特許第6633741号(P6633741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6633741ブレーキ倍力装置、および、自動車のためのブレーキ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633741
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】ブレーキ倍力装置、および、自動車のためのブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20200109BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20200109BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   B60T13/74 D
   F16H25/20 E
   F16H25/24 J
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-510964(P2018-510964)
(86)(22)【出願日】2016年7月13日
(65)【公表番号】特表2018-527238(P2018-527238A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】EP2016066632
(87)【国際公開番号】WO2017045797
(87)【国際公開日】20170323
【審査請求日】2018年4月16日
(31)【優先権主張番号】102015217531.6
(32)【優先日】2015年9月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】オーム,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイスジンガー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ナーゲル,ヴィリ
(72)【発明者】
【氏名】デベルリング,アンドレアス
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−048850(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102013007574(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/00−13/74
F16D 49/00−71/04
F16H 9/00−9/26
19/00−37/16
49/00
G02B 7/02−7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のマスタブレーキシリンダのためのブレーキ倍力装置(1)であって、駆動モータ(2)を有しており、該駆動モータ(2)は、伝動装置(3)によって前記マスタブレーキシリンダのための圧力ピストン(4)に接続されていて/接続可能であって、前記伝動装置(3)が、前記マスタブレーキシリンダを操作するために前記駆動モータ(2)の回転運動を前記圧力ピストンの並進運動に変換するようになっており、前記伝動装置が、互いに噛み合う台形ねじ(5,7)を備えた、回転可能なスピンドルナット(6)および相対回動不能なスピンドルロッド(4)を有している形式のものにおいて、
互いに噛み合う前記台形ねじ(5,7)が、基底部遊び(f)よりも大きく構成されたバックラッシュ(a)および頂部遊び(k)を有しており、
前記スピンドルナット(6)が、前記伝動装置(3)の駆動リング歯車(12)の内歯(13)と噛み合う外歯(10)を有しており、
前記外歯(10)および前記内歯(13)は、前記スピンドルナット(6)が前記駆動リング歯車(12)に対して軸方向にシフト可能であるように、構成されている
ことを特徴とする、ブレーキ倍力装置。
【請求項2】
前記スピンドルナット(6)が、前記駆動リング歯車(12)と協働する軸方向ストッパ(11)を有している
ことを特徴とする、請求項記載のブレーキ倍力装置。
【請求項3】
