(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633405
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
B62J 99/00 20200101AFI20200109BHJP
【FI】
B62J99/00 K
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-19755(P2016-19755)
(22)【出願日】2016年2月4日
(65)【公開番号】特開2017-136985(P2017-136985A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】日本電産モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 大輔
【審査官】
中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−248827(JP,A)
【文献】
特開2007−008349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 99/00
B62M 23/02
F02N 3/04
F02N 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関を始動するためのキックペダルと、
前記内燃機関により駆動される発電部と、
前記発電部により発電された電力を充電可能なバッテリと、
前記発電部および/または前記バッテリから電力を供給される電装品と、
少なくとも前記内燃機関および前記バッテリの状態を取得する車両制御部と、
を備える自動二輪車に搭載され、前記発電部および/または前記バッテリからの供給電力を制御する電力供給システムであって、
前記発電部および/または前記バッテリから電力を供給される入力部と、
前記入力部に供給された電力から所定の電圧に変換して外部出力する出力部と、
前記出力部の電圧変換を制御する制御部と、
前記発電部および/または前記バッテリからの供給電力の供給先を決定する非常時スイッチと、
前記電装品に対して前記発電部および/または前記バッテリからの電力供給を前記制御部によりオンオフされる電源スイッチと、
を備え、
前記非常時スイッチで非常時を示す操作がなされた場合、前記電装品への電力供給を遮断し、
前記非常時スイッチのオンオフ状態は、前記制御部に入力され、
前記制御部は、前記内燃機関を停止または再始動した場合、前記電源スイッチをオンに制御する、
電力供給システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記車両制御部から前記内燃機関および前記バッテリの状態を取得し、前記キックペダルで前記内燃機関を始動した、または前記バッテリの機能が失われたと判断した場合、前記電源スイッチをオフに制御し、前記電装品への電力供給を遮断することを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両用の電力供給システムに関し、特に非常時を考慮した鞍乗型車両用の電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート下の収納ボックス内に、携帯電話等のモバイル端末に電源を供給するための電源供給ソケットを備える鞍乗型車両が知られている。例えば、特許文献1は、エンジン形式によらず、物品収納部を設けることができるようにした鞍乗型車両の物品収納部構造を開示する。この物品収納部構造は、ハンドル等が支持される操舵系部と、操舵系部を軸支するヘッドパイプと、ヘッドパイプの後方に配置される燃料タンクと、燃料タンクの下方に配置されるエンジンと、燃料タンクの近傍に物品を収納する収納部とを備える鞍乗型車両に取り付けられる。収納部には、バッテリに接続され、収納空間に露出した給電用コネクタが配置されており、使用者は、USB(Universal Serial Bus)規格の接続端子を備えたコードをその給電用コネクタ差し込んで給電をうけることができる。
【0003】
また、特許文献2は、モバイル端末を、シート下のスペースを確保しながら収納品の出し入れが容易な形態で、鞍乗り型車両のシートの下方にコンパクトに収納できるようにすることを目的として鞍乗型車両のモバイル端末支持構造を開示する。このモバイル端末支持構造は、上方に開口部を有する収納ボックスと、開口部を塞ぐ開閉可能な乗車用シートとを備え、収納ボックスと乗車用シートとによって形成される空間内に、携帯電話の充電コードを支持する電線支持部を設けて携帯電話を電源供給可能に収容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−083395号公報
