(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633550
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】心臓弁固着のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20200109BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-572487(P2016-572487)
(86)(22)【出願日】2015年6月11日
(65)【公表番号】特表2017-517343(P2017-517343A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】US2015035427
(87)【国際公開番号】WO2015191923
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2018年6月8日
(31)【優先権主張番号】62/010,680
(32)【優先日】2014年6月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515234196
【氏名又は名称】マイクロ インターベンショナル デバイシズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ピー.ホイットマン
【審査官】
宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2001/0031972(US,A1)
【文献】
特表2010−518947(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/088327(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0182419(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
A61F 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性リングを有する人工弁装置と、
アプリケータであって、前記アプリケータが、前記リングを通り1つ又は2つ以上のばねアームを有する遠位端で終わっているアプリケータシャフトを有しており、前記アプリケータシャフトに加えられる近位側へ向いた力が前記1つ又は2つ以上のばねアームと前記可撓性リングとに伝達されるように、前記ばねアームが前記アプリケータシャフトの遠位端を前記リングに結合している、アプリケータと、
ドライバであって、前記ドライバが前記アプリケータシャフトの周りで環状に配置されたガイドと、少なくとも1つのアンカー出口を含む少なくとも1つの発射アームとを有しており、前記ドライバが、近位位置と遠位位置との間で前記アプリケータシャフトに沿ってスライドするように形成されている、ドライバと、
を備えており、
前記ドライバの近位位置では前記少なくとも1つのアンカー出口が前記アプリケータシャフトと平行に配置され、そして前記ドライバの遠位位置では前記少なくとも1つのアンカー出口が前記可撓性リングへ向けられるように、前記少なくとも1つの発射アームが前記ドライバとヒンジ状に接続されており、そして
前記ドライバが、少なくとも1つのアンカーを駆動して前記可撓性リング内へ押し込むために前記アンカーに駆動力を加えるように形成されている、
外科用装置。
【請求項2】
前記人工弁がカテーテルによって植え込み部位へ送達され、前記可撓性リングがカテーテル内への挿入のために折り込まれ、そして前記カテーテルの遠位端から押し出されると拡張することができる、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項3】
前記人工弁が植え込み部位に植え込まれ、そして前記ドライバは、前記アンカーを駆動して少なくとも部分的に前記リングを通して、前記植え込み部位を取り囲む組織内へ押し込むように形成されている、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのアンカーが、
組織を穿刺するように形成された遠位チップへ向かってテーパされた遠位端と、
半径方向外側の面と半径方向内側の面とを含む、前記遠位端から近位側且つ半径方向外側へ向かって自由端まで延びる少なくとも1つの鉤状部と、
前記少なくとも1つの鉤状部及び遠位チップに対して可撓性の、前記遠位端から近位側へ延びる可撓性のステムと、
を備えている、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項5】
前記可撓性のステムが前記アンカーに加えられた力と協働して撓むように形成されている、請求項4に記載の外科用装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアンカーが、組織と係合し、そして近位側への移動に抵抗するように形成されている、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項7】
前記ドライバが、前記アプリケータシャフトを中心として回転するように形成されている、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項8】
前記ドライバが、各ばねアームに沿ってアンカーの駆動を割り出すように形成されている、請求項7に記載の外科用装置。
【請求項9】
前記ばねアームを前記可撓性リングとの係合から解放するように前記アプリケータシャフトに遠位側へ向いた力を加え、そして前記アプリケータを前記人工弁を通して近位側へ引きつけるように前記アプリケータシャフトに近位側へ向いた力を加えることによって、前記アプリケータを前記人工弁から取り外すことができる、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項10】