自動車のマスタブレーキシリンダのためのブレーキ倍力装置(1)であって、駆動モータ(2)を有しており、該駆動モータ(2)は、伝動装置(3)によって前記マスタブレーキシリンダのための圧力ピストン(4)に接続されていて/接続可能であって、前記伝動装置(3)が、前記マスタブレーキシリンダを操作するために前記駆動モータ(2)の回転運動を前記圧力ピストンの並進運動に変換するようになっており、前記伝動装置が、互いに噛み合う台形ねじ(5,7)を備えた、回転可能なスピンドルナット(6)および相対回動不能なスピンドルロッド(4)を有している形式のものにおいて、
互いに噛み合う前記台形ねじ(5,7)が、基底部遊び(f)よりも大きく構成されたバックラッシュ(a)および頂部遊び(k)を有しており、
前記スピンドルナット(6)が、前記伝動装置(3)の駆動リング歯車(12)の内歯(13)と噛み合う外歯(10)を有しており、
前記スピンドルナット(6)が、前記駆動リング歯車(12)と協働する軸方向ストッパ(11)を有している
ことを特徴とする、ブレーキ倍力装置。
【請求項4】
前記軸方向ストッパ(11)を有する前記スピンドルナット(6)を前記駆動リング歯車(12)に向かって押しやる、少なくとも1つのばね部材(16)が設けられている
ことを特徴とする、請求項2または3記載のブレーキ倍力装置。
【請求項5】
前記バックラッシュ(a)が、前記スピンドルナット(6)の前記台形ねじ(7)の歯幅(B)の8乃至12%である
ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のブレーキ倍力装置。
【請求項6】
前記バックラッシュ(a)が、前記スピンドルナット(6)の前記台形ねじ(7)の歯幅(B)の10%である
ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のブレーキ倍力装置。
【請求項7】
前記頂部遊びが、前記スピンドルナット(6)の前記台形ねじ(7)の歯幅(B)の8乃至12%である
ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のブレーキ倍力装置。
【請求項8】
前記頂部遊びが、前記スピンドルナット(6)の前記台形ねじ(7)の歯幅(B)の10%である
ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のブレーキ倍力装置。
【請求項9】
前記スピンドルロッド(4)が前記圧力ピストンを形成する
ことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のブレーキ倍力装置。
【請求項10】
前記マスタブレーキシリンダの前記圧力ピストンに機械的に接続されたブレーキペダルを有する、自動車のためのブレーキ装置において、
請求項1からまでのいずれか1項記載のブレーキ倍力装置(1)が設けられている
ことを特徴とする、自動車のためのブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のマスタブレーキシリンダのためのブレーキ倍力装置であって、駆動モータを有しており、該駆動モータは、伝動装置によってマスタブレーキシリンダのための圧力ピストンに接続されているか、または接続可能であって、伝動装置が、マスタブレーキシリンダを操作するために駆動モータの回転運動を圧力ピストンの並進運動に変換するようになっており、伝動装置が、そのために互いに噛み合う台形ねじを備えた、回転可能なスピンドルナットおよび相対回動不能であるが軸方向にシフト可能なスピンドルロッドを有している形式のものに関する。
【0002】
さらに、本発明はこのような形式のブレーキ倍力装置を備えたブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭に述べた形式のブレーキ倍力装置およびブレーキ装置は、従来技術により既に公知である。例えば特許文献1には、自動車のマスタブレーキシリンダのためのブレーキ倍力装置が開示されており、このブレーキ倍力装置は、駆動モータと、この駆動モータをマスタブレーキシリンダの圧力ピストンに接続する伝動装置とを有している。この場合、伝動装置は、駆動モータの回転運動を圧力ピストンの並進運動に変換してマスタブレーキシリンダを操作するために、スピンドル伝動装置として構成された区分を有している。