開始剤は、プロトン性溶剤中、例えばイソプロピルアルコール中に希釈するのが有利である。希釈率は例えば10〜30%の範囲、特に20%±2%である。
【0083】
組成物が光開始剤を含む場合、反応を促進するためにコーティングを熱及び/又は化学線(例えばUV)に曝露することができる。
【0084】
適切なボランについてのさらなる詳細については、例えば次の特許文献を参照することができる:米国特許第6743883号明細書及び米国特許出願公開第2004−0048975号明細書。
【0085】
撥水性剥離コーティングの製造用のコーティングベースとして特に用いることができる上記のタイプの本発明に従うシリコーン組成物の調製は、単純に、当業者に周知の混合手段及び方法を用いて本発明に従う構成成分を混合することから成る。
【0086】
これらの組成物はまた、剥離特性を提供するため及び攻撃的な接着剤(例えばある種のアクリル系感圧接着剤「PSA」)に対するシリコーンコーティングの改善された耐性を提供するための紙支持体の処理用にも、用いることができる。
【0087】
本発明の別の主題は、前記の本発明に従うシリコーン組成物Aを架橋及び/又は硬化させることによって得ることができるシリコーンエラストマーに関する。
【0088】
本発明の別の局面に従えば、本発明は、撥水性剥離コーティングを支持体(好ましくはポリマーフィルム、より一層好ましくはポリエステルポリマーフィルム)上に製造するための方法であって、この支持体上に前記のシリコーン組成物の少なくとも1つの層を塗布し、この層を(好ましくは熱活性化することによって)架橋させることから成ることを特徴とする、前記方法に関する。
【0089】
本発明に従うシリコーン組成物Aは、可撓性の紙又はポリマー支持体上に付着させることができる。可撓性支持体としては、例えば、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(例えばPET等)のようなポリマーフィルム、様々なタイプの紙(スーパーカレンダー仕上げ紙、コート紙等)、厚紙、セルロースシート又は金属シートを挙げることができる。シリコーン剥離層でコーティングされた可撓性ポリエステル支持体(例えばPETタイプのもの)は、粘着性ラベル用のライナーとして用いられる。
【0090】
混合手段及び方法は、溶剤フリー組成物又はエマルションについて、当業者に周知である。
【0091】
これらの組成物は、5本ロールコーティングヘッド、エアーナイフ又は均し棒システムのような紙をコーティングするための工業用機械に用いられる装置手段によって可撓性支持体又は材料上に塗布することができ、次いで70〜200℃の範囲の温度に加熱されたトンネル式オーブン中を循環させることによって硬化させることができる;これらのオーブン中の通過時間は温度に依存する;この時間は一般的に、100℃程度の温度において5〜15秒程度、180℃程度の温度において1.5〜3秒程度である。
【0092】
本発明に従えば、コーティングの架橋のためには、シリコーン重付加組成物でコーティングされた支持体を好ましくは180℃以下の温度に10秒未満の間、置く。
【0093】
前記組成物は、任意の可撓性材料又は基材上、例えば各種の紙(スーパーカレンダー仕上げ紙、コート紙等)、厚紙、セルロースシート、金属シート、プラスチックフィルム(ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等)等の上に、塗布することができる。
【0094】
組成物の塗布量は、処理すべき表面1m2当たり0.5〜2g程度であり、これは0.5〜2μm程度の層の付着に相当する。
【0095】
こうしてコーティングされた材料又は支持体は、次いでゴム、アクリル等のような任意の感圧接着剤材料と接触させることができる。この接着剤材料は次いで前記の支持体又は材料から容易に脱着可能である。
【0096】
別の主題に従えば、本発明はまた、本発明に従う前記の方法に従って得られた少なくとも1種の撥水性剥離コーティング又は本発明に従う前記のシリコーン組成物Aから得られた少なくとも1種の撥水性剥離コーティングを含むことを特徴とする支持体にも関する。
【0097】
