(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施形態の詳細に言及する前に、幾つかの用語を定義又は明確化する。
【0010】
定義
本明細書で使用するとき、伝熱流体という用語は、熱源からヒートシンクに熱を伝えるのに使用される組成物を含む。
【0011】
熱源は、熱を加える、伝達する、移動させる、又は除去することが望ましい任意の空間、場所、物体、又は本体を含む。熱源の例としては、スーパーマーケットにおける冷蔵庫又は冷凍庫ケース等の冷蔵又は冷却を必要とする(開放又は密閉)空間、輸送用冷蔵コンテナ、空調を必要とする建造物空間、工業用ウォーターチラー、及び空調を必要とする自動車の乗客室が挙げられる。幾つかの例において、伝熱流体は、伝達プロセス全体において一定状態を維持することができる(例えば、蒸発も凝結もしない)。他の例では、蒸発冷却プロセスにも同様に伝熱流体を利用することができる。
【0012】
ヒートシンクは、熱を吸収することができる任意の空間、場所、物体、又は本体を含む。蒸気圧縮冷蔵システムは、そのようなヒートシンクの一例である。
【0013】
冷媒は、熱の伝達に使用されるサイクル中に、液体から気体へと相変化し、再び液体に戻る伝熱流体を含む。
【0014】
伝熱システムは、特定の空間において加熱又は冷却効果を生じさせるのに使用されるシステム又は装置を含む。伝熱システムは、可動式システム及び/又は定置式システムであり得る。
【0015】
伝熱システムの例としては、任意の種類の冷蔵システム及び/又は空調システムが挙げられる。例えば、伝熱システムとしては、空調装置、冷凍庫、冷蔵庫、ヒートポンプ、ウォーターチラー、満液式蒸発チラー、直接膨張式チラー、ウォークインクーラー、可動式冷蔵庫、可動式空調ユニット、除湿器、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明で使用する場合、可動式伝熱システムは、道路、鉄道、海上、又は航空用の輸送ユニットに組み込まれる任意の冷蔵、空調、及び/又は加熱装置を含む。更に、可動式冷蔵及び/又は空調ユニットは、任意の移動キャリアから独立しており、「インターモーダル」システムとして知られている装置を含む。そのようなインターモーダルシステムとしては、輸送用の「コンテナ」(海上/陸上輸送の組み合わせ)及び「スワップボディ」(道路/鉄道輸送の組み合わせ)貨物コンテナが挙げられる。
【0017】
本明細書で使用するとき、定置式伝熱システムは、動作中に適所に固定されるシステムを含む。定置式伝熱システムは、任意の種類の建造物に設置し得る、取り付けられ得る、又は他の方法で付属させ得る。追加的に又は代わりに、定置式伝熱システムは、清涼飲料の自動販売機等、屋外に位置する独立型装置であってもよい。これらの定置式用途としては、定置式空調ユニット及びヒートポンプを挙げることができ、チラー;高温ヒートポンプ;並びに住宅用、商業用、又は工業用の空調システム(住宅用ヒートポンプを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。定置式システムは、更に、窓、ダクト無、ダクト付、及びパッケージ化端末システム、並びに屋上システム等の外部ではあるが建造物に接続されているシステムを含む。定置式冷蔵用途において、開示する組成物は、以下を含む設備の様々な品目において有用であり得る:商業用、工業用、又は住宅用の冷蔵庫及び冷凍庫;製氷機;内蔵型の冷却庫及び冷凍庫;満液式蒸発チラー;直接膨張式チラー;ウォークイン及びリーチイン冷却庫及び冷凍庫;並びに複合システム。幾つかの実施形態において、開示する組成物は、スーパーマーケットの冷蔵システムにおいて使用され得る。更に、定置式用途は、二次ループシステムを利用してよく、ここでは、二次流体を一次冷媒によって冷却し、次いで、遠隔位置で冷却効果を提供するために、二次流体を前記遠隔位置に送り込む。
【0018】
冷蔵能力(時に「冷却能力」又は「能力」と称することもある)は、循環する冷媒(又は冷媒混合物)の単位質量当たりの、蒸発器中の冷媒(又は冷媒混合物)のエンタルピーの変化を指し得る用語である。また、この用語は、蒸発器から出て行く冷媒(又は冷媒混合物)の蒸気の単位体積当たりの、蒸発器中の冷媒(又は冷媒混合物)によって除去される熱(容積)を指す場合もある。冷蔵能力は、冷媒(又は冷媒混合物)又は伝熱組成物が冷却を生じさせる能力の尺度である。したがって、より高い能力は、より大きな冷却力に対応する。冷却速度は、単位時間当たりの、蒸発器中の冷媒(又は冷媒混合物)によって除去される熱を指す。
【0019】
性能係数(COP)は、蒸発器中で除去された熱量を、サイクルを動作させるのに必要なエネルギー入力で除したものに相当し得る。より高いCOPは、より高いエネルギー効率に対応する。COPは、特定の内部温度及び外部温度の組における、冷蔵又は空調設備の効率の評点であるエネルギー効率比(EER)に直接関連する。
【0020】
用語「過冷却」は、所与の圧力におけるある液体の飽和点を下回る温度まで、前記液体の温度を低下させることを指し得る。飽和点は、蒸気が完全に液体に凝結する温度及び対応する圧力である。過冷却とは、所与の圧力における飽和温度よりも低い温度まで液体を冷却することを指す。冷媒(又は冷媒混合物)液体を飽和温度(又は泡立ち点)を下回る温度まで冷却することによって、冷媒の正味冷蔵能力を増大させることができる。したがって、過冷却は、システムの冷蔵能力及びエネルギー効率を改善することができる。過冷却量は、組成物の飽和温度を下回る冷却の量を指し得、度で測定される。
【0021】
過熱は、その飽和蒸気温度(組成物を冷却した場合、液体の最初の一滴が形成される温度であり、この温度は「露点」とも称される)を超えて蒸気組成物が加熱される度合を説明することができる用語である。
【0022】
温度グライド(単に「グライド」と称することもある)は、任意の過冷却又は過熱を除く、冷蔵システムの部品内の冷媒(又は冷媒混合物)による相変化プロセスの開始温度と終了温度との間の差の絶対値を含む。この用語は、近共沸混合物又は非共沸組成物(例えば、冷媒混合物)の凝結又は蒸発を説明するのに使用することができる。冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムの温度グライドについて言及する場合、蒸発器内の温度グライドと凝結器内の温度グライドとの平均値として平均温度グライドを提供することが一般的である。
【0023】
正味冷蔵効果とは、有用な冷却を生じさせるために冷媒1kg等の単位が蒸発器内で吸収する熱量を指し得る。
【0024】
質量流量とは、所定の時間、冷蔵、ヒートポンプ、又は空調システムを通じて循環する冷媒の質量を指し得る。質量流量は、単位時間当たりの質量単位(例えば、キログラム)で測定することができる。
【0025】
共沸組成物とは、単一の物質として挙動する2つ以上の物質の定沸点混合物を指し得る。共沸組成物を特徴付ける1つの方法は、液体の部分的蒸発又は蒸留によって発生した蒸気が、蒸発又は蒸留させた液体と同じ組成を有することである。例えば、混合物は、組成が変化することなく蒸留/還流する。定沸点組成物は、共沸であると特徴付けられるが、その理由は、同一化合物の非共沸混合物と比較して、最高沸点又は最低沸点のいずれかを示すためである。動作中、冷蔵又は空調システム内で共沸組成物が分留されることはない。更に、冷蔵又は空調システムからの漏出時に、共沸組成物が分留されることはない。
【0026】
共沸様組成物(「近共沸組成物」とも称される)は、本質的に単一の物質として挙動する2つ以上の物質の実質的に定沸点の液体混合物を含む。共沸様組成物を特徴付ける1つの方法は、液体の部分的蒸発又は蒸留によって発生した蒸気が、蒸発又は蒸留させた液体と実質的に同じ組成を有することである。例えば、混合物は、実質的に組成が変化することなく蒸留/還流する。共沸様組成物を特徴付ける別の方法は、特定の温度における組成物の泡立ち点蒸気圧及び露点蒸気圧が実質的に同じであることである。本明細書では、蒸発又は煮沸等によって組成物の50重量パーセントを除去した後に、元の組成物と元の組成物の50重量パーセントを除去した後に残存する組成物との間の蒸気圧の差が約10パーセント未満である場合、組成物は共沸様である。
【0027】
非共沸(非共沸性とも称される)組成物は、単一の物質としてではなく、単純な混合物として挙動する2つ以上の物質の混合物を含む。非共沸組成物を特徴付ける1つの方法は、液体の部分的蒸発又は蒸留によって発生した蒸気の組成が、蒸発又は蒸留させた液体の組成とは実質的に異なることである。例えば、混合物は、実質的な組成の変化を伴って蒸留/還流する。非共沸様組成物を特徴付ける別の方法は、特定の温度における組成物の泡立ち点蒸気圧及び露点蒸気圧が実質的に異なることである。本明細書では、蒸発又は煮沸等によって組成物の50重量パーセントを除去した後に、元の組成物と元の組成物の50重量パーセントを除去した後に残存する組成物との間の蒸気圧の差が約10パーセント超である場合、組成物は非共沸である。
【0028】
本明細書で使用するとき、用語「潤滑剤」とは、部品の固着防止を助けるために圧縮機に潤滑を提供する、組成物又は圧縮機に添加される(かつ任意の伝熱システム内で使用中の任意の伝熱組成物と接触する)任意の材料を意味し得る。
【0029】
本明細書で使用するとき、相溶剤は、伝熱システム潤滑剤における、開示する組成物のヒドロフルオロカーボンの溶解度を改善する化合物を含む。幾つかの例において、相溶剤は、圧縮機への戻しを改善する。更に、実施例において、組成物はシステム潤滑剤と共に使用して、オイルリッチ相の粘度を低下させる。
【0030】
本明細書で使用するとき、油戻しとは、伝熱システムを介して潤滑剤を運び、それを圧縮機に戻す伝熱組成物の能力を指し得る。すなわち、使用中、圧縮機潤滑剤の一部が、伝熱組成物によって圧縮機からシステムの他の部分に運び出されることは珍しいことではない。そのようなシステムでは、潤滑剤が効率良く圧縮機に戻らない場合、最終的に、潤滑剤の欠乏により圧縮機が故障する。
【0031】
本明細書で使用するとき、紫外線(「UV」)染料は、電磁スペクトルの紫外線又は「近」紫外線領域内で光を吸収する紫外線蛍光性又はリン光性組成物を含む。約10ナノメートル〜約775ナノメートルの範囲内の波長を有する少なくとも若干の放射線を放出する紫外線照射下において、紫外線蛍光染料から発生した蛍光を検出することができる。
【0032】
可燃性は、発火する及び/又は火炎伝播する組成物の能力を指し得る用語である。冷媒及び他の伝熱組成物について、可燃下限(「LFL」)とは、米国材料試験協会(「ASTM」)E681−04に指定されている試験条件下で組成物の均質混合物及び空気を介して火炎伝播することができる、空気中における伝熱組成物の最低濃度である。可燃上限(「UFL」)とは、同じ試験条件下で組成物の均質混合物及び空気を介して火炎伝播することができる、空気中における伝熱組成物の最高濃度である。米国暖房冷蔵空調学会(「ASHRAE」)によって不燃性と分類されるためには、冷媒は、液相及び蒸気相内で配合したときに、ASTM E681−04の条件下で不燃性でなければならず、また漏出シナリオ中に生じる液相及び蒸気相の双方において、不燃性でなければならない。
【0033】
地球温暖化係数(「GWP」)とは、特定の温室効果ガスの相対的な地球温暖化への寄与を推定するための指数を指し得る。GWPは、特定の温室効果ガス1キログラムの大気放出に起因する地球温暖化への寄与を、二酸化炭素1キログラムの大気放出に起因する地球温暖化への寄与と比較することによって測定することができる。GWPは、様々な対象期間について計算することができ、それによって、所与の気体の大気寿命にわたる効果を示す。100年間という対象期間のGWPが、一般的に参照される値である。混合物については、各成分に関する個々のGWPに基づいて加重平均を計算することができる。
【0034】
オゾン層破壊係数(「ODP」)は、物質によって引き起こされるオゾン層破壊の量を指し得る数である。ODPは、ある化学物質がオゾンに及ぼす影響を同様の質量のCFC−11(フルオロトリクロロメタン)がオゾンに及ぼす影響と比較した場合の比率を含む。このため、CFC−11のODPが1.0と定義される。他のCFC及びHCFCは、0.01〜1.0の範囲のODPを有する。HFCは、オゾン層破壊性物質である塩素を含有していないので、ODPはゼロである。
【0035】
本明細書で使用するとき、用語「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」、「有する」、「有している」、又はこれらのその他の任意の変形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、要素のリストを含む組成物、プロセス、方法、物品、及び/又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されないか、又はそのような組成物、プロセス、方法、物品、及び/若しくは装置に伴う他の要素を含み得る。更に、明示的に逆の記載がない限り、「又は」は、包括的な又はを指し、排他的な又はを指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下のうちのいずれか1つを満たす:Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在せず)かつBが真である(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)。
【0036】
移行句「からなる」は、特定されていない任意の要素、工程、又は成分を除外する。特許請求の範囲で用いられる場合、この句は、通常付随する不純物を除いて、列挙した材料以外の材料を含むことを除外するものとなる。句「からなる」が、序文の直後ではなく特許請求の範囲の本文の文節内で現れるとき、この句は、その文節内に記載する要素のみを限定するものであり、他の要素が特許請求の範囲全体から除外されるわけではない。
【0037】
