(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1〜
図6を参照して、本発明の第1実施形態によるトンネル掘進機1および掘削ツール交換装置100について説明する。以下では、トンネル掘進機1が、シールド掘進機である例を説明する。
【0024】
(トンネル掘進機の全体構成)
図1に示すように、トンネル掘進機1は、筒状の胴体2と、カッタヘッド3と、カッタ駆動部4と、掘削ツール交換装置100と、を備えている。
【0025】
図1では、カッタヘッド3の支持方式として中間支持方式を採用した中〜大口径タイプのシールド掘進機を例示している。中間支持方式では、カッタヘッド3は、回転駆動される円環状の支持部材5に対して、カッタコラム6を介して取り付けられている。カッタコラム6は、支持部材5とカッタヘッド3とを接続する脚部である。支持部材5は、後述する前胴部2aの隔壁(バルクヘッド)7に設けられた旋回台軸受8により回転可能に支持されている。
【0026】
トンネル掘進機1は、
図1中の左方向(X1方向)に掘進する。
図1中、カッタヘッド3に対して左側が掘進中のトンネルの切羽側であり、右側がトンネルの反切羽側(坑口側)である。各図において、掘進方向の前後方向をX方向とし、掘進方向の前方(切羽側)をX1方向とし、掘進方向の後方(反切羽側)をX2方向として図示している。以下では、単に前方、前面というとき、掘進方向の前方(X1方向、切羽側)を意味し、後方、後側というとき、掘進方向の後方(X2方向、反切羽側)を意味する。
【0027】
トンネル掘進機1の胴体2は、前胴部2aと後胴部2bとを含む。胴体2は、掘進方向の前側の前胴部2aと、後側の後胴部2bとに分割されている。前胴部2aおよび後胴部2bは、たとえば円筒状に形成されている。前胴部2aは、掘進方向の前側が隔壁7によって塞がれており、隔壁7に設けられた旋回台軸受8を介して、カッタヘッド3を前胴部2aの前端面の位置に保持している。後胴部2bは、前胴部2aの掘進方向後端部に連結されている。
【0028】
カッタヘッド3は、中心軸線A回りに回転するように構成されている。カッタヘッド3は、掘進方向から見て前胴部2aの端面形状に対応した形状に形成されている。すなわち、カッタヘッド3は、掘進方向から見て円形状に形成されている。
【0029】
カッタヘッド3は、中心軸線Aから半径方向に延びるスポーク部9を含む。スポーク部9は、半径方向に直線状に設けられた中空筒状の梁部材である。スポーク部9の中心側端部は、中心軸線Aに沿って延びる中空のセンターシャフト10に連結している。スポーク部9の前面部材9aは、カッタヘッド3の前面3aの一部を構成する。スポーク部9の後面部材9bに、カッタコラム6が接続されている。
【0030】
カッタヘッド3の前面3aには、掘削ツール20が配置されている。掘削ツール20は、カッタヘッド3の前面3aから前方(切羽側)に突出するように設けられている。掘削ツール20は、カッタヘッド3の回転に伴い地山を掘削するための工具である。掘削ツール20は、たとえばカッタビットまたはディスクカッタなどにより構成されている。掘削ツール20は、掘削ツール交換装置100に着脱可能に設けられている。
【0031】
掘削ツール交換装置100は、カッタヘッド3の前面3aに掘削ツール20を保持するように、カッタヘッド3に設置されている。掘削ツール交換装置100は、掘削ツール20を交換可能に支持する。掘削ツール交換装置100は、中空のスポーク部9の内部に設置されている。掘削ツール交換装置100は、スポーク部9の内側から、スポーク部9の前面部材9aに対して固定されている。
【0032】
掘削ツール交換装置100は、掘進時に、カッタヘッド3の前面3aよりも切羽側に突出した突出位置Pに掘削ツール20を保持することができる。掘削ツール交換装置100は、カッタヘッド3の前面3aよりも反切羽側のスポーク部9の内部まで掘削ツール20を後退させて、掘削ツール20を取り外すことが可能に構成されている。掘削ツール交換装置100により、スポーク部9の内部で掘削ツール20の交換作業が行える。掘削ツール交換装置100の詳細については後述する。
【0033】
カッタコラム6は、中空筒状の梁部材(ビーム)である。カッタコラム6は、カッタヘッド3を支持し、かつ、カッタヘッド3と共に回転する。カッタコラム6は、一方端部がカッタヘッド3に取り付けられ、他方端部が円環状の支持部材5に取り付けられている。支持部材5が、旋回台軸受8によって回転可能に支持されている。これにより、カッタヘッド3が、旋回台軸受8によって中心軸線A回りに回転可能に支持されている。
【0034】
カッタ駆動部4は、カッタヘッド3を回転させる。カッタ駆動部4は、たとえば油圧モータを含む。カッタヘッド3は、カッタ駆動部4によって旋回台軸受を介し、支持部材5に駆動トルクが付与されることにより、中心軸線A回りに回転駆動される。
【0035】
掘削ツール20によって削られた掘削土は、カッタヘッド3の内部のチャンバ部11に進入する。チャンバ部11は、カッタヘッド3、前胴部2aの周壁および隔壁7によって囲まれた空間である。チャンバ部11内の掘削土は、排土装置12によって隔壁7を通って胴体2の内部に搬送された後、トンネルの外部まで排出される。
【0036】
チャンバ部11内の掘削土は、排土装置12による排出量が制御されることにより、チャンバ部11内で泥土圧を発生させる。チャンバ部11内の泥土圧は、排土装置12によって、地山側からカッタヘッド3に作用する力の土圧成分(地山を構成する土による圧力)と概ね平衡状態となるように維持される。
【0037】
トンネル掘進機1は、推進ジャッキ13を備える。推進ジャッキ13は、セグメント(図示せず)を押圧して胴体2(前胴部2aおよび後胴部2b)を推進させるシールドジャッキ13aと、後胴部2bから前胴部2aへ荷重を伝達する中折れジャッキ13bとを含む。トンネル掘進機1は、これらの推進ジャッキ13の推進力によって掘進方向前方に推進する。
【0038】
トンネル掘進機1は、図示しないエレクタを備える。エレクタは、セグメント(図示せず)を環状(リング状)に組み立てる装置である。環状に組み立てられたセグメントは、トンネル掘進機1が構築するトンネルの壁面を構成する。トンネル掘進機1は、所定距離の掘進と、掘進を停止した状態でのセグメントの組み立てとを繰り返すことにより、トンネル壁面を構築しながら掘進する。
【0039】
なお、センターシャフト10は、隔壁7を貫通して胴体2内に接続している。隔壁7よりも後側の胴体2内、センターシャフト10内およびスポーク部9内は、大気圧となっている。掘削ツール20の交換時に、作業者は、センターシャフト10の内部およびスポーク部9の内部を通って、掘削ツール交換装置100に対して作業を行うことができる。
【0040】
(掘削ツール交換装置)
次に、
図2〜
図6を参照して、掘削ツール交換装置100の構造について説明する。掘削ツール交換装置100は、主として、前面板31と、ガイド部32と、ゲート板33と、を備える。掘削ツール交換装置100は、掘削ツール20が着脱可能に取り付けられたツールホルダ21を備える。掘削ツール交換装置100は、前面板31とともにゲート板33を収容するハウジング34を備える。ガイド部32は、内側ガイド部材35と外側ガイド部材36とを備える。