【特許文献2】特開2013−060082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二輪車は東南アジアを中心とした新興国で未だ主要な乗り物として定着している。一方、四輪車両は電気自動車やプラグインハイブリッド自動車などの普及とともに、災害時の発電機としての活用に注目が集まり始めている。しかしながら、このような四輪車輌は価格が高価なため東南アジアなどの新興国ではほとんど普及しておらず、水害、震災などの非常時に対する備えとして活用することができないのが現状である。
【0006】
また、二輪車において発電機としての利用を考えた場合に問題となるのが、バッテリがない状態の時の対応である。東南アジアではバッテリは高価なものの扱いになるため、バッテリの機能を喪失してもそのままもしくは取り外した状態のままキックペダルを使ってエンジンを始動して使うことが多いのが実情である。この場合の12Vラインは、しばしば0Vまでドロップしてしまうなど安定度が低いため、このまま発電機として使用すると後段の電装品に大きな負担を与えてしまう。このため、このままでは二輪車を発電機として利用することが難しい。
【0007】
本発明は、上述した事情を鑑みて考案されたものであり、自動二輪車を利用し電源として取り出しやすく、携帯端末への給電に使用されるUSB出力(直流5V)に着目し、非常時にも電源として使用できる鞍乗型車両用の電力供給システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、内燃機関と、内燃機関を始動するためのキックペダルと、内燃機関により駆動される発電部と、発電部により発電された電力を充電可能なバッテリと、発電部および/またはバッテリから電力を供給される電装品と、少なくとも内燃機関およびバッテリの状態を取得する車両制御部と、を備える自動二輪車に搭載され、発電部および/またはバッテリからの供給電力を制御する電力供給システムであって、発電部および/またはバッテリから電力を供給される入力部と、入力部に供給された電力から所定の電圧に変換して外部出力する出力部と、出力部の電圧変換を制御する制御部と、発電部および/またはバッテリからの供給電力の供給先を決定する非常時スイッチと、
電装品に対して発電部および/またはバッテリからの電力供給を制御部によりオンオフされる電源スイッチと、を備え、非常時スイッチで非常時を示す操作がなされた場合、電装品への電力供給を遮断
し、
非常時スイッチのオンオフ状態は、制御部に入力され、制御部は、内燃機関を停止または再始動した場合、電源スイッチをオンに制御する電力供給システムが提供される。
これによれば、非常時にも電源として使用できる鞍乗型車両用の電力供給システムを提供できる。
さらに、非常時スイッチを制御部の制御下に置くことができ、電源スイッチをオフに制御した場合であっても内燃機関を停止または再始動した場合には電源スイッチをオンにすることで、次回の使用時には電装品への電力を供給する状態にしておくことができる。
【0010】
さらに、制御部は、車両制御部から内燃機関およびバッテリの状態を取得し、キックペダルで内燃機関を始動した、またはバッテリの機能が失われたと判断した場合、電源スイッチをオフに制御し、電装品への電力供給を遮断することを特徴としてもよい。
これによれば、非常時スイッチで非常時を示す操作がなされた場合であっても、キックペダルで内燃機関を始動した場合やバッテリの機能が失われた場合にのみ電源スイッチをオフに制御することで、不用意に電装品への電力供給を停止することを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、非常時にも電源として使用できる鞍乗型車両用の電力供給システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る第一実施例の電力供給システムのブロック図。
【
図2】本発明に係る第二実施例の電力供給システムのブロック図。
【
図3】本発明に係る第二実施例の電力供給システムにおけるフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
<第一実施例>