前記発射アームが前記発射アームの近位端で前記ドライバにヒンジ結合されている、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項11】
前記発射アームが前記発射アームの遠位端で前記ドライバにヒンジ結合されている、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項12】
遠位端を有するドライバと、
少なくとも1つの発射アームであって、前記ドライバの遠位端とヒンジ状に接続された前記少なくとも1つの発射アームがそれぞれ少なくとも1つのアンカー出口を含み、前記ドライバに対して平行な引き込み位置と、前記発射アームが近位方向且つ半径方向外側へ向けられる発射位置とを有する、少なくとも1つの発射アームと、
前記ドライバ内部に配置されたガイドと、
前記発射位置で前記発射アームの近位側且つ半径方向外側へ向かう方向に前記ガイドからの力を伝達するように形成された、前記ガイドに結合された発射メカニズムと
を備えている、外科用装置。
【請求項13】
カテーテル内への挿入のために圧潰可能であり、且つ前記カテーテルからの駆出時に拡張可能である可撓性リングと、
前記リングが組織と並置するべく前記リングに力を加えるように形成された1つ又は2つ以上のばねアームを有するアプリケータと、
前記リングを前記組織に固定するために少なくとも1つのアンカーを駆動して前記リング及び前記組織内へ押し込むように形成された少なくとも1つの発射アームを有するドライバと、
を備えている、外科用装置。
【請求項14】
前記ばねアームがさらに、周囲の組織の輪郭に前記リングを一致させるように形成されている、請求項13に記載の外科用装置。
【請求項15】
前記ドライバが前記リングを前記組織に固定するために少なくとも1つのアンカーを駆動して前記リング及び前記組織内へ押し込む間、前記ばねアームが力を前記リングに加える、請求項13に記載の外科用装置。
【請求項16】
さらに、
前記リングを通り前記1つ又は2つ以上のばねアームで終わっているアプリケータシャフトを備えており、前記ばねアームが前記アプリケータシャフトの遠位端を前記リングに結合して、前記アプリケータシャフトに加えられる近位側へ向いた力が前記1つ又は2つ以上のばねアームと前記可撓性リングとに伝達されるようになっており、
前記発射アームが前記ドライバとヒンジ状に接続されており、前記発射アームが前記アプリケータシャフトと平行である引き込み位置と、前記発射アームが前記リングに向けられている発射位置とを有する、
請求項13に記載の外科用装置。
【請求項17】
前記ドライバが複数の発射アームを含み、そして前記複数の発射アームが複数のアンカーを同時に発射する、請求項15に記載の外科用装置。
【請求項18】
前記発射アームが前記発射アームの近位端で前記ドライバにヒンジ結合されている、請求項15に記載の外科用装置。
【請求項19】
前記発射アームが前記発射アームの遠位端で前記ドライバにヒンジ結合されている、請求項15に記載の外科用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年6月11日付けで出願された米国仮特許出願第62/010,680号明細書の利益を主張し、参照により全体的に本明細書に援用する。
【0002】
さらに、次のもの、すなわち2014年7月1日付けで出願された米国特許出願第14/321,476号明細書、2014年6月10日付けで出願された米国特許出願第14/301,106号明細書、2013年3月15日付けで出願された米国特許出願第13/843,930号明細書、2014年3月17日付けで出願された国際出願PCT/US14/30868号明細書、2011年1月20日付けで出願された米国特許出願第13/010,769号明細書、2010年1月20日付けで出願された米国仮特許出願第61/296,868号明細書、2011年1月20日付けで出願された米国特許出願第13/010,766号明細書、2011年1月20日付けで出願された米国特許出願第13/010,777号明細書、及び2011年1月20日付けで出願された米国特許出願第13/010,774号明細書、のそれぞれの内容が参照により全体的に本明細書に援用される。
【0003】
本発明は、心臓弁置換物を組織内へ固着させることを含む、経皮的心臓弁置換のシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
心臓弁逆流(すなわち心臓弁が適切に閉じないこと)、又は心臓弁狭窄(すなわち心臓弁が適切に開かないこと)から生じる心臓弁の欠陥に対抗するために心臓弁置換が開発されている。心臓弁の修復及び置換における初期の試みはオープン外科的処置を含んだが、しかし、より最近の開発は経皮的な外科的応用を含んでいる。
【0005】
しかしながら、経皮的な心臓弁修復は特定の欠点を示している。例えば、経皮的修復は修正された外科的技術を伴うが、このような技術は処置の利点を制限するおそれがある。環状リングが効果を欠き、そして腐食、穿孔、及び冠状動脈血栓症のリスクを含むおそれがある。エッジ間の修復は技術的に要求が高いことがあり、長期の耐久性を欠くおそれがある。具体的な弁欠陥に応じて、種々異なる修復技術の組み合わせが必要となることがあり、これがさらに処置を複雑にし、その効果を制限してしまう。
【0006】
これに対して、心臓弁置換は特定の利点を提供し、心臓弁修復に関連するリスクを制限し、そしてより広い範囲の患者に適用される。しかしながら、心臓弁置換のためのオープン外科的手段は患者に著しいリスクをもたらす。したがって、侵襲性のより低い経皮的心臓弁置換が必要とされる。
【0007】
