(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633463
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】エアーフィルタ装置
(51)【国際特許分類】
B01D 46/10 20060101AFI20200109BHJP
B01D 46/12 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
B01D46/10 B
B01D46/12
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-131621(P2016-131621)
(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公開番号】特開2018-1093(P2018-1093A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【弁理士】
【氏名又は名称】深井 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100182796
【弁理士】
【氏名又は名称】津島 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100181308
【弁理士】
【氏名又は名称】早稲田 茂之
(72)【発明者】
【氏名】壽 章夫
【審査官】
青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−008001(JP,A)
【文献】
特開2016−131967(JP,A)
【文献】
実開昭61−204622(JP,U)
【文献】
特開2011−020095(JP,A)
【文献】
特開2010−149092(JP,A)
【文献】
実開昭60−100698(JP,U)
【文献】
特開2016−168538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00−46/54
F24F 13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタを内蔵した複数のフィルタ保持枠と、
複数の前記フィルタ保持枠を収容する凹部が下流側に設けられ、この凹部の底面にエアー流入口が設けられ、このエアー流入口の周縁に前記フィルタ保持枠の前面が当接するフィルタハウジングと、
このフィルタハウジングの前記凹部の外縁部に設けられ、複数の前記フィルタ保持枠を前記凹部底面の縁部に押圧する締め付け具と、を備え、
前記フィルタハウジングの凹部は、複数の前記フィルタ保持枠を、エアー流入方向を横切る横方向にスライド可能に収容する広さを有しており、
前記凹部内に収容した前記フィルタ保持枠毎に前記エアー流入口と前記締め付け具が設けられているエアーフィルタ装置。
【請求項2】
前記フィルタ保持枠が、プレフィルタを内蔵したプレフィルタ保持枠と、中性能フィルタまたは高性能フィルタを内蔵した本フィルタ保持枠と、を備え、前記凹部内に前記プレフィルタ保持枠および本フィルタ保持枠をこの順で収容する請求項1に記載のエアーフィルタ装置。
【請求項3】
前記エアー流入口の周縁部と、この周縁部に当接する前記プレフィルタ保持枠の前面との間、および前記プレフィルタ保持枠の背面と、本フィルタ保持枠との間にそれぞれガスケットが介在した請求項2に記載のエアーフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下流側からフィルタの取付け、取外しが可能なエアーフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の空調機では、フィルタ1枚毎に取付枠が設けられており、フィルタ交換等のメンテナンスを行うには、構造上、吸気ダクトの上流側(エアー流入側)から行う必要があった。すなわち、通常のフィルタ取付枠では、まず、中性能フィルタを設置し、上流側前面に押え枠を設置し、ボルトで締め付け、最後に上流側前面にプレフィルタを設置する順番となる。この場合、下流側(エアー流出側)からメンテナンスを行うことは、プレフィルタを挿入するためのスペースを確保できないため、下流側からメンテナンスを行うことは困難であった。
【0003】
そのため、上流側にメンテナンススペースを設ける必要があった。しかし、上流側のメンテナンススペースは、流入する外気で汚れるため、作業環境上の問題があり、またある程度広いスペースを必要とするため錆等の発生面積も大きくなるという問題がある。
さらに、フィルタ1枚につき1台の取付枠を必要とするため、大風量処理の一般空調においてフィルタを複数列および複数段にわたって設置する場合、フィルタの交換作業を取付枠1台毎に行う必要があり、煩雑であった。
【0004】
一方、特許文献1には、吸気ダクト内の上流側から1次フィルタ層、2次フィルタ層および3次フィルタ層を順に配置したガスタービン吸気フィルタユニットが記載されている。このフィルタユニットでは、2次フィルタ層と3次フィルタ層との間にスペースを設けて、3次フィルタ層を構成するフィルタを交換できることが記載されている(段落[0011])。
しかし、1次フィルタ層および2次フィルタ層を構成するフィルタを、吸気ダクト内の下流側から交換することについては記載されていない。
【0005】
