特許第6633551号(P6633551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6633551表面効果組成物のためのワックス及びウレタン系エクステンダーブレンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633551
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】表面効果組成物のためのワックス及びウレタン系エクステンダーブレンド
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/395 20060101AFI20200109BHJP
   D06M 13/02 20060101ALI20200109BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20200109BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20200109BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   D06M13/395
   D06M13/02
   C08G18/00 C
   C08G18/42
   C08G18/48 033
【請求項の数】15
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-572646(P2016-572646)
(86)(22)【出願日】2015年6月2日
(65)【公表番号】特表2017-523266(P2017-523266A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】US2015033639
(87)【国際公開番号】WO2015191326
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2018年5月21日
(31)【優先権主張番号】62/011,088
(32)【優先日】2014年6月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/055,930
(32)【優先日】2014年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン クリストファー スウォーレン
(72)【発明者】
【氏名】エワ クーラー
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド オロンデ ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】タチアナ ハイドジンスカヤ
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−245913(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0085573(US,A1)
【文献】 特開平08−246355(JP,A)
【文献】 特表2016−522330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00− 18/87
D06M 13/00− 13/535
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維質基材を処理する方法であって、i)ワックスとii)ポリマーエクステンダー化合物とを含む水性分散体の形態の組成物に前記繊維質基材を接触させることを含み、前記ポリマーエクステンダー化合物が、
(i)(a)ジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はこれらの混合物から選択される少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物と、
(b)式(Ia)、(Ib)、もしくは(Ic)から選択される少なくとも1つのイソシアネート反応性化合物、又はこれらの混合物と、を反応させることによって調製される化合物である繊維質基材を処理する方法:
【化1】
【化2】
【化3】
(式中、各Rは、独立して、−H、−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2
又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり、
各nは、独立して、0〜20であり、
各mは、独立して、0〜20であり、
m+nは、0よりも大きく、
各R1は、独立して、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む5〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、
各R2は、独立して、−H、又は任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であるが、
但し、前記化合物が式(Ia)で表される場合、R又はR2のうちの少なくとも1つが−Hであり、
各R3は、独立して、−H、−R1、−
C(O)R1、−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'2
又は−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'C(O)R1であり、
各R4は、独立して、−H、又は任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又はこれらの組み合わせ、−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'2
又は−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'C(O)R1であり、
各n’は、独立して、0〜20であり、
各m’は、独立して0〜20であり、
m’+n’は、0よりも大きいが、
但し、前記化合物が式(Ib)で表される場合、少なくとも1つのR2、R3又はR4が−Hであり、そして、
各R19は、−H、−C(O)R1、又は−CH2C[CH2OR]3であるが、
但し、前記化合物が式(Ic)で表される場合、少なくとも1つのR19又はRが−Hである)。
【請求項2】
工程(i)が、更に、(c)式(IIIa)で表される少なくとも1つの第2の化合物
5−X (IIIa)、
式(IIIb)で表される少なくとも1つの有機化合物
15−(OCH2CH(OR16)CH2z−OR17 (IIIb)、
又はこれらの混合物を反応させることを含む、請求項1に記載の方法:(式中、
5は、任意選択的に少なくとも1つの不飽和基を含む−C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキル、ヒドロキシ官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキル、ヒドロキシ官能性直鎖又は分岐鎖C1〜C30ポリエーテル、ヒドロキシ官能性直鎖又は分岐鎖ポリエステル、ヒドロキシ又はアミン官能性直鎖又は分岐鎖オルガノシロキサン、チオール官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキル、アミン官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキル、
【化4】
から選択され、
式中、
7、R8、及びR9は、それぞれ独立して、−H、−C1〜C6アルキル、又はこれらの組み合わせであり、
10は、1〜20個の炭素を有する二価アルキル基であり、
Xは、−OH、−C(O)OH、−SH、−NH(R12)、−O−(CH2CH2O)s(CH(CH3)CH2O)t−H、
又は−[C(O)]−O−(CH2CH2O)s(CH(CH3)CH2O)t−Hから選択されるイソシアネート反応性基であり、
12は、−H又は一価のC1〜C6アルキル基であり、
15、R16、及びR17は、それぞれ独立して、−H、−R18、−C(O)R18であるが、但し、少なくとも1つのR15、R16、又はR17は、−Hであり、
18は、独立して、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む5〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、
zは、1〜15であり、
Yは、−Clであり、
sは、0〜50の整数であり、
tは、0〜50の整数であり、
s+tは、0よりも大きい)。
【請求項3】
前記ワックスが、蜜ろう、微結晶ろう、酸化微結晶ろう、パラフィンろう、モンタンろう、オゾケライトろう、カルナウバろう、キャンデリラろう、シュロろう、鯨ろう、ラノリン、サトウキビろう、糖エステル、ポリオレフィンろう、モノ−、ジ−、若しくはトリグリセリドエステル、脂肪酸エステルろう、又はこれらのブレンドから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ワックスが、シリコーンワックス、シリコーンワックスのブレンド、又はシリコーンワックスと少なくとも1つの非シリコーンワックスとのブレンドから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記イソシアネート反応性化合物(b)が、式(Ia)から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項2に記載の方法:
【化5】
(式中、各Rは、独立して、−H、−R1、又は−C(O)R1である)。
【請求項6】
前記(b)が、式(Ia)から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項2に記載の方法:
【化6】
(式中、各Rは、独立して、−H、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1である)。
【請求項7】
前記イソシアネート反応性化合物(b)が、式(Ib)から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項2に記載の方法:
【化7】
【請求項8】