既存の経皮的手段には、植え込み個所への送達のためにカテーテル内部で折ることができる経皮的挿入型の心臓弁プロテーゼを記載する米国特許第7,621,948号が含まれる。米国特許出願第2013/0144378号明細書に記載された別の経皮的手段が、CardiAQ Valve Technologies, Inc.から入手可能である。他の経皮的プロテーゼ弁には、Neovasc Tiara、Valtech Cardiovalve、ValveXchange、Lutter Valve、及びMedtronic, Inc. 及びEdwards Lifesciences Corporationの弁が含まれる。
【0008】
経皮的心臓弁置換体を提供する上で、送達のためにカテーテル内に折り込むことができ、そして植え込み部位内に適切にフィットして弁としてのその機能を果たすようにカテーテルから出ることができるインプラントを提供することが難題として含まれる。インプラント弁はしたがってカテーテル内へ折り込まれるのに充分に小さくなければならないが、しかし、ひとたび植え込まれたら、弁の機能を提供するのに充分に大きく、しかも心室の流れを妨げるほどには大きくない状態でなければならない。
【0009】
さらに、心臓弁インプラントを植え込み部位に固定することが難しい場合もある。それというのも植え込み部位が不規則な形状を成していることがあり、弁を固定するためのカルシウムを欠いていることがあり、あるいは、適切な配向でインプラント弁を固定するのを難しくすることもあるからである。
【0010】
これらの難題に充分且つ効果的に対処するための経皮的心臓弁手段が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、心臓弁置換プロテーゼを組織へ送達し、植え込み、そして固定するための装置が提供される。装置はリングを含んでいてよく、リングは小さな空間、例えばカテーテルのキャビティ内へ折り込まれるのに充分に可撓性であってよい。リングは、カテーテル内のその折り位置から解放されると自動的に拡張するように弾性的であってよい。植え込み部位が不規則な形状を有する場合、リングの弾性は、リングが植え込み部位の形状になるのを可能にする。装置はさらにリングに結合された1つ又は2つ以上のリーフレットを含んでいてよい。リーフレットは第1流体流方向の流体流を遮断し、そして第2流体流方向の流体流を許すのに効果的である。
【0012】
本発明のシステムはアプリケータを含んでいてよく、アプリケータは、リングを通り遠位端において1つ又は2つ以上のばねアームで終わっているアプリケータシャフトを含んでいる。ばねアームがリングにばね力を加えてリングを半径方向外側へ向かって押すように、ばねアームはアプリケータシャフトの遠位端をリングに結合している。各ばねアームはリングに別々に結合されているので、複数のばねアームの場合、各ばねアームは不規則な形状を有する植え込み部位にそれぞれ個別に応答することができ、リングが植え込み部位の形状になり、プロテーゼ心臓弁のためのより良好な座を提供するのを可能にする。
【0013】
プロテーゼは、例えばプロテーゼをその中へ折り込むことができるカテーテルによって、インプラント部位へ経皮的に送達することができる。ひとたび植え込み部位へ送達されたら、リングが拡張し得るように、カテーテルの遠位端を通してプロテーゼを押してよい。次いでプロテーゼを植え込み部位に植え込むことができ、この場合、リング及び独立したばねアームの弾性によりプロテーゼが植え込み部位の任意の不規則な形状になることが可能になる。
【0014】
ひとたび植え込まれたら、好ましい実施形態の場合、ドライバを使用してアンカーをリングを通して駆動して、植え込み部位の組織内へ押し込み、植え込み部位の組織にプロテーゼを固定する。ドライバはリングの周りの1つ又は2つ以上の位置内へ1つ又は2つ以上のアンカーを押し込むように形成することができ、そして各ばねアームに沿ってアンカーの駆動を割り出す(index)ことができる。ひとたびプロテーゼが植え込み部位に固定されると、アプリケータを引き込み、プロテーゼを所定の位置に固定したままにすることができる。プロテーゼの幅又は直径は、植え込み部位の幅又は直径よりも小さく、これにより、ひとたびアンカーが駆動されて植え込み部位の周囲組織内へ押し込まれたら、植え込み部位の組織はより小さなプロテーゼに向かって引きつけられ、これによりプロテーゼの外側形状に合致する。
【0015】
こうして、プロテーゼ弁を植え込み部位に確実に固定することにより、弁機能をより充分且つ効果的に改善する。プロテーゼは種々の形状を成してよい。特定の用途に使用されるべきプロテーゼの形状は、特定の用途の特定のジオメトリ上の必要に基づいて選択することができる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、外科用装置が、アプリケータであって、前記アプリケータが、リングを通り1つ又は2つ以上のばねアームを有する遠位端で終わっているアプリケータシャフトを有しており、アプリケータシャフトに加えられる近位側へ向いた力が1つ又は2つ以上のばねアームと可撓性リングとに伝達されるように、ばねアームがアプリケータシャフトの遠位端をリングに結合している、アプリケータと、ドライバであって前記ドライバがアプリケータシャフトの周りで環状に配置されたガイドと、少なくとも1つのアンカー出口を含む少なくとも1つの発射アームとを有しており、ドライバが、近位位置と遠位位置との間でアプリケータシャフトに沿ってスライドするように形成されている、ドライバと、を備えており、ドライバの近位位置では少なくとも1つのアンカー出口がアプリケータシャフトと平行に配置され、そしてドライバの遠位位置では少なくとも1つのアンカー出口が可撓性リングへ向けられるように、少なくとも1つの発射アームがドライバとヒンジ状に接続されており、そしてドライバが、少なくとも1つのアンカーを駆動して可撓性リング内へ押し込むためにアンカーに駆動力を加えるように形成されている。
【0017】
人工弁がカテーテルによって植え込み部位へ送達されてよく、可撓性リングがカテーテル内への挿入のために折り込まれ、そしてカテーテルの遠位端から押し出されると拡張することができる。人工弁が植え込み部位に植え込まれてよく、そしてドライバは、アンカーを駆動して少なくとも部分的にリングを通して、植え込み部位を取り囲む組織内へ押し込むように形成されていてよい。
