特許第6633651号(P6633651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6633651高性能ガラス繊維組成物及びそのガラス繊維並びに複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633651
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】高性能ガラス繊維組成物及びそのガラス繊維並びに複合材料
(51)【国際特許分類】
   C03C 13/00 20060101AFI20200109BHJP
   C03C 3/112 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   C03C13/00
   C03C3/112
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-557047(P2017-557047)
(86)(22)【出願日】2015年10月15日
(65)【公表番号】特表2018-516835(P2018-516835A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】CN2015091987
(87)【国際公開番号】WO2017063167
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2017年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】517101366
【氏名又は名称】ジュシ グループ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ザング リン
(72)【発明者】
【氏名】カオ グロング
(72)【発明者】
【氏名】シング ウェンゾング
(72)【発明者】
【氏名】グ グイジアング
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0244858(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0203583(US,A1)
【文献】 米国特許第04199364(US,A)
【文献】 特開2003−054993(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102849958(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102849956(CN,A)
【文献】 特開昭62−162649(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/000221(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 13/00 − 13/06
C03C 3/076 − 3/093
C03C 3/11 − 3/118
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高性能ガラス繊維組成物であって、前記ガラス繊維組成物は、以下の成分を含有し、各成分の含有量が重量百分率で以下の通りである:
SiO 58−62%
Al 14−18%
CaO+MgO 20−24.5%
CaO 14%超
LiO 0.01−0.25%
NaO+KO 2%未満
TiO 3.5%未満
Fe 1%未満
0.05%以上1%未満
0.08%以下
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOの範囲は、2超2.6以下であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOの範囲は、3.3−3.86であることを特徴とする高性能ガラス繊維組成物。
【請求項2】
重量百分率の比C2=SiO/CaOの範囲は、3.4−3.86であることを特徴とする請求項1に記載の高性能ガラス繊維組成物。
【請求項3】
各成分の含有量は重量百分率で以下の通りである:
SiO 58.5−61%
Al 14.5−17%
CaO+MgO 20−24.5%
CaO 14%超
LiO 0.01−0.25%
NaO+KO 2%未満
TiO 3.5%未満
Fe 1%未満
0.05%以上1%未満
0.08%以下
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOの範囲は、2超2.4以下であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOの範囲は、3.4−3.86であることを特徴とする請求項1に記載の高性能ガラス繊維組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載のガラス繊維組成物で製造されることを特徴とするガラス繊維。