また、特許文献2には、プレフィルタと高性能フィルタとを備え、それらの間に保守用空間を設けた吸気フィルタが記載されており、保守用空間に入って、プレフィルタの交換を行うことが記載されている。
しかし、プレフィルタと高性能フィルタとの間に保守用空間を設けているので、高性能フィルタの交換は上流側で行うことになり、前記した作業環境等の問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4532224号公報
【特許文献2】特開平8‐257329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主たる課題は、上流側にメンテナンススペースを設けることなく、下流側からのフィルタ交換が可能であるエアーフィルタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエアーフィルタ装置は、フィルタを内蔵したフィルタ保持枠と、前記フィルタ保持枠を収容する凹部が下流側に設けられ、この凹部の底面にエアー流入口が設けられ、このエアー流入口の周縁に前記フィルタ保持枠の前面が当接するフィルタハウジングと、このフィルタハウジングの前記凹部の外縁部に設けられ、前記フィルタ保持枠を前記凹部底面の前記縁部に押圧する締め付け具と、を備える。前記フィルタハウジングの凹部は、複数の前記フィルタ保持枠をスライド可能に収容する広さを有しており、前記凹部内に収容した前記フィルタ保持枠毎に前記エアー流入口と前記締め付け具が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィルタハウジングの下流側に設けた凹部内にフィルタ保持枠を収容したので、下流側からフィルタ保持枠を交換でき、上流側にメンテナンススペースを設ける必要がなく、下流側の清潔な環境でフィルタ交換等のメンテナンス作業を行うことができる。
また、上流側にメンテナンススペースを設ける必要がないので、流入する汚れた外気に起因する錆等の発生面積も小さくなる。
フィルタ保持枠は、フィルタハウジングの凹部内に収容され、締め付け具で凹部底面のエアー流入口周縁に押圧するだけであるから、フィルタハウジングの薄型化が可能であり、エアーフィルタ装置の省スペース化が可能である。
前記フィルタハウジングの凹部は、複数のフィルタ保持枠をスライド可能に収容する広さを有しているので、下流側に障害物があっても、これらのフィルタ保持枠を下流側のどの位置からでもフィルタハウジング内に収容し、スライドさせて所定位置に設置することができる。また、フィルタハウジングに複数のフィルタを簡単に収容できるので、メンテナンス等の作業性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエアーフィルタ装置の概略断面図である。
【
図2】本発明におけるプレフィルタ保持枠および本フィルタ保持枠を示す概略斜視図である。
【
図3】
図1に示すエアーフィルタ装置を上流側(エアー流入側)から見た正面図である。
【
図4】
図1に示すエアーフィルタ装置を下流側(エアー流出側)から見た背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1に示す本発明の一実施形態に係るエアーフィルタ装置100は、プレフィルタ1、1´を内蔵したプレフィルタ保持枠11、11´と、中性能フィルタ2、2´を内蔵した本フィルタ保持枠21、21´とをそれぞれフィルタハウジング3内の上下二段に設けた凹部4、4´内に収容している。なお、中性能フィルタに代えて、高性能フィルタを用いることができる。
プレフィルタ1、1´は、主に空気中の塵埃を捕集するものであり、中性能フィルタ2、2´および高性能フィルタは、プレフィルタ1、1´の下流側に位置し、より細かい塵埃を捕集するものである。
【0012】
プレフィルタ保持枠11、11´および本フィルタ保持枠21、21´は、
図2に示すように、枠体で構成され、上流側に位置する前面周囲には、縁部111、111´、211、211´が枠体と一体に形成されており、下流側に位置する背面周囲にも同様の縁部が形成されている。縁部111、111´、211、211´の前面には、シール用のガスケット8が取り付けられている。ガスケット8は、縁部111、111´、211、211´の前面が対向する他面に取り付けられていてもよい。
【0013】
フィルタハウジング3は、枠体で構成されている。この枠体は、エアーの上流側(
図1に矢印Aで示す)および下流側(
図1に矢印Bで示す)にそれぞれ開口しており、内部には前記した二段の凹部4、4´を形成するように折曲加工した板材6がほぼ鉛直姿勢で固定されている。固定は、例えば、板材6の外周部を枠体3の内面に溶接、ねじ止め等で行う。
枠体3の前面には、フィルタハウジング3を図示しない他部材に取り付けるための取付孔10が設けられる。
【0014】
凹部4、4´は、フィルタハウジング3を通過するエアーの下流側に設けられており、凹部4、4´の底面にはエアー流入口5、5´が設けられている。凹部4、4´には、プレフィルタ保持枠11、11´および本フィルタ保持枠21、21´がこの順で収容されている。エアー流入口5、5´の周縁51、51´には、プレフィルタ保持枠11、11´の前面がガスケット8を介して当接する。
【0015】