【0018】
アンカーは、組織を穿刺するように形成された遠位チップへ向かってテーパされた遠位端と、半径方向外側の面と半径方向内側の面とを含む、遠位端から近位側且つ半径方向外側へ向かって自由端まで延びる少なくとも1つの鉤状部と、少なくとも1つの鉤状部及び遠位チップに対して可撓性の、遠位端から近位側へ延びる可撓性のステムと、を備えていてよい。可撓性のステムはアンカーに加えられた力と協働して撓むように形成されていてよい。少なくとも1つのアンカーは、組織と係合し、そして近位側への移動に抵抗するように形成されていてよい。
【0019】
ドライバは、アプリケータシャフトを中心として回転するように形成されていてよく、そしてさらに、各ばねアームに沿ってアンカーの駆動を割り出すように形成されていてよい。
【0020】
ばねアームを可撓性リングとの係合から解放するようにアプリケータシャフトに遠位側へ向いた力を加え、そしてアプリケータを人工弁を通して近位側へ引きつけるようにアプリケータシャフトに近位側へ向いた力を加えることによって、アプリケータを人工弁から取り外すことができる。
【0021】
発射アームは、発射アームの近位端でドライバにヒンジ結合されていてよく、あるいは、発射アームの遠位端でドライバにヒンジ結合されていてもよい。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、外科用装置が、遠位端を有するドライバと、少なくとも1つの発射アームであって、ドライバの遠位端とヒンジ状に接続された前記少なくとも1つの発射アームがそれぞれ少なくとも1つのアンカー出口を含み、ドライバに対して平行な引き込み位置と、発射アームが近位方向且つ半径方向外側へ向けられる発射位置とを有する、少なくとも1つの発射アームと、ドライバ内部に配置されたガイドと、発射位置で発射アームの近位側且つ半径方向外側へ向かう方向にガイドからの力を伝達するように形成された、ガイドに結合された発射メカニズムとを含んでいる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、外科用装置が、カテーテル内への挿入のために圧潰可能であり、且つカテーテルからの駆出時に拡張可能である可撓性リングと、リングが組織と並置するべくリングに力を加えるように形成された1つ又は2つ以上のばねアームを有するアプリケータと、リングを組織に固定するために少なくとも1つのアンカーを駆動してリング及び組織内へ押し込むように形成された少なくとも1つの発射アームを有するドライバと、を含んでいる。ばねアームはさらに、周囲の組織の輪郭にリングを一致させるように形成されていてよい。ドライバがリングを組織に固定するために少なくとも1つのアンカーを駆動してリング及び組織内へ押し込む間、ばねアームは力をリングに加えてよい。
【0024】
外科用装置は、リングを通り1つ又は2つ以上のばねアームで終わっているアプリケータシャフトを含んでいてよく、ばねアームがアプリケータシャフトの遠位端をリングに結合して、アプリケータシャフトに加えられる近位側へ向いた力が1つ又は2つ以上のばねアームと可撓性リングとに伝達されるようになっており、発射アームはドライバとヒンジ状に接続されていてよく、発射アームがアプリケータシャフトと平行である引き込み位置と、発射アームがリングに向けられている発射位置とを有する。
【0025】
ドライバは複数の発射アームを含んでよく、そして複数の発射アームは複数のアンカーを同時に発射してよい。
【0026】
発射位置はアプリケータシャフトに対して垂直であってよい。発射位置は引き込み位置から90度未満であってもよい。
【0027】
発射アームは発射アームの近位端でドライバにヒンジ結合されていてよく、あるいは発射アームの遠位端でドライバにヒンジ結合されていてもよい。
【0028】
本発明のさらなる特徴及び態様を添付の図面を参照しながら以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の好ましい実施態様に基づく、心臓弁置換プロテーゼ、アプリケータシャフト、ばねアーム、及びドライバを示す図である。
【
図2】本発明の好ましい実施態様に基づく、心臓弁置換プロテーゼ、アプリケータシャフト、及びばねアームを示す図である。
【
図3】本発明の好ましい実施態様に基づく、心臓弁置換プロテーゼ、アプリケータシャフト、ばねアーム、及びドライバを示す図である。
【
図4】本発明の好ましい実施態様に基づく、心臓弁置換プロテーゼ、アプリケータシャフト、ばねアーム、及びドライバを示す図である。
【
図5】本発明の好ましい実施態様に基づく、心臓弁置換プロテーゼ、アプリケータシャフト、ばねアーム、及びドライバを示す図である。
【
図6】本発明の好ましい実施態様に基づく、心臓弁置換プロテーゼ、アプリケータシャフト、ばねアーム、及びドライバを示す図である。
【
図7】本発明の好ましい実施態様に基づく、心臓弁置換プロテーゼ、アプリケータシャフト、ばねアーム、及びドライバを示す図である。
【
図8】本発明の好ましい実施態様に基づく、心臓弁置換プロテーゼ、アプリケータシャフト、ばねアーム、及びドライバを示す図である。
【
図9】本発明の好ましい実施態様に基づく心臓弁置換プロテーゼを示す図である。
【
図10】本発明の好ましい実施態様に基づく心臓弁置換プロテーゼを示す図である。
【
図11】本発明の好ましい実施態様に基づくアンカーを示す図である。
【
図12】本発明の好ましい実施態様に基づくアンカーを示す図である。
【
図13】本発明の好ましい実施態様に基づく心臓弁置換プロテーゼを示す図である。
【
図14】本発明の好ましい実施態様に基づく心臓弁置換プロテーゼのドライバを示す断面図である。
【
図15】本発明の好ましい実施態様に基づく心臓弁置換プロテーゼのドライバを示す図である。
【
図16】本発明の好ましい実施態様に基づく心臓弁置換プロテーゼのドライバを示す断面図である。
