(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業用走行車では、2つの燃料フィルタをエンジンルーム内のラジエータ前方に配置しているので、燃料フィルタを通過する燃料の冷却効果が得られる反面、セジメンタに溜まった水の確認や、その排水作業が行い難いという問題がある。
一方、特許文献2の作業用走行車では、運転部の床面を支持するステップフレームの外側部に2つの燃料フィルタを配置しているので、セジメンタに溜まった水の確認や、その排水作業が容易であり、また、エンジンの排風(熱風)が直接当たることも回避できるが、燃料フィルタが機体の最も外側に位置するので、障害物との接触で破損する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、燃料タンクからエンジンに至る燃料供給経路に、燃料に混入した水を分離するセジメンタと、燃料を濾過する燃料フィルタとを備える作業用走行車であって、前記エンジンの前方に配置されるラジエータと、エンジンの左右側方に配置される左右の前輪と、前輪の後方で運転部の床部を支持するステップフレームと
、ステップフレームの下方に配される燃料タンクとを備え、前記燃料フィルタは、ラジエータの前方に配置され、前記セジメンタは
、前輪とステップフレームとの間に
、少なくとも前方がカバーで覆われ、かつ、セジメンタ全体がステップフレームおよび燃料タンクの前面よりも前方に突出する状態で配置されることを特徴とする作業用走行車である。
請求項2の発明は、前記カバーは、セジメンタの前方を覆いつつ、セジメンタの側方を開放することを特徴とする請求項1に記載の作業用走行車である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、セジメンタは、少なくとも前方がカバーで覆われた状態で前輪とステップフレームとの間に配置されるので、セジメンタに溜まった水の確認や、その排水作業が容易でありながら、障害物との接触による破損も防止でき、さらには、少なくとも前方を覆うカバーにより、エンジンの排風が直接当たることも回避できる。しかも、燃料フィルタは、ラジエータの前方に配置されるので、燃料フィルタを通過する燃料の冷却効果が得られる。
また、請求項2の発明によれば、カバーは、セジメンタの前方を覆いつつ、セジメンタの側方を開放するので、カバーを外すことなく、セジメンタに溜まった水の確認や、その排水作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るトラクタの右側面図である。
【
図3】ステップフレーム及び燃料タンクの支持構造を示すトラクタの要部正面図である。
【
図4】燃料タンクの支持構造を上側から見た斜視図である。
【
図5】燃料タンクの支持構造を下側から見た斜視図である。
【
図6】燃料タンクブラケット及び下部ブラケットの斜視図である。
【
図8】(A)は燃料タンクの平面図、(B)は燃料タンクの側面図、(C)は燃料タンクの正面図である。
【
図9】セジメンタの取付状態を上方から見た斜視図である。
【
図10】セジメンタの取付状態を下方から見た斜視図である。
【
図11】メインフィルタの配置を示すエンジンルーム内の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1及び
図2において、1はトラクタ(作業用走行車)であって、該トラクタ1は、機体前部のエンジンルーム2(
図11参照)内に搭載されるエンジン(図示せず)、機体の左右中心部に前後方向に沿って配置され、エンジン動力を変速するミッションケース3、ミッションケース3から伝動される動力で回転駆動する左右一対の前輪4及び後輪5、オペレータが乗車する運転部6などを備えており、機体後部又は機体前部に任意の作業機を連結して使用される。
【0009】
本実施形態の運転部6は、オペレータの運転空間を覆うキャビン7を備える。キャビン7の左右両側部には、ドア8で開閉される乗降口7aが設けられており、オペレータは乗降口7aを介して運転部6への乗り降りを行う。