前記エクステンダー化合物の前記ワックスに対する比が、約1:10〜約10:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、ブロックイソシアネートを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記繊維質基材が、繊維、織物、布地、混紡布地、紙、不織布、皮革、又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法によって処理された繊維質基材。
【請求項12】
i)ワックスとii)ポリマーエクステンダー化合物とを含む、繊維質基材を処理するための水性分散体の形態の組成物であって、前記ポリマーエクステンダー化合物が、
(i)(a)ジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はこれらの混合物から選択される少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物と、
(b)式(Ia)、(Ib)、もしくは(Ic)から選択される少なくとも1つのイソシアネート反応性化合物、又はこれらの混合物と、を反応させることによって調製される化合物である繊維質基材を処理するための組成物:
【化8】
【化9】
【化10】
(式中、各Rは、独立して、−H、−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2
又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり、
各nは、独立して、0〜20であり、
各mは、独立して、0〜20であり、
m+nは、0よりも大きく、
各R1は、独立して、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む5〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、
各R2は、独立して、−H、又は任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であるが、
但し、前記化合物が式(Ia)で表される場合、R又はR2のうちの少なくとも1つが−Hであり、
各R3は、独立して、−H、−R1
−C(O)R1、−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'2
又は−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'C(O)R1であり、
各R4は、独立して、−H、又は任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又はこれらの組み合わせ、−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'2
又は−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'C(O)R1であり、
各n’は、独立して、0〜20であり、
各m’は、独立して0〜20であり、
m’+n’は、0よりも大きいが、
但し、前記化合物が式(Ib)で表される場合、少なくとも1つのR2、R3又はR4が−Hであり、そして、
各R19は、−H、−C(O)R1、又は−CH2C[CH2OR]3であるが、
但し、前記化合物が式(Ic)で表される場合、少なくとも1つのR19又はRが−Hである)。
【請求項13】
工程(i)が、更に、(c)式(IIIa)で表される少なくとも1つの第2の化合物
5−X (IIIa)、
式(IIIb)で表される少なくとも1つの有機化合物
15−(OCH2CH(OR16)CH2)z−OR17 (IIIb)、
又はこれらの混合物を反応させることを含む、請求項12に記載の組成物:(式中、
5は、任意選択的に少なくとも1つの不飽和基を含む−C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキル、ヒドロキシ官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキル、ヒドロキシ官能性直鎖又は分岐鎖C1〜C30ポリエーテル、ヒドロキシ官能性直鎖又は分岐鎖ポリエステル、ヒドロキシ又はアミン官能性直鎖又は分岐鎖オルガノシロキサン、チオール官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキル、アミン官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキル、
【化11】
から選択され、
式中、
7、R8、及びR9は、それぞれ独立して、−H、−C1〜C6アルキル、又はこれらの組み合わせであり、
10は、1〜20個の炭素を有する二価アルキル基であり、
Xは、−OH、−C(O)OH、−SH、−NH(R12)、−O−(CH2CH2O)s(CH(CH3)CH2O)t−H、
又は−[C(O)]−O−(CH2CH2O)s(CH(CH3)CH2O)t−Hから選択されるイソシアネート反応性基であり、
12は、−H又は一価のC1〜C6アルキル基であり、
15、R16、及びR17は、それぞれ独立して、−H、−R18、−C(O)R18であるが、但し、少なくとも1つのR15、R16、又はR17は、−Hであり、
18は、独立して、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む5〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、
zは、1〜15であり、
Yは、−Clであり、
sは、0〜50の整数であり、
tは、0〜50の整数であり、
s+tは、0よりも大きい)。
【請求項14】
前記ワックスが、蜜ろう、微結晶ろう、酸化微結晶ろう、パラフィンろう、モンタンろう、オゾケライトろう、カルナウバろう、キャンデリラろう、シュロろう、鯨ろう、ラノリン、サトウキビろう、糖エステル、ポリオレフィンろう、モノ−、ジ−、若しくはトリグリセリドエステル、脂肪酸エステルろう、又はこれらのブレンドから選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記ワックスが、シリコーンワックス、シリコーンワックスのブレンド、又はシリコーンワックスと少なくとも1つの非シリコーンワックスとのブレンドから選択される、請求項12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
炭化水素ポリマーは、処理された基材に表面効果を与えるワックス処理剤の性能を向上させるためのエクステンダーとして使用される。
【背景技術】
【0002】
基材、特に、繊維、布地、織物、カーペット、紙、皮革、及び他のこのような基材等の繊維質基材に対して表面効果を与えるための処理剤として、様々な組成物が有用であることが知られている。例えば、繊維質基材処理剤としての有用性を有するフッ素化ポリマー組成物は、一般的に、該組成物を繊維質基材表面に塗布したときに撥油性及び撥水性を与える、3個以上の炭素原子のペンダントパーフルオロアルキル基を含有する。パーフルオロアルキル基は、一般的に、様々な連結基によってフッ素を含有しない重合性基と結合する。次いで、得られたモノマーを、一般的に、更なる有益な特性を基材に付与する他のモノマーと共重合させる。これらポリマーは、一般的に、繊維質基材に容易に塗布できるように水性エマルジョンとして市販されている。
【0003】
必要とされるフッ素化ポリマーの量を減らすと同時に、基材に付与される撥油性及び撥水性、並びにその耐久性を増大させる、すなわち、処理剤の効率又は性能を高めるための試みが行われてきた。別のアプローチでは、様々なエクステンダーポリマーを使用する。これらは、典型的には、基材に塗布する前にフッ素化ポリマーエマルジョンとブレンドされる、水性エマルジョン状態の炭化水素ポリマーである。フッ素化材料の代用として、基材に撥水性を与えるためにワックス及びワックスブレンドが使用されている。
【0004】
米国特許第7,344,758号には、フッ素化アクリレートコポリマーを含有する、撥油性及び/又は撥水性を基材に付与するのに好適なエマルジョンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,344,758号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ワックス処理剤の表面効果を著しく向上させるポリマー組成物が必要とされている。具体的には、必要とされるフッ素化材料の量を減らすか又はなくすと同時に、基材に対する表面効果の耐久性を向上させる組成物が必要とされている。本発明は、このような組成物を提供する。
【0007】
本発明は、基材を処理する方法であって、i)ワックスとii)ポリマーエクステンダー組成物とを含む組成物に前記基材を接触させることを含み、前記ポリマーエクステンダー組成物が、
(i)(a)イソシアネート、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はこれらの混合物から選択される少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物と、
(b)式(Ia)、(Ib)、又は(Ic)から選択される少なくとも1つのイソシアネート反応性化合物と、を反応させることによって調製される化合物を含む、基材を処理する方法を含む。
【0008】
【化1】
(式中、各Rは、独立して、−H、−R1、−
C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2
又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり、各nは、独立して、0〜20であり、各mは、独立して、0〜20であり、m+nは、0よりも大きく、各R1は、独立して、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む5〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、各R2は、独立して、−H、又は任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であるか、あるいはこれらの混合物であるが、但し、前記化合物が式(Ia)で表される場合、R又はR2のうちの少なくとも1つが−Hであり、各R3は、独立して、−H、−R1
−C(O)R1、−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'2