【
図17】本発明の好ましい実施態様に基づく心臓弁置換プロテーゼのドライバを示す図である。
【
図18】本発明の好ましい実施態様に基づく心臓弁置換プロテーゼのドライバを示す断面図である。
【
図19】本発明の好ましい実施態様に基づく心臓弁置換プロテーゼのドライバを示す図である。
【
図20】本発明の好ましい実施態様に基づく心臓弁置換プロテーゼのドライバを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下により詳細に示すように、本発明の好ましい実施形態は、心臓弁置換プロテーゼの信頼性高く効果的な送達、植え込み、及び固定を可能にして、プロテーゼが心臓弁欠陥に効果的に対処し得るようになっている。
【0031】
本発明の好ましい実施形態が
図1に示されている。
図1は、リング10を有する心臓弁置換プロテーゼ1を示している。リングは好ましい実施形態では弾性的であってよい。
図1はさらに、アプリケータシャフト21とばねアーム22とを有するアプリケータ20を示している。ばねアーム22はアプリケータシャフト21の遠位端に固定されていてよく、そしてアプリケータシャフト21の遠位端を置換プレテーゼ1のリング10に結合していてよい。
図1はさらに、下で詳述するようにドライバ40を示している。
【0032】
参照により本明細書に完全に開示されているかのようにその全体が本明細書中に援用される米国特許第7,621,948号明細書によって記載されていることから全般的にわかるように、本発明の置換プロテーゼ1は、プロテーゼがカテーテルのキャビティ内部にフィットするように、先ず置換プロテーゼ1を圧潰位置又は折り位置まで圧潰することによって、植え込み部位へ送達することができる。圧潰された又は折られたプロテーゼを含むカテーテルは、経皮的に植え込み部位へ進められる。カテーテルの遠位端が植え込み部位に隣接したら、圧潰されたプロテーゼを、カテーテルの遠位端を通して押すか又は押し込むことができる。
【0033】
心臓弁置換プロテーゼ1は、コンプライアントな弾性材料、例えば変形可能なプラスチック又はニチノールから成っていてよく、これにより、ひとたび圧潰されたプロテーゼがカテーテルの遠位端から出ると、リング10は
図1〜10に示されているように、非圧潰形態又は拡張形態へ弾性的に戻ることができる。リング10を含むプロテーゼ1は植え込み部位内で操作されてよく、プロテーゼは植え込み部位内の所定の位置へ押し込まれてよい。
【0034】
図1〜10にさらに示されているように、本発明の好ましい実施形態では、リング10は植え込み部位の形状を呈することができる。この形状は、不規則な形状(例えば非円形)である場合がある。
図1〜10に示された好ましい実施形態では、リング10は非円形の不規則な形状にさせられる。こうして、本発明の心臓弁置換プロテーゼは、多様な心臓弁欠陥に対処するように多様な植え込み部位へ適合させることができる。
【0035】
図2に示されているように、心臓弁プロテーゼ1はさらにリーフレット30を含んでいる。リーフレットは弁機能を果たす。リーフレット30はリング10に結合されており、さらに弁ストラット31によって適切な位置に保持される。リーフレット30は、第1流体流方向の流体を阻止し、そして第2流体流方向の流体流を許すように形成されている。
【0036】
図2〜8は、置換プロテーゼ1を植え込み部位の組織へ固定することの好ましい実施形態を示している。
【0037】
図2に示されているように、置換プロテーゼ1はカテーテルから拡張させられており、リング10はほぼ完全に拡張形態にある。アプリケータシャフト21は近位方向からリング10の遠位側へ延びている。ばねアーム22はアプリケータシャフト21の遠位側に結合されて、アプリケータシャフト21の遠位端がアプリケータシャフト21の軸線を中心としてばねアーム22によって形成された円錐形状の頂点を形成するようになっている。ひとたび植え込み部位へ送達されたら、アプリケータシャフト21を使用して、アプリケータシャフト21を近位方向へ引張ることにより、植え込み部位の組織内へリング10を押し込むことができる。この場合、近位方向の力がばねアーム22へ伝達され、今度はばねアーム22がリング10に対して近位・半径方向に力を加えるようになる。ばねアームはばねエレメント23、例えばばね又はばね様リボンを含むので、各ばねアームは他のばねアームとは独立して力を吸収するように撓むことができる。このように、リング10はさらに不規則な形状を獲得し、任意の植え込み組織の形状と一致することができる。
図2〜8は、種々様々なばねアーム22が異なる程度まで伸長又は圧縮されるのを示している。
【0038】
図3に示されているように、ひとたびプロテーゼ1が植え込み部位の所定の場所に位置すると、ドライバ40を作動させることにより、リング10を植え込み部位の組織に締め付けることができる。ドライバ40は、アプリケータシャフト21に沿ってスライドするか、又は他の形式で移動するように操作することができる。ガイド43と発射アーム41とは、
図3に示されているように、アプリケータシャフト21の互いに対向する側に配置されていてよい。
【0039】
図4に示されているように、ドライバ40はアプリケータシャフト21の遠位端へ移動させられる。この場所でアプリケータ21はばねアーム22に対面する。
【0040】
図5に示されているように、発射アーム41は、アプリケータシャフト21によって定義された軸線と整列する位置から、アプリケータシャフト21から半径方向に離反する方向に向けられた位置へ回転するように形成されているので、発射アームのアンカー出口42はリング10に向けられる。
【0041】
図6に示されているように、発射アーム41は、アンカー50をアンカー出口42を通して駆動するように形成されていてよい。アンカー50は駆動されてリング10を通して植え込み位置の周囲組織内へ押し込み、リング10を植え込み位置の周囲組織に固定するか又は締め付けることができる。
