(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ニトリルゴム成分(1)の製造が、ミリング工程またはそうで無ければスプレードライ工程のいずれかを含み、それぞれの場合において、前記過程の途中で、前記剥離剤との接触を起こさせることを特徴とする、請求項10に記載の粉末状混合物を製造するためのプロセス。
前記成分(B)が、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン−酢酸ビニル、およびポリスチレンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の複合材料。
【背景技術】
【0002】
粉末状ニトリルゴムは、広く各種の用途で使用されている。それらは、たとえば、ブレーキの構成部品、ライニングまたはディスクの製造において、フェノール樹脂を改質するのに使用される。さらに、それらは、熱可塑性プラスチックを改質するため、特にポリ塩化ビニル(PVC)を改質するためにも使用されるが、その理由は、これらの広く普及したプラスチックと優れた相溶性を有しているからである。そのようにして弾性を付与されたPVCは、たとえば異形材、ケーブル外装、またはシールを製造するために使用される。このタイプの各種の成分が、自動車産業では使用されている。したがって、これらの成分の潜在的な用途は、車両の内装、特に自動車の内装や、自動車産業以外ならば、たとえば建築物の内装に見出される。これに関しては、低い放散値を有する粉末状のゴムを提供することがますます重要となってきているが、その理由は、近年、放散を抑制するための、おびただしい数の新しい基準および規制が制定されてきているからである。プラスチック成分から、およびゴムから、従ってさらには弾性を付与された熱可塑性プラスチックからの放散を抑制し、制限することが、特に必要とされている。
【0003】
原理的には、粉体の形態でエラストマーを製造するためには、数多くのゴムたとえば、NBR、EPDMまたはSBRが考えられる。しかしながら、特にPVC、ポリウレタン、またはポリアミドの改質(たとえば、衝撃靱性を上げる目的で)を望む場合には、ニトリルゴムが、優れた相溶性を有しているために、特に適している。この場合においては、ゴムの粉体を使用することによって、計量性、さらに熱可塑性プラスチックの中での分散性が改良され、そのため、より均質な性質の異形材を得ることができる。
【0004】
American Indoor airPLUSのリストでは、特に室内用途では、低い放散値を有する材料を使用することを推奨している。
【0005】
ISO 12219−1:2012には、自動車の内装におけるVOC(揮発性有機化合物)の測定手順と評価方法が記載されている。このISO標準には、3種の異なった試験法が記載されているが、その内の二つは、自動車の内装の揮発性VOCの測定に関するものであり、一つは、ホルムアルデヒドの測定に関するものである。
【0006】
低い放散値を有するポリマー材料を使用する例は、(特許文献1)に見出されるが、そこには、エラストマー性材料を用いて改質された特に低臭気のポリプロピレン(PP)の記載がある。記載されている材料は、低い臭気に加えて良好な機械的性質を特徴としている。その低い臭気は、脱臭剤、すなわち臭気吸収剤を添加することによって達成されている。それらの物質は、車両の内装で使用するに特に適していると書かれている。仕上げの特定の形態(particular form of work−up)や、使用されるポリマーが採用される形態については、何の言及もない。
【0007】
(特許文献2)には、低減された臭気を特徴とするABS樹脂を使用した構成部品の製造が記載されている。この場合の「臭気抑制」物質は、コンパウンディングの際にターポリマーと共に導入されている。その物質は、アルカリ金属−ケイ酸アルミニウム粉体または、それらとシリカゲルとの組合せである。臭気の原因となっている物質は依然としてそのポリマーの中に存在していて、臭気吸収物質の手段によって単に拘束されているだけのことである。仕上げの特定の形態や、使用されるポリマーが採用される形態については、何の言及もない。
【0008】
(特許文献3)には、NBRも含めて各種のエラストマーと、典型的な添加剤との混合物を製造することが記載されている。そのようにして得られたゴムは、良好な遮蔽性を特徴としており、自動車分野で使用するのに適していると書かれている。各種の放散を抑制するための方法については、何の示唆もない。
【0009】
コポリマーまたはターポリマーを製造するための重合の際に連鎖移動剤としてメルカプタンを使用することが(特許文献4)に記載されている。それらのターポリマーには、モノマー構成単位として、なかんずく、アクリロニトリルおよびブタジエンが含まれている。重合を実施した後で、ラテックスをペルオキシドまたはペルオキシ酢酸で処理し、それによって、ポリマーの臭気の抑制を達成している。この方法の欠点は、ラテックスの中に存在しているポリマーがペルオキシドまたはペルオキシ酢酸と反応して、望ましくない副生物が生成したり、早すぎる架橋が起きたりする可能性があることである。
【0010】
本願出願人による、まだ未公開の欧州特許出願の中では、極めて良好な加硫挙動を有すると同時に、改良された放散挙動を有するニトリルゴムの製造が記載されており、それに相当する加硫物は、優れた性質を有している。少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルモノマーと少なくとも1種の共役ジエンモノマーとの繰り返し単位を有するそれらのニトリルゴムは、0.25mg/(kg*ムーニー単位)以下の、式(I)の放散指数Eを特徴としている。
【数1】
ここで、
[揮発性成分]は、揮発性成分の濃度(単位:mg/(ニトリルゴム1kg))であって、VDA 278推奨基準(2002年9月版)に従い、TDS−GC/MS試験法の手段により、28.4分〜34.0分の範囲で求めたものであり、
[ムーニー粘度]は、ASTM D 1646に従って測定した、ニトリルゴムのムーニー粘度ML1+4@100℃(単位:ムーニー単位)であり、そして
[ニトリル含量]は、DIN 53 625に従い、Kjeldahl法により重量%の単位で求めた、ニトリルゴム中のα,β−不飽和ニトリルの含量(単位:無次元)である。
【0011】
これらのニトリルゴムは、特定の連鎖移動剤を選択して重合を実施し、それと同時にその重合を、転化率が60%以上になるまで続けることによって得ることができる。低い放散値を有するニトリルゴムをベースとする加硫可能な混合物、ならびに、ベルト、ローラーカバー、シール、キャップ、ストッパー、ホース、床仕上げ材、シーリングマットもしくはプレート、異形材、または膜としてのそれらの一般的な適合性も記載されている。その低い放散値を有するゴムが得られるかどうか、およびどのような物理的形態で得られるか、そして相当する成形体を製造するのに使用できるかについては、示されていない。そこで述べられている、典型的な用途のための使用形態は、ゴムボールまたはゴムの団粒(crumb)の形態である。粉末状NBRの性質については、何も述べられていない。
【0012】
本発明の目的においては、ニトリルゴム(簡略的に「NBR」と呼ぶこともある)とは、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、少なくとも1種の共役ジエン、および場合によっては、1種または複数のさらなる共重合性モノマーのコポリマーまたはターポリマーであるゴムである。そのようなニトリルゴム、およびそのようなニトリルゴムを調製するためのプロセスは公知であり、たとえば、(非特許文献1)を参照されたい。
【0013】
NBRは、典型的には、エマルション重合によって調製され、最初にNBRラテックスが得られる。このラテックスから、通常は塩または酸を使用するコアグレーションによって、NBR固形物が単離される。このようにして得られた固体のゴムは、ミリングにより二次加工して、粉末状のエラストマーとすることができる。別な仕上げ方法においては、スプレードライ法によってラテックスからNBR粉体を直接得る。良好なプロセス特性を有するポリマーを得るためには、通常、連鎖移動剤を使用してエマルション重合を実施しなければならない。しばしば使用される連鎖移動剤は、メルカプタンをベースとするものである。たとえばスチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、フマル酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、クロロプレン、およびその他のモノマーをベースとするエマルション法ゴムの分子量を制御するためには、ドデシルメルカプタンを使用することが特に重要である。
【0014】
(特許文献5)には、ジオレフィンたとえばブタジエンと、場合によってはさらなる共重合性モノマーたとえば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸メチル、フマル酸エチル、またはメチルビニルケトンとをベースとする合成ゴムは、連鎖移動剤としての脂肪族メルカプタンの存在下にエマルション重合させることによって調製することができると記載されている。これらのメルカプタンが、少なくとも7個、好ましくは10個以上の炭素原子を有することが開示されている。188〜230の平均分子量を有し、少なくとも50%のドデシルメルカプタンと100%に達するまでのバランス量の10〜16個の炭素原子を有するメルカプタンの形態のものとを含む脂肪族メルカプタンを使用することが好ましい。
【0015】
(特許文献6)、(特許文献7)、および(特許文献8)には、それぞれ、不飽和ニトリルおよび共役ジエンをベースとし、すべてが10〜60重量%の不飽和ニトリルを含み、15〜150の範囲ムーニー粘度、(特許文献6)の場合は15〜65の範囲のムーニー粘度を有し、そしてすべてが、100molのモノマー単位あたり少なくとも0.03molのC
12〜C
16−アルキルチオ基を有するニトリルゴムが記載されているが、ここでそのアルキルチオ基には少なくとも3個の三級炭素原子が含まれ、そしてそれら三級炭素原子の内の少なくとも一つに直接結合された硫黄原子を有している。それらのニトリルゴムは、それぞれの場合において、C
12〜C
16−アルキルチオールの存在下に調製されるが、それらのアルキルチオールは、相応の構造と連鎖移動剤としての機能を有していて、そのためそのポリマー鎖の中に末端基として組み込まれる。ニトリルゴムを含む粉体のVOC値、ならびにそれらをベースとする複合材料または成形部品の性能プロファイルがその手段によって影響を受け得る程度を、この特許の教示から引き出すことは不可能である。
【0016】