移行句「から本質的になる」は、逐語的に開示されているものに加えて、材料、工程、特徴、成分、又は要素を含む組成物、方法、物品、及び/又は装置を定義するのに使用されるが、これらの追加の材料、工程、特徴、成分、及び/又は要素は、請求される発明の基本的特性及び新規の特性に実質的に影響を及ぼさないことを条件とする。用語「から本質的になる」は、「含む」と「からなる」との間の中間の立場を占める。通常、冷媒混合物の成分及び冷媒混合物自体は、冷媒混合物の新規の特性及び基本的特性に実質的に影響を及ぼすことのない微量(例えば、合計約0.5重量パーセント未満)の不純物及び/又は副生成物(例えば、冷媒成分の製造又は他のシステムからの冷媒成分の再生に由来)を含有していてもよい。例えば、HFC−134aは、HFC−134aの製造の副生成物として微量のHFC−134を含有し得る。更に、HFO−1234zeは、HFO−1234yfを生産するための特定のプロセスの副生成物であり得る(例えば、米国特許出願公開第2009/0278075号を参照)。しかしながら、本発明の特定の実施形態では、HFO−1234zeを別個の成分として列挙しており、この場合、その存在が(単独で、又はそれ自体は冷媒混合物の新規の特性及び基本的な特徴に実質的に影響を及ぼさない他の不純物及び/若しくは副生成物と共に)冷媒混合物の新規の特性及び基本的な特性に実質的に影響を及ぼすか及ぼさないかにかかわらず、組成物はHFO−1234zeを含むことに留意すべきである。
【0038】
出願人らが、発明又はその一部分を、「含んでいる」等のオープンエンドな用語で定義した場合、特に明記しない限り、その説明は、用語「から本質的になる」又は「からなる」を用いてかかる発明を記載しているとも解釈すべきであることは容易に理解されるはずである。
【0039】
また、冠詞「a」及び/又は「an」は、本明細書に記載される要素及び/又は成分を説明するために使用される。これは、単に便宜上、及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるためのものである。この記載は、要素及び/又は成分のうちの1つ、又は少なくとも1つを含むと読むべきである。更に、「a」及び/又は「an」等の単数形は、それが他の意味を有することが明らかでない限り、対応する複数形も含む。
【0040】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。開示する組成物の諸実施形態の実施及び/又は試験においては、本明細書に記載するものと類似又は等価な方法及び材料を使用することができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書において言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参照文献は、特定の一説を引用するものでない限り、その全文が参照により本明細書に援用される。矛盾が生じた場合は、定義を含め、本明細書が優先される。更に、材料、方法、及び実施例は、単なる例証であり、限定することを意図するものではない。
【0041】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、HFO−1234yf、HFC−1234yf、又はR−1234yfとも称され得る。HFO−1234yfは、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)又は1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)の脱水素フッ素化等の当該技術分野において公知の方法によって作製することができる。
【0042】
ジフルオロメタン(HFC−32又はR−32)は市販されており、また、塩化メチレンの脱塩素フッ素化等の当該技術分野において公知の方法によって作製することができる。
【0043】
ペンタフルオロエタン(HFC−125又はR−125)は市販されており、また、参照により本明細書に援用する米国特許第5,399,549号に記載されるように、2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタンの脱塩素フッ素化等の当該技術分野において公知の方法によって作製することができる。
【0044】
1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a又はR−134a)は市販されており、また、1,1−ジクロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(例えば、CCl
2FCF
3又はCFC−114a)の1,1,1,2−テトラフルオロエタンへの水素化による等の当該技術分野において公知の方法によって作製することができる。
【0045】
1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)は、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb又はCF
3CHFCH
2F)又は1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa又はCF
3CH
2CHF
2)の脱水素フッ素化によって調製することができる。この脱水素フッ素化反応は、触媒の存在下又は非存在下において蒸気相で、また、NaOH又はKOH等の苛性組成物との反応によって液相で生じ得る。これらの反応は、参照によって本明細書に援用する米国特許出願公開第2006/0106263号に、より詳細に記載されている。HFO−1234zeは、2つの配置異性体シス−又はトランス−(それぞれE−及びZ−異性体とも称される)のうちの1つとして存在し得る。トランス−HFO−1234zeは、特定のフルオロカーボン製造業者(例えば、Honeywell International Inc.(Morristown,NJ))から市販されている。
【0046】
組成物
本明細書は、ジフルオロメタン(HFC−32)と、ペンタフルオロエタン(HFC−125)と、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)と、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)と、を含む組成物を説明する。HFO−1234yf及びHFO−1234yfを含有する混合物は、比較的高いGWPを有する特定の冷媒及び冷媒混合物の低GWP代替品として検討されている。特に、R−404A(44重量%のHFC−125と、52重量%のHFC−143a(1,1,1−トリフルオロエタン)と、4重量%のHFC−134aと、を含有する混合物についてのASHRAE番号)は、IPCC第4次評価報告書(「AR4」)によると3922のGWPを有し、代替品が必要となるであろう。
【0047】
更に、R−507(50重量%のHFC−125と50重量%のHFC−143aとを含有する混合物についてのASHRAE番号)は、R−404Aと実質的に同一の特性を有するので、多くのR−404Aシステムにおいて用いることができ、3985に等しいGWPを有する。したがって、R−507は、R−404Aの低GWP代替品を提供するものではなく、同様に代替品が必要となるであろう。
【0048】
更に、冷媒R−22(HCFC−22とも称される)は、クロロジフルオロメタン(CHClF
2)を含み、1810のGWPを有する。R−22のGWPは、R−404A及びR−507のGWPよりも低いが、依然として所望の値よりは高い。R−22のODPも、所望の値よりも高い。したがって、R−22について代替冷媒が必要である。
【0049】
他の公知の冷媒としては、それぞれ2017、1774、及び1825のGWPを有するR−407A、R−407C、及びR−407Fが挙げられる。これらの冷媒も、比較的高いGWPを有するので、代替品が必要である。
【0050】
本明細書に開示する組成物は、既存の冷蔵システム及び装置において冷媒R−404A、R−507、R−407A、R−407C、R−407F、及び/又はR−22を代替するために用いることができ、また、新規冷蔵システム及び装置においても用いることができる。
【0051】
(a)20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、(b)20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、(c)24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、(d)25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、任意に(e)約0.0001重量パーセント〜10重量パーセントのHFO−1234zeと、から本質的になる不燃性冷媒混合物を開示する。本明細書で使用するとき、特に指定しない限り、用語「重量パーセント」、「重量%」、及び「wt%」は、組成物及び/又は混合物の総重量に対する、前記組成物及び/又は混合物中の1つの成分の重量の比(百分率として表される)を指す。例えば、「20重量パーセントの成分Aを含む組成物」とは、成分Aの重量が、組成物の総重量の20%を占めることを示す。
【0052】
また、(a)20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、(b)20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、(c)24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、(d)25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、(e)約0.0001重量パーセント〜10重量パーセントのトランス−HFO−1234zeと、から本質的になる不燃性冷媒混合物を開示する。
【0053】
別の実施形態では、不燃性冷媒混合物は、約0.0001重量パーセント〜5重量パーセントのHFO−1234zeを含有し得る。別の実施形態では、不燃性冷媒混合物は、約1重量パーセント〜10重量パーセントのHFO−1234zeを含有する。更に別の実施形態では、不燃性冷媒混合物は、約1重量パーセント〜5重量パーセントのトランス−HFO−1234zeを含有する。
【0054】
別の実施形態では、不燃性冷媒混合物は、(a)23重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、(b)22重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、(c)24.5重量パーセント〜27重量パーセントのHFC−125と、(d)25.5重量パーセント〜28重量パーセントのHFC−134aと、(e)約0.0001重量パーセント〜5重量パーセントのトランス−HFO−1234zeと、を含み得る。
【0055】
不燃性冷媒混合物は、共沸様であってよい。特に、共沸様であることが見出された冷媒混合物の範囲としては、20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、を有するものが挙げられる。更に、トランス−HFO−1234zeも含有する冷媒混合物は、前記混合物が20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、約0.0001重量パーセント〜約1重量パーセントのHFO−1234zeと、を含むとき、共沸様であることが見出されている。
【0056】
不燃性冷媒混合物は、約0.0001重量パーセント〜約0.1重量パーセントの量のトランス−HFO−1234zeを含有し得る。
【0057】
幾つかの例において、不燃性冷媒混合物は共沸様であってよく、トランス−HFO−1234zeは、存在するとき、約0.0001重量パーセント〜約0.1重量パーセントの量で存在する。
【0058】
更なる実施形態では、組成物は、23.3重量パーセント〜24.5重量パーセントのジフルオロメタン(HFC−32)と、24.5重量パーセント〜25.7重量パーセントのペンタフルオロエタン(HFC−125)と、25.5重量パーセント〜26.7重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)と、24.3重量パーセント〜25.5重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)と、を含み得る。そのような組成物は、不燃性冷媒混合物等の冷媒混合物中に含まれていてよく、また、上述したように、共沸様であると特徴付けることができる。
【0059】
1つの具体例において、組成物は、24.3重量パーセントのジフルオロメタン(HFC−32)と、24.7重量パーセントのペンタフルオロエタン(HFC−125)と、25.7重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)と、25.3重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)と、を含み得る。別の特定の実施形態では、組成物は、24.3重量パーセントのジフルオロメタン(HFC−32)と、24.7重量パーセントのペンタフルオロエタン(HFC−125)と、25.7重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)と、25.3重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)と、からなる。
【0060】
幾つかの実施形態では、テトラフルオロプロペン、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、及びテトラフルオロエタンに加えて、開示する組成物は、任意の非冷媒成分を含んでいてもよい。
【0061】
