(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スクロール部の周方向における角度位置θを横軸にとり、前記第1グラフの傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|を縦軸にとった第2グラフにおいて、前記絶対値|d(A/R)/dθ|の最大値と最小値との平均値を前記第2グラフがとる角度位置をθAVE1とすると、
前記スクロール部は、前記周方向において前記角度位置θAVE1よりも下流側の角度位置において、前記軸方向におけるスロート幅の最小値を有する、請求項1に記載のタービン。
前記スクロール部の周方向における角度位置θを横軸にとり、前記第1グラフの傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|を縦軸にとった第2グラフにおいて、前記角度位置θが0°の位置における前記第1グラフの傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|と前記角度位置θが360°の位置における前記第1グラフの傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|との平均値を前記第2グラフがとる角度位置をθAVE2とすると、
前記スクロール部は、前記周方向において前記角度位置θAVE2よりも下流側の角度位置において、前記軸方向におけるスロート幅の最小値を有する、請求項1又は2に記載のタービン。
前記スクロール部は、前記周方向において下流側に向かうにつれて前記軸方向におけるスロート幅が減少するよう構成された区間部を含む、請求項1乃至3の何れか1項に記載のタービン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の少なくとも一実施形態は、上記特許文献1に記載される従来技術を更に改良したものであり、その目的とするところは、排気脈動を考慮した高効率なタービン及びこれを備えるターボチャージャを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るタービンは、タービン動翼と、前記タービン動翼を収容するタービンハウジングと備え、前記タービンハウジングは、前記タービン動翼を収容するシュラウド部と、前記タービン動翼の外周側に形成されたスクロール部と、前記スクロール部と前記シュラウド部とを接続する連通部と、を含み、前記スクロール部の流路断面積をAとし、前記スクロール部の流路断面の図心から前記タービン動翼の回転軸線までの距離をRとすると、前記スクロール部の周方向における角度位置θを横軸にとり、前記距離Rに対する前記流路断面積Aの比A/Rを縦軸にとった第1グラフが少なくとも一部において凹型の分布を含むように、前記スクロール部が構成されており、前記スクロール部は、前記周方向における第1角度範囲に属する第1区間部と、前記周方向における第1角度範囲よりも下流側の第2角度範囲に属し、前記タービン動翼の軸方向において前記第1区間部のスロート幅よりも小さいスロート幅を有する第2区間部と、を含む。
【0008】
スクロール部からのスクロール流れの流速ベクトルの大きさは、排気脈動によって変化する。具体的には、排気脈動によってタービン動翼の入口圧が一時的に大きくなるタイミングでスクロール流れの流速ベクトルが大きくなり、排気脈動によってタービン動翼の入口圧が一時的に小さくなるタイミングでスクロール流れの流速ベクトルが小さくなる。このため、タービン動翼の入口の位置におけるタービン動翼に対するスクロール流れの相対速度ベクトルも、排気脈動によって変化する。
【0009】
一方、スクロール部の流路断面積Aは、下流側に向かうにつれて小さくなるため、スクロール部の流路断面における単位流量に対する濡れ面積(単位流量当たりのスクロール部36の流路壁面と排ガスとの接触面積)は、下流側に向かうにつれて大きくなる。このため、スクロール部では、排ガスの持つエネルギーが大きい入口側で極力エネルギーを回収することが効率の観点から好ましい。
【0010】
そこで、上記(1)に記載のタービンでは、脈動によって排ガスのエネルギーの大きさが変動することを考慮し、排気脈動によって一時的に大きくなったスクロール流れのエネルギーをスクロール部の入口側で効率的に回収するために、第1グラフが少なくとも一部において凹型の分布を含むようにスクロール部が構成されている。
【0011】
これにより、スクロール部の入口側での第1グラフの傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|が、末端側での第1グラフの傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|よりも大きくなり、スクロール部の入口側でのスクロール流れの流れ角(スクロール流れが周方向に対してなす角度)を、スクロール部の末端側でのスクロール流れの流れ角より大きくすることが容易となる。すなわち、スクロール部の入口側での動翼入口流れの流れ角(動翼入口流れが径方向に対してなす角度)を、スクロール部の末端側での動翼入口流れの流れ角より大きくすることが容易となる。