【0041】
前面板31は、カッタヘッド3の前面3aに露出するように設けられた平板状の部材である。前面板31は、スポーク部9の前面部材9aに形成された開口に嵌合するように設けられている。前面板31は、カッタヘッド3の前面3aの一部を構成する。前面板31は、カッタヘッド3の切羽側に開口して掘削ツール20が通過する開口部31aを有する。開口部31aは、前面板31を厚み方向に貫通している。開口部31aは、掘削ツール20を突出位置Pに配置する際、および、掘削ツール20の交換時に掘削ツール20を引き込む際に、掘削ツール20が内部を通過する。開口部31aは、掘削ツール20が通過可能なように、掘削ツール20の外形形状に応じた開口形状を有する。
【0042】
掘削ツール20は、円筒状のツールホルダ21の先端部に取り付けられている。ツールホルダ21は、切羽側(前方)に掘削ツール20を向けて、ガイド部32(内側ガイド部材35)内に配置されている。ガイド部32は、掘削ツール20が設けられたツールホルダ21を、前後方向に進退移動可能に支持している。これにより、ガイド部32は、開口部31aを介して掘削ツール20を進退移動可能に支持している。なお、ツールホルダ21の後端部には、円筒状の延長ホルダ22が延長ボルト23により連結されている。延長ホルダ22は、それぞれ半円筒状の2部材で構成され、半分ずつ分離可能である。
【0043】
ハウジング34は、前面板31の後面(反切羽側面)を覆うように設けられている。ハウジング34は、前面板31の後面を覆うゲート収容部34aを有する。ゲート収容部34aは、前面板31に沿って延びている。ゲート収容部34aの前面板31との対向面には、前面板31との間にゲート板33を配置するための空間を形成する凹部34bが設けられている。ゲート収容部34aの凹部34bは、ゲート板33が開位置Q1(
図3参照)と閉位置Q2(
図3参照)とに移動可能な形状に形成されている。
【0044】
図3に示すように、矩形状のゲート板33が、開口部31aを覆わない開位置Q1と、開口部31aを覆う閉位置Q2との間を、OC方向に直線移動する。凹部34bは、掘進方向から見て、ゲート板33の移動距離に応じた長方形状に形成されている。凹部34bのうち、OC方向に沿って延びる一対の内側面には、それぞれ、ゲートガイド部34cが設けられている。ゲートガイド部34cは、ゲート板33のスライド移動を案内するように構成されている、ゲートガイド部34cは、たとえば、OC方向に延びる溝部からなる。ゲート板33の側端面がゲートガイド部34c内に配置されており、ゲート板33の両端部がゲートガイド部34c内でOC方向にガイドされる。
【0045】
図2に示すように、ハウジング34には、ガイド部32を構成する外側ガイド部材36が設けられている。外側ガイド部材36は、円筒形状のガイド筒であり、切羽側端面がゲート収容部34aの後面に接続している。ゲート収容部34aには、掘進方向から見て前面板31の開口部31aと同軸上に、開口部31aよりも一回り大きい貫通孔が形成されている。外側ガイド部材36は、貫通孔の周縁部を後方(反切羽側)に円筒状に延ばした形状を有する。このように、ハウジング34は、溶接などにより互いに一体化されたゲート収容部34aと外側ガイド部材36とを有している。また、ハウジング34には、ゲート収容部34aと外側ガイド部材36とを相互に固定する補強リブ34dが設けられている。
【0046】
外側ガイド部材36は、内側ガイド部材35を切羽側および反切羽側(前後方向)に移動可能に支持している。すなわち、外側ガイド部材36の内周部に、内側ガイド部材35が配置されている。内側ガイド部材35は、円筒形状のガイド筒である。内側ガイド部材35は、外側ガイド部材36の内径に略一致する外径を有する筒状部を有する。内側ガイド部材35の筒状部が、外側ガイド部材36の内側に、前後方向へ摺動可能に挿入されている。内側ガイド部材35は、掘削ツール20が突出位置Pに配置されたままで、外側ガイド部材36から反切羽側に移動して引き抜き可能に構成されている。
【0047】
内側ガイド部材35は、掘削ツール20の進退移動をガイドするように構成されている。内側ガイド部材35は、掘削ツール20が先端に取り付けられたツールホルダ21を、前後方向に摺動可能に支持している。内側ガイド部材35の内径は、開口部31aの内径に略一致する。また、掘削ツール20の外径が、内側ガイド部材35および開口部31aの内径に略一致する。このため、内側ガイド部材35内でツールホルダ21を切羽側に摺動させることにより、掘削ツール20を突出位置Pへ配置することができる。突出位置Pは、掘削ツール20が開口部31aを介してカッタヘッド3の切羽側(前面板31よりも切羽側)に突出する位置である。また、内側ガイド部材35内でツールホルダ21を反切羽側に摺動させることにより、掘削ツール20を後退させることができる。これにより、掘削ツール20をツールホルダ21とともに内側ガイド部材35から引き抜いて、掘削ツール20を交換することができる。
【0048】
図2に示すように、内側ガイド部材35の後端部(反切羽側端部)には、径方向外側に向けて延びるフランジ部35aが設けられている。フランジ部35aは、外側ガイド部材36の後端部に重なっている。内側ガイド部材35は、フランジ部35aを前後方向に貫通して外側ガイド部材36に取り付けられる固定部材38によって、外側ガイド部材36に対して固定されている。固定部材38は、内側ガイド部材35を外側ガイド部材36に対して固定するボルト(ねじ)である。なお、
図4に示すように、固定部材38は、フランジ部35aの周方向に沿って複数設けられている。固定部材38は、実際には
図2に示す断面上には現れないが、説明のため、
図2にも便宜的に図示している。
【0049】
固定部材38は、フランジ部35aの貫通孔を通って外側ガイド部材36の後端部に形成されたねじ孔に締結されている。内側ガイド部材35は、固定部材38によって外側ガイド部材36に固定されている。固定部材38は、フランジ部35aを、反切羽側から貫通して、外側ガイド部材36に対して切羽側に締め付けている。内側ガイド部材35は、固定部材38による外側ガイド部材36に対する固定状態が緩和されることにより、固定部材38を介して外側ガイド部材36に連結されたまま、所定距離だけ移動可能となるように構成されている。すなわち、ボルトである固定部材38を弛めて固定状態を緩和すると、固定部材38が反切羽側へ動いた分だけ内側ガイド部材35が反切羽側に移動することができる。固定部材38を取り外すと、内側ガイド部材35の固定状態が解除される。固定状態が解除されると、内側ガイド部材35は、外側ガイド部材36に対して反切羽側に移動されて、外側ガイド部材36から引き抜くことが可能である。
【0050】
図2に示すように、内側ガイド部材35の後端面(反切羽側の端面)には、ボルト37a(
図5参照)によって固定フランジ37が取り付けられている。固定フランジ37は、内側ガイド部材35の後端面と、延長ホルダ22の後端面とに跨がるように形成されている。固定フランジ37は、ボルト37bによって、延長ホルダ22の後端面に連結されている。固定フランジ37によって、内側ガイド部材35の内部でツールホルダ21が前後方向に移動しないように固定される。