1つの実施形態では、(i)不燃性冷媒成分と、任意に(ii)非冷媒成分と、からなる組成物であって、前記冷媒成分が、(a)20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、(b)20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、(c)24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、(d)25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、任意に(e)約0.0001重量パーセント〜10重量パーセントのトランス−HFO−1234zeと、から本質的になる不燃性冷媒混合物である組成物を提供する。幾つかの例では、HFO−1234zeが存在するとき、それは、少なくとも約90%がトランス−HFO−1234ze又は95%がトランス−HFO−1234zeである。更なる例では、HFC−134aのHFO−1234yfに対する重量比は、1:1よりも大きい。特定の組成物では、HFO−1234yfは、組成物の約25重量パーセントであってよく、HFO−134aは、組成物の約26重量パーセントであってよい。
【0062】
本明細書に開示する組成物中の任意の非冷媒成分(本明細書では「添加剤」とも称する)は、以下の成分:潤滑剤、染料(UV染料を含む)、可溶化剤、相溶剤、安定剤、トレーサー、パーフルオロポリエーテル、耐摩耗剤、極圧剤、腐食及び酸化防止剤、金属表面エネルギー低減剤、金属表面不活化剤、フリーラジカル捕捉剤、発泡制御剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、洗剤、粘度調整剤、及びこれらの混合物のうちの1つ以上を含み得る。実際には、これら任意の非冷媒成分の多くは、これらの部類のうちの1つ以上に合致し、それ自体が1つ以上の性能特性を達成するのに役立つ品質を有し得る。
【0063】
幾つかの実施形態では、1つ以上の非冷媒成分は、組成物全体に対して少ない量で存在する。幾つかの実施形態では、開示する組成物中の添加剤の濃度は、全組成物の約0.1重量パーセント未満〜約5重量パーセントの範囲である。本発明の幾つかの実施形態では、添加剤は、全組成物の約0.1重量パーセント〜約5重量パーセントの量で、開示する組成物中に存在する。幾つかの実施形態では、組成物中に含まれる添加剤の量は、全組成物の約0.1重量パーセント〜約3.5重量パーセントである。開示する組成物のために選択される添加剤成分は、実用性、個々の設備部品、及び/又はシステムの要件に基づいて選択される。
【0064】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示する組成物中に含まれる潤滑剤は、鉱油潤滑剤である。幾つかの実施形態では、鉱油潤滑剤として、例えば、パラフィン(例えば、直鎖炭素鎖飽和炭化水素、分枝鎖炭素鎖飽和炭化水素、及びこれらの混合物等)、ナフテン(例えば、飽和環式及び環状構造)、芳香族(例えば、交互の炭素−炭素二重結合によって特徴付けられている1つ以上の環を含有する不飽和炭化水素を有するもの)、及び非炭化水素(例えば、硫黄、窒素、酸素、及びこれらの混合物等の原子を含有する分子)、並びにこれらの混合物及び組み合わせのうちの1つ以上に加えて、他の鉱油潤滑剤が挙げられる。
【0065】
幾つかの実施形態は、1つ以上の合成潤滑油を含有してもよい。幾つかの実施形態では、合成潤滑油として、例えば、アルキル置換芳香族(例えば、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、又は直鎖分枝鎖アルキル基の混合物で置換されているベンゼン又はナフタレン、多くの場合、アルキルベンゼンと総称される)、合成パラフィン及びナフテン、ポリ(例えば、αオレフィン)、ポリグリコール(例えば、ポリアルキレングリコール)、二塩基酸エステル、ポリエステル、ポリオールエステル、ネオペンチルエステル、ポリビニルエーテル(「PVE」)、パーフルオロポリエーテル(「PFPE」)シリコーン、ケイ酸エステル、フッ素化化合物、リン酸エステル、ポリカーボネート、及び本段落における上述の潤滑剤のいずれかの混合物のうちの1つ以上に加えて、その他の合成潤滑剤が挙げられる。
【0066】
本明細書に開示する潤滑剤は、市販の潤滑剤であってよい。例えば、潤滑剤は、BVA OilsによってBVM 100 Nとして販売されているパラフィン系鉱油;Crompton Co.によって商標名Suniso(登録商標)1GS、Suniso(登録商標)3GS、及びSuniso(登録商標)5GSとして販売されているナフテン系鉱油;Pennzoil(登録商標)によって商標名Sontex(登録商標)372LTとして販売されているナフテン系鉱油;Calumet Lubricantsによって商標名Calumet(登録商標)RO−30として販売されているナフテン系鉱油;Shrieve Chemicalsによって商標名Zerol(登録商標)75、Zerol(登録商標)150、及びZerol(登録商標)500として販売されている直鎖アルキルベンゼン;並びにNippon OilによってHAB 22として販売されている分枝鎖アルキルベンゼン;Castrolによって商標名Castrol(登録商標)100として販売されているポリオールエステル(POE);ポリアルキレングリコール(「PAG」)、例えば、Dow Chemical製のRL−488A;E.I.du Pont de Nemoursによって商標名Krytox(登録商標)として販売されているパーフルオロポリエーテル(「PFPE」);Ausimontによって商標名Fomblin(登録商標)として販売されている製品;又はDaikin Industriesによって商標名Demnum(登録商標)として販売されている製品;並びにこれらの混合物、すなわち、本段落で開示した潤滑剤のいずれかの混合物であってよい。
【0067】
本発明と共に使用される潤滑剤は、ヒドロフルオロカーボン冷媒と共に使用するために設計されていてよく、圧縮冷蔵装置及び/又は空調装置の動作条件下で、本明細書に開示する組成物と混和性であってよい。幾つかの実施形態では、潤滑剤は、所与の圧縮機の要件、及び潤滑剤が曝露される環境を考慮することによって選択される。
【0068】
潤滑剤を含む本発明の組成物では、潤滑剤は、全組成物の15.0重量パーセント未満の量で存在し得る。潤滑剤は、更に、全組成物の5.0重量パーセント未満の量で存在してもよい。他の実施形態では、潤滑剤の量は、全組成物の約0.1重量パーセント〜3.5重量パーセントであってよい。また、潤滑剤は、全組成物の約0.1〜5重量パーセントであってもよい。
【0069】
本明細書に開示する組成物の上記重量比にもかかわらず、幾つかの伝熱システムでは、本組成物が使用されている間、そのような伝熱システムの1つ以上の設備構成要素から追加の潤滑剤が得られる可能性があることが理解されている。例えば、幾つかの冷蔵、空調、及びヒートポンプシステムでは、圧縮機及び/又は圧縮機潤滑剤サンプ内に潤滑剤を充填してよい。そのような潤滑剤は、任意の潤滑添加剤に加えて、そのようなシステムの冷媒中にも存在し得る。使用中、冷媒組成物は、圧縮機内に存在するとき、ある量の設備潤滑剤を捕捉して、冷媒−潤滑剤組成物を出発比率から変化させることができる。
【0070】
そのような伝熱システムでは、潤滑剤の大部分がシステムの圧縮機部分内に存在するときでさえも、システム全体において全組成物の最大約75重量パーセント〜最小約1.0重量パーセントほどが潤滑剤であってよい。例えば、スーパーマーケットの冷蔵陳列ケース等の幾つかのシステムでは、前記システムは、約3重量パーセントの潤滑剤(システムを充填する前の冷媒組成物中に存在する任意の潤滑剤を上回る)と約97重量%の冷媒と、を収容していてよい。
【0071】
本発明の組成物と共に使用される非冷媒成分は、少なくとも1つの染料を含んでいてよい。染料は、少なくとも1つの紫外線染料であってよい。紫外線染料は、蛍光染料であってよい。蛍光染料は、ナフタルイミド、ペリレン、クマリン、アントラセン、フェナントラセン(phenanthracenes)、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン、フルオレセイン、及び前記染料の誘導体、並びにこれらの組み合わせ(すなわち、本段落で開示した前述の染料又はその誘導体のいずれかの混合物)のうちの1つ以上を含んでよい。染料は、他の紫外線染料を更に含んでいてよい。
【0072】
幾つかの実施形態では、開示する組成物は、約0.001重量パーセント〜約1.0重量パーセントの紫外線染料を含有する。他の実施形態では、紫外線染料は、全組成物の約0.005重量パーセント〜約0.5重量パーセントの範囲の量で存在し得る。更に他の実施形態では、紫外線染料は、全組成物の約0.01重量パーセント〜約0.25重量パーセントの範囲の量で存在し得る。
【0073】
紫外線染料は、装置(例えば、冷蔵ユニット、空調装置、及び/又はヒートポンプ)内の漏出点及び/又は漏出点付近において染料の蛍光を観察することができることから、組成物の漏出を検出するために有用な成分である。紫外線の放出(例えば、染料からの蛍光)は、紫外線光下で観察することができる。したがって、そのような紫外線染料を含有する組成物が装置内の所与の点から漏出した場合、漏出点及び/又は漏出点付近で蛍光が検出され得る。
【0074】
本発明の組成物と共に使用することができる別の非冷媒成分は、開示する組成物中の1つ以上の染料の溶解度を改善するために選択された少なくとも1つの可溶化剤を含んでもよい。幾つかの実施形態では、染料の可溶化剤に対する重量比は、約99:1〜約1:1の範囲である。可溶化剤は、以下の化合物:炭化水素、炭化水素エーテル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル(例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル)、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン(例えば、塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルム、又はこれらの混合物)、エステル、ラクトン、芳香族エーテル、フルオロエーテル、及び1,1,1−トリフルオロアルカン、並びにこれらの混合物(すなわち、本段落で開示した可溶化剤のいずれかの混合物)のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。他の可溶化剤が、本発明の範囲内に含まれていてもよい。
【0075】
幾つかの実施形態では、非冷媒成分は、1つ以上の潤滑剤と開示する組成物との相溶性を改善するために少なくとも1つの相溶剤を含む。相溶剤は、炭化水素、炭化水素エーテル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル(例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル)、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン(例えば、塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルム、又はこれらの混合物)、エステル、ラクトン、芳香族エーテル、フルオロエーテル、1,1,1−トリフルオロアルカン、及びこれらの混合物(すなわち、本段落で開示した相溶剤のいずれかの混合物)のうちの1つ以上を含んでいてよい。他の相溶剤が含まれていてもよい。
【0076】
可溶化剤及び相溶剤は、炭素、水素、及び酸素のみを含有するエーテルを含む炭化水素エーテル(例えば、ジメチルエーテル(DME))、及びこれらの混合物(すなわち、本段落で開示した炭化水素エーテルのいずれかの混合物)を更に含んでいてよい。他の炭化水素エーテルが含まれていてもよい。
【0077】
相溶剤は、6〜15個の炭素原子を含有する直鎖、環式、脂肪族、及び/又は芳香族炭化水素相溶剤であってよい。相溶剤は、とりわけ、ヘキサン、オクタン、ノナン及びデカンのうちの1つ以上を含む、少なくとも1つの炭化水素であってよい。市販の炭化水素相溶剤としては、ExxonMobil(登録商標)Chemical(USA)から商標名Isopar(登録商標)Hとして販売されているもの、ウンデカン(C
11)とドデカン(C
12)との混合物(高純度C
11〜C
12イソパラフィン)、Aromatic 150(C
9〜C
11芳香族)、Aromatic 200(C
9〜C
15芳香族)、及びNaphtha 140(C
5〜C
11パラフィン、ナフテン、及び芳香族炭化水素の混合物)、並びにこれらの混合物(すなわち、本段落で開示した炭化水素のいずれかの混合物)が挙げられるが、これらに限定されない。他の炭化水素が含まれていてもよい。
【0078】
相溶剤は、追加的に又は代わりに、少なくとも1つのポリマー相溶剤であってもよい。ポリマー相溶剤は、フッ素化アクリレート及び非フッ素化アクリレートのランダムコポリマーであってよく、前記ポリマーは、式CH
2=C(R
1)CO
2R
2、CH
2=C(R
3)C
6H
4R
4、及びCH
2=C(R
5)C
6H
4XR
6(式中、Xは酸素又は硫黄であり、R
1、R
3、及びR
5は、独立して、H及びC
1〜4アルキルラジカルからなる群から選択され、R
2、R
4、及びR
6は、独立して、C及びFを含有する炭素鎖系ラジカルを含む群から選択され、チオエーテル基、スルホキシド基、又はスルホン基の形態のH、Cl、エーテル酸素、及び/又は硫黄を更に含んでいてもよい)によって表される少なくとも1つのモノマーの繰り返し単位、及びその混合物を含む。このようなポリマー相溶剤の例としては、E.I.du Pont de Nemours and Companyから商標名Zonyl(登録商標)PHSとして市販されているものが挙げられる。Zonyl(登録商標)PHSは、40重量パーセントのCH
2=C(CH
3)CO
2CH
2CH
2(CF
2CF
2)
mF(Zonyl(登録商標)フルオロメタクリレート又はZFMとも称される)(式中、mは1〜12、例えば、2〜8であってよい)と60重量パーセントのラウリルメタクリレート(CH
2=C(CH
3)CO
2(CH
2)
11CH
3、LMAとも称される)とを重合させることによって作製されるランダムコポリマーである。
【0079】
