(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第2のオリゴヌクレオチドが、分解を受けやすい塩基を含み、前記分解を受けやすい塩基が、デオキシウリジン、リボヌクレオチド、デオキシイノシン、及びイノシンからなる群から選択される、請求項6に記載の次世代シークエンシングアダプター系。
エンドヌクレアーゼが、UDGプラスエンドヌクレアーゼVIII、RNアーゼ HI、RNアーゼ H2、及びエンドヌクレアーゼVからなる群から選択される、請求項8に記載の次世代シークエンシングアダプター系。
第2のオリゴヌクレオチドが、分解を受けやすい塩基を含み、前記分解を受けやすい塩基が、デオキシウリジン、リボヌクレオチド、デオキシイノシン、イノシン、及びその組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の次世代シークエンシングアダプター系。
エンドヌクレアーゼが、UDGプラスエンドヌクレアーゼVIII、RNアーゼ HI、RNアーゼ H2、及びエンドヌクレアーゼVからなる群から選択される、請求項12に記載の次世代シークエンシングアダプター系。
第1のリガーゼが、大腸菌DNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼ、T3リガーゼ、及びT7リガーゼからなる群から選択される、請求項10に記載の次世代シークエンシングアダプター系。
第2のリガーゼが、大腸菌DNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼ、T3リガーゼ、T7リガーゼ、Taqリガーゼ、及びAmpリガーゼからなる群から選択される、請求項10に記載の次世代シークエンシングアダプター系。
(iv-a)鋳型非依存性ポリメラーゼを試料に適用し、基質分子の3’末端をアデニル化するステップをさらに含み、ステップ(iv-a)が、ステップ(iv)の後かつステップ(v)の前に行われる、請求項18に記載の方法。
基質核酸分子が、ゲノムDNAであり、ステップ(i)の前に、前記基質核酸分子を、せん断、エンドヌクレアーゼによる切断、超音波処理、加熱、化学的切断、又はその組み合わせからなる群から選択される処理によって断片化するステップを含む、請求項18に記載の方法。
基質核酸分子が、ゲノムDNAであるか、又は前記基質核酸分子が、合成であり、かつ、cDNA、全ゲノム増幅により産生されるDNA、少なくとも1つの二本鎖末端を含むプライマー伸長産物、及びPCRアンプリコンからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
第2のオリゴヌクレオチドが、分解を受けやすい塩基を含み、前記分解を受けやすい塩基が、デオキシウリジン、リボヌクレオチド、デオキシイノシン、及びイノシンからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
エンドヌクレアーゼが、UDGプラスエンドヌクレアーゼVIII、RNアーゼ HI、RNアーゼ H2、及びエンドヌクレアーゼVからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
第2のリガーゼが、大腸菌DNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼ、T3リガーゼ、T7リガーゼ、Ampリガーゼ、及びTaqリガーゼからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
第1のオリゴヌクレオチド、第2のオリゴヌクレオチド、及び二本鎖部分を含む3’アダプターポリヌクレオチドであって、前記二本鎖部分が、前記第1のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズした前記第2のオリゴヌクレオチドを含み、
前記第1のオリゴヌクレオチドが、5’リン酸を含み、
前記第2のオリゴヌクレオチドが、その3’末端に遮断基を含み、
前記遮断基が、3’−デオキシチミジン、3’−デオキシアデニン、3−デオキシグアニン、3’−デオキシシトシン及び2’3’−ジデオキシヌクレオチドからなる群から選択される、前記3’アダプターポリヌクレオチド;と、
前記3’アダプターポリヌクレオチドの前記第1のオリゴヌクレオチドの部分と部分的又は完全に相補的である第1の配列を含む5’アダプターポリヌクレオチド;と、
前記3’アダプターポリヌクレオチドを、基質核酸分子の3’末端にライゲーションするための第1のリガーゼ;と、
前記5’アダプターポリヌクレオチドを、前記基質核酸分子の5’末端にライゲーションするための第2のリガーゼ;と、
ニックトランスレーション活性を有するDNAポリメラーゼ;と
を含む、次世代シークエンシングアダプター系。
【発明を実施するための形態】
【0068】
一態様では、本発明は、断片化された二本鎖DNA分子の末端へとアダプターをライゲーションする、高度に効率的な方法について記載する。本明細書では、このようなDNA分子を、「基質分子」と称する。一態様では、方法は、(1)5’アダプターの、基質分子上の既存の3’突出、好ましくは、3’アダプターとのアニーリングと、(2)損傷を受けた塩基の、基質分子の5’末端からの除去と、これにより可能となる、(3)5’アダプターの、基質分子の露出させた5’リン酸への効率的ライゲーションとを含む、単一のインキュベーションを含む。別の態様では、方法は、上記で記載したとおり、第1のインキュベーションでは、3’アダプターを、基質分子へとライゲーションし、第2のインキュベーションでは、5’アダプターを、基質分子へとライゲーションする、2つのインキュベーション(
図6を参照されたい)を含む。多様な実施形態では、本開示は、1つ又は2つのライゲーションステップの前に施されるさらなるステップであって、(i)脱リン酸化反応と、(ii)損傷を受けた3’末端を切除し、平滑末端を作製するポリッシング反応と、(iii)アデニル化反応とを含むステップを含む方法をさらに提示するが、本開示では、ステップの多様な組合せが想定されており、下記で詳細に論じられる。
【0069】
別の態様では、開示は、マルチプレックスアンプリコンNGSライブラリーの、高度に効率的な調製法について記載する。一態様では、方法は、複数の重複アンプリコンの、単一のチューブ内の合成及び増幅を可能とする。別の態様では、開示は、キメラアンプリコン及びアダプター二量体を含有しない、PCRアンプリコンの末端への、アダプターライゲーションの、新規の、高度に効率的な方法について記載する。一態様では、方法は、個別のアンプリコンを同定する固有の縮重配列タグの組み込みを可能とする。別の態様では、方法は、アンプリコンの5’末端の分解に続く、第2のアダプターBの同時的なライゲーションと、第1のアダプターの残余部分Aの、基質アンプリコンへの、リンカー媒介型ライゲーションとを含む、単一のインキュベーションを含む。多様な実施形態では、本開示は、ライゲーションステップの前に施されるさらなるステップであって、(i)マルチプレックス化PCR反応、(ii)精製ステップ、及び(iii)ユニバーサル単一プライマーによる増幅ステップを含むステップを含む方法をさらに提示する。代替的に、ライゲーションステップの前に施されるさらなるステップは、(i)ユニバーサル単一プライマーによる増幅と組み合わされたマルチプレックスPCR反応に続く、(ii)精製ステップを含む。本開示では、ステップの多様な組合せが想定されており、下記で詳細に論じられる。
【0070】
本明細書で使用される「反応条件」又は「標準的な反応条件」という用語は、製造元の指示書に従う条件を意味する。本明細書で開示される全ての酵素は、そうでないことが指し示されない限りにおいて、標準的な反応条件下で使用することが理解される。本明細書で使用される「第1のポリヌクレオチド」という用語は、「3’アダプター」、「第1のアダプター」、又は「アダプターA」と互換的に使用され、本明細書で使用される「第2のポリヌクレオチド」という用語は、「5’アダプター」、「第2のアダプター」又は「アダプターB」と互換的に使用される。アダプターAを、IonTorrent(商標)技術に言及しながら使用する、ある特定の場合、例えば、
図12〜13の場合、アダプターAとは、製造元により提供される、IonTorrent(商標)法のためのアダプターAを指すものであり、本明細書で規定される「アダプターA」を指すものではない。
【0071】
本明細書で使用される「3’アダプター」は、基質分子の3’末端へとライゲーションされ、「5’アダプター」は、基質分子の5’末端へとライゲーションされる。
【0072】
本明細書で使用される「損傷を受けた」5’末端とは、5’リン酸を欠く5’末端である。
【0073】
本明細書で使用される「処理された」基質分子とは、5’アダプターを結合させた基質分子である。
【0074】
本明細書で使用される「高いフィデリティーのポリメラーゼ」とは、3’−5’エキソヌクレアーゼ(すなわち、プルーフリーディング)活性を保有するポリメラーゼである。
【0075】
本明細書で使用される「寛容性」という用語は、切断性塩基(例えば、ウラシル、イノシン、及びRNA)を含有する鋳型を介して伸長させうる、ポリメラーゼの特性を指す。
【0076】
本明細書で使用される「非対称性の」という用語は、両方の末端に単一のアダプターではなく、両方の末端に両方のアダプターを伴う二本鎖分子を指す。したがって、非対称性は、両方のアダプターが大部分、互いと非相補的であり、一本鎖部分を有するという事実から生じる。
【0077】
本明細書で使用される「ユニバーサルプライマー」とは、ユニバーサルアダプター配列を組み込む増幅反応において使用されるオリゴヌクレオチドである。本明細書で使用される「ユニバーサルアダプター」とは、ユニバーサルプライマー配列に対応する増幅産物の部分及びその逆相補体である。
【0078】
2つの核酸の結合安定性を減少させる修飾は、ヌクレオチドのミスマッチ、デオキシイノシン塩基、イノシン塩基又はユニバーサル塩基を含むがこれらに限定されないことが理解されるであろう。
【0079】
また、2つの核酸の結合安定性を増大させる修飾は、ロックト核酸(LNA)、スペルミン及びスペルミジン又は他のポリアミン、並びにシトシンのメチル化を含むがこれらに限定されないことも理解されるであろう。
【0080】
本明細書で使用される「ユニバーサル塩基」という用語は、水素結合を伴わずに、4つの天然に存在する塩基全てと塩基対を形成しうる塩基であり、ミスマッチより不安定ではなく、5’ニトロインドールを含みうるがこれらに限定されない。
【0081】
本明細書で使用される「分子同定タグ」は、4〜16塩基の間のいずれかの長さであり、この場合、最適の長さは、8〜12塩基の間の縮重N塩基である。
【0082】
基質分子
基質分子は、天然に存在する供給源から得られるか、又は合成でありうることが想定される。天然に存在する供給源は、ゲノムDNA、cDNA、全ゲノム増幅により産生されるDNA、少なくとも1つの二本鎖末端を含むプライマー伸長産物、及びPCRアンプリコンを含むがこれらに限定されない。多様な実施形態では、天然に存在する供給源は、原核生物供給源又は真核生物供給源である。例えば、限定せずに述べると、供給源は、ヒト、マウス、ウイルス、植物若しくは細菌又は複数のゲノムを含む混合物でありうる。
【0083】
本明細書で使用される「アンプリコン」とは、増幅法を使用して合成されたポリヌクレオチドの部分を意味することが理解される。
【0084】
基質分子の供給源が、ゲノムDNAである場合、一部の実施形態では、ゲノムDNAを断片化することが想定される。ゲノムDNAの断片化は、当業者に公知の一般的な手順であり、例えば、限定せずに述べると、インビトロにおいて、DNAのせん断(噴霧化すること)、エンドヌクレアーゼによるDNAの切断、DNAの超音波処理を介して、DNAの加熱を介して、アルファ線源、ベータ線源、ガンマ線源又は他の放射線源を使用するDNAの照射を介して、光を介して、金属イオンの存在下におけるDNAの化学的切断を介して、ラジカルによる切断を介して、及びこれらの組合せを介して実施される。ゲノムDNAの断片化はまた、インビボでも行うことができ、例えば、限定せずに述べると、アポトーシスのために、放射線及び/又はアスベストへの曝露を行うことができる。本明細書で提供される方法に従うと、基質分子の集団は、一様なサイズであることが要求されない。したがって、本開示の方法は、サイズの異なる基質ポリヌクレオチド断片の集団を伴う使用にも有効である。
【0085】
本明細書で開示される基質分子は、少なくとも部分的に二本鎖であり、3’突出(
図7aを参照されたい)、平滑末端、3’陥凹末端、又は遊離3’ヒドロキシル基を含む。基質ポリヌクレオチドの突出又は陥凹末端の長さは、変化させることができる。多様な態様では、基質分子の突出又は陥凹末端の長さは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20ヌクレオチド又は21ヌクレオチド以上の長さである。さらなる実施形態では、基質分子の突出又は陥凹末端の長さは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19又は少なくとも20ヌクレオチドの長さである。なおさらなる実施形態では、基質分子の突出又は陥凹末端の長さは、約1〜約5、又は約1〜約10、又は約1〜約15、又は約1〜約20ヌクレオチドの長さである。多様な態様では、基質分子の集団は、上記で言及された基質分子の種類のうちの2つ以上が、単一の反応物中に存在する集団を含む。本開示はまた、基質分子が、少なくとも部分的に一本鎖であることも想定する。基質分子が一本鎖である本開示の態様は、一本鎖リガーゼ酵素の使用を伴う。
【0086】
本発明の一部の適用は、アダプター配列の、元の二本鎖DNA基質分子又は天然の二本鎖DNA基質分子への結合を伴わずに、プライマーの伸長による合成を介して産生される二本鎖DNAへの結合を伴う。このような適用の一例は、(a)プライマー結合性配列を含むオリゴヌクレオチドの、一本鎖DNA又は二本鎖DNAの3’末端への結合であって、プライマーの伸長を可能とする結合、(b)オリゴヌクレオチドとアニールさせたプライマーの伸長、及び(c)3’アダプター及び5’アダプターの、プライマー伸長により産生された二本鎖DNA末端への結合により産生されるDNAライブラリーである。
【0087】
基質分子の二本鎖部分又は一本鎖部分の長さは、3〜約1×10
6ヌクレオチドの間であることが想定される。一部の態様では、基質分子の長さは、約10〜約3000ヌクレオチドの間、又は約40〜約2000ヌクレオチドの間、又は約50〜約1000ヌクレオチドの間、又は約100〜約500ヌクレオチドの間、又は約1000〜約5000ヌクレオチドの間、又は約10,000〜約50,000ヌクレオチドの間、又は約100,000〜1×10
6ヌクレオチドの間である。さらなる態様では、基質分子の長さは、少なくとも3ヌクレオチドであり、最大で約50、100若しくは1000ヌクレオチドであるか;又は少なくとも10ヌクレオチドであり、最大で約50、100若しくは1000ヌクレオチドであるか;又は少なくとも100ヌクレオチドであり、最大で約1000、5000若しくは10000ヌクレオチドであるか;又は少なくとも1000ヌクレオチドであり、最大で約10000、20000及び50000ヌクレオチドであるか;又は少なくとも10000ヌクレオチドであり、最大で約20000、50000及び100,000ヌクレオチドであるか;又は少なくとも20000ヌクレオチドであり、最大で約100,000、200,000若しくは500,000ヌクレオチドであるかであるか;又は少なくとも200,000ヌクレオチドであり、最大で約500,000、700,000若しくは1,000,000ヌクレオチドである。多様な態様では、基質分子の長さは、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約77、約78、約79、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99、約100、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約210、約220、約230、約240、約250、約260、約270、約280、約290、約300、約310、約320、約330、約340、約350、約360、約370、約380、約390、約400、約410、約420、約430、約440、約450、約460、約470、約480、約490、約500、約510、約520、約530、約540、約550、約560、約570、約580、約590、約600、約610、約620、約630、約640、約650、約660、約670、約680、約690、約700、約710、約720、約730、約740、約750、約760、約770、約780、約790、約800、約810、約820、約830、約840、約850、約860、約870、約880、約890、約900、約910、約920、約930、約940、約950、約960、約970、約980、約990、約1000、約1100、約1200、約1300、約1400、約1500、約1600、約1700、約1800、約1900、約2000、約2100、約2200、約2300、約2400、約2500、約2600、約2700、約2800、約2900、約3000、約3100、約3200、約3300、約3400、約3500、約3600、約3700、約3800、約3900、約4000、約4100、約4200、約4300、約4400、約4500、約4600、約4700、約4800、約4900、約5000、10,000、15,000、20,000、50,000、100,000、150,000、200,000、250,000、300,000、350,000、400,000、450,000、500,000、550,000、600,000、650,000、700,000、750,000、800,000、850,000、900,000、950,000、又は1,000,000以上のヌクレオチドである。
【0088】
アンプリコン分子
本明細書で使用される「アンプリコン」とは、増幅法を使用して合成されたポリヌクレオチドの部分を意味することが理解される。
【0089】
アンプリコンの長さは、約10bp〜175bpの間であることが想定され、この場合、所望されるアンプリコンサイズは、循環無細胞DNA断片(約165bp)より著明に短く、保存試料に由来するホルマリン誘導型架橋DNAに及ばない程度の、十分に小さなサイズであり、理想的には、150bp未満の長さである。アンプリコンは、15bp、20bp、25bp、30bp、35bp、40bp、45bp、50bp、51bp、52bp、53bp、54bp、55bp、56bp、57bp、58bp、59bp、60bp、61bp、62bp、63bp、64bp、65bp、66bp、67bp、68bp、69bp、70bp、71bp、72bp、73bp、74bp、75bp、76bp、77bp、78bp、79bp、80bp、81bp、82bp、83bp、84bp、85bp、86bp、87bp、88bp、89bp、90bp、91bp、92bp、93bp、94bp、95bp、96bp、97bp、98bp、99bp、100bp、101bp、102bp、103bp、104bp、105bp、106bp、107bp、108bp、109bp、110bp、111bp、112bp、113bp、114bp、115bp、116bp、117bp、118bp、119bp、120bp、121bp、122bp、123bp、124bp、125bp、126bp、127bp、128bp、129bp、130bp、131bp、132bp、133bp、134bp、135bp、136bp、137bp、138bp、139bp、140bp、141bp、142bp、143bp、144bp、145bp、146bp、147bp、148bp、149bp、150bp、151bp、152bp、153bp、154bp、155bp、156bp、157bp、158bp、159bp、160bp、161bp、162bp、163bp、164bp、165bp、166bp、167bp、168bp、169bp、170bp、171bp、172bp、173bp、174bp、175bp又は176bp以上の長さでありうることが想定される。
【0090】
代替的に、より長いリード、特に、複数キロ塩基のリードを提供することが可能な長鎖リード配列技術であって、ハプロタイプ解析の情報を提供するか、又は反復配列若しくは他の困難な配列に及ぶ技術(PacBio)では、高分子量DNAを、増幅反応のためのインプットDNAとして活用する場合、アンプリコンの長さは、150bp〜150,000bpの間以上の長さであることも想定される。アンプリコンは、150bp、200bp、300bp、400bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1,000bp、2,000bp、3,000bp、4,000bp、5,000bp、6,000bp、7,000bp、8,000bp、9,000bp、10,000bp、11,000bp、12,000bp、13,000bp、14,000bp、15,000bp、16,000bp、17,000bp、18,000bp、19,000bp、20,000bp、30,000bp、40,000bp、50,000bp、100,000bp、又は150,000bp以上の長さでありうることが想定される。
【0091】