【0012】
したがって、排気脈動によってタービン動翼の入口圧が一時的に高くなったタイミングでスクロール部の入口側における動翼入口流れの流れ角が最適な流れ角に近い角度となるように、スクロール部を構成することができる。よって、排気脈動によって一時的に大きくなったスクロール流れのエネルギーをスクロール部の入口側で効率的に回収することが可能となり、排気脈動を考慮した高効率なタービンを実現することができる。
【0013】
ただし、この場合において軸方向におけるスクロール部のスロート幅を何も工夫せずに周方向位置によらず一定に設定すると、スクロール部の末端側では、排気脈動によってタービン動翼の入口圧が一時的に大きくなったタイミングで、動翼入口流れの流れ角が最適な流れ角から大きくずれてしまう。
【0014】
そこで、上記(1)に記載のタービンは、スクロール部の末端側でも回収できるエネルギーを高めるように構成されており、スクロール部は、周方向における第1角度範囲に属する第1区間部と、周方向における第1角度範囲よりも下流側の第2角度範囲に属し、軸方向において第1区間部のスロート幅よりも小さいスロート幅を有する第2区間部とを含む。
【0015】
本願発明者の知見によれば、スクロール流れの流れ角αは、下記式(a)によって表すことができる。
(但し、bは、軸方向におけるスクロール部36のスロート幅である。)
【0016】
このため、上記のように第1グラフが少なくとも一部において凹型の分布を含むようにスクロール部が構成されている場合であっても、スクロール部の末端側の第2区間部でスロート幅を小さくすることにより、第2区間部におけるスクロール流れの流れ角αの減少を抑制することができる。したがって、スクロール部の末端側の第2区間部においても、排気脈動によってタービン動翼の入口圧が一時的に高くなったタイミングで動翼入口流れの流れ角が最適な流れ角に近い角度となるように、スクロール部を構成することができる。よって、排気脈動を考慮した、より高効率なタービンを実現することができる。
【0017】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のタービンにおいて、前記スクロール部の周方向における角度位置θを横軸にとり、前記第1グラフの傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|を縦軸にとった第2グラフにおいて、前記絶対値|d(A/R)/dθ|の最大値と最小値との平均値を前記第2グラフがとる角度位置をθ
AVE1とすると、前記スクロール部は、前記周方向において前記角度位置θ
AVE1よりも下流側の角度位置において、前記軸方向におけるスロート幅の最小値を有する。
【0018】
上記(2)に記載のタービンによれば、スクロール部における角度位置θ
AVE1よりも下流側において、排気脈動を考慮してスクロール流れの適切な流れ角を設定することができ、より高効率なタービンを実現することができる。
【0019】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載のタービンにおいて、前記スクロール部の周方向における角度位置θを横軸にとり、前記第1グラフの傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|を縦軸にとった第2グラフにおいて、前記角度位置θが0°の位置における前記第1グラフの傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|と前記角度位置θが360°の位置における前記第1グラフの傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|との平均値を前記第2グラフがとる角度位置をθ
AVE2とすると、前記スクロール部は、前記周方向において前記角度位置θ
AVE2よりも下流側の角度位置において、前記軸方向におけるスロート幅の最小値を有する。
【0020】
上記(3)に記載のタービンによれば、スクロール部における角度位置θ
AVE2よりも下流側において、排気脈動を考慮してスクロール流れの適切な流れ角を設定することができ、より高効率なタービンを実現することができる。
【0021】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載のタービンにおいて、前記スクロール部は、前記周方向において下流側に向かうにつれて前記軸方向におけるスロート幅が減少するよう構成された区間部を含む。
【0022】
上記(4)に記載のタービンによれば、スクロール部の流路壁面に段差を設けることなく、排気脈動を考慮してスクロール流れの適切な流れ角を設定することができ、高効率なタービンを実現することができる。
【0023】
(5)本発明の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャは、上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載のタービンを備える。
【0024】