幾つかの実施形態において、相溶剤成分は、熱交換器中で見られる金属銅、アルミニウム、鋼、並びに/又はその他の金属及びこれらの金属合金の表面エネルギーを低減する添加剤を、(相溶剤の総量に基づいて)約0.01〜約30重量パーセント含有する。この表面エネルギーの低減は、潤滑剤の金属への付着を低減させ得る。金属表面エネルギー低減添加剤の例としては、DuPontから商標名Zonyl(登録商標)FSA、Zonyl(登録商標)FSP、及びZonyl(登録商標)FSJとして市販されているものが挙げられる。
【0080】
本発明の組成物と共に用いることができる別の非冷媒成分は、金属表面不活化剤である。金属表面不活化剤は、アレオキサリル(areoxalyl)ビス(ベンジリデン)ヒドラジド(CAS登録番号6629−10−3)、N,N’−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン(CAS登録番号32687−78−8)、2,2'−オキサミドビス−エチル−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(CAS登録番号70331−94−1)、N,N'−(ジサリシクリデン(disalicyclidene))−1,2−ジアミノプロパン(CAS登録番号94−91−7)、並びにエチレンジアミン四酢酸(CAS登録番号60−00−4)及びその塩、並びにこれらの混合物(すなわち、本段落で開示した金属表面不活化剤のいずれかの混合物)のうちの1つ以上を含んでいてよい。他の金属表面不活化剤を含んでいてもよい。
【0081】
本発明の組成物と共に用いられる非冷媒成分は、追加的に又は代わりに、ヒンダードフェノール、チオホスフェート、ブチル化トリフェニルホスホロチオネート、オルガノホスフェート、ホスファイト、アリールアルキルエーテル、テルペン、テルペノイド、エポキシド、フッ素化エポキシド、オキセタン、アスコルビン酸、チオール、ラクトン、チオエーテル、アミン、ニトロメタン、アルキルシラン、ベンゾフェノン誘導体、アリールスルフィド、ジビニルテレフタル酸、ジフェニルテレフタル酸、イオン性液体、及びこれらの混合物(すなわち、本段落で開示した安定剤のいずれかの混合物)のうちの1つ以上を含み得る安定剤であってよい。他の安定剤が含まれていてもよい。
【0082】
安定剤は、更に、以下のうちの1つ以上を含んでいてよい:トコフェロール;ヒドロキノン;t−ブチルヒドロキノン;モノチオホスフェート;ジチオホスフェート(Ciba Specialty Chemicals(「Ciba」)から商標名Irgalube(登録商標)63として市販されている);ジアルキルチオリン酸エステル(Cibaから商標名Irgalube(登録商標)353及びIrgalube(登録商標)350として市販されている);ブチル化トリフェニルホスホロチオネート(Cibaから商標名Irgalube(登録商標)232として市販されている);アミンホスフェート(Cibaから商標名Irgalube(登録商標)349として市販されている);ヒンダードホスファイト(CibaからIrgafos(登録商標)168として市販されている);トリス−(ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(Cibaから商標名Irgafos(登録商標)OPHとして市販されている);ジ−n−オクチルホスファイト;イソデシルジフェニルホスファイト(CibaからIrgafos(登録商標)DDPPとして市販されている);トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、及びトリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート等のトリアルキルホスフェート;トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、及びトリキシレニルホスフェート等のトリアリールホスフェート;イソプロピルフェニルホスフェート(IPPP)及びビス(t−ブチルフェニル)フェニルホスフェート(TBPP)等の混合アルキル−アリールホスフェート;ブチル化トリフェニルホスフェート(例えば、Syn−O−Ad(登録商標)8784を含む、商標名Syn−O−Ad(登録商標)として市販されているもの等);tert−ブチル化トリフェニルホスフェート(例えば、商標名Durad(登録商標)620として市販されているもの等);イソプロピル化トリフェニルホスフェート(例えば、商標名Durad(登録商標)220及びDurad(登録商標)110として市販されているもの等);アニソール;1,4−ジメトキシベンゼン;1,4−ジエトキシベンゼン;1,3,5−トリメトキシベンゼン;ミルセン;アロオシメン;リモネン(例えば、d−リモネン);レチナール;ピネン;メントール;ゲラニオール;ファルネソール;フィトール;ビタミンA;テルピネン;δ−3−カレン;テルピノレン;フェランドレン;フェンチェン;ジペンテン;リコピン等のカラテノイド(caratenoids)、βカロチン、及びゼアキサンチン等のキサントフィル;ヘパキサンチン及びイソトレチノイン等のレチノイド;ボルナン;1,2−プロピレンオキシド;1,2−ブチレンオキシド;n−ブチルグリシジルエーテル;トリフルオロメチルオキシラン;1,1−ビス(トリフルオロメチル)オキシラン;3−エチル−3−ヒドロキシメチル−オキセタン(例えば、OXT−101(Toagosei Co.,Ltd));3−エチル−3−((フェノキシ)メチル)−オキセタン(例えば、OXT−211(Toagosei Co.,Ltd));3−エチル−3−((2−エチル−ヘキシルオキシ)メチル)−オキセタン(例えば、OXT−212(Toagosei Co.,Ltd));アスコルビン酸;メタンチオール(メチルメルカプタン);エタンチオール(エチルメルカプタン);コエンザイムA;ジメルカプトコハク酸(DMSA);グレープフルーツメルカプタン((R)−2−(4−メチルシクロヘキサ−3−エニル)プロパン−2−チオール));システイン((R)−2−アミノ−3−スルファニル−プロパン酸);リポアミド(1,2−ジチオラン−3−ペンタンアミド);5,7−ビス(1,1−ジメチルエチル)−3−[2,3−又は3,4−ジメチルフェニル]−2(3H)−ベンゾフラノン(Cibaから商標名Irganox(登録商標)HP−136として市販されている);ベンジルフェニルスルフィド;ジフェニルスルフィド;ジイソプロピルアミン;ジオクタデシル3,3'−チオジプロピオネート(Cibaから商標名Irganox(登録商標)PS802として市販されている);ジドデシル3,3'−チオプロピオネート(Cibaから商標名Irganox(登録商標)PS800として市販されている);ジ−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(Cibaから商標名Tinuvin(登録商標)770として市販されている);ポリ−(N−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシ−ピペリジルスクシネート(Cibaから商標名Tinuvin(登録商標)622LDとして市販されている);メチルビスタローアミン;ビスタローアミン;フェノール−α−ナフチルアミン;ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン(DMAMS);トリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS);ビニルトリエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;2,5−ジフルオロベンゾフェノン;2',5'−ジヒドロキシアセトフェノン;2−アミノベンゾフェノン;2−クロロベンゾフェノン;ベンジルフェニルスルフィド;ジフェニルスルフィド;ジベンジルスルフィド;イオン性液体;並びにこれらの混合物及び組み合わせ。他の安定剤が含まれていてもよい。
【0083】
本発明の組成物と共に用いられる添加剤は、追加的に又は代わりに、イオン性液体安定剤であってもよい。イオン性液体安定剤は、以下のうちの1つ以上を含んでよい。室温(約25℃)で液体である有機塩;ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、及びトリアゾリウム、並びにこれらの混合物等の、カチオンを含有する塩;並びに[BF
4]−、[PF
6]−、[SbF
6]−、[CF
3SO
3]−、[HCF
2CF
2SO
3]−、[CF
3HFCCF
2SO
3]−、[HCClFCF
2SO
3]−[(CF
3SO
2)
2N]−、[(CF
3CF
2SO
2)2N]−、[(CF
3SO
2)
3C]−[CF
3CO
2]−、及びF−、並びにこれらの混合物等の、アニオン。幾つかの実施形態では、イオン性液体安定剤は、以下のうちの1つ以上を含んでいてよい。emim BF
4(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート);bmim BF
4(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラボラート);emim PF
6(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート);及びbmim PF
6(1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート)(これらは全て、Fluka(商標)(Sigma−Aldrich)から入手可能である)。
【0084】
幾つかの実施形態では、安定剤は、以下であってよい。2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tertブチルフェノール、トコフェロール等を含むアルキル化モノフェノール等のヒンダードフェノール(これは、1つ以上の置換、環式、直鎖、又は分枝鎖脂肪族置換基を有するフェノール等の、任意の置換フェノール化合物を含む);ヒドロキノン、及びt−ブチルヒドロキノンを含むアルキル化ヒドロキノン、他のヒドロキノン誘導体等;4,4'−チオ−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−tertブチルフェノール)、2,2'−チオビス(4メチル−6−tert−ブチルフェノール)等を含むヒドロキシル化チオジフェニルエーテル;4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2'−又は4,4−ビフェノールジオールの誘導体、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tertブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tertブチルフェノール)、4,4−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2'−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2−又は4,4−ビフェニルジオール(2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)を含む)等の、アルキリデン−ビスフェノール;ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT又は2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール);例えば、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、4,4−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)等の、ヘテロ原子を含むビスフェノール;アシルアミノフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N'−ジメチルアミノメチルフェノール);ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド等の、スルフィド;並びにこれらの混合物(すなわち、本段落で開示したフェノールのいずれかの混合物)。他のフェノールが含まれていてもよい。
【0085】
本発明の組成物と共に用いられる非冷媒成分は、追加的に又は代わりに、トレーサーを含んでよい。トレーサーは、同じ部類の化合物及び/又は異なる部類の化合物由来の2つ以上のトレーサー化合物であってもよい。幾つかの実施形態では、トレーサーは、全組成物の重量に基づいて、約50重量百万分率(ppm)〜約1000ppmの合計濃度で組成物中に存在する。他の実施形態では、トレーサーは、約50ppm〜約500ppmの合計濃度で存在する。追加的に又は代わりに、トレーサーは、約100ppm〜約300ppmの合計濃度で存在してもよい。
【0086】
トレーサーは、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、重水素化ヒドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素酸化化合物、アルコール、アルデヒド及びケトン、亜酸化窒素、並びにこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含んでよい。追加的に又は代わりに、トレーサーは、フルオロエタン、1,1,−ジフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,6,6,7,7,7−テトラデカフルオロヘプタン、ヨードトリフルオロメタン、重水素化炭化水素、重水素化ヒドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素酸化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(N
2O)、及びこれらの混合物のうちの1つ以上を含んでよい。幾つかの実施形態では、トレーサーは、2つ以上のヒドロフルオロカーボン、及び/又は1つ以上のパーフルオロカーボンと組み合わされた1つのヒドロフルオロカーボンを含有するブレンドである。他のトレーサーが含まれていてもよい。
【0087】