好ましくは、前記支持体は、紙、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリエステルタイプのポリマーフィルム及び自己粘着性又は感圧粘着性エレメントの粘着面を保護するためのポリマーフィルム、より成る群から選択される可撓性支持体である。支持体は、ポリエステルポリマーフィルムであるのがさらにより一層好ましい。
【0098】
本発明に従うシリコーン剥離コーティングは、厳しい湿度及び温度条件下においてさえ、そしてアクリル系接着剤と長期間接触させた際にも、可撓性支持体に適切に且つ耐久性よく付着する。これらは、架橋/硬化する(少ない抽出可能物質)。これらは、剥離力が高速においてさえ高いままであるような剥離力プロファイルを有する(良好な剥離性)。これらは、平滑であり且つ透明であり、結果としてこのことはそれらを有効なラベル用の支持体にする。
【0099】
以下の実施例は指標として与えたものであり、本発明の分野及び思想を制限するものと見なすべきではない。
【実施例】
【0100】
I:付着用添加剤の調製:
【0101】
以下のものより成る各種添加剤を合成した:
・nYCH3SiO2/2単位
・mHCH3SiO2/2単位
・p(CH3)2SiO2/2単位
・2(CH3)3Si1/2単位
(ここで、Yは次式のエポキシ基である。
【化13】
【0102】
添加剤I1
【0103】
1リットルの反応器中に窒素下で181.0gのトルエンを導入する。この媒体を撹拌し、85℃に加熱する。この温度に達したら、10.2mgの白金−カルベン錯体(Umicore社より商品名Umicore HS432(登録商標)で販売されているもの)を導入する。次いで、アリルグリシジルエーテル(AGE)(236.8g、2.07モル)とポリメチルヒドロシロキサンH2(9個の(CH3)HSiO2/2単位及び2個の(CH3)3SiO1/2末端単位を有するもの)(363.2g、SiH=4.77モル)との混合物を4時間かけて滴下する。周囲温度に戻した後に、反応媒体を0〜3ミリバール下で25〜30℃において30分間、次いで1ミリバール下で85℃(設定値)において3時間、揮発分除去して、n個のYCH3SiO2/2単位、m個のHCH3SiO2/2単位及び2個の(CH3)3Si1/2単位から成る官能化シリコーンオイルを得た。このオイルは、次の特徴を有していた:n+m=9;[SiH]=586ミリモル/100g;[エポキシ]=291ミリモル/100g;粘度=32mPa・s。
【0104】
添加剤I2
【0105】
500ミリリットルの丸底フラスコ中に窒素下で50.3gのトルエン及び472mgのPt/Cを導入する。この混合物を電磁式撹拌機で撹拌し、90℃に加熱する。アリルグリシジルエーテル(AGE)(46.4g、0.40モル)とポリメチルヒドロシロキサンH2(9個の(CH3)HSiO2/2単位及び2個の(CH3)3SiO1/2末端単位を有するもの(100.22g、SiH=1.35モル)との混合物を47.5分かけて滴下する。添加が終了したら、加熱を一晩続ける。周囲温度に戻した後に、反応媒体を厚紙及びテフロンを通して濾過し、次いで60℃において2S blackで処理し、次いで再び濾過する。2S blackによる処理を繰り返す。次いで反応媒体を1ミリバール下で80℃(設定値)において3時間、揮発分除去して、n個のYCH3SiO2/2単位、m個のHCH3SiO2/2単位及び2個の(CH3)3Si1/2単位から成る官能化シリコーンオイルを得た。このオイルは、次の特徴を有していた:n+m=9、[SiH]=720ミリモル/100g;[エポキシ]=219ミリモル/100g;粘度=27mPa・s。
【0106】
添加剤I3
【0107】
500ミリリットル丸底フラスコ中に窒素下で105.1gのトルエン及び11gの白金−カルベン錯体(Umicore社より商品名Umicore HS432(登録商標)で販売されているもの)を導入する。この混合物を電磁式撹拌機で撹拌し、85℃に加熱する。アリルグリシジルエーテル(AGE)(249.2g、2.18モル)とポリメチルヒドロシロキサンH3(20個の(CH3)HSiO2/2単位及び2個の(CH3)3SiO1/2末端単位を含むもの(302.6g、SiH=4.52モル)との混合物を3時間かけて滴下する。添加が終了したら、滴下漏斗を45.4gのトルエンですすぎ、加熱を2時間維持する。周囲温度に戻した後に、反応混合物を1ミリバール下で92℃において3時間揮発分除去して、n個のYCH3SiO2/2単位、m個のHCH3SiO2/2単位及び2個の(CH3)3Si1/2単位から成る官能化シリコーンオイル(449.0g)を得た。このオイルは、次の特徴を有していた:n+m=20、[SiH]=568ミリモル/100g;[エポキシ]=324.3ミリモル/100g;粘度=186mPa・s。
