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特許6633504受光素子用マルチプレクサおよび走査式レーザレーダ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633504
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】受光素子用マルチプレクサおよび走査式レーザレーダ装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/00 20060101AFI20200109BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20200109BHJP
   G01D 5/26 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   H03K17/00 B
   H03K17/00 E
   G01S7/497
   G01D5/26 L
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-247444(P2016-247444)
(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公開番号】特開2018-101925(P2018-101925A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2018年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】日本電産モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】万波 央
(72)【発明者】
【氏名】西口 直男
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−155854(JP,A)
【文献】 特開2010−263420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S7/497
G01D5/26
H03K17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光素子と、
各前記受光素子における受光強度が異なるように光を照射する第1光源と、
各前記受光素子における受光強度が異なるように光を照射する第2光源と、
前記第1光源および前記第2光源の点灯を制御する制御部と、
前記複数の受光素子のそれぞれに接続され、各前記受光素子からの入力信号を切り替えて出力するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサが第1接続状態にある時に前記制御部が前記第1光源を点灯した場合の前記マルチプレクサの第1出力値と、前記マルチプレクサが第2接続状態にある時に前記制御部が前記第1光源を点灯した場合の前記マルチプレクサの第2出力値と、前記マルチプレクサが第1接続状態にある時に前記制御部が前記第2光源を点灯した場合の前記マルチプレクサの第3出力値と、前記マルチプレクサが第2接続状態にある時に前記制御部が前記第2光源を点灯した場合の前記マルチプレクサの第4出力値に基づいて、前記マルチプレクサの故障を検出する故障検出部と、
を備える受光素子用マルチプレクサ。
【請求項2】
前記複数の受光素子は、一列に配置され、
前記第1光源は、前記複数の受光素子の内最も端に位置する一方の前記受光素子に最も近接させて設けられ、前記第2光源は、前記複数の受光素子の内最も端に位置する他方の前記受光素子に最も近接させて設けられることを特徴とする請求項に記載の受光素子用マルチプレクサ。