このために、スピンドル伝動装置は、内ねじを備えたスピンドルナットと、外ねじを備えたスピンドルロッドとを有しており、この場合、2つのねじは、回転運動を並進運動に変換するために、互いに噛み合っている。台形ねじを備えたスピンドル伝動装置を設けることも公知であるので、内ねじも外ねじも台形ねじとして構成されていて、相応に互いに噛み合っている。台形ねじの歯形の設計のために、DIN規格103が公知であり、このDIN規格103は、鋼−鋼の材料対のために設計されていて、力および運動の方向変換時に雑音および騒音を避けるために、台形ねじ間、つまり外ねじと内ねじとの間のバックラッシュをできるだけ小さく維持するように定められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102012014361号明細書
【発明の概要】
【発明の効果】
【0005】
請求項1の特徴を有する、本発明によるブレーキ倍力装置は、このブレーキ倍力装置の耐用年数が冒頭に述べた形式の公知のブレーキ倍力装置と比較してより高められる、という利点を有している。これは、本発明によれば、互いに噛み合う台形ねじが、基底部遊びよりも大きく構成されたバックラッシュおよび頂部遊びを有していることによって得られる。従って、本発明によれば、適切に互いに相違させた、台形ねじ間の遊びが設けられている。この場合、頂部遊びとは外ねじの歯先と内ねじの歯底との間の半径方向の遊びであって、基底部遊びとは外ねじの歯底と外ねじの歯先との間の遊びと理解される。バックラッシュは、周方向若しくは回転方向で見て、両台形ねじの互いに向き合う歯面の間にある。バックラッシュおよび頂部遊びが基底部遊びより大きく構成されていることによって、好適にはグリース集積部が形成され、このグリース集積部は、スピンドル伝動装置の駆動装置の方向逆転時に内ねじに対して外ねじが相互に回転されることによって、潤滑剤が歯列内のグリース集積部内で適切に循環されるように、制御される。このために、好適な形式で、台形ねじ間での潤滑剤の循環を保証するために、ブレーキ倍力装置の制御が規則的に逆転される。
【0006】
好適には、バックラッシュは、スピンドルナットの台形ねじの歯幅の8乃至12%、特に10%である。従って、バックラッシュは、DIN単位3で定められた最小のバックラッシュよりも既に著しく大きい。バックラッシュの大きさによって、複数の歯の互いにずらされる歯面によって潤滑剤が歯先の方向で外側に向かって押しやられ、ここで、歯先遊びに基づいて別の歯面まで送られるように、保証される。これによって、潤滑剤が確実に循環され、ひいては台形ねじが持続的に良好に潤滑され、それによって摩耗および摩擦が避けられ、ブレーキ倍力装置の耐用年数が高められることが保証される。
【0007】
好適には、頂部遊びは、スピンドルナットの台形ねじの歯幅の8乃至12%、特に10%である。これによって外ねじの歯の歯先領域内における潤滑剤の循環圧送が保証される。
【0008】
本発明の好適な発展形態によれば、基底部遊びが、安全上重要な最小値を有している。それゆえ、基底部遊びは、ブレーキ倍力装置、特にスピンドル伝動装置の確実な運転を保証するために可能な限り小さく、必要なだけ大きく選定されている。この場合、基底部遊びは、スピンドル伝動装置の食い込みが確実に阻止される程度に大きく選定されるように特に考慮される。
【0009】
本発明の好適な発展形態によれば、スピンドルロッドが圧力ピストンを形成するようになっている。従って、マスタブレーキシリンダの圧力ピストンは、ブレーキ倍力装置若しくはスピンドル伝動装置の組み込まれた構成部分である。これによって、ブレーキ倍力装置の特にコンパクトな実施形態が保証される。
【0010】
本発明の好適な発展形態によれば、スピンドルナットが、伝動装置の駆動リング歯車の内歯と噛み合う外歯を有している。従って、スピンドルナットは、駆動リング歯車内にガイドされていて、この駆動リング歯車によって駆動される。これによって、駆動モータからスピンドルナットへのコンパクトな力の伝達が保証される。
【0011】