フィルタハウジング3の凹部4、4´の外縁部(本実施形態では上下の外縁部)には締め付け具7が取り付けられる。締め付け具7は、凹部4、4´の外縁部に形成した貫通孔(図示せず)を挿通した長ボルト71と、前記外縁部より上流側で長ボルト71の一端に螺合した固定ナット72と、下流側で長ボルト71に挿通した当接板73と、ワッシャを介して長ボルト71の他端に螺合した締め付けナット74と、を備える。固定ナット72は、前記外縁部に溶接等で固定されていてもよく、あるいは固定されていなくてもよい。
【0016】
当接板73は、長ボルト71から鉛直方向に延びる一端が本フィルタ保持枠21、21´の下流側の面に当接する。そして、締め付けナット74を螺入することにより、本フィルタ保持枠21、21´をプレフィルタ保持枠11、11´の背面に、プレフィルタ保持枠11、11´を凹部4、4´の底面に形成したエアー流入口5、5´の周縁51、51´にそれぞれガスケット8を介して押圧して固定することができる。これにより、エアー流入口5、5´からフィルタを通らずにエアーが下流側に流出するのを防止するものである。本実施形態では、凹部4、4´の上下に締め付け具7が取り付けられている。
【0017】
図3に示すように、上流側に面するフィルタハウジング3の正面には、エアー流入口5、5´が縦2段、横3列で形成されている。すなわち、1つのプレフィルタ保持枠11、11´と1つの本フィルタ保持枠21、21´との組み合わせを1ユニット9、9´としたとき、ユニット9、9´毎にエアー流入口5、5´が設けられる。
【0018】
そして、
図4に示すように、下流側に面するフィルタハウジング3の背面に設けられた凹部4、4´は、それぞれ3つのユニット9、9´を
、エアー流入方向を横切る横方向にスライド可能に収容する広さを有している。
そのため、フィルタハウジング3の下流側の一部に障害物があるために、保持枠11、11´および本フィルタ保持枠21、21´を凹部4、4´に収容できない場合でも、障害物のない部位からプレフィルタ保持枠11、11´および本フィルタ保持枠21、21´を凹部4、4´内に載置し、横方向にスライドさせることにより所定位置の凹部4、4´に収容することができる。
締め付け具7は、凹部4、4´内に並べて収容されたユニット9、9´毎に設けられている。
【0019】
次に、フィルタハウジング3へのプレフィルタ保持枠11、11´および本フィルタ保持枠21、21´の装着方法を説明する。なお、以下の説明では、プレフィルタ保持枠11および本フィルタ保持枠21の装着方法を説明するが、プレフィルタ保持枠11´および本フィルタ保持枠21´についても同様にして装着することができる。
【0020】
フィルタハウジング3は、例えば吸気ダクト(図示せず)内に凹部4を下流側にして取り付けられている。まず、下流側より凹部4内にプレフィルタ保持枠11を挿入・載置し、ついで本フィルタ保持枠21を挿入・載置する。
このとき、フィルタハウジング3の下流側に障害物がある場合は、前記したように、収容可能な位置から各保持枠11、21を凹部4内に挿入し、ついで所定位置へスライドさせればよい。
【0021】
このようにしてプレフィルタ保持枠11および本フィルタ保持枠21を凹部4内の所定位置に収容したのち、締め付け具7の当接板73の一端部を本フィルタ保持枠21の背面に当接させ、締め付けナット74で締め付けて固定する。
メンテナンス等のため、プレフィルタ保持枠11および本フィルタ保持枠21をフィルタハウジング3から取り外す場合は、上記の逆の操作を行えばよい。
【0022】
本実施形態によれば、フィルタハウジング3の凹部4内へのプレフィルタ保持枠11および本フィルタ保持枠21の収容および取りだしを下流側から行うことができ、フィルタ交換等のメンテナンスを上流側で行う必要がないので、フィルタ1,2を通して塵埃が除去された下流側の清潔なスペースでメンテナンス作業を行うことができる。
また、凹部4内に収容したプレフィルタ保持枠11および本フィルタ保持枠21を、締め付け具7で押圧し固定するので、カムクランク等の特別な固定具を必要とせず、簡単にフィルタ交換が可能であり、かつフィルタハウジング3の薄型化も可能であり、エアーフィルタ装置の省スペース化が可能である。
【0023】
なお、本発明において、プレフィルタ保持枠11および本フィルタ保持枠21は、フィルタハウジング3の凹部4内に別々に収容したが、あらかじめ一体化した両保持枠11、21を凹部4内に収容し締め付け具7によって締め付けるようにしてもよい。また、1つの保持枠内にプレフィルタ1、1´および中性能フィルタ2、2´を装着したものを使用してもよい。
【0024】
また、締め付け具は、上記実施形態のものに限定されるものではなく、上記以外にも種々のものが採用可能である。
【0025】
さらに、本実施形態では、フィルタハウジング3にエアー流入口5、5´を縦2段、横3列で形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2列以上の複数列であってもよく、段数も1段または2段以上であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1、1´ プレフィルタ
2、2´ 中性能フィルタ
3 フィルタハウジング
4、4´ 凹部
5、5´ エアー流入口
6 板材
7 締め付け具
8 ガスケット
9、9´ ユニット
10 取付孔
11、11´ プレフィルタ保持枠
21、21´ 本フィルタ保持枠
51、51´ 周縁
71 長ボルト
72 固定ナット
73 当接板
74 締め付けナット