【請求項3】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の受光素子用マルチプレクサを備える走査式レーザレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子用マルチプレクサおよびそれを備える走査式レーザレーダ装置に関し、特に自らの故障を検出する受光素子用マルチプレクサおよびそれを備える走査式レーザレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のアナログの入力信号を切り替えて出力するマルチプレクサの故障を検出する技術が知られている。例えば、特許文献1は、マルチプレクサの動作異常を正確に検出可能とするマルチプレクサ回路を開示する。このマルチプレクサ回路は、複数チャンネルから入力されるアナログ入力信号を順次取り込み、当該入力信号を多重化して出力するマルチプレクサと、当該マルチプレクサから出力されるアナログ入力信号を複数のチャンネルに各々対応した複数のデジタル出力信号へ変換するADコンバータと、複数のデジタル出力信号の出力値を監視し、当該出力値が全て予め定められた範囲内である状態が予め定められた判定時間の間継続している場合、マルチプレクサの動作が異常状態であると判定する処理装置と、アナログ入力信号の1つとして、判定時間より短い周期のパルス信号をマルチプレクサへ出力するパルス信号発生装置を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−263420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、複数の受光素子が出力した信号を切り替えて出力する受光素子用マルチプレクサにおいて、故障モードを適切に検出する受光素子用マルチプレクサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、複数の受光素子と、各受光素子における受光強度が異なるように光を照射する第1光源と、各受光素子における受光強度が異なるように光を照射する第2光源と、第1光源および第2光源の点灯を制御する制御部と、複数の受光素子のそれぞれに接続され、各受光素子からの入力信号を切り替えて出力するマルチプレクサと、マルチプレクサが第1接続状態にある時に制御部が第1光源を点灯した場合のマルチプレクサの第1出力値と、マルチプレクサが第2接続状態にある時に制御部が第1光源を点灯した場合のマルチプレクサの第2出力値と、マルチプレクサが第1接続状態にある時に制御部が第2光源を点灯した場合のマルチプレクサの第3出力値と、マルチプレクサが第2接続状態にある時に制御部が第2光源を点灯した場合のマルチプレクサの第4出力値に基づいて、マルチプレクサの故障を検出する故障検出部と、を備える受光素子用マルチプレクサが提供される。
これによれば、複数の受光素子が出力した信号を切り替えて出力する受光素子用マルチプレクサにおいて、当該マルチプレクサの機能を用いて故障モードを適切に検出する受光素子用マルチプレクサを提供することができる。また、2つの光源を有することで、より正確に故障モードを検出できる。
【0008】
さらに、複数の受光素子は、一列に配置され、第1光源は、複数の受光素子の内最も端に位置する一方の受光素子に最も近接させて設けられ、第2光源は、複数の受光素子の内最も端に位置する他方の受光素子に最も近接させて設けられることを特徴としてもよい。
これによれば、受光素子における受光強度が異なるように2つの光源を配置することで、簡便な構造でより正確に故障モードを検出することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の受光素子が出力した信号を切り替えて出力する受光素子用マルチプレクサにおいて、当該マルチプレクサの機能を用いて故障モードを適切に検出する受光素子用マルチプレクサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る第一実施例の受光素子用マルチプレクサのブロック図。
図2】本発明に係る第一実施例の受光素子用マルチプレクサにおける、(A)受光素子の回路図、(B)受光素子と光源を搭載した基板の平面図。
図3】本発明に係る第一実施例の受光素子用マルチプレクサにおける、(A)第1光源がオン/第2光源がオフの状態で正常動作時のマルチプレクサ、(B)第1光源がオフ/第2光源がオンの状態で正常動作時のマルチプレクサ、(C)正常動作時にマルチプレクサから出力される受光強度の分布を示すグラフ。
図4】本発明に係る第一実施例の受光素子用マルチプレクサにおける、(A)第1光源がオン/第2光源がオフの状態で異常動作時(張り付き故障時)のマルチプレクサ、(B)第1光源がオフ/第2光源がオンの状態で異常動作時(張り付き故障時)のマルチプレクサ、(C)異常動作時(張り付き故障時)にマルチプレクサから出力される受光強度の分布を示すグラフ。