【0108】
添加剤C1
【0109】
1リットルの反応器中に200gのトルエン及び1.80gのPt/C(白金1.5重量%)を導入する。この混合物を撹拌し、80℃に加熱する。アリルグリシジルエーテル(AGE)(53g、0.465モル)とポリメチルヒドロシロキサンH4(4個の(CH3)HSiO2/2単位、9個の(CH3)2SiO2/2単位及び2個の(CH3)3SiO1/2末端単位を含むもの)(500g、SiH=1.75モル)との混合物を30分かけて滴下する。添加が終了したら、加熱を1時間維持する。次いで加熱を停止し、周囲温度に戻した後に、反応媒体を濾過してPt/Cを除去する。最後に反応媒体を10ミリバール下で80℃において3時間揮発分除去して、n個のYCH3SiO2/2単位、m個のHCH3SiO2/2単位、9個の(CH3)2SiO2/2単位及び2個の(CH3)3Si1/2単位から成る官能化シリコーンオイルを得た(516g、収率93%)。このオイルは、次の特徴を有していた: n+m=4、[SiH]=0.25モル/100g;[エポキシ]=75ミリモル/100g;粘度=13mPa・s。
【0110】
添加剤C2
【0111】
1リットルの反応器中に200gのトルエン及び1.80gのPt/C(白金1.5重量%)を導入する。この混合物を撹拌し、80℃に加熱する。アリルグリシジルエーテル(AGE)(159g、1.395モル)とポリメチルヒドロシロキサン H4(4個の(CH3)HSiO2/2単位、9個の(CH32SiO2/2単位及び2個の(CH3)3SiO1/2末端単位を有するもの)(500g、SiH=1.75モル)との混合物を30分かけて滴下する。添加が終了したら、加熱を1時間維持する。次いで加熱を停止し、周囲温度に戻した後に、反応媒体を濾過してPt/Cを除去する。最後に反応媒体10ミリバール下で80℃において3時間揮発分除去して、n個のYCH3SiO2/2単位、m個のHCH3SiO2/2単位、9個の(CH3)2SiO2/2単位及び2個の(CH3)3Si1/2単位から成る官能化シリコーンオイルを得た(599g、収率91%)。このオイルは、次の特徴を有していた:n+m=4、[SiH]=0.097モル/100g;[エポキシ]=188ミリモル/100g;粘度=25mPa・s。
【0112】
添加剤C3
【0113】
1リットルの反応器中に200gのトルエン及び1.80gのPt/C(白金1.5重量%)を導入する。この混合物を撹拌し、80℃に加熱する。アリルグリシジルエーテル(AGE)(75g、0.657モル)とポリメチルヒドロシロキサンH6(50個の(CH3)HSiO2/2単位、50個の(CH3)2SiO2/2単位及び2個の(CH3)3SiO1/2末端単位を有するもの)(500g、SiH=3.65モル)との混合物を30分かけて滴下する。添加が終了したら、加熱を1時間維持する。次いで加熱を停止し、周囲温度に戻した後に、反応媒体を濾過してPt/Cを除去する。最後に反応媒体10ミリバール下で80℃において3時間揮発分除去して、n個のYCH3SiO2/2単位、m個のHCH3SiO2/2単位、50個の(CH3)2SiO2/2単位及び2個の(CH3)3Si1/2単位から成る官能化シリコーンオイルを得た(518g、収率90%)。このオイルは、次の特徴を有していた:n+m=50、[SiH]=0.55モル/100g;[エポキシ]=76ミリモル/100g;粘度=250mPa・s。
【0114】
添加剤C4
【0115】
10リットルの反応器中に窒素下で1733.9gのトルエン及び2.7gのPt−NHC(トルエン中の溶液状のもの)を導入する。この混合物を撹拌し、77℃に加熱する。アリルグリシジルエーテル(AGE)(390.5g、3.42モル)とポリメチルヒドロシロキサンH3(20個の(CH3)HSiO2/2単位及び2個の(CH3)3SiO1/2末端単位を有するもの)(5599.5g、SiH=82.23モル)との混合物を54分かけてポンプによって添加する。添加が終了したら、加熱を1時間維持する。次いで加熱を停止し、周囲温度に戻した後に、反応媒体を5ミリバール下で40℃において1時間揮発分除去し、次いで4時間かけて温度を徐々に85℃まで上昇させる。温度を85℃に1時間維持して、n個のYCH3SiO2/2単位、m個のHCH3SiO2/2単位及び2個の(CH3)3Si1/2単位から成る官能化シリコーンオイルを得た(7727.8g)。このオイルは、次の特徴を有していた:n+m=20、[SiH]=1.30モル/100g;[エポキシ]=37.7ミリモル/100g;粘度=12.3mPa・s。