(非特許文献2)には、一般論として、アルキルメルカプタン、ジスルフィド、およびポリスルフィドまたはキサントゲンジスルフィドを使用することによって、ニトリル−ブタジエンゴムの分子量を制御することが可能であると記されている。tert−ドデシルメルカプタンおよびジイソプロピルキサントゲンジスルフィドが、主として使用される連鎖移動剤と書かれている。工業的実施においてもまた、三級ドデシルメルカプタン(簡略的に「TDM」または「TDDM」と呼ぶこともある)が使用されている。公知の例が、Chevron Philipsから市販されているTDMであって、このものは一般的に、各種異性体の幅広い混合物からなっている。本願出願人による研究で認められたところでは、三級ドデシルメルカプタンを使用して調製したニトリルゴムは、VOC試験(VDA 278推奨基準に従いTDS−GC/MS検討手段により実施)において、高い割合の硫黄化合物およびさらにはTDMの硫黄非含有不純物を示し、そしてそれらの硫黄化合物およびその他の不純物が、いくつかの実用面、特に室内では、知覚可能な不快臭の汚染をもたらす可能性がある。
【0017】
ラテックスのコアグレーションのために使用することが可能な各種の塩が、得られるニトリルゴムの性質へ与える影響に関しては、おびただしい文献が存在するのに対して、連鎖移動剤が、ニトリルゴムのVOC値に与える影響についての何らかの情報や検討は存在しない。しかしながら、ニトリルゴムをベースとする、内装における、たとえば建築分野または車両の内装における特定の用途では、VOC値が少なからず重要である。このことは、固体のゴムとしてのNBRの使用、さらには粉体の形態でのNBRの使用のいずれにもあてはまる。
【0018】
まとめると、今日に至るまで、連鎖移動剤としてメルカプタンを使用したときに、顕著に低いVOC含量を有し、そして粉末状混合物を使用するのが有利である内装においてそのような成分を製造するために使用することが可能な、ニトリルゴムおよびそれらを含む粉末状混合物を得るための公知の手段は存在していなかったと言うことができる。
【0019】
一般的に、低い放散値を有するゴムに関する産業界の要望が、特に自動車のたとえば運転席の内装用途では、高くなってきている。ミリング法またはスプレードライ法によるニトリルゴムベースの粉体グレードの製造においては、出発物質のゴムが揮発性成分をまだ比較的に高い割合で含んでいるときには、揮発性成分の減少を達成することができる。これらのことは、製造現場の中に発生粉体を放出させ、そのために、作業員および製造現場周辺の環境に対する汚染を増大させることになる。この汚染を最小限に抑えるためには、重合配合物の成分を選択して、それによって発生する可能性のあるVOCの値を低下させる必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
粉末状混合物の平均粒子直径:
粉末状混合物の平均粒子直径D
aは、粒度測定法により求めるが、それには、100gの粉末状混合物を、2.0mmの目開き(mesh opening)を有する篩(この第一の篩の下に目開きが1.4;1.0;0.8;0.6、および0.3mmの篩を設けておく)の中に秤り込み、その篩のセットを振動式篩別機(たとえば、AS200 control“g”、Retsch製)にクランプ止めし、その篩のセットを振幅2.00mmで30分間振動させ、次いで、それぞれの篩の内容物を秤量し、次の式(1)に従ってその平均粒子直径D
aを計算する:
D
a=Σ(X
iD
i)/100 (1)
ここで、
D
aは、平均粒子直径(mm)であり、
X
iは、それぞれの篩の中に留まっている粉末状混合物の質量(g)の重量%であり、
D
iは、それぞれの篩nおよびn+1の平均目開き(mm)であるが、これは以下の式(2)で与えられ、
D
i=(D
n+D
(n+1))/2 (2)
ここで、
D
nは、篩nの目の直径(mm)であり、そして
D
(n+1)は、篩n+1の目の直径(mm)である。
【0026】
本発明の粉末状混合物の平均粒子直径は、製造方法によって、0.01〜4mmの上述の限度の範囲内で、ある程度の影響を受ける可能性があるが、これについては、次に説明する。
【0027】
一つの実施形態においては、その粉末状混合物が、0.01〜4mmの範囲、好ましくは0.05〜3mmの範囲、特に好ましくは0.1mm〜2mmの範囲、特には0.2mm〜1.5mmの範囲の平均粒子直径D
aを有している。それらの粉末状混合物は、たとえば、ミリング法によって得ることが可能なニトリルゴム(1)を使用したときに、得ることができる。
【0028】
さらなる実施形態においては、その粉末状混合物が、0.01〜2mmの範囲、好ましくは0.04mm〜1mmの範囲、特に好ましくは0.06〜0.75mmの範囲、特には0.08mm〜0.12mmの範囲の平均粒子直径D
aを有している。それらの粉末状混合物は、たとえば、スプレードライ法によって得ることが可能なニトリルゴム(1)を使用したときに、得ることができる。
【0029】
両方の実施形態のための手順は、後の粉末状混合物の製造の文脈において、説明するであろう。
【0030】
ニトリルゴム:
本発明の粉末状混合物の中に存在するニトリルゴムは、0.25mg/(kg*ムーニー単位)以下、好ましくは0.22mg/(kg*ムーニー単位)以下、特に好ましくは0.20mg/(kg*ムーニー単位)以下の一般式(I)による放散指数Eを有している。
【0031】
放散係数を計算する目的で、VDA 278推奨基準に従ったTDS−GC/MS試験法(09.2002版)で28.4分〜34.0分の範囲でその濃度を測定した揮発性成分は、典型的には、使用した連鎖移動剤の揮発性成分である。
【0032】
ASTM D 1646に従ったニトリルゴムのムーニー粘度(ML1+4@100℃)の測定は、典型的には、カレンダー加工をしていない本発明によるニトリルゴムを使用して実施する。
【0033】
本発明において使用されるニトリルゴムは、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルと少なくとも1種の共役ジエンとの繰り返し単位を有している。それらには、場合によっては、1種または複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位をさらに含むことができる。一般式(I)による放散指数Eが0.25mg/(kg Mu)以下であるということが重要である。
【0034】
少なくとも1種の共役ジエンをベースとするニトリルゴムの中の繰り返し単位は、(C
4〜C
6)共役ジエンから誘導するのが好ましい。特に好ましいのは、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン、またはそれらの混合物である。1,3−ブタジエンおよびイソプレンまたはそれらの混合物が特に好ましい。極めて特に好ましいのは1,3−ブタジエンである。
【0035】
α,β−不飽和ニトリルとしては、本発明におけるニトリルゴムを調製するためには、いかなる公知のα,β−不飽和ニトリルを使用することも可能であるが、好ましいのは、(C
3〜C
5)−α,β−不飽和ニトリルたとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、またはそれらの混合物である。特に好ましいのは、アクリロニトリルである。
【0036】
本発明の実施形態においては、その粉末状混合物には、アクリロニトリルとブタジエンとの繰り返し単位を含むニトリルゴムが含まれるが、特に好ましいのは、アクリロニトリルとブタジエンのみの繰り返し単位を有するものである。
【0037】
さらなる共重合性モノマーとしては、たとえば以下のものを使用することができる:芳香族ビニルモノマー、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、およびビニルピリジン、ならびにさらには、非共役ジエンたとえば、4−シアノシクロヘキセン、および4−ビニルシクロヘキセン、またはそうでなければ、アルキンたとえば、1−ブチンまたは2−ブチン。
【0038】
さらには、共重合性ターモノマーとして、エポキシ基を含むモノマー、好ましくはアクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルを使用することもできる。
【0039】
それらに代わるものとしては、カルボキシル含有の、共重合性ターモノマーたとえば、α,β−不飽和モノカルボン酸、それらのエステル、α,β−不飽和ジカルボン酸、それらのモノエステルもしくはジエステル、またはそれらに対応する無水物もしくはアミドを、さらなる共重合性モノマーとして使用することもできる。
【0040】
α,β−不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸およびメタクリル酸を使用するのが好ましい。
【0041】
α,β−不飽和モノカルボン酸のエステル、好ましくはそれらのアルキルエステルおよびアルコキシアルキルエステルを使用することもまた可能である。α,β−不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル、特にC
1〜C
18−アルキルエステルが好ましい。特に好ましいのは以下のものである:アクリル酸もしくはメタクリル酸のアルキルエステル、特にC
1〜C
18−アルキルエステル、特に、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、およびメタクリル酸2−エチルヘキシル。α,β−不飽和モノカルボン酸のアルコキシアルキルエステルもまた好ましく、特に好ましくはアクリル酸もしくはメタクリル酸のアルコキシアルキルエステル、特にアクリル酸もしくはメタクリル酸のC
2〜C
12−アルコキシアルキルエステル、極めて特に好ましくはアクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸メトキシエチルである。アルキルエステルたとえば上に挙げたものと、アルコキシアルキルエステルたとえば上に挙げた形態のものとの混合物を使用することも可能である。その中のヒドロキシアルキル基の炭素原子の数が1〜12個であるアクリル酸ヒドロキシルアルキルおよびメタクリル酸ヒドロキシアルキル、好ましくはアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルおよびアクリル酸3−ヒドロキシプロピルを使用することもまた可能であり、さらには、アミノ基を含むα,β−不飽和カルボン酸のエステル、たとえば、アクリル酸ジメチルアミノメチルおよびアクリル酸ジエチルアミノエチルを使用することも可能である。
【0042】
さらなる共重合性モノマーとしては、α,β−不飽和ジカルボン酸、好ましくはマレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびメサコン酸を使用することもまた可能である。
【0043】
α,β−不飽和ジカルボン酸無水物、好ましくは無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、および無水メサコン酸もまた使用することができる。
【0044】
α,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステルまたはジエステルもまた使用することができる。
【0045】
これらα,β−不飽和ジカルボキン酸のモノエステルまたはジエステルは、たとえば以下のものであってよい:アルキル、好ましくはC
1〜C
10−アルキル、特にエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、もしくはn−ヘキシルのモノエステルまたはジエステル、アルコキシアルキル、好ましくはC