本明細書で開示される方法のうちのいずれかでは、マルチプレックス化増幅のために選択される標的遺伝子座は、がん特異的標的、薬物耐性特異的標的、薬物代謝標的及び薬物吸収標的(例えば、CYP2D6)、遺伝性疾患についての標的(例えば、嚢胞性線維症のCFTR遺伝子、リンチ症候群のMLH1遺伝子、MSH2遺伝子、MSH6遺伝子、PMS2遺伝子及びEPCAM遺伝子)、感染性病原体に由来する標的、病原体宿主の遺伝子座についての標的、種特異的標的、及び任意の臨床で適用可能な標的を含むがこれらに限定されない、様々な適用のうちのいずれかに対応することが想定される。一態様では、標的遺伝子座は、BRAF、KRAS、EGFR、KIT、HRAS、NRAS、MET、RET、GNA11、GNAQ、NOTCH1、ALK、PIK3CA、JAK2、AKT1、DNMT3A、IDH2、ERBB2及びTP53を含むがこれらに限定されない、がん標的のセットから選択される。別の態様では、がん標的は、以下の遺伝子のサブセット:ACURL1、AKT1、APC、APEX1、AR、ATM、ATP11B、BAP1、BCL2L1、BCL9、BIRC2、BIRC3、BRCA1、BRCA2、CCND1、CCNE1、CD274、CD44、CDH1、CDK4、CDK6、CDKN2A、CSNK2A1、DCON1D1、EGFR、ERBB2、FBXW7、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FLT3、GAS6、GATA3、IGF1R、IL6、KIT、KRAS、MCL1、MDM2、MET、MSH2、MYC、MYCL、MYCN、MYO18A、NF1、NF2、NKX2−1、NKX2−8、NOTCH1、PDCD1LG2、PDGFRA、PIK3CA、PIK3R1、PNP、PPARG、PTCH1、PTEN、RB1、RPS6KB1、SMAD4、SMARCB1、SOX2、STK11、TERT、TET2、TIAF1、TP53、TSC1、TSC2、VHL、WT1及びZNF217を含むがこれらに限定されない、400〜600の遺伝子を含む。さらなる実施形態では、標的遺伝子座は、ABI1、ABL1、ABL2、ACSL3、AF15Q14、AF1Q、AF3p21、AF5q31、AKAP9、AKT1、AKT2、ALDH2、ALK、ALO17、AMER1、APC、ARHGEF12、ARHH、ARID1A、ARID2、ARNT、ASPSCR1、ASXL1、ATF1、ATIC、ATM、ATP1A1、ATP2B3、ATRX、AXIN1、BAP1、BCL10、BCL11A、BCL11B、BCL2、BCL3、BCL5、BCL6、BCL7A、BCL9、BCOR、BCR、BHD、BIRC3、BLM、BMPR1A、BRAF、BRCA1、BRCA2、BRD3、BRD4、BRIP1、BTG1、BUB1B、C12orf9、C15orf21、C15orf55、C16orf75、C2orf44、CACNA1D、CALR、CAMTA1、CANT1、CARD11、CARS、CASP8、CBFA2T1、CBFA2T3、CBFB、CBL、CBLB、CBLC、CCDC6、CCNB1IP1、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CD273、CD274、CD74、CD79A、CD79B、CDC73、CDH1、CDH11、CDK12、CDK4、CDK6、CDKN2A、CDKN2C、CDKN2a(p14)、CDX2、CEBPA、CEP1、CEP89、CHCHD7、CHEK2、CHIC2、CHN1、CIC、CIITA、CLIP1、CLTC、CLTCL1、CMKOR1、CNOT3、COL1A1、COL2A1、COPEB、COX6C、CREB1、CREB3L1、CREB3L2、CREBBP、CRLF2、CRTC3、CSF3R、CTNNB1、CUX1、CYLD、D10S170、DAXX、DCTN1、DDB2、DDIT3、DDX10、DDX5、DDX6、DEK、DICER1、DNM2、DNMT3A、DUX4、EBF1、ECT2L、EGFR、EIF3E、EIF4A2、ELF4、ELK4、ELKS、ELL、ELN、EML4、EP300、EPS15、ERBB2、ERC1、ERCC2、ERCC3、ERCC4、ERCC5、ERG、ETV1、ETV4、ETV5、ETV6、EVI1、EWSR1、EXT1、EXT2、EZH2、EZR、FACL6、FAM46C、FANCA、FANCC、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG、FAS、FBXO11、FBXW7、FCGR2B、FEV、FGFR1、FGFR1OP、FGFR2、FGFR3、FH、FHIT、FIP1L1、FLI1、FLJ27352、FLT3、FNBP1、FOXA1、FOXL2、FOXO1A、FOXO3A、FOXO4、FOXP1、FSTL3、FUBP1、FUS、FVT1、GAS7、GATA1、GATA2、GATA3、GMPS、GNA11、GNAQ、GNAS、GOLGA5、GOPC、GPC3、GPHN、GRAF、H3F3A、H3F3B、HCMOGT−1、HEAB、HERPUD1、HEY1、HIP1、HIST1H3B、HIST1H4I、HLA−A、HLF、HLXB9、HMGA1、HMGA2、HNRNPA2B1、HOOK3、HOXA11、HOXA13、HOXA9、HOXC11、HOXC13、HOXD11、HOXD13、HRAS、HSPCA、HSPCB、IDH1、IDH2、IGH¥、IGK、IGL、IKZF1、IL2、IL21R、IL6ST、IL7R、IRF4、IRTA1、ITK、JAK1、JAK2、JAK3、JAZF1、JUN、KCNJ5、KDM5A、KDM5C、KDM6A、KDR、KIAA1549、KIAA1598、KIF5B、KIT、KLF4、KLK2、KMT2D、KRAS、KTN1、LAF4、LASP1、LCK、LCP1、LCX、LHFP、LIFR、LMNA、LMO1、LMO2、LPP、LRIG3、LSM14A、LYL1、MAF、MAFB、MALAT1、MALT1、MAML2、MAP2K1、MAP2K2、MAP2K4、MAX、MDM2、MDM4、MDS1、MDS2、MECT1、MED12、MEN1、MET、MITF、MKL1、MLF1、MLH1、MLL、MLL3、MLLT1、MLLT10、MLLT2、MLLT3、MLLT4、MLLT6、MLLT7、MN1、MPL、MSF、MSH2、MSH6、MSI2、MSN、MTCP1、MUC1、MUTYH、MYB、MYC、MYCL1、MYCN、MYD88、MYH11、MYH9、MYO5A、MYST4、NAB2、NACA、NBS1、NCOA1、NCOA2、NCOA4、NDRG1、NF1、NF2、NFATC2、NFE2L2、NFIB、NFKB2、NIN、NKX2−1、NONO、NOTCH1、NOTCH2、NPM1、NR4A3、NRAS、NRG1、NSD1、NT5C2、NTRK1、NTRK3、NUMA1、NUP214、NUP98、NUTM2A、NUTM2B、OLIG2、OMD、P2RY8、PAFAH1B2、PALB2、PAX3、PAX5、PAX7、PAX8、PBRM1、PBX1、PCM1、PCSK7、PDE4DIP、PDGFB、PDGFRA、PDGFRB、PER1、PHF6、PHOX2B、PICALM、PIK3CA、PIK3R1、PIM1、PLAG1、PLCG1、PML、PMS1、PMS2、PMX1、PNUTL1、POT1、POU2AF1、POU5F1、PPARG、PPFIBP1、PPP2R1A、PRCC、PRDM1、PRDM16、PRF1、PRKAR1A、PSIP1、PTCH1、PTEN、PTPN11、PTPRB、PTPRC、PTPRK、PWWP2A、RAB5EP、RAC1、RAD21、RAD51L1、RAF1、RALGDS、RANBP17、RAP1GDS1、RARA、RB1、RBM15、RECQL4、REL、RET、RNF43、ROS1、RPL10、RPL22、RPL5、RPN1、RSPO2、RSPO3、RUNDC2A、RUNX1、RUNXBP2、SBDS、SDC4、SDH5、SDHB、SDHC、SDHD、42253、SET、SETBP1、SETD2、SF3B1、SFPQ、SFRS3、SH2B3、SH3GL1、SIL、SLC34A2、SLC45A3、SMAD4、SMARCA4、SMARCB1、SMARCE1、SMO、SOCS1、SOX2、SRGAP3、SRSF2、SS18、SS18L1、SSX1、SSX2、SSX4、STAG2、STAT3、STAT5B、STAT6、STK11、STL、SUFU、SUZ12、SYK、TAF15、TAL1、TAL2、TBL1XR1、TCEA1、TCF1、TCF12、TCF3、TCF7L2、TCL1A、TCL6、TERT、TET2、TFE3、TFEB、TFG、TFPT、TFRC、THRAP3、TIF1、TLX1、TLX3、TMPRSS2、TNFAIP3、TNFRSF14、TNFRSF17、TOP1、TP53、TPM3、TPM4、TPR、TRA、TRAF7、TRB、TRD、TRIM27、TRIM33、TRIP11、TRRAP、TSC1、TSC2、TSHR、TTL、U2AF1、UBR5、USP6、VHL、VTI1A、WAS、WHSC1、WHSC1L1、WIF1、WRN、WT1、WWTR1、XPA、XPC、XPO1、YWHAE、ZCCHC8、ZNF145、ZNF198、ZNF278、ZNF331、ZNF384、ZNF521、ZNF9及びZRSR2を含むがこれらに限定されない、がんにおいて臨床的関連性を有することが公知である遺伝子のサブセットから選択される。
【0092】
別の態様では、標的は、ターゲティング型抗がん剤として使用されるチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性を付与する遺伝子座、ターゲティング型抗がん剤と関連する他のターゲティングされる遺伝子座、抗生剤耐性の遺伝子座、及び抗ウイルス耐性の遺伝子座を含む、薬物耐性遺伝子座に特異的である。
【0093】
別の態様では、細菌、真菌、酵母、ウイルス、又は原虫を含む、腸内病原体、血液感染性病原体、CNS病原体、呼吸器病原体、性感染性病原体、及び尿路病原体の検出を実施することができる。また、耳、皮膚、又は眼の感染を引き起こす病原体も、検出しうるであろう。細菌病原型又はウイルス病原型の間の鑑別のほか、抗生剤耐性を促進する遺伝子又は毒素をコードする遺伝子の間の鑑別も行いうるであろう。
【0094】
結果として得られるアンプリコンの配列解析から検出されうる遺伝子病変の種類は、SNV(一塩基バリアント:single nucleotide variant)、点変異、転移、トランスバージョン、ナンセンス変異、ミスセンス変異、一塩基挿入及び一塩基欠失、プライマー対の間にマッピングされる、大規模な挿入及び欠失、転座、遺伝子融合、欠失、挿入など、公知の染色体再配列を含み、このような公知の再配列;増幅イベントを含むコピー数の変化、欠失、ヘテロ接合性の喪失(LOH:loss of heterozygosity)、異数性、片親性ダイソミー、及び他の遺伝性又は後天性の染色体異常の切断点を挟むように、プライマー対を設計する。加えて、マルチプレックス化PCRの前に、亜硫酸水素転換を実施し、亜硫酸水素転換されたDNAに従ってプライマーを設計し、プライマーが任意に、多様な修飾配列状態を結果としてもたらすことから、プライマーの設計をより困難としうる、CpGジヌクレオチドと重複しない場合はまた、開示される方法を使用して、メチル化による変化も検出することができる。
【0095】
標的遺伝子座を増幅する場合、プライマーの3’標的特異的部分の最適の長さは、15〜30塩基の間であるが、この範囲に限定されず、この場合、プライマーの標的特異的部分は、5〜50塩基若しくは10〜40塩基又はこれらの間の任意の長さである。2.5mMのMg
2+、50mMのNaCl及び0.25μMのオリゴヌクレオチドで規定される所望のTmは、63℃であり、この場合、一定の反応条件下における均一の増幅を確保するように、マルチプレックス化プライマー間のTmの変化は、±2.5℃以下とする。プライマーの標的特異的部分の所望されるGC含量は、理想的には、50%であるが、30〜70%の間で変化しうる。標的特異的プライマーは、多様な遺伝子バックグラウンドに由来するDNA試料からの、特異的でバイアスのかからない増幅を確保するために、アッセイされる状態について、反復を伴う重複、非固有の配列又は共通のSNP多型又は公知の変異を回避するように設計する。加えて、標的特異的プライマー及び標的相補性プライマーの設計は、効能を低減する二次構造の形成下に置かないものとする。
【0096】
ユニバーサルプライマーは、デオキシウリジン、デオキシイノシン又はRNAを含むがこれらに限定されない切断性塩基を含み、1、2、3、4、5又は6以上の切断性塩基を含有しうる。加えて、標的特異的プライマー及びユニバーサルプライマーは、それらの3’末端に、1、2、3、4又は5以上のヌクレアーゼ耐性部分を含む。
【0097】
アダプター分子
本開示は、5’アダプター及び3’アダプターの使用を想定する(
図3を参照されたい)。本開示に従い、3’アダプターは任意に、「オリゴヌクレオチド1」及び「オリゴヌクレオチド2」を含む二本鎖である。このような二本鎖基質分子には、2つのオリゴヌクレオチドが、標準的な反応条件下で、互いとアニーリングすることが可能である限りにおいて、任意の長さのオリゴヌクレオチド1及びオリゴヌクレオチド2が想定される。したがって、オリゴヌクレオチド1とオリゴヌクレオチド2との間の相補性は、それらが、互いとアニールしうるような相補性である。多様な実施形態では、相補性は、約70%、75%、80%、85%、90%、95〜約100%、又は約70%、75%、80%、85%、90〜約95%、又は約70%、75%、80%、85〜約90%である。具体的な実施形態では、オリゴヌクレオチド1とオリゴヌクレオチド2との間の相補性の程度は、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%である。さらなる実施形態では、オリゴヌクレオチド2は、非塩基性ヌクレオチド又は非塩基性リボヌクレオチドなど、分解/除去を受けやすいヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド1とオリゴヌクレオチド2とは、異なる長さであり、オリゴヌクレオチド1は、オリゴヌクレオチド2の長さに沿った任意の位置でハイブリダイズする。
【0098】
さらなる実施形態では、5’アダプターは、一本鎖である。5’アダプターが、3’アダプターのオリゴヌクレオチド1とハイブリダイズする実施形態において、このようなアニーリングは、ニック、ギャップ又は5’アダプターと基質分子との重複塩基を結果としてもたらすことが、さらなる実施形態では、想定される(
図8を参照されたい)。多様な実施形態では、ギャップ又は重複塩基は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100塩基の長さである。5’アダプターの、3’アダプターへのアニーリング後において、3’アダプターが二本鎖である、別の実施形態では、ニックトランスレーションを介して、オリゴヌクレオチド2を除去する、5’アダプターの「チューイングフォワード」を触媒するように、酵素を添加する。一部の実施形態では、5’アダプターは加えて、オリゴヌクレオチド1と相補的でなく、その5’塩基が置換されれば、基質分子の第1の塩基とアニールする、ランダムな、単一、2連又は3連以上のN塩基を、その3’末端に含む。他の実施形態では、5’アダプターは、修飾ポリヌクレオチドである。使用のために想定される修飾オリゴヌクレオチドは、参照によりその全体が組み込まれる、米国特許出願公開第2011/0129832号パンフレットにおいて開示されている。具体的な実施形態では、5’アダプターは、ロックト核酸(LNA)及びペプチド核酸(PNA:peptide nucleic acid)からなる群から選択される塩基修飾を含む。ある特定の実施形態では、5’アダプターのオリゴヌクレオチドを、3’アダプターへとあらかじめアニールさせる(
図8を参照されたい)。
【0099】
本開示はまた、PCRにより組み込まれるユニバーサルアダプター、一本鎖5’アダプター及び部分的に処理されたアンプリコン基質上のユニバーサルアダプターの1つの鎖へとライゲーションされる3’アダプターの残余部分の使用も想定する。本開示に従い、3’アダプターの残余部分のライゲーションは、リンカーにより媒介される。3つのオリゴヌクレオチドが、標準的な反応条件下で、互いとアニーリングすることが可能である限りにおいて、リンカー分子には、ユニバーサルアダプター及び3’アダプターの残余部分と相補的な任意の長さが想定される。したがって、相補性は、それらが、互いとアニールしうるような相補性である。多様な実施形態では、相補性は、約70%、75%、80%、85%、90%、95〜約100%、又は約70%、75%、80%、85%、90〜約95%、又は約70%、75%、80%、85〜約90%である。
【0100】
さらなる実施形態では、5’アダプターは、一本鎖である。5’アダプターが、アンプリコン末端上のユニバーサルアダプターの3’突出とハイブリダイズする実施形態では、このようなアニーリングは、5’アダプターとアンプリコン基質との間のニック又はギャップを結果としてもたらすことが、さらなる実施形態では、想定される。多様な実施形態では、ギャップは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100塩基の長さである。
【0101】
ユニバーサルアダプター、5’アダプターB又は3’アダプターの残余部分Aの長さは、約5〜約200ヌクレオチドの間であることが想定される。一部の態様では、ユニバーサルアダプター、5’アダプター又は3’アダプターの長さは、約5〜約200ヌクレオチドの間、又は約5〜約150ヌクレオチドの間、又は約5〜約100ヌクレオチドの間、又は約5〜約50ヌクレオチドの間、又は約5〜約25ヌクレオチドの間、又は約10〜200ヌクレオチドの間、又は約10〜100ヌクレオチドの間である。さらなる態様では、5’アダプター又は3’アダプターの長さは、少なくとも5ヌクレオチドであり、最大で約50、100若しくは200ヌクレオチド;又は少なくとも10ヌクレオチドであり、最大で約50、100若しくは200ヌクレオチドであるか;又は少なくとも15ヌクレオチドであり、最大で約50、100、若しくは200ヌクレオチドであるか;又は少なくとも20ヌクレオチドであり、最大で約50、100若しくは200ヌクレオチドであるか;又は少なくとも30ヌクレオチドであり、最大で約50、100若しくは200ヌクレオチドであるか;又は少なくとも40ヌクレオチドであり、最大で約50、100若しくは200ヌクレオチドである。多様な態様では、基質分子の長さは、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、約70、約71、約72、約73、約74、約75、約76、約77、約78、約79、約80、約81、約82、約83、約84、約85、約86、約87、約88、約89、約90、約91、約92、約93、約94、約95、約96、約97、約98、約99、約100、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約1100、約1200、約1300、約1400、約1500、約1600、約1700、約1800、約1900、約2000、約2100、約2200、約2300、約2400、約2500、約2600、約2700、約2800、約2900、約3000、約3100、約3200、約3300、約3400、約3500、約3600、約3700、約3800、約3900、約4000、約4100、約4200、約4300、約4400、約4500、約4600、約4700、約4800、約4900、約5000、約5100、約5200、約5300、約5400、約5500、約5600、約5700、約5800、約5900、約6000、約6100、約6200、約6300、約6400、約6500、約6600、約6700、約6800、約6900、約7000、約7100、約7200、約7300、約7400、約7500、約7600、約7700、約7800、約7900、約8000、約8100、約8200、約8300、約8400、約8500、約8600、約8700、約8800、約8900、約9000、約9100、約9200、約9300、約9400、約9500、約9600、約9700、約9800、約9900、約10000、約10500、約11000、約11500、約12000、約12500、約13000、約13500、約14000、約14500、約15000、約15500、約16000、約16500、約17000、約17500、約18000、約18500、約19000、約19500、約20000、約20500、約21000、約21500、約22000、約22500、約23000、約23500、約24000、約24500、約25000、約25500、約26000、約26500、約27000、約27500、約28000、約28500、約29000、約29500、約30000、約30500、約31000、約31500、約32000、約32500、約33000、約33500、約34000、約34500、約35000、約35500、約36000、約36500、約37000、約37500、約38000、約38500、約39000、約39500、約40000、約40500、約41000、約41500、約42000、約42500、約43000、約43500、約44000、約44500、約45000、約45500、約46000、約46500、約47000、約47500、約48000、約48500、約49000、約49500、約50000、約60000、約70000、約80000、約90000、又は約100000以上のヌクレオチドの長さである。