【0042】
図7に示されているように、ひとたびアンカー50が駆動されてリング10内及び周囲組織内に押し込まれると、発射アーム41を回転させて、アプリケータシャフト21によって定義された軸線との整列状態に戻すことができるので、
図8に示されているように、ドライバ40をアプリケータ20の遠位端から引き込むことができる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態の場合、リング10の周りでアンカー50を駆動するように、ドライバ40と発射アーム41とによってアンカー50の駆動を繰り返すことができる。複数のアンカー50をアンカーのカートリッジ又はトレイ内へローディングしてよく、これにより、駆動されてリング10及び周囲組織内へ押し込まれるべき位置へ付加的なアンカーをローディングすることができる。ドライバ40は、リング10の周囲の各ばねアーム22の位置に対応して各アンカー50の駆動を割り出すことができる。別の実施形態では、アプリケータシャフト21は溝又は他のマーキングを有していてよく、溝又は他のマーキングに対応して、ドライバ40は各アンカー50の駆動を割り出すことができる。
【0044】
図9に示されているように、心臓弁置換プロテーゼ1は単独で示されており、アプリケータ20、ドライバ40、又はアンカー50は存在していない。
【0045】
図10は、ドライバ40がリング10の周囲で複数のアンカー50を駆動するのを完了した後、そしてさらにアプリケータシャフト21及びばねアーム22を含むアプリケータ20が引き込まれた後の、心臓弁置換プロテーゼ1を示している。アプリケータ20を引き込むためには、アプリケータシャフト21を遠位方向に移動させ、ばねアーム22をさらにリング10の遠位側を超えて伸長させ、そしてばねアーム22によって形成された円錐構造が圧潰するのを可能にしてよい。ひとたび圧潰したら、ばねアーム22は、アプリケータシャフト21を引き込むとともに、リング10を通り抜けることができるので、アプリケータ20全体を植え込み部位から引き込むことができる。
【0046】
アンカー50は、2010年1月20日付けで出願された米国仮特許出願第61/296,868号明細書、2011年1月20日付けで出願された米国特許出願第13/010,766号明細書、2013年3月14日付けで出願された米国特許出願第13/828,256号明細書、2013年3月15日付けで出願された米国特許出願第13/843,930号明細書、2014年6月10日付けで出願された米国特許出願第14/301,106号明細書、に記載されたアンカーのいずれかであってよい。上記明細書のそれぞれは、参照により本明細書に完全に開示されているかのようにその全体が本明細書中に援用される。
【0047】
例えば、
図11はアンカー又はインプラント200を示している。アンカー又はインプラント200は、駆動されて組織内へ押し込まれるように形成されている。アンカー200は襞状ボディ201を含んでいる。ボディ201は、ボディ201の長さに沿って軸線方向に延びる溝203を含んでいる。このように、ボディ201の周方向には、複数の溝203と複数の畝205とが交互に延びている。さらに、アンカーボディ201は、一対の翼状部又は分割部207及び208を含んでいる。分割部207及び208は、ボディ201内へ施されたそれぞれの裂け目又は切れ目209によって形成されている。これに関しては、分割部209は、ボディ201内へ半径方向に切れ目を形成し、そして軸線方向にこれを延ばすことによって形成されてよい。したがって、2つの分割部207及び208は、遠位側の位置でボディ201の残りの部分に付着し、そして近位側へ向かって自由端まで延びている。自由端は曲面に沿って複数の鋭利な突起を含んでいる。これらの尖端は、襞に基づき形成されている。具体的には、
図11の挿入部分側面図に示されているように、畝205が鋭利な突起を形成している。これらの突起は、組織を把持し、アンカー200の遠位スライドを阻止するのに有利である。それぞれの分割部207及び208は図示のように3つのこのような突起を含んではいるものの、言うまでもなく、アンカー200は、分割部のうちの1つ又は2つ以上が、単一の鋭利な突起を含む任意の他の数の突起を有するように構成されてもよい。例えば、より数多くの鋭利な突起が望まれる場合、より密な襞をボディ201に施すこともでき(すなわち、交互に配置される溝203及び畝205の数をより多くすることもできる)、且つ/又は、切れ目又はスライスの角度を調節することもできる。さらに、畝205に対する溝203の深さを変化させることによって、突起が近位側へ延びる長さを調節することができる。
【0048】
分割部207及び208は、組織内への遠位挿入を著しく妨げるのではなく、組織と係合することによって挿入個所から近位側への移動に抵抗する。分割部207及び208の尖端及び/又は鋭利なエッジを有する近位端と、分割部の近位端に交互に設けられた畝との組み合わせが性能を改善することが判っている。
【0049】
さらに、分割部又は翼状部207及び208は、軸線方向に互いにずらされている。例えば、分割部207は軸線方向で軸線xxに沿った位置に配置されており、そして分割部208は軸線方向で軸線xxに沿った位置bに配置されている。このことは、ずらされていない形態と比較して、ボディ201の他の部分のより大きい構造強度を可能にする。具体的には、切れ目は、これらが遠位側へ進むにつれて連続的に半径方向内側へ向かって進むので、ずらされていない形態の場合には、その部分は、切れ目の遠位端において断面の材料量が著しく少なくなってしまう。このことはボディの軸線に沿った機械的に弱い地点又は領域を招き、特に小さな寸法のアンカーの場合、機械的欠陥をもたらすおそれがある。アンカー200は、組織からの近位側への引き込みに抗するようにアンカー200を固着させるために、一対の翼状部207及び208を利用しているものの、言うまでもなく、翼の数はいくつであってもよく、また翼状部207及び208の代わりに、又はこれらに加えて、任意の他の適宜な固着構造、例えば固着フィラメントを設けてもよい。