トレーサーは、組成物のいかなる希釈、汚染、又はその他の変化も検出できるようにするために、所定の量で本発明の組成物に添加され得る。
【0088】
本発明の組成物と共に用いることができる添加剤は、追加的に又は代わりに、参照により本明細書に援用する米国特許出願公開第2007/0284555号に詳細に記載されているように、パーフルオロポリエーテルであってよい。
【0089】
非冷媒成分に好適であると上で記載した特定の添加剤は、潜在的冷媒として同定されていることが理解されるであろう。しかし、本発明の実施形態によれば、これら添加剤を非冷媒成分において使用するとき、本発明の冷媒混合物の新規の特性及び基本的な特性に影響を及ぼす量では存在していない。諸実施形態において、不燃性冷媒混合物、及びそれらを含有する本発明の組成物は、HFO−1234yf、HFC−32、HFC−125、HFC−134a、及び存在する場合はHFO−1234ze以外の冷媒を約0.5重量パーセント以下しか含有しない。
【0090】
1つの実施形態では、本明細書に開示する組成物は、所望の量の個々の成分を合わせるための任意の簡便な方法によって調製してよい。1つの例では、所望の成分量を計量し、次いで、適切な容器内で合わせる。場合によっては、撹拌を用いてもよい。
【0091】
本発明の組成物は、ゼロオゾン層破壊係数及び低GWPを有し得る。更に、本発明の組成物は、現在使用中の多くのヒドロフルオロカーボン冷媒よりも低い地球温暖化係数を有し得る。本発明の態様では、AR4に基づいて1400未満のGWPを有する冷媒を提供し得る。本発明に従って提供される他の冷媒は、1000未満、700未満、500未満、400未満、300未満、150未満、100未満、及び/又は50未満のGWPを有し得る。
【0092】
装置、方法、及び使用プロセス
本明細書に開示する組成物は、冷媒等の伝熱組成物として有用である。
【0093】
蒸気圧縮冷蔵システムは、蒸発器、圧縮機、凝結器、及び膨張装置を含み得る。冷蔵サイクルは、複数の工程において冷媒を再使用して、ある工程で冷却効果を生じさせ、異なる工程で加熱効果を生じさせることができる。例示的なサイクルは、以下のように簡単に説明することができる。液体冷媒は、膨張装置を通って蒸発器に入り得、前記液体冷媒は、環境から熱を取り除くことによって蒸発器において低温で沸騰し得、それによって、気体を形成し、冷却を生じさせる。空気又は伝熱流体は、蒸発器の上及び/又は周囲を流れて、蒸発器内において冷媒の蒸発によって生じる冷却効果を、冷却される本体に伝えることができる。低圧気体は、圧縮機に入り得、そこで気体は圧縮されてその圧力及び温度が上昇する。次いで、高圧(圧縮)気体状冷媒は、凝結器に入り得、そこで冷媒は凝結し、その熱を環境に排出する。冷媒は、膨張装置に戻り、それを通って、凝結器における高圧水準から蒸発器における低圧水準まで、液体が膨張する。このようにして、サイクルを繰り返すことができる。
【0094】
1つの実施形態では、冷却を生じさせるプロセスは、本明細書に開示する冷媒混合物を凝結し、その後、冷却される本体付近の前記組成物を蒸発させる工程を含む。
【0095】
冷却される本体は、冷却されることが望まれる任意の空間、場所、物体、及び/又は本体として定義され得る。例としては、スーパーマーケットにおける冷蔵庫又は冷凍庫ケース等の冷蔵又は冷却を必要とする(開放又は密閉)空間が挙げられる。
【0096】
「付近」とは、蒸発器上を移動している空気が、冷却される本体内に又は本体周囲を移動するように、冷媒混合物を収容するシステムの蒸発器を、冷却される本体内及び/又は本体に近接して配置し得ることを意味する。
【0097】
冷却を生じさせるためのプロセスにおいて有用な不燃性冷媒混合物は、(a)20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、(b)20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、(c)24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、(d)25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、任意に(e)約0.0001重量パーセント〜10重量パーセントのHFO−1234zeと、から本質的になり得る。
【0098】
別の実施形態では、冷却を生じさせるためのプロセスにおいて有用な不燃性冷媒混合物は、(a)20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、(b)20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、(c)24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、(d)25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、(e)約0.0001重量パーセント〜10重量パーセントのトランス−HFO−1234zeと、から本質的になり得る。
【0099】
更に、冷却を生じさせるためのプロセスにおいて有用な不燃性冷媒混合物は、約0.0001重量パーセント〜5重量パーセントのHFO−1234zeを含有し得る。他の態様では、不燃性冷媒混合物は、約1重量パーセント〜10重量パーセントのHFO−1234zeを含有し得る。更に別の実施形態では、不燃性冷媒混合物は、約1重量パーセント〜5重量パーセントのトランス−HFO−1234zeを含有する。
【0100】
冷却を生じさせるためのプロセスにおいて有用な不燃性冷媒混合物は、諸実施形態において、(a)23重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、(b)22重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、(c)24.5重量パーセント〜27重量パーセントのHFC−125と、(d)25.5重量パーセント〜28重量パーセントのHFC−134aと、(e)約0.0001重量パーセント〜5重量パーセントのトランス−HFO−1234zeと、を含み得る。
【0101】
別の実施形態では、冷却を生じさせるためのプロセスにおいて有用な不燃性冷媒混合物は、共沸様であってよい。特に、共沸様であることが見出された冷媒混合物の範囲としては、20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、を有するものが挙げられる。トランス−HFO−1234zeも含有する冷媒混合物は、前記混合物が、例えば、20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、約0.0001重量パーセント〜約1重量パーセントのHFO−1234zeと、を含むとき、共沸様であることが見出されている。
【0102】
冷却を生じさせるためのプロセスにおいて有用な不燃性冷媒混合物は、約0.0001重量パーセント〜約0.1重量パーセントの量のトランス−HFO−1234zeを含有し得る。更に、冷却を生じさせるためのプロセスにおいて有用な不燃性冷媒混合物は、共沸様であってよく、トランス−HFO−1234zeは、存在する場合、約0.0001重量パーセント〜約0.1重量パーセントの量で存在し得る。
【0103】
諸実施形態において、冷却のためのプロセスにおいて有用な不燃性冷媒混合物等の組成物は、23.3重量パーセント〜24.5重量パーセントのジフルオロメタン(HFC−32)と、24.5重量パーセント〜25.7重量パーセントのペンタフルオロエタン(HFC−125)と、25.5重量パーセント〜26.7重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)と、24.3重量パーセント〜25.5重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)と、を含み得る。このような組成物は、不燃性冷媒混合物等の冷媒混合物中に含まれていてよく、また、上記のように共沸様であると特徴付けることができる。
【0104】
1つの具体例では、冷却のためのプロセスにおいて有用な不燃性冷媒混合物は、24.3重量パーセントのジフルオロメタン(HFC−32)と、24.7重量パーセントのペンタフルオロエタン(HFC−125)と、25.7重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)と、25.3重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)と、を含み得る。
【0105】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示する冷媒混合物は、中温又は低温冷蔵等の冷蔵用途において有用であり得る。中温冷蔵システムとしては、スーパーマーケット及びコンビニエンスストアの冷蔵ケース、例えば、飲料、乳製品、生鮮食品、及びその他の冷蔵される品目用のケース等が挙げられる。また、中温冷蔵システムは、生鮮食品輸送システムも含み得る。低温冷蔵システムとしては、スーパーマーケット及びコンビニエンスストアの冷凍キャビネット及びディスプレイ、製氷機、並びに冷凍食品輸送システムが挙げられる。その他の具体的な用途は、商業用、工業用、及び/又は住宅用の冷蔵庫及び冷凍庫、製氷機、内蔵型の冷却庫及び冷凍庫、スーパーマーケットの棚及び分散システム、ウォークイン及びリーチインの冷却庫及び冷凍庫、並びに複合システムであり得る。
【0106】
更に、幾つかの実施形態では、開示する組成物は、水、グリコール、二酸化炭素、及び/又はフッ素化炭化水素流体を含み得る二次伝熱流体を使用することによって、遠隔位置に冷却を提供する二次ループシステムにおいて一次冷媒として機能し得る。この場合、二次伝熱流体は、冷却される本体であるが、その理由は、二次流体が、蒸発器に近接しており、かつ冷却される遠隔本体に移動する前に冷却されるためである。
【0107】
本明細書に開示する組成物は、R−404A(44重量パーセントのR−125、52重量パーセントのR−143a(1,1,1−トリフルオロエタン)、及び4.0重量パーセントのR−134aのブレンドについてのASHRAE番号)、及びR−507(50重量パーセントのR−125及び50重量パーセントのR−143aのブレンドについてのASHRAE番号)を含む、現在用いられている溶媒の低GPW代替品として有用であり得る。更に、本明細書に含まれる組成物は、クロロジフルオロメタンを含む、R−22(HCFC−22とも称される)の低GWP代替品として有用であり得る。これらの組成物は、R−407A、R−407C、及び/又はR−407Fの低GWP代替品としても有用であり得る。
【0108】
代替冷媒は、元々異なる冷媒のために設計された既存の冷蔵設備において用いることができる場合、特に有用であり得る。本明細書に開示する組成物は、R−404A、R507、R−407A、R−407C、R−407F、及びR−22冷媒のために設計された設備において、それぞれR−404A、R−507、R−407A、R−407C、R−407F、及びR−22の代替品として有用であり得る。例えば、上記組成物は、冷媒R−22と共に用いるために設計されたシステム及び/又は装置において冷媒として用いることができる。同様に、本明細書に開示する組成物は、R−407A、R−407C、及びR−407Fのために設計された設備においてR−407A、R−407C、及びR−407Fの代替品として有用であり得る。幾つかの態様において、本明細書に開示する組成物は、これらの公知の冷媒と共に用いるために設計された既存の設備を改造する必要なく、これらの公知の冷媒を置き換えることができる。他の態様では、本明細書に開示する組成物の性能を最適化するために設備を改造してもよい。更に、本明細書に開示する組成物は、新規のシステムにおいて使用することができる。諸実施形態において、そのような新規のシステムは、本明細書に開示する組成物専用に設計され得る。
【0109】
開示する組成物は、冷媒として有用であり得、R−404A、R−507、R−407A、R−407C、R−407F、及びR−22等の冷媒によって提供される冷却性能と少なくとも同等の冷却性能(例えば、冷却能力及びエネルギー効率)を提供することができる。
【0110】
諸実施形態では、R−404A及びR−507からなる群から選択される冷媒を代替するための方法を提供する。追加的に又は代わりに、代替のために選択される冷媒としては、R−407A、R−407C、R−407F、及び/又はR−22を挙げることができる。この方法は、本明細書に記載の通り、HFO−1234yfと、HFC−32と、HFC−125と、HFC−134aと、任意にHFO−1234zeと、を含む冷媒混合物を冷蔵装置に充填する工程を含み得る。冷蔵装置は、R−404A及び/又はR−507と共に使用するのに好適であり得る。追加的に又は代わりに、冷蔵装置は、R−22と共に使用するのに好適であり得る。また、冷蔵装置は、R−407A、R−407C、及び/又はR−407Fと共に使用するのにも好適であり得る。冷蔵装置は、蒸発温度が約−40℃〜約0℃の範囲であるシステムを含み得る。特に、冷蔵装置は、蒸発温度が約−40℃〜約−20℃の範囲であるシステムを含み得る。追加的に又は代わりに、冷蔵装置は、蒸発温度が約−20℃〜約0℃の範囲であるシステムを含み得る。
【0111】
冷媒を代替するための方法において有用な不燃性冷媒混合物は、(a)20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、(b)20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、(c)24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、(d)25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、任意に(e)約0.0001重量パーセント〜10重量パーセントのHFO−1234zeと、から本質的になり得る。
【0112】