【0102】
NGSアダプターのライゲーションを完了するには、ユニバーサルアダプターのプライマーは加えて、酵素的、化学的又は物理的に破壊されうる修飾塩基及び/又は修飾連結も含む。修飾は、dU塩基、デオキシイノシン及びRNA塩基を含むがこれらに限定されない。一本鎖5’アダプターの、アンプリコンの3’突出へのアニーリングは、切断性塩基を伴う、組み込まれたユニバーサルプライマーに対応する、ユニバーサルアダプターの1つの鎖の分解の結果として生じる。一部の実施形態では、分解を、酵素的に、より具体的には、オリゴヌクレオチドが、デオキシウラシル塩基を含有する場合は、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)、若しくはUDGと非プリン性/非ピリミジン性エンドヌクレアーゼとの組合せを使用することにより、又はオリゴヌクレオチドが、デオキシイノシン塩基を含有する場合は、エンドヌクレアーゼVにより達成する。分解はまた、組み込まれたプライマーが、RNA塩基を含有する場合は、RNアーゼ H1又はRNアーゼ H2を伴うインキュベーションによっても実施することができる。一部の適用では、組み込まれたプライマーの分解は、化学的又は物理的に、例えば、光により実施することができる。代替的に、アンプリコンの3’突出は、アンプリコンの5’末端の限定的なエキソヌクレアーゼ消化により産生することもできる。このような限定的な消化は、酵素的に、より具体的には、プライマーオリゴヌクレオチドが、3’末端に、ヌクレアーゼ耐性塩基、具体的には、ホスホロチオエート連結を伴う塩基を含有する場合は、T7第6遺伝子エキソヌクレアーゼ又はラムダ5’→3’エキソヌクレアーゼを使用することにより達成することができる。この場合、エキソヌクレアーゼ反応は、修飾塩基で停止され、3’突出を産生する。
【0103】
方法−ステップ
方法のうちの最初の3つのインキュベーションは、プレライゲーションステップであり、(i)脱リン酸化、(ii)ポリッシング及び(iii)任意のアデニル化を含む。方法のうちの残りの2つのインキュベーションは、(1)3’アダプターのライゲーションと、(2)5’アダプターのライゲーションとを含み、(2)は、(a)5’アダプターのアニーリングと、(b)5’塩基の基質分子からの除去と、(c)5’アダプターのライゲーションとを含む(
図4〜6を参照されたい)。この態様では、方法は、最大で3つのプレライゲーションステップと、2つのライゲーションステップとを有する。別の態様では、基質分子が、好ましくは、3’アダプターとして用いられる、既存の3’突出を含む場合、方法は、5’アダプターの単一のライゲーションステップを有する(
図7aを参照されたい)。
【0104】
増幅反応内では、マルチプレックス化サイクルの数を、最小の2サイクルへと限定するか、又は、非マルチプレックス化ユニバーサルアダプターによる単一のプライマー増幅へと切り替える前に、3サイクル、4サイクル、5サイクル若しくは6サイクル以上の最大Nサイクルとして実施することができる。ユニバーサルサイクルの数は、DNAインプット量及び所望されるライブラリー収率に応じて、1〜40サイクル以上で変化させることができる。マルチプレックスPCR増幅の後、精製ステップを実施し、次いで、同時的なアダプターのライゲーションステップを実施する。
【0105】
プレライゲーションステップ:
(i)脱リン酸化
アダプターのライゲーションの前に、DNA末端を任意に処理して、アダプターのライゲーション反応の効率を改善する。既存の方法におけるDNA末端の処理では、2つの酵素反応:(a)3’突出を除去し、3’陥凹末端を充填することによりDNA末端をポリッシングする、プルーフリーディングDNAポリメラーゼを伴うインキュベーション、及び(b)リン酸基を5’末端へと付加する、ポリヌクレオチドキナーゼを伴うインキュベーションを使用することが典型的である。DNA末端を処理する場合、一部の方法はまた、3’末端において、ポリッシングされたDNAの、非プルーフリーディングDNAポリメラーゼとのインキュベーションにより、平滑末端化されたDNAもアデニル化する。アデニル化は、DNAの自己ライゲーション及びキメラ産物の形成を防止する一助となる。アデニル化はまた、対応するアダプターの3’末端におけるdTの存在のために、アダプター二量体の形成も最小化する。本発明では、これらの問題に、全く異なる方式で取り組む。DNA断片の5’末端へとリン酸基を付加するのではなく、本発明の方法では、DNA断片の5’末端からのリン酸基の完全な除去を任意で実装する。DNA末端の脱リン酸化は、DNA断片の、DNA末端からリン酸を除去することが可能な酵素とのインキュベーションにより達成する。本開示の方法で、5’リン酸又は3’リン酸を除去するのに有用な酵素の例は、各々が標準的な条件に従い使用される、仔ウシ腸アルカリホスファターゼ、細菌性アルカリホスファターゼ、エビアルカリホスファターゼ、アンタークティックホスファターゼ、及び胎盤アルカリホスファターゼなど、任意のホスファターゼ酵素を含むがこれらに限定されない。
【0106】
(ii)ポリッシング
アルカリホスファターゼの除去又は熱によるその不活化の後で、DNA基質分子を、任意に、dNTPの存在下で、プルーフリーディングDNAポリメラーゼを伴うインキュベーションにかけて、平滑末端を創出する。反応は、標準的な条件に従い実施する。脱リン酸化及びポリッシングされたDNA断片は、3’アダプターの結合には基質として良好であるが、DNA断片のコンカテマーライゲーション及びキメラ形成には基質として良好でない。脱リン酸化及びポリッシングされたDNA断片はまた、従来型のアダプターのライゲーションにも基質として良好でない。
【0107】
本発明の一部の適用では、ホスファターゼ酵素による5’末端の脱リン酸化を省略しうるが、この場合は、T4ポリヌクレオチドキナーゼなどの酵素の、DNAポリッシングミックスへの添加が、DNAのポリッシングの前に、リン酸基の3’末端からの除去を確保するのに好ましい。代替的に、上記で記載した、最初の2つのプレライゲーション反応である、脱リン酸化及びポリッシングは、任意の順序で実行することができ、それらの末端の5’リン酸基を欠く、平滑末端化された二本鎖DNAを結果としてもたらす。
【0108】
(iii)アデニル化
本発明はまた、DNAポリメラーゼIの(エキソ)クレノウ断片、及びTaq DNAポリメラーゼを含むがこれらに限定されない、非鋳型ポリメラーゼ活性を伴うDNAポリメラーゼを使用する、平滑末端DNA断片の3’末端のアデニル化の使用も想定する。アルカリホスファターゼ処理及びアデニル化のいずれも、DNA断片の自己ライゲーション及びキメラライブラリー分子の形成の傾向を低減する。アデニル化ステップを含む場合、後続のステップで使用される3’アダプターは、単一のT突出を要求するであろう。
【0109】
ライゲーションステップ:
(1)3’アダプターのライゲーション又はDNA基質上の一本鎖3’突出の作製
オプションは、
図7に描示する。
【0110】
オプション1a:二本鎖3’アダプターの部分としての、3’遮断されたオリゴヌクレオチド2(
図7a)
既存のNGSライブラリーの調製プロトコールは、アダプターの3’OH基と、DNA断片の末端における5’リン酸基とのライゲーションに依拠する。この理由で、従来型の方法で使用されるアダプターは、3’ヒドロキシル基及び任意の5’リン酸基を伴う、1つの官能性の二本鎖末端を有することが典型的である(
図1及び2を参照されたい)。これに対し、本発明では、3’アダプターの5’リン酸基とDNA断片の3’OH基とのライゲーション反応を使用するが、3’アダプターの3’末端とDNA断片の5’末端との間にニックを残す(
図3を参照されたい)。3’アダプターは、5’リン酸基を伴う官能性の二本鎖末端と、このオプションでは、ライゲーションに適さない3’ヌクレオチド(例えば、2’,3’ジデオキシ塩基又は3’デオキシ塩基など、糖修飾された塩基アナログを含む)とを有する。3’アダプターは、2つのオリゴヌクレオチド:5’末端におけるリン酸基及び3’末端における遮断基(C3スペーサーなど)を有する、オリゴヌクレオチド1と、5’末端におけるリン酸基を欠き、3’末端における非ライゲーション性の塩基を含む、オリゴヌクレオチド2とのアニーリングにより形成する。オリゴヌクレオチド2は加えて、酵素的、化学的又は物理的に破壊されうる修飾塩基及び/又は修飾連結も含む。大半の適用において、基質分子とのライゲーションに関与する3’アダプターの末端は、平滑末端である。DNA断片のアデニル化を伴う適用では、3’アダプターのライゲーション性末端は、2’,3’ジデオキシチミジン塩基又は3’デオキシチミジン塩基(又はチミン塩基に対する他の修飾であって、隣接する塩基との共有結合的連結を形成するその能力を遮断する修飾)を含有する3’突出を有する。他の適用では、3’アダプターの官能性末端は、複数の塩基を含有する、3’突出又は5’突出を有しうるであろう。DNAリガーゼを伴うインキュベーション時には、3’アダプターの5’リン酸を、DNA基質分子の3’末端へとライゲーションする一方で、3’アダプターの3’末端とDNA基質分子の5’末端との間にはニックを残す。反応が完了した後で、ライゲーションされたDNAを、スピンカラムによる精製又はSPRIビーズベースの精製にかけて、過剰なアダプター及びライゲーション反応の他の成分を除去する。
【0111】
オプション1b:二本鎖3’アダプターの部分としての、3’ヒドロキシルオリゴヌクレオチド2(
図7a)
代替法では、オリゴヌクレオチド2の3’末端における、遮断された、非ライゲーション性塩基を欠く3’アダプターを使用することができる。非遮断オリゴヌクレオチド2の、基質分子へのライゲーションは、やはり、脱リン酸化反応の結果としての、基質分子上の5’リン酸の欠如により防止されるであろう。非遮断オリゴヌクレオチド2を使用する利点は、オリゴヌクレオチド2の3’末端は、ジデオキシヌクレオチドミックスと、ニックトランスレーションによるDNA合成が可能なDNAポリメラーゼとを使用して一塩基伸長させることができることである。これは、基質分子からの5’塩基の切除を実施する代替法(下記で記載される後続のステップを参照されたい)を可能とする。非遮断3’アダプターを使用する短所は、ライゲーション反応時におけるアダプター二量体の創出であり、これは、アダプター濃度を低減し、結果として、アダプターのライゲーション効率を低下させる可能性がある。このオプションではまた、オリゴヌクレオチド2は加えて、酵素的、化学的又は物理的に破壊されうる修飾塩基及び/又は修飾連結も含む。
【0112】
オプション2:一本鎖3’アダプター(
図7a)
一本鎖アダプターを、二本鎖(又は一本鎖)基質分子へと、共有結合的に結合させることが可能なリガーゼ(DNA又はRNA)の存在下では、オリゴヌクレオチド2を反応から除外することができる。
【0113】
オプション3:ホモポリマーの3’アダプター(
図7a)
末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT:terminal deoxynucleotidyl transferase)などの鋳型非依存性ポリメラーゼ、ポリ(A)ポリメラーゼ、ポリ(U)ポリメラーゼ又は3’−エキソヌクレアーゼプルーフリーディング活性を欠くDNAポリメラーゼの存在下で、ヌクレオチドを含むときは、3’アダプター配列として用いられうる、ホモポリマーテール又は他のテールを、基質分子の3’末端に組み込むことができる。
【0114】
オプション4:制御されたテール形成及び同時的な3’アダプターのライゲーション(
図7a)
TdTなどの鋳型非依存性ポリメラーゼ、ヌクレオチドの存在下で、リガーゼ及びアテニュエーター−アダプター分子をさらに含むときは、合成テールと、規定された3’アダプター配列とを、基質分子の3’末端に組み込むことができる(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2013年3月13日に出願された、国際特許出願第PCT/US13/31104号明細書を参照されたい)。
【0115】
オプション5:3’アダプターのライゲーションステップを省略する(
図7b)
天然に存在するか、又は先行する酵素的処理又は他の処理から生じる既存の3’突出を、規定された配列又はランダム配列として含む基質分子の場合、別個の3’アダプターのライゲーションステップは、要求されず、省略することができ、この場合、既存の3’突出は、3’アダプターとして用いられうる。
【0116】
代替的な実施形態では、亜鉛及び他の反応成分を伴うホスファターゼ酵素を、その完了時において、3’アダプターのライゲーション反応へと添加することができる。3’アダプターのライゲーション後においてホスファターゼ反応を実施することは、ライゲーションされなかった3’アダプター分子に、後続のライゲーションを不可能とする手段であり、これにより、5’アダプターが存在する場合に、後続のステップにおけるアダプター二量体の形成が防止される。
【0117】
(2)単一のインキュベーションにおいて施される3つのステップを含む、5’アダプターのライゲーション
(I)5’アダプターのアニーリング
一本鎖3’アダプターのライゲーション(オプション2)、ホモポリマーの付加(オプション3)又は既存の3’突出の3’アダプターとしての使用(オプション5)の場合は、分解させるか又は置換するオリゴヌクレオチド2が存在しないので、5’アダプターのアニーリングを、他の事項を検討せずに、直接実施することができる。
【0118】
二本鎖3’アダプターのライゲーションを使用して、二本鎖DNAの末端において一本鎖3’突出を創出する場合(上記のオプション1a、1b及び4)、それらの各々が、下記で論じられ、
図8で描示される、5つの異なるオプション:
i)3’アダプターとアニールさせたオリゴヌクレオチド2の分解後におけるオプション
ii)3’アダプターとアニールさせたオリゴヌクレオチド2に対する競合的置換を介するオプション
iii)5’アダプターを、オリゴヌクレオチド1上の、オリゴヌクレオチド2のアニーリング部位と比べてさらに3’側でアニールさせた後における、ニックトランスレーション及びオリゴヌクレオチド2の分解を介するオプション
iv)5’アダプターを、3’アダプターのオリゴヌクレオチド1の3’領域とあらかじめアニールさせた後における、ニックトランスレーション及びオリゴヌクレオチド2の分解を介するオプション
v)3’遮断基を伴う5’アダプターを、3’アダプターのオリゴヌクレオチド1(オリゴヌクレオチド2の代わりに)の5’領域とあらかじめアニールさせた後における、3’遮断基の酵素的切除を介するオプション
のうちのいずれかを使用して、5’アダプターを、3’アダプターへとアニールさせることができる。
【0119】
オプションi:
3’アダプターのオリゴヌクレオチド2は加えて、酵素的、化学的又は物理的に破壊されうる修飾塩基及び/又は修飾連結も含む。修飾は、dU塩基、デオキシイノシン及びRNA塩基を含むがこれらに限定されない。一本鎖5’アダプターの、3’アダプターのオリゴヌクレオチド1の5’部分とのアニーリングは、3’アダプター、具体的には、オリゴヌクレオチド2の部分的分解の結果としてなされる。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチド2の分解を、酵素的に、より具体的には、第2のオリゴヌクレオチドが、デオキシウラシル塩基を含有する場合は、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)、若しくはUDGと非プリン性/非ピリミジン性エンドヌクレアーゼとの組合せを使用することにより、又は第2のオリゴヌクレオチドが、デオキシイノシン塩基を含有する場合は、エンドヌクレアーゼVにより達成する。オリゴヌクレオチド2の分解はまた、第2のオリゴヌクレオチドがRNA塩基を含有する場合は、RNアーゼ H1又はRNアーゼ H2を伴うインキュベーションによっても実施することができる。一部の適用では、第2のオリゴヌクレオチドの分解は、化学的又は物理的に、例えば、光によりなされうる。
【0120】
オプションii:
一部の適用では、5’アダプターの、3’アダプターのオリゴヌクレオチド1とのアニーリングは、オリゴヌクレオチド2の分解を伴わずに行う。この場合、オリゴヌクレオチド2の、一本鎖5’アダプターによる置き換えは、5’アダプターの、オリゴヌクレオチド2のアフィニティーを上回る高アフィニティーであって、オリゴヌクレオチド1と5’アダプター配列との相補性の増大に起因するか、又はその溶融温度を増大させる5’アダプター内の塩基修飾(例えば、LNA塩基)に起因する高アフィニティーにより容易とすることができる。5’アダプターの設計に応じて、3’アダプターのオリゴヌクレオチド1とのアニーリングは、5’アダプターの3’末端とDNA基質分子の5’末端との間のニック若しくはギャップ、又は5’アダプター及びDNA基質分子のそれぞれの、3’塩基と5’塩基との重複を結果としてもたらす。
【0121】
オプションiii:
この場合は、オリゴヌクレオチド2の分解性修飾も、競合的置換も使用しない。そうではなく、5’アダプターは、オリゴヌクレオチド1上の、オリゴヌクレオチド2のアニーリング部位と比べてさらに3’側で、3’アダプターとアニールした後における、限定的ニックトランスレーションによる「チューイングフォワード」により、オリゴヌクレオチド2を置き換え、この結果として、オリゴヌクレオチド2の分解又は部分的分解をもたらす。
【0122】
オプションiv及びv:
これらの場合、5’アダプターは、3’アダプターの部分を構成し、3’アダプターの、DNA基質へのライゲーション時に存在する。オプションivでは、5’アダプターは、オリゴヌクレオチド1上の、オリゴヌクレオチド2のアニーリング部位と比べてさらに3’側で、あらかじめ3’アダプターとアニールさせる(オプションiiiと同様)。オプションvでは、5’アダプターを、3’末端に遮断基を有し、オリゴヌクレオチド2の代わりに、3’アダプターとあらかじめアニールさせる。3’アダプターのライゲーションの後で、5’アダプターの3’末端における遮断基を酵素的に除去して、DNAポリメラーゼによるその伸長を可能とする。
【0123】
(II)5’リン酸の露出を結果としてもたらす、基質分子からの5’塩基の除去
このステップでは、ライゲーション適合性である5’末端のリン酸基の、基質分子上における創出は、DNAポリメラーゼ及びヌクレオチドを使用する、5’アダプターのオリゴヌクレオチドのニックトランスレーション(オプションi)を介するか、ヌクレオチドの非存在下において、5’アダプター及び5’−flapエンドヌクレアーゼを使用する置換−切断反応(オプションii)を介するか、又はオリゴヌクレオチド2からの単一のジデオキシ塩基の伸長に続く、ヌクレオチドの非存在下において、5’−flapエンドヌクレアーゼを使用する、置換−切断(オプションiii)を介する、DNA基質分子の損傷を受けた5’末端塩基の除去により達成する。第3のオプションでは、5’アダプターの代わりにアニールさせたオリゴヌクレオチド2を使用して実施するため、基質分子の5’塩基の切除は、5’アダプターのアニーリングの前に行うが、方法についての記載を単純化するために、本節に組み入れる(
図9を参照されたい)。
【0124】
オプションi:
ニックトランスレーションによるDNA合成は、5’アダプターの3’末端オリゴヌクレオチドと、DNA基質分子の5’末端との間のニック又はギャップにおいて開始され、ライゲーション反応によりニックがシールされたときに停止される(
図4及び6aを参照されたい)。ニックトランスレーション反応は、DNAポリメラーゼI(ホロ酵素)、Taq DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、及びBst DNAポリメラーゼ(ホロ酵素)などのDNAポリメラーゼによるがこれらに限定されないDNAポリメラーゼにより実施することができる。使用のために想定されるさらなる酵素は、限定なしに述べると、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を伴うDNAポリメラーゼ、5’flapエンドヌクレアーゼ、及び鎖置換ポリメラーゼと5’flapエンドヌクレアーゼとの組合せを含む。
【0125】
このステップに想定される反応条件は、(i)内因性5’エキソヌクレアーゼ活性を伴うポリメラーゼ及びリガーゼの両方が活性であるか;(ii)鎖置換ポリメラーゼ及びflapエンドヌクレアーゼ及びリガーゼが活性であるか;(iii)flapエンドヌクレアーゼ及びリガーゼが活性であるか、(iv)熱安定性酵素及び熱不安定性酵素の両方の同時的な活性が生じるか;又は(v)熱安定性酵素だけ又は熱不安定性酵素だけの活性が生じうる反応条件を含む。一部の実施形態では、条件(i)及び(ii)は各々、ニックトランスレーションのためのdNTPを伴って実施する。具体的な実施形態では、Taqポリメラーゼ及び大腸菌リガーゼを、40℃の反応温度で使用する。しかし、多様な実施形態では、10℃〜75℃の反応温度の範囲が想定される。
【0126】