【0051】
第1実施形態では、
図2に示すように、内側ガイド部材35の切羽側端部に、ゲート板33に反切羽側から密着する第1シール部材39が設けられている。第1シール部材39は、円筒形状の内側ガイド部材35の切羽側の端面に沿って環状に設けられている。第1シール部材39は、たとえばOリングなどからなる。第1シール部材39は、閉位置Q2のゲート板33と前後方向に当接することにより、ゲート板33と内側ガイド部材35との間をシールするように構成されている。これにより、ゲート板33が閉位置Q2に配置された状態で、開口部31aを介した泥水などがゲート板33よりも内側(スポーク部9内)へ侵入することが抑止される。
【0052】
なお、掘削ツール交換装置100は、掘削ツール20が開口部31aを介してカッタヘッド3の切羽側の突出位置Pに配置された状態で、開口部31aを封止する第2シール部材40を備えている。第2シール部材40は、ツールホルダ21の外周面に沿って周状(環状)に設けられている。具体的には、ツールホルダ21が、掘削ツール20が突出位置Pに配置された状態で、開口部31a内に嵌りこむ嵌合部21aを有している。第2シール部材40は、嵌合部21aの外周面に配置されている。このため、掘削ツール20が突出位置Pに配置された状態では、ツールホルダ21(嵌合部21a)の外周面と開口部31aの内周面との間が、第2シール部材40によってシールされる。
【0053】
第2シール部材40が、開口部31aの内周面ではなく、ツールホルダ21の外周面に設けられているため、掘削ツール20の交換時にツールホルダ21がガイド部32から引き抜かれた際に、第2シール部材40を交換することができる。
【0054】
ゲート板33は、上記のように、前面板31とハウジング34のゲート収容部34aとの間(凹部34bの内側)に配置されている。また、ゲート板33は、前後方向において、前面板31と内側ガイド部材35との間の位置に配置されている。ゲート板33は、前面板31に沿って延びる平板形状を有する。第1実施形態のゲート板33は、掘進方向における厚みが略一定の平板形状を有する。ゲート板33は、掘進方向から見て(
図3参照)、矩形形状を有している。ゲート板33の形状は、開口部31aを塞ぐことが可能であればどのような形状でもよい。ゲート板33は、ゲート収容部34a内で、OC方向に直線移動するように構成されている。ゲート板33には、OC方向に延びる穴部33aが設けられている。穴部33a内には、ねじ軸41が配置されている。ねじ軸41は、穴部33aの入口においてゲート板33に固定されたナット部33bと噛み合っている。ねじ軸41を回転させると、ねじ軸41に噛み合ったナット部33bがOC方向に送り出されてゲート板33が移動する。これにより、ゲート板33(
図3参照)は、OC方向の一端部である開位置Q1と、OC方向の他端部である閉位置Q2との間で、直線移動する。
【0055】
ねじ軸41は、ハウジング34に回転可能に取り付けられている。すなわち、ねじ軸41は、ゲート収容部34aの端部から外部に突出して、カバー42によって保持されている。ゲート板33の開閉の際には、作業者が、カバー42から突出したねじ軸41の端部を回転させることにより、ゲート板33が移動する。
【0056】
ゲート板33は、反切羽側表面が、固定状態にある内側ガイド部材35の第1シール部材39と密着するように配置されている。ゲート板33は、切羽側表面が、前面板31の表面(反切羽側表面)と当接している。したがって、閉位置Q2において、ゲート板33は、反切羽側表面において第1シール部材39との当接により隙間をシールする。閉位置Q2において、ゲート板33は、切羽側表面において前面板31との当接(メタルタッチ)により隙間をシールする。
【0057】
図3および
図4に示すように、ハウジング34のゲート収容部34aには、ゲート検知部43が設けられている。ゲート検知部43は、ゲート収容部34aのOC方向における両端部にそれぞれ設けられている。ゲート検知部43は、ゲート収容部34aを貫通して凹部34b内に突出するように付勢されたロッド43aを有する。ゲート板33が移動すると、ロッド43aがゲート板33に押されてゲート収容部34aから外部(ハウジング34の外部)に突出する。すなわち、OC方向における開位置Q1側のゲート検知部43のロッド43aが突出することによって、ゲート板33が開位置Q1に到達したことが確認できる。閉位置Q2側のゲート検知部43のロッド43aが突出することによって、ゲート板33が閉位置Q2に到達したことが確認できる。
【0058】
なお、掘削ツール20の交換時におけるツールホルダ21の引き抜きは、
図6に示すように、ツール保持ジャッキ51を用いて行われる。スポーク部9の後面部材9bには、開口部31aとX方向に向かい合う位置に、ジャッキ取付部50が設けられている。ツール保持ジャッキ51は、ジャッキ取付部50に後端部を取り付けて、前方に向けて配置され、先端部がツールホルダ21の内周面に挿入される。ツールホルダ21の後端面、および、延長ホルダ22の後端面は、いずれも、ツール保持ジャッキ51の接続部材52に対してねじ固定可能に構成されている。ツール保持ジャッキ51は、軸部53に対してねじ部54を進退させることができる。ねじ部54は、外周面にねじ(雄ねじ)が形成されている。接続部材52は、ねじ部54に噛み合ったナット部材である。ツール保持ジャッキ51を延ばした状態で、接続部材52をツールホルダ21または延長ホルダ22に接続し、ツール保持ジャッキ51を縮めることにより、接続部材52とともにツールホルダ21を反切羽側へ移動させることができる。
【0059】
(第1シール部材の交換方法)
次に、第1シール部材39の交換方法について説明する。第1実施形態では、第1シール部材39の交換は、掘削ツール20が突出位置Pに配置されたままで、内側ガイド部材35を外側ガイド部材36から引き抜くことにより行われる。
【0060】
図7に示すように、掘削ツール20が突出位置Pに配置された掘進中の状態から、第1シール部材39の交換方法を説明する。
図8に示すように、作業者がツール保持ジャッキ51をジャッキ取付部50に設置する。作業者は、ねじ部54を延長ホルダ22内に挿入して、接続部材52を延長ホルダ22の後端部に接続する。これにより、掘削ツール20、ツールホルダ21および延長ホルダ22のユニットと、ツール保持ジャッキ51とが連結される。
【0061】
図9に示すように、作業者が固定フランジ37のボルト37aおよびボルト37bを取り外し、その後固定フランジ37を取り外す。さらに、作業者が、固定部材38(
図2、
図4参照)を取り外し、内側ガイド部材35の外側ガイド部材36に対する固定状態を解除する。そして、作業者が、内側ガイド部材35を引き抜く。内側ガイド部材35は、外側ガイド部材36とツールホルダ21および延長ホルダ22との間から、後方(反切羽側)に引き出される。内側ガイド部材35は、外側ガイド部材36から分離するまで引き抜かれる。これにより、内側ガイド部材35の先端部の第1シール部材39が露出する。
【0062】
このとき、掘削ツール20、ツールホルダ21および延長ホルダ22のユニットは、ツール保持ジャッキ51によって、掘削ツール20が突出位置Pに配置された状態のまま支持される。ツールホルダ21の嵌合部21aに設けられた第2シール部材40(