図5】本発明に係る第一実施例の受光素子用マルチプレクサにおける、(A)第1光源がオン/第2光源がオフの状態で異常動作時(受光素子PD1とマルチプレクサ間の断線時)のマルチプレクサ、(B)第1光源がオフ/第2光源がオンの状態で異常動作時(受光素子PD1とマルチプレクサ間の断線時)のマルチプレクサ、(C)異常動作時(受光素子PD1とマルチプレクサ間の断線時)にマルチプレクサから出力される受光強度の分布を示すグラフ。
図6】本発明に係る第一実施例の受光素子用マルチプレクサにおける、(A)第1光源がオン/第2光源がオフの状態で異常動作時(受光素子とマルチプレクサの間でショート故障)のマルチプレクサ、(B)第1光源がオフ/第2光源がオンの状態で異常動作時(受光素子とマルチプレクサの間でショート故障)のマルチプレクサ、(C)異常動作時(受光素子とマルチプレクサの間でショート故障)にマルチプレクサから出力される受光強度の分布を示すグラフ。
図7】本発明に係る第一実施例の受光素子用マルチプレクサを適用した走査式レーザレーダ装置の、(A)上面図、(B)正面図、(C)斜視図、(D)カバー等を取り除いた場合の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施例>
図1を参照し、本実施例における受光素子用マルチプレクサ100を説明する。受光素子用マルチプレクサ100は、複数の受光素子PD1〜PD4からそれぞれ出力されるアナログ信号を入力されるチャネルCNL1〜CNL4を有し、そのチャネルCNL1〜CNL4を切り替えて順次取り込み、アナログの入力信号を多重化して出力する装置である。なお、受光素子用マルチプレクサ100は、4つの受光素子PD1〜PD4およびこれらに対応するチャネルCNL1〜CNL4を有する例として説明する。もちろん、これに限定されることはない。受光素子用マルチプレクサ100は、出力信号を増幅する可変ゲインアンプVGAを経由してADコンバータADCと電気的に接続され、多重化した信号をADコンバータADCに出力する。
【0012】
受光素子用マルチプレクサ100は、複数の受光素子PD1〜PD4と、各受光素子PD1〜PD4における受光強度が異なるように光を照射する第1光源LED1および第2光源LED2と、第1光源LED1および第2光源LED2の点灯を制御する制御部CTLと、複数の受光素子PD1〜PD4のそれぞれに接続され、各受光素子PD1〜PD4からの入力信号を切り替えて出力するマルチプレクサMUXと、受光素子用マルチプレクサ100の故障を検出する故障検出部FDと、を備える。
【0013】
受光素子PD1〜PD4のそれぞれは、図2(A)に示すように、光エネルギーを電気エネルギーに変換するフォトダイオードなどの素子PDおよびその素子PDからの電流出力を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプTIAなどから構成される。受光素子PD1〜PD4は、図2(B)に示すように、基板PLT上に図視縦方向の一列に配置された受光素子アレイを構成する。もちろん、これに限定されず、たとえば、矩形状や環状など二次元方向に拡がりを以って配置されてもよいが、受光素子アレイは、受光素子を一次元に配置し簡便な構造なので好ましい。
【0014】
各受光素子PD1〜PD4とマルチプレクサMUXの各入力端子は、チャネルCNL1〜CNL4で1対1に電気的に接続される。マルチプレクサMUXは、4つの入力端子と1つの出力端子の間で1時点で1つの入力端子と出力端子とを接続するように、出力するチャネルを各チャネルCNL1〜CNL4の間で切り替える。
【0015】
第1光源LED1および第2光源LED2は、発光ダイオードであり、受光素子PD1〜PD4の感度波長のピーク値に適合する波長の光を発光する発光ダイオードを選択することが好ましい。第1光源LED1は、各受光素子PD1〜PD4における受光強度が異なるように光を照射する。本実施例では、受光素子PD1〜PD4は一列に配置されているので、図2(B)を参照して説明する。
【0016】