ニックトランスレーション反応は、5’アダプターの伸長産物とDNA基質分子との間でなされるライゲーション反応の前における、DNA基質分子の5’末端からの、1、2又は3以上の塩基の除去を結果としてもたらす。ニックトランスレーションによる合成は、4つのヌクレオチドであるdGTP、dCTP、dTTP及びdATPの全て、又はこれらの限定的な組合せの存在下で行うことができる。限定的な組合せは、dGTP、dCTP及びdATP、若しくはdGTP、dCTP及びdTTP、若しくはdGTP、dATP及びdTTP、若しくはdCTP、dATP及びdTTPなど、3ヌクレオチドの組合せ、dGTP及びdCTP、若しくはdGTP及びdATP、若しくはdGTP及びdTTP、若しくはdCTP及びdATP、若しくはdCTP及びdTTP、若しくはdATP及びdTTPなど、2ヌクレオチドの組合せ、又はdGTP、若しくはdCTP、若しくはdATP、若しくはdTTPなど、ただ1つのヌクレオチドを含むがこれらに限定されない。
【0127】
オプションii:
置換−切断反応は、dNTPを要求しないが、5’アダプター配列が、基質分子との重複を創出するように、3’末端に、1、2又は3以上のランダム塩基を含むことを要求し、反応物中に、複数の5’アダプターを含む(
図5及び6bを参照されたい)。置換−切断反応は、5’アダプターのアニーリング、5’アダプターの3’塩基と重複する、DNA基質分子の5’DNA塩基の置換、置換された塩基の5’−flapエンドヌクレアーゼによる切断により誘発される。一部の実施形態では、5’アダプターは、3’末端に、1つのランダム塩基dNを有する。この場合、重複は、1つの塩基を伴い、DNA基質分子の5’末端から単一の5’塩基だけを除去し、5’アダプター配列に由来する類似の塩基で置き換える。置換−切断反応の効率は、その末端の3’塩基が、DNA基質分子の5’塩基とミスマッチする場合、5’アダプターを解離させ、再アニールさせるように、反応のサイクリング温度を40℃〜65℃の間とすることにより増大させる。
【0128】
オプションiii:
基質分子の5’塩基の切除に関与する5’アダプターに対する代替的実施形態は、代わりに、先行するステップで、3’アダプターのオリゴヌクレオチド2を、基質分子の5’塩基の切除に関与させる(
図9を参照されたい)。
【0129】
1つの手法(
図9a及びc)では、3’アダプターのオリゴヌクレオチド2は、伸長性3’末端を含み、適切な条件下にある、ジデオキシヌクレオチド混合物及びポリメラーゼの存在下で、単一のジデオキシ塩基付加を行い、これにより、基質分子の5’末端との一塩基重複をもたらし、これにより、適切なflapエンドヌクレアーゼ又は5’flapエンドヌクレアーゼ活性を保有するポリメラーゼを介する、単一の塩基の置換−切断を誘導する。続いて、その3’末端にランダムdN塩基を伴う5’アダプターを使用する(
図9a)が、この場合、二本鎖DNAの末端へと結合させた3’アダプターへの結合の後で、ニックが形成される。ニックは、DNAリガーゼによりシールすることができ、この結果として、5’アダプターの、DNA基質分子の5’末端への共有結合的結合がもたらされる。
【0130】
代替的に、その3’末端におけるランダムdN塩基を欠く、5’アダプターのオリゴヌクレオチドであって、二本鎖DNA基質分子の末端へと結合させた3’アダプターへの結合の後で、一塩基ギャップを形成する、5’アダプターのオリゴヌクレオチドも使用することができる。(
図9c)。ギャップは、鎖置換活性を欠くDNAポリメラーゼ(例えば、T7 DNAポリメラーゼ又はT4 DNAポリメラーゼ)により充填して、ニックを創出することができ、ニックは、DNAリガーゼによりシールすることができ、この結果として、5’アダプターの、DNA基質分子の5’末端への共有結合的結合がもたらされる。
【0131】
別の代替法では(
図9b及びdを参照されたい)、遮断3’末端を含むオリゴヌクレオチド2は、5’flapエンドヌクレアーゼ活性を伴うDNAポリメラーゼを介して、単一のジデオキシ塩基により伸長するプライマーオリゴヌクレオチドにより部分的に分解又は置換され、その結果として、DNAの5’末端からの一塩基の切除がもたらされる。プライマーオリゴヌクレオチドは、その3’末端にランダムdN塩基を伴う5’アダプターにより分解又は置換されて、ニックを創出し、ニックは、DNAリガーゼによりシールすることができる。
【0132】
(III)5’アダプターのライゲーション
5’アダプターの、基質分子への共有結合的結合は、5’アダプター又はその伸長産物と、基質分子の露出させた5’リン酸とのライゲーションを伴う。DNA基質分子の5’塩基の切除を、ニックトランスレーション反応により達成する場合は、ライゲーション反応により、ポリメラーゼにより伸長させる5’アダプターと、切除されるDNA基質分子の5’末端との間のニックをシールする。DNA基質分子の5’塩基の切除を、置換−切断反応を介して達成する場合は、ライゲーションを、元の5’アダプターのオリゴヌクレオチドと、切除されるDNA基質分子の5’末端との間で行う。多様な実施形態では、このステップにおけるライゲーション反応に関する標準的な条件は、DNA内のニック又はギャップをシールすることが可能な、任意のDNAリガーゼの使用を含む。一実施形態では、リガーゼは、大腸菌DNAリガーゼであり、反応は、10℃〜50℃の間の温度間隔で行う。一部の実施形態では、リガーゼは、Taq DNAリガーゼ、又はAmplリガーゼなどの熱安定性DNAリガーゼであり、反応は、30℃〜75℃の間の温度間隔で行う。
【0133】
本発明の多様な態様では、5’アダプターのライゲーションステップのうちの3つのステップである、(I)、(II)及び(III)は、単一のインキュベーションにおいて、3’アダプター処理された基質DNAを、(i)任意の分解用エンドヌクレアーゼ(例えば、UDG、エンドヌクレアーゼV、RNアーゼ H、又はこれらの組合せ);(ii)ニックトランスレーション用DNAポリメラーゼ又は5’−flapエンドヌクレアーゼ;及び(iii)DNAリガーゼと混合し、インキュベートすることにより、同時に実施する(
図6を参照されたい)。インキュベーションは、一定の温度で、又は10℃〜75℃の間隔の温度サイクリング条件を使用して実行する。他の適用では、3’アダプターの部分的分解を、下流における反応とは別個に実施する。
【0134】
NGSライブラリーの構築
Illumina社製NGSライブラリーの合成は、開示される方法を使用して実施することができる。
図10で示されるとおり、Illumina社製ライブラリーは、ニックトランスレーションライゲーション法(左側)又は置換−切断ライゲーション法(右側)を使用して構築することができる。2つのIllumina社製アダプターの結合の順序は、柔軟であり、
図10aでは、Illumina社製アダプターP7が、3’アダプターであり、Illumina社製アダプターP5が、5’アダプターであるのに対し、
図10bでは、Illumina社製アダプターP5は、3’アダプターであり、Illumina社製アダプターP7は、5’アダプターである。
図10で描示されるライブラリーは、PCRを伴わずに構築することもでき、インプット基質DNAの量に応じて、PCR増幅することもできる。代替的に、Illumina社製NGSライブラリーの合成は、開示される方法であって、短縮アダプター配列を使用するため、PCR増幅を要求する方法を使用して実施することもできる(
図11を参照されたい)。この場合は、P5又はP7を、短縮アダプターとして導入する(P7だけを示す)が、全長アダプター配列を導入するほか、その5’末端に分解性塩基も含む、PCRプライマーを使用する増幅の後であり、結果として得られるアンプリコンの5’部分の分解後において、アニーリング及びライゲーションにより、P7又はP5を導入することができる。代替的に、短縮分解性プライマーをPCR増幅に使用する場合は、アダプターの残余部分の架橋ライゲーションを実施して、全長配列を完成させることができる。
【0135】
開示される方法を使用して、様々なシークエンシングプラットフォームのためのNGSライブラリーを構築することができるが、別の例を、Ion Torrent社製ライブラリーの構築が描示される、
図12及び13に提示する。
図12で示されるとおり、P1アダプター上のアダプター配列Aの部分的複製をインサート接合部位に導入することにより、3’アダプターのライゲーション後における、後続の5’アダプターのアニーリングを行うことができる。ライゲーションの順序は柔軟であり、アダプターAの部分的複製を伴うアダプターP1を、3’アダプターとして導入した後で、ニックトランスレーション又は置換−切断を使用して、5’アダプターとしてのアダプターAのライゲーションを行うことができる(
図12a)。代替的に、アダプターAを、3’アダプターとして導入し、アダプターAの部分的複製を伴うアダプターP1を、5’アダプターとすることもできる(
図12b)。Ion Torrent社製のシークエンシングは、P1アダプター上のアダプターAの部分的複製の長さのために、アダプターAからの単一のリードとして実施されるので、シークエンシングプライマーのアニーリング又は他のアダプター機能には干渉しない。
【0136】
代替的に、
図13では、開示される方法を使用して、コンビナトリアルバーコード処理を、Ion Torrent社製ライブラリーへと導入することができる。3’アダプターのライゲーションステップでは、二重コンビナトリアルバーコードのうちの第1の部分を、20のバーコード全てに共通なリンカー領域Lに隣接して導入する。DNA基質へとライゲーションされない3’遮断鎖の分解後に、5’アダプターを、共通のリンカー領域Lとアニールさせ、これにより、二重バーコードの第2の部分を、リンカー領域Lの5’側に隣接して組み込む。ニックトランスレーションライゲーションの後、結果として得られるライブラリーは、標準的なIon Torrent社製PCRプライマーにより増幅することができ、ライブラリー分子を、アダプターA側からシークエンシングする場合、各Ionスフェアによる試料の同定は、リードの開始部分において読み取られ、96の可能な組合せを達成することができる。
【0137】
標的を選択したNGSライブラリーのための適用
開示される方法を使用して、全ゲノムシークエンシングと比べて、複雑性及びシークエンシング要件を低減する方策として、特異的標的を選択及び濃縮しうる、NGSライブラリーを構築することができる。このような適用の例は、3’アダプター及び5’アダプターの、ランダムに断片化し、変性させ、プライマーにより伸長させたDNA基質への結合であって、1又は複数のプライマーを、公知のターゲティングされるDNA領域とアニールさせる結合であろう。この場合、ターゲティングされる遺伝子座だけが二本鎖末端を含み、選択されない遺伝子座は一本鎖のままであり、それらの末端におけるアダプターのライゲーションは生じないであろう。
【0138】
他の適用では、本発明の5’アダプターを使用して、末端配列が公知であるDNA断片の小画分を選択及び濃縮することができる。あらかじめ選択されたDNA配列は、1、2、3又は4以上の末端DNA塩基を含有するであろう。このような選択を達成するには、5’アダプター配列が、選択された侵入塩基又は3’末端における塩基の組合せを含有するものとする。結果として、選択された末端配列を伴うDNA断片だけを、5’アダプターへとライゲーションし、増幅する。
図14で示されるとおり、3’末端が、選択された制限断片の末端配列と相補的な、5’アダプターを使用して、制限断片標的を複数の制限断片から選択することができる。別の実施形態では、CpGジヌクレオチドを含む3’末端を伴う5’アダプターの使用により、CpGアイランドに由来する断片について濃縮する。
【0139】
代替的に、標的の選択は、本明細書で開示される方法を使用するライブラリー構築の後で実施することもできる(
図15を参照されたい)。1つのアダプターが、その5’末端に分解性塩基を含む、このようなライブラリーを構築する場合、標的特異的プライマーの伸長及びアダプターの分解性部分の部分的消化の後で、ビオチニル化5’アダプターを、結果として得られる3’突出とアニールさせることができ、ニックトランスレーションライゲーション(
図15a)又は置換−切断ライゲーション(
図15b)を使用して、ビオチニル化5’アダプターを、ターゲティングされるDNA基質だけと共有結合的に結合させ、その後、ストレプトアビジン磁気ビーズを使用して捕捉し、次いで、PCR増幅して、シークエンシングのために十分な材料を作製することができる。
【0140】
代替的なアダプターの設計及び適用
また、開示される方法を使用する、複数の代替的なアダプターの設計及びライゲーション法も提示される。
図16では、アダプター配列対の代わりに、単一のアダプター配列を使用して、ライブラリーを構築する。この例では、ライゲーションの前の基質の処理、並びに3’アダプターのライゲーション及び5’アダプターのニックトランスレーションライゲーション又は置換−切断ライゲーションの両方のために、同じステップを使用し、結果として得られるライブラリーを、単一のプライマーを使用してPCR増幅することができる。
【0141】
図17では、単一のオリゴヌクレオチドによるヘアピンアダプターのライゲーションのための方法であって、ヘアピンアダプターの5’末端を使用して、3’アダプターの、基質分子へのライゲーションを実施し、ヘアピンアダプターの遮断3’末端の分解後において、ヘアピンアダプターの短縮3’末端を、基質分子の露出させた5’リン酸へのニックトランスレーションライゲーションのために使用する方法を提示する。
【0142】
場合によって、メイトペアNGSライブラリーの構築のための中間体構造など、環状DNAライブラリーを作製することも有用である。
図18で示されるとおり、本開示の方法を使用して、このようなライブラリーを構築することができる。第1のステップでは、3’アダプターのライゲーションを、相互に相補的なアダプターであるXとX’とを使用して実施する。ライゲーションされなかった鎖の分解の後、各基質分子上の3’突出であるXとX’との相補性により、DNAの非共有結合的環状化を行うことができる。単一分子のアニーリングに好適とし、コンカテマー形成を低減するため、このアニーリング反応は、適切な程度の低DNA濃度で実施する。3’突出のアニーリング後、ニックトランスレーションライゲーションを実施することができる。
【0143】
酵素
本開示の方法を実施するのに、標準的な反応条件に従い使用されうるリガーゼは、T4 DNAリガーゼ、T4 RNAリガーゼ、T3 DNAリガーゼ又はT7 DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、Ampリガーゼ、大腸菌DNAリガーゼ及び大腸菌RNAリガーゼを含むがこれらに限定されない。多様な実施形態では、本開示は、平滑末端又は粘着(「スティッキー」)末端のライゲーションに適切な反応条件を想定する。一部の実施形態では、粘着末端は、5’突出又は3’突出を含む。
【0144】
本開示の方法で、5’リン酸又は3’リン酸を除去するのに有用な酵素の例は、各々が標準的な条件に従い使用される、仔ウシ腸アルカリホスファターゼ、細菌性アルカリホスファターゼ、エビアルカリホスファターゼ、アンタークティックホスファターゼ、及び胎盤アルカリホスファターゼなど、任意のホスファターゼ酵素を含むがこれらに限定されない。加えて、T4ポリヌクレオチドキナーゼのホスファターゼ活性を使用して、3’リン酸基を除去することができる。
【0145】
本発明の実施において有用なポリメラーゼ酵素は、DNAポリメラーゼ(熱安定性DNAポリメラーゼ、例えば、Taq DNAポリメラーゼを含みうる)、RNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼI及び逆転写酵素を含むがこれらに限定されない。本発明を実施するのに使用されうる酵素の非限定的な例は、KAPA HiFi及びKAPA HiFi Uracil+、VeraSeq Ultra DNA Polymerase、VeraSeq 2.0 High Fidelity DNA Polymerase、タカラバイオ株式会社製PrimeSTAR DNA Polymerase、Agilent社製Pfu Turbo CX Polymerase、Phusion U DNA Polymerase、Deep VentR(商標)DNA Polymerase、LongAmp(商標)Taq DNA Polymerase、Phusion(商標)High-Fidelity DNA Polymerase、Phusion(商標)Hot Start High-Fidelity DNA Polymerase、Kapa High-Fidelity DNA Polymerase、Q5 High-Fidelity DNA Polymerase、Platinum Pfx High-Fidelity Polymerase、Pfu High-Fidelity DNA Polymerase、Pfu Ultra High-Fidelity DNA Polymerase、KOD High-Fidelity DNA Polymerase、iProof High-Fidelity Polymerase、High-Fidelity 2 DNA Polymerase、Velocity High-Fidelity DNA Polymerase、ProofStart High-Fidelity DNA Polymerase、Tigo High-Fidelity DNA Polymerase、Accuzyme High-Fidelity DNA Polymerase、VentR(登録商標)DNA Polymerase、DyNAzyme(商標)II Hot Start DNA Polymerase、Phire(商標)Hot Start DNA Polymerase、Phusion(商標)Hot Start High-Fidelity DNA Polymerase、Crimson LongAmp(商標)Taq DNA Polymerase、DyNAzyme(商標)EXT DNA Polymerase、LongAmp(商標)Taq DNA Polymerase、Phusion(商標)High-Fidelity DNA Polymerase、Taq DNA Polymerase with Standard Taq(Mg-free)Buffer、Taq DNA Polymerase with Standard Taq Buffer、Taq DNA Polymerase with ThermoPol II(Mg-free)Buffer、Taq DNA Polymerase with ThermoPol Buffer、Crimson Taq(商標)DNA Polymerase、Crimson Taq(商標)DNA Polymerase with(Mg-free)Buffer、Phire(商標)Hot Start DNA Polymerase、VentR(登録商標)(exo) DNA Polymerase、Hemo KlenTaq(商標)、Deep VentR(商標)(exo) DNA Polymerase、Deep VentR(商標)DNA Polymerase、DyNAzyme(商標)EXT DNA Polymerase、Hemo KlenTaq(商標)、LongAmp(商標)Taq DNA Polymerase、ProtoScript(登録商標)AMV First Strand cDNA Synthesis Kit、ProtoScript(登録商標)M-MuLV First Strand cDNA Synthesis Kit、Bst DNA Polymerase, Full Length、Bst DNA Polymerase, Large Fragment、9°Nm DNA Polymerase、DyNAzyme(商標)II Hot Start DNA Polymerase、Hemo KlenTaq(商標)、Sulfolobus DNA Polymerase IV、Therminator(商標)γ DNA Polymerase、Therminator(商標)DNA Polymerase、Therminator(商標)II DNA Polymerase、Therminator(商標)III DNA Polymerase、Bsu DNA Polymerase, Large Fragment、DNA Polymerase I (E. coli)、DNA Polymerase I, Large (Klenow) Fragment、Klenow Fragment (3’→5’ exo)、phi29 DNA Polymerase、T4 DNA Polymerase、T7 DNA Polymerase (unmodified)、Terminal Transferase、Reverse Transcriptase及びRNA Polymerase、E. coli Poly(A) Polymerase、AMV Reverse Transcriptase、M-MuLV Reverse Transcriptase、phi6 RNA Polymerase (RdRP)、Poly(U) Polymerase、SP6 RNA Polymerase、並びにT7 RNA Polymeraseを含むがこれらに限定されない。
【0146】
本開示において有用な、flapエンドヌクレアーゼ活性を保有する酵素は、flapエンドヌクレアーゼ1(FEN1:flap endonuclease 1)、T5エキソヌクレアーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、DNAポリメラーゼI及びこれらの誘導体を含むがこれらに限定されない。
[実施例]
【実施例1】
【0147】