図2参照)によって、前面板31の外側(切羽側)と内側(反切羽側)とがシールされる。そのため、前面3a側からの土砂または泥水の侵入が第2シール部材40によって抑止される。
【0063】
なお、
図9に示す内側ガイド部材35を引き抜いた状態では、内側ガイド部材35の内側にツール保持ジャッキ51が配置されているので、そのまま内側ガイド部材35を取り外すことはできない。ただし、作業者は、環状の第1シール部材39の一部を切断して内側ガイド部材35から除去することができる。そして、新しい第1シール部材39の一部をカットして内側ガイド部材35の先端面に配置した状態で、カットした部分を接合することができる。接合は、接着、加硫または溶着などにより行える。これにより、内側ガイド部材35を完全に取り外さなくても第1シール部材39を交換できる。
【0064】
内側ガイド部材35を完全に取り外す場合は、
図10に示すように、作業者は、仮止めピース60を外側ガイド部材36に取り付ける。仮止めピース60は、
図10の上側と下側とに分かれた一対(2部材)の固定用治具である。仮止めピース60が円環状ではなく2部材に分かれているので、ツール保持ジャッキ51が延長ホルダ22に接続されたままでも取り付けることができる。仮止めピース60は、複数のボルト61によって、外側ガイド部材36の端面と、延長ホルダ22とに固定される。これにより、掘削ツール20、ツールホルダ21および延長ホルダ22のユニットが、仮止めピース60を介して、外側ガイド部材36に固定される。
【0065】
次に、作業者は、延長ホルダ22から接続部材52(
図10参照)を取り外してツール保持ジャッキ51(
図10参照)を延長ホルダ22から取り外す。これにより、
図11に示すように、内側ガイド部材35の内部を通っていたツール保持ジャッキ51が除去される。作業者は、内側ガイド部材35を掘削ツール交換装置100から完全に取り外すことができる。作業者は、取り外された内側ガイド部材35から第1シール部材39を取り外し、新しい第1シール部材39を設置する。内側ガイド部材35を完全に取り外す場合、第1シール部材39の一部をカットする必要はなく、環状の第1シール部材39をそのまま着脱できる。
【0066】
第1シール部材39を交換した後、作業者は、上記と逆の手順によって、内側ガイド部材35を外側ガイド部材36とツールホルダ21(および延長ホルダ22)との間に挿入して、取り付ける。詳細な説明は省略する。以上のようにして、第1シール部材39の交換が行われる。
【0067】
(掘削ツールの交換方法)
次に、第1実施形態による、掘削ツール20の交換方法について説明する。
【0068】
最初に、掘削ツール20の交換方法の概略を説明する。
図12に示すように、掘削ツール20の交換方法は、作業者により、概略で以下の手順で実施される。
ステップS1:掘削ツール20をゲート板33よりも反切羽側の位置まで後退させる。
ステップS2:ゲート板33を開位置Q1から閉位置Q2に移動させる。
ステップS3:掘削ツール20をガイド部32から引き抜く。
ステップS4:引き抜いた掘削ツール20を、新しい掘削ツール20と交換する。
ステップS5:ステップS1〜S3を逆の手順で実行し、新しい掘削ツール20を突出位置Pに配置する。
【0069】
ここで、第1実施形態による掘削ツール20の交換方法は、上記のゲート板33を開位置Q1から閉位置Q2に移動させるステップS2において、
図13に示すように、下記のステップS21〜S23を備える。
ステップS21:内側ガイド部材35を反切羽側に移動させる。
ステップS22:内側ガイド部材35を反切羽側に移動させた状態で、開口部31aを閉じる閉位置Q2にゲート板33を配置する。
ステップS23:ゲート板33が閉位置Q2に配置された状態で、内側ガイド部材35を切羽側に移動させて第1シール部材39をゲート板33に密着させる。
【0070】
以下、掘削ツール20の交換方法の具体的な作業手順について説明する。
図7に示したように、掘削ツール20が突出位置Pに配置された掘進中の状態から、掘削ツール20の交換方法を説明する。
図8に示したように、作業者がツール保持ジャッキ51をジャッキ取付部50に設置する。作業者は、接続部材52を延長ホルダ22の後端部に接続する。これにより、掘削ツール20、ツールホルダ21および延長ホルダ22のユニットと、ツール保持ジャッキ51とが連結される。
【0071】
次に、
図14に示すように、作業者が固定フランジ37のボルト37aを取り外し、固定フランジ37を内側ガイド部材35から取り外す。そして、作業者が、ツール保持ジャッキ51を所定ストロークだけ縮める。具体的には、掘削ツール20の先端がゲート板33よりも後方(反切羽側)に配置されるまで、ツール保持ジャッキ51が縮められる。このとき、ツールホルダ21の外周面に周状に形成された溝部21bが、内側ガイド部材35の後端面の位置に達するまで、掘削ツール20、ツールホルダ21および延長ホルダ22のユニットが引き出される。以上がステップS1の作業である。
【0072】
次に、ステップS2では、
図15に示すように、作業者が、ボルト65により、仮固定ピース64を内側ガイド部材35に取り付ける。仮固定ピース64は、
図15の上側と下側とに分かれた一対(2部材)の固定用治具である。仮固定ピース64が円環状ではなく2部材に分かれているので、ツール保持ジャッキ51が延長ホルダ22に接続されたままでも取り付けることができる。仮固定ピース64は、ボルト65によって内側ガイド部材35の端面に固定される。仮固定ピース64は、ツールホルダ21の溝部21b内に配置される。これにより、掘削ツール20、ツールホルダ21および延長ホルダ22のユニットが、仮固定ピース64を介して、内側ガイド部材35に係合する。
【0073】
ここで、
図16に示すように、前後方向(X方向)において、ツールホルダ21の溝部21bの内面間の長さが、溝部21b内に配置された仮固定ピース64の長さよりも大きい。つまり、溝部21b内で、仮固定ピース64と溝部21bの内面との間には、前後方向にクリアランスCLがある。このため、仮固定ピース64が取り付けられた内側ガイド部材35は、クリアランスCLの分だけ、後方に移動できる。
【0074】
ここで、上記のステップS21が実施される。すなわち、
図17に示すように、作業者が、内側ガイド部材35を外側ガイド部材36に対して固定するための固定部材38を弛める。ボルトである固定部材38を弛めた分だけ、矢印で示したように内側ガイド部材35が後方(反切羽側)に移動する。内側ガイド部材35の後方への移動に伴って、第1シール部材39も後方に移動する。第1実施形態では、内側ガイド部材35は、閉位置Q2へ移動するゲート板33に対して第1シール部材39が非接触となる所定距離CLだけ、反切羽側に移動される。すなわち、第1シール部材39は、ゲート板33の反切羽側端面の配置位置よりも所定距離CLだけ後方に移動する。
【0075】
クリアランスCLの大きさは、閉位置Q2へ移動するゲート板33に対して第1シール部材39を非接触にすることが可能であればよい。クリアランスCLは、数mm程度で良く、たとえば5mmである。これにより、ゲート板33を閉位置Q2に移動する際に、ゲート板33と第1シール部材39とが非接触となる。