上記(5)に記載のターボチャージャによれば、上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載のタービンを備えるため、排気脈動を考慮した高効率なターボチャージャを実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、排気脈動を考慮した高効率なタービン及びこれを備えるターボチャージャが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の幾つかの実施形態に係るターボチャージャを概略的に示す縦断面図である。
【
図2】
図1中のII−II線に沿う概略的な断面図である。
【
図3】スクロール部36における比A/Rを説明するための図である。
【
図4】スクロール部36の周方向における角度位置θを横軸にとり、距離Rに対する流路断面積Aの比A/Rを縦軸にとった場合における、角度位置θと比A/Rとの関係を示す第1グラフg1を、従来例に係る線形減少のグラフとともに示す図である。
【
図5】スクロール部36の周方向における角度位置θを横軸にとり、
図4に示した第1グラフG1の傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|を縦軸にとった場合における、角度位置θと絶対値|d(A/R)/dθ|との関係を示す第2グラフg2を、上記従来例のグラフとともに示すグラフである。
【
図6】スクロール部36の周方向における角度位置θを横軸にとり、軸方向におけるスクロール部36のスロート幅bを縦軸にとった場合における、角度位置θとスロート幅bとの関係を示す第3グラフG3を、比較例に係るスロート幅bが一定のグラフとともに示す図である。
【
図7】スクロール流れの流速ベクトルと、動翼周速の速度ベクトルと、動翼入口流れの流速ベクトルとの関係を説明するための図であり、動翼入口流れの流れ角が最適な流れ角である状態を示している。
【
図8】排気脈動によって変化する動翼入口流れの流速ベクトルを示す図である。
【
図9】スクロール部36の入口側でのスクロール流れの流れ角αの一例を、最適な流れ角とともに示す図である。
【
図10】スクロール部36の出口側でのスクロール流れの流れ角αの一例を、最適な流れ角とともに示す図である。
【
図11】排気脈動によって動翼の入口圧が変動した場合における、スクロール部36の入口側での動翼入口流れの流れ角の変化の一例(実施例)を、最適な流れ角とともに示す図である。
【
図12】排気脈動によって動翼の入口圧が変動した場合における、スクロール部36の末端側での動翼入口流れの流れ角の変化の一例(比較例)を、最適な流れ角とともに示す図である。
【
図13】排気脈動によって動翼の入口圧が変動した場合における、スクロール部36の末端側での動翼入口流れの流れ角の変化の一例(実施例例)を、最適な流れ角とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0028】
図1は、本発明の幾つかの実施形態に係るターボチャージャを概略的に示す縦断面図である。ターボチャージャは、例えば、車両や船舶等に適用される。
ターボチャージャは、タービン10と、コンプレッサ12とを備える。タービン10は、タービンハウジング14と、タービンハウジング14に収容されたタービン動翼(羽根車)16とを含み、コンプレッサ12は、コンプレッサハウジング18と、コンプレッサハウジング18に収容されたインペラ20とを含む。
【0029】
タービン10のタービン動翼16とコンプレッサ12のインペラ20は、シャフト22によって相互に連結されている。タービン10のタービン動翼16は、例えば、内燃機関から排出された排ガスによって回転させられ、これによりシャフト22を介してコンプレッサ12のインペラ20が回転させられる。そして、コンプレッサ12のインペラ20の回転によって、内燃機関に供給される吸気が圧縮される。
【0030】
例えば、タービンハウジング14は、タービンケーシング24と、タービンケーシング24と結合された端壁26とからなり、シャフト22は端壁26を貫通している。端壁26は、タービンケーシング24とベアリングハウジング28との間に挟まれており、ベアリングハウジング28は、軸受を介して、シャフト22を回転自在に支持している。
【0031】
また例えば、コンプレッサハウジング18は、コンプレッサケーシング30と、コンプレッサケーシング30に結合された端壁32とからなり、シャフト22は端壁32を貫通している。端壁32は、ベアリングハウジング28と一体に形成されている。
【0032】
タービンハウジング14は、タービン動翼16の翼先端と対向するようにタービン動翼16を収容する筒状のシュラウド部34と、タービン動翼16の外周側に形成され、タービン動翼16の周方向に沿って延在するスクロール部(ボリュート部)36と、シュラウド部34とスクロール部36とを接続する連通部38とを有する。また、幾つかの実施形態では、タービンハウジング14は、スクロール部36に連なる流体の導入部40を有する。流体の出口は、シュラウド部34によって形成されている。
【0033】
図2は、