又は−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'C(O)R1であり、各R4は、独立して、−H、又は任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又はこれらの組み合わせ、
−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'2
又は−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'C(O)R1であり、各n’は、独立して、0〜20であり、各m’は、独立して0〜20であり、m’+n’は、0よりも大きいが、但し、前記化合物が式(Ib)で表される場合、少なくとも1つのR2、R3又はR4が−Hであり、各R19は、−H、−C(O)R1、又は−CH2C[CH2OR]3であるが、但し、前記化合物が式(Ic)で表される場合、少なくとも1つのR19又はRが−Hである。)
【0009】
本発明は、更に、ワックス及び上記エクステンダー組成物を含む組成物であって、基材に塗布したときに表面効果を与える組成物で処理された基材を含む。
【0010】
本発明は、更に、i)ワックスとii)ポリマーエクステンダー組成物とを含む、基材を処理するための組成物であって、前記ポリマーエクステンダー組成物が、(i)(a)イソシアネート、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はこれらの混合物から選択される少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物と、(b)式(Ia)、(Ib)、又は(Ic)から選択される少なくとも1つのイソシアネート反応性化合物と、を反応させることによって調製される化合物を含む、基材を処理するための組成物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、商標は大文字で示す。
【0012】
本発明は、基材を処理する方法であって、i)ワックスとii)ポリマーエクステンダー組成物とを含む組成物に基材を接触させることを含み、該リマーエクステンダー組成物が、(i)(a)イソシアネート、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はこれらの混合物から選択される少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物と、(b)式(Ia)、(Ib)、又は(Ic)から選択される少なくとも1つのイソシアネート反応性化合物と、を反応させることによって調製される化合物を含む、基材を処理する方法を含む。(式中、各Rは、独立して、−H、−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2
又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり、各nは、独立して、0〜20であり、各mは、独立して、0〜20であり、m+nは、0よりも大きく、各R1は、独立して、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む5〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、各R2は、独立して、−H、又は任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であるか、あるいはこれらの混合物であるが、但し、該化合物が式(Ia)で表される場合、R又はR2のうちの少なくとも1つが−Hであり、各R3は、独立して、−H、−R1
−C(O)R1、−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'2
又は−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'C(O)R1であり、各R4は、独立して、−H、又は任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又はこれらの組み合わせ、
−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'2
又は−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'C(O)R1であり、各n’は、独立して、0〜20であり、各m’は、独立して0〜20であり、m’+n’は、0よりも大きいが、但し、該化合物が式(Ib)で表される場合、少なくとも1つのR2、R3又はR4が−Hであり、各R19は、−H、−C(O)R1、又は−CH2C[CH2OR]3であるが、但し、該化合物が式(Ic)で表される場合、少なくとも1つのR19又はRが−Hである。)
【0013】
具体的には、エクステンダー組成物は、耐久性のある撥性を繊維質基材に付与する際に、フッ素化ポリマーの性能を向上させるために有用である非フッ素化ウレタンである。繊維質基材としては、繊維、織物、紙、不織布、皮革、カーペット、布地、混紡布地、又はこれらの組み合わせが挙げられる。「布地」とは、例えば、綿、レーヨン、絹、羊毛、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ナイロン、並びに「NOMEX」及び「KEVLAR」等のアラミド等の繊維からなる、天然布地若しくは合成布地、又はこれらの混紡を意味する。「混紡布地」とは、2種類以上の繊維で作られた布地を意味する。典型的には、これら混紡は、少なくとも1つの天然繊維と少なくとも1つの合成繊維との組み合わせであるが、2つ以上の天然繊維又は2つ以上の合成繊維の混紡である場合もある。
【0014】
繊維質基材に塗布する前に本発明のエクステンダー組成物を表面処理剤に添加することによって、低黄変及び良好な耐久性という望ましい特性に加えて、優れた耐久性のある表面特性が繊維質基材に付与される。これら組み合わせブレンドは、他の処理化学薬品の塗布前、塗布後又は塗布中のいずれかに、水又は他の溶媒中の分散体の形態で繊維質基材に塗布される。
【0015】
そのように塗布されたとき、ワックスと組み合わされた本発明において有用なエクステンダー組成物は、具体的には、洗濯後の繊維質基材において、表面特性、特に撥油性及び撥水性の耐久性を50%も向上させることが見出された。他の公知のエクステンダー組成物と比較して、撥性の耐久性が改善される。更に、本発明のエクステンダー組成物を使用することによって、フッ素化材料の必要がなくなり、このことは、業界において望ましい。
【0016】
エクステンダー組成物分散体をワックスと混合することによって作製される水性分散体ブレンドは、公知の方法によって繊維質基材の表面に塗布されて、撥油性、防汚性、及び撥水性、並びに他の表面効果を付与する。本発明の処理剤−エクステンダー組成物の使用の際立った特徴は、基材上の表面仕上げの耐久性が高いことである。
【0017】
本発明において有用なエクステンダー組成物は、
(i)(a)イソシアネート、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はこれらの混合物から選択される少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物と、
(b)式(Ia)、(Ib)、又は(Ic)から選択される少なくとも1つのイソシアネート反応性化合物と、を反応させることによって調製される化合物を含む。
【0018】
【化2】
(式中、各Rは、独立して、−H、−R1
−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2
又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり、各nは、独立して、0〜20であり、各mは、独立して、0〜20であり、m+nは、0よりも大きく、各R1は、独立して、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む5〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、各R2は、独立して、−H、又は任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であるか、あるいはこれらの混合物であるが、但し、該化合物が式(Ia)で表される場合、R又はR2のうちの少なくとも1つが−Hであり、各R3は、独立して、−H、−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'2
又は−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'C(O)R1であり、各R4は、独立して、−H、又は任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又はこれらの組み合わせ、
−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'2
又は−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'C(O)R1であり、各n’は、独立して、0〜20であり、各m’は、独立して0〜20であり、m’+n’は、0よりも大きいが、但し、該化合物が式(Ib)で表される場合、少なくとも1つのR2、R3又はR4が−Hであり、各R19は、−H、−C(O)R1、又は−CH2C[CH2OR]3であるが、但し、該化合物が式(Ic)で表される場合、少なくとも1つのR19又はRが−Hである。)
【0019】
式(Ia)、(Ib)、又は(Ic)で表される化合物について、−(CH2CH2O)−は、オキシエチレン基(EO)を表し、−(CH(CH3)CH2O)−は、オキシプロピレン基(PO)を表す。これら化合物は、EO基のみ、PO基のみ、又はこれらの混合物を含有し得る。これら化合物は、例えば、PEG−PPG−PEG(ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール)と表記されるトリブロックコポリマーとしても存在し得る。
【0020】