FAM標識オリゴヌクレオチドを伴う、従来型のアダプターのライゲーションの、3’アダプターのライゲーションとの比較
根拠:FAM標識オリゴヌクレオチド系を使用して、フィルインアダプター(
図2A)又は3’アダプター(
図3)を使用する平滑ライゲーションについて、基質の、アダプターに対する、異なるモル比で調べて、ライゲーション効率及びキメラ形成に対する効果について検討した。
【0148】
材料:
・オリゴヌクレオチド12−900及び13−426(表1)を含有するフィルインアダプター
・3’アダプター;第1のオリゴヌクレオチド13−340(表1)
・3’アダプター;第2のオリゴヌクレオチドオプション1(3’末端に3’デオキシチミジン遮断塩基を伴う)13−559(表1)
・3’アダプター;第2のオリゴヌクレオチドオプション2(3’末端にリン酸基を伴う)13−558(表1)
・FAM基が基質の5’リン酸へのライゲーションを標識する、オリゴヌクレオチド13−562及び13−563から構成されるFAM基質A(表1)
・FAM基が基質の3’OHへのライゲーションを標識し、基質の対応する5’末端がリン酸を有する、オリゴヌクレオチド13−561及び13−564から構成されるFAM基質B(表1)
・FAM基が基質の3’OHへのライゲーションを標識し、基質の対応する5’末端がリン酸を欠く、オリゴヌクレオチド13−560及び13−564から構成されるFAM基質C(表1)
・T4 DNA Ligase (Rapid)(Enzymatics社製;型番L6030-HC-L)
・10倍濃度のT4 DNA Ligase Buffer(Enzymatics社製;型番B6030)
【0149】
方法:
従来型アダプターのライゲーション反応物を、1倍濃度のT4 DNAリガーゼ緩衝液、10ピコモルのFAM基質A、20若しくは200ピコモルのフィルインアダプター、600unitのT4 DNA Ligase (Rapid)を含むか、又はリガーゼを含まない、10μlの総容量中に集成した。
【0150】
3’アダプターのライゲーション反応物を、1倍濃度のT4 DNAリガーゼ緩衝液、10ピコモルのFAM基質B又は10ピコモルのFAM基質C、20若しくは200ピコモルの3’アダプターオプション1又は20若しくは200ピコモルの3’アダプターオプション2及び600unitのT4 DNA Ligase (Rapid)を含有するか、又はT4 DNAリガーゼを含有しない、10μlの総容量中に集成した。
【0151】
全てのライゲーション反応は、25℃で30分間にわたり実施した。ライゲーション反応物の総容量(10μl)を、2倍濃度のホルムアミドローディングバッファー(97%のホルムアミド、10mMのEDTA、0.01%のブロモフェノールブルー及び0.01%のキシレンシアノール)10μlと混合し、95℃で5分間にわたり加熱し、その後、65℃のオーブン内の、TBE−尿素プレキャスト15%ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen社製;型番S11494)上で泳動させ、Dark readerライトボックス(Clare Chemical Research社製)上で可視化させ、デジタルカメラを使用して撮影した。その後、ゲルを、SYBR(登録商標)Gold核酸ゲル染色色素(Invitrogen社製;型番S11494)で染色した(図示しない)。
【0152】
結果:
FAM基質Aは、フィルインアダプター及びT4 DNAリガーゼの存在下で、ライゲーション産物へと転換された(
図19、レーン1〜2)。この従来型のアダプターのライゲーションは、使用するアダプターの、基質に対する比が2:1に過ぎない場合(
図19、レーン1)、比を20:1とする場合(レーン2)と比較して、ある程度のFAM基質Aによるキメラ形成を示した。T4 DNAリガーゼの非存在下では、ライゲーション産物が観察されなかった(
図19、レーン3)。
【0153】
3’アダプターのライゲーションの異なる状況について、レーン4〜12において調べた(
図19)。レーン4及び5は、FAM基質Bと、3’アダプターオプション1とのライゲーション反応を示す。アダプターの、基質に対する比を、2:1(レーン4)又は20:1(レーン5)としたところ、3’アダプターを伴う場合もあり、伴わない場合もある、高分子量のキメラ産物が形成された。しかし、ライゲーション産物は、アダプターの、基質に対する比を、20:1としたときにより豊富であり、その形成に好適であった(レーン5)。レーン6及び7は、FAM基質Cと、3’アダプターオプション1とのライゲーション反応を示す。反応には、アダプターの、基質に対する比を、20:1としたときが好適であり(レーン7)、キメラ産物は観察されなかった。レーン8及び9は、FAM基質Bと、3’アダプターオプション2とのライゲーション反応を示す。ライゲーション産物は、観察されなかったが、キメラ産物は検出された。レーン10及び11は、FAM基質Cと、3’アダプターオプション2とのライゲーション反応を示す。ライゲーション産物は、観察されなかった。T4 DNAリガーゼの非存在下では、ライゲーション産物が観察されなかった(レーン12)。
【0154】
結論:
従来型アダプターのライゲーションは、FAM基質上の5’リン酸を要求し、これは、フィルインアダプターが過剰に存在しない場合、キメラの形成をもたらした。FAM基質が、5’ヒドロキシ基を有し、3’アダプターの3’デオキシチミジン塩基が遮断されている場合(オプション1)であって、アダプター分子間のライゲーションが防止され、基質とアダプターとの間のライゲーションに好適である場合、3’アダプターのライゲーションは、より効率的であり、キメラも少なかった。いずれの場合にも、アダプターの、基質に対する、20:1の比は、ライゲーション産物の形成に好適であった。
【実施例2】
【0155】
せん断され、サイズ選択された、ゲノムDNAを伴う、従来型のアダプターのライゲーションの、3’アダプターのライゲーションとの比較
根拠
この実験は、物理的にせん断されたゲノムDNAのポリッシングの、従来型のアダプターのライゲーション又は3’アダプターのライゲーションの効率に対する効果について調べるのに実施した。
【0156】
材料:
・オリゴヌクレオチド13−489及び13−426(表1)を含有するフィルインアダプター
・3’アダプター;第1のオリゴヌクレオチド13−340(表1)及び第2のオリゴヌクレオチドオプション1(3’末端に3’デオキシチミジン遮断塩基を含有する)13−559(表1)
・NEBuffer 2(New England Biolabs社製;型番B7002S)
・PCRグレードの100mM 2’デオキシヌクレオシド5’三リン酸(dNTP:2'-deoxynucleoside 5'-triphosphate)セット(Invitrogen(Life technologies)社製;型番10297-018)
・アデノシン5’三リン酸(ATP:Adenosine 5'-Triphosphate)(New England Biolabs社製;型番P0756S)
・DNA Polymerase I, Large (Klenow) Fragment(New England Biolabs社製;型番M0210S)
・T4 DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社製;型番M0203S)
・T4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs社製;型番M0201S)
・エキソヌクレアーゼIII(大腸菌)(New England Biolabs社製;型番M0293S)
・アンタークティックホスファターゼ(New England Biolabs社製;型番M0289S)
・アンタークティックホスファターゼ反応緩衝液(New England Biolabs社製;型番B0289S)
・T4 DNA Ligase (Rapid)(Enzymatics社製;型番L6030-HC-L)
・10倍濃度のT4 DNA Ligase Buffer(Enzymatics社製;型番B6030)
・大腸菌ゲノムDNA ATCC 11303株(Affymetrix社製;型番14380)
・M220 Focused-ultrasonicator(Covaris社製;型番PN 500295)
・Pippin Prep(Sage Science社製)
・CDF2010 2% agarose, dye free w/ internal standards(Sage Science社製)
・DNA Clean & Concentrator-5(Zymo research社製;型番D4004)
・25bpラダーDNAサイズマーカー(Invitrogen(Life technologies)社製;型
番10488-022)
【0157】
方法:
大腸菌ゲノムDNA(gDNA:genomic DNA)を、DNA懸濁緩衝液(Teknova社製;型番T0227)中に、100ng/ulの濃度で再懸濁させた。DNAを、M220 Focused-ultrasonicatorにより、150塩基対の平均サイズへと断片化した。その後、Pippin Prepを使用して、約150bp〜約185bpの緊密なサイズ分布の断片化DNAを、2%のアガロースゲル上で単離した。
【0158】
200ngのサイズ選択されたDNAを、異なる酵素の活性下に置いた。反応物を、1倍濃度のNEBuffer 2、100μMずつの各dNTP、3unitのT4 DNAポリメラーゼ又は5unitのDNA Polymerase I, Large (Klenow) Fragment又は3unitのT4 DNAポリメラーゼ及び5unitのDNA Polymerase I, Large (Klenow) Fragment又は3unitのT4 DNAポリメラーゼ及び5unitのDNA Polymerase I, Large (Klenow) Fragment及び1unitのエキソヌクレアーゼIIIの最終濃度を含む、30μlの総容量中に集成した。別の反応物を、1倍濃度のNEBuffer 2、1mMのATP、10unitのT4ポリヌクレオチドキナーゼの最終濃度を含む、30μlの総容量中に集成した。別の反応物を、1倍濃度のアンタークティックホスファターゼ反応緩衝液及び5unitのアンタークティックホスファターゼの最終濃度を含む、30μlの総容量中に集成した。対照反応物を、1倍濃度のNEBuffer 2を伴う、200ngのサイズ選択されたDNAと共に集成した。全ての反応物を、37℃で30分間にわたりインキュベートし、DNA Clean & Concentrator-5カラムを使用して、DNAを精製した。DNAを、30μlのDNA懸濁緩衝液中に溶出させ、後続の従来型のアダプターのライゲーション又は3’アダプターのライゲーションのための、15μlずつの2つのチューブへと分けた。従来型のアダプターのライゲーション反応物を、1倍濃度のT4 DNAリガーゼ緩衝液、オリゴヌクレオチド13−489(220ピコモル)及び13−426(440ピコモル)を含有するフィルインアダプター、及び1200unitのT4 DNA Ligase (Rapid)を含む、30μlの総容量中に集成した。3’アダプターのライゲーション反応物を、1倍濃度のT4 DNAリガーゼ緩衝液、220ピコモルの3’アダプターの第1のオリゴヌクレオチド、440ピコモルの3’アダプターの第2のオリゴヌクレオチド及び1200unitのT4 DNA Ligase (Rapid)を含有する、30μlの総容量中に集成した。全ての反応物を、DNA Clean & Concentrator-5カラムを使用して精製した。DNAを、10μlのDNA懸濁緩衝液中に再懸濁させ、2倍濃度のホルムアミドローディングバッファー(97%のホルムアミド、10mMのEDTA、0.01%のブロモフェノールブルー及び0.01%のキシレンシアノール)10μlと混合し、95℃で5分間にわたり加熱し、65℃のオーブン内の、TBE−尿素プレキャスト6%ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen社製;型番S11494)上で泳動させた。ゲルを、SYBR(登録商標)Gold核酸ゲル染色色素(Invitrogen社製;型番S11494)で染色し、Dark readerライトボックス(Clare Chemical Research社製)上で可視化させ、デジタルカメラを使用して撮影した。
【0159】
結果:
せん断されたDNA基質上の5’リン酸を要求する、従来型のアダプターのライゲーション反応(
図20、上パネル)は、これを要求しない3’アダプターのライゲーション(
図20、下パネル)より低い効率を示した。ライゲーション反応は、両方いずれの種類のライゲーションについても、DNAを、T4 DNAポリメラーゼ単独(レーン3)又はクレノウと組み合わせたT4 DNAポリメラーゼ(レーン7)又はクレノウプラスエキソヌクレアーゼIIIと組み合わせたT4 DNAポリメラーゼ(レーン8)で処理した後において、より効率的であった。クレノウ、T4ポリヌクレオチドキナーゼ又はアンタークティックホスファターゼ単独(それぞれ、レーン4、5及び6)による処理は、平滑ライゲーションを、非処理DNA(レーン2)と比較して、中程度に増強するに過ぎなかった。レーン9には、緊密な範囲分布の断片化DNAをロードした。
【0160】
結論:
平滑アダプターの、せん断されたDNAへのライゲーションは、このDNAのポリッシングに高度に依存する。強力な5’−3’エキソヌクレアーゼ活性及び5’−3’ポリメラーゼ活性を提示する、T4 DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼは、この目的によく適する。従来型のアダプターのライゲーション反応は、基質の平滑末端上の無傷の5’リン酸の存在に依存する。しかし、3’アダプターのライゲーションは、ライゲーションが、断片化DNAの3’ヒドロキシル末端で生じるので、これに依存しない。せん断されたDNAの5’末端は、T4 DNAポリメラーゼの酵素基質ではないので、これにより、なぜ、3’アダプターが、フィルインアダプター(レーン3)よりライゲーションに成功するのかが説明される。T4 DNAポリメラーゼプラスクレノウ及びエキソヌクレアーゼIIIの組合せは、平滑ライゲーションを著明に増強した。エキソヌクレアーゼIII活性は、DNAの3’末端において損傷を受けた可能性がある3’ヒドロキシル末端を除去することにより、平滑アダプターのライゲーションに要求される平滑末端を産生した。エキソヌクレアーゼIIIはまた、3’ホスファターゼ活性も保有し、これは、3’末端を、DNAポリメラーゼによるポリッシング活性に対してアクセス可能とする。
【実施例3】
【0161】
FAM標識オリゴヌクレオチド基質を使用する、5’アダプターのライゲーションのための温度最適化
根拠:この実験では、ニックトランスレーションにより媒介される5’アダプターのライゲーションの温度依存性及びdNTP組成を評価した。
【0162】
材料:
・ニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチド(13−144)(表1)
・FAMオリゴヌクレオチド基質(13−581)(表1)
・オリゴヌクレオチド鋳型(13−582)(表1)
・PCRグレード100mM 2’デオキシヌクレオシド5’三リン酸(dNTP)セット(Invitrogen(Life technologies)社製;型番10297-018)
・E. coli DNA Ligase(New England Biolabs社製;型番M0205S)
・10倍濃度のE. coli DNA Ligase Reaction Buffer(New England BioLabs社製)
・25U/ulに濃縮されたTaq DNAポリメラーゼ(Genscript社製;型番E00012)
・25bpラダーDNAサイズマーカー(Invitrogen(Life technologies)社製;型番10488-022)
【0163】
方法:
ニックトランスレーション反応物の第1のセットを、1倍濃度の大腸菌DNAリガーゼ緩衝液、30ピコモルのFAMオリゴヌクレオチド基質、45ピコモルのニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチド及び45ピコモルのオリゴヌクレオチド鋳型、200μMのdTTP又はdTTP/dGTPの各々200uMずつ若しくはdATP/dTTP/dGTPの各々200uMずつのミックス並びに2.5unitのTaq DNAポリメラーゼの最終濃度を含むか、又はTaq DNAポリメラーゼを含まない、30μlの総容量中に集成した。反応物を、30℃、40℃又は50℃で30分間にわたりインキュベートした。
【0164】
ニックトランスレーション反応に続くライゲーション反応の反応物の第2のセットを、1倍濃度の大腸菌DNAリガーゼ緩衝液、30ピコモルのFAMオリゴヌクレオチド基質、45ピコモルのニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチド及び45ピコモルのオリゴヌクレオチド鋳型、dATP/dTTP/dGTPの各々200uMずつ、並びに2.5unitのTaq DNAポリメラーゼの最終濃度を含む、30μlの総容量中に集成した。反応物を、50℃、53℃、56℃又は60℃で30分間にわたりインキュベートした。これらの反応物10μlを、ゲル解析のために取り置いた。10unitの大腸菌リガーゼを、残りの20μlへと添加し、25℃で15分間にわたりインキュベートした。さらなる対照反応物を、1倍濃度の大腸菌DNAリガーゼ緩衝液、及び30ピコモルのFAMオリゴヌクレオチド基質の最終濃度を含む、30μl中に集成した。これらの反応物10μlを、2倍濃度のホルムアミドローディングバッファー(97%のホルムアミド、10mMのEDTA、0.01%のブロモフェノールブルー及び0.01%のキシレンシアノール)10μlと混合し、95℃で5分間にわたり加熱し、その後、65℃のオーブン内の、TBE−尿素プレキャスト15%ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen社製;型番S11494)上で泳動させ、Dark readerライトボックス(Clare Chemical Research社製)上で可視化させ、デジタルカメラを使用して撮影した。
【0165】
結果:
図21、パネルAにおいて示されるとおり、Taq DNAポリメラーゼは、その5’flapエンドヌクレアーゼ活性により、FAMオリゴヌクレオチド基質上のヌクレオチドを除去しながら、ニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチドの3’ヒドロキシル末端を伸長させた。dTTPだけ(
図21、レーン2、5、8、パネルA)の添加は、ニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチドの3’末端における、1塩基だけの付加を可能とし、dTTP/dGTP(
図21、レーン3、6、9、パネルA)の添加は、3塩基の付加を可能とし、dTTP/dGTP/dATP(
図21、レーン4、7、10、パネルA)の添加は、4塩基の付加を可能としたが、これらは、FAMオリゴヌクレオチド基質から切断される塩基の数(
図21、パネルA)に比例した。また、FAMオリゴヌクレオチド基質から切断される塩基の数は、反応が生じる温度にも依存した。50℃(
図21、レーン2〜4、パネルA)では、FAMオリゴヌクレオチド基質から切断される塩基の量は、40℃又は30℃で切断される量より大きかった。また、ニックトランスレーションの効率及び切断されるFAMオリゴヌクレオチド基質の量も、反応の温度に高度に依存した。40℃又は30℃では、dTTPだけの添加(
図21、レーン5、8、パネルA)は、50℃で観察されるFAMオリゴヌクレオチド基質の切断(
図21、レーン2、パネルA)を可能としなかった。dTTP/dGTP又はdTTP/dGTP/dATPの添加は、40℃でもある程度の切断を可能とした(レーン6及び7)又は30℃(レーン9及び10)が、有効性は、50℃の場合(レーン3及び4)より小さかった。レーン1(
図21、パネルA)は、Taq DNAポリメラーゼの非存在下におけるFAMオリゴヌクレオチド基質を示す。
【0166】
ニックトランスレーションの効率及び切断されるFAMオリゴヌクレオチド基質の量は、反応の温度に高度に依存した。60℃では、FAMオリゴヌクレオチド基質は、ほぼ完全に小型の分子種へと処理された(
図21、レーン4、パネルB)。FAMオリゴヌクレオチド基質の切断産物のサイズはまた、反応の温度が上昇するにつれて減少もした(
図21、レーン1〜4、パネルB)。レーン5(
図21、パネルB)は、Taq DNAポリメラーゼの非存在下におけるFAMオリゴヌクレオチド基質を示す。ニックトランスレーション反応時に、Taq DNAポリメラーゼは、FAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端を切断し、大腸菌リガーゼが、5’アダプターのオリゴヌクレオチドの3’末端を、FAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端へと共有結合的に結合させるのに不可欠な、末端の5’リン酸を作製する。また、ライゲーション効率も、反応が生じる温度に依存した。ライゲーション産物は、50℃では豊富(レーン6)であり、60℃ではほぼ非存在(レーン9)であり、53℃及び56℃では、中程度量のライゲーション産物が作製された。
