特許第6633453号(P6633453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633453
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】予混合希薄燃焼バーナ
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/26 20060101AFI20200109BHJP
   F23D 14/74 20060101ALI20200109BHJP
   F23D 14/02 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   F23D14/26
   F23D14/74 B
   F23D14/02 B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-102482(P2016-102482)
(22)【出願日】2016年5月23日
(65)【公開番号】特開2017-211102(P2017-211102A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2018年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000142698
【氏名又は名称】株式会社桂精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 優介
(72)【発明者】
【氏名】松尾 賢治
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳一
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−275483(JP,A)
【文献】 特開平06−331105(JP,A)
【文献】 特開平10−009523(JP,A)
【文献】 特開平10−009517(JP,A)
【文献】 特開昭51−151832(JP,A)
【文献】 特開平07−180816(JP,A)
【文献】 特開昭52−156426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/26
F23D 14/02
F23D 14/74
F23C 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合室と、前記混合室の混合気出射口を囲む周壁と、前記周壁の内部に外縁が保持されて前記混合気出射口の前面に配置された炎孔板とを備え、
前記炎孔板は、全ての炎孔が前記炎孔板の表面に垂直な方向のメイン炎孔領域と、当該メイン炎孔領域の周囲に配置されて、前記周壁の内面に向けて混合気を出射する傾斜炎孔が配列された傾斜炎孔領域とを備え
前記傾斜炎孔の孔径が前記メイン炎孔領域における炎孔の孔径より小さいことを特徴とする予混合希薄燃焼バーナ。
【請求項2】
前記混合室内の混合気より空燃比が低い混合気が供給されるパイロットバーナを備え、
当該パイロットバーナの混合気出射口を前記炎孔板の中央部に配置したことを特徴とする請求項1に記載された予混合希薄燃焼バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予混合希薄燃焼バーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
予混合燃焼バーナは、あらかじめ混合室で燃料と酸化剤である空気を最適な比率で混ぜ合わせ、火口で燃焼させるバーナである。予混合による低NOx化には、空気比1.0以下の燃料リッチ燃焼と、空気比1.3以上の希薄燃焼の二つの方法があり、希薄燃焼法は、火炎温度が低いため、燃料リッチ燃焼法に比べて大幅にNOx値を低減できることが知られている。このため、NOxによる繊維の変色を極力避けたい繊維染色後の乾燥工程などでは、予混合希薄燃焼型の低NOxバーナが用いられている。
【0003】
下記特許文献1に記載された従来技術は、軽量且つコンパクトで、ターンダウン比を大きくとれる予混合希釈燃焼型の低NOxバーナが示されており、混合室の前端面に炎孔板を有し、炎孔板の炎孔を同芯状又は平行に複数列設け、隣り合う炎孔列の対応する炎孔同士の火炎が互いに衝突するように、炎孔を傾斜させて配置したものが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−238718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術では、ターンダウン比を大きく設定できるとは示されているが、炎孔板の周縁から離れたところで炎孔を様々な方向に傾斜させているので、炎孔板の全体で均一な燃焼が得にくい問題がある。このため、空燃比が高い最低燃焼量の近くで継続的な燃焼を行う際に、炎孔板全体で均一な燃焼が得られず、また、リフティングの防止を確実に行うことができない問題がある。更に従来技術は、一つ一つの炎孔が大きく形成されているので、燃焼室より手前の混合室で燃焼が起きるバックファイヤーを起こしやすくなる問題がある。
【0006】
また、前述した従来技術は、ある程度バーナ長(燃焼筒長さ)を短くすることは可能であるが、保炎性を維持するためには、燃焼筒の長さを100mm程度と長く確保する必要があり、この燃焼筒の長さが、燃焼振動や燃焼音を発生させる要因になり、バーナ運転時の振動や騒音の発生が問題になる。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものである。すなわち、予混合希薄燃焼型の低NOx型バーナにおいて、高い空燃比での継続運転時に、リフティングを確実に防止して保炎性を確保できること、ターンダウン比を大きく設定でき、且つ軽量コンパクト化が可能であること、ガスと空気を均一混合させて燃焼の安定化を図り、炎孔板全体で均一な燃焼を得ること、バーナ運転時の振動や騒音の発生を抑制すること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明による予混合希薄燃焼バーナは、以下の構成を具備するものである。
【0009】