【0010】
図3に示すように、運転部6の前側下端部には、運転部6の床部(ステップ)を支持するステップフレーム9が設けられている。ステップフレーム9は、ミッションケース3を跨ぐように左右両側方に延出して運転部6の床部を支持している。また、ステップフレーム9の延出先端部には、乗降時に利用される乗降用ステップ10が設けられている。
【0011】
図3及び
図4に示すように、ステップフレーム9の下方には、ステップフレーム9を防振支持する左右一対のマウントブラケット11が設けられている。マウントブラケット11は、ミッションケース3の上部から左右両側方に延出し、その先端側上部でステップフレーム9の延出中間部を防振支持している。具体的に説明すると、マウントブラケット11は、基端部がミッションケース3の上部側面に締結される一方、先端部が乗降用ステップ10の内側近傍まで延出しており、先端側上部に設けられる防振部材12を介してステップフレーム9の延出中間部を防振支持している。
【0012】
図3〜
図6に示すように、ステップフレーム9の下方で、且つ、ミッションケース3の左右両側方には、左右一対の燃料タンク13が配置されている。左右の燃料タンク13は、例えば鉄板製のタンクであり、連通ホース15を介して互いに連通されている。本実施形態では、左側の燃料タンク13に給油口16が設けられており、ここから給油された燃料が左右の燃料タンク13に略均等に貯留される。また、右側の燃料タンク13には、サクションホース17及びリターンホース18が接続されており、右側の燃料タンク13内の燃料がサクションホース17を介してエンジンに供給される一方、未燃焼の戻り燃料がリターンホース18を介して右側の燃料タンク13に戻される。
【0013】
左右の燃料タンク13は、それぞれ左右の燃料タンクブラケット19を介して機体に取り付けられている、燃料タンクブラケット19は、上方が開口した箱形状であり、その底部にゴム板20を介して燃料タンク13が載置されるとともに、ベルト状のクランプ21を用いて燃料タンク13が燃料タンクブラケット19に固定される。
【0014】
ミッションケース3の下部には、左右方向に延出する下部ブラケット22が固定されており、その左右両端部に左右の燃料タンクブラケット19の内端部が連結されている。また、燃料タンクブラケット19の外端側は、左右のマウントブラケット11の先端側で吊持されており、左右の燃料タンクブラケット19に取り付けられた左右の燃料タンク13は、所定の間隔を存してマウントブラケット11の下方に配置される。
【0015】
このようにすると、マウントブラケット11を利用して燃料タンク13を保護することができる。また、燃料タンク13が取り付けられる燃料タンクブラケット19は、マウントブラケット11の先端側で吊持されているので、ステップフレーム9の変形に伴ってマウントブラケット11が変形するような事態が発生しても、マウントブラケット11の変形に燃料タンクブラケット19を追従させることができ、その結果、マウントブラケット11と燃料タンク13との間隔を可及的に維持し、マウントブラケット11との接触による燃料タンク13の破損を防止できる。
【0016】
本実施形態の燃料タンクブラケット19は、燃料タンク13の外側方を覆うカバー19aを備える。このような燃料タンクブラケット19によれば、燃料タンク13の外側方に配置される乗降用ステップ10が変形するような事態が発生しても、乗降用ステップ10が燃料タンク13に直接接触することを回避し、燃料タンク13の破損を防止できる。
【0017】
また、本実施形態では、燃料タンクブラケット19にカバー19aを設けるにあたり、該カバー19aを、燃料タンクブラケット19の吊持部材に兼用している。つまり、カバー19aは、燃料タンクブラケット19の先端部から上方に延出し、マウントブラケット11の先端部に締結されている。
【0018】
図7に示すように、本実施形態のトラクタ1に搭載されるエンジンは、ディーゼルエンジンであり、その排出ガスを低減させるためにコモンレールシステムが採用されている。本実施形態のコモンレールシステムは、セジメンタ23、プレフィルタ24、電磁ポンプ25、メインフィルタ26(燃料フィルタ)、サプライポンプ27、コモンレール28及び燃料クーラ29を備えて構成されている。