図1を参照し、本実施例における電力供給システム100を説明する。電力供給システム100は、自動二輪車MCに搭載される。自動二輪車MCは、内燃機関ENGと、内燃機関ENGを始動するためのキックペダルPDLと、内燃機関ENGにより駆動される発電部ALTと、発電部ALTにより発電された電力を充電可能なバッテリBATと、発電部ALTおよび/またはバッテリBATから電力を供給される電装品ECと、これら全体を制御する車両制御部CTLとを備える。
【0015】
内燃機関ENGは、ガソリンなどを燃料として燃焼させて主に自動二輪車MCのための駆動力を得る所謂エンジンである。キックペダルPDLは、内燃機関ENGの回転軸を人の足を使って駆動することで、人力により内燃機関ENGを始動させるものである。発電部ALTは、内燃機関ENGの駆動力により回転し、電力を生じさせる所謂オルタネータである。バッテリBATは、内燃機関ENGを始動させるセルモータ(図示せず)や、ヘッドランプ(図示せず)などの電装品EC等に電力を供給するものである。バッテリBATは、自動二輪車MCでは通常12Vを出力する。電装品ECは、ヘッドランプ、方向指示器、ブレーキランプ(いずれも図示せず)などのECU1〜n(電子制御装置、nは2以上の整数)であり、発電部ALTやバッテリBATから電力の供給を受けてそれぞれの機能を果たす。
【0016】
車両制御部CTLは、イグニションスイッチIG−SW、内燃機関ENG、発電部ALT、バッテリBAT、電装品ECなどからの状態情報を取得し、その状態を把握すると共に、必要に応じて各部を制御する。たとえば、車両制御部CTLは、発電部ALTの発電状況や、バッテリBATの有無や出力電圧、内燃機関ENGの稼働状態に関する情報を取得する。
【0017】
電力供給システム100は、発電部ALTおよび/またはバッテリBATから入力される電力を出力する制御を行う。電力供給システム100は、入力部20と、出力部30と、これらを制御する制御部10と、非常時スイッチ40と、を備える。入力部20は、バッテリBATおよび発電部ALTと電源ラインLNで接続されており、発電部ALTおよびバッテリBATのいずれか一方または両方からの電力が入力される。入力部20は、少なくともの電源ラインLNが接続される端子を有する。出力部30は、入力部20に入力された電力から所定の電圧に降圧する降圧回路と降圧した電圧を安定化させる平滑回路を用いて外部出力する。
【0018】
本実施例では、直流12Vの入力を受けて、直流5Vに変換して出力する。出力部30の出力端子は、USB(Universal Serial Bus)の規格に則っている。なお、発電部ALTから直接出力される12Vの電圧は、安定した電圧とは言えない場合があるが、出力部30において平滑回路を介することで、安定した5V電圧を供給することができる。制御部10は、出力部30の電圧変換を既知の方法により行い、その外部出力を制御する。
【0019】
非常時スイッチ40は、電源ラインLNの発電部ALT/バッテリBATと電装品ECの間であって、電源ラインLNと入力部20との接続部より下流側に設けられる。したがって、非常時スイッチ40がオンにされると、発電部ALT/バッテリBATから電源ラインLNを介して電装品ECへ電力が供給され、オフにされると、電装品ECへは電力が供給されなくなる。一方、非常時スイッチ40がオフにされても、入力部20には電力が供給される。このように、非常時スイッチ40は、発電部ALTおよび/またはバッテリBATからの供給電力の供給先を決定する。
【0020】
使用者により非常時スイッチ40に対して非常時を示す操作がなされた場合、すなわち、非常時スイッチ40がオフにされた場合、電装品ECへの電力供給が遮断される。このようにすることにより、非常時等の場合に使用者の意思により電装品ECへ電力供給を遮断して直流5Vの出力に限定することができ、非常時にも携帯端末等の電源として効率よく使用できる鞍乗型車両用の電力供給システム100を提供できる。また、自動二輪車MCにバッテリの機能がない場合においても、内燃機関ENGを人力によりキックペダルPDLを使って始動させ、電装品ECへ電力供給を停止して直流5Vを安定して出力する電力供給を行うことができる。なお、バッテリの機能がない場合とは、自動二輪車MCからバッテリBATが取り外されている場合や、所定の電圧以下の電圧しか出力しない場合である。
【0021】
<第二実施例>
図2および
図3を参照して、電力供給システム100Aを説明する。重複記載を避けるために、上記実施例と同じ部分には同じ符号を付し、説明を省略し、上記実施例と異なる部分を中心に説明する。電力供給システム100Aは、入力部20と、出力部30と、電源スイッチ50Aと、これらを制御する制御部10Aと、非常時スイッチ40Aと、を備える。