【0076】
なお、ツールホルダ21は、ツール保持ジャッキ51によって支持されているので、移動しない。内側ガイド部材35および仮固定ピース64は、ツールホルダ21の位置を変えることなく溝部21b内で後方に移動する。また、内側ガイド部材35は、固定部材38によって外側ガイド部材36に連結されたままで、上記の所定距離CLだけ移動する。作業者は、固定部材38を弛めるだけである。固定部材38を取り外さなくてよいので、後述するステップS23では、弛めた固定部材38を締め直すだけで、内側ガイド部材35を切羽側(前方)に戻すことが可能である。
【0077】
次に、上記のステップS22が実施される。すなわち、
図18に示すように、作業者が、開位置Q1にあるゲート板33を閉位置Q2に向けてOC方向に移動させる。作業者は、ねじ軸41を回転させてゲート板33を閉位置Q2に向けて送り出す。閉位置Q2側のゲート検知部43のロッド43a(
図3参照)が突出することによって、ゲート板33が閉位置Q2に到達したことが確認できる。このとき、内側ガイド部材35は、所定距離CLだけ反切羽側に移動されたままである。
【0078】
第1実施形態では、ステップS22でゲート板33が移動する際、ゲート板33が第1シール部材39とは非接触のまま閉位置Q2へ移動する。このとき、嵌合部21aの第2シール部材40が、内側ガイド部材35の内周面と接触する。第2シール部材40により、内側ガイド部材35とツールホルダ21との間がシールされる。なお、内側ガイド部材35と外側ガイド部材36との間は、内側ガイド部材35の外周面に設けられた第3シール部材35b(
図17参照)によってシールされる。
【0079】
次に、上記のステップS23が実施される。すなわち、
図19に示すように、作業者が、内側ガイド部材35を外側ガイド部材36に対して固定するための固定部材38を締める。矢印で示したように、ボルトである固定部材38を締めた分だけ、内側ガイド部材35が前方(切羽側)に移動する。内側ガイド部材35は、ステップS21(
図17参照)で後方に移動した所定距離CL分だけ、前方に移動する。この結果、内側ガイド部材35の先端の第1シール部材39が、閉位置Q2に配置されたゲート板33の反切羽側表面と当接(密着)する。第1シール部材39により、内側ガイド部材35とゲート板33との間がシールされる。また、これにより、内側ガイド部材35が固定部材38によって外側ガイド部材36に対して固定された固定状態に戻る。
【0080】
次に、作業者はステップS3(
図12参照)の作業に移る。
図20に示すように、作業者が、接続部材52を延長ホルダ22から取り外す。また、
図21に示すように、作業者が、ボルト37bを取り外し、固定フランジ37を延長ホルダ22から取り外す。そして、
図22に示すように、作業者が、延長ボルト23を外して延長ホルダ22をツールホルダ21から取り外す。延長ホルダ22は、2部材で構成されているため、ツール保持ジャッキ51が挿入されたままでも分割して取り外し可能である。
【0081】
次に、
図23に示すように、作業者は、ツール保持ジャッキ51を引き延ばして、ねじ部54をツールホルダ21内に挿入する。そして、作業者は、接続部材52をツールホルダ21の後端面に取り付ける。次に、作業者は、
図24に示すように、仮固定ピース64を取り外す。これにより、内側ガイド部材35とツールホルダ21との係合が解除される。次に、作業者は、
図25に示すように、ツール保持ジャッキ51を縮めて、掘削ツール20およびツールホルダ21を、内側ガイド部材35から引き抜く。これにより、掘削ツール20が掘削ツール交換装置100から取り出される。
【0082】
その後、作業者は、取り出した掘削ツール20を新しい掘削ツール20と交換して、掘削ツール交換装置100に取り付ける(ステップS4、
図12参照)。作業者は、新しい掘削ツール20を突出位置Pに配置させる(ステップS5、
図12参照)。この作業は、上記と逆の手順により行われるので、詳細な説明は省略する。ゲート板33を閉位置Q2から開位置Q1に移動させる場合も、
図17に示したように、固定部材38が弛められることにより第1シール部材39が所定距離CL分だけ移動されて、ゲート板33から非接触とされる。そのため、ゲート板33が、第1シール部材39とは非接触のまま閉位置Q2から開位置Q1に移動へ移動する。
【0083】
以上により、第1実施形態による掘削ツール20の交換方法が実施される。
【0084】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0085】
第1実施形態における掘削ツール交換装置100は、上記のように、ガイド部32が、掘削ツール20の進退移動をガイドする内側ガイド部材35と、内側ガイド部材35を切羽側および反切羽側に移動可能に支持する外側ガイド部材36と、を含み、内側ガイド部材35の切羽側端部に、ゲート板33に反切羽側から密着する第1シール部材39が設けられている。これにより、内側ガイド部材35を外側ガイド部材36に沿って反切羽側に移動させることにより、内側ガイド部材35の切羽側端部に設けられた第1シール部材39を、外側ガイド部材36から反切羽側に露出させて、第1シール部材39の交換作業を行うことができる。つまり、内外の二重のガイド部32のうち内側ガイド部材35を引き抜くことによって、掘削ツール交換装置100全体を分解することなく、第1シール部材39を交換することができる。この結果、第1実施形態による掘削ツール交換装置100では、掘削ツール20の交換時に土砂や泥水の流入を抑制するための第1シール部材39を容易に交換することができる。
【0086】
また、第1実施形態では、第1シール部材39を有する内側ガイド部材35を反切羽側に移動させることができるので、
図13に示した手順により、内側ガイド部材35を反切羽側に移動させた状態で、ゲート板33を移動させて開口部31aを閉じることができる。内側ガイド部材35の反切羽側への移動により、第1シール部材39をゲート板33から離間させた非接触の状態で、ゲート板33を移動させることができる。この結果、ゲート板33の移動時における摺動に起因する第1シール部材39の損耗を抑制することができる。そして、ゲート板33の移動後、内側ガイド部材35を切羽側に移動させて第1シール部材39をゲート板33に密着させることにより、シール性を確保することができる。このように、第1実施形態によれば、第1シール部材39を容易に交換可能とするだけでなく、第1シール部材39の損耗を抑制してシール交換回数を低減することができる。
【0087】
また、第1実施形態では、上記のように、掘削ツール20が開口部31aを介してカッタヘッド3の切羽側の突出位置Pに配置された状態で、開口部31aを封止する第2シール部材40をさらに備え、内側ガイド部材35は、掘削ツール20が突出位置Pに配置されたままで、外側ガイド部材36から反切羽側に移動して引き抜き可能に構成されている。これにより、掘削ツール20が突出位置Pに配置された状態で、第2シール部材40によって開口部31aをシールしたまま、内側ガイド部材35を引き抜いて第1シール部材39を交換できる。これにより、内側ガイド部材35を反切羽側に移動させる際に、開口部31aのシールを確保するための作業を行うことなく、掘削ツール20を突出位置Pに配置したままで簡単に第1シール部材39を交換できる。