【0050】
アンカー200の遠位尖端はプラミッド形であり、鋭利な尖端と、鋭利な尖端において収束するエッジによって分離された複数の面とを有している。4つの平らな面が設けられているものの、言うまでもなく、任意の適宜な数の面が設けられていてよく、面の1つ又は2つ以上又は全てが平らでなくてもよい。
【0051】
アンカー200は1つ又は2つ以上のショルダを含んでいてよい。ショルダは翼状部207及び208とボディ201との接合部によって形成されるか、あるいは翼状部207及び208が遠位端から近位側且つ半径方向外側へ向かって延びる、又は遠位端よりも遠位側にあるアンカー200の区域によって画定される。
図11に示されているように、翼状部207、208は弛緩された非圧縮位置を有しているが、しかしボディとより接近した第2の圧縮位置へ圧縮することができる。さらに、ボディ201は可撓性であってよく、これにより、近位端内で受けた力が、翼状部207及び208、及び遠位端に対するボディ又はステム201の位置に影響を及ぼすようにすることができる。
【0052】
アンカー200は、先ず例えば射出成形又は押し出しによって襞を備えたボディ201を形成し、そして続いて、例えばボディ201の側面内に半径方向に切り込みを入れることによって、分割部207及び208を形成することによって製造されてよい。図示のように、切り込みはボディ201の長手方向軸方向xxに対する(近位側進入点における)角度が近位側の初期カッティング個所からアンカー200の遠位端に向かって徐々に小さくなる状態で湾曲しており、最終的には線状になる。図示の例の分割部又は切り込みは、ボディ201の長手方向軸方向xxに対して湾曲した又は変化する角度を有するように形成されているものの、言うまでもなく、線状切り込みを含む任意の適宜な切り込みが形成されてよい。
【0053】
アンカー200は、ボディ201の半径方向周囲の周りに均一な間隔を置いて設けられた2つの翼部又は分割部を含んでいるが、言うまでもなく、単一の分割部を含む任意の数の分割部が、アンカー200の半径方向周囲の周りに任意の適宜な間隔を置いて設けられていてよい。
【0054】
現在の製造方法は近ナノ技術の適用を可能にする。このことは、アンカー200が、過去には可能ではなかったサイズ及び複雑さで製造されるのを可能にする。アンカー200は、吸収性又は非吸収性ポリマーから射出成形され、次いで翼状部207及び208の特徴を加えるように(例えばカッティングによって)加工されてよい。アンカー200はポリマーから形成されてはいるものの、任意の適宜な材料、例えば金属又は複合材料が使用されてよい。アンカー200は、直径が例えば1ミリメートル、又はほぼ1ミリメートルであり、そして長さが例えば5ミリメートル〜10ミリメートルであってよい。いくつかの好ましい実施形態によれば、直径は1ミリメートル未満である。いくつかの好ましい実施形態によれば、直径は0.8ミリメートル〜1.2ミリメートル未満である。しかしながら言うまでもなく、他の寸法が提供されてもよい。
【0055】
本発明の好ましい実施形態において、
図12に示されたアンカー4200について説明する。アンカー4200は遠位チップ4230と、遠位チップ4230の基部から近位側へ延びるステム4201とを含んでいる。ステム4201はショルダ4240で遠位チップ4230の基部と接合している。翼状部又は鉤状部4207、4208が近位側へ、そしてある程度、遠位チップ4230の基部から半径方向へ向かって延びており、そしてショルダ4240で遠位チップ4230の基部と接合している。鉤状部4207、4208は遠位チップ4230から近位側且つ半径方向へ向かって自由端まで延びている。
図12に示されているように、自由端はさらに半径方向外側へ向かってフレア状に広がっていてよい。上記の翼状部又は鉤状部207、208とは異なり、翼状部又は鉤状部4207、4208はアンカーのボディへ施された切り込み又は分割部から形成されてはいないので、ステム4201の厚さは鉤状部4207、4208を含むことによって影響を及ぼされることはない。翼状部又は鉤状部4207、4208は、
図12に示された、弛緩された非圧縮位置を有していてよい。非圧縮位置において、鉤状部4207、4208は付勢されておらず、鉤状部開口Wを有している。鉤状部4207、4208は圧縮することにより、ステム4201とより接近することができる。鉤状部には種々の量の圧縮を加えることができ、これにより圧縮が大きければ大きいほど、鉤状部はステムにより接近する。鉤状部4207、4208は鉤状部の自由端に突起を含むことができ、これにより、ひとたびアンカーが展開されると組織と係合することができるようなっている。2つの鉤状部4207、4208が図示されているものの、言うまでもなく、任意の数の鉤状部が提供されてよい。同様に、鉤状部の自由端には、1つの鋭利な突起を含む任意の数の突起が提供されてよい。
【0056】
ステム4201は可撓性であってよく、鉤状部4207、4208及び遠位チップ4230に対して曲げる又は撓むことができる。ひとたび組織内へ展開されると、可撓性ステムは、剛性の又は曲げられないステムを有するアンカーと比較して、アンカー4200に作用する異なる力プロフィールを提供する。鉤状部及び遠位チップに対して撓むことができる可撓性シャフトは、アンカーのこれらのエレメントの間に生きたヒンジを形成する。アンカーにその近位端から作用する力は、可撓性ステムによって少なくとも部分的に吸収することができるので、アンカーの翼状部又は鉤状部に加えられるこれらの力の影響を低減することができる。所定の組織環境において、可撓性シャフトは、アンカーによる梃子作用を阻止する可能性を高め、そしてこれによりアンカーが組織から部分的又は完全に引き出されるのを阻止することができる。
【0057】