1つの実施形態では、ポリマーエクステンダー化合物は、(i)(a)少なくとも1つのイソシアネート基含有イソシアネート、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はこれらの混合物と、式(Ia)で表される化合物とを反応させることによって調製される。1つの実施形態では、少なくとも1つのRは、−C(O)R1又はR1である。式(Ia)で表される化合物(式中、Rのうちの少なくとも1つは−Hであり、少なくとも1つのRは、−C(O)R1から選択される)は、アルキルソルビタンとして一般的に知られている。これらソルビタンは、−C(O)R1で一置換、二置換、又は三置換することができる。SPAN等の市販のソルビタンは、各RがHである(非置換)ソルビタンから、各Rが−C(O)R1(式中、R1は、5〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である)である(完全に置換されている)ソルビタンに及ぶ様々なソルビタンの混合物、並びにこれらの様々な置換体の混合物を含有することが知られている。また、市販のソルビタンは、ソルビトール、イソソルビド、又は他の中間体若しくは副生成物の量を含んでもよい。
【0021】
1つの好ましい実施形態では、少なくとも1つのRは、−C(O)R1であり、R1は、5〜29個の炭素、より好ましくは7〜21個の炭素、最も好ましくは11〜21個の炭素を有する直鎖・分岐鎖アルキル基である。好ましい化合物としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミステリン酸(mysteric acid)、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、及びこれらの混合物から誘導される、一置換、二置換、及び三置換ソルビタンが挙げられる。特に好ましい化合物としては、一置換、二置換、及び三置換ソルビタンステアレート又はソルビタンベヘニンが挙げられる。
【0022】
任意選択的に、R1は、少なくとも1つの不飽和結合を含む、5〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である。少なくとも1つのRが−C(O)R1から選択され、R1が少なくとも1つの不飽和結合を含有する式(Ia)で表される化合物の例としては、ソルビタントリオレエート(すなわち、式中、R1は、−C714CH=CHC817である)が挙げられるが、これに限定されない。他の例としては、パルミトレイン酸、リノール酸(lineolic acid)、アラキドン酸、及びエルカ酸から誘導される、一置換、二置換、及び三置換ソルビタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
1つの実施形態では、式(Ia)で表される化合物(式中、少なくとも1つのR
は、独立して、
−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は
−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1である)を使用する。式(Ia)で表される化合物(式中、少なくとも1つのRは、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2
又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり、各mは、独立して、0〜20であり、各nは、独立して、0〜20であり、n+mは、0よりも大きい)は、ポリソルベートとして知られており、商標名TWEENとして市販されている。これらポリソルベートは、アルキル基R1又はR2で、一置換、二置換、又は三置換することができる。市販のポリソルベートは、各R2がHである(非置換)ポリソルベートから、各R1が5〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である(完全に置換されている)ポリソルベートに及ぶ様々なポリソルベートの混合物、並びにこれらの様々な置換体の混合物を含有することが知られている。式(Ia)で表される化合物の例としては、ポリソルベートトリステアレート及びポリソルベートモノステアレート等のポリソルベートが挙げられる。式(Ia)で表される化合物(式中、m+nは、0よりも大きく、R1は、少なくとも1つの不飽和結合を含む)の例としては、ポリソルベートトリオレエート(式中、R1は、C714CH=CHC817である)が挙げられるが、これに限定されず、ポリソルベート80という名称で市販されている。試薬は、R、R1、及びR2が様々な値を有する化合物の混合物を含んでもよく、また、R1が少なくとも1つの不飽和結合を含む化合物と、R1が完全に飽和している化合物との混合物を含んでもよい。
【0024】
別の実施形態では、アルキルシトレートとして知られている式(1b)で表される化合物を用いる。これらシトレートは、アルキル基R1又はR2で、一置換、二置換、又は三置換されたものとして存在することができる。市販のシトレートは、R3及び各R4が−Hであるシトレートから、各R4が任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む6〜30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であるシトレートに及ぶ様々なシトレート及びクエン酸の混合物、並びにこれらの様々な置換体の混合物を含有することが知られている。R1、R2、R3、及びR4が様々な値を有するシトレートの混合物を使用してもよく、また、R1が少なくとも1つの不飽和結合を有する化合物と、R1が完全に飽和している化合物との混合物を含んでもよい。また、m’+n’が、0よりも大きく、R4
が、−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'2
又は−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'C(O)R1であるアルキルシトレートが市販されており、R3及び各R2がHであるものから、各R1及び/又はR2が任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む5〜30個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であるものに及ぶ様々な置換体で存在する。式(Ib)で表される化合物の例としては、トリアルキルシトレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
別の実施形態では、ペンタエリスリトールエステルとして知られている式(1c)で表される化合物を用いる。これらペンタエリスリオールエステルは、アルキル基R1又はR2で一置換、二置換、又は三置換されたものとして存在し得る。好ましい式(Ic)で表される化合物は、ジペンタエリスリオールエステル(式中、R19は、−CH2C[CH2OR]3である)である。市販のペンタエリスリオールエステルは、R19及び各Rが−Hであるペンタエリスリオールエステルから、各Rが−C(O)R1であり、R1が、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む5〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であるペンタエリスリオールエステルに及ぶ様々なペンタエリスリオールエステルの混合物、並びにこれらの様々な置換体の混合物を含有することが知られている。また、ペンタエリスリオールエステルは、Rの鎖長が異なる混合物を有する化合物を含有してもよい。また、ペンタエリスリオールエステルは、Rの鎖長が異なる混合物、又はR1が少なくとも1つの不飽和結合を含む化合物とR1が完全に飽和している化合物との混合物を含む化合物を含有してもよい。
【0026】
式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)で表される化合物は、全て生物系由来であり得る。用語「生物系由来」とは、材料の少なくとも10%を、植物、他の草木、及び獣脂等の非原油源から作製できることを意味する。1つの実施形態では、式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)で表される化合物は、約10%〜100%生物系である。1つの実施形態では、式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)で表される化合物は、約35%〜100%生物系である。1つの実施形態では、式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)で表される化合物は、約50%〜100%生物系である。1つの実施形態では、式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)で表される化合物は、約75%〜100%生物系である。1つの実施形態では、式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)で表される化合物は、100%生物系である。式(Ia)、(Ib)、及び(Ic)のそれぞれの少なくとも1つのR、R3、R4、R19は、イソシアネート基との反応を可能にするために−Hである。化合物の平均OH値は、0超〜約230、好ましくは約10〜約175、最も好ましくは約25〜約140の範囲であり得る。
【0027】
本発明のポリマーエクステンダー化合物を作製するには、式(Ia)、(Ib)、若しくは(Ic)で表される化合物、又はこれらの混合物を、イソシアネート基含有イソシアネート、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はこれらの混合物と反応させる。イソシアネート基含有化合物は、ポリマーの分岐性を増加させる。用語「ポリイソシアネート」は、二官能性以上のイソシアネートと定義され、この用語はオリゴマーを含む。主に2つ以上のイソシアネート基を有する任意のモノイソシアネート若しくはポリイソシアネート、又は主に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートの任意のイソシアネート前駆体が、本発明で使用するのに好適である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートホモポリマーが、本明細書で使用するのに好適であり、これは市販されている。少量のジイソシアネートが、複数のイソシアネート基を有する生成物中に残存し得ることが認識されている。その一例は、残存する少量のヘキサメチレンジイソシアネートを含有するビウレットである。
【0028】