【0116】
添加剤C5
【0117】
500ミリリットルの丸底フラスコ中に窒素下で75.3gのトルエン及び645mgの1.56% 2S blackを導入する。この混合物を電磁式撹拌機で撹拌し、90℃に加熱する。アリルグリシジルエーテル(AGE)(47.8g、0.42モル)とポリメチルヒドロシロキサンH5(10個の (CH3)HSiO2/2単位、10個の(CH3)2SiO2/2単位及び2個の(CH3)3SiO1/2末端単位を有するもの)(150.6g、SiH=1.0モル)との混合物を32分かけて滴下する。添加が終了したら、加熱を2時間維持する。冷却後、媒体を厚紙及びテフロンを通して濾過する。次いで未精製生成物を60℃において2S blackで一晩処理し、次いで再び濾過する。次いで反応媒体を4ミリバール下で30℃において3時間、次いで4ミリバール下で80℃において4時間、揮発分除去して、n個のYCH3SiO2/2単位、m個のHCH3SiO2/2単位、10個の(CH3)2SiO2/2単位及び2個の(CH3)3Si1/2単位から成る官能化シリコーンオイル(169.2g)を得た。このオイルは、次の特徴を有していた:n+m=10、[SiH]=326.6ミリモル/100g;[エポキシ]=180.8ミリモル/100g;粘度=46.6mPa・s。
【0118】
添加剤C6
【0119】
500ミリリットルの丸底フラスコ中に窒素下で51.3gのトルエン及び398mgのPt/Cを導入する。この混合物を電磁式撹拌機で撹拌し、90℃に加熱する。アリルグリシジルエーテル(AGE)(23.1g、0.20モル)とポリメチルヒドロシロキサンH2(100.40g、SiH=1.35モル)との混合物を20.25分かけて滴下する。添加が終了したら、加熱温度を60℃に下げ、媒体を厚紙及びテフロンを通して濾過する。次いで未精製生成物を60℃において4S blackで7時間処理し、次いで再び濾過する。次いで反応媒体を10ミリバール下で30℃において2時間、次いで1ミリバール下で80℃(設定値)において2時間、揮発分除去して、n個のYCH3SiO2/2単位、m個のHCH3SiO2/2単位及び2個の(CH3)3Si1/2単位から成る官能化シリコーンオイルを得た。このオイルは、次の特徴を有していた:n+m=9、[SiH]=962ミリモル/100g;[エポキシ]=116ミリモル/100g;粘度=12mPa・s。
【0120】
【表1】
【0121】
II:応用試験:付着用添加剤を用いたコーティング及び架橋の条件:
【0122】
すべてのコーティング操作は、Rotomec5本ロールコーティング機を用いて実施し、PETフィルム支持体又はグラシン紙支持体上に付着させたシリコーンを架橋させた;0.3〜1g/m2の範囲の塗布量。
【0123】
シリコーン処理フィルム又は紙がコーティング機から出てきたら、これを下記のラブオフ試験に従うコーティングの粘着性及び耐摩耗性の検査、並びに抽出可能化合物(架橋しなかったシリコーンの画分)の含有量の検査(これは系の反応性を特徴付けることを可能にする)に付す。
【0124】
次に、エージング試験を実施する。この試験は、シリコーン処理紙又はフィルムを50℃/相対湿度70%の耐候試験用オーブン中でアクリル系接着剤と接触させて(促進エージング)、耐摩耗性の経時変化を観察することから成る。
【0125】
MIBK(メチルイソブチルケトン)で抽出可能なシリコーンの画分、即ち架橋していないシリコーンの量を、原子吸収により、抽出用溶剤中のケイ素を定量分析することによって、測定する。
【0126】
支持体に対する粘着性及びシリコーン層の耐摩耗性を検証するラブオフ測定は、シリコーン処理された支持体上を人差し指で擦って層に機械的応力を加えることから成る。ラブオフ現象(擦り取り)が現れる(シリコーンコーティングが裂けて切れっ端になることに相当)までに指を前後に動かした回数を記録する。評点1はシリコーン層の耐摩耗性が劣っていることを示し、評点10はシリコーン層の耐摩耗性が優れていることを示す。
