特許第6633229号(P6633229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6633229高圧水の弓門内噴射による魚体内の血液の瞬間除去装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633229
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】高圧水の弓門内噴射による魚体内の血液の瞬間除去装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A22B 3/08 20060101AFI20200109BHJP
   A22B 5/04 20060101ALI20200109BHJP
   A22C 25/00 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   A22B3/08
   A22B5/04
   A22C25/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-554796(P2018-554796)
(86)(22)【出願日】2018年1月29日
(86)【国際出願番号】JP2018002625
(87)【国際公開番号】WO2019146092
(87)【国際公開日】20190801
【審査請求日】2018年10月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518319609
【氏名又は名称】織田 円
(74)【代理人】
【識別番号】100074169
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】織田 円
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−212050(JP,A)
【文献】 特開平07−264968(JP,A)
【文献】 特開2013−039504(JP,A)
【文献】 特開2014−200737(JP,A)
【文献】 特開平09−149761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22B 1/00− 7/00
A22C 5/00−29/04
H05C 1/00− 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚(10)の切断された尾部(12)より血液弓門(14)内に液体(20)を圧力を掛けて噴射することにより魚を生き締め(活〆)する魚体内の血液の瞬間除去装置(1)が、
液体に圧力を掛けて送出する加圧装置(100)と、該加圧装置から送出される圧力の掛かった液体(20)を送るためのホース(200)と、該ホースに接続される前記液体の流路の開閉を行うバルブ(300)と、該バルブに接続されるバルブが開状態の時に前記液体を噴射するノズル(400)と、からなり、
前記バルブ(300)は、ボタン(310)の押下げ乃至引上げによって流路(320)の開閉を行うとともに、前記ノズル(400)は、あらゆる大きさからなる魚の血液弓門の開口を密着封止しながらノズル先端部を挿入するとともに液体噴射中に魚が動くことによるノズル先端部の折れ、曲がり、破損を防止するため、太径の元部(410)から先端部(420)に向かって外形を先細のテーパ状に形成し、かつ、先端部中央の穴径を前記元部(410)の穴径よりく形成した事を特徴とする高圧水の弓門内噴射による魚体内の血液の瞬間除去装置。
【請求項2】
魚の切断された尾部より血液弓門内に圧力の掛かった液体を噴射することによって魚を生き締め(活〆)するための魚体内の血液の瞬間除去方法(2)が、
魚の延髄部を切断開口する頭部切断工程(500)と、
魚の尾部を切断して脊椎と血液弓門を露出する尾部切断工程(600)と、
前記尾部切断工程によって露出した魚の血液弓門に先端部の穴径を元部の穴径より狭く形成したあらゆる大きさからなる魚の血液弓門の開口を密着封止しながらノズル先端部を挿入するとともに液体噴射中に魚が動くことによるノズル先端部の折れ、曲がり、破損を防止するための外形が先細のテーパ状のノズルを挿入し、加圧装置によって圧力を掛けられた液体を噴射する血抜き工程(700)と、