【請求項5】
請求項に記載のガラス繊維を含むことを特徴とする複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維組成物に関し、特に、先進複合材料補強基材とすることができる高性能ガラス繊維組成物及びそのガラス繊維並びに複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維は、無機繊維材料に属し、それを用いて樹脂を補強すれば、性能に優れた複合材料が得られる。高性能ガラス繊維は、先進複合材料の補強基材として、最初に主に航空、宇宙飛行、兵器などの国防軍需産業分野に適用される。科学技術の進歩と経済の発展に伴って、高性能ガラス繊維は、モータ、風車翼、圧力容器、海上石油パイプライン、スポーツ用品、自動車業界などの民間、工業分野において広く適用されている。
【0003】
米国オーウェンス・コーニング社(OC社と略称する)によりS−2ガラス繊維が開発されてから、各国は、相次いで各種の成分の高性能ガラス繊維を開発して生産し、例えば、フランスサンゴバン社により開発されたRガラス繊維、米国OC社により開発されたHiPer−texガラス繊維、中国南京ガラス繊維研究設計院により開発された高強度2#ガラス繊維などが挙げられる。最初の高性能ガラス成分は、MgO−Al−SiO系を主体とし、典型的な提案は、米国OC社のS−2ガラスが挙げられるが、その生産難度が高く、成形温度が1571℃程度に高く、液相線温度が1470℃に達し、工業上の大規模の生産を実現し難い。OC社は、S−2ガラス繊維の生産を自ら諦め、その特許権を米国AGY社に譲渡し、後者は、S型ガラス繊維及びその改良製品の小規模生産に力を尽くしている。
【0004】
その後、タンク窯による規模化生産の要求をより好適に満たすように、ガラスの溶融温度及び成形温度を低下させるために、海外の各大手会社は、相次いでMgO−CaO−Al−SiO系を主体とする高性能ガラスを開発し、典型的な提案は、例えば、フランスサンゴバン社のRガラスと米国OC社のHiPer−texガラスが挙げられ、これは、一部のガラス性能を犠牲して生産規模を交換する折衷案であり、しかし、設計案が余りにも保守的で、特に、Alの含有量を20%以上、好ましくは25%に維持することで、生産難度が依然として高く、タンク窯による小規模の生産が実現されたが、生産効率が低く、製品のコストパフォーマンスが高くない。したがって、OC社はHiPer−texガラス繊維の生産を諦め、その特許権をヨーロッパの3B社に譲渡した。2007年前後、OC社とサンゴバン社のガラス繊維業務の合併によってOCV社が創立され、Rガラス繊維のコア技術もそれに応じてOCV社に譲渡された。従来のRガラスのカルシウムとマグネシウムの割合が低すぎるため、成形し難く、結晶化リスクが高く、且つ、ガラス液の表面張力が大きく、清澄難度が高く、成形温度が1410℃に達し、液相線温度が1330℃に達し、それで、ガラス繊維延伸上の困難をもたらし、同様に工業上の大規模生産を実現し難い。
【0005】
更に、PPG工業会社により他のRガラス繊維が公開され、このようなガラス繊維の機械的性質が、従来のRガラス繊維よりやや低く、溶融と成形性能が従来のRガラスより明らかに優れているが、ケイ素とカルシウムの割合と、カルシウムとマグネシウムの割合の組み合わせが合理的ではないため、このガラスの結晶化リストが依然として大きく、また、多すぎたLiOが導入され、ガラスの化学的安定性に影響を与えるだけでなく、原料のコストが高くなり、工業上の大規模生産に不利である。
【0006】
高強度2#ガラス繊維の主な成分もSiO、Al、MgOを含み、また、一部のLiO、B、CeO及びFeが導入され、それも高い強度及び係数を有し、その成形温度が1245℃程度だけであり、液相線温度が1320℃であり、両者の温度がいずれもSガラス繊維より遥かに低いが、その成形温度が液相線温度より低いため、ガラス繊維の良好な延伸に不利であり、伸線プロセスにガラス失透現象が発生することを防止するように、伸線温度を高め、特殊の形のノズルを採用しなければならず、これは温度制御上の困難をもたらし、同じく工業上の大規模生産を実現し難い。
【0007】