【0167】
結論:
ニックトランスレーション時に、FAMオリゴヌクレオチド基質から切断される塩基の数は、反応物中に導入される相補性dNTPと、反応が生じる温度とに依存した。ニックトランスレーション反応時に、Taq DNAポリメラーゼは、FAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端を切断し、大腸菌リガーゼが2つの断片をライゲーションするのに不可欠な、末端の5’リン酸を作製する。高温でニックトランスレーションにより切断されるFAMオリゴヌクレオチド基質は、5’アダプターのオリゴヌクレオチドの3’末端と、FAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端との間に形成される潜在的なギャップのために、大腸菌リガーゼによるライゲーションのための基質として良好でなかった。
【実施例4】
【0168】
dNTP組成の、5’アダプターのライゲーションに対する効果についての解析
根拠:この実験は、変化させるdNTP組成の存在下で生じるニックトランスレーションの程度及びこれとカップリングさせたライゲーション反応に対する効果を評価するのに実施した。
【0169】
材料:
・ニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチド(13−144)(表1)
・FAMオリゴヌクレオチド基質(13−581)(表1)
・オリゴヌクレオチド鋳型(13−582)(表1)
・PCRグレード100mM 2’デオキシヌクレオシド5’三リン酸(dNTP)セット(Invitrogen(Life technologies)社製;型番10297-018)
・25bpラダーDNAサイズマーカー(Invitrogen(Life technologies)社製;型番10488-022)
・E. coli DNA Ligase(Enzymatics社製;型番L6090L)
・10倍濃度のE. coli DNA Ligase Buffer(Enzymatics社製;型番B6090)
・Taq−B DNAポリメラーゼ(Enzymatics社製;型番P7250L)
【0170】
方法:
反応物を、1倍濃度の大腸菌DNAリガーゼ緩衝液、30ピコモルのFAMオリゴヌクレオチド基質、45ピコモルのニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチド及び45ピコモルのオリゴヌクレオチド鋳型、各々200μMずつである4つのdNTP又は各々200μMずつである、dCTP、dTTP、dGTP;若しくはdATP、dTTP、dGTP;若しくはdATP、dCTP、dGTP;若しくはdATP、dTTP、dCTPのミックス(又はdNTPを含まない)、10unitの大腸菌リガーゼ及び10unitのTaq−B DNAポリメラーゼの最終濃度を含む、30μlの総容量中に集成した。全ての反応物を、40℃で30分間にわたりインキュベートした。これらの反応物10μlを、2倍濃度のホルムアミドローディングバッファー(97%のホルムアミド、10mMのEDTA、0.01%のブロモフェノールブルー及び0.01%のキシレンシアノール)10μlと混合し、95℃で5分間にわたり加熱し、その後、65℃のオーブン内の、TBE−尿素プレキャスト15%ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen社製;型番S11494)上で泳動させ、Dark readerライトボックス(Clare Chemical Research社製)上で可視化させ、デジタルカメラを使用して撮影した(下パネル)。その後、ゲルを、SYBR(登録商標)Gold核酸ゲル染色色素(Invitrogen社製;型番S11494)で染色し、Dark readerライトボックス(Clare Chemical Research社製)上で可視化させ、デジタルカメラを使用して撮影した(上パネル)。
【0171】
結果:
図22の最初の2つのレーンは、対照オリゴヌクレオチドを示す。FAM基質は、5’リン酸修飾を欠くため、Taq−B DNAポリメラーゼの非存在下における、大腸菌リガーゼ単独では、5’アダプターのオリゴヌクレオチドを、FAMオリゴヌクレオチド基質へとライゲーションすることができない(
図22、レーン3)。Taq−B DNAポリメラーゼ及び4つのdNTPの存在下では、5’アダプターのオリゴヌクレオチドは伸長し、58塩基の新たな産物を形成し、FAMオリゴヌクレオチド基質は、置換され、Taq−B DNAポリメラーゼの5’flapエンドヌクレアーゼ活性により分解された(
図22、レーン4)。大腸菌リガーゼ、Taq−B DNAポリメラーゼ及びdATP/dTTP/dGTP(
図22、レーン7)又はdCTP/dTTP/dGTP(
図22、レーン6)又はdATP/dTTP/dCTP(
図22、レーン9)の存在下では、ニックトランスレーションは、それぞれ、4、3又は1塩基の付加に限定された。5’アダプターの伸長に伴い、FAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端に、flapが形成された。このflapは、ライゲーションに要求される5’リン酸を創出するTaq−B 5’flapエンドヌクレアーゼ活性のための基質となる。5’アダプターは、FAMオリゴヌクレオチド基質へとライゲーションされ、69塩基の産物を形成した。3又は4塩基のflap(
図22、レーン6及び7)は、1塩基のflap(
図22、レーン9)より効率的にライゲーションを支援した。大腸菌リガーゼ、Taq−B DNAポリメラーゼ及びdATP/dCTP/dGTP(
図22、レーン8)の存在下では、ライゲーション産物に対応する弱いバンドが観察された。ライゲーション活性の弱さは、「非マッチ」塩基(Tの代わりにC又はG)の組み込みに由来するが、これは、一部のFAMオリゴヌクレオチド基質上では、flapの形成をもたらす。大腸菌リガーゼ、Taq−B DNAポリメラーゼの存在下であっても、dNTPの非存在下では、ライゲーション産物は、観察されなかった。大腸菌リガーゼ、Taq−B DNAポリメラーゼ及び4つのdNTPの存在下では、5’アダプターは、FAMオリゴヌクレオチド基質へとライゲーションされ、69塩基の産物を形成した(
図22、レーン5)。5’アダプター及びオリゴヌクレオチド鋳型は、FAMオリゴヌクレオチド基質と比較して過剰に存在したので、ニックトランスレーション産物はまた、58塩基においても観察された(
図22、レーン5、上パネル)。しかし、観察されたライゲーション産物の量は、同じであった。レーンMには、25bpラダーDNAサイズマーカーをロードした。
【0172】
結論:
ライゲーションには、FAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端のリン酸化が要求される。dNTPの存在下では、5’アダプターの伸長を実施するのに、Taq DNAポリメラーゼのポリメラーゼ活性が要求され、これにより、FAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端には、flapが創出される。このflapは、Taq DNAポリメラーゼの5’flapエンドヌクレアーゼ活性の基質として良好であり、大腸菌リガーゼによるライゲーションのための完全な5’リン酸基質を作製する。flapが1つの塩基だけにより形成される場合であってもなおライゲーションは生じる。ライゲーションはまた、4つのdNTP全てが存在する場合にも生じ、flapの長さ又はニックトランスレーションの程度を制限しないことから、ライゲーションは、FAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端において、5’リン酸が創出された直後に生じることが示唆される。
【実施例5】
【0173】
熱安定性酵素を伴う、ニックトランスレーション−ライゲーション反応のカップリング
根拠:この実験は、反応温度及びカップリング反応内のTaq DNAポリメラーゼ酵素のunit数の効果を評価するのに実施した。
【0174】
材料:
・ニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチド(13−144)(表1)
・FAMオリゴヌクレオチド基質(13−581)(表1)
・オリゴヌクレオチド鋳型(13−582)(表1)
・PCRグレード100mM 2’デオキシヌクレオシド5’三リン酸(dNTP)セット(Invitrogen(Life technologies)社製;型番10297-018)
・Taq DNA Ligase(New England Biolabs社製;型番M0208S)
・10倍濃度のTaq DNA ligase Reaction Buffer(New England BioLabs社製)
・25U/ulに濃縮されたTaq DNAポリメラーゼ(Genscript社製;型番E00012)
【0175】
方法:
反応物を、1倍濃度のTaq DNAリガーゼ反応緩衝液、30ピコモルのFAMオリゴヌクレオチド基質、45ピコモルのニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチド及び45ピコモルのオリゴヌクレオチド鋳型、各々200μMずつのdATP、dTTP、dGTP又はdTTP、40unitのTaq DNAリガーゼ、又は80unitのTaq DNAリガーゼ、又は120unitのTaq DNAリガーゼ並びに10unitのTaq DNAポリメラーゼの最終濃度を含む、30μlの総容量中に集成した。反応物を、45℃、50℃、55℃、又は60℃で30分間にわたりインキュベートした。これらの反応物10μlを、2倍濃度のホルムアミドローディングバッファー(97%のホルムアミド、10mMのEDTA、0.01%のブロモフェノールブルー及び0.01%のキシレンシアノール)10μlと混合し、95℃で5分間にわたり加熱し、その後、65℃のオーブン内の、TBE−尿素プレキャスト15%ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen社製;型番S11494)上で泳動させ、Dark readerライトボックス(Clare Chemical Research社製)上で可視化させ、デジタルカメラを使用して撮影した。
【0176】
結果:
Taq DNAポリメラーゼは、その5’flapエンドヌクレアーゼ活性により、FAMオリゴヌクレオチド基質上のヌクレオチドを除去しながら、5’アダプターのオリゴヌクレオチドの3’ヒドロキシル末端を伸長させた。dTTP/dGTP/dATP(
図23、レーン2〜5、パネルA)又はdTTP(
図23、レーン6〜9、パネルA)の添加は、それぞれ、5’アダプターのオリゴヌクレオチドの3’末端における、4及び1塩基の付加、及び後続のFAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端の切断を可能とした。60℃では、ライゲーションが損われた(
図23、レーン5及び9、パネルA)。ライゲーションの効率は、dTTP/dGTP/dATP(
図23、レーン2〜5、パネルA)又はdTTP(
図23、レーン6〜9、パネルA)を添加することの影響を受けなかった。ライゲーション効率は、反応物中に存在するTaq DNAリガーゼの量に依存した。ライゲーション産物は、120unitのTaq DNAリガーゼ(
図23、レーン4、パネルB)を、反応物へと添加する場合に、40又は80unitのTaq DNAリガーゼ(それぞれ、
図23、レーン2及び3、パネルB)場合と比較して、より豊富であった。レーン1、パネルA及びレーン1、パネルBは、酵素を伴わない対照オリゴヌクレオチドを示す。
【0177】
結論:
ニックトランスレーション反応時に、Taq DNAポリメラーゼは、FAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端を切断し、Taq DNAリガーゼが、45℃〜60℃の間で、ライゲーションを実施するのに不可欠な5’リン酸の末端を作製する。60℃では、ライゲーションが低減した。反応物中のTaq DNAリガーゼの濃度はまた、ライゲーションの効率にも影響を及ぼした。120Uの酵素の存在下では、80U及び40Uの場合と比較して、多くの産物が観察された。
【実施例6】
【0178】
置換−切断−ライゲーション反応のカップリング
根拠:この実験は、置換−切断−ライゲーション反応のカップリングにおいて、熱安定性Taq DNAリガーゼ又は熱不安定性大腸菌リガーゼを、Taq DNAポリメラーゼと組み合わせうることを実証するのに実施した。
【0179】
材料:
・置換−切断のための5’アダプターのオリゴヌクレオチド(13−156)(表1)
・FAMオリゴヌクレオチド基質(13−581)(表1)
・オリゴヌクレオチド鋳型(13−582)(表1)
・Taq DNA Ligase(New England Biolabs社製;型番M0208S)
・10倍濃度のTaq DNA ligase Reaction Buffer(New England BioLabs社製)
・25U/ulに濃縮されたTaq DNAポリメラーゼ(Genscript社製;型番E00012)
・E. coli DNA Ligase(New England Biolabs社製;型番M0205S)
・10倍濃度のE. coli DNA Ligase Reaction Buffer(New England BioLabs社製)
【0180】
方法:
反応物を、1倍濃度の大腸菌DNAリガーゼ反応緩衝液又は1倍濃度のTaq DNAリガーゼ反応緩衝液、30ピコモルのFAMオリゴヌクレオチド基質、45ピコモルの置換−切断のための5’アダプターのオリゴヌクレオチド及び45ピコモルのオリゴヌクレオチド鋳型、10unitの大腸菌DNAリガーゼ又は40unitのTaq DNAリガーゼ、並びに10unitのTaq DNAポリメラーゼの最終濃度を含む、30μlの総容量中に集成した。反応物を、40℃又は45℃で30分間にわたりインキュベートした。これらの反応物10μlを、2倍濃度のホルムアミドローディングバッファー(97%のホルムアミド、10mMのEDTA、0.01%のブロモフェノールブルー及び0.01%のキシレンシアノール)10μlと混合し、95℃で5分間にわたり加熱し、その後、65℃のオーブン内の、TBE−尿素プレキャスト15%ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen社製;型番S11494)上で泳動させ、Dark readerライトボックス(Clare Chemical Research社製)上で可視化させ、デジタルカメラを使用して撮影した。
【0181】
結果:
置換−切断のための5’アダプターのオリゴヌクレオチドは、追加のマッチング塩基「T」を、FAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端と重複する、その3’末端に有する。5’アダプターのオリゴヌクレオチドの3’末端が、FAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端を置換すると、Taq DNAポリメラーゼの5’flapエンドヌクレアーゼ活性は、FAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端を切断して、大腸菌リガーゼ(
図24、レーン2、パネルA)又はTaq DNAリガーゼ(
図24、レーン2、パネルB)によるライゲーションに不可欠な5’リン酸を創出する。パネルA及びBのレーン1は、酵素を伴わないオリゴヌクレオチド対照を示す。
【0182】
結論:
dNTPの非存在下では、5’アダプターの伸長は、生じなかった。しかし、Taq DNAポリメラーゼは、FAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端を切断し、大腸菌DNAリガーゼ又はTaq DNAリガーゼがライゲーションを実施するのに不可欠な末端の5’リン酸を作製しうる。
【実施例7】
【0183】
「N」ユニバーサル/縮重5’アダプター3’突出又は「T」基質特異的5’アダプター3’突出を伴う、置換−切断−ライゲーション反応のカップリング
根拠:この実験では、flapエンドヌクレアーゼを使用する、5’アダプターのライゲーションは、5’アダプターの3’末端の突出が、配列特異的なマッチであるか、又はこれが、縮重した非配列特異的な「N」から構成される場合に実施しうることを実証する。
【0184】
材料:
・置換−切断のための5’アダプターのオリゴヌクレオチド「T」(13−607)(表1)
・置換−切断のための5’アダプターのオリゴヌクレオチド「N」(13−596)(表1)
・FAMオリゴヌクレオチド基質(13−581)(表1)
・オリゴヌクレオチド鋳型(13−582)(表1)
・Taq DNA Ligase(New England Biolabs社製;型番M0208S)
・10倍濃度のTaq DNA ligase Reaction Buffer(New England BioLabs社製)
・25U/ulに濃縮されたTaq DNAポリメラーゼ(Genscript社製;型番E00012)
・E. coli DNA Ligase(New England Biolabs社製;型番M0205S)
・10倍濃度のE. coli DNA Ligase Reaction Buffer(New England BioLabs社製)
【0185】
方法:
反応物を、1倍濃度のTaq DNAリガーゼ反応緩衝液、30ピコモルのFAMオリゴヌクレオチド基質、45ピコモルの5’アダプターのオリゴヌクレオチド「T」又は45ピコモルの5’アダプターのオリゴヌクレオチド「N」1又は180ピコモルの5’アダプターのオリゴヌクレオチド「N」又は450ピコモルの5’アダプターのオリゴヌクレオチド「N」及び45ピコモルのオリゴヌクレオチド鋳型、40unitのTaq DNAリガーゼ、並びに10unitのTaq DNAポリメラーゼの最終濃度を含む、30μlの総容量中に集成した。反応物を、45℃若しくは50℃若しくは55℃で30分間にわたり、又は45℃で3分間、65℃で15秒間のサイクル8回にわたりインキュベートした。これらの反応物10μlを、2倍濃度のホルムアミドローディングバッファー(97%のホルムアミド、10mMのEDTA、0.01%のブロモフェノールブルー及び0.01%のキシレンシアノール)10μlと混合し、95℃で5分間にわたり加熱し、その後、65℃のオーブン内の、TBE−尿素プレキャスト15%ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen社製;型番S11494)上で泳動させ、Dark readerライトボックス(Clare Chemical Research社製)上で可視化させ、デジタルカメラを使用して撮影した。
【0186】
結果:
置換−切断のための5’アダプターのオリゴヌクレオチドが、オリゴヌクレオチド鋳型にマッチするその3’末端に、「T」を有する(
図25、レーン3、5、7、パネルA)、(FAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端と重複する)場合、ライゲーションは、5’アダプターのオリゴヌクレオチドが、縮重した「N」塩基を有し、オリゴ合成時に、全ての4つのヌクレオチドがこの位置に存在した(
図25、レーン2、4、6、パネルA)場合であって、オリゴヌクレオチド鋳型に対して完全なマッチとなるのは、4分の1の確率であるに過ぎない場合より、高速で生じた。異なる反応温度(45℃、50℃及び55℃)について調べたが、5’アダプターのオリゴヌクレオチド「N」を使用するライゲーションは改善されなかった(
図25、レーン2、4、6、パネルA)。また、異なる量の5’アダプターのオリゴヌクレオチド「N」(45ピコモル、180ピコモル及び450ピコモル)についても調べたが、ライゲーション反応は改善されなかった(
図25、レーン3〜5、パネルB)。しかし、45℃〜65℃の間における、反応の温度サイクリングは、ライゲーションが、5’アダプターのオリゴヌクレオチドの「T」マッチング塩基の場合と同等の最高速度で生じることを可能とした(
図25、レーン6、パネルB)。パネルA及びBのレーン1は、酵素を伴わないオリゴヌクレオチド対照を示す。
【0187】
結論:
5’アダプターのオリゴヌクレオチド「N」を使用して、置換−切断カップリングさせた、効率的な5’アダプターのライゲーションを可能とするには、Taq DNAリガーゼを作動させるための第1の温度と、オリゴヌクレオチド鋳型と5’アダプターのオリゴヌクレオチド「N」との間の二重鎖を解離させうる第2の温度との間のサイクリングが極めて重要であった。サイクリング条件は、5’アダプターのオリゴヌクレオチド「N」とオリゴヌクレオチド鋳型との間の複数の会合を可能としたが、置換−切断反応が生じたのは、5’アダプターのオリゴヌクレオチドの3’末端塩基が、鋳型との完全なマッチであり、FAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端を置換しうる場合に限られた。
【実施例8】
【0188】
DNAポリメラーゼIを使用する、ニックトランスレーション−ライゲーション反応のカップリング
根拠:この実験では、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を保有するDNAポリメラーゼIはまた、ニックトランスレーションとカップリングさせたアダプターのライゲーション法にも関与しうることを実証する。