また、炭化水素ジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート三量体も、ポリイソシアネート反応物質として使用するのに好適である。好ましいのは、DESMODUR N−100(Bayer Corporation(Pittsburgh,PA)から入手可能なヘキサメチレンジイソシアネートベース)である。本発明の目的に有用な他のトリイソシアネートは、3モルのトルエンジイソシアネートを反応させることによって得られるものである。メタン−トリス−(フェニルイソシアネート)と同様に、トルエンジイソシアネートのイソシアヌレート三量体及び3−イソシアナトメチル−3,4,4−トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのイソシアヌレート三量体は、本発明の目的に有用なトリイソシアネートの他の例である。また、ジイソシアネート等のポリイソシアネートの前駆体も、本発明においてポリイソシアネートのための基材として使用するのに好適である。また、Bayer Corporation(Pittsburgh,PA)製のDESMODUR N−3300、DESMODUR N−3600、DESMODUR Z−4470、DESMODUR H、DESMODUR N3790、及びDESMODUR XP 2410、並びにビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタンも、本発明において好適である。
【0029】
好ましいポリイソシアネート反応物質は、ビウレット構造を含有する脂肪族及び芳香族ポリイソシアネート、又はポリジメチルシロキサン含有イソシアネートである。また、このようなポリイソシアネートは、脂肪族置換基及び芳香族置換基の両方を含有することができる。
【0030】
本明細書における本発明の全ての実施形態について(ポリ)イソシアネート反応物質として特に好ましいのは、例えば、DESMODUR N−100、DESMODUR N−75、及びDESMODUR N−3200としてBayer Corporation(Pittsburgh,PA)から市販されているヘキサメチレンジイソシアネートホモポリマー;例えば、DESMODUR I(Bayer Corporation)として入手可能な3−イソシアナトメチル−3,4,4−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート;例えば、DESMODUR W(Bayer Corporation)として入手可能なビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン;並びに式(IIa)、(IIb)、(IIc)、(IId)、及び(IIe)で表されるジイソシアネートトリマーである。
【0031】
【化3】
【0032】
ジイソシアネート三量体(IIa〜e)は、例えば、DESMODUR Z4470、DESMODUR IL、DESMODUR N−3300、及びDESMODUR XP2410、並びにDESMODUR N100としてそれぞれBayer Corporationから入手可能である。
【0033】
1つの実施形態では、(a)少なくとも1つのイソシアネート含有化合物と、(b)イソシアネート反応性化合物との反応生成物は、未反応のイソシアネート基を含有し、これは、更に、(c)水、式(IIIa)で表される有機化合物:
5−X (IIIa)、
式(IIIb)で表される有機化合物:
15−(OCH2CH(OR16)CH2z−OR17 (IIIb)、
から選択される少なくとも1つの第2の化合物、又はこれらの混合物と反応し、式中、R5は、任意選択的に少なくとも1つの不飽和基を含む−C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキル、ヒドロキシ官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキル、ヒドロキシ官能性直鎖又は分岐鎖C1〜C30ポリエーテル、ヒドロキシ官能性直鎖又は分岐鎖ポリエステル、ヒドロキシ官能性直鎖又は分岐鎖オルガノシロキサン、チオール官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキル、アミン官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキル、
【0034】
【化4】
から選択され、
7、R8、及びR9は、それぞれ独立して、−H、−C1〜C6アルキル、又はこれらの組み合わせであり、R10は、1〜20個の炭素を有する二価アルキル基であり、Xは、−OH、−C(O)OH、−SH、−NH(R12)、−O−(CH2CH2O)s(CH(CH3)CH2O)t−H、
又は−[C(O)]−O−(CH2CH2O)s(CH(CH3)CH2O)t−H等のイソシアネート反応性官能基であり、R12は、−H又は一価C1〜C6アルキル基であり、R15、R16、及びR17は、それぞれ独立して、−H、−R18、−C(O)R18であるが、但し、少なくとも1つのR15、R16、又はR17は、−Hであり、R18は、独立して、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む5〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、zは、1〜15であり、Yは、−Clであり、sは、0〜50の整数であり、tは、0〜50の整数であり、s+tは、0よりも大きい。用語「分岐」とは、本明細書で使用するとき、官能性鎖が、例えば、四級置換炭素として任意の点で分岐することができ、かつ任意の数の分岐置換を含有することができることを意味する。
【0035】
1つの実施形態では、第2の化合物が存在し、上記イソシアネート基の約0.1モル%〜約60モル%と反応する。好ましくは、イソシアネート反応性化合物(b)の化合物の濃度は、第2の化合物(c)の濃度よりも高い。
【0036】
1つの実施形態では、ポリマーエクステンダー化合物の第2の化合物(c)は、水である。水は、未反応のイソシアネート基を尿素結合によって架橋するために使用することができる。更なる実施形態では、第2の化合物(c)は、式(IIIa)で表される。式(IIIa)で表される化合物は、式(IIIa)(式中、イソシアネート反応性基Xは、−O−(CH2CH2O)s(CH(CH3)CH2O)t−H又は
−[C(O)]−O−(CH2CH2O)s(CH(CH3)CH2O)t−Hである)で表される少なくとも1つのヒドロキシ末端ポリエーテルを含む親水性の水和性物質であってよい。この実施形態では、−(CH2CH2O)−は、オキシエチレン基(EO)を表し、−(CH(CH3)CH2O)−は、オキシプロピレン基(PO)を表す。これらポリエーテルは、EO基のみ、PO基のみ、又はこれらの混合物を含有し得る。これらポリエーテルは、PEG−PPG−PEG(ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール)と表記されるトリブロックコポリマーとしても存在し得る。好ましくは、ポリエーテルは、市販のメトキシポリエチレングリコール(MPEG)又はその混合物である。等重量のオキシエチレン基及びオキシプロピレン基を含有し(Union Carbide Corp.50−HB Series UCON Fluids and Lubricants)、かつ約1000超の平均分子量を有するブトキシポリオキシアルキレンも市販されており、本発明の組成物の調製に好適である。式(IIIa)で表されるヒドロキシ末端ポリエーテルは、好ましくは、約200以上、最も好ましくは350〜2000の平均分子量を有する。
【0037】
別の実施形態では、第2の化合物(c)は、式(IIIa)(式中、イソシアネート反応性基Xは、−OH、−C(O)OH、−SH、−NH(R12)であり、R5は、任意選択的に少なくとも1つの不飽和基を含む−C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキル、ヒドロキシ官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキル、ヒドロキシ官能性直鎖又は分岐鎖C1〜C30ポリエーテル、ヒドロキシ官能性直鎖又は分岐鎖ポリエステル、ヒドロキシ又はアミン官能性直鎖又は分岐鎖オルガノシロキサン、チオール官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキル、アミン官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキルから選択される)で表される有機化合物である。
【0038】
イソシアネート反応性基Xが、−OHである場合、式(IIIa)の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:プロパノール、ブタノール、又はステアリルアルコールを含む脂肪族アルコール等のアルキルアルコール(R5は、任意選択的に少なくとも1つの不飽和基を含む−C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキルである);エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、又はヘキサンジオール等のアルキルジオール又はポリオール(R5は、ヒドロキシ官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキルである);トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(テトラヒドロフラン)、又はPEG、PPG、若しくはTHF単位の混合物を有するグリコールエーテル等のアルキレングリコールエーテル(R5は、ヒドロキシ官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖ポリエーテルである);ポリエステルポリオール(R5は、ヒドロキシ官能性直鎖又は分岐鎖ポリエステルである);シリコーンプレポリマーポリオール(R5は、ヒドロキシ官能性直鎖又は分岐鎖オルガノシロキサンである);N,N−ジメチルアミノエタノール(R5は、アミン官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキルである);塩化コリン又はベタインHCl(R5は、Y-(R7)(R8)(R9)N+10−である);ブタノンオキシム(R5は、(R7)(R8)C=N−である)。ポリエーテルポリオールは、EO基のみ、PO基のみ、THF基のみ、又はこれらの混合物を含有し得る。また、これらポリエーテルは、PEG−PPG−PEG(ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール)と表記されるもの等のブロックコポリマーとしても存在し得る。好ましくは、ポリエーテルグリコールは、約200以上、最も好ましくは350〜2000の平均分子量を有する。