以上から分かるように、現段階のさまざまな高性能ガラス繊維は実際の生産において、全てガラスの液相線温度が高く、結晶化リスクが大きく、成形温度が高く、表面張力が大きく、清澄難度が高いという普遍的な問題が存在している。現在、主流となっているEガラスは、液相線温度が一般的に1200℃より低く、成形温度が1300℃より低いが、上記高性能ガラスは、液相線温度が普遍的に1300℃より高く、成形温度が1350℃より高く、これらの要因は生産プロセスにガラス結晶化現象、ガラス液の粘度が均一でなく清澄が不良であるなどの現象が発生することを非常に招きやすく、それで、ガラス繊維の生産効率、製品の品質が大幅に低下し、耐火材料、白金ブッシングプレートの使用寿命が大幅に減少する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。本発明の目的は、高性能ガラス繊維組成物を提供することである。
本発明の一態様によれば、高性能ガラス繊維組成物を提供し、前記ガラス繊維組成物は、以下の成分を含有し、各成分の含有量が重量百分率で以下の通りである:
SiO 58−62%
Al 14−18%
CaO+MgO 20−24.5%
CaO 14%超
LiO 0.01−0.5%
NaO+KO 2%未満
TiO 3.5%未満
Fe 1%未満
1%未満
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOの範囲は、2超2.6以下であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOの範囲は、3.3−4.3である。
【0009】
好ましくは、Fの含有量は重量百分率で0.01%以上0.3%未満である。
好ましくは、LiOの含有量は重量百分率で0.01%以上0.1%未満である。
また、更にBを含んでもよく、その含有量は重量百分率で0%超0.1%未満である。
【0010】
本発明の別の態様によれば、ガラス繊維を提供し、前記ガラス繊維は上記ガラス繊維組成物で製造される。
本発明の別の態様によれば、複合材料を提供し、前記複合材料は上記ガラス繊維を含む。
【0011】
本発明のガラス繊維組成物によれば、SiO、CaO、MgO、LiO及びFの含有量の範囲を合理的に設定することにより、CaO/MgO及びSiO/CaOの比の範囲を厳しく制御し、KO、NaO及びLiOの三成分混合アルカリ効果を利用し、更に少量のBを選択的に導入することができる。上記設計案は、高い力学的性質を確保する上で、従来の高性能ガラスの液相線温度が高く、結晶化速度が速く、成形温度が高く、冷却しにくく、ガラス液の表面張力が大きく、清澄しにくく、効率的な大規模生産を行いにくいという問題を克服することができ、高性能ガラスの成形温度、液相線温度及び表面張力を明らかに下げ、同等の条件でガラスの成形難度、結晶化程度及び気泡率を低減させ、また、ガラス繊維は優れた機械的強度を有する。更に、高含有量のTiOを導入する場合、本発明は更に非常に優れた耐熱性能を有する。
【0012】
具体的には、本発明に係る高性能ガラス繊維組成物は、以下の成分を含有し、各成分の含有量が重量百分率で以下の通りである:
SiO 58−62%
Al 14−18%
CaO+MgO 20−24.5%
CaO 14%超
LiO 0.01−0.5%
NaO+KO 2%未満
TiO 3.5%未満
Fe 1%未満
1%未満
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOの範囲は、C1が2超2.6以下であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOの範囲は、3.3−4.3である。
【0013】
このガラス繊維組成物中の各成分の作用及び含有量についての説明は以下のとおりである。
SiOは、ガラス骨格を形成する主な酸化物であり、且つ、各成分を安定化させる作用を発揮する。本発明のガラス繊維組成物において、SiOの重量百分率含有量の範囲を58−62%に限定し、その含有量が低すぎると、ガラスの機械的性質に影響を及ぼすが、その含有量が高すぎると、ガラスの粘度が余りにも高くなり、溶融してしまい、清澄しにくくなる。好ましくは、SiOの含有量の範囲は、58.5−61%に限定可能である。更に好ましくは、SiOの含有量の範囲は、58.5−60.4%に限定可能である。
【0014】
Alも、ガラス骨格を形成する酸化物であり、SiOと結合する時に、ガラスの機械的性質に対して実質的な作用を発揮することができ、また、ガラスの分相の阻止と耐水性の面において重要な作用を発揮する。本発明のガラス繊維組成物において、Alの重量百分率含有量の範囲を14−18%に限定し、その含有量が低いと、十分に高いガラス機械的性質を得ることができないが、その含有量が高すぎると、ガラスの粘度が余りにも高くなり、溶融してしまい、清澄しにくくなる。好ましくは、Alの含有量の範囲は、14.5−17%に限定可能である。更に好ましくは、Alの含有量の範囲は、14.5−16.5%に限定可能である。
【0015】