さらに、アンカー50、200、4200は、2010年1月20日付けで出願された米国仮特許出願第61/296,868号明細書、2011年1月20日付けで出願された米国特許出願第13/010,766号明細書、及び2014年6月10日付けで出願された米国特許出願第14/301,106号明細書に開示されたファスナ又は他の類似のインプラントの特徴のうちのいずれかを含んでいてよく、また上記明細書に開示された任意のメカニズムを使用して駆動されてよい。上記明細書のそれぞれは、参照により本明細書に完全に開示されているかのようにその全体が本明細書中に援用される。
【0058】
アンカーを発射させるために、ドライバの近位端に力送達システムが配置されている。力送達システムは瞬間に近い力伝達の任意のメカニズム、例えばばね、ガス、圧縮流体、又は同種のものを用いることができる。ドライバのシャフトを通して伝達される。シャフトは用途に応じて、剛性シャフト又は可撓性シャフトであってよい。力はシャフトの遠位端で発射メカニズムを変位させるために用いられ、発射メカニズムはアンカーに駆動力を加えることにより、発射アームからアンカーを駆動してこれを人工弁及び周囲組織内へ押し込む。駆動力は用途に応じて、ドライバの遠位方向に力を向ける押圧力送達システム、又はドライバの近位方向に力を向ける引張り力送達システムから生じてよい。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、
図13〜20に示されているように、複数の発射アームがアプリケータの周りに設けられていてよい。
図13及び14に示されたドライバ60は、管状ガイド63の周りに環状に配置された複数の発射アーム61を遠位端に有している。ガイド63はガイド43と極めて類似してアプリケータシャフトを取り囲んでよい。発射アーム61はドライバに対して引き込み位置にあり、そしてドライバの軸線に対して平行である。
図14はまた発射アーム61内に設けられたアンカー4200を示している。アンカー出口から駆動されてリング10及び周囲組織内へ押し込まれる前に鉤状部4207、4208が発射アーム61内に弛緩位置で貯えられるのを、窓64が可能にする。
【0060】
図15及び16は、発射アームが引き込み位置から発射位置へ移動させられたドライブ60を示している。
図13及び14の引き込み位置から
図15及び16の発射位置への発射アームの移動は、例えばねじ又はスライディングメカニズムによって、又は任意の他の機械的操作によって、移動する力を手動で又は電気的に作動させることによって達成することができる。発射アーム61は、ドライバの遠位端でドライバ60にヒンジ結合されているので、発射アーム61はヒンジ及びドライバ60の遠位端よりも近位側の位置から半径方向外側へ向かって開く。発射アームの発射位置は、ドライバ60の軸線から90度未満の角度を成していてよい。発射アーム61の鋭角の角度は、リング10及び周囲組織内への角度付きアンカー送達を可能にし、ひいては、周囲組織内のアンカーの配置をより高度に制御するのを可能にする。
【0061】
図16に示されているように、発射アーム61は、アンカー4200をアンカー出口62を通して駆動するために発射メカニズム65とフィンガ66とを含んでいる。発射メカニズム65及びフィンガ66にはガイド63が結合されているので、近位側へ向いた力又は引張り力をガイドに加えると、近位方向に作用する力を発射メカニズム65及びフィンガ66へ移動させることになる。フィンガ66はアンカー4200のショルダ4240に当接し、そして発射メカニズム65及びフィンガ66からアンカー4200へ伝達することができる。
【0062】
図17、18、19、20はアンカー4200の発射を示している。アンカー4200は、近位側へ向いた力又は引張り力を加えることにより発射され、ドライバ60に対して近位方向にガイド63を引張る。
図17及び18に示されているように、ガイド63は発射アーム61のヒンジ状端部とほぼ同じ高さに引きつけられ、そして
図19及び20に示されているように、ガイド63は発射アーム61のヒンジ状端部に対して埋め込まれた位置へ引きつけられる。ガイド63を引きつける、近位側へ向いた力は発射メカニズム65へ、そしてフィンガ66に伝達される。次いでフィンガ66はアンカー4200のショルダ4240へ駆動力を伝達し、アンカー4200をアンカー出口62を通して駆動してリング10及び周囲組織内へ押し込む。こうして発射アーム61の全てはアンカー4200を同時に発射することができる。
【0063】
さらに、本明細書中に記載された植え込み可能なエレメント、例えばアンカー50、200、4200、及びリング10、リーフレット30、弁ストラット31、又は心臓弁置換プロテーゼ1の任意の他のエレメントは、例えば特定の用途に応じて、全体的又は部分的に、患者の体内に吸収され得る材料から、又は非吸収性材料から形成されていてよい。例えば、これらのエレメントはポリグリコール酸(PGA)、又はPGAコポリマーから形成されていてよい。これらのエレメントはさらに、又はその代わりに、ポリエステル及び/又はナイロン及び/又は他のポリマーのコポリマーから形成されていてよい。さらに、これらのエレメントは1つ又は2つ以上の形状記憶合金、例えばニチノール、ばね負荷鋼、又は適宜な特性を有する他の合金又は材料を含有していてよい。
【0064】
吸収性材料は、種々のインプラントの不発又は不適切な配置の可能性がある場合に有利である。例えば、ドライバがアンカー50、200、4200を意図されない個所で駆動する状況、又は組織がアンカー50、200、4200を適切に受容しない状況において、アンカー50、200、4200は、必要とされない場合でも、最終的には患者の体内に吸収されるので比較的無害である。
【0065】
具体例としての心臓弁置換プロテーゼシステムを上述したが、しかし本明細書中に記載されたシステム及び装置はこれらの例には全く限定されない。
【0066】
具体例及び好ましい実施形態を参照しながら本発明を説明したが、言うまでもなく、前記記述は決して制限的ではない。さらに、本明細書中に記載された特徴は任意の組み合わせにおいて用いることができる。