別の実施形態では、冷媒を代替するための方法において有用な不燃性冷媒混合物は、(a)20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、(b)20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、(c)24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、(d)25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、(e)約0.0001重量パーセント〜10重量パーセントのトランス−HFO−1234zeと、から本質的になり得る。
【0113】
別の実施形態では、冷媒を代替するための方法において有用な不燃性冷媒混合物は、約0.0001重量パーセント〜5重量パーセントのHFO−1234zeを含有し得る。別の実施形態では、不燃性冷媒混合物は、約1重量パーセント〜10重量パーセントのHFO−1234zeを含有し得る。更に別の実施形態では、不燃性冷媒混合物は、約1重量パーセント〜5重量パーセントのトランス−HFO−1234zeを含有し得る。
【0114】
また、冷媒を代替するための方法において有用な不燃性冷媒混合物は、(a)23重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、(b)22重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、(c)24.5重量パーセント〜27重量パーセントのHFC−125と、(d)25.5重量パーセント〜28重量パーセントのHFC−134aと、(e)約0.0001重量パーセント〜5重量パーセントのトランス−HFO−1234zeと、を含み得る。
【0115】
冷媒を代替するための方法において有用な不燃性冷媒混合物は、共沸様であってよい。特に、共沸様であることが見出された冷媒混合物の範囲としては、20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、を有するものが挙げられる。更に、トランス−HFO−1234zeも含有する冷媒混合物は、前記混合物が20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、約0.0001重量パーセント〜約1重量パーセントのHFO−1234zeと、を含むとき、共沸様であることが見出されている。
【0116】
冷媒を代替するための方法において有用な不燃性冷媒混合物は、約0.0001重量パーセント〜約0.1重量パーセントの量のトランス−HFO−1234zeを含有し得る。
【0117】
冷媒を代替するための方法において有用な不燃性冷媒混合物は、共沸様であり得、前記混合物がトランス−HFO−1234zeを含む場合、HFO−1234zeは、約0.0001重量パーセント〜約0.1重量パーセントの範囲の量で存在し得る。
【0118】
諸実施形態において、冷媒を代替するための方法において有用な不燃性冷媒混合物等の組成物は、23.3重量パーセント〜24.5重量パーセントのジフルオロメタン(HFC−32)と、24.5重量パーセント〜25.7重量パーセントのペンタフルオロエタン(HFC−125)と、25.5重量パーセント〜26.7重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)と、24.3重量パーセント〜25.5重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)と、を含み得る。そのような組成物は、冷媒を代替するための方法において有用である不燃性冷媒混合物等の冷媒混合物中に含まれ得、上記のように、共沸様であることを特徴とし得る。特に、冷媒を代替するための方法は、R−22冷媒又は類似の冷媒と共に用いるために設計された伝熱システムにおいて冷媒R−22を代替する方法を含み得る。また、冷媒を代替するための方法は、冷媒R−407A、R−407C、及び/又はR−407Fと共に用いるために設計された伝熱システムにおいて冷媒R−407A、R−407C、及び/又はR−407Fを代替する方法を含み得る。前記方法は、直前に記載した組成物を伝熱システムに充填する工程を含み得る。なお、現在R−22を使用している伝熱システムは、この組成物と共に使用するように直ちに移行することができる。言い換えれば、移行するために中間物、例えば、R−404A等の冷媒を利用する必要はない。同様に、現在R−407A、R−407C、及び/又はR−407Fを使用している伝熱システムは、本発明の組成物と共に使用するように直ちに移行することができる。
【0119】
1つの具体例において、例えば、R−22、R−407A、R−407C、及び/又はR−407F等の冷媒を代替するための方法において有用な不燃性冷媒混合物は、24.3重量パーセントのジフルオロメタン(HFC−32)と、24.7重量パーセントのペンタフルオロエタン(HFC−125)と、25.7重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)と、25.3重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)と、を含み得る。したがって、R−22、R−407A、R−407C、及び/又はR−407Fのために設計された伝熱システムにおいて、それぞれR−22、R−407A、R−407C、及び/又はR−407Fを代替するための方法は、直前に記載した組成物を伝熱システムに充填する工程を含み得る。上述のように、R−22、R−407A、R−407C、R−407F、及び/又は類似の冷媒と共に用いるために設計されたシステムは、本発明の組成物のうちの1つと共に用いるように直ちに移行することができる。冷媒、例えば、上述の組成物のいずれかを代替するための方法において用いられる組成物は、非冷媒成分を更に含んでいてよい。
【0120】
既存の冷媒、例えば、R−404A、R−507、R−407A、R−407C、R−407F、及び/又はR−22等を代替するための方法は、伝熱システムの蒸発器において、既存の冷媒を代替するのに用いられる組成物を蒸発させる工程を更に含んでよい。蒸発器は、中温で動作し得る。蒸発器の中温は、−20℃〜0℃の範囲の温度を含み得る。別の実施形態では、中温冷蔵は、蒸発器温度が−20℃〜−5℃、又は−15℃〜0℃、又は−20℃〜−10℃、又は−15℃〜5℃、又は−20℃〜−15℃、又は−15℃〜−10℃、又は−20℃〜−15℃の範囲であるシステムを含む。そのような蒸発器は、冷蔵食品用ディスプレイ、例えば、食料品店における農産品のディスプレイ又は冷蔵食品ケース用の伝熱システムに含まれ得る。場合によっては、中温で動作する蒸発器を含む伝熱システムにおいて前記組成物を用いるとき、前記組成物は、蒸発器が中温で動作するときに伝熱システムにおける冷媒としてR−22を用いて生じる冷蔵能力の7%以内の冷蔵能力を有する。
【0121】
また、前記方法は、伝熱システムの圧縮機において既存の冷媒を代替する組成物を圧縮する工程を含み得る。圧縮機は、伝熱システムにおいて冷媒としてR−22を用いて生じる排出温度よりも低い排出温度を伴い得る。例えば、前記システムにまずR−22を充填してよく、圧縮機は、特定の排出温度を伴い得る。R−22を本明細書に記載する組成物のうちの1つで代替する場合、圧縮機の排出温度は、R−22の使用に関連する排出温度よりも低くてよい。これについては、以下の実施例でより詳細に論じる。
【0122】
別の実施形態は、代替される冷媒及び潤滑剤の両方を収容する伝熱システムを再充填する方法を提供する。前記方法は、前記システムにおける潤滑剤のかなりの部分を保持しながら、代替される冷媒を伝熱システムから除去し、本明細書に開示する組成物のうちの1つを前記伝熱システムに導入することを含み得る。
【0123】
別の実施形態では、本明細書に開示する組成物を含む熱交換システムであって、冷凍庫、冷蔵庫、ウォークインクーラー、スーパーマーケットの冷蔵及び/又は冷凍庫システム、可動式冷蔵庫、並びにこれらの組み合わせを有するシステムを含む群から選択されるシステムを提供する。
【0124】
1つの実施形態では、本明細書に開示する組成物を収容する伝熱システムを提供する。例えば、可動式及び/又は定置式冷蔵装置等の冷蔵装置は、本明細書に開示する組成物を収容し得る。特に、中温冷蔵装置は、本明細書に開示する組成物を収容し得る。別の実施形態では、低温冷蔵装置が、本明細書に開示する組成物を収容し得る。伝熱システム及び/又は冷蔵装置は、蒸発器、圧縮機、凝結器、及び膨張装置を含み得る。
【0125】
熱交換システム、伝熱システム、及び/又は冷蔵装置において有用な不燃性冷媒混合物は、(a)20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、(b)20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、(c)24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、(d)25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、任意に(e)約0.0001重量パーセント〜10重量パーセントのHFO−1234zeと、から本質的になり得る。
【0126】
別の実施形態では、熱交換システム、伝熱システム、及び/又は冷蔵装置において有用な不燃性冷媒混合物は、(a)20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、(b)20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、(c)24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、(d)25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、(e)約0.0001重量パーセント〜10重量パーセントのトランス−HFO−1234zeと、から本質的になり得る。
【0127】
熱交換システム、伝熱システム、及び/又は冷蔵装置において有用な不燃性冷媒混合物は、約0.0001重量パーセント〜5重量パーセントのHFO−1234zeを含有し得る。別の実施形態では、不燃性冷媒混合物は、約1重量パーセント〜10重量パーセントのHFO−1234zeを含有し得る。更に別の実施形態では、不燃性冷媒混合物は、約1重量パーセント〜5重量パーセントのトランス−HFO−1234zeを含有し得る。
【0128】
更に、熱交換システム、伝熱システム、及び/又は冷蔵装置において有用な不燃性冷媒混合物は、(a)23重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、(b)22重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、(c)24.5重量パーセント〜27重量パーセントのHFC−125と、(d)25.5重量パーセント〜28重量パーセントのHFC−134aと、(e)約0.0001重量パーセント〜5重量パーセントのトランス−HFO−1234zeと、を含む。
【0129】
別の実施形態では、熱交換システム、伝熱システム、及び/又は冷蔵装置において有用な不燃性冷媒混合物は、共沸様であってよい。特に、共沸様であることが見出された冷媒混合物の範囲としては、20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、を有するものが挙げられる。更に、トランス−HFO−1234zeも含有する冷媒混合物は、前記混合物が20重量パーセント〜25.5重量パーセントのHFO−1234yfと、20重量パーセント〜24.5重量パーセントのHFC−32と、24.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−125と、25.5重量パーセント〜30重量パーセントのHFC−134aと、約0.0001重量パーセント〜約1重量パーセントのHFO−1234zeとを含むとき、共沸様であることが見出されている。
【0130】
別の実施形態では、熱交換システム、伝熱システム、及び/又は冷蔵装置において有用な不燃性冷媒混合物は、約0.0001重量パーセント〜約0.1重量パーセントのトランス−HFO−1234zeを含有する。熱交換システム、伝熱システム、及び/又は冷蔵装置において有用な不燃性冷媒混合物は、共沸様であってよく、トランス−HFO−1234zeを含み、HFO−1234zeが存在する場合、約0.0001〜約0.1重量パーセントの量で存在する。
【0131】
更なる実施形態では、熱交換システム、伝熱システム、及び/又は冷蔵装置において有用な不燃性冷媒混合物等の組成物は、23.3重量パーセント〜24.5重量パーセントのジフルオロメタン(HFC−32)と、24.5重量パーセント〜25.7重量パーセントのペンタフルオロエタン(HFC−125)と、25.5重量パーセント〜26.7重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)と、24.3重量パーセント〜25.5重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)と、を含み得る。1つの具体例では、組成物は、24.3重量パーセントのジフルオロメタン(HFC−32)と、24.7重量パーセントのペンタフルオロエタン(HFC−125)と、25.7重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)と、25.3重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)と、を含み得る。このような組成物は、不燃性冷媒混合物等の冷媒混合物中に含まれていてよく、また、上記のように、共沸様であると特徴付けることができる。
【0132】