CaOは、重要な網目修飾酸化物として、ガラスの高温粘度を低下させる面で特に効果的であるが、その含有量が高すぎると、ガラスの結晶化傾向を増やし、ガラスからアノーサイト、ウォラストナイトなどの結晶が析出されるリスクがある。MgOのガラスでの作用はCaOと大体同じであるが、Mg2+の電界強度がより高く、ガラスの係数を高めるには重要な作用を発揮する。不利な点は、MgOの含有量が高すぎると、ガラスの結晶化傾向と結晶化速度を増やし、ガラスから透輝石などの結晶が析出されるリスクがある。本発明のガラス繊維組成物は、CaO、MgO、SiOの含有量の割合を合理的に設計し、アノーサイト(CaAlSi)、透輝石(CaMgSi)又はウォラストナイト(CaSiO)結晶の間の競合成長を導入することにより、この三種類の結晶の成長を遅延し、ガラスの失透リスクを低減する目的を達成する。本発明において、CaO+MgOの重量百分率合計含有量の範囲が20−24.5%に限定され、また、C1=CaO/MgOの割合範囲が2超2.6以下であり、C2=SiO/CaOの割合範囲が3.3−4.3であるように規定されている。よって、Mg2+イオン、Ca2+イオン及びSi4+イオンのガラスでのアニオングループに対する争奪作用により、ガラスの結晶化状態を調節して制御することで、液相線温度と結晶化程度を低下させる。明らかに、CaO/MgOが低すぎる場合、Mg2+イオンが多すぎて、透輝石の結晶化がひどくなる。CaO/MgOが高すぎる場合、Ca2+イオンが多すぎて、アノーサイトの結晶化がひどくなる。SiO/CaOが高すぎると、ガラス粘度が大きすぎる。SiO/CaOが低すぎると、ウォラストナイトの結晶化がひどくなる。好ましくは、C1=CaO/MgOの比の範囲は、2超2.4以下に限定可能であり、C2=SiO/CaOの比の範囲は、3.4−4.2である。更に好ましくは、C2=SiO/CaOの比の範囲は、3.5−4.0である。
【0016】
O及びNaOは、いずれもガラスの粘度を低下させることができ、良好なフラックス剤であり、ガラスの粘度を低下させ、ガラスの結晶化性能を改良することができるが、ガラスの強度の低下を回避するように、導入量が多くない方が良い。本発明のガラス繊維組成物において、NaO+KOの重量百分率含有量の範囲が2%未満に限定される。
【0017】
TiOは、高温時のガラスの粘度を低下させることができるだけでなく、一定のフラックス作用を有する。更に、高含有量のTiOは、更にガラスの耐熱性能を大幅に高めることができる。したがって、本発明のガラス繊維組成物において、TiOの重量百分率含有量の範囲が3.5%未満に限定される。発明者は、TiOの含有量の範囲が2%超3.5%未満である場合、本発明のガラスが非常に優れた耐熱性能を有することを発見した。
【0018】
Feは、ガラスの溶製に寄与し、ガラスの結晶化性能を改良することもできるが、鉄イオンと第一鉄イオンが着色作用を有するため、導入量が多くない方が良い。したがって、本発明のガラス繊維組成物において、Feの重量百分率含有量の範囲が1%未満に限定される。
【0019】
NaO及びKOに比べて、LiOは、ガラスの粘度を明らかに低下させて、ガラスの溶製性能を改善することができるだけでなく、ガラスの力学的性質の向上にも明らかに寄与する。また、少量のLiOだけで、相当な遊離酸素を提供することができ、より多くのアルミニウムイオンが四面体配位を形成して、ガラス体系の網目構造を補強することに寄与し、ガラスの結晶化能力を更に低下させることができるが、LiOの含有量が余りにも高くない方が良く、多すぎたLiは、明らかな網目破壊作用を示し、ガラス構造の安定性を破壊し、逆にガラスの結晶化傾向を加速する。したがって、本発明のガラス繊維組成物において、LiOの重量百分率含有量の範囲が0.01−0.5%に限定される。発明者は、LiOの含有量を0.01%以上0.1%未満といった低い範囲に制御した場合でも、その技術効果が依然として優れていることを発見した。
【0020】
本発明のガラス繊維組成物において、少量のフッ素(F)を含有してもよい。大量の研究により、少量のフッ素を採用すれば、排ガスへの処理難度が小さいわりに、ガラスのフラックス、成形温度と液相線温度の低下の面で明らかな作用を有し、例えば、0.2%のFだけで、4−6℃の成形温度と液相線温度を低下させることができ、これは、高性能ガラスの伸線成形に対して非常に有利である。したがって、本発明のガラス繊維組成物において、Fの重量百分率含有量の範囲が1%未満に限定される。低含有量のFの技術効果が依然として顕著であることを考慮し、一般的に、Fの含有量の範囲が0.01%以上0.3%未満に制御される。
【0021】
また、本発明のガラス繊維組成物に、更に少量のBを選択的に導入してもよく、良好なフラックス作用を発揮することができ、更にガラスの粘度と結晶化のリスクを低減することができる。発明者は、本発明の高性能ガラス体系において、少量のBを導入してLiOと共存する場合、Bが、上記作用以外に、更にガラスの強度、係数及びその他の物理性能を高めることができることを意外に発見した。少量のBが全てガラス構造に積極的に入り、逆にガラスの各性能の補強に寄与するという可能性が考えられる。したがって、本発明のガラス繊維組成物において、Bの重量百分率含有量の範囲が0%超0.1%未満に限定される。