第1光源LED1は、複数の受光素子PD1〜PD4の内最も端に位置する一方の受光素子PD1に最も近接させて設けられる。すなわち、第1光源LED1は、受光素子PD1まで距離L1を以って受光素子PD1に光を照射する。同様に、第1光源LED1は、受光素子PD2までの距離L2を以って受光素子PD2に光を照射し、受光素子PD3までの距離L3を以って受光素子PD3に光を照射し、受光素子PD4までの距離L4を以って受光素子PD4に光を照射する。したがって、第1光源LED1と受光素子PD1〜PD4は、L1<L2<L3<L4の関係が成立するように配置されている。光源からの距離が短ければ受光強度が大きく(受光量が多く)、遠くなれば受光強度が小さくなる(受光量が少なくなる)。したがって、第1光源LED1からのそれぞれの距離が異なるように受光素子PD1〜PD4を配置することにより、第1光源LED1は、各受光素子PD1〜PD4における受光強度が異なるように光を照射することになる。
【0017】
なお、第1光源LED1からのそれぞれの距離が異なるように受光素子PD1〜PD4を配置することは例であり、これに限定さない。たとえば、光源を受光素子アレイの中央に配置した場合であっても、光源の照射口に各受光素子に対する光の照射量が異なるようなフィルタを付けることで、各受光素子における受光強度が異なるように光を照射してもよい。また、本実施例では、第1光源LED1の光の照射口は、受光素子PD1〜PD4の受光面に向けられて配置されているが、これに限定されず、照射口を受光面と同じ方向に向けて、反射板からの反射光を受光素子が受光してもよい。これによれば、光源と受光素子の距離が倍になるので、配置される物理的な距離に対して受光強度の差が大きくなり、差をつけやすい。
【0018】
第2光源LED2は、第1光源LED1と同様、各受光素子PD1〜PD4における受光強度が異なるように光を照射する。すなわち、第2光源LED2は、複数の受光素子PD1〜PD4の内最も端に位置する他方の受光素子PD4に最も近接させて設けられる。なお、第2光源LED2がこのように配置されることは例であることは、第1光源LED1において上述したとおりである。
【0019】
制御部CTLは、受光素子用マルチプレクサ100の故障モードを検出する際に、後述するように、第1光源LED1および第2光源LED2の点灯を制御する。なお、制御部CTLは、受光素子PD1〜PD4が本来の機能として使用されている最中は、第1光源LED1および第2光源LED2ともオフに制御する。
【0020】
故障検出部FDは、制御部CTLから得られる第1光源LED1および第2光源LED2の点灯状態と、マルチプレクサMUXのチャネルCNL1〜CNL4の切り替え状態と、マルチプレクサMUXの出力値に基づいて、受光素子用マルチプレクサ100の故障モードを検出する。図3図6を参照し、故障検出部FDの故障モードの検出方法について説明する。
【0021】
図3は、受光素子用マルチプレクサ100が正常動作時の受光素子PD1〜PD4の受光強度の出力値などを示す。本図(A)は、制御部CTLが、第1光源LED1をオンに、第2光源LED2をオフに制御している状態を示す。この状態において、マルチプレクサMUXは、チャネルCNL1〜CNL4を切り替える。そうすると、マルチプレクサMUXの出力値である各受光素子PD1〜PD4における受光強度は、本図(C)の黒丸印で表される。黒丸印は、受光素子PD1で最も受光強度が大きく、受光素子PD4で最も受光強度が小さい。すなわち、第1光源LED1と受光素子PD1〜PD4は、L1<L2<L3<L4の関係が成立するように配置されているので、第1光源LED1は、受光素子PD1に最も近接しているため最も受光素子PD1における受光強度が大きく、次いで受光素子PD2の受光強度が大きく、次いで受光素子PD3の受光強度が大きく、受光素子PD4の受光強度は最も小さい。出力値に現れる受光素子PD1〜PD4における受光強度は、第1光源LED1から受光素子PD1〜PD4までの距離(L1、L2、L3、L4)に比例して変化する。
【0022】
本図(B)は、制御部CTLが、第1光源LED1をオフに、第2光源LED2をオンに制御している状態を示す。この状態において、マルチプレクサMUXは、チャネルCNL1〜CNL4を切り替える。そうすると、マルチプレクサMUXの出力値である各受光素子PD1〜PD4における受光強度は、本図(C)の白丸印で表される。白丸印は、受光素子PD1で最も受光強度が小さく、受光素子PD4で最も受光強度が大きい。出力値に現れる受光素子PD1〜PD4における受光強度は、第2光源LED2から受光素子PD1〜PD4までの距離に比例して変化するので、第1光源LED1とは全く逆の傾向となる。
【0023】