からなることを特徴とする高圧水の弓門内噴射による魚体内の血液の瞬間除去方法。
【請求項3】
魚(10)の切断された尾部(12)より血液弓門(14)内に液体(20)を圧力を掛けて噴射することにより魚を生き締め(活〆)する魚体内の血液の瞬間除去装置(1)が、
水道配管から供給される圧力の掛かった液体(20)を流通させるためのホース(200)と、該ホースに接続される前記液体の流路の開閉を行うバルブ(300)と、該バルブに接続されるバルブが開状態の時に前記液体を噴射するノズル(400)と、からなり、
前記バルブ(300)は、ボタン(310)の押下げ乃至引上げによって流路(320)の開閉を行うとともに、前記ノズル(400)は、あらゆる大きさからなる魚の血液弓門の開口を密着封止しながらノズル先端部を挿入するとともに液体噴射中に魚が動くことによるノズル先端部の折れ、曲がり、破損を防止するため、太径の元部(410)から先端部(420)に向かって外形を先細のテーパ状に形成し、かつ、先端部中央の穴径を前記元部(410)の穴径よりく形成した事を特徴とする高圧水の弓門内噴射による魚体内の血液の瞬間除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚の生き締め(活〆)の装置およびその方法に関し、特に、血液弓門を密着封止する構造を用いて魚の動脈または静脈に含まれる血管内の血液を圧力を掛けた液体によって噴射排出することにより、瞬時にして簡潔に血抜きを行うとともに、血管内の血の完全除血を行うことを可能とし、他の保存処理工程等を必要とせずに生き締め(活〆)後の魚の鮮度を長期間に渡って保つことを可能とした、あらゆる大きさの魚に対応するための血液弓門の密着封止構造からなるノズルの折れ等の破損を抑制した魚体内の血液の瞬間除去(除血)のための装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、魚の生き締め(活〆)をするための装置および方法が存在しており、魚の鮮度や味を確保するための数多くの生き締め(活〆)装置および方法が実施されている。魚を締める目的は、乳酸等の蓄積による味の劣化の防止、死後硬直を遅らせることによる腐敗の抑制、残存血液内での細菌の繁殖の抑制、残留血液の酸化による残留血液自体の腐敗の防止、魚が暴れることによる体内のATP消費の防止、魚が暴れて打撲することにより生じた鬱血部分からの腐敗の防止等が挙げられる。
【0003】
魚を締める方法として、従来より、まず第一工程としてピアノ線等を用いて神経を破壊する方法が用いられている。すなわち、ピアノ線等の細長い器具を魚の脊髄に沿って突き通すことにより、神経を破壊し死後硬直を遅らせて鮮度を保っている。この方法によると、魚が暴れてATPが消費されることや乳酸等が蓄積することによる味の劣化を防止したり、死後硬直を遅らせることによる腐敗の抑制が可能となる。
【0004】
しかしながら、細い線材を魚の脊髄に挿入するのは熟練した技術が必要となり、容易かつ効率的に魚を締めるのが困難であることや、脊髄の除去の他に血抜きが完全確実に行われないと残余の血で細菌が繁殖することとなり、満足な食感を維持する生き締め(活〆)を行う事が出来ないという問題点があった。
【0005】
このような問題点を解消するための技術として、特開2000−166459号公報が存在する。ここでは、魚の生きしめと神経抜き及び血抜きを同時に行うための技術として、魚の尾ヒレの付け根近傍に刃物を突刺すと同時に、神経弓門に圧縮空気またはガスを噴出し、神経抜きと血抜きを行う技術が開示されている。神経弓門に圧縮空気またはガスを噴出することにより、神経が瞬間的に破壊されて、予め切断してある頭部側の脊椎体より噴出し、これと同時に尾ヒレの付け根近傍の脊椎体と静脈、動脈も切断されるため、血抜きが行われる旨が開示されている。
【0006】