熱交換システム、伝熱システム、及び/又は冷蔵装置は、冷媒R−22と共に用いるために設計されていてもよい。例えば、システム及び/又は装置は、冷媒R−22と共に用いるために設計された膨張装置を含んでよい。システム及び/又は装置が、以前R−22と共に用いられていた場合、R−22冷媒を除去し、そして、本明細書に開示する組成物のうちの1つで代替してよい。同様に、熱交換システム、伝熱システム、及び/又は冷蔵装置は、冷媒R−407A、R−407C、及び/又はR−407Fと共に用いるために設計されたものであってもよく、あるいは以前R−22からR−407A、R−407C、及び/又はR−407F用に改造したものであってもよい。例えば、システム及び/又は装置は、冷媒R−407A、R−407C、及び/又はR−407Fと共に用いるために設計された膨張装置を含んでよい。システム及び/又は装置が、以前R−407A、R−407C、及び/又はR−407Fと共に用いられていた場合、R−407A、R−407C、及び/又はR−407Fを除去し、本明細書に開示する組成物のうちの1つで代替してよい。
【0133】
システム及び/又は装置は、上述のように、圧縮機を含んでいてよい。システム及び/又は装置に本明細書に開示する組成物のうちの1つを充填するとき、R−22とは対照的に、圧縮機の排出温度は、システム及び/又は装置にR−22を充填したときに圧縮機で生じる排出温度よりも低くてよい。
【実施例】
【0134】
本明細書に開示する概念を以下の実施例において更に説明するが、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0135】
(実施例1)
蒸気漏出の影響
指示される温度で、容器に初期組成物を90%まで充填し、この組成物の初期蒸気圧を測定する。温度を一定に保持しながら、初期組成物の50重量パーセントが除去されるまで組成物を容器から漏出させ、その時点で容器内に残っている組成物の蒸気圧を測定する。蒸気圧の変化を表1に列挙する。
【0136】
【表1】
【0137】
本発明によって定義される組成物は、組成物の50%が漏出した後、蒸気圧が10%未満しか変化しない共沸様であることが分かる。
【0138】
(実施例2)
可燃性
可燃性混合物は、電子点火源を用いて、ASTM(米国材料試験協会)E681−04に従って試験することによって同定することができる。そのような可燃性の試験を、相対湿度50パーセントで冷媒混合物に対して実施した。
【0139】
可燃性の境界を求めるために、90%液体が充填された容器において、−36℃(ASHRAE規格34に指定の通り、泡立ち点よりも10度高い)で、液相及び蒸気相の両方について、2つの冷媒混合物の可燃性を求めた。組成物は、表2に記載する濃度でHFO−1234yf/HFC−32/HFC−125/HFC−134aを含有していた。
【0140】
【表2】
【0141】
表2の上記データに基づいて、約24.5重量パーセント超のHFC−32及び約24.5重量パーセント未満のHFC−125を含む組成物は、可燃性冷媒として分類されるであろう。
【0142】
追加の蒸気漏出分析及び可燃性試験を実施して、本明細書に開示する組成物が、「Designation and Safety Classification of Refrigerants」という表題のASHRAE規格34−2013の下、ASHRAEクラス1不燃性の要件を満たすかどうかを判定した。これらの規格に従って、組成物の公称処方を開発する。次いで、製造におけるばらつきを説明するために製造許容差を割当てる。公称処方及び製造許容差によって規定される範囲内の組成を含む組成物を、本発明の実施形態に従って分析する。これらの組成物を以下の表2.1に記載する。
【0143】
【表3】
【0144】
製造許容差を選択した後、最悪状況処方(WCF)を選択する。これは、製造許容差に基づいて最も可燃性の高い可能性のある処方を表す。次いで、幾つかのASHRAE規格34の漏出シナリオについての最悪の場合の条件で、NIST Refleak 3.2を用いて冷媒の蒸気漏出についてWCFをモデル化する。このモデル化に基づいて、最悪の場合の分割処方(WCFF)を特定するが、この場合、WCFFは、冷媒液相又は冷媒蒸気相のいずれかにおいて最高濃度の可燃性成分が観察されるシナリオに対応する。本発明の組成物、及び比較目的のために選択した組成物について、WCFFは、54.4℃の初期温度でまずシリンダーに組成物を90%まで充填したとき、泡立ち点温度よりも10℃高い初期蒸気組成物であることが決定された。次いで、WCFF組成物を、ASHRAE規格に従って、60℃及び相対湿度50%でASTM E681−04に従って可燃性について試験する。発火したとき、組成物を不燃性であるとみなすためには、12リットルの球形フラスコにおけるWCFFについての火炎角が90℃未満の弧を示さなければならない。表2.2は、本発明に係る組成物の例示的な実施形態についての試験結果を含む。これらの結果は、「実施例の実施形態」において表中に示される。また、表2.2は、2つの比較例を含み、これらは、比較例(C)及び(D)に記載の処方を有する組成物中に存在する可燃性成分R−32の量に基づいて可燃性であると予測される。例えば、比較例(C)のWCFFシナリオ(「比較例(C)」)は、40.2及び40.4重量パーセントのR−32を含む。比較例(D)のWCFFシナリオ(「比較例(D)」)は、更に多くの量のR−32を含む。R−32のこれらのレベルに基づいて、比較例(C)及び(D)の試験結果は、可燃性について高い潜在力を有していると予測される。比較例(C)及び(D)は、予言的な例であり、アスタリスク(*)の付いた結果は、予測結果であることに留意すべきである。試験は、未だ実施されていない。
【0145】
【表4】
【0146】
上に示した通り、本発明の一実施形態に係る例示的な実施形態は、ASHRAE規格34ガイドラインの下、不燃性である。対照的に、比較例(C)及び(D)は、可燃性であると予測されるので、ASHRAEクラス1の不燃性基準を満たさないと予測される。
【0147】
(実施例3)
冷蔵性能
表3は、R−404Aと比較したときの幾つかの例示的な組成物の性能を示す。表3中、蒸発器温度は、蒸発器の温度であり、蒸発器圧は、蒸発器の圧力であり、凝結機圧は、凝結機の圧力であり、圧縮機出口温度は、圧縮機の出口の温度(時に、圧縮機の排出温度とも呼ばれる)であり、COPは、性能係数(エネルギー効率と似ている)であり、CAPは、体積冷却能力である。データは、以下の条件に基づく。
【0148】
【表5】
【0149】
【表6】
【0150】
結果は、本発明の組成物が、R−404Aと同等の冷却能力を示すことを示し、これは、これらの組成物が、既存のR−404Aシステムを改造するのに好適であり得るか又は新規の冷蔵システムにおいて有用であり得ることも立証する。また、本組成物は、R−404Aよりも高いエネルギー効率も示す。
【0151】
(実施例4)
冷蔵性能
表4は、R−404A並びに比較例(A)及び(B)と比較したときの幾つかの例示的な組成物の性能を示す。表4中、蒸発器圧は、蒸発器の圧力であり、凝結機圧は、凝結機の圧力であり、圧縮機出口温度は、圧縮機の出口の温度(時に、圧縮機の排出温度とも呼ばれる)であり、COPは、性能係数(エネルギー効率と似ている)であり、CAPは、体積冷却能力である。データは、以下の条件に基づく。
【0152】
【表7】
【0153】
【表8】
【0154】
結果は、本発明の組成物が、R−404Aに比べて改善されたエネルギー効率をもたらすことを示す。更に、本発明の組成物は、R−404Aのわずか数パーセント以内の冷却能力をもたらす。比較例(B)は、他の組成物の冷却能力には及ばないことに留意すべきである。また、比較例(A)は、似たような冷却性能をもたらすが、より高い圧縮機出口温度を示すことにも留意すべきである。圧縮機の温度が高いと、圧縮機の寿命を縮めると予測され、そのためシステムの運転コストが増大する。表4に例示する組成物は、R−22の代替品としても役に立ち得る。
【0155】
(実施例5)
冷蔵性能
実施例5〜7は、本発明に係る組成物の例示的な実施形態についての性能データを含む。特に、これらの実施例及び対応する表に記載する例示的な実施形態「実施例の実施形態」は、24.3重量パーセントのジフルオロメタン(HFC−32)と、24.7重量パーセントのペンタフルオロエタン(HFC−125)と、25.7重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)と、25.3重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)と、を含む組成物である。表5.1に、この組成を列挙する。
【0156】
【表9】
【0157】
実施例5〜7では、用語「COP」は、対応する表に含まれる。これらの実施例及び対応する表で使用するとき、「COP」とは、性能係数を指す。
【0158】
次に表5.2及び5.3a〜5.3bを参照すると、例示的な実施形態についての性能データが示されている。比較目的のために、R−22についての性能データを示す。更に、R−407A、R−407C、及びR−407Fについての性能データを示す。性能データ及び付随する議論によって証明される通り、例示的な実施形態は、公知の冷媒R−22、R−407A、R−407C、及びR−407Fに比べて幾つかの利点を提供する。更に、例示的な実施形態についての性能データは、公知の冷媒についての性能データと同等以上であり、これは、例示的な実施形態が、これらの公知の冷媒の好適な代替品であることを示す。
【0159】
表5.2は、これらの組成物についてのGWPを示す。表5.2に示すように、例示的な実施形態についてのGWPは、R−22、R−407A、R−407C、及びR−407FについてのGWPよりも著しく低い。したがって、GWPの観点から、例示的な実施形態は、R−22、R−407A、R−407C、及び/又はR−407Fの望ましい代替冷媒である。
【0160】
【表10】
【0161】
表5.3a〜5.3bは、R−22、例示的な実施形態、R−407A、R−407C、及びR−407Fについての性能データを示す。表5.3bは、表5.3aの続き又は延長であり、表5.3aに追加の縦列を提供することに留意すべきである。例えば、表5.3aの最初の横列は、過冷却量6K及び蒸発器の温度−35℃におけるR−22についての性能データを含む。表5.3bの最初の横列は、これらの同条件下、すなわち、過冷却量6K及び蒸発器の温度−35℃におけるR−22についての追加の性能データを含む。同様に、表5.3a〜5.3bの2番目の横列は、過冷却量6K及び蒸発器の温度−35℃における例示的な実施形態についての性能データを示す。このように、表5.3bの各列は、表5.3aの対応する列に記載されている動作条件における、指名された組成物についての追加データを提供する。
【0162】
例えば、一部のシステムは過冷却量6Kで稼働し、一部のシステムは過冷却量0Kで稼働するので、これらの両条件についてのデータを表5.3a〜5.3bにおいて以下に提供する。更に、これらの表に含まれるデータは、以下の条件に基づく。
【0163】
【表11】
【0164】
【表12】
【0165】
【表13】
【0166】
表5.3a〜5.3bに示すように、例示的な実施形態は、公知の冷媒R−22、R−407A、R−407C、及びR−407Fに比べて幾つかの利点を提供する。例えば、例示的な実施形態は、ほとんどの他の組成物よりも著しく低い排出温度を有する。実際には、R−407Aが、特定の条件下で、例示的な実施形態についての排出温度と同程度低い排出温度を有する、上に列挙されている中で唯一の組成物である。排出温度とは、伝熱システムの圧縮機における出口温度を指す。排出温度が高いと、圧縮機において、内部及び/又は外部冷却等の冷却を必要とする場合がある。また、排出温度が高いと、圧縮機の寿命の長さを縮めることもある。例えば、高い排出温度で動作する圧縮機は、低い排出温度で動作する圧縮機ほど長持ちしない可能性がある。したがって、例示的な実施形態に関連する低い排出温度は、他の公知の冷媒に比べて利点を提供する。
【0167】
例示的な実施形態の能力及びCOPとR−22、R−407A、R−407C、及びR−407Fの能力及びCOPとの比較は、例示的な実施形態が、これらの公知の冷媒の好適な代替品であることを示す。能力及びCOPは、これに関して有用な指標であるが、その理由は、能力が、冷媒がもたらす冷却の量を測定し、COPが、その冷却をもたらすのに必要なエネルギーの量を測定するためである。したがって、公知の冷媒について提案されている代替品が、公知の冷媒の能力及びCOP以上の能力及びCOPを有する場合、これは、提案されている冷媒が、公知の冷媒の好適な代替品である可能性を示す。ここで、表5.3a〜5.3bは、例示的な実施形態が、他の公知の冷媒の能力及びCOP以上の能力及びCOPを有することを示す。特に、例示的な実施形態のCOPは、公知の冷媒のCOPの7%以内である。したがって、例示的な実施形態は、R−22、R−407A、R−407C、及び/又はR−407Fの好適な代替品である。
【0168】
最後に、例示的な実施形態の質量流量は、R−22、R−407A、R−407C、及びR−407Fの質量流量と同様である。この質量流量における類似性は、例示的な実施形態が、公知の冷媒と共に用いるために設計されたシステムにおいてこれらの公知の冷媒を置き換えるのに好適であることを示し得る。例えば、伝熱システムに含まれる熱膨張弁は、質量流量における類似性に起因して公知の冷媒及び例示的な実施形態の両方に適合し得る。言い換えれば、例示的な実施形態は、システムに含まれる膨張装置を交換及び/又は改造する必要がない場合があるので、公知の冷媒又は他の似たような冷媒と共に用いるために設計されたシステムにおいてフィールド改造の良好な候補となり得る。
【0169】
(実施例6)
冷蔵性能
実施例6〜7は、冷媒R−22についての性能データ及び2つの比較例についての性能データを含む。性能データ及び付随する議論によって証明されるように、例示的な実施形態は、R−22及び比較例に比べて幾つかの利点を提供する。更に、例示的な実施形態は、比較例(C)又は比較例(D)のいずれよりもR−22を代替するのにより適している。
【0170】