特に好適には、外歯および内歯は、スピンドルナットが駆動リング歯車に対して軸方向にシフト可能であるように、構成されている。つまり、スピンドルナットと駆動リング歯車との間の噛み合いは、スピンドルナットと駆動リング歯車との間の軸方向の相対運動を保証する。これによって特に、スピンドルロッドを形成する圧力ピストンが、運転者若しくは使用者によって、ブレーキ倍力装置とは無関係にブレーキペダルを操作することにより操作できるように、保証される。使用者が圧力ピストンに軸方向力を加えると、圧力ピストンは、場合によってはスピンドルナットを駆動リング歯車に対して相対的に軸方向にシフトさせる。この場合、スピンドルナットと駆動リング歯車との間の好適な噛み合いに基づいて、駆動リング歯車に対するスピンドルナットの軸方向の相対位置とは無関係に、電動機の制御によって、圧力ピストンを追加的な操作力で負荷するためにスピンドルナットが回転運動せしめられるように、保証されている。
【0012】
さらに、好適には、スピンドルナットが、駆動リング歯車と協働する軸方向ストッパを有している。軸方向ストッパによって、スピンドルナットが駆動リング歯車を越えてシフトされないように保証される。むしろ、スピンドルナットの確実な初期位置を保証する終端ストッパが提供される。
【0013】
特に好適には、軸方向ストッパを有するスピンドルナットを駆動リング歯車に向かって押しやる、少なくとも1つのばね部材が設けられている。これによって、シフト可能なスピンドルナットのための規定された初期位置が保証されており、圧力ピストンに接続されたブレーキペダルに例えば運転者が力を加えないときに、スピンドルナットが前記初期位置に戻し移動せしめられる。ばね部材によって、システム若しくは伝動装置は付勢され、確実な運転が保証される。
【0014】
請求項10の特徴を有する本発明によるブレーキ装置は、本発明によるブレーキ倍力装置が設けられていることを特徴とする。これによって、前記利点が得られる。その他の利点および好適な特徴は、特に前記説明並びに請求項から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】自動車のマスタブレーキシリンダのためのブレーキ倍力装置の簡略図である。
図2】ブレーキ倍力装置の伝動装置の第1の運転状態による断面図である。
図3】伝動装置の第2の操作状態による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を用いて本発明を具体的に説明する。
【0017】
図1は、ここでは詳しく図示していない自動車のマスタブレーキシリンダのためのブレーキ倍力装置の簡略図を示す。ブレーキ倍力装置1は、ここでは簡略的に示された駆動モータ2を有しており、この駆動モータ2は電動機として構成されていて、伝動装置3によって圧力ピストンと作用接続されている。この場合、圧力ピストンはここでは部分的にだけ縦断面で示されている。圧力ピストンは、外ねじ5を有する中空ロッドとして構成されている。圧力ピストンは、軸方向で一端部がマスタブレーキシリンダに機械的に接続されていて、軸方向で他端部が、ブレーキ倍力装置1を有する自動車のブレーキペダルに機械的に接続されている。この場合、圧力ピストンは、ブレーキペダルの操作時にマスタブレーキシリンダを操作する力をマスタブレーキシリンダに加えるために、軸方向でシフト可能に構成されている。
【0018】
圧力ピストン4は、外ねじ5によってスピンドルロッドを形成しており、このスピンドルロッドにスピンドルナット6が回転可能に配置されている。スピンドルナット6は部分的に内ねじ7を有していて、この内ねじ7が外ねじ5と噛み合う。この場合、外ねじ5および内ねじ7はそれぞれ台形ねじとして構成されている。外ねじ5は軸方向で見て、内ねじ7の2倍よりも大きい区分に亘って延在している。スピンドルナット6が矢印8で示されているように回転運動させられると、互いに噛み合う台形ねじによって、矢印9で示されているように、スピンドルロッドを形成する圧力ピストン4の軸方向運動が生ぜしめられる。
【0019】
さらに、スピンドルナット6は外歯10を有しており、この外歯10は、軸方向に延在する複数の歯を有している。さらに、スピンドルナット6は一端部に軸方向ストッパ11を有しており、この軸方向ストッパ11は円錐形の長手方向区分を有している。
【0020】
さらに、伝動装置3は駆動リング歯車12を有しており、この駆動リング歯車12は、外歯10と噛み合う内歯13を有している。外歯10と内歯13とが軸方向に向けられていることによって、スピンドルナット6は駆動リング歯車12に対して軸方向にシフト可能である。さらに、駆動リング歯車12は外歯を有しており、この外歯によって駆動リング歯車12は中間歯車15と作用接続されており、この中間歯車15は変速段を有していて、電動機2の駆動ピニオン14と噛み合う。