【0039】
イソシアネート反応性基Xが、−C(O)OHである場合、式(IIIa)の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミステリン酸(mysteric acid)、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、リノール酸(lineolic acid)、アラキドン酸、オレイン酸、又はエルカ酸等の脂肪酸(R5は、任意選択的に少なくとも1つの不飽和基を含む−C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキルである);ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシミステリン酸(mysteric acid)、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシアラキジン酸、ヒドロキシベヘン酸、ヒドロキシリグノセリン酸、ヒドロキシパルミトレイン酸、ヒドロキシリノール酸(lineolic acid)、ヒドロキシアラキドン酸、ヒドロキシオレイン酸、又はヒドロキシエルカ酸等のヒドロキシ含有酸(R5は、ヒドロキシ官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキルである);及びメルカプトプロピオン酸等のメルカプトアルカン酸(R5は、チオール官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキルである)。
【0040】
イソシアネート反応性基Xが、−SHである場合、式(IIIa)の具体例としては、ラウリルメルカプタン又はドデシルメルカプタン等のアルキルチオール(R5は、任意選択的に少なくとも1つの不飽和基を含む−C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキルである)が挙げられるが、これらに限定されない。イソシアネート反応性基Xが、−NH(R12)である場合、式(IIIa)の具体例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ジイソプロピルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン(hexylmine)、又はラウリルアミン等のアルキルアミン(R5は、任意選択的に少なくとも1つの不飽和基を含む−C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキルである);エタノールアミン又はプロパノールアミン等のアルカノールアミン(R5は、ヒドロキシ官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキルである);シリコーンプレポリマーポリアミン(R5は、アミン官能性直鎖又は分岐鎖オルガノシロキサンである);アルキルジアミン(R5は、アミン官能性C1〜C30直鎖又は分岐鎖アルキルである);及び2−アミノエタンスルホン酸等のアミノアルカンスルホン酸(R5は、HO−S(O)210−である)。
【0041】
更なる実施形態では、エクステンダーポリマーの第2の化合物(c)は、式(IIIb)で表される。これら化合物は、一般に、ポリグリセロールと称される。R15、R16、及びR17が、それぞれ独立して、−H、−R18、−C(O)R18であるが、但し、少なくとも1つのR15、R16、又はR17は、−Hであり、かつR18が、独立して、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む5〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基である、これらポリグリセロールが存在し得る。具体例としては、トリグリセロールモノステアレート、トリグリセロールジステアレート、ヘキサグリセロールモノステアレート、ヘキサグリセロールジステアレート、デカグリセリルモノ(カプリレート(carpylate)/カプレート)、デカグリセリルジ(カプリレート/カプレート)、デカグリセロール、ポリグリセロール−3、及びC18ジグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
1つの実施形態では、(a)イソシアネート含有化合物と(b)イソシアネート反応性化合物の反応生成物は、未反応のイソシアネート基を含有し、これは更に、式(IIIa)又は(IIIb)で表される化合物と水の両方を含む複数の第2の化合物(c)と反応する。水は、未反応のイソシアネート基を架橋して、尿素結合を形成するために使用される。1つの態様では、最終化合物は、0%〜約1%の反応性イソシアネート基を含有する。1つの実施形態では、ポリマーエクステンダー化合物の分子量は、少なくとも10,000g/モルである。1つの実施形態では、化合物中の全ウレタン結合の30〜100モル%が、成分(a)と成分(b)との反応生成物由来である。最適な耐久性のある撥水性が望ましい場合、化合物中の全ウレタン結合の80〜100モル%が、成分(a)と成分(b)との反応生成物由来である。別の実施形態では、化合物中の全ウレタン結合の90〜100モル%が、成分(a)と成分(b)との反応由来である。第3の実施形態では、化合物中の全ウレタン結合の95〜100モル%が、成分(a)と成分(b)との反応由来である。
【0043】
最適な染み除去が望ましい場合、式(IIIa)、(IIIb)、又は水から選択される化合物が、反応性イソシアネート基の約0.1モル%〜約70モル%と反応し、置換糖アルコールが、反応性イソシアネート基の約30モル%〜約99.9モル%と反応する。別の実施形態では、式(IIIa)、(IIIb)、又は水から選択される化合物が、反応性イソシアネート基の約40モル%〜約70モル%と反応し、置換糖アルコールが、反応性イソシアネート基の約30モル%〜約60モル%と反応する。
【0044】
本発明のポリマーエクステンダー化合物は、一工程で作製することができる。また、式(Ia)、(Ib)、若しくは(Ic)のうちの1超の有機化合物及び/又は1つ以上の第2の化合物(c)を含む、本発明のポリマーエクステンダー化合物も、一工程で作製することができる。好ましくは、式(Ia)、(Ib)、若しくは(Ic)のうちの1超の有機化合物、及び/又は1つ以上の第2の化合物(c)を使用する場合、合成を逐次完了することができる。高OH価の式(Ia)、(Ib)、若しくは(Ic)で表される化合物を用いるとき、又は多官能性化合物(c)を使用するとき、逐次付加が特に有用である。これら工程は、(a)イソシアネート、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はこれらの混合物から選択される少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物と、(b)式(Ia)、(Ib)、又は(Ic)から選択される少なくとも1つのイソシアネート反応性化合物と、を反応させることを含む(式中、各Rは、独立して、−H、−R1、−C(O)R1、−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)m2、又は−(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)mC(O)R1であり、各nは、独立して、0〜20であり、各mは、独立して、0〜20であり、m+nは、0よりも大きく、各R1は、独立して、任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む5〜29個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、各R2は、独立して、−H、又は任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であるか、あるいはこれらの混合物であるが、但し、該化合物が式(Ia)で表される場合、R又はR2のうちの少なくとも1つが−Hであり、各R3は、独立して、−H、−R1
−C(O)R1、−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'2
又は−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'C(O)R1であり、各R4は、独立して、−H、又は任意選択的に少なくとも1つの不飽和結合を含む6〜30個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又はこれらの組み合わせ、
−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'2
又は−(CH2CH2O)n'(CH(CH3)CH2O)m'C(O)R1であり、各n’は、独立して、0〜20であり、各m’は、独立して0〜20であり、m’+n’は、0よりも大きいが、但し、該化合物が式(Ib)で表される場合、少なくとも1つのR2、R3又はR4が−Hであり、各R19は、−H、−C(O)R1、又は−CH2C[CH2OR]3であるが、但し、該化合物が式(Ic)で表される場合、少なくとも1つのR19又はRが−Hである)。第2の化合物(c)を用いる場合、式(Ia)、(Ib)、又は(Ic)から選択される少なくとも1つの化合物のモル濃度は、1つ以上の第2の化合物(c)と反応するための未反応イソシアネート基が残るような濃度である。
【0045】
少なくとも1つのイソシアネート、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、又はこれらの混合物と、イソシアネート、ジイソシアネート、ポリイソシアネートから選択される少なくとも1つのイソシアネート基含有化合物、又はこれらの混合物と、(b)式(Ia)、(Ib)、若しくは(Ic)から選択される少なくとも1つのイソシアネート反応性化合物、又はこれらの混合物とが反応する。この反応は、典型的には、イソシアネート、ジイソシアネート、又はポリイソシアネートと、式(Ia)、(Ib)、若しくは(Ic)から選択される少なくとも1つの化合物、又はこれらの混合物と、任意選択的に第2の化合物(c)とを反応容器に仕込むことによって実施される。試薬を添加する順序は重要ではないが、水を使用する場合、イソシアネートと式(Ia)、(Ib)、若しくは(Ic)から選択される少なくとも1つの化合物、又はこれらの混合物とが反応した後に、水を添加しなければならない。