確かに、この技術によれば、神経抜き及び血抜きを同時に行う事が可能となるが、圧縮空気またはガスを神経弓門に噴出する方法であるため、血管内の血液は強烈に吹き飛ばされるだけで周囲に残存する可能性があり、確実かつ完全に血の排除をするという点では充分とは言えなかった。すなわち、液体を用いていないため洗浄が不十分となり、残余の血液中で細菌の繁殖の可能性がある等、衛生面でも十分とは言えないという問題点があった。また、充分な洗浄を追求して水洗い若しくは水中に浸ける等の余分な工程が必要であった。また、魚の大きさに応じて弓門の大きさも異なるため、あらゆるサイズの魚に対応するオールマイティーな除洗という観点からは、全ての魚に対応したものではなく、利便性に欠けるという問題点も内在していた。更に、噴射中に魚が暴れることにより弓門に挿入する針(ノズル先端部)が曲がったり折れたりするという問題点も存在していた。
【0007】
魚の鮮度は、血抜きが確実でかつ食感に耐えるだけ満足のいく程度に除血されているかどうかによって、かなり出来映えが左右されることになる。従って、完全な血の洗浄を担保する方法が種々考案されているが、どの方法も手間のかかるものであった。そこで、どのような大きさの魚であっても、簡潔確実かつ効率よく血抜きが容易にできる装置およびその方法の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2000−166459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題を解決するために、魚の生き締め(活〆)の装置およびその方法であって、特に、従来とは異なり、魚の尾部の血液弓門から動脈または静脈を含む血管内に圧力を掛けた高圧液体を、血液弓門に挿入して密着封止する構造を用いて瞬間噴出することによって該血管内の血液を頭部方向へ噴射排出させることにより瞬時にして簡潔に血抜きを行うとともに、血管内の完全除血を行うことを可能としたもので、従来と異なり、他の除血洗浄工程を必要としない、あらゆる大きさの魚に対応するための血液弓門の密着封止構造からなるとともに、ノズルの折れ等の破損を抑制した魚の血抜き生き締め(活〆)のための魚体内の血液の瞬間除去装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明に係る高圧水の弓門内噴射による魚体内の血液の瞬間除去装置は、魚の切断された尾部より血液弓門内に液体を圧力を掛けて噴射することにより魚を生き締め(活〆)する魚の血抜き生き締め(活〆)装置が、液体に圧力を掛けて送出する加圧装置と、該加圧装置から送出される圧力の掛かった液体を送るためのホースと、該ホースに接続される前記液体の流路の開閉を行うバルブと、該バルブに接続されるバルブが開状態の時に前記液体を噴射するノズルと、からなり、前記バルブは、ボタンの押下げ乃至引上げによって流路の開閉を行うとともに、前記ノズルは、あらゆる大きさからなる魚の血液弓門の開口を密着封止しながらノズル先端部を挿入するとともに液体噴射中に魚が動くことによるノズル先端部の折れ、曲がり、破損を防止するため、太径の元部から先端部中央に向かって外形を先細のテーパ状に形成し、かつ、先端部の穴径を前記元部の穴径よりく形成した構成である。
【0010】
また、魚の切断された尾部より血液弓門内に圧力の掛かった液体を噴射することによって魚を生き締め(活〆)するための高圧水の弓門内噴射による魚体内の血液の瞬間除去方法が、魚の延髄部を切断開口する頭部切断工程と、魚の尾部を切断して脊椎と血液弓門を露出する尾部切断工程と、前記尾部切断工程によって露出した魚の血液弓門に先端部の穴径を元部の穴径より狭く形成したあらゆる大きさからなる魚の血液弓門の開口を密着封止しながらノズル先端部を挿入するとともに液体噴射中に魚が動くことによるノズル先端部の折れ、曲がり、破損を防止するための外形が先細のテーパ状のノズルを挿入し、加圧装置によって圧力を掛けられた液体を噴射する血抜き工程と、からなる構成でもある。
【0011】