【0022】
非常時スイッチ40Aは、上記実施例では電源ラインLN上に設けられていたが、本実施例では制御部10Aに接続され、非常時スイッチ40Aのオンオフ状態は制御部10Aに入力される。また、電源スイッチ50Aは、電源ラインLNの発電部ALT/バッテリBATと電装品ECの間であって、電源ラインLNと入力部20との接続部より下流側に設けられる。したがって、電源スイッチ50Aがオンにされると、発電部ALT/バッテリBATから電源ラインLNを介して電装品ECへ電力が供給され、オフにされると、電装品ECへは電力が供給されなくなる。一方、電源スイッチ50Aがオフにされても、入力部20には電力が供給される。
【0023】
制御部10Aは、電源スイッチ50Aのオンオフ制御を行うように構成されており、電源スイッチ50Aが制御部10Aにオンされると、電装品ECに対して発電部ALT/バッテリBATからの電力供給を行う。制御部10Aが電源スイッチ50Aをオフにすると、電装品ECに対する発電部ALT/バッテリBATからの電力供給は遮断される。
【0024】
制御部10Aは、車両制御部CTLと接続されており、車両制御部CTLが取得した内燃機関ENG、発電部ALT、バッテリBATの状態等の情報を取得する。制御部10Aは、たとえば、内燃機関ENGの稼働状況、バッテリBATの有無やその出力電圧の状態を得ることができる。制御部10Aは、さらに、バッテリBATが無い場合やその出力電圧が内燃機関ENGをセルモータにより始動させるほどの出力電圧に達していない場合は、内燃機関ENGが稼働していてもキックペダルPDLにより始動された状態であると判断することができる。
【0025】
図3を参照し、電力供給システム100Aにおける制御方法を説明する。なお、フローチャートにおけるSは、ステップを意味する。制御部10Aは、S100において、内燃機関ENGの稼働状況を取得し、始動状態にあるか否かを検査する。内燃機関ENGが始動している状態ならば、制御部10Aは、S102において、非常時スイッチ40Aのオンオフ状態を検査する。非常時スイッチ40Aが非常時を示す状態ならば、制御部10Aは、S104において、電源スイッチ50Aをオフにして、電装品ECへの電力供給を遮断する。そして、出力部30は、S106において、12Vから5Vへ直流電圧を変換して出力する。なお、内燃機関ENGの稼働状態が始動していない状態、または非常時スイッチ40Aが非常時を示していない状態の場合、電力供給システム100Aは、電源スイッチ50Aをオフにすることなく、S106において、12Vから5Vへ直流電圧を変換して出力する。すなわち、5Vの出力を行うと共に、電装品ECへの電力も供給する。この場合は、電力供給システム100Aは、電装品ECにも電力を供給するので自動二輪車MCは直流5Vに出力を限定することなく、通常の使用が可能となる。本実施例の構成によれば、非常時スイッチ40Aを制御部10Aの制御下に置くことができる。
【0026】
また、非常時スイッチ40Aが制御部10Aの制御下に置かれると、以下のことが可能になる。制御部10Aは、キックペダルPDLで内燃機関ENGを始動した場合、またはバッテリBATの機能が失われた場合のみ、電源スイッチ50Aをオフに制御し、電装品ECへの電力供給を遮断してもよい。これによれば、非常時スイッチ40Aで非常時を示す操作がなされた場合であっても、キックペダルPDLで内燃機関ENGを始動した場合やバッテリBATの機能が失われた場合にのみ電源スイッチ50Aをオフに制御することができる。このようにすることで、電力供給システム100Aは、非常時スイッチ40Aが非常時を示す状態であっても、予め定められた場合に限定することで、不用意に電装品ECへの電力供給を遮断してしまうことを防止できる。
【0027】
また、制御部10Aは、内燃機関ENGを停止または再始動した場合、電源スイッチ50Aをオンに制御してもよい。こうすることにより、一旦非常時を示す操作がなされ電装品ECへの電力供給を遮断した場合であっても、次回の使用時には電装品ECへの電力を供給する状態にし、移動手段としての自動二輪車MC本来の機能を回復しておくことができる。
【0028】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0029】
100 電力供給システム
10 制御部
20 入力部
30 出力部
40 非常時スイッチ
50 電源スイッチ
MC 自動二輪車
ENG 内燃機関
ALT 発電部
BAT バッテリ
PDL キックペダル
EC 電装品
LN 電源ライン
CTL 車両制御部