【0046】
仕込む反応物質の具体的な重量は、その当量及び反応容器の作業容量に基づき、そして、式(Ia)、(Ib)、又は(Ic)から選択される化合物が第1の工程で消費されるように調整される。イソシアネート反応性基を含まない好適な無水有機溶媒が、典型的には、溶媒として使用される。利便性及び入手可能性から、ケトンが好ましい溶媒であり、メチルイソブチルケトン(MIBK)が、特に好ましい。仕込んだ材料を撹拌し、温度を約40℃〜70℃に調整する。典型的には、次に、有機溶媒中の塩化鉄(III)等の触媒を、典型的には、組成物の乾燥重量を基準として、約0.01〜約1.0重量%の量で添加し、温度を約80℃〜100℃に昇温する。また、炭酸ナトリウム等の共触媒を使用してもよい。水を添加する場合、100%未満のイソシアネート基が反応するように、初期反応を実施する。第2の工程では、数時間維持した後、追加の溶媒、水、及び任意選択的に第2の化合物(c)を添加し、混合物を、更に数時間、又は全てのイソシアネートが反応するまで反応させる。
【0047】
次いで、上記エクステンダー組成物を、様々な公知のワックスのいずれかと、好ましくは約1:10〜約10:1、より好ましくは約1:8〜約8:1、最も好ましくは約2:8〜約8:2のエクステンダー化合物:ワックスの重量比でブレンドする。融点は、約30℃超、好ましくは約30〜70℃、より好ましくは約40〜55℃である。例としては、動物ろう、植物及び木ろう、鉱ろう、石油ろう、及びシリコーンワックスを含む合成ろうが挙げられる。より具体的には、ワックスは、蜜ろう、微結晶ろう、酸化微結晶ろう、パラフィンろう、モンタンろう、オゾケライトろう、カルナウバろう、キャンデリラろう、シュロろう、鯨ろう、ラノリン、サトウキビろう、糖エステル、ポリオレフィンろう、モノ−、ジ−、若しくはトリグリセリドエステル、脂肪酸エステルろう、又はこれらのブレンドから選択される。別の実施形態では、ワックスは、シリコーンワックス、シリコーンワックスのブレンド、又はシリコーンワックスと少なくとも1つの非シリコーンワックスとのブレンドから選択される。
【0048】
特に興味深いのは、典型的には、食品及び化粧品業界でみられるモノ−、ジ−、又はトリグリセリドエステルワックスである。このような化合物は、生物学的に修飾されていないアルキルエステルであってよいが、脂肪酸又は酢酸を含む反応性化合物で修飾されたモノ−又はジグリセリドも含む。典型的には、これら化合物は、一置換、二置換、及び三置換エステルの鎖長の分布を含有する化合物の混合物である。同様に、他の多官能性アルコールは、好適な官能性ワックスを作製するために脂肪酸でエステル化してよい。特に好ましいエステル化合物としては、蜜ろう、キャンデリラろう、カルナウバろう、サトウキビろう、シュロろう、トリベヘニン、脂肪酸トリグリセリド、脂肪酸グリコールエステル、モノグリセリドの酢酸エステル、及びこれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。このようなエステル化合物は、Croda(East Yorkshire,England)又はDuPont Nutrition & Health(Copenhagen,Denmark)から入手可能である。
【0049】
アルキルシリコーン、アルキルアリールシリコーン、及びこれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない、様々なシリコーンワックスを本発明で使用してよい。特に好ましいのは、式(IV)で表される化合物を含む、アルキルペンダント基に基づくアルキル化アルキル化シリコーンである。
【0050】
【化5】
【0051】
このような化合物は、液体から軟質ペースト、硬ろうに及び、物性は、分子量、アルキル鎖長、及び長アルキル鎖含量を変化させることによって調整することができる。gは、好ましくは、2〜40、より好ましくは、10〜32、最も好ましくは、18〜32である。変数d及びeは、独立して、2〜20、好ましくは、2〜10、最も好ましくは、2〜6である。シリコーンのアルキルに対する比、及びアルキルの鎖長が、最終生成物の融点及び流動性を決定する。好適な化合物の例としては、Dow Corning(Midland,MI)から入手可能なDOW CORNINGワックス;Wacker(Munchen,Germany)から入手可能なWACKERシリコーンワックス;Momentive Specialty Chemicals,Inc.(Columbus,OH)から入手可能なシリコーンワックス;及びSiltech(Toronto,Canada)から入手可能なSILWAXが挙げられる。
【0052】
繊維質基材に塗布される、本発明のワックスとエクステンダー化合物とを含むブレンド組成物は、任意選択的に、耐久性を高めるためのブロックイソシアネートを更に含む。このブロックイソシアネートは、共重合後に(すなわち、ブレンドイソシアネートとして)添加される。好適なブロックイソシアネートの例は、Huntsman Corp(Salt Lake City,UT)から入手可能なPHOBOL XANである。他の市販のブロックイソシアネートも、本明細書で使用するのに好適である。ブロックイソシアネートを添加する望ましさは、コポリマーの具体的な用途に依存する。本発明で想定される用途の大部分については、鎖間架橋又は繊維への結合を十分に達成するために、ブロックイソシアネートが必ずしも存在しなくてもよい。ブレンドイソシアネートとして添加する場合、最大約20重量%の量を添加する。
【0053】
ワックスとエクステンダー化合物とを含む本発明のブレンド組成物は、任意選択的に、追加の表面効果を達成するための追加の処理剤若しくは仕上げ剤、又は一般的にこのような処理剤若しくは仕上げ剤と共に使用される添加剤を含む追加成分を更に含む。このような追加成分は、ノーアイロン性、アイロンの掛け易さ、縮み抑制、防しわ性、パーマネントプレス、調湿性、柔軟性、強度、滑り防止、静電気防止、かぎ裂き防止、毛玉防止、耐しみ性、しみ落ち性、防汚性、汚れ落ち性、撥水性、撥油性、防臭、抗菌、日焼け防止、及び類似の効果等の表面効果を提供する化合物又は組成物を含む。1つ以上のこのような処理剤又は仕上げ剤をブレンド組成物と組み合わせ、繊維質基材に塗布してもよい。界面活性剤、pH調整剤、架橋剤、湿潤剤、及び当業者に周知の他の添加剤等の、一般的にこのような処理剤又は仕上げ剤と共に使用される他の添加剤が存在してもよい。好ましくは、組成物全体がフッ素化されていない。更に、効果の組み合わせを得るために、任意選択的に、他のエクステンダー組成物が含まれる。
【0054】
例えば、合成布地を処理するとき、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能なALKANOL 6112等の湿潤剤を使用することができる。更なる例として、綿又は綿混紡布地を処理するとき、Emerald Carolina,LLC(Charlotte,NC)から入手可能なPERMAFRESH EFC等の防しわ性樹脂を使用することができる。更なる例として、不織布を処理するとき、Omnova Solutions(Chester,SC)から入手可能なFREEPEL 1225WR等のワックスエクステンダーを用いることができる。また、Stepan(Northfield,IL)から入手可能なZELEC KC等の静電気防止剤、又はヘキサノール等の湿潤剤も好適である。分散体は、一般的に、噴霧、浸漬、パディング、又は他の周知の方法によって繊維質基材に塗布される。例えば、圧搾ロールによって過剰の液体を除去した後、処理された繊維質基材を乾燥させ、次いで、例えば、少なくとも30秒間、典型的には約60〜約240秒間かけて、約10℃〜約190℃に加熱することによって硬化させる。このような硬化は、撥油性、撥水性、及び防汚性、並びに撥性の耐久性を高める。これら硬化条件が一般的であるが、一部の市販の装置は、その特有の設計特徴のため、この範囲外で作動してもよい。
【0055】
本発明は、i)ワックスとii)上記エクステンダー化合物とを含む上記組成物で処理された基材を更に含む。また、組成物は、上記のような追加の表面効果を与えるための任意の剤、上記のような基材の処理において一般的に使用される任意の添加剤、上記のような任意のブロックイソシアネート、及び任意の異なる追加のエクステンダー組成物を含有してもよい。上述した通り、このような基材としては、紙、不織布、皮革、繊維、織物、布地、混紡布地、又はこれらの組み合わせが挙げられる。「布地」としては、綿、レーヨン、絹、羊毛、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ナイロン、並びに「NOMEX」及び「KEVLAR」等のアラミドの繊維からなる天然布地又は合成布地が挙げられる。「混紡布地」とは、2種類以上の繊維で作られた布地を意味する。典型的には、これら混紡は、少なくとも1つの天然繊維と少なくとも1つの合成繊維との組み合わせであるが、2つ以上の天然繊維又は2つ以上の合成繊維の混紡である場合もある。好ましくは、基材は、本発明のエクステンダー組成物と、ポリウレタン又はポリ(メタ)アクリレート等のフッ素化ポリマーとを含む組成物で処理されている。
【0056】
試験法
全ての溶媒及び試薬は、特に指示がない限り、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から購入し、供給された状態のまま使用した。パラフィンろうは、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から入手した。ソルビタントリステアレートは、Croda(East Yorkshire,England)及びDuPont Nutrition & Health(Copenhagen,Denmark)から入手した。DESMODUR N−100は、Bayer Corporation(Pittsburgh,PA)から入手した。ARMEEN DM−18Dは、Akzo−Nobel(Bridgewater,NJ)から入手した。PHOBOL XANは、Huntsman Corp(Salt Lake City,UT)から入手した。
【0057】