また、本発明に係る高圧水の弓門内噴射による魚体内の血液の瞬間除去装置は、魚の切断された尾部より血液弓門内に液体を圧力を掛けて噴射することにより魚を生き締め(活〆)する魚体内の血液の瞬間除去装置が、水道配管から供給される圧力の掛かった液体を流通させるためのホースと、該ホースに接続される前記液体の流路の開閉を行うバルブと、該バルブに接続されるバルブが開状態の時に前記液体を噴射するノズルと、からなり、前記バルブは、ボタンの押下げ乃至引上げによって流路の開閉を行うとともに、前記ノズルは、あらゆる大きさからなる魚の血液弓門の開口を密着封止しながらノズル先端部を挿入するとともに液体噴射中に魚が動くことによるノズル先端部の折れ、曲がり、破損を防止するため、太径の元部から先端部中央に向かって外形を先細のテーパ状に形成し、かつ、先端部の穴径を前記元部(410)の穴径よりく形成した構成でもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記詳述した通りの構成であるので、以下のような効果がある。
1.加圧された液体の流路の開閉を行うバルブを設けたため、所望する時間、魚の尾部の血液弓門から圧力の掛けられた液体を噴射して確実に単一の操作だけで血液を充分満足できる程度まで排出(除血)することが可能となる。また、ノズルの形状を太径の元部から先端部に向かって外形を先細のテーパ状に形成したため、あらゆる大きさの弓門に挿入可能となり、確実に密封密着した状態で除血するので、様々な種類や大きさの魚に対応した血抜き生き締め(活〆)装置を提供することが可能となる。更に、液体の噴射中に魚が暴れて動くことによるノズルの折れ等の破損を防止することが可能となる。
【0013】
2.魚の切断された尾部より血液弓門内に液体を圧力を掛けて噴射する方法であるため、誰にでも簡単に動脈または静脈を含む血管内の血液が確実に排出されるとともに、洗浄や水浸けのような血抜き工程を経ることなく、簡潔に血管内の洗浄を行う事が可能となる。
3.水道配管から供給される圧力の掛かった液体を用いる構成としたため、加圧装置がない場合であっても充分な水圧を得ることが出来、魚体内の血液を充分満足できる程度まで排出(除血)することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る高圧水の弓門内噴射による魚体内の血液の瞬間除去装置および方法を、図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係る魚体内の血液の瞬間除去装置の側面図であり、図2は、魚の尾部の断面図である。図3は、魚体内の血液の瞬間除去方法のフロー図であり、図4は、水道配管から供給される液体を利用した魚体内の血液の瞬間除去装置の側面図である。
【0015】
本発明の高圧水の弓門内噴射による魚体内の血液の瞬間除去装置1は、図1に示すように、加圧装置100と、ホース200と、バルブ300と、ノズル400とからなり、ノズル400を魚の血液弓門に挿入した上でノズル400から圧力の掛かった液体を噴射することで、動脈または静脈を含む血管内の血液を瞬間除去(除血)する事を可能とする魚体内の血液の瞬間除去装置である。
【0016】
本発明に係る魚体内の血液の瞬間除去装置を用いて血液の瞬間除去(除血)を行う魚10は、予め、尾部12を切断した状態としておく。尾部12には、図2に示すように、血液弓門14が開口した状態となっている。この切断された尾部12より血液弓門14内に、液体20を圧力の掛かった状態で噴射することにより動脈または静脈を含む血管から血液を瞬間的に排出(除去)して魚を生き締めする構成である。専ら血を抜くためだけの洗浄工程等を一切必要としない画期的でかつ簡潔な生き締め(活〆)を実現しており、このような血液除去(除血・奪血)は従来の除洗には見られなかった。
【0017】
なお、魚の背骨は頭部から尾部に掛けて先細りとなるような形状をしており、頭部側から神経弓門や血液弓門に圧力に係った液体を噴射すると尾部側の組織を破壊してしまう虞があるため、尾部12側の血液弓門14内に液体20を圧力の掛かった状態で尾部から頭部方向へ噴射することにより完全な除血または奪血を実現している。
【0018】
加圧装置100は、液体20に圧力を掛けて送出するための装置であり、圧力を掛けられた液体20は加圧装置100に設けられた開口から外部へ噴出する。本実施例では、水道水等外部から供給される水等の液体を一旦内部に取り込んだ上で約7Kgf/cm程度まで加圧して放出するコンプレッサからなるが、これに限定されることはない。別の実施例として、図4に示すように、加圧装置100を用いずに水道配管の蛇口から加圧されて放出される水道水を直接ホース200へ流通する構成とすることも可能である(水道配管から供給される圧力は、約5〜7Kgf/cmであり、使用する事が可能である)。この構成とすることにより、コンプレッサが不要となる。ただし、旧来必要としていた血を抜くための洗浄工程は、その必要性が無くなった点で大きな相違がある。