【0127】
結果を表2〜10に示す。
【表2】
【0128】
添加剤I1を有する本発明に従う組成物でコーティングされたPETフィルムは、50℃、相対湿度70%で160日間の貯蔵の後にさえ、ラブオフ試験によって測定して良好な耐摩耗性を示す。
【0129】
50個の(CH3)2SiO2/2単位を含めて102個のシロキシ単位を有する添加剤C3を用いて実施した比較試験は、50℃、相対湿度70%で14日後に劣悪な耐摩耗性を示す。
【0130】
【表3】
【0131】
添加剤I1を0.5又は1重量部有する本発明に従う組成物でコーティングされたPETフィルムは、50℃、相対湿度70%で30日間の貯蔵の後にさえ、ラブオフ試験によって測定して良好な耐摩耗性を示す。
【0132】
9個の(CH3)2SiO2/2単位、0.2モル/100g未満のエポキシ含有率及び添加剤100g当たり0.3モル未満のSiH含有率を有する添加剤C1を用いて実施した比較試験は、50℃、相対湿度70%で7日後に劣悪な耐摩耗性を示す。
【0133】
【表4】
【0134】
添加剤I1又はI2を有する本発明に従う組成物でコーティングされたPETフィルムは、50℃、相対湿度70%で125日間の貯蔵の後にさえ、ラブオフ試験によって測定して良好な耐摩耗性を示す。
【0135】
0.2モル/100g未満のエポキシ含有率を有する添加剤C6を用いて実施した比較試験は、50℃、相対湿度70%で14日間(1部の添加剤)又は50℃、相対湿度70%で125日間の貯蔵の後に、劣悪な耐摩耗性を示す。
【0136】
【表5】
【0137】
添加剤I1を有する本発明に従う組成物でコーティングされたPETフィルムは、50℃、相対湿度70%で87日間の貯蔵の後にさえ、ラブオフ試験によって測定して良好な耐摩耗性を示す。
【0138】
0.2モル/100g未満のエポキシ含有率を有する添加剤C4を用いて実施した比較試験は、50℃、相対湿度70%で36日間(0.5部の添加剤C4)又は50℃、相対湿度70%で52日間(1部の添加剤C4)の貯蔵の後に、劣悪な耐摩耗性を示す。
【0139】
【表6】
【0140】
添加剤I1を有する本発明に従う組成物でコーティングされたPETフィルムは、50℃、相対湿度70%で25日間の貯蔵の後にさえ、ラブオフ試験によって測定して良好な耐摩耗性を示す。
【0141】
0.2モル/100g未満のエポキシ含有率を有する添加剤C4を用いて実施した比較試験は、50℃、相対湿度70%で10日後に劣悪な耐摩耗性を示す。
【0142】
【表7】
【0143】
添加剤I1を有する本発明に従う組成物でコーティングされたグラシン紙は、50℃、相対湿度70%で70日間の貯蔵の後にさえ、ラブオフ試験によって測定して良好な耐摩耗性を示す。
【0144】
9個の(CH3)2SiO2/2単位、0.2モル/100g未満のエポキシ含有率及び0.3モル/100g未満のSiH含有率を有する添加剤C1又はC2を用いて実施した比較試験は、50℃、相対湿度70%で56日間(添加剤C1)又は50℃、相対湿度70%で14日間(添加剤C2)の貯蔵の後に、劣悪な耐摩耗性を示す。
【0145】
【表8】
【0146】
添加剤I1を有する本発明に従う組成物でコーティングされたグラシン紙は、50℃、相対湿度70%で70日間の貯蔵の後にさえ、ラブオフ試験によって測定して良好な耐摩耗性を示す。
【0147】
9個の(CH3)2SiO2/2単位及び0.2モル/100g未満のエポキシ含有率を有する添加剤C5を用いて実施した比較試験は、50℃、相対湿度70%で70日後に、劣悪な耐摩耗性を示す。
【0148】
上記の表に示したすべての結果は、本発明に従う付着用添加剤I1、I2及びI3だけが、紙支持体又はPETフィルム支持体上のシリコーン相の付着性及び耐摩耗性を測定するために実施したラブオフ測定の際に、満足できる結果を得ることを可能にするということを示している。
【0149】
【表9】
【0150】
この一連の試験は、本発明に従う添加剤をシリコーンコーティング組成物中に用いた場合に、架橋速度(速度変化なし)や耐摩耗性を低下させることなく、白金触媒の使用量を減らすことができることを示している。
【0151】
【表10】
【0152】
コーティング組成物中の本発明に従う添加剤の量を増やすことによって、架橋用オイルを完全に置き換えることができる。