【0022】
また、本発明のガラス繊維組成物に、少量の不純物を含有してもよく、重量百分率含有量は、一般的に1%以下である。
本発明のガラス繊維組成物において、各成分の含有量の上記範囲を選択することによる有益な効果は、以下では実施例における具体的な実験データにより説明される。
【0023】
以下は、本発明に係るガラス繊維組成物に含まれる各成分の好ましい値の範囲の例である。
好ましい例1
本発明に係る高性能ガラス繊維組成物は、以下の成分を含有し、各成分の含有量が重量百分率で以下の通りである:
SiO 58.5−61%
Al 14.5−17%
CaO+MgO 20−24.5%
CaO 14%超
LiO 0.01−0.5%
NaO+KO 2%未満
TiO 3.5%未満
Fe 1%未満
1%未満
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOの範囲は、2超2.4以下であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOの範囲は、3.4−4.2である。
【0024】
好ましい例2
本発明に係るガラス繊維組成物は、以下の成分を含有し、各成分の含有量が重量百分率で以下の通りである:
SiO 58.5−60.4%
Al 14.5−16.5%
CaO+MgO 20−24.5%
CaO 14%超
LiO 0.01−0.5%
NaO+K 2%未満
TiO 3.5%未満
Fe 1%未満
1%未満
0%超0.1%未満
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOの範囲は、2超2.4以下であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOの範囲は、3.5−4.0である。
【0025】
好ましい例3
本発明に係るガラス繊維組成物は、以下の成分を含有し、各成分の含有量が重量百分率で以下の通りである:
SiO 58−62%
Al 14−18%
CaO+MgO 20−24.5%
CaO 14%超
LiO 0.01−0.5%
NaO+K 2%未満
TiO 2%超3.5%未満
Fe 1%未満
1%未満
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOの範囲は、2超2.6以下であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOの範囲は、3.3−4.3である。
【0026】
本発明の高性能ガラス繊維組成物及びそのガラス繊維並びに複合材料は、高い力学的性質を確保する上で、従来の高性能ガラスの液相線温度が高く、結晶化速度が速く、成形温度が高く、冷却しにくく、ガラス液の表面張力が大きく、清澄しにくく、効率的な大規模生産を行いにくいという問題を克服することができ、高性能ガラスの成形温度、液相線温度及び表面張力を明らかに下げ、同等の条件でガラスの成形難度、結晶化程度及び気泡率を低減させ、また、ガラス繊維は優れた機械的強度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施例の目的、技術案及び利点をより明瞭にするために、以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術案を明瞭で、完全に説明し、勿論、説明される実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づき、当業者が創造的な努力をすることなく得られた全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。なお、衝突しない場合、本願の実施例及び実施例における特徴は互いの任意の組み合わせが可能である。
【0028】
本発明の基本的な思想として、ガラス繊維組成物の各成分の含有量は、重量百分率で、SiOが58−62%、Alが14−18%、CaO+MgOが20−24.5%、CaOが14%超、LiOが0.01−0.4%、NaO+KOが2%未満、TiOが3.5%未満、Feが1%未満、Fが1%未満であり、重量百分率の比C1=CaO/MgOの範囲は、2超2.6以下であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOの範囲は、3.3−4.3である。また、更にBを含有してもよく、その含有量は、重量百分率で0%超0.1%未満である。本発明に係るガラス繊維組成物は、高い力学的性質を確保する上で、従来の高性能ガラスの液相線温度が高く、結晶化速度が速く、成形温度が高く、冷却しにくく、ガラス液の表面張力が大きく、清澄しにくく、効率的な大規模生産を行いにくいという問題を克服することができ、高性能ガラスの成形温度、液相線温度及び表面張力を明らかに下げ、同等の条件でガラスの成形難度、結晶化程度及び気泡率を低減させ、また、ガラス繊維は優れた機械的強度を有する。更に、高含有量のTiOを導入する場合、本発明は更に非常に優れた耐熱性能を有する。