混合室と、前記混合室の混合気出射口を囲む周壁と、前記周壁の内部に外縁が保持されて前記混合気出射口の前面に配置された炎孔板とを備え、前記炎孔板は、全ての炎孔が前記炎孔板の表面に垂直な方向のメイン炎孔領域と、当該メイン炎孔領域の周囲に配置されて、前記周壁の内面に向けて混合気を出射する傾斜炎孔が配列された傾斜炎孔領域とを備え、前記傾斜炎孔の孔径が前記メイン炎孔領域における炎孔の孔径より小さいことを特徴とする予混合希薄燃焼バーナ。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明の予混合希薄燃焼バーナは、メイン炎孔領域での流れを整流にすることで、燃焼の安定化を図り、メイン炎孔領域の周囲に周壁の内面に向けて混合気を出射する傾斜炎孔が配列された傾斜炎孔領域を設けているので、炎孔板全体の均一燃焼を得ることができる。これによって、高い空燃比での継続運転時に、リフティングを防止して保炎性を確保でき、ターンダウン比を大きく設定することができる。また、周壁の高さを低くしても、周壁の内側で均一な安定燃焼が得られるので、軽量コンパクト化が可能であると共に、バーナ運転時の振動や騒音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る予混合希薄燃焼バーナの平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る予混合希薄燃焼バーナの断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る予混合希薄燃焼バーナの要部を示す説明図((a)が部分平面図,(b)が(a)のA−A断面図、(c)が(a)のB−B断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1及び図2によって、バーナ(予混合希薄燃焼バーナ)1の全体構成を説明する。バーナ1は、混合室2と、周壁3と、炎孔板4を備えている。混合室2は、入口2Sからガスと空気の混合気が送り込まれ、混合室2内で均等に混合されて、混合気出射口2Aから混合気を出射する。周壁3は、混合室2の混合気出射口2Aを囲むように配備され、その内側に燃焼部が形成される。炎孔板4は、その外縁4Pが周壁3の内部に保持され、混合気出射口2Aの前面に配置されている。炎孔板4は、周壁3の内側に沿って配置される傾斜炎孔4bと、その内側に配列される垂直炎孔4aとを備えている。
【0014】
図示の例では、バーナ1は、パイロットバーナ5を備えている。パイロットバーナ5は、混合室2を貫通するように配置されており、その混合気出射口5Aが炎孔板4の中央部に配置されている。
【0015】
図3には、炎孔板4の詳細構造を示している。炎孔板4は、全ての炎孔が炎孔板4の表面4Sに垂直な垂直炎孔4aからなるメイン炎孔領域4Aと、メイン炎孔領域の周囲に配置されて、傾斜炎孔4bのみが配置される傾斜炎孔領域4Bとを備えている。傾斜炎孔4bは、周壁3の内面に向けて混合気を出射するように、炎孔板4の表面4Sに垂直な方向に対して傾斜角度θの方向に形成されている。傾斜角度θは、20〜40°程度に設定することができる。図示の例では、傾斜炎孔4bは、垂直炎孔4aに対して小口径に形成され、周壁3の内面に沿って1列のみに配置されている。
【0016】
このようなバーナ1は、混合室2内の混合気の空燃比を高く(1.3〜1.6)することで、低NOx燃焼を可能にすることができる。この際、炎孔板4のメイン炎孔領域4Aにおいて、全ての炎孔を垂直炎孔4aとしているので、主要な炎孔板4からの混合気流出を整流にすることができ、安定した燃焼を実現することができる。
【0017】
また、メイン炎孔領域4Aの周囲に傾斜炎孔領域4Bを設けることで、傾斜炎孔4bから出射される混合気が周壁3の内面に当たって周壁3の内面に沿って上昇することになり、メイン炎孔領域4Aから出射される混合気と傾斜炎孔領域4Bから出射される混合気で、炎孔板4の全体に亘って均一な混合気を出射させることができる。これによって、空燃比の高い混合気で低燃焼運転を継続させた場合にも、リフティングが生じない安定燃焼を実現することができる。
【0018】
また、周壁3の内面全周に向けて傾斜炎孔4bを配置しているので、周壁3の高さを低く設定した場合にも、高い保炎性を得ることができる。周壁3の高さとしては、60mm程度に低くしても充分な保炎性を確保することができる。これにより、バーナ1の軽量コンパクト化を実現することができる。また、周壁3を低く抑えることで、振動や音の発生が抑止され、バーナ1運転時の振動や騒音を抑えることができる。
【0019】
ここで、バーナ1では、炎孔板4の周囲のみに傾斜炎孔4bを配置し、この傾斜炎孔4bの孔径をメイン炎孔領域4Aにおける垂直炎孔4aの孔径より小さくしている。また、傾斜炎孔領域4Bにおける傾斜炎孔4bの配列間隔を、メイン炎孔領域4Aの垂直炎孔4aの配列間隔より狭くしている。これによって、混合気の流れが形成し難い周壁3の内面近傍で、その内面に沿って上昇する混合気流を得ることができる。このような混合気流を得ることで、周壁3の内側の燃焼部全体で均一な熱量の燃焼を得ることができる。
【0020】
以上説明したように、本発明の実施形態に係るバーナ1は、炎孔板4においてメイン炎孔領域4Aでの流れを整流にすることで、燃焼の安定化を図ることができる。そして、メイン炎孔領域4Aの周囲に周壁3の内面に向けて混合気を出射する傾斜炎孔4bが配列された傾斜炎孔領域4Bを設けているので、炎孔板4全体の均一燃焼を得ることができる。これによって、高い空燃比での継続運転時に、リフティングを防止して保炎性を確保でき、ターンダウン比を大きく設定することができる。また、周壁3の高さを低くしても、周壁3の内側で均一な安定燃焼が得られるので、軽量コンパクト化が可能であると共に、バーナ1運転時の振動や騒音の発生を抑制することができる。
【0021】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0022】
1:バーナ(予混合希薄燃焼バーナ),
2:混合室,2A:混合気出射口,2S:入口,
3:周壁,4:炎孔板,4a:垂直炎孔,4b:傾斜炎孔,4P:外縁,
4S:表面,4A:メイン炎孔領域,4B:傾斜炎孔領域,
5:パイロットバーナ,5A:混合気出射口
図1
図2
図3