【0088】
また、第1実施形態では、上記のように、内側ガイド部材35を外側ガイド部材36に対して固定する固定部材38をさらに備え、内側ガイド部材35は、固定部材38による外側ガイド部材36に対する固定状態が緩和されることにより、固定部材38を介して外側ガイド部材36に連結されたまま、所定距離CLだけ移動可能となるように構成されている。これにより、ゲート板33の移動時に、内側ガイド部材35の固定状態を緩和して、内側ガイド部材35を所定距離CLだけ反切羽側に移動させることができる。第1実施形態では、内側ガイド部材35の反切羽側への移動により、第1シール部材39をゲート板33から離間させることができる。この結果、ゲート板33の移動時における摺動に起因する第1シール部材39の損耗を抑制することができる。また、ゲート板33が閉位置Q2に移動した後、内側ガイド部材35を切羽側に移動させて第1シール部材39をゲート板33に密着させて、内側ガイド部材35を固定状態にすることで、第1シール部材39によるシール性を確保することができる。
【0089】
また、第1実施形態によるトンネル掘進機1では、上記のように構成された掘削ツール交換装置100を備えることによって、掘削ツール20の交換時に土砂や泥水の流入を抑制するための第1シール部材39を容易に交換することができる。さらに、内側ガイド部材35を反切羽側に移動させた状態で、ゲート板33を移動させて開口部31aを閉じることができるので、ゲート板33の移動時における摺動に起因する第1シール部材39の損耗を抑制することができる。したがって、第1シール部材39を容易に交換可能とするだけでなく、第1シール部材39の損耗を抑制してシール交換回数を低減することができる。
【0090】
[第2実施形態]
次に、
図26〜
図28を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、ゲート板33が厚み一定の平板形状を有する例を示した上記第1実施形態とは異なり、ゲート板133の反切羽側表面が傾斜面134となっている例について説明する。なお、第2実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0091】
第2実施形態では、
図26に示すように、ゲート板33(
図2参照)に代えて、ゲート板133が設けられている。ゲート板133は、開口部31aを閉じる方向に向かうに従って(すなわち、閉位置Q2へ向かうに従って)切羽側に傾斜した傾斜面134を有する。そして、ゲート板133が開口部31aを閉じる閉位置Q2において、傾斜面134が第1シール部材39と密着するように構成されている。
【0092】
具体的には、ゲート板133は、前面板31と対向する切羽側の第1面と、反切羽側の第2面とを有する。反切羽側の第2面が、傾斜面134となっている。
図27に示すように、傾斜面134は、閉位置Q2側の端部134bが、開位置Q1側の端部134aに対して、切羽側(前方側)にずれた位置に配置されている。これにより、端部134bと端部134aとの間の面が角度θだけ前面板31側(切羽側)に傾斜している。
【0093】
ゲート板133の第1面は、前面板31(
図26参照)に沿って、前面板31と略平行に延びている。このため、ゲート板133は、前後方向の厚みtが、開位置Q1側の端部134aから閉位置Q2側の端部134bへ向かうに従って小さくなっている。ゲート板133は、前面板31に沿って、OC方向に直線移動する。
【0094】
第2実施形態では、内側ガイド部材35(
図2参照)に代えて、内側ガイド部材135が設けられている。内側ガイド部材135の切羽側端面が、ゲート板133の傾斜面134に応じて、傾斜面136となっている。つまり、内側ガイド部材135は、円筒を、角度θだけ傾いた平面で切断したような傾斜した切羽側端面を有する。そして、内側ガイド部材135の切羽側端面に、第1シール部材39が設けられている。このため、第1シール部材39の切羽側表面も、閉位置Q2側の端部39bが、開位置Q1側の端部39aに対して切羽側(前方側)にずれた位置に配置されるように、角度θだけ傾斜している。
【0095】
これにより、第2実施形態では、ゲート板133を開位置Q1側から閉位置Q2に向けて移動させると、傾斜面134の端部134bは、第1シール部材39の端部39a側の部分とは接触せずに通過する。傾斜面134の端部134bは、ゲート板133が閉位置Q2の近傍まで到達すると、第1シール部材39の端部39b側の部分と接触する。つまり、ゲート板133の傾斜面134は、閉位置Q2の近傍に到達するまでは第1シール部材39と接触せず、閉位置Q2の近傍に到達すると、傾斜した第1シール部材39の表面と接触し始める。
図28に示すように、ゲート板133が閉位置Q2に到達すると、傾斜面134と傾斜面136の第1シール部材39とが密着して、ゲート板133と内側ガイド部材135との間がシールされる。
【0096】
ゲート板133を閉位置Q2から開位置Q1へ移動させる際も、傾斜面134と第1シール部材39とは、閉位置Q2の近傍で接触するだけで、開位置Q1へ向けて移動するに従って傾斜面134が第1シール部材39から離れる。このため、第2実施形態では、ゲート板133の移動時に、上記第1実施形態のように内側ガイド部材135を反切羽側に移動させることなく、ゲート板133と第1シール部材39との摺動が低減される。
【0097】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0098】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0099】
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、掘削ツール20の交換時に土砂や泥水の流入を抑制するための第1シール部材39を容易に交換することができる。
【0100】
また、第2実施形態では、上記のように、ゲート板133は、開口部31aを閉じる方向に向かうに従って切羽側に傾斜した傾斜面134を有し、ゲート板133が開口部31aを閉じる閉位置Q2において、傾斜面134が第1シール部材39と密着するように構成されている。すなわち、傾斜面134が、ゲート板133の閉位置Q2側の先端に向かうほど、第1シール部材39から離れるように傾斜している。これにより、傾斜面134と、傾斜面134に応じて傾斜したシール面(第1シール部材39が配置される面)との接触によりシールが確保される構造となる。そのため、ゲート板133を閉じる際、ゲート板133の移動距離の大半では傾斜面134と第1シール部材39とが非接触となり、ゲート板133が閉位置Q2に配置される直前にゲート板133と第1シール部材39とが接触し始める。逆に、ゲート板133を開く際、ゲート板133が閉位置Q2から離れるとすぐに、傾斜面134と第1シール部材39とが非接触となる。この結果、ゲート板133の移動時における摺動に起因する第1シール部材39の損耗を抑制することができる。また、内側ガイド部材135を反切羽側に移動させる必要がないので、作業者による特段の作業を必要とすることなく第1シール部材39の損耗を抑制することができる。