セチル/ヘキサコシルジメチコン及びアルキルジメチコンは、Siltech Corporation(Toronto,Canada)から入手した。
【0058】
トリベヘニン、C18〜C26酸トリグリセリドワックス、及びC18〜C36酸グリコールエステルワックスは、Croda(East Yorkshire,England)から入手した。
【0059】
可食性の完全に水素化されたパーム油/蜜ろうブレンドから作製されたモノグリセリドの酢酸エステルは、DuPont Nutrition & Health(Copenhagen,Denmark)から入手した。
【0060】
ステアリルジメチコン/オクタデセンブレンドは、Dow Corning(Midland,MI)から入手した。
【0061】
セテアリルメチコン及びC30〜C45アルキルジメチコンは、Momentive Performance Materials(Waterford,NY)から入手した。
【0062】
CHEMIDEX Sは、Lubrizol(Wickliffe,OH)から入手した。
【0063】
ETHAL LA−4は、Ethox Chemicals(Greenville,SC)から入手した。
【0064】
本明細書の実施例の評価においては、以下の試験を用いた。
【0065】
試験法1−布地の処理
この試験で処理した布地は、SDL Atlas Textile Testing Solutions(Rock Hill,South Carolina 29732)から入手可能な100重量%のカーキ色の綿ツイル、及びL.Michael OY(Finland)から入手可能な100重量%の赤色ポリエステル布地であった。布地を、従来のパッド浴(浸漬)プロセスを使用して、様々な組成の水性分散体で処理した。調製した濃縮分散体を脱イオン水で希釈して、30g/Lの処理剤分散体を浴中に有するパッド浴を得た。
【0066】
綿布地の処理については、それぞれ5g/L及び30g/Lの湿潤剤INVADINE PBN及び触媒架橋剤KNITTEX 7636(全てHuntsman(Salt Lake City,UT)から入手可能)も浴中に含まれていた。布地を浴中でパディングし、過剰の液体を圧搾ローラーによって除去した。含浸量は、綿基材に対して約95%であった。「含浸量」とは、布地の乾燥重量に基づく、布地に塗布されたエマルジョンポリマー及び添加剤の浴溶液の重量である。布地を約165℃で3分間硬化させ、処理及び硬化後、少なくとも2時間「静置」した。
【0067】
ポリエステル布地の処理については、それぞれ5g/L及び1g/Lの湿潤剤INVADINE PBN(Huntsman(Charlotte,NC,USA)から入手可能)及び60%酢酸も浴中に含まれていた。布地を浴中でパディングし、過剰の液体を圧搾ローラーによって除去した。含浸量は、ポリエステル基材に対して約55%であった。「含浸量」とは、布地の乾燥重量に基づく、布地に塗布されたエマルジョンポリマー及び添加剤の浴溶液の重量である。布地を約160℃で2分間硬化させ、処理及び硬化後、約15〜約18時間「静置」した。
【0068】
試験法2−水滴下撥水性
処理された織物基材の撥水性を、AATCC標準試験法No.193及びTEFLON(登録商標)Global Specifications and Quality Control Testsブックレットに概説されている方法に従って測定した。
【0069】
試験法3−散水撥水性
動的撥水性の指標である噴霧試験法を用いることによって、撥水性を更に試験した。処理された布地サンプルの撥水性を、AATCC標準試験法No.22及びTEFLON(登録商標)Global Specifications and Quality Control Testsブックレットに概説されている方法に従って測定した。
【0070】
試験法4−Bundesmann吸水性
処理された布地サンプルの動的吸水性を、ISO9865標準試験法に従って、30回の家庭洗濯前後に試験した。
【0071】
試験法5−洗浄耐久性
織物試験のための国際規格に規定された家庭洗浄手順に従って、布地サンプルを洗濯した。布地サンプルを、水平ドラム、前入れ方式(タイプA、WASCATOR FOM 71MP−Lab)の自動洗濯機に、全乾燥投入量が3kg(4ポンド)になるように、バラスト負荷と共に投入した。市販の洗剤(AATCC 1993規格の標準洗剤WOB)を添加し、ISO 6330:2001−7Aの洗濯機プログラムを使用した。洗濯が完了した後、全投入量をKENMORE自動乾燥機に入れ、高温で45〜50分間乾燥させた。
【実施例】
【0072】
ウレタンエクステンダー1の調製
オーバーヘッド撹拌機、熱電対、ディーン・スターク/冷却器を備える4つ口丸底フラスコに、ソルビタントリステアレート(116.0g、ヒドロキシ価=77.2mgKOH/g)及び4−メチル−2−ペンタノン(MIBK、150g)を添加した。溶液を1時間還流させて、残留水分を全て除去した。1時間後、溶液を50℃に冷却し、DESMODUR N−100(30g)、続いて触媒を添加し、溶液を1時間かけて80℃に加熱した。水(1.71g)を反応混合物に添加し、この反応混合物を更に4時間80℃で加熱した。
【0073】
次いで、化合物の水性分散体を調製した。水(300g)、ARMEEN DM−18D(5.6g)、TERGITOL TMN−10(2.8g)、及び酢酸(3.4g)をビーカーに添加し、撹拌して、界面活性剤溶液を形成した。溶液を60℃に加熱した。ソルビタンウレタン/MIBK溶液を60℃に冷却し、界面活性剤溶液をゆっくりと添加して、乳白色のエマルジョンを生成した。混合物を、41MPa(6000psi)でホモジナイズし、得られたエマルジョンを減圧下で蒸溜し、溶媒を除去して、25%固形分の不燃性ウレタン分散体を得た。
【0074】
比較例1
ウレタンエクステンダー1分散体を、以下の性能試験法に従って評価した。
【0075】
【表1】
【0076】
比較例C2〜C17
500mLの4つ口丸底フラスコに、添加漏斗、熱電対、機械的攪拌器、窒素入口、冷却器、及び気体出口を設置した。このフラスコにワックス(30g)及びトルエン(75g)を仕込み、80℃に加熱した。別のフラスコの中で、熱DI水(280.5g)、ARMEEN DM−18D(1.04g)、酢酸(0.78g)、TERGITOL TMN−10(1.04g)、及びジプロピレングリコール(7.32g)を混合し、ワックスの入ったフラスコに添加した。混合物を70℃で30分間攪拌し、次いで、41MPa(6000psi)で4回ホモジナイザーに通した。蒸留を介してトルエンを除去した。最終生成物をソックフィルターで濾過し、10%固形分に希釈した。
【0077】
(実施例1〜32)
表2〜17に列挙した重量比に従って、ウレタンエクステンダー1分散体を、様々な組成及び融点(Tm)のワックス組成物とブレンドした。比は、固形分含量の重量パーセントに基づいている。成分をガラスびんに添加し、5分間攪拌して、十分な混合を確保した。
【0078】
性能試験
対照及びブレンド配合組成物を、試験法1に従って布地に塗布した。パディング組成物は、30g/Lの固形分含量の対照分散体(比較例1〜17)又は実施例1〜32のブレンド配合物を含有していた。
【0079】
次いで、処理された布地サンプルを、0回の家庭洗濯後(0HW)及び30回の家庭洗濯後(30HW)に、試験法2〜4に従って試験した。家庭洗濯は、試験法5に従って実施した。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
【表7】
【0086】
【表8】
【0087】
【表9】
【0088】
【表10】
【0089】
【表11】
【0090】
【表12】
【0091】
【表13】
【0092】
【表14】
【0093】
【表15】
【0094】
【表16】
【0095】
【表17】
【0096】
ウレタンエクステンダーは、綿又はポリエステルの布地に塗布したとき、全てのワックス生成物について初期撥水性を増大させた。更に、全てのブレンド組成物について、30回の家庭洗濯にわたって性能が維持された。
【0097】
(実施例33〜36)
オーバーヘッド撹拌機、熱電対、及び冷却器を備える4つ口丸底フラスコに、ソルビタントリステアレート(55.6g)、炭酸ナトリウム(0.7g)、及びMIBK(71.6g)を添加した。溶液を55℃に加熱した後、DESMODUR N−100(15.0g)を添加し、温度を80℃に昇温した。触媒を80℃で添加し、次いで、反応温度を95℃に昇温した。6時間後、n−ブタノール(0.9g)を反応混合物に添加した。次の朝、試験した反応物は、活性イソシアネートについて陰性であり、表18の量に従ってワックスを反応物に添加した。
【0098】
次いで、混合物の水性分散体を調製した。水(210g)、CHEMIDEX S(1.9g)、ETHAL LA−4(2.9g)、及びジプロピレングリコール(22.1g)をビーカーに添加し、撹拌して、界面活性剤溶液を形成した。溶液を65℃に加熱した。ウレタン反応物を65℃に冷却し、界面活性剤溶液をゆっくりと添加して、乳白色の溶液を生成した。混合物を浸漬ブレンドし(2分間)、41MPa(6000psi)でホモジナイズし、得られた分散体を減圧下で蒸留して、溶媒を除去した。更に0.6gのCHEMIDEX Sを添加して、不燃性ウレタン分散体を得た。
【0099】
【表18】
【0100】
性能試験
分散体を、試験法1に従って布地に塗布した。パディング組成物は、60g/Lの固形分含量の分散体を含有していた。次いで、処理された布地サンプルを、0回の家庭洗濯後(0HW)及び30回の家庭洗濯後(30HW)に、試験法2〜4に従って試験した。家庭洗濯は、試験法5に従って実施した。
【0101】
【表19】
【0102】
ウレタンエクステンダーは、綿又はポリエステルの布地に塗布したとき、全てのワックス生成物について初期撥水性を増大させた。更に、全てのブレンド組成物について、30回の家庭洗濯にわたって性能が維持された。
【0103】
本発明の方法、組成物、及び処理された基材は、フッ素化化合物の必要性をなくすと同時に、上記基材の表面特性、特に、撥油性、撥水性、及び防汚性の耐久性を高めるために有用であることが見出された。他のエクステンダーと共にワックスを塗布する場合よりも撥性の耐久性が高く、様々な繊維質基材に対して有効である。また、撥性は、様々な他の表面効果で有効である。本発明の処理された繊維質基材は、織物、衣類、ユニフォーム、防護服、家具等の様々な用途において有用である。本発明の組成物ブレンドは、フッ素化材料の必要性をなくすと同時に、耐久性の高い、低黄変の撥性仕上げを広範な繊維質基材に付与する点で有利である。