図1中のII−II線に沿う概略的な断面図である。以下では、特記しない限り、スクロール部36の周方向(タービン動翼16の周方向)を単に「周方向」といい、スクロール部36の径方向(タービン動翼16の径方向)を単に「径方向」といい、スクロール部36の軸方向(タービン動翼16の軸方向)を単に「軸方向」ということとする。
【0034】
スクロール部36の入口(巻き始め)は、
図2に示したように、周方向における角度位置θが0°の位置にある。なお、周方向における角度位置θが0°の位置は、スクロール部36の舌部41の先端の角度位置として定義される。舌部41は、タービンケーシング24のスクロール部36の外周壁42と導入部40の壁44とが鋭角に交わる部分である。
【0035】
そして、スクロール部36の末端(巻き終わり)は、タービン動翼16の周方向における角度位置θが360°の位置にある。なお、角度位置θの値は、スクロール部36の入口から末端に向かって増加するものとし、スクロール部36における流体の流れに沿う方向にて増加するものとする。
【0036】
一方、スクロール部36の内周縁は、タービン動翼16の軸線(回転軸)を中心として、舌部41に接する仮想的な円48によって規定されている。スクロール部36の外周縁は、スクロール部の外周壁42によって規定されており、スクロール部36の流路断面積Aは、円48とスクロール部36の外周壁42との間に区画される空間の面積である。
【0037】
図3は、スクロール部36における比A/Rを説明するための図である。A/Rは、スクロール部36の流路断面積をAとし、スクロール部36の流路断面の図心C(当該流路断面の重心)からタービン動翼16の回転軸線50までの距離をRとしたときに、距離Rに対する流路断面積Aの比である。なお、
図3では、スクロール部36の流路断面に相当する領域にハッチングが付されている。
【0038】
図4は、スクロール部36の周方向における角度位置θを横軸にとり、距離Rに対する流路断面積Aの比A/Rを縦軸にとった場合における、角度位置θと比A/Rとの関係を示す第1グラフg1を、従来例に係る線形減少のグラフとともに示す図である。
図5は、スクロール部36の周方向における角度位置θを横軸にとり、
図4に示した第1グラフG1の傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|を縦軸にとった場合における、角度位置θと絶対値|d(A/R)/dθ|との関係を示す第2グラフg2を、上記従来例のグラフとともに示すグラフである。
図6は、スクロール部36の周方向における角度位置θを横軸にとり、軸方向におけるスクロール部36のスロート幅bを縦軸にとった場合における、角度位置θとスロート幅bとの関係を示す第3グラフG3を、比較例に係るスロート幅bが一定のグラフとともに示す図である。なお、軸方向におけるスクロール部36のスロート幅bは、
図3に示すように、上記円48の位置での軸方向におけるスクロール部36の流路幅であって、軸方向における連通部38の流路幅に相当する。
【0039】
図4に示すように、スクロール部36は、周方向において下流側(末端側)に向かうにつれて比A/Rが単調減少するように構成されている。また、スクロール部36は、第1グラフg1が少なくとも一部において凹型の分布を含むように構成されている。すなわち、入口側(巻き始め側)での第1グラフg1の傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|が、末端側(巻き終わり側)での第1グラフg1の傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|よりも大きくなるように構成されている。
【0040】
かかる構成によれば、排気脈動を考慮した高効率なタービンを実現することができる。以下、そのメカニズムについて説明する。
【0041】
図7は、スクロール流れの流速ベクトルと、動翼周速の速度ベクトルと、動翼入口流れの流速ベクトルとの関係を説明するための図であり、動翼入口流れの流れ角が最適な流れ角である状態を示している。なお、スクロール流れの流速ベクトルは、タービン動翼16の入口(翼前縁)の位置におけるスクロール部36からの流れの流速ベクトルを意味し、動翼周速の速度ベクトルは、タービン動翼16の入口の位置におけるタービン動翼16の周速ベクトルを意味し、動翼入口流れの流速ベクトルは、タービン動翼16の入口の位置におけるタービン動翼16に対するスクロール流れの相対速度ベクトルを意味する。したがって、
図7に示すように、動翼入口流れの流速ベクトルは、スクロール流れの流速ベクトルから動翼周速の速度ベクトルを減算したものに相当する。
【0042】
ここで、スクロール流れの流速ベクトルの大きさは排気脈動によって変化する。すなわち、排気脈動によってタービン動翼16の入口圧が一時的に大きくなるタイミングでスクロール流れの流速ベクトルが大きくなり、排気脈動によってタービン動翼16の入口圧が一時的に小さくなるタイミングでスクロール流れの流速ベクトルが小さくなる。このため、
図8に示すように、動翼入口流れの流速ベクトルも、排気脈動によって変化する。
【0043】