【0029】
本発明のガラス繊維組成物におけるSiO、Al、CaO、MgO、NaO、KO、Fe、LiO、TiO、Bの具体的な含有量の値を選択して実施例とし、従来のEガラス、従来のRガラス及び改良Rガラスの性能パラメータと比較する。性能比較時に、以下の6つの性能パラメータを選択する。
【0030】
(1)成形温度:ガラス溶融物の粘度が10ポアズである時の温度に対応する。
(2)液相線温度:ガラス溶融物冷却時の結晶核形成開始温度、即ち、ガラス結晶化の上限温度に対応する。
【0031】
(3)△T値:成形温度と液相線温度の差であり、伸線成形の温度範囲を表す。
(4)結晶化ピーク温度:DTAテストプロセスにおいてガラス結晶化最高ピークの温度に対応する。一般的に、この温度が高いほど、結晶核の成長に必要なエネルギーが多くなり、ガラスの結晶化傾向が小さくなることを表す。
【0032】
(5)単糸強度:ガラス繊維の原糸単位繊度の耐えられる引張力である。
(6)軟化点温度:ガラスの高温変形抵抗能力を特徴付ける。
上記した6つのパラメータ及びその測定方法は、当業者にとって熟知したものであるため、上記パラメータによって本発明のガラス繊維組成物の性能を強力に説明することができる。
【0033】
実験の具体的なプロセスとして、各成分は、適切な原料から得られ、割合に応じてさまざまな原料を混合し、各成分を最終的な所望の重量百分率にし、混合後の配合料を溶融して清澄してから、ガラス液をブッシングプレートのノズル通じて引き出すことによりガラス繊維を形成し、ガラス繊維を牽引して伸線機の回転ハンドピースに巻き取り、原糸ケーキ又は糸ボールを形成する。勿論、所望の要求を満たすように、これらのガラス繊維を通常の方法で深く加工することができる。
【0034】
以下、本発明に係るガラス繊維組成物の具体的な実施例を提供する。
実施例1
SiO 58%
Al 18%
CaO 14.1%
MgO 6.9%

LiO 0.01%
NaO 0.51%
O 0.28%
Fe 0.69%
TiO 0.61%
0.90%
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOは、2.04であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOは、4.11である。
【0035】
実施例1において測定された6つのパラメータの値はそれぞれ以下の通りである:
成形温度 1271℃
液相線温度 1187℃
△T値 84℃
結晶化ピーク温度 1042℃
単糸強度 4115MPa
軟化点温度 915℃
実施例2
SiO 62%
Al 14%
CaO 15.6%
MgO 6.0%

LiO 0.05%
NaO 0.01%
O 1.88%
Fe 0.40%
TiO 0.04%
0.02%
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOは、2.60であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOは、3.97である。
【0036】
実施例2において測定された6つのパラメータの値はそれぞれ以下の通りである:
成形温度 1277℃
液相線温度 1195℃
△T値 82℃
結晶化ピーク温度 1034℃
単糸強度 4195MPa
軟化点温度 920℃
実施例3
SiO 59.4%
Al 14.5%
CaO 16.5%
MgO 6.875%

LiO 0.03%
NaO 0.12%
O 1.175%
TiO 1.29%
Fe 0.05%
0.06%
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOは、2.4であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOは、3.60である。
【0037】
実施例3において測定された6つのパラメータの値はそれぞれ以下の通りである:
成形温度 1265℃
液相線温度 1187℃
△T値 78℃
結晶化ピーク温度 1043℃
単糸強度 4149MPa
軟化点温度 916℃
実施例4
SiO 61%
Al 17%
CaO 14.2%
MgO 5.8%

LiO 0.01%
NaO 0.21%
O 0.15%