比較例(C)は、25重量パーセントのジフルオロメタン(HFC−32)と、25重量パーセントのペンタフルオロエタン(HFC−125)と、25重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)と、25重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)と、を含む組成物である。比較例(D)は、25重量パーセントのジフルオロメタン(HFC−32)と、25重量パーセントのペンタフルオロエタン(HFC−125)と、20重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)と、30重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)と、を含む組成物である。
【0171】
表6.1は、実施例6〜7に続く表で使用される略語に対応する組成物を要約する。
【0172】
【表14】
【0173】
表6.2は、R−22、例示的な実施形態、並びに比較例(C)及び(D)についてのGWPを示す。
【0174】
【表15】
【0175】
表6.2に示す通り、例示的な実施形態は、1400よりも低いGWPを有する。これは、R−22及び比較例(C)の両方のGWPよりも低い。このGWPによって、例示的な実施形態は、R−22又は高いGWPを有する類似の冷媒の望ましい代替品になる。また、例示的な実施形態は、新規の伝熱システムにとって望ましい代替品にもなる。
【0176】
表6.3a〜6.3bは、R−22、例示的な実施形態、並びに比較例(C)及び(D)についての性能データを含む。表5.3a〜5.3bと同様に、表6.3bは、表6.3aの続き又は延長であり、表6.3aに追加の縦列を提供する。例えば、表6.3a〜6.3bの最初の横列は、蒸発器の温度−20℃におけるR−22についての性能データを提供する。これらの表の2番目の横列は、蒸発器の温度−20℃における例示的な実施形態についての性能データを提供する。このように、表6.3bの各列は、表6.3aの対応する列に記載されている動作条件における、指名された組成物についての追加データを提供する。
【0177】
表6.3a〜6.3bは、−20℃〜0℃の範囲の中程度の蒸発器温度についてのデータを含む。データは、以下の条件に基づく。
【0178】
【表16】
【0179】
【表17】
【0180】
【表18】
【0181】
表6.3a〜6.3bに示すように、例示的な実施形態は、R−22及び比較例に比べて幾つかの利点を提供する。例えば、例示的な実施形態は、R−22と関連する排出温度よりも著しく低い排出温度を伴う。幾つかの条件下では、例示的な実施形態の排出温度は、比較例(C)及び(D)よりも低い。上述のように、排出温度は低いことが望ましいが、その理由は、圧縮機における冷却の必要性を緩和し、潜在的に圧縮機の寿命を延ばすからである。
【0182】
例示的な実施形態についての吸引及び排出圧力はR−22についてのものよりも高いが、例示的な実施形態に関連する圧力は、比較例のいずれかに関連する圧力よりもR−22の圧力に近い。例示的な実施形態の圧力は、例示的な実施形態がR−22又は類似の冷媒と共に用いるために設計されたシステムにおいてフィールド改造の実現可能な候補であるのに十分な程度、R−22の圧力に近い。言い換えれば、圧力における類似性に起因して、R−22と共に用いるために設計された設備は、例示的な実施形態にも適合し得る。これは、比較例には当てはまらない場合がある。
【0183】
更に、例示的な実施形態の能力は、R−22の能力に厳密に一致する。また、例示的な実施形態は、R−22のCOPに近いCOPを有する。特に、例示的な実施形態のCOPは、比較例のいずれかのCOPよりもR−22のCOPに近い。上に説明したように、この能力及びCOPにおける類似性は、例示的な実施形態がR−22の好適な代替品であることを示し、比較例のいずれかよりも優れたR−22の代替品であることを示す。
【0184】
最後に、例示的な実施形態の質量流量は、比較例のいずれかの質量流量よりもR−22の質量流量に近い。上述のように、これは、例示的な実施形態が、R−22又は類似の冷媒と共に用いるために設計された伝熱システムに含まれる膨張装置に適合し得ることを意味する。
【0185】
(実施例7)
冷蔵性能
実施例6では、R−22、例示的な実施形態、及び比較例の性能データは、過冷却量6Kに基づいていた。幾つかのシステムは、0Kで動作する。したがって、表7a〜7bは、過冷却量0Kに基づくこれらの組成物についての性能データを提供する。表5.3a〜5.3b及び6.3a〜6.3bと同様に、表7bは、表7aの続き又は延長であり、表7aに追加の縦列を提供する。例えば、表7a〜7bの最初の横列は、蒸発器の温度−10℃におけるR−22についての性能データを提供する。これらの表の2番目の横列は、蒸発器の温度−10℃における例示的な実施形態についての性能データを提供する。このように、表7bの各列は、表7aの対応する列に記載されている動作条件における、指名された組成物についての追加データを提供する。
【0186】
更に、表7a〜7bに含まれるデータは、以下の条件に基づく。
【0187】
【表19】
【0188】
【表20】
【0189】
【表21】
【0190】
表7a〜7bは、例示的な実施形態がR−22及び比較例に比べて利点を提供することを示し、また、これらの表は、例示的な実施形態が、過冷却量0KにおいてR−22の好適な代替品であることも示す。特に、例示的な実施形態は、R−22と関連する排出温度よりも著しく低い排出温度を伴い、これは、上で論じた利点を提供する。更に、例示的な実施形態の吸引及び排出圧力は、比較例のいずれかに関連する圧力よりもR−22の圧力に近い。上に説明したように、この圧力における類似性によって、例示的な実施形態は、R−22又は類似の冷媒と共に用いるために設計されたシステムにおいてフィールド改造の実現可能な候補になる。
【0191】
更に、例示的な実施形態の能力は、R−22の能力に厳密に一致する。また、例示的な実施形態は、R−22のCOPに近いCOPを有する。特に、例示的な実施形態COPは、比較例のいずれかのCOPよりもR−22のCOPに近い。この性能データにおける類似性は、上に説明したように、例示的な実施形態がR−22の好適な代替品であることを示す。
【0192】
最後に、例示的な実施形態の質量流量は、比較例のいずれかの質量流量よりもR−22の質量流量に近い。上述のように、これは、例示的な実施形態が、R−22又は類似の冷媒と共に用いるために設計された伝熱システムに含まれる膨張装置に適合し得ることを意味する。
【0193】
上記実施例に含まれるデータ及び議論が示すように、例示的な実施形態は、公知の冷媒に比べて幾つかの利点を提供し、様々な公知の冷媒の好適な代替品である。例えば、実施例5で論じたように、例示的な実施形態は、R−22、R−407A、R−407C、及び/又はR−407Fの好適な代替冷媒である。更に、実施例6〜7で論じたように、例示的な実施形態は、比較例(C)及び(D)よりも、R−22又は他の類似の冷媒を代替するのにより適している。また、例示的な実施形態は、新規の伝熱システムにおいて用いるための望ましい冷媒である。
【0194】
上記実施例は、例示的な実施形態に対応する組成物に焦点を当てているが、前記組成物の利点及び他の公知の冷媒を代替するための前記組成物の好適性に関する議論は、本明細書に開示する他の組成物にも適用可能であることが理解される。例えば、この議論は、23.3重量パーセント〜24.5重量パーセントのジフルオロメタン(HFC−32)と、24.5重量パーセント〜25.7重量パーセントのペンタフルオロエタン(HFC−125)と、25.5重量パーセント〜26.7重量パーセントの1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)と、24.3重量パーセント〜25.5重量パーセントの2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)と、を含む組成物にも適用することができる。
【0195】
選択された実施形態
実施形態A1.組成物であって、
23.3重量%〜24.5重量%のジフルオロメタンと、
24.5重量%〜25.7重量%のペンタフルオロエタンと、
25.5重量%〜26.7重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンと、
24.3重量%〜25.5重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、を含む、組成物。
【0196】
実施形態A2.The composition of Embodiment A1 comprising:
24.3重量%のジフルオロメタンと、
24.7重量%のペンタフルオロエタンと、
25.7重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンと、
25.3重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、を含む、実施形態A1に記載の組成物。
【0197】
実施形態A3.R−407A、R−407C、R−407F、又はR−22のうちの少なくとも1つを含む冷媒を代替する代替冷媒である、実施形態A1又はA2に記載の組成物。
【0198】
実施形態A4.非冷媒成分を更に含む、実施形態A1〜A3のいずれかに記載の組成物。
【0199】
実施形態A5.前記非冷媒成分が、潤滑剤、染料、可溶化剤、相溶剤、安定剤、トレーサー、パーフルオロポリエーテル、摩耗防止剤、極圧剤、腐食及び酸化防止剤、金属表面エネルギー低減剤、金属表面不活化剤、フリーラジカル捕捉剤、泡制御剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、洗剤、又は粘度調整剤のうちの少なくとも1つを含む、実施形態A4に記載の組成物。
【0200】
実施形態A6.前記非冷媒成分が潤滑剤であり、前記潤滑剤が、鉱油、アルキル置換芳香族、アルキルベンゼン、合成パラフィン及びナフテン、ポリ(αオレフィン)、ポリグリコール、ポリアルキレングリコール、二塩基酸エステル、ポリエステル、ポリオールエステル、ネオペンチルエステル、ポリビニルエーテル、パーフルオロポリエーテル、シリコーン、ケイ酸エステル、フッ素化化合物、リン酸エステル、又はポリカーボネートのうちの少なくとも1つを含む、実施形態A5に記載の組成物。
【0201】
実施形態A7.前記組成物を中程度の蒸発器温度で動作する蒸発器を含む伝熱システムにおいて伝熱流体として用いたとき、前記組成物の冷蔵能力が、前記中程度の蒸発器温度で動作する前記蒸発器を含む前記伝熱システムにおいて用いたときのR−22の冷蔵能力の7%以内である、実施形態A1〜A6のいずれかに記載の組成物。
【0202】
実施形態A8.1400以下の地球温暖化係数を有する、実施形態A1〜A7のいずれかに記載の組成物。
【0203】
実施形態B1.伝熱システムであって、
中温で動作する蒸発器と、
伝熱流体と、
を含み、
前記伝熱流体が、
23.3重量%〜24.5重量%のジフルオロメタンと、
24.5重量%〜25.7重量%のペンタフルオロエタンと、
25.5重量%〜26.7重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンと、
24.3重量%〜25.5重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、
を含む、伝熱システム。
【0204】
実施形態B2.前記伝熱流体が、
24.3重量%のジフルオロメタンと、
24.7重量%のペンタフルオロエタンと、
25.7重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンと、
25.3重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、
を含む、実施形態B1に記載の伝熱システム。
【0205】
実施形態B3.R−407A、R−407C、R−407F、又はR−22のうちの少なくとも1つと共に用いるために設計された、実施形態B1又はB2に記載の伝熱システム。
【0206】
実施形態B4.R−407A、R−407C、R−407F、又はR−22のうちの少なくとも1つと共に用いるために設計された膨張装置を更に含む、実施形態B1〜B3のいずれかに記載の伝熱システム。
【0207】
実施形態B5.前記中温が、−20℃〜0℃の温度を含む、実施形態B1〜B4のいずれかに記載の伝熱システム。
【0208】
実施形態B6.前記伝熱システムにR−22冷媒を充填したときに圧縮機で生じるR−22排出温度よりも低い排出温度を有する圧縮機を更に含む、実施形態B1〜B5のいずれかに記載の伝熱システム。
【0209】
実施形態C1.R−22冷媒と共に用いるように設計された伝熱システムにおいて前記R−22冷媒を代替する方法であって、
前記R−22冷媒と共に用いるように設計された伝熱システムに、
23.3重量%〜24.5重量%のジフルオロメタンと、
24.5重量%〜25.7重量%のペンタフルオロエタンと、
25.5重量%〜26.7重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンと、
24.3重量%〜25.5重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、
を含む組成物を充填する工程を含む、方法。
【0210】
実施形態C2.前記組成物が、
24.3重量%のジフルオロメタンと、
24.7重量%のペンタフルオロエタンと、
25.7重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンと、
25.3重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと、
を含む、実施形態C1に記載の方法。
【0211】
実施形態C3.前記伝熱システムの蒸発器において前記組成物を蒸発させる工程を更に含み、前記蒸発器が、中温で動作する、実施形態C1又はC2に記載の方法。
【0212】
実施形態C4.前記中温が、−20℃〜0℃の温度を含む、実施形態C3に記載の方法。
【0213】
実施形態C5.前記伝熱システムの圧縮機において前記組成物を圧縮する工程を更に含み、前記圧縮機が、前記伝熱システムにR−22冷媒を充填したときに生じるR−22排出温度よりも低い排出温度を伴う、実施形態C1〜C4のいずれかに記載の方法。
【0214】
実施形態C6.前記組成物が、非冷媒成分を更に含む、実施形態C1〜C5のいずれかに記載の方法。