2〜C
12−アルコキシアルキル、特に好ましくはC
3〜C
8−アルコキシアルキルのモノエステルまたはジエステル、ヒドロキシアルキル、好ましくはC
1〜C
12−ヒドロキシアルキル、特に好ましくはC
2〜C
8−ヒドロキシアルキルのモノエステルまたはジエステル、シクロアルキル、好ましくはC
5〜C
12−シクロアルキル、特に好ましくはC
6〜C
12−シクロアルキルのモノエステルまたはジエステル、アルキルシクロアルキル、好ましくはC
6〜C
12−アルキルシクロアルキル、特に好ましくはC
7〜C
10−アルキルシクロアルキルのモノエステルまたはジエステル、アリール、好ましくはC
6〜C
14−アリールのモノエステルまたはジエステル(それらのジエステルは、それぞれの場合において、混合エステルであってもよい)。
【0046】
特に好ましいα,β−不飽和モノカルボン酸のアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、アクリル酸2−プロピルヘプチル、および(メタ)アクリル酸ラウリルである。特に、アクリル酸n−ブチルが使用される。
【0047】
特に好ましいα,β−不飽和モノカルボン酸のアルコキシアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸メトキシエチルである。特に、アクリル酸メトキシエチルが使用される。
【0048】
その他のα,β−不飽和モノカルボン酸のエステルとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシメチル)アクリルアミド、およびウレタン(メタ)アクリレートが使用される。
【0049】
α,β−不飽和ジカルボン酸ジエステルとしては、上述のモノエステル基をベースとする類似のジエステルを使用することができるが、それらのエステル基が、化学的に異なったエステル基であってもよい。
【0050】
可能なさらなる共重合性モノマーとしてはさらに、1分子あたり少なくとも2個のオレフィン性二重結合を含むフリーラジカル重合性化合物が挙げられる。したがって、そのようなモノマーは、そのニトリルゴムにある程度の予備架橋を与える。複数の不飽和を有する化合物の例としては、以下のものが挙げられる:ポリオールのアクリレート、メタクリレート、またはイタコネート、たとえば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,2−プロパンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、グリセロールジアクリレートおよびトリアクリレート、ペンタエリスリトールジ−、トリ−およびテトラ−アクリレート、またはジ−、トリ−およびテトラ−メタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ−、ペンタ−およびヘキサ−アクリレートまたはテトラ−、ペンタ−およびヘキサ−メタクリレートまたはテトラ−、ペンタ−およびヘキサ−イタコネート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビタールヘキサメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリエチレングリコール、または、末端ヒドロキシル基を有するオリゴエステルまたはオリゴウレタンのジアクリレートまたはジメタクリレート。複数の不飽和を有するモノマーとしては、以下のものを使用することもまた可能である:アクリルアミド、たとえば、メチレンビスアクリルアミド、ヘキサメチレン−1,6−ビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミド−プロポキシ)エタン、またはアクリル酸2−アクリルアミドエチル。複数の不飽和を有するビニルおよびアリル化合物の例としては以下のものが挙げられる:ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、フタル酸ジアリル、メタクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレート、またはリン酸トリアリル。本発明の実施形態においては、エチレングリコールジアクリレートまたはトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートをこのタイプの共重合性モノマーとして、好ましくはさらなるモノマーとしてのアクリロニトリルおよびブタジエンと共に使用する。その場合、この共重合性モノマーを、モノマーの全量を基準にして、10重量%まで、好ましくは7重量%までの量で使用するのが好ましいことが見出された。
【0051】
使用されるニトリルゴム中における共役ジエンとα,β−不飽和ニトリルとの比率は、広い範囲で変化させることができる。共役ジエンまたは共役ジエンを合計したものの比率は、全ポリマーを基準にして、通常は20〜95重量%の範囲、好ましくは45〜90重量%の範囲、特に好ましくは50〜85重量%の範囲である。α,β−不飽和ニトリルまたはα,β−不飽和ニトリルを合計したものの比率は、全ポリマーを基準にして、通常5〜80重量%、好ましくは10〜55重量%、特に好ましくは15〜50重量%である。本発明のニトリルゴムの中における共役ジエンおよびα,β−不飽和ニトリルの繰り返し単位の比率は、それぞれの場合において、合計して100重量%となる。
【0052】
追加のモノマーは、全ポリマーを基準にして、0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%、特に好ましくは0〜26重量%の量で存在させることができる。この場合においては、共役ジエンまたはジエンの繰り返し単位および/またはα,β−不飽和ニトリルまたはニトリルの繰り返し単位の相当する比率を、追加のモノマーで置きかえて、モノマーにおけるすべての繰り返し単位が、この場合ももう一度、それぞれの場合において合計して100重量%となるようにする。
【0053】
ニトリルゴムの中のニトリル含量は、DIN 53 625に従い、Kjeldahl法によって求めた窒素含量から求める。
【0054】
それらのニトリルゴムは、10〜150ムーニー単位(MU)、好ましくは20〜100MUのムーニー粘度ML1+4@100℃を有する。ムーニー粘度のML1+4@100℃は、DIN 53523/3またはASTM D 1646に従って、剪断円板粘度計の手段により100℃で測定される。この測定は、典型的には、カレンダー加工をしていないニトリルゴムのサンプルを使用して実施する。
【0055】
そのニトリルゴムのガラス転移温度は、−70℃〜+10℃の範囲、好ましくは−60℃〜0℃の範囲である。
【0056】
好ましいのは、アクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンの繰り返し単位を含むニトリルゴムであり、特に好ましいのは、アクリロニトリルと1,3−ブタジエンとの繰り返し単位のみを有するものである。
【0057】
さらに好ましいのは、アクリロニトリル、1,3−ブタジエン、および1種または複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位を有するニトリルゴムである。特に好ましいのは、アクリロニトリル、1,3−ブタジエン、に加えて以下の繰り返し単位を含むニトリルゴムである:
− 1種または複数のα,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、またはそれらのエステルもしくはアミド、特にα,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステルの繰り返し単位、極めて特に好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、もしくは(メタ)アクリル酸ラウリル、または
− 1種または複数の、複数の不飽和を有する化合物、特に、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,2−プロパンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、グリセロールジアクリレートおよびトリアクリレート、ペンタエリスリトールジ−、トリ−およびテトラ−アクリレートまたはジ−、トリ−、およびテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ−、ペンタ−およびヘキサ−アクリレートまたはテトラ−、ペンタ−およびヘキサ−メタクリレート、またはテトラ−、ペンタ−およびヘキサ−イタコネート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールヘキサメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリエチレングリコール、または末端ヒドロキシル基を有するオリゴエステルまたはオリゴウレタンのジアクリレートまたはジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ヘキサメチレン−1,6−ビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミドプロポキシ)エタン、2−アクリルアミドエチルアクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、フタル酸ジアリル、メタクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルイソシアヌレートまたはリン酸トリアリルの繰り返し単位。
【0058】
本発明において使用されるニトリルゴムにはさらに、使用した連鎖移動剤の破片が組み込まれている。放散係数を求める目的で、VDA 278推奨基準に従ったTDS−GC/MS試験法(09.2002版)で28.4分〜34.0分の範囲でその濃度を測定した揮発性成分は、使用した連鎖移動剤の揮発性成分である。
【0059】
剥離剤:
その粉末状混合物には、上述のニトリルゴムに加えて、1種または複数の剥離剤が含まれる。適切な剥離剤は、粉末状ニトリルゴムの中で、所望の貯蔵期間にわたって、確実に塊状物を形成させる、いかなる物質でもよい。剥離剤は、典型的には、同様に粉末状である。
【0060】
剥離剤は、以下のものから選択するのが好ましい:シリカ(特に5m