Fe 0.99%
TiO 0.32%
0.32%
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOは、2.45であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOは、4.30である。
【0038】
実施例4において測定された6つのパラメータの値はそれぞれ以下の通りである:
成形温度 1278℃
液相線温度 1196℃
△T値 82℃
結晶化ピーク温度 1030℃
単糸強度 4216MPa
軟化点温度 920℃
実施例5
SiO 58.5%
Al 16.5%
CaO 14.5%
MgO 7%

LiO 0.5%
NaO 0.5%
O 0.15%
Fe 0.35%
TiO 1.8%
0.2%
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOは、2.07であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOは、4.03である。
実施例5において測定された6つのパラメータの値はそれぞれ以下の通りである:
成形温度 1264℃
液相線温度 1190℃
△T値 74℃
結晶化ピーク温度 1040℃
単糸強度 4147MPa
軟化点温度 922℃
実施例6
SiO 58.625%
Al 14.375%
CaO 16.75%
MgO 7.75%

LiO 0.15%
NaO 0.1%
O 0.02%
Fe 0.02%
TiO 2.06%
0.15%
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOは、2.16であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOは、3.50である。
【0039】
実施例6において測定された6つのパラメータの値はそれぞれ以下の通りである:
成形温度 1269℃
液相線温度 1190℃
△T値 79℃
結晶化ピーク温度 1040℃
単糸強度 4124MPa
軟化点温度 925℃
実施例7
SiO 60.4%
Al 15%
CaO 15.1%
MgO 6.25%

LiO 0.01%
NaO 0.5%
O 0.8%
Fe 0.2%
TiO 1.24%
0.5%
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOは、2.42であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOは、4.00である。
【0040】
実施例7において測定された6つのパラメータの値はそれぞれ以下の通りである:
成形温度 1273℃
液相線温度 1196℃
△T値 77℃
結晶化ピーク温度 1030℃
単糸強度 4130MPa
軟化点温度 915℃
実施例8
SiO 58.48%
Al 14%
CaO 17.2%
MgO 6.2%
0.08%
LiO 0.5%
NaO 0.5%
O 0.25%
Fe 0.5%
TiO 1.79%
0.5%
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOは、2.29であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOは、3.40である。
【0041】
実施例8において測定された6つのパラメータの値はそれぞれ以下の通りである:
成形温度 1260℃
液相線温度 1182℃
△T値 78℃
結晶化ピーク温度 1044℃
単糸強度 4110MPa
軟化点温度 914℃
実施例9
SiO 59.5%
Al 14%
CaO 17.5%
MgO 7%
LiO 0.08%
NaO 0.41%
O 0.51%
Fe 0.5%
TiO 0.3%
0.2%
且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOは、2.50であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOは、3.40である。
【0042】
実施例9において測定された6つのパラメータの値はそれぞれ以下の通りである:
成形温度 1272℃
液相線温度 1194℃
△T値 78℃
結晶化ピーク温度 1032℃
単糸強度 4132MPa
軟化点温度 912℃
実施例10
SiO 60.9%
Al 15.2%
CaO 14.5%
MgO 7.1%
0.01%
LiO 0.14%
NaO 0.41%
O 0.33%
Fe 0.41%
TiO 1.00%

且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOは、2.05であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOは、4.20である。