【0189】
材料:
・ニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチド(13−144)(表1)
・FAMオリゴヌクレオチド基質(13−581)(表1)
・オリゴヌクレオチド鋳型(13−582)(表1)
・PCRグレード100mM 2’デオキシヌクレオシド5’三リン酸(dNTP)セット(Invitrogen(Life technologies)社製;型番10297-018)
・25bpラダーDNAサイズマーカー(Invitrogen(Life technologies)社製;型番10488-022)
・E. coli DNA Ligase(Enzymatics社製;型番L6090L)
・10倍濃度のE. coli DNA Ligase Buffer(Enzymatics社製;型番B6090)
・Taq−B DNAポリメラーゼ(Enzymatics社製;型番P7250L)
・DNAポリメラーゼI(New England Biolabs社製;型番M0209S)
【0190】
方法:
反応物を、1倍濃度の大腸菌DNAリガーゼ緩衝液、30ピコモルのFAMオリゴヌクレオチド基質、45ピコモルのニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチド及び45ピコモルのオリゴヌクレオチド鋳型、各々200μMずつである4つのdNTP、10unitの大腸菌リガーゼ並びに10unitのTaq−B DNAポリメラーゼ又は5unitのDNAポリメラーゼI又は1unitのDNAポリメラーゼIの最終濃度を含む、30μlの総容量中に集成した。反応物を、40℃、18℃、16℃又は14℃で30分間にわたりインキュベートした。10μlの各反応物を、2倍濃度のホルムアミドローディングバッファー(97%のホルムアミド、10mMのEDTA、0.01%のブロモフェノールブルー及び0.01%のキシレンシアノール)10μlと混合し、95℃で5分間にわたり加熱し、その後、65℃のオーブン内の、TBE−尿素プレキャスト15%ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen社製;型番S11494)上で泳動させ、SYBR goldを伴うか又は伴わずに(それぞれ、上パネル及び下パネル)、Dark readerライトボックス(Clare Chemical Research社製)上で可視化させ、デジタルカメラを使用して撮影した。
【0191】
結果:
図26の第1のレーンは、酵素による制御が存在しないことを示す。Taq−B DNAポリメラーゼ及び大腸菌リガーゼ(
図26、レーン2)の存在下では、5’アダプターのオリゴヌクレオチドは、FAMオリゴヌクレオチド基質へとライゲーションされ、69塩基の産物を産生する(
図26、レーン2、上パネル及び下パネル)か、又は完全に伸長し、58塩基の新たな産物を形成した(
図26、レーン2、上パネル)。69塩基の産物は、Taq−B DNAポリメラーゼによる伸長及びFAMオリゴヌクレオチド基質の5’末端におけるflapの形成に由来した。Taq−B 5’flapエンドヌクレアーゼ活性は、flapを切除し、大腸菌リガーゼにより使用される5’リン酸を作製して、ライゲーションを完成させた。58塩基の産物は、FAMオリゴヌクレオチド基質が、伸長の間に完全に置換され、Taq−B DNAポリメラーゼの5’flapエンドヌクレアーゼ活性により分解される場合に得られた。これらの2つの種類の産物はまた、Taq−B DNAポリメラーゼを、成長しつつあるDNA鎖の前方のヌクレオチドを1つずつ除去し、ニックトランスレーションが生じることを可能とする、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼIにより置き換えた場合(
図26、レーン3〜8)にも形成された。反応は、5unitのDNAポリメラーゼI(
図26、レーン3〜5)又は1unitのDNAポリメラーゼI(
図26、レーン6〜8)により実施した。好熱性のTaq−B DNAポリメラーゼによる反応は、40℃(
図26、レーン2)で実施したが、中温性のDNAポリメラーゼIによる反応は、18℃(
図26、レーン3及び6)、16℃(
図26、レーン4及び7)又は14℃(
図26、レーン5及び8)で実施した。69塩基のライゲーション産物は、全ての場合に得られたが、1unitのDNAポリメラーゼI(
図26、レーン6〜8)だけの添加が、5unit(
図26、レーン3〜5)の場合より効率的であった。これは、それがライゲーションされうる前に、FAMオリゴヌクレオチド基質の迅速な部分的分解を引き起こす、DNAポリメラーゼの極めて強力な5’→3’エキソヌクレアーゼ活性により説明される。分解産物は、下パネルの下方で観察された(
図26、レーン3〜5)。レーンMには、25bpラダーDNAサイズマーカーをロードした。
【0192】
結論:
Taq−B DNAポリメラーゼ(好熱性のポリメラーゼ)及びDNAポリメラーゼI(中温性のポリメラーゼ)のいずれも、ニックトランスレーションに媒介されるライゲーションを実施するのに使用しうるが、完全に活性となるには、異なる条件を要求する。これらはいずれも、69塩基の産物を作製し、これは、5’末端の切除に続くライゲーションの結果であったが、異なる機構が使用されている。Taq−Bが、大腸菌リガーゼによるライゲーションに要求される5’リン酸化末端を産生するのに切除されるflapを創出するのに対し、DNAポリメラーゼIは、成長しつつある鎖の前方のヌクレオチドを1つずつ除去し、5’リン酸化されたヌクレオチドを作製し、これは、2つの断片を接合する大腸菌リガーゼの完全な基質となった。DNAポリメラーゼIを使用して、ニックトランスレーションに媒介される5’アダプターのライゲーションを実施することができる。
【実施例9】
【0193】
ポリッシングは、物理的にせん断されたDNAの平滑ライゲーションに要求され、脱リン酸化は、キメラライゲーション産物の形成を防止する
根拠:この実験では、アダプターの、物理的にせん断されたDNA基質への平滑ライゲーションに対する、末端のポリッシング及び脱リン酸化の重要性を実証する。
【0194】
材料:
・Blue Buffer(Enzymatics社製;型番B0110)
・T4 DNA Ligase (Rapid)(Enzymatics社製;型番L6030-HC-L)
・10倍濃度のT4 DNA Ligase Buffer(Enzymatics社製;型番B6030)
・PCRグレード100mM 2’デオキシヌクレオシド5’三リン酸(dNTP)セット(Invitrogen(Life technologies)社製;型番10297-018)
・アデノシン5’三リン酸(ATP)(New England Biolabs社製;型番P0756S)
・DNA Polymerase I, Large (Klenow) Fragment(New England Biolabs社製;型番M0210S)
・T4 DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社製;型番M0203S)
・T4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs社製;型番M0201S)
・エビアルカリホスファターゼ(Affymetrix社製;型番78390)
・T4 DNA Ligase (Rapid)(Enzymatics社製;型番L6030-HC-L)
・10倍濃度のT4 DNA Ligase Buffer(Enzymatics社製;型番B6030)
・大腸菌ゲノムDNA ATCC 11303株(Affymetrix社製;型番14380)
・M220 Focused-ultrasonicator(Covaris社製;型番PN 500295)
・Pippin Prep(Sage Science社製)
・DNA Clean & Concentrator-5(Zymo research社製;型番D4004)
・CDF2010 2% agarose, dye free w/ internal stds(Sage Science社製)
【0195】
方法
大腸菌gDNAを、DNA懸濁緩衝液(Teknova社製;型番T0227)中に、100ng/ulの濃度で再懸濁させた。DNAを、M220 Focused-ultrasonicatorにより、150塩基対の平均サイズへと断片化した。その後、Pippin Prepを使用して、約150bp〜約185bpの緊密なサイズ分布の断片化DNAを、2%のアガロースゲル上でサイズ選択した。
【0196】
反応物Aのセットでは、100ng又は500ngのサイズ選択されたDNAを、ポリッシング酵素の活性下に置いた。反応物を、1倍濃度のBlue Buffer、100μMずつの各dNTP、3unitのT4 DNA Polymerase、5unitのDNA Polymerase I, Large (Klenow) Fragment、1mMのATP、10unitのT4ポリヌクレオチドキナーゼの最終濃度を含む、30μlの総容量中に集成した。反応物を、30℃で20分間にわたりインキュベートした。DNAを、DNA Clean & Concentrator-5カラムを使用して精製した。DNAを、15μlのDNA懸濁緩衝液中に溶出させ、後続の脱リン酸化反応Bに続いてアダプターのライゲーションを行うか、又は脱リン酸化を伴わずに、直接ライゲーション反応にかけた。脱リン酸化反応物を、処理されたDNA、1倍濃度のBlue Buffer、及び1unitのエビアルカリホスファターゼを含む、30μlの最終容量中に集成した。反応物を、37℃で10分間にわたりインキュベートした。DNAを、DNA Clean & Concentrator-5カラムを使用して精製し、15μlのDNA懸濁緩衝液中に溶出させた。
【0197】
反応物Cのセットでは、100ngのサイズ選択されたDNAを、脱リン酸化に続くポリッシングにかけるか、又は反応物Dのセット内で直接ポリッシングにかけた。脱リン酸化反応物を、処理されたDNA、1倍濃度のBlue Buffer、及び1unitのエビアルカリホスファターゼを含む、30μlの最終容量中に集成した。反応物を、37℃で10分間にわたりインキュベートした。DNAを、DNA Clean & Concentrator-5カラムを使用して精製し、15μlのDNA懸濁緩衝液中に溶出させた。ポリッシング反応物Dを、1倍濃度のBlue Buffer、100μMずつの各dNTP、3unitのT4 DNAポリメラーゼ、5unitのDNA Polymerase I, Large (Klenow) Fragment、(レーン6〜7)の最終濃度を含む、30μlの総容量中に集成した。DNAを、DNA Clean & Concentrator-5カラムを使用して精製し、15μlのDNA懸濁緩衝液中に溶出させた。
【0198】
精製の後で、全ての先行する反応物を、ライゲーション反応にかけた。反応物を、処理されたDNA、1倍濃度のT4 DNAリガーゼ反応緩衝液及び1200unitのT4 DNAリガーゼを含む、30μlの最終容量中に集成した。反応物を、25℃で15分間にわたりインキュベートした。各ライゲーション反応からの33ngずつのDNAを、2倍濃度のホルムアミドローディングバッファー(97%のホルムアミド、10mMのEDTA、0.01%のブロモフェノールブルー及び0.01%のキシレンシアノール)と混合し、95℃で5分間にわたり加熱し、その後、65℃のオーブン内の、TBE−尿素プレキャスト15%ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen社製;型番S11494)上で泳動させ、SYBR Goldで染色し、Dark readerライトボックス(Clare Chemical Research社製)上で可視化させ、デジタルカメラを使用して撮影した。
【0199】
結果:
ポリッシング前には、物理的にせん断されたDNAは、T4 DNAリガーゼによる平滑末端アダプターへのライゲーションに適する基質ではなかった(
図27、レーン1)。T4ポリヌクレオチドキナーゼ、T4 DNAポリメラーゼ及びクレノウ断片によるポリッシング後に、DNA末端は平滑化され、一部の5’末端はリン酸化され、分子は、互いに連鎖又はライゲーションされうるほか、平滑アダプターへも連鎖又はライゲーションされうる(
図27、レーン2及び4)。約325塩基、約500塩基及び500塩基超における分子種は、それぞれ、約175塩基ずつを、2分子、3分子及び4分子として併せたライゲーションに対応する(
図27、レーン2及び4)。DNAの濃度は、ライゲーション産物の形成に影響を及ぼした。高DNA濃度では、高分子量のキメラライゲーション種が、より豊富であった(
図27、レーン4)。ポリッシングステップ後における、DNAの、エビアルカリホスファターゼによる処理は、DNA分子間のコンカテマー形成を損った(
図27、レーン3及び5)。エビアルカリホスファターゼによる処理はまた、断片化DNAのポリッシングの前に実施した場合にも、コンカテマー形成を防止した(
図27、レーン6)。T4 DNAポリメラーゼ及びクレノウ断片によるポリッシング後に観察されるライゲーション産物(
図27、レーン7)は、T4 DNAポリメラーゼ、クレノウ及びT4ポリヌクレオチドキナーゼによるポリッシングの場合と比較して豊富ではなかった(
図27、レーン2)。
【0200】
結論:
物理的にせん断されたDNAの平滑ライゲーション効率は、DNAポリメラーゼによる末端のポリッシングに依存した。ライゲーションはまた、DNA断片の5’末端をリン酸化し、3’末端を脱リン酸化する、T4ポリヌクレオチドキナーゼの添加によっても改善された。DNAの濃度はまた、ライゲーション及びキメラ産物の形成の量にも影響を及ぼした。高濃度では、DNAは、T4 DNAリガーゼの存在下で、キメラ産物を形成する可能性が高かった。アルカリホスファターゼは、5’リン酸(ライゲーションに要求される)を除去し、キメラライゲーション産物(コンカテマー)の形成を防止する。
【実施例10】
【0201】
アダプターのライゲーション反応とカップリングさせた5’塩基のトリミングを使用して調製されると、NGSライブラリーは、収率を増大させた
根拠:この実験では、NGSライブラリーの構築へのそれらの例示的適用において提示される反応の有用性、特に、5’アダプターのライゲーションとカップリングさせた5’塩基のトリミングを組み入れることから生じるライブラリー収率の増大を実証する。ライブラリーは、せん断されたDNAのサイズ選択から構築したので、ライブラリー産物は、ゲル電気泳動により容易に可視化することができた。
【0202】
材料:
・Blue Buffer(Enzymatics社製;型番B0110)
・T4 DNA Ligase (Rapid)(Enzymatics社製;型番L6030-HC-L)
・10倍濃度のT4 DNA Ligase Buffer(Enzymatics社製;型番B6030)
・PCRグレード100mM 2’デオキシヌクレオシド5’三リン酸(dNTP)セット(Invitrogen(Life technologies)社製;型番10297-018)
・アデノシン5’三リン酸(ATP)(New England Biolabs社製;型番P0756S)
・クレノウ断片(Enzymatics社製;型番P7060L)
・T4 DNAポリメラーゼ(Enzymatics社製;型番P7080L)
・T4ポリヌクレオチドキナーゼ(Enzymatics社製;型番Y904L)
・エビアルカリホスファターゼ(Affymetrix社製;型番78390)
・T4 DNA Ligase (Rapid)(Enzymatics社製;型番L6030-HC-L)
・10倍濃度のT4 DNA Ligase Buffer(Enzymatics社製;型番B6030)
・3’アダプター;第1のオリゴヌクレオチド13−501(表1)
・3’アダプター;第2のオリゴヌクレオチド13−712(表1)
・大腸菌ゲノムDNA ATCC 11303株(Affymetrix社製;型番14380)
・M220 Focused-ultrasonicator(Covaris社製;型番PN 500295)
・E. coli DNA Ligase(Enzymatics社製;型番L6090L)
・E. coli DNA Ligase Buffer(Enzymatics社製;型番B6090)
・ウラシルDNAグリコシラーゼ(Enzymatics社製;型番G5010L)
・Taq−B DNAポリメラーゼ(Enzymatics社製;型番P7250L)
・ニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチド(13−489)(表1)
・置換−切断のための5’アダプターのオリゴヌクレオチド(13−595)(表1)
・Taq DNAリガーゼ(Enzymatics社製;型番L6060L)
・SPRIselect(Beckman coulter社製;型番B23419)
【0203】
方法:
大腸菌ゲノムDNAを、DNA懸濁緩衝液(Teknova社製;型番T0227)中に、100ng/μlの濃度で再懸濁させた。DNAを、M220 Focused-ultrasonicatorにより、150塩基対の平均サイズへと断片化した。その後、Pippin Prepを使用して、約150bp〜約185bpの緊密な分布の断片化DNAを、2%のアガロースゲル上でサイズ選択した。
【0204】
100ngのサイズ選択された大腸菌ゲノムDNAを、増強されたアダプターのライゲーション法によりライブラリーを調製するのに使用した。ポリッシング反応物を、1倍濃度のBlue Buffer、各々100μMずつのdNTP、3unitのT4 DNAポリメラーゼ、5unitのDNA Polymerase I, Large (Klenow) Fragment、10unitのT4ポリヌクレオチドキナーゼの最終濃度を含む、30μl中に集成した。反応物を、37℃で20分間にわたりインキュベートした。DNA Clean & Concentrator-5を使用して、DNAを精製し、DNA懸濁緩衝液を伴う15μl中に溶出させた。3’アダプターのライゲーション反応物を、1倍濃度のT4 DNAリガーゼ緩衝液、220ピコモルの3’アダプターの第1のオリゴヌクレオチド、440ピコモルの3’アダプターの第2のオリゴヌクレオチド、15μlの精製DNA及び1200unitのT4 DNAリガーゼを含む、30μl中に集成した。反応物を、25℃で15分間にわたりインキュベートした。DNAを、50μlの容量とし、70μlのSPRIselectビーズ(1.4倍の比)を使用して、精製及びサイズ選択した。DNAを、15μlのDNA再懸濁緩衝液中に溶出させた。3’アダプターの部分的分解、5’アダプターのアニーリング、5’末端のトリミング及び5’アダプターのライゲーションの全ては、次の反応物であって、1倍濃度の大腸菌DNAリガーゼ緩衝液又は1倍濃度のTaq DNAリガーゼ緩衝液、各々200μMずつのdNTP又は各々200μMずつのdATP、dTTP、dGTP(又はdNTPを含まない)、200ピコモルのニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチド又は置換−切断のための5’アダプターのオリゴヌクレオチド、10unitの大腸菌リガーゼ又は40unitのTaq DNAリガーゼ、2unitのウラシルDNAグリコシラーゼ、10unitのTaq−B DNAポリメラーゼ及び3’アダプターのライゲーション反応後において精製された15μlのDNAを含有する、30μlの最終容量中に集成された反応物中で行った。反応物を、40℃又は45℃で10分間にわたり、又は(45℃で45秒間〜65℃で5秒間にわたる)の30サイクルでインキュベートした(ライブラリー5)。DNAを、50μlの容量とし、40μlのSPRIselectビーズ(0.8倍の比)を使用して、精製及びサイズ選択した。DNAを、20μl中に溶出させ、Kapa Library Quantification Kit - Illumina/Universal(型番KK4824)を使用するqPCRにより定量化した。
【0205】
結果:
ライブラリー濃度は、プロット(
図28、パネルA)上で報告し、ライブラリーは、6%のポリアクリルアミドゲル上で、変性条件下における電気泳動により可視化した(
図28、パネルB)。インプットDNAは、約150塩基〜約185塩基の間を移動した(
図28、レーンI、パネルB)。3’アダプターのライゲーションステップ後にアリコートを採取し、ゲル上にロードした。この産物は、64塩基の3’アダプターの付加に対応する、約225〜約250塩基の間を移動した(
図28、レーンL、パネルB)。5’アダプターのライゲーションの前の、DNAの5’末端における、1又は2以上の塩基の除去及び5’リン酸基の露出における、Taq−B DNAポリメラーゼの寄与を、ライブラリー2と対比したライブラリー1において実証した(
図28、レーン1及び2、パネルA及びB)。Taq−Bを伴わずに作製されたライブラリー1の濃度(2.6nM)は、Taq−B DNAポリメラーゼを伴って作製されたライブラリー2の濃度(7.9nM)の3分の1である。T4ポリヌクレオチドキナーゼによる処理の後であってもなお、断片化DNAのうちの75%は、ライゲーション適合性とするために、それらの5’末端の処理を要求した。完成したライブラリーもまた、ゲル上にロードした(