【0019】
電磁ポンプ25は、燃料タンク13内の燃料を吸引し、セジメンタ23は、吸引された燃料に混入した水を分離させ、プレフィルタ24は、電磁ポンプ25の上流側で燃料を濾過する。なお、セジメンタ23は、セジメンタ機能を持ったプレフィルタ24で兼用してもよい。
【0020】
メインフィルタ26は、電磁ポンプ25の下流側で燃料を濾過し、サプライポンプ27は、濾過された燃料をコモンレール28に圧送する。その際、余剰した燃料は、燃料クーラ29を介して燃料タンク13に戻される。
【0021】
コモンレール28は、サプライポンプ27から圧送される高圧の燃料を蓄える。そして、コモンレール28内の高圧燃料は、電子制御に基づいてインジェクタ(図示せず)から各気筒に噴射される。また、コモンレール28には、圧力維持のためのリリーフバルブ(図示せず)が設けられ、ここから排出された燃料が燃料クーラ29を介して燃料タンク13に戻される。
【0022】
図8に示すように、右側の燃料タンク13には、サクションホース17に接続されるサクションノズル30と、サクションノズル30からタンク内に延出するサクションパイプ31と、リターンホース18に接続されるリターンノズル32と、リターンノズル32からタンク内に延出するリターンパイプ33と、タンク内の燃料液面レベルを検出する燃料ゲージ34とが設けられている。
【0023】
燃料ゲージ34は、燃料タンク13の内部で燃料の液面に浮かぶフロート35と、燃料タンク13の上部に固定される検出部36と、基端部が検出部36で上下回動自在に支持され、先端部がフロート35に連結される検出アーム37とを備えて構成されている。フロート35は、タンク内の燃料液面レベルの変化に応じて上下動し、検出アーム37は、フロート35の上下動に応じて上下に回動する。そして、検出部36は、検出アーム37の上下回動角度を検出し、これを燃料液面レベル検出信号として出力する。
【0024】
検出アーム37の回動範囲は予め規定されており、その下限位置は、タンク内の燃料液面レベルが下限液面レベルL(燃料切れ警報レベル)まで低下したときのフロート35位置を基準にして設定されている。本実施形態では、
図8の(B)に示す仮想線Kがフロート35の移動軌跡となっており、この移動軌跡と干渉しないようにサクションパイプ31及びリターンパイプ33が配置される。
【0025】
サクションノズル30及びリターンノズル32は、燃料タンク13の側面に設けられている。本実施形態では、燃料タンク13の機体内方を向く側面、機体外方を向く側面、機体前方を向く側面、機体後方を向く側面のうち、機体内方を向く側面の前側にサクションノズル30及びリターンノズル32を配置している。このようなノズル配置によれば、燃料タンク13の上面や下面にノズルを配置する場合に比べ、燃料タンク13に対するサクションホース17及びリターンホース18の接続性を向上させることができるだけでなく、ノズル位置をエンジンルーム2に近づけてサクションホース17及びリターンホース18の長さを短縮することが可能になる。
【0026】
サクションパイプ31は、サクションノズル30から燃料タンク13内に延出して燃料タンク13内の燃料を吸引し、リターンパイプ33は、リターンノズル32から燃料タンク13内に延出して戻り燃料を燃料タンク13内に戻すにあたり、両パイプ31、33の先端部は、燃料タンク13内の中心部近傍で、且つ、燃料の下限液面レベルよりも下方に位置するように配置されている。このようにすると、機体揺動に伴う液面レバルの変化が少ない燃料タンク13内の中心部近傍で燃料を吸引できるだけでなく、戻り燃料を液面レベルの下方に戻し、戻り燃料による空気の混入も防止できる。
【0027】
サクションパイプ31及びリターンパイプ33は、燃料ゲージ34のフロート35や検出アーム37との干渉を避けて燃料タンク13内に配置するにあたり、上下方向に所定の間隔を存して並列に配置されている。より具体的には、