2/gよりも大きいBET比表面積を有するもの、さらに化学的に改質されていてもよく、特に好ましくは、疎水化されていてもよい)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリケート、特に好ましくはタルク、マイカ、ベントナイトまたはモンモリロナイト、脂肪酸塩、特に好ましくは10個よりも多い炭素原子を有する脂肪酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、極めて特に好ましくはそのような脂肪酸のカルシウム塩またはマグネシウム塩、特にステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸亜鉛アルミニウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、高い、たとえば60℃よりも高いガラス転移温度を有するポリマー、特に好ましくはポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、およびデンプン、親水性ポリマー、特に好ましくはポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキシド化合物、特にポリエチレンオキシド化合物たとえば、ポリエチレングリコールもしくはポリエチレングリコールエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、およびセルロース誘導体、フッ素化炭化水素ポリマー、カーボンナノチューブ、および上述の剥離剤の混合物。シリカ、炭酸カルシウム、シリケート、PVC、および脂肪酸塩からなる群から選択される剥離剤を使用するのが特に好ましい。
【0061】
その1種または複数の剥離剤は、本発明の粉末状混合物の中に、全混合物を規準にして、全量で、典型的には0.25〜45重量%、好ましくは1〜45重量%、好ましくは2〜25重量%、特に好ましくは4〜15重量%の範囲で存在させる。
【0062】
また別な実施形態においては、1種または複数の剥離剤を、本発明の粉末状混合物の中で、全混合物を規準にして、全量で5〜10重量%の範囲で使用する。
【0063】
本発明の粉末状混合物を製造するためのプロセス:
使用するニトリルゴムは、エマルション重合によって調製する。そのプロセスは、連鎖移動剤としてのtert−ノニルメルカプタンの存在下で実施する。この場合、そのtert−ノニルメルカプタンは、たとえば、以下のものであってよい:
a)少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%の純度を有するtert−ノニルメルカプタン、または
b)少なくとも50重量%であるが95重量%を超えないtert−ノニルメルカプタンと共に、さらに1種または複数のさらなる異性体のノニルメルカプタンおよび/または1種または複数のさらなるC
10〜C
16−アルキルチオールを含む混合物。
【0064】
tert−ノニルメルカプタンa)(CAS No.25360−10−5)は、たとえばSigma Aldrichから少なくとも97重量%の純度で、またはChevron Phillipsから製品Sulfol(登録商標)90(少なくとも純度97重量%)として、または各種の化学品メーカーから市販されている。
【0065】
少なくとも50重量%ではあるが、95重量%未満のtert−ノニルメルカプタンと共に、1種または複数のさらなる異性体のノニルメルカプタンおよび/または1種または複数のさらなるC
12〜C
16−アルキルチオールを含む混合物b)も同様に、Atofinaからの65重量%のtert−ノニルメルカプタンおよび35重量%のドデシルメルカプタンの含量を有するmercaptans 175として、またはChevron PhillipsからSulfol(登録商標)100として市販されている。
【0066】
使用される連鎖移動剤は、モノマー混合物100重量部を基準にして、典型的には0.05〜3重量部、好ましくは0.1〜1.5重量部の量で重合において通常採用される。当業者ならば、簡単な試験で、適切な量を決めることができる。
【0067】
連鎖移動剤または連鎖移動剤の混合物は、重合の開始時にのみ導入してもよいし、あるいは、重合の開始時と共に、重合の途中で何回かに分けてさらに導入してもよい。バッチプロセスの場合においては、連鎖移動剤または連鎖移動剤の混合物を、典型的には開始時に全量添加するが、それに対して連続プロセスでは、量を増やしながら添加していくのが有用であることが見出された。次いで、連鎖移動剤または連鎖移動剤の混合物を、通常は少なくとも2段階で添加するが、2段、3段またはそれ以上の段階で添加することも可能である。さらには、重合時間全体にわたって連続的に導入することも可能である。連鎖移動剤または連鎖移動剤の混合物を2段階で添加するのが特に好ましい。2段階で添加する場合においては、連鎖移動剤/連鎖移動剤の混合物を、最初は、重合を開始させる前に、連鎖移動剤/連鎖移動剤の混合物の全量を基準にして、5〜65重量%、好ましくは10〜60重量%の量で添加し、次いで残りの量の連鎖移動剤/連鎖移動剤の混合物を、使用したモノマーの全量を基準にして、5〜80%、好ましくは10〜55%の転化率のところで導入するのが有用であることが見出された。3回またはそれ以上の回数で導入する場合においては、適切な予備試験の手段によって、連鎖移動剤の最も有利な量と、最も有利な導入タイミングを調べておくことを推奨する。
【0068】
連鎖移動剤はその機能の結果として、ニトリルゴムの中に末端基の形である程度組み込まれる、すなわちそのニトリルゴムには、C
9−アルキルチオ末端基が含まれることになる。したがって、一つの実施形態においては、本発明の織物製の床仕上材には、その裏側の支持層に、C
9−アルキルチオ末端基を含み、そして0.25mg/(kg*ムーニー単位)以下、好ましくは0.22mg/(kg*ムーニー単位)以下、特に好ましくは0.20mg/(kg*ムーニー単位)以下の式(I)による放散指数Eを有する、少なくとも1種のニトリルゴム(1)をベースとする加硫物を含む。この実施形態のある特定の変法においては、その加硫物が、アクリロニトリルおよびブタジエンのみで構成される繰り返し単位を有する少なくとも1種のニトリルゴムをベースとしている。
【0069】
その重合が、特定の連鎖移動剤を使用して実施されず、そして使用したモノマーの全量を基準にして少なくとも60%の転化率にまで実施されなかったニトリルゴムをベースとする粉末状混合物は、顕著に劣った放散挙動を示す。本発明の粉末状混合物を使用して製造された加硫物をベースとする構成部品は、その関連した用途において、臭気汚染をまったく示さない。その特定のニトリルゴムをベースとする混合物は、それと同時に、優れた加硫挙動も示す。
【0070】
乳化剤:
乳化剤としては、アニオン性乳化剤の水溶性塩または電荷を有さない乳化剤を使用することができる。アニオン性乳化剤を使用するのが好ましい。
【0071】
アニオン性乳化剤としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パルストリン酸、レボピマル酸(laevopimaric acid)を含む樹脂酸混合物の二量化、不均化、水素化および変性によって得られる変性樹脂酸を使用することができる。特に好ましい変性樹脂酸は、不均化樹脂酸である(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,6th Edition,Volume 31,pp.345−355)。
【0072】
アニオン性乳化剤として、脂肪酸を使用することもまた可能である。それらには、1分子あたり6〜22個の炭素原子が含まれる。それらは完全に飽和であってもよいし、そうでなければ、分子の中に1個または複数の二重結合を含んでいてもよい。脂肪酸の例としては、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が挙げられる。それらのカルボン酸は通常、由来がはっきりしている(origin−specific)油脂をベースとするものであって、たとえばヒマシ油、綿実油、ラッカセイ油、アマニ油、ヤシ油、パーム核油、オリーブ油、ナタネ油、ダイズ油、魚油、および牛脂などである(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,6th Edition,Volume 13,pp.75−108)。好ましいカルボン酸は、ヤシ油から、および牛脂から誘導され、部分的または全面的に水素化されたものである。
【0073】
変性樹脂酸および脂肪酸をベースとするそのようなカルボン酸は、水溶性のリチウム、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムの塩として使用される。ナトリウム塩およびカリウム塩が好ましい。
【0074】
さらなるアニオン性乳化剤としては、有機基に結合されたスルホン酸塩、硫酸塩およびリン酸塩が挙げられる。可能な有機基としては、脂肪族基、芳香族基、アルキル化芳香族化合物、縮合芳香族化合物およびメチレン橋かけ芳香族化合物が挙げられるが、そのメチレン橋かけおよび縮合芳香族化合物はさらにアルキル化されていてもよい。そのアルキル鎖の長さは、6〜25個の炭素原子である。芳香族化合物に結合されたアルキル鎖の長さは、3〜12個の範囲の炭素原子である。
【0075】
それらの硫酸塩、スルホン酸塩およびリン酸塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウム塩として使用される。ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムの塩が好ましい。
【0076】
そのようなスルホン酸塩、硫酸塩およびリン酸塩の例としては、ラウリル硫酸Na、アルキルスルホン酸Na、アルキルアリールスルホン酸Na、メチレン橋かけアリールスルホン酸のNa塩、アルキル化ナフタレンスルホン酸のNa塩、およびさらにはメチレン橋かけナフタレンスルホン酸のNa塩などが挙げられるが、それらはさらにオリゴマー化されていてもよく、そのオリゴマー化度は2〜10の範囲である。アルキル化ナフタレンスルホン酸およびメチレン橋かけ(場合によってはさらにアルキル化)ナフタレンスルホン酸は通常、異性体の混合物として存在するが、それには、分子中に2個以上のスルホン酸基(2個または3個のスルホン酸基)を含んでいてもよい。特に好ましいのは、ラウリル硫酸Na、12〜18個の炭素原子を有するアルキルスルホン酸Naの混合物、アルキルアリールスルホン酸Na、ジイソブチレンナフタレンスルホン酸Na、メチレン橋かけポリナフタレンスルホン酸塩混合物、およびさらにはメチレン橋かけアリールスルホン酸塩混合物である。
【0077】
電荷を有さない乳化剤は、酸性度が十分に高い水素原子を有する化合物との、エチレンオキシドの付加反応生成物およびプロピレンオキシドの付加反応生成物から誘導される。そのような化合物としては、たとえば、フェノール、アルキル化フェノールおよびアルキル化アミンが挙げられる。エポキシドの平均重合度は2〜20の範囲である。電荷を有さない乳化剤の例は、8、10および12個のエチレンオキシド単位を有するエトキシル化ノニルフェノールである。電荷を有さない乳化剤は通常、単独で使用されることはなく、その代わりにアニオン性乳化剤と組み合わせて使用される。
【0078】
好ましいのは、不均化アビエチン酸および部分水素化獣脂脂肪酸ならびにそれらの混合物のNaおよびK塩、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸Na、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ならびにアルキル化およびメチレン橋かけナフタレンスルホン酸である。