【0021】
電動機2が制御されると、駆動リング歯車12にトルクが加えられ、駆動リング歯車12は内歯13によってスピンドルナット6と連動してスピンドルナット6を回転運動させる。スピンドルロッド4若しくは圧力ピストンは相対回動不能に支承されているので、スピンドルナット6の回転によって圧力ピストンの軸方向運動が生ぜしめられ、マスタブレーキシリンダが操作される。これによって、自動的なブレーキ操作が開始され得るか、または追加的な制動力の発生によって運転者が支援され得る。電動機2が反応するよりも早く運転者がブレーキペダルを操作するか、または電動機2若しくはブレーキ倍力装置1が故障している場合、運転者は、駆動リング歯車12に関連したスピンドルナット6の軸方向シフト可能性に基づいて、圧力ピストンを純粋に機械的に操作することができる。この場合、圧力ピストンはスピンドルロッドをスピンドルナット6と共に駆動リング歯車12を貫通して軸方向に押しやる。ばね部材16、特にコイルばねによって、軸方向ストッパ11を有するスピンドルナット6は駆動リング歯車12に押し戻され、それによって、軸方向ストッパ11は駆動リング歯車12に当接し、それ以上のシフトは不可能となる。このかぎりで、ばね部材16によって、伝動装置3は初期状態に向かって付勢される。
【0022】
図2は、台形ねじの領域内における伝動装置3の拡大図を示す。台形ねじは一般的に、スピンドルナットの回転方向切換え時にアイドルストロークおよび騒音を避けるために、内ねじと外ねじとの間の遊び、特にバックラッシュができるだけ小さくなるように製造される。しかしながらこの実施形態では、外ねじ5のねじ山頂部と内ねじ7のねじ山谷底若しくはねじ山基底部との間の頂部遊びk、外ねじ5のねじ山谷底と内ねじ7のねじ山頂部との間の基底部遊びf、並びに互いに向き合う歯面のバックラッシュaとが、ブレーキ倍力装置1の耐用年数を高めるために、互いに所定の比で構成されている。
【0023】
本例では、頂部遊びkおよびバックラッシュaは、基底部遊びfと比較してより大きく構成されている。この場合、特に、バックラッシュaは、スピンドルナット6の内ねじ7の歯幅Bの10%に相当する。また、頂部遊びkは、同様にスピンドルナット6の内歯7の歯幅Bの10%に相当する。基底部遊びfは、どのような想定された運転条件および周囲条件下でも、特に温度および空気湿度に関連して、歯列の食い込みが確実に避けられるように保証する最小値を有している。このかぎりで、基底部遊びfは、この最小値を考慮して、できるだけ小さく選定されている。好適な形式で、外ねじ5と内ねじ7との間に潤滑剤17が設けられており、この潤滑剤17は、スピンドルナット6と圧力ピストン4との間の摩耗を減少させる。通常運転中に、作業負荷は、最初に潤滑された作業面18を介して吸収される。通常運転中に力を伝達するために互いに隣接している作業面18に十分な潤滑剤を規則的に供給するか若しくは作業面18を後潤滑するために、ブレーキ倍力装置1は規則的な間隔で逆方向に駆動され、それによってスピンドルナット6の回転方向は逆転され、作業面が切換わる。この際に、特に図3に示されているように、バックラッシュaは克服される。この場合、存在する潤滑剤17は、バックラッシュ8の閉鎖時に、図3に矢印19で示されているように、作業面18の領域内に押しずらされる。システムが、例えば制動力を電動機式に生ぜしめるために再び通常駆動されると、ねじ5,7は、これらのねじ5,7の新たに潤滑された作業面で互いに当接し合う。
【0024】
従って、ブレーキ倍力装置1の本例の構成によって、簡単な形式およびやり方で高い耐用年数が得られる。この場合、例えばブレーキ倍力装置1に対応配設されたコントロールユニットに実装された論理は、スピンドル伝動装置の操作装置が、潤滑剤を供給するために規則的に逆転されるように保証する。
【符号の説明】
【0025】
1 ブレーキ倍力装置
2 駆動モータ、電動機
3 伝動装置、
4 圧力ピストン、スピンドルロッド
5 外ねじ、台形ねじ
6 スピンドルナット
7 内ねじ、台形ねじ
10 外歯
11 軸方向ストッパ
12 駆動リング歯車
13 内歯
16 ばね部材
a バックラッシュ
k 頂部遊び
f 基底部遊び
B 歯幅
図1
図2
図3