【0101】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0102】
[第3実施形態]
次に、
図29〜
図31を参照して、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、ゲート板33が前面板31に沿って直線移動する例を示した上記第1実施形態とは異なり、ゲート板33が閉位置Q2の近傍で第1シール部材39側(反切羽側)にスライドする例について説明する。なお、第3実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0103】
第3実施形態では、
図29に示すように、ゲートガイド部34c(
図3参照)に代えて、ゲートガイド部234(二点鎖線参照)が設けられている。ゲート板33(
図2参照)に代えて、ゲート板233が設けられている。ゲートガイド部234が、ゲート板233が開口部31aを閉じる閉位置Q2の手前で、ゲート板233を、第1シール部材39に押し付ける方向(すなわち、反切羽側)へ案内するように構成されている。
【0104】
ゲートガイド部234の形成位置は、上記第1実施形態(ゲートガイド部34c、
図2参照)と同様である。つまり、
図30に示したように、ゲート収容部34aのうち、OC方向に沿って延びる一対の内側面の各々に、ゲートガイド部234が設けられている。ゲートガイド部234は、溝部からなる。ゲート板233のOC方向に沿う一対の側端面の各々には、ゲートガイド部234内に配置されてゲートガイド部234に沿って移動する凸部235が設けられている。
【0105】
図31に示すように、第3実施形態のゲートガイド部234は、上記第1実施形態とは異なり、全体としてOC方向に延びるものの、閉位置Q2の手前で第1シール部材39側(反切羽側、内側ガイド部材35側)に曲がっている。
【0106】
より具体的には、
図31(A)に示すように、溝部からなるゲートガイド部234は、溝部の内側面である案内面を有している。そして、ゲートガイド部234は、OC方向に直線状に延びる第1案内面234aと、閉位置Q2の手前(閉位置Q2に対して開位置Q1側にずれた位置)から閉位置Q2に向けて第1シール部材39側に傾斜した第2案内面234bとを含む。
【0107】
ゲートガイド部234は、開位置Q1において、ゲート板233の反切羽側表面が第1シール部材39に対して切羽側(前方)に離れるように、ゲート板233を案内する。
ゲート板233が閉位置Q2に向けてOC方向に移動すると、閉位置Q2の手前で第2案内面234bと凸部235の切羽側表面235aとが当接する。凸部235が第2案内面234bに沿って移動することにより、ゲート板233が第1シール部材39側に近付くように、第2案内面234bの傾斜方向に沿って反切羽側へ斜めに移動する。第3実施形態では、ゲート板233が第1案内面234aに沿って移動する間、ゲート板233と第1シール部材39とは非接触となる。ゲート板233が第2案内面234bに沿って斜めに移動することにより、ゲート板233が第1シール部材39と接触し始める。
【0108】
ゲート板233が閉位置Q2に到達すると、ゲート板233は、凸部235の切羽側が第2案内面234bに支持されることにより、ゲート板233が第1シール部材39に対して密着した状態が維持される。
【0109】
なお、ゲート板233の第2案内面234bに沿った移動の際、ナット部33bと噛み合うねじ軸41も、第1シール部材39側(反切羽側)へ移動する。すなわち、第3実施形態では、ねじ軸41を保持するカバー42の開口とねじ軸41との間に、切羽側、反切羽側へ移動可能な隙間CL2が設けられている。作業者がねじ軸41を回してゲート板233を閉位置Q2へ移動させる際、ゲート板233の反切羽側への移動に伴って、ねじ軸41がカバー42の開口内で反切羽側へスライドする。
【0110】
ゲート板233が閉位置Q2から開位置Q1へ移動する場合、ゲートガイド部234内で、第2案内面234bと向かい合う第3案内面234cと凸部235の反切羽側表面235bとが接触して、凸部235が第3案内面234cに沿って案内される。第3案内面234cは、第2案内面234bと略平行な傾斜面である。そのため、ゲート板233は、第2案内面234bに沿って直ちに第1シール部材39から離れる。このように、第3実施形態では、ゲート板233の移動時に、上記第1実施形態のように内側ガイド部材35を反切羽側に移動させることなく、ゲート板233と第1シール部材39との摺動が低減される。
【0111】
第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0112】
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0113】
第3実施形態では、上記第1実施形態と同様に、掘削ツール20の交換時に土砂や泥水の流入を抑制するための第1シール部材39を容易に交換することができる。
【0114】
また、第3実施形態では、上記のように、ゲートガイド部234は、ゲート板233が開口部31aを閉じる閉位置Q2の手前で、ゲート板233を、第1シール部材39に押し付ける方向へ案内するように構成されている。これにより、第1シール部材39をゲート板233から離間させた状態で、ゲート板233を閉位置Q2付近まで移動させることができる。そして、ゲート板233が閉位置Q2の手前まで移動した段階で、ゲートガイド部234がゲート板233を第1シール部材39側に案内することによって、ゲート板233と第1シール部材39とが密着し始める。逆に、ゲート板233を開く際、ゲート板233が閉位置Q2から離れるとすぐに、ゲート板233と第1シール部材39とが非接触とすることができる。この結果、ゲート板233の開閉時における摺動に起因する第1シール部材39の損耗を抑制することができる。
【0115】
第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0116】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態および変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0117】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、トンネル掘進機が中間支持方式のシールド掘進機である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明のトンネル掘進機を、上記の支持方式以外のセンターシャフト支持方式、外周支持方式、中央支持方式および偏心多軸支持方式などの各種の支持方式のシールド掘進機に適用してもよい。また、本発明は、シールド掘進機ではなく、推進工法の掘進機や、トンネルボーリングマシンに適用されてもよい。
【0118】