図8の(B)に示すフロート35の移動軌跡Kよりも機体前方側に存在する燃料タンク13内の空きスペースを利用し、サクションパイプ31及びリターンパイプ33を上下に並列状にコンパクトに配置している。
【0028】
リターンパイプ33の下側に並列され、サクションノズル30から機体外方に延出するサクションパイプ31の先端部は、機体後方側下方に向けて傾斜状に曲折されて液面下限レベルLの下方に至り、リターンノズル32から機体外方に延出するリターンパイプ33の先端側は、機体外方を向いたまま下方に向けて傾斜状に曲折されて液面下限レベルLの下方に至る。このようにすると、両パイプ31、33の先端部が異なる方向を向くので、リターンパイプ33で燃料タンク13内に戻された高温の戻り燃料が直ちにサクションパイプ31に吸引されることを回避し、エンジンに供給される吸引燃料の温度上昇を抑制できる。なお、サクションパイプ31の先端部は、機体前方や機体内方を向くようにしてもよい。
【0029】
図9及び
図10に示すように、セジメンタ23は、燃料から分離した水を外部から目視可能に貯留する水貯留部23aと、水貯留部23aに貯留された水を排出するための操作を行う水抜き操作部23bと、セジメンタ23内の空気を抜くための操作を行うエア抜き操作部23cとを備える。
【0030】
セジメンタ23は、右側の燃料タンク13の前方であって、ステップフレーム9の前側にブラケット38を介して取り付けている。
つまりセジメンタ23は、例えば図1、図2、図4、図9から明らかなように、前輪4とステップフレーム9との間に位置して、セジメンタ23全体がステップフレーム9および燃料タンク13の前面よりも前方に突出する状態で配置される。この取付位置は、前方に前輪4が位置しているので、障害物との接触が発生する可能性が低い位置であり、セジメンタ23の障害物との接触による破損を防止できる。また、この取付位置は、エンジンルーム2内に比べ、セジメンタ23に溜まった水の確認や、その排水作業が容易である。
【0031】
さらに、本実施形態では、セジメンタ23のブラケット38に、セジメンタ23の前方を覆いつつ、セジメンタ23の側方を開放するカバー39が取り付けられている。具体的に説明すると、本実施形態のカバー39は、セジメンタ23の前方、上方及び機体内側方を覆いつつ、セジメンタ23の機体外側方及び下方を開放している。このようなカバー39によれば、セジメンタ23に溜まった水の確認や、その排水作業を阻害することなく、エンジンの排風(熱風)がセジメンタ23に直接当たることを防止し、燃料の温度上昇を抑制することができる。
【0032】
図11に示すように、メインフィルタ26は、エンジンルーム2内においてラジエータ40の前方に配置されている。サプライポンプ27に送る直前で燃料を効率良く冷却することが可能となり、燃料の温度上昇に起因するエンジン性能の低下を抑制することができる。
【0033】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、燃料タンク13からエンジンに至る燃料供給経路に、燃料に混入した水を分離するセジメンタ23と、燃料を濾過するメインフィルタ26とを備えるトラクタ1であって、エンジンの前方に配置されるラジエータ40と、エンジンの左右側方に配置される左右の前輪4と、前輪4の後方で運転部6の床部を支持するステップフレーム9とを備え、セジメンタ23は、少なくとも前方がカバー39で覆われた状態で前輪4とステップフレーム9との間に配置されるので、セジメンタ23に溜まった水の確認や、その排水作業が容易でありながら、障害物との接触による破損も防止でき、さらには、少なくとも前方を覆うカバー39により、エンジンの排風が直接当たることも回避できる。しかも、メインフィルタ26は、ラジエータ40の前方に配置されるので、メインフィルタ26を通過する燃料の冷却効果が得られる。
【0034】
また、カバー39は、セジメンタ23の前方を覆いつつ、セジメンタ23の外側方を開放するので、カバー39を外すことなく、セジメンタ23に溜まった水の確認や、その排水作業を行うことができる。