【0079】
それらの乳化剤は、モノマー混合物100重量部を基準にして、0.2〜15重量部、好ましくは0.5〜12.5重量部、特に好ましくは1.0〜10重量部の量で使用される。
【0080】
上述の乳化剤を使用してエマルション重合を実施する。重合が完結した後で、ある程度の不安定さを有しているために、早すぎる自己コアグレーションを起こす傾向を有するラテックスが得られるような場合には、ラテックスの後安定化のために上述の乳化剤を使用することもできる。このことは、特に、スチームを用いた処理により未反応のモノマーを除去する前や、ラテックスの貯蔵の前に必要となることがある。
【0081】
重合開始剤:
エマルション重合を開始させるために、典型的には、分解してフリーラジカルとなる重合開始剤を使用する。そのようなものとしては、−O−O−単位(ペルオキソ化合物)または−N=N−単位(アゾ化合物)を含む化合物が挙げられる。
【0082】
ペルオキソ化合物としては、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸塩、ペルオキソ二リン酸塩、ヒドロペルオキシド、過酸、過酸エステル、過酸無水物、および2個の有機基を有するペルオキシドが挙げられる。ペルオキソ二硫酸およびペルオキソ二リン酸の好適な塩は、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウム塩である。好適なヒドロペルオキシドは、たとえば、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、およびp−メンタンヒドロペルオキシドである。2個の有機基を有する好適なペルオキシドは、ジベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルアセテートなどである。好適なアゾ化合物は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル、およびアゾビスシクロヘキサンニトリルである。
【0083】
過酸化水素、ヒドロペルオキシド、過酸、過酸エステル、ペルオキソ二硫酸塩およびペルオキソ二リン酸塩は、還元剤と組み合わせても使用される。好適な還元剤は、スルフェン酸塩、スルフィン酸塩、スルホキシル酸塩、ジチオネート、亜硫酸塩、メタビス亜硫酸塩、二亜硫酸塩、糖、尿素、チオ尿素、キサントゲン酸塩、チオキサントゲン酸塩、ヒドラジニウム塩、アミンおよびアミン誘導体たとえば、アニリン、ジメチルアニリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミンである。酸化剤と還元剤とからなる重合開始剤系はレドックス系と呼ばれる。レドックス系を使用する場合には、遷移金属化合物の塩、たとえば鉄、コバルトまたはニッケルの塩をさらに、適切な錯化剤たとえば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウムおよびリン酸三ナトリウムまたは二リン酸四カリウムと組み合わせてさらに使用されることも多い。
【0084】
好適なレドックス系としては、たとえば以下のものが挙げられる:
1)ペルオキソ二硫酸カリウムとトリエタノールアミンとの組合せ、
2)ペルオキソ二リン酸アンモニウムとメタビス亜硫酸ナトリウム(Na
2S
2O
5)との組合せ、
3)p−メタンヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムと、Fe(II)硫酸塩(FeSO
4・7H
2O)、エチレンジアミノ酢酸ナトリウムおよびリン酸三ナトリウムとの組合せ、
4)クメンヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムと、Fe(II)硫酸塩(FeSO
4・7H
2O)、エチレンジアミノ酢酸ナトリウムおよび二リン酸四カリウムとの組合せ。
5)ピナンヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムと、鉄(II)硫酸塩(FeSO
4・7H
2O)、エチレンジアミノ酢酸ナトリウムおよびリン酸三ナトリウムとの組合せ。
【0085】
酸化剤の量は、モノマー100重量部を基準にして、0.001〜1重量部である。還元剤のモル量は、使用した酸化剤のモル量を基準にして、50%〜500%の範囲である。
【0086】
錯化剤のモル量は、使用した遷移金属の量を基準にし、通常それと等モルである。
【0087】
重合を実施するためには、重合開始剤系の全部の成分または個々の成分を、重合の開始時か、または重合の途中で導入する。
【0088】
重合の間に、活性化剤系の全部または個々の成分を、分割して添加するのが好ましい。順次に添加する手段によって、反応速度を調節することができる。
【0089】
重合時間は、1時間〜25時間、好ましくは2〜25時間の範囲であるが、実質的には、モノマー混合物の中のアクリロニトリル含量および重合温度に依存する。
【0090】
重合温度は、0〜30℃、好ましくは5〜25℃の範囲である。
【0091】
本発明のニトリルゴムを得るためには、その重合を、使用されたモノマー混合物を基準にして、少なくとも60%の転化率になるまで実施するということが重要である。重合は、転化率が60〜100%、特に好ましくは62〜100%、特には65〜100%の範囲になるように実施するのが好ましい。この転化率に達したら、重合を停止させる。
【0092】
この目的のためには、その反応混合物に重合停止剤を添加する。この目的に適した重合停止剤としては、たとえば、ジメチルジチオカルバミン酸塩、亜硝酸Na、ジメチルジチオカルバミン酸塩と亜硝酸Naの混合物、ヒドラジン、およびヒドロキシルアミン、さらにはそれらからの塩、たとえば、硫酸ヒドラジニウムおよび硫酸ヒドロキシルアンモニウム、ジエチルヒドロキシルアミン、ジイソプロピルヒドロキシルアミン、ヒドロキノンの水溶性塩、亜ジチオン酸ナトリウム、フェニル−α−ナフチルアミン、ならびに芳香族フェノールたとえばtert−ブチルカテコール、またはフェノチアジンが挙げられる。
【0093】
エマルション重合において使用する水の量は、モノマー混合物100重量部を基準にして、100〜900重量部の範囲、好ましくは120〜500重量部の範囲、特に好ましくは150〜400重量部の範囲の水である。
【0094】
重合の際の粘度を低下させるため、pHを設定するため、およびpH緩衝剤として、塩を、エマルション重合における水相の中に添加することができる。典型的な塩は、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムの形態の一価の金属の塩、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、ならびに塩化カリウムである。水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、および塩化カリウムが好ましい。それらの電解質の量は、モノマー混合物100重量部を基準にして、0〜1重量部、好ましくは0〜0.5重量部の範囲である。
【0095】
重合はバッチ式で実施することもできるし、あるいは、撹拌容器のカスケードの中で連続的に実施することもできる。
【0096】
重合の過程を均質化させるためには、重合開始剤系のほんの一部だけを重合開始のために使用し、重合の途中でその残りを導入する。重合開始剤の全量の、通常は10〜80重量%、好ましくは30〜50重量%を使用して重合を開始させる。重合開始剤系の個々の構成成分をさらに導入することもまた可能である。
【0097】
化学的に均質な製品を調製したいのならば、組成が、ブタジエン/アクリロニトリルの共沸比から外れそうになったときには、さらなるアクリロニトリルまたはブタジエンを導入する。10〜34重量%のアクリロニトリル含量を有するNBRのタイプ、さらには40〜50重量%のアクリロニトリルを有するタイプの場合には、さらなる導入を実施するのが好ましい(W.Hofmann,“Nitrilkautschuk”,Berliner Union,Stuttgart,1965,p.58−66)。そのさらなる導入は、たとえば旧東独国特許第154 702号明細書に示されているように、コンピュータープログラムに基づくコンピューター制御で実施するのが好ましい。
【0098】
未反応のモノマーを除去するために、「反応停止させた(terminated)」ラテックスを水蒸気蒸留にかけることができる。その場合、70℃〜150℃の範囲の温度が採用されるが、温度が100℃未満の場合には、圧力を下げる。水蒸気蒸留の前に、乳化剤を使用して、ラテックスの後安定化を実施することもできる。この目的のためには、上述の乳化剤を、ニトリルゴム100重量部を基準にして、0.1〜2.5重量%、好ましくは0.5〜2.0重量%の量で使用するのが有利である。
【0099】
本発明のニトリルゴムを含む粉末状混合物の製造:
ニトリルゴムを含む粉末状混合物の製造は、各種の方法で実施することができるが、それぞれの場合において、先に定義された特定のニトリルゴム(1)を1種または複数の剥離剤(2)と接触させることが含まれる。ニトリルゴム成分(1)の製造には、典型的には、ミリング工程(経路1)またはそうで無ければスプレードライ工程(経路2)のいずれかが含まれるが、それぞれの場合において、その過程の途中で、剥離剤との接触が起きる。
【0100】
経路1:
先に述べたように、ニトリルゴムは、究極的には、エマルション重合および仕上げ工程の後でゴム団粒の形態で得られ、それらは多くの場合、プレスにかけてゴムボールの形状にされる。本発明の粉末状混合物を製造するためには、そのゴムボールまたは団粒を、機械的処理すなわちミリングおよび/または微粉化により、所望の粒径にまで粉砕するが、それは、場合によっては、複数の工程で実施しすることもできる。エラストマー性粒子のコアグレーションを防止する目的で、その製造プロセスにおいて、少なくとも1種の剥離剤を導入する。そのようにして得られた、ニトリルゴムと剥離剤とをベースとする粉末状混合物は、数ヶ月貯蔵しても、それらのポリマーの性質およびそれらの粒径分布の点では安定である。
【0101】
したがって経路1に含まれるのは、エマルション重合の後の、ラテックスのコアグレーション、それに続くゴム団粒を単離するためのコアグレート化されたニトリルゴムの洗浄および乾燥、場合によってはゴムボールを形成させるための加圧、そして最終的には機械的処理によるゴムボールまたは団粒の粉砕およびミリング(これは、場合によっては複数の工程で実施することもできる)である。たとえば、第一の工程で粗粉砕ミリングをし、第二の工程で、微細ミリング(微粉化(micronization)とも呼ばれる)をすることも可能である。剥離剤は、典型的には、ミリング操作の間に添加されるが、それは、一度に実施することも、あるいはいくつかに分けて漸増的に実施することも可能である。
【0102】
ラテックスのコアグレーション:
ラテックスのコアグレーションの前または途中に、ラテックスに1種または複数の老化開始剤(ageing initiator)を添加することもできる。この目的のためには、フェノール系、アミンおよびその他の老化防止剤が適している。
【0103】