このように、受光素子用マルチプレクサ100が正常動作時の受光素子PD1〜PD4の受光強度は、第1光源LED1および第2光源LED2と受光素子PD1〜PD4との距離に比例する。したがって、故障検出部FDは、第1光源LED1をオンした時の受光強度が第1光源LED1と各受光素子PD1〜PD4の間の距離に比例し、第2光源LED2をオンした時の受光強度が第2光源LED2と各受光素子PD1〜PD4の間の距離に比例している場合、受光素子用マルチプレクサ100は正常に動作していると判断できる。
【0024】
図4は、受光素子用マルチプレクサ100において、マルチプレクサMUXの切り替えスイッチが受光素子PD1のチャネルCNL1に固着した場合の出力値などを示す。本図(A)は、制御部CTLが、第1光源LED1をオンに、第2光源LED2をオフに制御している状態を示す。この状態において、マルチプレクサMUXは、チャネルCNL1〜CNL4を切り替えようとする。しかし、マルチプレクサMUXの切り替えスイッチがチャネルCNL1に固着しているので、チャネルCNL2〜CNL4に切り替えられない。そうすると、マルチプレクサMUXの出力値である受光強度は、本図(C)の黒丸印で表されるように、受光素子PD1の受光強度のみが出力されるので、最も受光強度が大きい値で一定である。すなわち、出力値に現れる受光強度は、第1光源LED1から受光素子PD1〜PD4までの距離に比例して変化しないので、異常が発生していると判断できる。
【0025】
本図(B)は、制御部CTLが、第1光源LED1をオフに、第2光源LED2をオンに制御している状態を示す。この状態において、マルチプレクサMUXは、チャネルCNL1〜CNL4を切り替えようとする。しかし、マルチプレクサMUXの切り替えスイッチがチャネルCNL1に固着しているので、チャネルCNL2〜CNL4に切り替えられない。そうすると、マルチプレクサMUXの出力値である受光強度は、本図(C)の白丸印で表されるように、受光素子PD1の受光強度のみが出力されるので、最も受光強度が小さい値で一定である。すなわち、出力値に現れる受光強度は、第2光源LED2から受光素子PD1〜PD4までの距離に比例して変化しないので、異常が発生していると判断できる。
【0026】
このように、受光素子用マルチプレクサ100では、出力値に現れる受光強度が第1光源LED1および第2光源LED2と受光素子PD1〜PD4との距離に比例して変化しないので、異常が発生していると判断できる。さらに、チャネルCNL1〜CNL4を切り替えても一定の出力値しか出力しないので、マルチプレクサMUXの切り替えスイッチに固着が生じていると判断できる。そして、第1光源LED1をオンした時に受光強度が最も大きい値を、第2光源LED2をオンした時に受光強度が最も小さい値を出力したことから、受光素子PD1の受光強度を伝達するチャネルCNL1に切り替えスイッチが固着したと判断できる。
【0027】
図5は、受光素子用マルチプレクサ100において、受光素子PD1とマルチプレクサMUXの入力端子を接続するチャネルCNL1が断線した場合の出力値などを示す。本図(A)は、制御部CTLが、第1光源LED1をオンに、第2光源LED2をオフに制御している状態を示す。この状態において、マルチプレクサMUXは、チャネルCNL1〜CNL4を切り替える。そうすると、マルチプレクサMUXの出力値である各受光素子PD1〜PD4における受光強度は、本図(C)の黒丸印で表されるように、受光素子PD2〜PD4における受光強度は、正常動作時と同様に変化すると共にその受光強度も同じ程度であるが、受光素子PD1における受光強度は、ゼロを示す。すなわち、出力値に現れる受光強度は、第1光源LED1と受光素子PD1〜PD4までの距離に比例して変化しないので、異常が発生していると判断できる。
【0028】
本図(B)は、制御部CTLが、第1光源LED1をオフに、第2光源LED2をオンに制御している状態を示す。この状態において、マルチプレクサMUXは、チャネルCNL1〜CNL4を切り替える。そうすると、マルチプレクサMUXの出力値である受光強度は、本図(C)の白丸印で表されるように、受光素子PD2〜PD4における受光強度は、正常動作時と同様に変化すると共にその受光強度も同じ程度であるが、受光素子PD1における受光強度は、ゼロを示す。すなわち、出力値に現れる受光強度は、第2光源LED2と受光素子PD1〜PD4までの距離に比例して変化しないので、異常が発生していると判断できる。