【0019】
また、加圧装置100の加圧処理は、電気等を用いた動力によって加圧する構成であってもよいし、例えば液体を封入したペットボトルに手動ポンプで空気を更に封入して加圧した上で該液体を外部へ流出するように、手動によって加圧する構成であってもよい。また、手動による加圧であっても従来技術で必要となっていた血を抜くための水による洗浄の必要性は全くない点で画期的である。
【0020】
ホース200は、加圧装置100から送出される圧力の掛かった水等の液体20をバルブ300へ向けて送るためチューブ状部材であり、図1に示すように、一端が加圧装置100の開口に接続固定された状態となっている。本実施例では、ゴムホースを用いているが、これに限定される事なく、圧力の掛かった液体20を安定して送ることが可能であれば、適宜の素材のチューブを選択して使用する事が可能である。
【0021】
バルブ300は、ホース200を介して加圧装置100から流入する液体20の流路の開閉を行うバルブであり、一対の開口が設けられるとともに該開口同士が内部で開閉弁330を介して連通した流路320を有する構造となっており、一方の開口がホース200に接続されている。バルブ300の開閉弁330は、通常は閉状態となっており、外部からの操作で開状態としてホース200から流入した圧力の掛かった液体20を、出口側の開口から流出するように、液体20の流通を制御する従来から存在する機構を利用した構成である。
【0022】
バルブ300は、本実施例では、ボタン310の押下げ乃至引上げによって開閉弁330を開状態/閉状態にすることにより、流路320の開閉を行う構成であるが、これに限定されることはなく、例えば、レバー等の把持・開放によって開閉面330を操作する構成とすることも可能である。
【0023】
また、流路320は、本実施例では、バルブ300の入口側開口から出口側開口へ向けて直線状に形成されているが、これに限定されることはなく、入口側開口と出口側開口の向きが90度の角度を成すような構成とすることも可能である。
【0024】
ノズル400は、魚10の血液弓門14を密着封止して挿入するとともにバルブ300が開状態の時に液体20を噴射するための部材であり、バルブ300の出口側の開口に固定接続される。ノズル400は、本実施例では、図1および図4に示すように、太径の元部410から先端部420に向かって外形を先細のテーパ状に形成するとともに、先端部420の穴径を元部410の穴径より狭く形成した構成となっている。先端の穴径は極小に形成することも小さめに形成することも可能である。ただし、先端部中央の小径の位置は正確にノズルの中央に位置するように形成する必要がある。
【0025】
この構成とすることにより、あらゆる大きさの血液弓門14に挿入することが可能となり、ノズルや針を交換することなく一つの器具で様々な種類や大きさの魚10血液弓門14挿入したうえで密着封止して対応した魚体内の血液の瞬間除去装置を提供することが可能となった。また、加圧された液体に更に圧力を掛けて先端中央の開口から噴射することが可能となり、確実かつ素早い血抜きおよび動脈または静脈を含む血管内の血液除去(除血)を行う事が可能となった。また、この形状によりノズル400が血液弓門14を密封することとなるため、加圧された液体が漏れずに確実に動脈または静脈を含む血管内の血液を瞬間的に除去することが可能となった。更に、魚が暴れた場合であっても、血液弓門に挿入するノズル400が曲がったり折れたりすることがなくなり、交換の必要がなく、耐久性・経済性・利便性に富んだノズルを有する魚体内の血液の瞬間除去装置を提供することが可能となった。
【0026】