好適なフェノール系老化防止剤としては、以下のものが挙げられる:アルキル化フェノール、スチレン化フェノール(CAS No.61788−44−1)、立体障害フェノールたとえば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(Vulkanox BHT、CAS No.000128−37−0)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル)−p−クレゾール(Vulkanox BKF、CAS No.000119−47−1)、ポリ(ジシクロペンタジエン−co−p−クレゾール)、エステル基を含む立体障害フェノールたとえば、(ベータ)−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオン酸n−オクタデシル、チオエーテル含有立体障害フェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BPH)、2−メチル−4,6−ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノール、および立体障害チオビスフェノール。さらなる実施形態においては、2種以上の老化防止剤、たとえばβ−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオン酸n−オクタデシル、ポリ(ジシクロペンタジエン−co−p−クレゾール)、および2−メチル−4,6−ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノールの混合物も添加する。
【0104】
ゴムの着色が問題とならないのなら、アミン系老化防止剤、たとえば、ジアリール−p−フェニレンジアミン(DTPD)の混合物、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル−α−ナフチルアミン(PAN)、フェニル−β−ナフチルアミン(PBN)、好ましくはフェニレンジアミンをベースとするものも使用される。フェニレンジアミンの例としては、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’−ビス−1,4−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)などが挙げられる。
【0105】
その他の老化防止剤としては、ホスファイトたとえばトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、重合させた2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール(MMBI)、亜鉛メチルメルカプトベンズイミダゾール(ZMMBI)などが挙げられる。上述のその他の老化防止剤は、フェノール系老化防止剤と組み合わせて使用されることも多い。その他の老化防止剤のTMQ、MBIおよびMMBIは、主として、周期的に加硫される(periodically vulcanized)タイプのNBRに使用される。
【0106】
コアグレーションさせるためには、塩基、好ましくはアンモニアもしくは水酸化ナトリウムもしくはカリウムペルオキシド、または酸、好ましくは硫酸もしくは酸性の酸(acidic acid)を添加することによって、そのラテックスを当業者に公知のpHにする。
【0107】
そのプロセスの一つの実施形態においては、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、およびリチウムの塩からなる群から選択される少なくとも1種の塩を使用してコアグレーションを実施する。これらの塩のアニオンとしては、一般的には、一価もしくは二価のアニオンが使用される。好ましいのは、ハライド、特に好ましくは塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸水素塩、炭酸塩、ギ酸塩、および酢酸塩である。
【0108】
好適な塩は、たとえば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(カリミョウバン)、硫酸アルミニウムナトリウム(ナトリウムミョウバン)、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、およびギ酸カルシウムである。ラテックスのコアグレーションのために水溶性のカルシウム塩を使用するのならば、塩化カルシウムが好ましい。
【0109】
塩は、ラテックス分散体の固形分含量を基準にして、0.05〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%、特に好ましくは1〜5重量%の量で添加する。
【0110】
上に定義された群からの少なくとも1種の塩に加えて、コアグレーションにおいて沈殿助剤を使用することも可能である。可能な沈殿助剤は、たとえば水溶性ポリマーである。それらは、ノニオン性、アニオン性、またはカチオン性である。
【0111】
ノニオン性ポリマー沈殿助剤の例としては、変性セルロースたとえば、ヒドロキシアルキルセルロースまたはメチルセルロース、および酸性水素を有する化合物の上のエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドアダクトなどが挙げられる。酸性水素を有する化合物の例としては、脂肪酸、糖たとえばソルビトール、モノ脂肪酸およびジ脂肪酸のグリセリド、フェノール、アルキル化フェノール、(アルキル)フェノール/ホルムアルデヒド縮合物などが挙げられる。それらの化合物へのエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの付加反応生成物は、ランダム構造であっても、あるいはブロック構造であってもよい。これらの反応物の中でも好ましいのは、温度が上昇するにつれて溶解性が低下するようなものである。
【0112】
アニオン性ポリマー沈殿助剤の例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。ポリアクリル酸のNa塩が好ましい。
【0113】
カチオン性ポリマー沈殿助剤は通常、ポリアミンをベースとするもの、ならびに(メタ)アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマーをベースとするものである。好ましいのは、ポリメタクリルアミドおよびポリアミン、特にエピクロロヒドリンおよびジメチルアミンをベースとするものである。ポリマー沈殿助剤の量は、ニトリルゴム100重量部あたり、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2.5重量部である。
【0114】
その他の沈殿助剤を使用することも考えられる。しかしながら、追加の沈殿助剤を存在させずに本発明のプロセスを実施することも、容易に可能である。
【0115】
コアグレーションのために使用するラテックスは、有利には1〜40重量%の範囲、好ましくは5〜35重量%の範囲、特に好ましくは15〜30重量%の範囲の固形分含量を有している。
【0116】
ラテックスのコアグレーションは、10〜110℃、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは50〜98℃の温度範囲で実施する。ラテックスのコアグレーションは、連続式でもバッチ式でも実施可能であるが、連続操作が好ましい。
【0117】
また別な実施形態においては、通常、未反応のモノマーから分離した後のラテックスを、pH範囲が6以下、好ましくは4以下、特に好ましくは2の酸を用いて処理し、その結果としてポリマーを沈殿させることも可能である。その沈殿のためには、選択したpH範囲への設定を可能とするすべての鉱酸および有機酸を使用することができる。鉱酸は、pHを設定するために使用するのが好ましい。次いで、当業者に公知の慣用される方法で、そのポリマーを、懸濁液から分離させる。この場合もまた、連続式でもバッチ式でも実施可能であるが、連続操作が好ましい。
【0118】
コアグレート化させたニトリルゴムの洗浄および乾燥:
コアグレーションの後では、ニトリルゴムは通常、団粒の形態で存在している。したがって、コアグレート化させたNBRの洗浄を、団粒洗浄と呼ぶこともある。この洗浄は、脱イオン水、または脱イオンされていない水のいずれを使用しても実施することができる。洗浄は、15〜90℃の範囲、好ましくは20〜80℃の範囲の温度で実施する。洗浄水の量は、ニトリルゴム100重量部を基準にして、0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。ゴムの団粒を多段の洗浄にかけるのが好ましいが、個々の洗浄段階の間で、ゴムの団粒を部分的に脱水する。個々の洗浄段階の間の団粒の残存湿分含量は、5〜50重量%の範囲、好ましくは7〜25重量%の範囲である。洗浄段の段数は通常で1〜7段、好ましくは1〜3段である。洗浄は、バッチ方式でも連続方式でも実施される。多段の連続プロセスが好ましく、向流洗浄として水を節約するのが好ましい。洗浄が完了した後に、ニトリルゴムの団粒を脱水するのが有用であることが見出された。予め脱水させたニトリルゴムの乾燥は、ドライヤーの中で実施するが、適切なドライヤーはたとえば、流動床ドライヤーまたはプレートドライヤーである。乾燥の際の温度は、80〜150℃である。温度プログラムに従って、乾燥プロセスの最後に向けて温度を下げながら乾燥をするのが好ましい。
【0119】
粉砕およびミリングには、当業者に公知の装置およびミリング器具が好適である。
【0120】
経路2:
第二の可能な方法は、エマルション重合で得られたポリマーラテックスから直接開始されるが、そのラテックスは、水の中での固体のポリマー粒子の懸濁液であって、典型的には乳化剤の手段によって安定化されている。粉末状エラストマーは、このラテックスから、スプレードライの手段によって、ポリマーのラテックスから水を分離することによって直接得られ、微細な粉体の形状でポリマーが得られる。以下のようにして、剥離剤を導入する。
【0121】
エマルション重合からのラテックスをスプレードライさせることは、一般的には、慣用されるスプレードライヤーで実施される。この場合、好ましくは15〜100℃に加熱しておいたラテックスを、ポンプの手段によりスプレードライヤーの中に導入し、たとえばドライヤーの頂部に位置するノズルの手段により、好ましくは、50〜500bar、好ましくは100〜300barの圧力でスプレーさせる。一つの実施形態においては、そのスプレードライヤー中を、100〜500mbar、好ましくは150〜400mbarの大気圧より低い圧力になるようにする。好ましくは100〜350℃の入口温度を有する加熱空気を、たとえば、向流方向に導入して、水を蒸発させる。粉体が落下し、その乾燥させた粉体をドライヤーの底部から排出させる。1種または複数の剥離剤、および場合によってはさらなる添加剤たとえば、老化防止剤、抗酸化剤、蛍光増白剤などを、乾燥粉体として、同様にドライヤーの頂部から吹き込むのも好ましい。それらは、その一部または全部を、スプレードライする前のラテックスに添加しておくこともまた可能である。スプレードライヤーの中にフィードするラテックスは、ラテックスを基準にして、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%、特には30〜50重量%の固形分濃度を有している。