また、上記第1〜第3実施形態では、第2シール部材40を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2シール部材40を設けなくてもよい。また、上記第1〜第3実施形態では、第2シール部材40がツールホルダ21の嵌合部21aの外周面に設けられた例を示したが、第2シール部材40は嵌合部21aの外周面以外の位置に設けられてもよい。たとえば、ツールホルダ21の外径を開口部31aの内径よりも大きくし、ツールホルダ21の先端面が開口部31aの周縁部に突き当たるようにする。そして、第2シール部材40がツールホルダ21の先端面で、開口部31aの周縁部と接触する位置に環状に設けられてもよい。
【0119】
また、上記第1〜第3実施形態では、第1シール部材39の交換時に、掘削ツール20が突出位置Pに配置されたままで、内側ガイド部材35を反切羽側に引き抜き可能にした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、掘削ツール20が突出位置P以外の位置に配置された状態で、内側ガイド部材35が引き抜かれてもよい。たとえば、第1シール部材39の交換時に、掘削ツール20の交換時と同じように、作業者がゲート板33を閉位置Q2に配置して掘削ツール20(ツールホルダ21)を引き抜く。そして、作業者が専用のジャッキ(図示せず)を用いてゲート板33を前面板31に対して押圧してゲート板33を前面板31に密着させる。この状態で、内側ガイド部材35が引き抜かれてもよい。
【0120】
また、上記第1〜第3実施形態では、固定部材38を弛めることにより、内側ガイド部材35が、固定部材38を介して外側ガイド部材36に連結されたまま所定距離CLだけ移動可能となる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、固定部材38を完全に取り外してもよい。内側ガイド部材35は、固定部材38が取り外されて(固定状態が解除されて)初めて、切羽側および反切羽側に移動可能となるように構成されてもよい。
【0121】
なお、内側ガイド部材35を外側ガイド部材36に固定する固定部材38は、ボルト以外であってもよい。固定部材38は、たとえばピンまたはキーであってもよい。その場合、固定部材38は、たとえば外側ガイド部材36を貫通して内側ガイド部材35の係合孔に挿入されることにより、内側ガイド部材35を外側ガイド部材36に固定する。
【0122】
また、上記第1〜第3実施形態では、ゲート板の移動時に、少なくとも閉位置Q2の手前まではゲート板と第1シール部材39とが非接触となる例を示した。すなわち、上記第1実施形態では、内側ガイド部材35が反切羽側に移動してゲート板33と第1シール部材39とが非接触となる。上記第2実施形態では、ゲート板133が傾斜面134を有することによって、ゲート板133と第1シール部材39とが非接触となる。上記第3実施形態では、ゲートガイド部234がゲート板233を案内することによって、ゲート板233と第1シール部材39とが非接触となる。本発明は、これらの例に限られない。ゲート板の移動時に、ゲート板と第1シール部材39とが接触してもよい。ゲート板と第1シール部材39とが接触する場合でも、上記第1〜第3実施形態の各構成によれば、ゲート板が閉位置Q2に配置された状態におけるゲート板から第1シール部材39への押圧力よりも、ゲート板の移動時におけるゲート板から第1シール部材39への押圧力が小さくなる。そのため、摩擦抵抗が低減されるので、ゲート板との摺動による第1シール部材39の損耗を低減することが可能である。
【0123】
なお、上記第1実施形態において、ゲート板33の移動時に、内側ガイド部材35を反切羽側に移動させてゲート板33と第1シール部材39とが非接触とする例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、内側ガイド部材35を移動させずに、ゲート板33と第1シール部材39とが密着したままゲート板33を移動させてもよい。その場合、第1シール部材39が摺動により損耗しやすくなるが、上記の通り内側ガイド部材35を引き抜いて第1シール部材39を容易に交換できる。
【0124】
また、上記第1〜第3実施形態では、ゲート板がねじ軸41によって、OC方向に移動する例を示したが、本発明はこれに限られない。ゲート板は、前面板31に沿って開位置Q1と閉位置Q2とに移動可能であれば、どのような移動経路で移動してもよい。たとえば、ゲート板が、前後方向に延びる回転軸周りに回転することにより、前面板31に沿って開位置Q1と閉位置Q2とに移動してもよい。
【0125】
また、上記第1〜第3実施形態では、掘削ツール交換装置100がカッタヘッド3のスポーク部9に設けられた例を示したが、本発明はこれに限られない。掘削ツール交換装置100は、カッタヘッド3の前面3aを構成する部材であれば、スポーク部以外の部材に設けられていてもよい。
【0126】
また、上記第1〜第3実施形態では、ツールホルダ21に延長ホルダ22を取り付けた構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、延長ホルダ22を設けなくてもよい。すなわち、上記第1実施形態では、
図14でツール保持ジャッキ51によりツールホルダ21および延長ホルダ22を所定位置まで引き抜いた後、
図22で延長ホルダ22を取り外し、
図23でツールホルダ21にツール保持ジャッキ51を取り付けて、
図25でツール保持ジャッキ51によりツールホルダ21を引き抜くという、2段階の引き抜き作業を行っている。延長ホルダ22を設けない場合、
図14でツール保持ジャッキ51によりツールホルダ21を所定位置まで引き抜き(第1段階引き抜き)、ゲート板33を閉じた後(
図18参照)、
図20〜
図22を省略して、
図23〜
図25で掘削ツール20を引き抜く(第2段階引き抜き)、という手順で作業を行うことができる。
【0127】
また、上記第1〜第3実施形態では、掘削ツール交換装置100が1つの掘削ツール20を交換可能に保持する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1つの掘削ツール交換装置100が、複数の掘削ツール20を交換可能に保持してもよい。たとえば
図32では、1つの前面板331に対して、2つの開口部31aが設けられ、2つの掘削ツール20を個別に交換可能に保持する掘削ツール交換装置200の例を示している。掘削ツール交換装置200は、2つの開口部31aの形成位置に、それぞれ1つずつ、ゲート板33と、内側ガイド部材35および外側ガイド部材36とを含むガイド部32(
図32では図示省略)とを備えている。つまり、
図2に示した構造が、1つの前面板331に対して並列的に2つ設けられている。
【解決手段】この掘削ツール交換装置100は、着脱可能な掘削ツール20と、カッタヘッド3の切羽側に開口して掘削ツール20が通過する開口部31aを有する前面板31と、開口部31aを介して掘削ツール20を進退移動可能に支持するガイド部32と、前面板31とガイド部32との間で前面板31に沿ってスライド移動可能に構成され、開口部31aを開閉するゲート板33と、を備える。ガイド部32は、掘削ツール20の進退移動をガイドする内側ガイド部材35と、内側ガイド部材35を切羽側および反切羽側に移動可能に支持する外側ガイド部材36と、を含む。内側ガイド部材35の切羽側端部に、ゲート板33に反切羽側から密着する第1シール部材39が設けられている。