本発明に係る高圧水の弓門内噴射による魚体内の血液の瞬間除去方法2は、魚10の切断された尾部12より血液弓門14内に圧力の掛かった液体20を噴射して魚体内の血液の瞬間除去(除血・奪血)することによって魚を生き締め(活〆)するための方法であり、図3に示すように、頭部切断工程500と、尾部切断工程600と、血抜き工程700とからなり、その後の専ら血を抜くためだけの洗浄工程を含まない構成である。
【0027】
頭部切断工程500は、魚10の延髄部を切断開口する工程であり、延髄部を切断して露出することにより、魚を仮死状態にすることが可能となり、魚10が暴れてATPを消費することや乳酸等が蓄積することによる味(食感)の劣化を防止できるとともに、神経抜き処理を迅速かつ簡潔に容易に行う事が可能なる。
【0028】
尾部切断工程600は、魚10の尾部12を切断することで、図2に示すように脊椎と血液弓門14を露出する工程である。この工程により、血液弓門14を露出して血抜き処理を行う事が容易となる。
【0029】
血抜き工程700は、尾部切断工程600によって露出した魚10の血液弓門14に圧力の掛かった液体20を噴射して動脈または静脈を含む血管内の血液を瞬間的に排出除去(除血)するとともに、該血管内を清掃するための工程である。本実施例では、魚10の血液弓門14に先端部の穴径を元部の穴径より狭くした外形が先細のテーパ状からなるノズルを挿入し、加圧装置によって圧力を掛けられた液体20をノズルの先端から高圧で噴射する構成である。この構成とすることにより、魚の動脈または静脈を含む血管内の血液が確実に瞬間的に排出(除去)されるとともに、瞬時にして血管内の清掃を行って他の専ら血を抜くためだけの洗浄等の工程を設けることなく簡潔に鮮度を保つ事が可能となった。また、あらゆる大きさからなる魚10の血液弓門14を密着封止して挿入するとともに、液体20の噴射中に魚10が暴れて動くことによるノズルの折れ等の破損を防止することが可能となった。
【0030】
魚の鮮度を保つ上で重要なことは、魚の体内にある血液をいかに完全にまたは満足いく程度まで除去するかというところにある。すなわち、魚の腐敗を進行させていたのは、魚の体内の残留血液であり、これを確実かつ完全に除去できれば、魚の鮮度は長時間に渡って保たれる事となる。
【0031】
詳細には、残留する血液内に雑菌が発生することにより内臓等の腐敗が促進されたり、残留した血液自体が酸化して腐敗することにより、魚の鮮度やおいしさを損なうという問題点があった。本発明に係る魚体内の血液の瞬間除去装置およびその方法を用いる事により、魚の体内に残留する血液を瞬間的に除去(除血)することが可能となり、残留血液の中での雑菌の発生を防止・予防することが可能となるとともに、酸化による残留した血液自体の腐敗を防止することが可能となり、魚の腐敗進行を格段に遅らせることが可能となった。例えば、本発明に係る魚体内の血液の瞬間除去装置およびその方法により、からすみのような卵巣内まで血液の除去(除血・奪血)を行う事が可能となる。これにより、からすみ等の内臓の鮮度や味が落ちることを防止することができ、魚の内臓についても新鮮でおいしい状態を長時間に渡って保つことが可能となった。
【0032】
また、従来の魚の処理方法では、心臓が停止していない活魚でなければ血抜き処理等を行う事が出来ないという問題点があった。本発明に係る魚体内の血液の瞬間除去装置およびその方法を用いる事により、例えば、水揚げ後72時間程度の良質な魚であれが、野締めの魚であっても素早く血抜き処理を施すことが可能となり、魚河岸に運搬後の魚の加工処理並びに余計な洗浄処理(血の洗い流し)を格段に減らすことが可能となった
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係る魚体内の血液の瞬間除去装置の側面図
図2】魚の尾部の断面図
図3】魚体内の血液の瞬間除去方法のフロー図
図4】水道配管から供給される液体を利用した魚体内の血液の瞬間除去装置の側面図
【符号の説明】
【0034】
1 魚体内の血液の瞬間除去装置
2 魚体内の血液の瞬間除去方法
10 魚
12 尾部
14 血液弓門
20 液体
100 加圧装置
200 ホース
300 バルブ
310 ボタン
320 流路
330 開閉弁
400 ノズル
410 元部
420 先端部
500 頭部切断工程
600 尾部切断工程
700 血抜き工程
図1
図2
図3
図4