【0122】
いずれの経路を介しても、特定の低い放散値を有するNBRを剥離剤と組み合わせて使用することによって、顕著に低いVOC含量を有する安定な粉体の形態を得ることが可能となる。重要なことは、このVOC含量の低下が、この混合物を製造する過程で達成され、そのために、以下でも説明するように、この後での複合材料を得るための加工の際には、健康に有害となり得るいかなる曝露も、もはや存在しないことである。幸運なことには、本発明においては、VOC含量の低下が、従来技術のプロセスにおいては、ポリマーの構造、製品の老化挙動、弾性、または着色安定性に時として悪影響を有しているかまたは有する可能性がある、高い熱応力や長い加工時間にポリマーをさらすことなく達成される。
【0123】
本発明はさらに、以下のものを含む複合材料も提供する:
(A)先に明確に定義されたような少なくとも1種のニトリルゴム(1)、および先に定義されたような0.01〜4mmの範囲の平均粒子直径D
aを有する1種または複数の剥離剤(2)を含む、少なくとも1種の本発明による粉末状混合物、ならびに
(B)1種または複数の熱可塑性ポリマー。
【0124】
好ましい実施形態においては、その成分(B)が、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン−酢酸ビニル、およびポリスチレンからなる群から選択される。
【0125】
特に好ましい実施形態においては、その成分(B)が、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、およびポリアミドからなる群から選択される。
【0126】
成分(A)(ニトリルゴム)と(B)(熱可塑性プラスチック)とを、(1〜99):(99〜1)、好ましくは(10〜60):(90〜40)の重量比で使用するのが有用であることが見出された。
【0127】
これらの複合材料は、熱可塑性プラスチックの中で、粉末状混合物が優れて均質な分散体示し、そのために、所望される性質の改良、たとえば優れた衝撃靱性が得られるようになる。
【0128】
本発明はさらに、二つの成分(A)および(B)を互いに混合することによる、先に定義されたような複合材料を製造するためのプロセスも提供する。
【0129】
それらの成分の混合は、典型的には、機械的ミキサー中、ロールミル上、またはそうでなければ、エクストルーダーの手段のいずれかによって実施される。機械的ミキサーとしては、通常、「かみ合い式(intermeshing)」ローター形状を有するものが採用される。出発点において、機械的ミキサー、ロールミル、またはエクストルーダーに、本発明による粉末状混合物および/または1種または複数の熱可塑性プラスチックが供給される。温度を調節しながら混合を実施するが、ただし、混合される物質が、適切な時間のあいだ、熱可塑性プラスチック成分(B)を溶融させるような温度に留まっているようにする。通常、100〜280℃の範囲の温度が選択される。さらなる添加剤を添加するような場合には、それらを、適切な時点で添加する。さらなる適切な混合時間の後で、機械的ミキサーを開けそして空にして(vented and emptied)、複合材料を得る。上述の時間はすべて、通常、数分間の領域であり、当業者ならば、製造する混合物に応じて、容易に決めることができる。混合装置としてロールミルを使用する場合には、同様の方法および順序で、導入を実施することができる。また別の有用な添加順序も可能であり、当業者ならば、数回の混合試験の手段によって見出すことができる。
【0130】
また別な実施形態においては、複合材料の製造において、さらなる成分を添加することが有用となりうる。
【0131】
以下におけるさらなる説明のすべてにおいて、「phr」という用語は、その都度説明することはしないが、「ゴム100部あたりの部数(parts per hundred of rubber)」であり、したがって、その複合材料を製造するために使用したすべてのゴム100重量部を基準にしている。したがって、その複合材料が、ゴムとしてニトリルゴム成分(1)のみを含んでいる場合には、さらなる成分のためのphrの数字は、100重量部のニトリルゴムを基準にしている。
【0132】
複合材料の製造において、場合によっては、1種または複数の架橋剤が使用される。ここで可能性があるものとしては、たとえば、以下のものが挙げられる:ペルオキシド系架橋剤たとえば、ビス(2,4−ジクロロベンジル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブテン、4,4−ジ−tert−ブチルペルオキシ(ノニルバレレート)、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン。
【0133】
これらのペルオキシド系架橋剤に加えて、その手段によって架橋収率を上げることを可能とするようなさらなる添加剤を使用することも有利となりうる。この目的に適した添加剤は、たとえば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、Znジアクリレート、Znジメタクリレート、1,2−ポリブタジエン、またはN,N−em−フェニレンジマレイミドである。
【0134】
それらを使用する場合、その架橋剤を合計した量が、通常0.05〜20phrの範囲、好ましくは0.1〜10phrの範囲、特に好ましくは0.2〜8phrの範囲、特には0.2〜5phrの範囲である。
【0135】
架橋剤としては、元素状で、可溶性または不溶性の形態にある硫黄、または硫黄供与体を使用することもまた可能である。
【0136】
硫黄を架橋剤として使用するなら、それは、通常0.1〜10phr、好ましくは0.2〜5phr、特に好ましくは0.2〜3phrの量で使用される。
【0137】
可能な硫黄供与体としては、たとえば以下のものを挙げることができる:ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2−モルホリノジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、およびテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)。硫黄供与体を架橋剤(2)として使用するのなら、その量は、通常1〜10phr、好ましくは1〜6phr、特に好ましくは1〜4phrである。
【0138】
複合材料の製造において1種または複数の充填剤を採用することが有利となりうる。この場合に可能な充填剤としては、たとえば以下のものが挙げられる:カーボンブラック、シリカ、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土、タルク、カオリン、ベントナイト、カーボンナノチューブ、Teflon(後者は好ましくは粉体の形態)、またはケイ酸塩。
【0139】
充填剤は、1〜600phr、好ましくは10〜500phr、特に好ましくは20〜400phr、特には50〜300phrの量で使用することができる。
【0140】
架橋剤に加えて、1種または複数の架橋促進剤を使用することも可能であり、その手段によって、架橋収率を向上させることができる。しかしながら、架橋は、原理的には、1種または複数の架橋剤のみを使用して実施することもできる。1種または複数の架橋促進剤を使用するのならば、その量は、通常は15phrまで、好ましくは0.05〜13phr、特に好ましくは1〜12phr、特には1〜10phrである。
【0141】
架橋促進剤を、たとえば、パラフィンまたはその他の物質との混合物の形で使用する場合には、上に挙げたphrの数字は、それぞれの活性物質に関係している。
【0142】
その手段によって架橋収率を向上させることが可能な、このタイプの好適な添加剤としては、たとえば以下のものが挙げられる:ジチオカルバミン酸塩、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、キサントゲン酸塩、グアニジン誘導体、カプロラクタム、およびチオ尿素誘導体。
【0143】
ジチオカルバミン酸塩としては、たとえば以下のものが使用できる:ジメチルジチオカルバミン酸アンモニウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDBC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZBEC)、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(Z5MC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル、およびジイソノニルジチオカルバミン酸亜鉛。
【0144】
チウラムとしては、たとえば以下のものが使用できる:テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジメチルジフェニルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、およびテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)。
【0145】
チアゾールとしては、たとえば以下のものが使用できる:2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンズチアジルジスルフィド(MBTS)、亜鉛メルカプトベンゾチアゾール(ZMBT)、および銅2−メルカプトベンゾチアゾール。
【0146】
スルフェンアミド誘導体としては、たとえば以下のものが使用できる:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンズチアジルスルフェンアミド(TBBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンズチアジルスルフェンアミド(DCBS)、2−モルホリノチオベンズチアゾール(MBS)、N−オキシジエチレンチオカルバミル−N−tert−ブチルスルフェンアミド、またはオキシジエチレンチオカルバミル−N−オキシエチレンスルフェンアミド。
【0147】
キサントゲン酸塩としては、たとえば以下のものが使用できる:ジブチルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルジブチルキサントゲン酸亜鉛、またはジブチルキサントゲン酸亜鉛。
【0148】
グアニジン誘導体としては、たとえば以下のものが使用できる:ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ−o−トリルグアニジン(DOTG)、またはo−トリルビグアニド(OTBG)。
【0149】
ジチオリン酸塩としては、たとえば以下のものが使用できる:ジアルキルジチオリン酸亜鉛(アルキル基の鎖長:C
2〜C
16)、ジアルキルジチオリン酸銅(アルキル基の鎖長:C
2〜C