【0043】
実施例10において測定された6つのパラメータの値はそれぞれ以下の通りである:
成形温度 1274℃
液相線温度 1194℃
△T値 80℃
結晶化ピーク温度 1034℃
単糸強度 4137MPa
軟化点温度 923℃
実施例11
SiO 60.1%
Al 15.2%
CaO 15.1%
MgO 7.5%

LiO 0.50%
NaO 0.44%
O 0.28%
Fe 0.42%
TiO 0.28%

且つ、重量百分率の比C1=CaO/MgOは、2.02であり、重量百分率の比C2=SiO/CaOは、3.99である。
【0044】
実施例11において測定された6つのパラメータの値はそれぞれ以下の通りである:
成形温度 1274℃
液相線温度 1193℃
△T値 81℃
結晶化ピーク温度 1036℃
単糸強度 4156MPa
軟化点温度 920℃
以下、表の形で、本発明のガラス繊維組成物の上記実施例及び他の実施例と従来のEガラス、従来のRガラス及び改良Rガラスとの性能パラメータの比較を提供する。ガラス繊維組成物の含有量は、重量百分率で表される。なお、実施例の成分の合計含有量が100%よりやや小さく、残量が微量の不純物又は分析できない少量の成分であると理解できる。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
上記表における具体的な値から分かるように、従来のRガラス及び改良Rガラスに比べて、本発明のガラス繊維組成物は以下の利点を有する。(一)遥かに低い液相線温度を有し、これは、ガラスの結晶化リスクを低減し、繊維の伸線効率を高めることに寄与する。(二)高い結晶化ピーク温度を有し、これは、ガラスの結晶化プロセスにおいて結晶核の形成と成長がより多くのエネルギーを必要とし、つまり、同等の条件で本発明のガラスの結晶化リスクがより小さいことを示す。(三)低い成形温度を有する。また、改良Rガラスに比べて、本発明で得られたガラス繊維は、更により高い単糸強度と軟化点温度を有する。以上から分かるように、現在の主流となっている改良Rガラスに比べて、本発明のガラス繊維組成物は、結晶化性能、単糸強度及び耐熱性能の面で画期的な進歩を取得し、同等の条件でガラスの結晶化リスクが大幅に低下し、単糸強度と軟化点温度が明らかに高くなり、また、技術案全体のコストパフォーマンスがより高く、工業上の大規模生産を実現しやすい。
【0048】
本発明に係るガラス繊維組成物は、上記優れた性能を有するガラス繊維を製造することができる。
本発明に係るガラス繊維組成物は、一つ又は複数の有機及び/又は無機材料と組み合わせて、例えばガラス繊維補強基材のような性能に優れた複合材料を製造することができる。
【0049】
以上のように、本発明の高性能ガラス繊維組成物及びそのガラス繊維並びに複合材料は、高い力学的性質を確保する上で、従来の高性能ガラスの液相線温度が高く、結晶化速度が速く、成形温度が高く、冷却しにくく、ガラス液の表面張力が大きく、清澄しにくく、効率的な大規模生産を行いにくいという問題を克服することができ、高性能ガラスの成形温度、液相線温度及び表面張力を明らかに下げ、同等の条件でガラスの成形難度、結晶化程度及び気泡率を低減させ、また、ガラス繊維は優れた機械的強度を有する。
【0050】
なお、本明細書では、用語「含む」、「備える」又はその他の任意の変形は、非排他的に含むことを意味し、一連の要素を含むプロセス、方法、物品又は装置はそれらの要素を含むだけでなく、明らかに列挙していない他の要素も含み、又は、更にこのようなプロセス、方法、物品又は装置に固有される要素を含む。より多い限定がない場合、「一つの…を含む」のような記載に限定される要素は、前記要素を含むプロセス、方法、物品又は装置に、更に他の同じ要素が存在することを排除しない。
【0051】
以上の実施例は、本発明の技術案を説明するためのものに過ぎず、それを制限するものではない。前記実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、依然として前記各実施例に記載の技術案を変更し、又はその一部の技術的特徴に等価置換を行うことができ、これらの変更や置換によって、対応する技術案の本質が本発明の各実施例の技術案の精神と範囲から逸脱することはないことが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
現在の主流となっている改良Rガラスに比べて、本発明のガラス繊維組成物は、結晶化性能、単糸強度及び耐熱性能の面で画期的な進歩を取得し、同等の条件でガラスの結晶化リスクが大幅に低下し、単糸強度と軟化点温度が明らかに高くなり、また、技術案全体のコストパフォーマンスがより高く、工業上の大規模生産を実現しやすい。