【0029】
このように、受光素子用マルチプレクサ100では、出力値に現れる受光強度が第1光源LED1および第2光源LED2と受光素子PD1〜PD4までの距離に比例して変化しないので、異常が発生していると判断できる。さらに、第1光源LED1と第2光源LED2のいずれをオンした場合も、受光素子PD1の出力値のみがゼロであるから、受光素子PD1とマルチプレクサMUXの入力端子を接続するチャネルCNL1が断線したと判断することができる。
【0030】
図6は、受光素子用マルチプレクサ100において、受光素子PD1とマルチプレクサMUXの入力端子を接続するチャネルCNL1と受光素子PD2とマルチプレクサMUXの入力端子を接続するチャネルCNL2がショートした場合の出力値などを示す。本図(A)は、制御部CTLが、第1光源LED1をオンに、第2光源LED2をオフに制御している状態を示す。この状態において、マルチプレクサMUXは、チャネルCNL1〜CNL4を切り替える。そうすると、マルチプレクサMUXの出力値である各受光素子PD1〜PD4における受光強度は、本図(C)の黒丸印で表されるように、受光素子PD3〜PD4における受光強度は、正常動作時と同様に変化すると共にその受光強度も同じ程度であるが、受光素子PD1と受光素子PD2における受光強度は同じとなる。また、その受光強度は、正常動作時の受光素子PD1と受光素子PD2の受光強度の和の概ね半分である。すなわち、出力値に現れる受光強度は、第1光源LED1と受光素子PD1〜PD4までの距離に比例して変化しないので、異常が発生していると判断できる。
【0031】
本図(B)は、制御部CTLが、第1光源LED1をオフに、第2光源LED2をオンに制御している状態を示す。この状態において、マルチプレクサMUXは、チャネルCNL1〜CNL4を切り替える。そうすると、マルチプレクサMUXの出力値である受光強度は、本図(C)の白丸印で表されるように、受光素子PD3〜PD4における受光強度は、正常動作時の同様に変化すると共にその受光強度も同じ程度であるが、受光素子PD1と受光素子PD2における受光強度は同じとなる。また、その受光強度は、正常動作時の受光素子PD1と受光素子PD2の受光強度の和の概ね半分である。すなわち、出力値に現れる受光強度は、第1光源LED1と受光素子PD1〜PD4までの距離に比例して変化しないので、異常が発生していると判断できる。
【0032】
このように、受光素子用マルチプレクサ100では、出力値に現れる受光強度が第1光源LED1および第2光源LED2と受光素子PD1〜PD4との距離に比例して変化しないので、異常が発生していると判断できる。さらに、第1光源LED1と第2光源LED2のいずれをオンした場合も、受光素子PD1と受光素子PD2における受光強度は出力値として同じになると共に、その受光強度は、正常動作時の受光素子PD1と受光素子PD2の受光強度の和の概ね半分であることから、チャネルCNL1とチャネルCNL2がショートしていると判断することができる。
【0033】
このように、複数の受光素子を有するマルチプレクサにおいて、それぞれの受光素子に対して受光強度が異なるように照射する光源を備え、その光源が点灯時にマルチプレクサのチャネルを切り替えて出力値を評価することで、故障モードを適切に検出することができる。すなわち、故障検出部FDは、マルチプレクサMUXが第1接続状態にある時に制御部CTLが第1光源LED1を点灯した場合のマルチプレクサMUXの第1出力値と、切り替えスイッチを切り替えて、マルチプレクサMUXが第1接続状態とは異なる第2接続状態にある時に制御部CTLが第1光源LED1を点灯した場合のマルチプレクサMUXの第2出力値とに基づいて、マルチプレクサMUXの故障を検出する。これによれば、複数の受光素子が出力した信号を切り替えて出力する受光素子用マルチプレクサ100において、故障検出用の光源からの光を受光しながらチャネルを切り替えるというマルチプレクサの機能を用いることで、故障モードを適切に検出する受光素子用マルチプレクサ100を提供することができる。
【0034】
なお、本実施例では光源は2つであるが、上述したように光源が1つであっても、当該光源からの光を受光しながらチャネルを切り替えるというマルチプレクサの機能を用いることで、故障モードを適切に検出することができる。ただし、2つの光源を用いると、より正確に故障モードを検出できるので、好ましい。