16)、またはジチオホスホリルポリスルフィド。
【0150】
カプロラクタムとしては、たとえば、ジチオビスカプロラクタムが使用できる。
【0151】
チオ尿素誘導体としては、たとえば以下のものが使用できる:N,N’−ジフェニルチオ尿素(DPTU)、ジエチルチオ尿素(DETU)、およびエチレンチオ尿素(ETU)。
【0152】
同様に添加剤として好適な化合物の例は、亜鉛ジアミンジイソシアネート、ヘキサメチレンテトラミン、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、およびさらには環状ジスルファン。
【0153】
上述の架橋促進剤は、単独または混合物の形、いずれでも使用することができる。ニトリルゴムを架橋するためには、以下の物質を使用するのが好ましい:2−メルカプトベンズチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジモルホリルジスルフィド、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、およびジチオビスカプロラクタム。
【0154】
硫黄架橋の場合においては、架橋剤および上述の架橋促進剤に加えて、成分(4)として、たとえば以下のような、さらなる無機もしくは有機物質を付随的に使用するのも有用となりうる:酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化鉛、酸化マグネシウム、飽和もしくは不飽和の有機脂肪酸たとえば、立体酸(steric acid)およびその亜鉛塩、多価アルコール、アミノアルコールたとえばトリエタノールアミン、およびさらにはアミンたとえば、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルエチルアミン、およびポリエーテルアミン。
【0155】
さらには、早期(incipient)加硫抑制剤を使用することもできる。そのようなものとしては、シクロヘキシルチオフタルイミド(CTP)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、無水フタル酸(PTA)およびジフェニルニトロソアミンが挙げられる。好ましいのは、シクロヘキシルチオフタルイミド(CTP)である。
【0156】
本発明の複合材料の製造においては、充填剤活性化剤を使用することもまた可能である。この場合好ましいのは、有機シラン、特に好ましいのは、以下のものである:ビニルトリメチルオキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、メチル−トリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、または(オクタデシル)メチルジメトキシシラン。さらなる充填剤活性化剤としては、たとえば、トリエタノールアミンおよび74〜10000g/molの分子量を有するエチレングリコールのような表面活性物質が挙げられる。
【0157】
充填剤活性化剤を使用するのならば、それらを、通常は10phrまで、好ましくは0.01〜10phr、特に好ましくは0.25〜10phr、特には0.5〜7phrの量で採用する。
【0158】
本発明の複合材料の製造において、1種または複数の老化防止剤を使用することもまた可能である。その場合、本出願において、ラテックスのコアグレーションの文脈において先に記述したすべてのものが添加できる。それらは、通常5phrまで、好ましくは0.2〜5phr、特に好ましくは0.25〜4phr、特には0.5〜3phrの量で採用される。
【0159】
本発明の複合材料の製造においてオゾン安定剤を使用することも可能であり、使用するのに好ましいものとしては、以下のものが挙げられる:パラフィン系ワックス、マイクロワックス、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、フェニレンジアミン、Vulkazon AFS/LG(CAS No.006600−31−3)、またはVulkazon AFD(CAS No.022428−48−4)。それらを使用するなら、その量は、通常5phrまで、好ましくは0.2〜5phr、特に好ましくは0.25〜4phr、特には0.5〜3phrである。
【0160】
それらに加えて、本発明の複合材料の製造において、1種または複数の可塑剤を使用することも可能であり、好ましくは、たとえば以下のものである:フタル酸エステルたとえばDOPまたはDINP、アジピン酸エステルたとえばDOA、メリト酸エステルまたはトリメリト酸エステルたとえばTOTM、セバシン酸エステルたとえばDOS、ジエステル−エーテル混合物たとえばRhenosin(登録商標)W759、チオエーテルたとえばVulkanol(登録商標)OT、ホスフェートたとえばDisflamoll(登録商標)、Mesamoll(登録商標)、またはポリマー性可塑剤たとえばUltramoll(登録商標)、バイオベースの可塑剤たとえばESBO。
【0161】
可塑剤は、通常は180phrまで、好ましくは0.5〜150phr、特に好ましくは1〜125phr、特には1〜100phrの量で採用される。
【0162】
本発明はさらに、好ましくは自動車内装において使用される、構成部品を製造するためのそれらの複合材料の使用も提供し、そしてそれらの複合材料をベースとする構成部品も提供する。
【実施例】
【0163】
I.分析
アクリロニトリル含量:
本発明においてニトリルゴム中のアクリロニトリル含量を測定するための窒素含量は、DIN 53 625に従い、Kjeldahl法によって測定した。
【0164】
ムーニーの測定:
ムーニー粘度(ML1+4@100℃)の測定は、ASTMD1646に従い、100℃で実施した。
【0165】
粒径の測定:
粉末状混合物の粒径は、粒度測定法で求めた。この目的のためには、100gの粉末状混合物を、2.0mmの目開きを有する篩の中に秤り込んだ。この篩の下に、1.4mm、1.0mm、0.8mm、0.6mmおよび0.3mmの目開きを有するさらなる篩を設置した。そのようにして組み合わせた篩を、振動式篩別機(AS200 control“g”、Retsch製)にクランプ止めし、振幅2.00mmで30分間振動させた。次いで、それぞれの篩を秤量し、次式に従ってその平均粒径D
aを計算した:
D
a=Σ(X
iD
i)/100
ここで、
D
aは、平均粒子直径(mm)であり、
X
iは、それぞれの篩の上に残ったもの(g)の、全部の粒子の質量に対するパーセントであり、そして
D
iは、それぞれの篩nおよびn+1の平均目開き(mm)である。
【0166】
さらに、
D
i=(D
n+D
(n+1))/2
ここで、
D
nは、篩nの目の直径(mm)であり、そして
D
(n+1)は、篩n+1の目の直径(mm)である。
【0167】
ニトリルゴム中の揮発性有機成分は、VDA 278(2011年版)に従い、熱脱着ガスクロマトグラフィー(thermodesorption gas chromatography)(TDS−GC/MS)の手段によって定量化した。
【0168】
II.NBRポリマーAおよびBの調製
本発明実施例および比較例を製造するためのベースとして、表1に示したような2種のNBRポリマーAおよびBを調製し、使用した。
【0169】
【表1】
【0170】
ニトリルゴムAおよびBの調製は、撹拌容器のカスケードで、連続的に実施した。モノマー、セッケンのAOSおよび連鎖移動剤(全モノマー100部を基準にして、表1に記載の量)を導入し、反応器の内容物を所定温度にしてから、鉄(II)塩(プレミックス溶液の形態)およびパラ−メンタンヒドロペルオキシド(Trigonox(登録商標)NT50)の水溶液を導入することにより、反応を開始させた。その反応混合物を、ポンプ輸送により撹拌容器のカスケードを通過させ、所望の転化率に達したら、最後の反応器の中にジエチルヒドロキシルアミンの水溶液を添加することによって重合を停止させた。未反応のモノマーおよびその他の揮発性成分は、減圧下のストリッピングによって除去した。
【0171】
コアグレーションさせる前に、そのNBRラテックスを、それぞれの場合において、Vulkanox(登録商標)BKFの50%強度の分散体と混合した(NBR固形分を基準にして、0.3質量%のVulkanox(登録商標)BKF)。次いで、コアグレーションおよび洗浄を実施し、得られた団粒を乾燥させた。
【0172】
III.NBR AまたはBと剥離剤との粉末状混合物の製造(実施例1および2)
以下のようにして、NBRポリマーAおよびBをベースとして、NBRと剥離剤との粉末状混合物を調製した。記載されている量(単位:g)のNBR団粒を、それぞれの場合において、記載されている量(単位:g)の剥離剤の炭酸カルシウムと、密に混合した。この混合物を、サイクロンを取り付けた超遠心ミルZM 200(Retsch(登録商標))の中に徐々に導入した。そのミルには、平均目開き1mmの環状の篩が備わっていて、18000rpmの速度で運転した。ミリング運転の間に、ミリングチャンバーから粉体を連続的に抜き出し、サイクロンの手段により捕集した。
【0173】
【表2】
【0174】
IV.NBR、剥離剤、および熱可塑性プラスチックの粉末状混合物の製造(実施例3および4(「ドライブレンド」))
プラネタリーミキサー中で表3に示した量(単位:g)を混合することにより、ドライブレンド物を製造した。そのミキサーは、100℃に維持した。その混合装置の中に粉末状のPVCを、安定剤のMark CZ97
**と共に導入し、5分間の混合時間の後にNBR粉体混合物を添加した。さらに10分間混合してから、ドライブレンド物を混合装置から抜き出し、その物質を放冷して室温としてから、さらなる加工にかけた。
【0175】
【表3】
【0176】
V.NBR、剥離剤、および熱可塑性プラスチックの混合物の押出成形品(「複合材料」)(実施例5および6)
複合材料は、実験室用エクストルーダー「Plasti−Corder Lab Station(登録商標)」(Brabender製)の手段によって製造した。その単軸スクリューエクストルーダーは、四つの異なった加熱ゾーンを有していた。サンプルの導入開始時の個々のゾーンの温度を、155℃、160℃、165℃、および170℃に設定した。そのスクリューは、100rpmの速度で運転した。幅2.5mmのスリット形状のダイを工具として使用した。粉末状の実施例3および4(「ドライブレンド物」)をエクストルーダーにフィードした。導入後30秒で、均質な押出し物(「複合材料」)が得られた。
【0177】
VI.全ての例についての分析のまとめ
出発物質のNBR AおよびBのサンプル、さらには剥離剤との粉末状混合物、熱可塑性プラスチックとしてのPVCとの混合物、およびそれに相当する複合材料についての分析結果を以下の表4に示す。
【0178】
0.041mg/(kg*ムーニー単位)の放散係数(従ってこれは、0.25mg/(kg*ムーニー単位)よりも低い)を有するNBRをベースとする本発明による実施例からは、低い放散値を有する物質である複合材料が得られ、そのために、何の問題もなくそして制限も受けることなく、規制の厳しい室内用途に使用可能であるということが明らかに見て取れる。
【0179】
【表4】