図28、レーン1及び2、パネルB)。これらのライブラリーは、58塩基のニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチド又は置換−切断のための5’アダプターのオリゴヌクレオチド及び64塩基の3’アダプターの付加に対応する、約275塩基〜約300塩基の間を移動した。ライブラリー1の産物が提示されるときの強度は、ライブラリー2のバンドより小さかった(
図28、パネルB)。ライブラリー3及び4は、それぞれ、3’アダプターの部分的分解ステップ、5’アダプターのアニーリングステップ、5’末端のトリミングステップ及び5’アダプターのライゲーションステップにおいて、dATP、dTTP、dGTP及び大腸菌リガーゼ又はTaq DNAリガーゼにより作製された。ライブラリー3の濃度(4.8nM)は、ライブラリー2の濃度(7.9nM)の約60%であった。この収率の30%の喪失は、大腸菌ゲノム内のシトシン「C」の比率(25%)と関連する。DNA基質の5’末端がシトシンであるたびに、Taqにより、ニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチドを伸長することができず、5’末端をトリミングすることもできない。また、DNA基質の5’末端において、2及び3の連続シトシンを有するさらなる確率も、それぞれ、6.25%及び1.5%存在する。Taq DNAリガーゼによる、45℃におけるライゲーション(ライブラリー4)も、40℃における大腸菌リガーゼ(5.2nM)(ライブラリー3)と比較して、同様の収率(4.8nM)をもたらした。置換−切断のための5’アダプターのオリゴヌクレオチドにより作製されたライブラリー5(4.2nM)は、ニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチドにより作製されたライブラリー2(7.9nM)ほど効率的ではなかった。
【0206】
結論:
開示されるアダプターのライゲーション法によるライブラリーの作製は成功した。Taq DNAポリメラーゼによる5’末端DNAのトリミングは、5’末端の処理ステップを有さないライブラリーと比較した場合、5’アダプターのライゲーション産物の収率の3倍の増大を可能とする(ライブラリー2と対比したライブラリー1)。Taq DNAリガーゼ(ライブラリー4)及び大腸菌リガーゼ(ライブラリー3)のいずれも、ニックトランスレーションの後で、5’アダプターを効率的にライゲーションした。Taq DNAリガーゼはまた、置換−切断の後でも、5’アダプターをライゲーションした(ライブラリー5)。ニックトランスレーション時に、3つのdNTP(ライブラリー3及び4)の代わりに、4つのdNTP(ライブラリー2)を使用することにより、より多くのDNA基質の、5’アダプターへのライゲーションを可能とすることができる。
【実施例11】
【0207】
アダプターのライゲーションとカップリングさせた5’塩基のトリミングを使用して調製されたNGSライブラリーについての配列解析
根拠:この実験では、NGSライブラリーの構築へのそれらの例示的適用において提示される反応の有用性を実証する。ライブラリーは、せん断された大腸菌DNAから構築し、次いで、ゲノムの広範な塩基組成にわたり得られるカバレッジの優れた均一性を実証するために、シークエンシングした。
【0208】
材料:
・Blue Buffer(Enzymatics社製;型番B0110)
・T4 DNA Ligase (Rapid)(Enzymatics社製;型番L6030-HC-L)
・10倍濃度のT4 DNA Ligase Buffer(Enzymatics社製;型番B6030)
・PCRグレード100mM 2’デオキシヌクレオシド5’三リン酸(dNTP)セット(Invitrogen(Life technologies)社製;型番10297-018)
・アデノシン5’三リン酸(ATP)(New England Biolabs社製;型番P0756S)
・クレノウ断片(Enzymatics社製;型番P7060L)
・T4 DNAポリメラーゼ(Enzymatics社製;型番P7080L)
・T4ポリヌクレオチドキナーゼ(Enzymatics社製;型番Y904L)
・エビアルカリホスファターゼ(Affymetrix社製;型番78390)
・T4 DNA Ligase (Rapid)(Enzymatics社製;型番L6030-HC-L)
・10倍濃度のT4 DNA Ligase Buffer(Enzymatics社製;型番B6030)
・3’アダプター;第1のオリゴヌクレオチド13−510(表1)
・3’アダプター;第2のオリゴヌクレオチド13−712(表1)
・大腸菌ゲノムDNA ATCC 11303株(Affymetrix社製;型番14380)
・M220 Focused-ultrasonicator(Covaris社製;型番PN 500295)
・E. coli DNA Ligase(Enzymatics社製;型番L6090L)
・E. coli DNA Ligase Buffer(Enzymatics社製;型番B6090)
・ウラシルDNAグリコシラーゼ(Enzymatics社製;型番G5010L)
・Taq−B DNAポリメラーゼ(Enzymatics社製;型番P7250L)
・ニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチド(13−489)
・SPRIselect(Beckman coulter社製;型番B23419)
【0209】
方法:
大腸菌ゲノムDNAを、DNA懸濁緩衝液(Teknova社製;型番T0227)中に、100ng/μlの濃度で再懸濁させた。DNAを、M220 Focused-ultrasonicatorにより、150塩基対の平均サイズへと断片化した。100ngの大腸菌covaris社ゲノムDNAを使用して、ライブラリーを調製した。第1の脱リン酸化反応物を、1倍濃度のBlue Buffer、100ngの断片化された大腸菌ゲノムDNA及び1unitのエビアルカリホスファターゼの最終濃度を含む、15μlの総容量中に集成した。反応物を、37℃で10分間にわたりインキュベートした。エビアルカリホスファターゼは、65℃で5分間にわたり不活化させた。ポリッシング反応物を、1倍濃度のBlue Buffer、各々100μMずつのdNTP、3unitのT4 DNAポリメラーゼ、5unitのDNA Polymerase I, Large (Klenow) Fragment及び15μlの脱リン酸化反応物の最終濃度を含む、30μl中に集成した。反応物を、20℃で30分間にわたりインキュベートした。DNA Clean & Concentrator-5を使用して、DNAを精製した。DNAを、DNA懸濁緩衝液を伴う15μl中に溶出させた。3’アダプターのライゲーション反応物を、1倍濃度のT4 DNAリガーゼ緩衝液、220ピコモルの3’アダプターの第1のオリゴヌクレオチド、440ピコモルの3’アダプターの第2のオリゴヌクレオチド、ポリッシング後において精製された15μlのDNA及び1200unitのT4 DNAリガーゼを含む、30μl中に集成した。反応物を、25℃で15分間にわたりインキュベートした。容量を50μlへと調整した後で、45μlのSPRIselectビーズ(0.9倍の比)を使用して、DNAを精製及びサイズ選択した。DNAを、15μlのDNA再懸濁緩衝液中に溶出させた。3’アダプターの部分的分解、5’アダプターのアニーリング、5’末端のDNAトリミング及び5’アダプターのライゲーションの全ては、次の反応物であって、1倍濃度の大腸菌DNAリガーゼ、各々200μMずつのdNTP、200ピコモルのニックトランスレーションのための5’アダプターのオリゴヌクレオチド、10unitの大腸菌リガーゼ、2unitのウラシルDNAグリコシラーゼ、10unitのTaq−B DNAポリメラーゼ及び3’アダプターのライゲーション反応後において精製された15μlのDNAを含有する、30μlの最終容量中に集成された反応物中で行った。反応物を、40℃で10分間にわたりインキュベートした。容量を50μlへと調整した後で、70μlのSPRIselectビーズ(1.4倍の比)を使用して、DNAを精製した。DNAを、20μl中に溶出させ、Kapa Library Quantification Kit - Illumina/Universal(型番KK4824)を使用するqPCRにより定量化した。DNAを、最終濃度を0.1mMとする水酸化ナトリウムで5分間にわたり変性させ、600μlの10pMのライブラリーを、MiSeq(Illumina社製)上にロードした。
【0210】
結果:
qPCRにより定量化されたライブラリー濃度は、2.8nMであった。76塩基のペアエンドリードは、Illumina社製MiSeqのv2化学反応により作製した。928K/mm
2のクラスターが作製され、スコアQ30は、第1のリード及び第2のリードについて、それぞれ、97.8%及び96.9%であった。配列データの品質は、FastQC報告書(Babraham Bioinformatics社製)を使用して評価した。解析の概要は、緑色のチェックマーク9つ、黄色のエクスクラメーションマーク(警告)2つを示したが、赤色の×マーク(不合格)は、観察されなかった(
図29、パネルA)。全配列中の全塩基の全体的なGC%は、大腸菌ゲノムについて予測されるとおり、50%であった(緑色のチェックマーク、
図29、パネルB)。配列の品質は、解析された76塩基を通して、あらゆるリードにおいて優良であった(緑色のチェックマーク、
図29、パネルC)。各塩基の比率を、パネルDにプロットした。G/C量とA/T量との差違は、任意のリードにおいて、10%未満であった(緑色のチェックマーク、
図29、パネルD)。GC含量は、解析された76塩基を通して、同様であった(緑色のチェックマーク、
図29、パネルE)。各配列の全長にわたるリードごとのGC含量を、理論的分布と比較した(黄色のエクスクラメーションマーク、
図29、パネルF)。警告は、15%を超えるリードにおいて、正規分布からの偏差和が見出されたために発せられた(黄色のエクスクラメーションマーク、
図29、パネルF)。「塩基ごとのN含量」又は「配列長の分布」については、警告が発せられなかった(「概要」、
図29、パネルA)。「配列の複製レベル」は、35.85%であった(
図29、パネルG)。黄色の警告は、135倍という高レベルのカバレッジで、非固有の配列が、全体のうちの20%超を占めるために発せられた(黄色のエクスクラメーションマーク、
図29、パネルG)。過剰表示配列又はkマーは、報告されなかった(「概要」、
図29、パネルA)。事実上、アダプター二量体は、観察されなかった(0.02%、データは図示しない)。また、GCバイアスも、Picard CollectGcBiasMetricsを使用して査定した。カバレッジの均一性は、広範にわたる塩基組成を通じて保存された。カバレッジの偏差が観察されるのは、GC含量が、10%未満であるか又は80%を超える場合に限られた。塩基品質は、塩基コールにおける99.8%の確度に対応する、Q25を上回った。ここでもまた、低品質が観察されるのは、GC含量が極度に低値の場合と極度に高値の場合に限られた。
【0211】
結論:
断片化された大腸菌ゲノムDNAを使用するライブラリーの作製に成功した。シークエンシングは、GC含量の範囲を通じて、データ品質が高く、カバレッジにバイアスが見られないことを実証した。
【実施例12】
【0212】
TP53遺伝子の包括的カバレッジと組み合わされた、がんホットスポットパネル
根拠:合計51のアンプリコンを、TP53遺伝子の全コード領域のほか、がんの臨床で適用可能な変異を表す、30のホットスポット遺伝子座もカバーするように設計した。
【0213】
根拠:このアンプリコンパネルは、開示される方法についての概念実証であって、51のアンプリコンが、反応に大きく影響するミニアンプリコンの非存在のほか、限定的なマルチプレックスサイクル数を使用して達成しうる、アンプリコン間のカバレッジの均一性も実証するように著明な重複を有する概念実証を提供する。加えて、シークエンシングされたライブラリー内に、プライマー二量体、及び非特異的な、オフターゲットの増幅産物が現れないため、高比率の標的リードが、プライミングの特異性を実証する。
【0214】
材料:
・ヒトHapMapゲノムDNA(Coriell Institute、NA12878)
・KAPA HiFi HotStart Uracil+ ReadyMix(KAPA Biosystems社製;型番KK2802)
・102の標的特異的プライマー(表2)
・3’アダプターのオリゴヌクレオチドの短縮配列及び切断性塩基を含有するユニバーサルプライマー14−882(表2)
・E. coli DNA Ligase Buffer(Enzymatics社製;型番B6090)
・アダプターのライゲーションステップのための、5’アダプターのオリゴヌクレオチド(14−571)
・アダプターのライゲーションステップのための、3’アダプターのオリゴヌクレオチドの5’部分(14−877)
・アダプターのライゲーションステップのための、リンカーオリゴヌクレオチド14−382(表2)
・E. coli DNA Ligase(Enzymatics社製;型番L6090L)
・ウラシルDNAグリコシラーゼ(Enzymatics社製;型番G5010L)
・エンドヌクレアーゼVIII(Enzymatics社製;型番Y9080L)
・Taq−B DNAポリメラーゼ(Enzymatics社製;型番P7250L)
・SPRIselect(Beckman coulter社製;型番B23419)
・精製ステップのための、20%のPEG-8000/2.5MのNaCl溶液
【0215】
方法:
ヒトゲノムDNAを、DNA懸濁緩衝液(Teknova社製;型番T0227)中に、2ng/μlの濃度で希釈した。2分間にわたりボルテックスすることにより、DNAを軽くせん断した。この10ngのせん断されたゲノムDNAを使用して、ライブラリーを調製した。増幅の第1の反応物を、1倍濃度のKAPA HiFi HotStart Uracil+ ReadyMix、10ngのせん断されたヒトゲノムDNA、300ピコモルのユニバーサルプライマー及び最終濃度を0.85uMとされ、異なる比で存在する、102の標的特異的プライマーのミックスの最終濃度を含む、30μlの総容量中に集成した。この反応物を、以下のサイクリングプログラム:95℃で3分間に続いて、98℃で20秒間、63℃で5分間及び72℃で1分間の4サイクルにかけて、標的特異的アンプリコンを作製し、98℃で20秒間及び64℃で1分間の23サイクルにより終結させて、標的特異的アンプリコンの複数のコピーを産生した。容量を50μlへと調整した後で、60μlのSPRIselectビーズ(1.2倍の比)を使用して、DNA産物を精製した。ビーズを、1倍濃度の大腸菌リガーゼ緩衝液、100ピコモルのリンカーオリゴヌクレオチド、10unitの大腸菌リガーゼ、10unitのエンドヌクレアーゼVIII、2unitのウラシルDNAグリコシラーゼ、20unitのTaq−B DNAポリメラーゼ、100ピコモルの5’アダプターのオリゴヌクレオチド及び100ピコモルの3’アダプターのオリゴヌクレオチドの5’部分を含有する1倍濃度の反応物ミックス50μl中に再懸濁させた。反応物を、37℃で10分間にわたりインキュベートし、次いで、42.5μlの20%のPEG-8000/2.5MのNaCl溶液(0.85倍の比)を添加することにより精製した。DNAを、20μl中に溶出させ、Kapa Library Quantification Kit - Illumina/Universal(型番KK4824)を使用するqPCRにより定量化した。DNAを、最終濃度を0.1mMとする水酸化ナトリウムで5分間にわたり変性させ、600μlの10pMのライブラリーを、MiSeq(Illumina社製)上にロードした。
【0216】
結果:
qPCRにより定量化されたライブラリー濃度は、19.1nMであった。101塩基のペアドエンドリードは、Illumina社製MiSeqのv2化学反応により作製した。データ解析の前に、Cutadaptプログラムを使用して合成プライマー配列を除去するように、リード1及びリード2の両方の5’末端からの配列特異的トリミングを実施した。BWA-MEMツールを使用して、ヒトゲノム及びターゲティングされる領域へと対合させたリードのアライメントは、例外的な高品質データを示し、98%が、ターゲティングされる領域へと配列決定された。また、BEDtoolsを使用して、カバレッジデータも得た。カバレッジの均質性は、100%であったが、これは、51のアンプリコンの各々が、最終的なライブラリー内で表示されることを意味する。また、各アンプリコン内の各個別の塩基のカバレッジも計算したところ、塩基ごとの平均カバレッジより20%大きかったが、これは、51のアンプリコンのうちのいずれも、最終産物内で過小表示されないことを意味する。
図45は、TP53遺伝子のコードエクソンをカバーする重複アンプリコンについて得られたカバレッジについて描示する。
図46は、VarScan及びSAMtoolsを使用する配列解析により得られた、頻度18%のバリアントのコールについて描示する。
【0217】
結論:
ターゲティング型アンプリコンライブラリーは、ヒトゲノムDNAを使用する作製に成功した。シークエンシングは、高品質データを実証した。
【0218】
【表1】
【0219】
【表2】
【0220】
前出の開示を、以下の番号付けされた項において提供される、本開示の多様な態様及び実施形態についての以下の記載により補足する。
1.処理された基質分子を産生する方法であって、
(i)第1のポリヌクレオチドを、少なくとも部分的に二本鎖である基質分子の3’末端へとライゲーションするステップと;
(ii)アニーリングを促進する条件下で、第2のポリヌクレオチドを、第1のポリヌクレオチドとアニールさせるステップと;
(iii)少なくとも1つのヌクレオチドを、基質分子の5’末端から切除するステップと;次いで、
(iv)第2のポリヌクレオチドを、二本鎖基質分子の5’末端へとライゲーションして、処理された基質分子を産生するステップと
を含む方法。
2.ステップ(i)の前に、基質分子を、ホスファターゼ酵素と接触させるステップをさらに含む、項1の方法。
3.基質分子を、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を保有するポリメラーゼ酵素と接触させることにより、平滑末端化された基質分子を作製するステップをさらに含む、項2の方法。
4.基質分子を、鋳型非依存性ポリメラーゼと接触させて、基質分子の3’末端をアデニル化するステップをさらに含む、項3の方法。
5.基質分子が、天然に存在するか、又は基質分子が、合成である、項1〜4のいずれかの方法。
6.基質分子が、天然に存在する、項5の方法。
7.基質分子が、ゲノムDNAである、項6の方法。
8.ゲノムDNAが、真核生物ゲノムDNA又は原核生物ゲノムDNAである、項7の方法。
9.ゲノムDNAを、インビトロ又はインビボで断片化する、項7又は8の方法。
10.インビトロにおける断片化を、せん断、エンドヌクレアーゼによる切断、超音波処理、加熱、アルファ線源、ベータ線源、又はガンマ線源を使用する照射、金属イオンの存在下における化学的切断、ラジカルによる切断、及びこれらの組合せからなる群から選択される工程により実施する、項9の方法。
11.インビボにおける断片化を、アポトーシス、放射線、及びアスベストへの曝露からなる群から選択される工程により行う、項9の方法。
12.基質分子が、合成であり、cDNA、全ゲノム増幅により産生されるDNA、少なくとも1つの二本鎖末端を含むプライマー伸長産物、及びPCRアンプリコンからなる群から選択される、項5の方法。
13.第1のポリヌクレオチドが、少なくとも部分的に二本鎖であり、オリゴヌクレオチド1及びオリゴヌクレオチド2を含む、項1〜12のいずれかの方法。
14.第2のポリヌクレオチドが、オリゴヌクレオチド1とアニールする、項13の方法。
15.アニーリングが、ニック、ギャップ、又は第2のポリヌクレオチドと基質分子との重複塩基を結果としてもたらす、項14の方法。
16.第2のポリヌクレオチドを、ポリメラーゼと接触させ、その結果、オリゴヌクレオチド2の分解をもたらす、項14又は15の方法。
15.オリゴヌクレオチド2が、分解を受けやすい塩基を含む、項13〜16のいずれかの方法。
16.オリゴヌクレオチド2が、ライゲーションを防止する、その3’末端における遮断基を含む、項13〜17のいずれかの方法。
17.第2のポリヌクレオチドが、修飾塩基を含む、項1〜16のいずれかの方法。
18.アニーリングが、オリゴヌクレオチド1とオリゴヌクレオチド2とのデハイブリダイゼーションを結果としてもたらす、項14の方法。
19.(i)第3のポリヌクレオチドを、少なくとも部分的に二本鎖である、さらなる基質分子の3’末端へとライゲーションするステップと;
(ii)アニーリングを促進する条件下で、第4のポリヌクレオチドを、第3のポリヌクレオチドへとアニールさせるステップと;
(iii)少なくとも1つのヌクレオチドを、さらなる基質分子の5’末端から切除するステップと;次いで、
(iv)第4のポリヌクレオチドを、二本鎖のさらなる基質分子の5’末端へとライゲーションして、処理された、さらなる基質分子を産生するステップと
をさらに含む、項1〜18のいずれかの方法。
20.第1のポリヌクレオチドと第3のポリヌクレオチドとが、同じである、項19の方法。
21.第2のポリヌクレオチドと第4のポリヌクレオチドとが、同じである、項19又は20の方法。