【0035】
2つの光源を有する場合、故障検出部FDは、マルチプレクサMUXが第1接続状態にある時に制御部CTLが第1光源LED1を点灯した場合のマルチプレクサMUXの第1出力値と、切り替えスイッチを切り替えて、マルチプレクサMUXが第1接続状態とは異なる第2接続状態にある時に制御部CTLが第1光源LED1を点灯した場合のマルチプレクサMUXの第2出力値と、マルチプレクサMUXが第1接続状態にある時に制御部CTLが第2光源LED2を点灯した場合のマルチプレクサMUXの第3出力値と、切り替えスイッチを切り替えて、マルチプレクサMUXが第1接続状態とは異なる第2接続状態にある時に制御部CTLが第2光源LED2を点灯した場合のマルチプレクサMUXの第4出力値とに基づいて、マルチプレクサMUXの故障を検出する。
【0036】
<適用例>
上述した受光素子用マルチプレクサ100は、たとえば、図7に示す、走査式レーザレーダ装置RDRに適用される。走査式レーザレーダ装置RDRは、車両などの移動体に設置され、対象物までの距離を検出する。走査式レーザレーダ装置RDRは、レーザ光を発光してから反射光を受光するまでの時間差と、発光したレーザ光の投光方向に基づいて、測定対象物までの距離や方向を測定する。走査式レーザレーダ装置RDRは、発光するレーザダイオードと受光するフォトダイオードが一次元に配列されたレーザダイオードアレイとフォトダイオードアレイを配列方向に対して垂直な方向に投光する方向および受光する方向を一次元方向に変化させることで、1回の走査(スキャン)で面(二次元)の走査を行う。
【0037】
本図(A)〜(C)に示すように、走査式レーザレーダ装置RDRは、正面視でアーチ状のレーザレーダカバー90と、レーザダイオードやフォトダイオードなどの構成要素を内に有するほぼ直方体のレーザレーダ筐体91と備える。レーザレーダカバー90は、レーザ光およびその反射光(電磁波)を透過する材質からなり、レーザダイオードから発せられるレーザ光を対象物に投光すると共に、その対象物からの反射光を受光することを可能とする。
【0038】
本図(D)は、レーザレーダカバー90とレーザレーダ筐体91を取り除いて、内部に含まれる主な構成要素のみを表した図である。走査式レーザレーダ装置RDRは、レーザ光を発光するレーザダイオード20と、反射光を受光するフォトダイオードアレイ30と、レーザダイオード20が発光したレーザ光をモータ11により回転されながら投光すると共に反射光をフォトダイオードアレイ30に導光する回転ミラー10とを備える。
【0039】
レーザダイオード20が発光したレーザ光が対象物に反射して戻ってきた反射光は、フォトダイオードアレイ30に結像させる受光レンズ31と導光する受光ミラー32を経由して、フォトダイオードアレイ30に到達する。フォトダイオードアレイ30には、上述した受光素子PD1〜PD4から構成される。フォトダイオードアレイ30は、基板PLT上に搭載される共に、基板PLTには、上述した第1光源LED1および第2光源LED2がフォトダイオードアレイ30の両端の近傍に配置されている。
【0040】
走査式レーザレーダ装置RDRの動作時には、受光素子PD1〜PD4が受光したレーザ光の反射光は、電気信号に変換されて、マルチプレクサMUX(図示せず)により多重化されてADコンバータADC(図示せず)に対して出力される。走査式レーザレーダ装置RDRの故障検出時には、第1光源LED1または第2光源LED2が点灯され、その照射光が電気信号に変換されて、マルチプレクサMUXの出力値となる。その出力値は、上述した方法により故障モードの検出に利用される。
【0041】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0042】
100 受光素子用マルチプレクサ
PD1〜PD4 受光素子
LED1 第1光源
LED2 第2光源
CTL 制御部
MUX マルチプレクサ
CNL1〜CNL4 チャネル
FD 故障検出部
ADC ADコンバータ
PLT 基板
RDR 走査式レーザレーダ装置
10 回転ミラー
11 モータ
20 レーザダイオード
30 フォトダイオードアレイ
31 受光レンズ
32 受光ミラー
90 レーザレーダカバー
91 レーザレーダ筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7