一方、スクロール部36の流路断面積Aは、下流側に向かうにつれて小さくなるため、スクロール部36の流路断面における単位流量に対する濡れ面積(単位流量当たりのスクロール部36の流路壁面と排ガスとの接触面積)は、下流側に向かうにつれて大きくなる。このため、スクロール部36では、排ガスの持つエネルギーが大きい入口側で極力エネルギーを回収することが効率の観点から好ましい。
【0044】
そこで、タービン10では、脈動によって排ガスのエネルギーの大きさが変動することを考慮し、排気脈動によって一時的に大きくなったスクロール流れのエネルギーをスクロール部36の入口側で効率的に回収するために、上述のように、第1グラフG1が少なくとも一部において凹型の分布を含むようにスクロール部36が構成されている。
【0045】
これにより、スクロール部36の入口側での第1グラフg1の傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|が、末端側での第1グラフg1の傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|よりも大きくなり、スクロール部36の入口側でのスクロール流れの流れ角α(スクロール流れが周方向に対してなす角度;
図9参照)を、スクロール部36の末端側でのスクロール流れの流れ角α(
図10参照)より大きくすることが容易となる。すなわち、スクロール部36の入口側での動翼入口流れの流れ角β(動翼入口流れが径方向に対してなす角度;
図9参照)を、スクロール部36の末端側での動翼入口流れの流れ角β(
図10参照)より大きくすることが容易となる。なお、
図9及び
図10では、動翼入口流れの流れ角が最適な流れ角となる場合を破線で示している。
【0046】
したがって、
図11に示すように、排気脈動によってタービン動翼16の入口圧が一時的に高くなったタイミングでスクロール部36の入口側における動翼入口流れの流れ角が最適な流れ角に近い角度となるように、スクロール部36を構成することができる。よって、排気脈動によって一時的に大きくなったスクロール流れのエネルギーをスクロール部36の入口側で効率的に回収することが可能となり、排気脈動を考慮した高効率なタービンを実現することができる。
【0047】
ところで、
図6の破線に示すように、軸方向におけるスクロール部36のスロート幅bを何も工夫せずに周方向位置によらず一定に設定した場合、
図12に示すように、スクロール部36の末端側では、排気脈動によってタービン動翼16の入口圧が一時的に大きくなったタイミングで、動翼入口流れの流れ角が最適な流れ角から大きくずれてしまう。
【0048】
そこで、タービン10は、スクロール部36の末端側でも回収できるエネルギーを高めるように構成されており、
図6に例示するように、スクロール部36は、周方向における第1角度範囲W1に属する第1区間部52と、周方向における第1角度範囲W1よりも下流側の第2角度範囲W2に属し、軸方向において第1区間部52のスロート幅b1よりも小さいスロート幅b2を有する第2区間部54とを含む。
【0049】
本願発明者の知見によれば、スクロール流れの流れ角αは、下記式(a)によって表すことができる。
(但し、bは、軸方向におけるスクロール部36のスロート幅である。)
【0050】
このため、
図4に示すように第1グラフg1が少なくとも一部において凹型の分布を含むようにスクロール部36が構成されている場合であっても、スクロール部36の末端側の第2区間部54でスロート幅b2を小さくすることにより、第2区間部54におけるスクロール流れの流れ角αの減少を抑制することができる。したがって、スクロール部36の末端側の第2区間部54においても、
図13に示すように、排気脈動によってタービン動翼16の入口圧が一時的に高くなったタイミングで動翼入口流れの流れ角が最適な流れ角に近い角度となるように、スクロール部36を構成することができる。よって、排気脈動を考慮したより高効率なタービン10を実現することができる。
【0051】
幾つかの実施形態では、
図5に示すように、スクロール部36について、第1グラフg1の傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|の最大値Eと最小値Fとの平均値Mを第2グラフg2がとる角度位置をθ
AVE1とすると、スクロール部36は、
図6に示すように、周方向において角度位置θ
AVE1よりも下流側の角度位置において、軸方向におけるスロート幅bの最小値b
MINを有する。
【0052】
かかる構成によれば、スクロール部36における角度位置θ
AVE1よりも下流側において、排気脈動を考慮してスクロール流れの適切な流れ角を設定することができ、より高効率なタービン10を実現することができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、
図5に示すように、角度位置0度における第1グラフg1の傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|と角度位置360度における第1グラフg1の傾きの絶対値|d(A/R)/dθ|との平均値Nを第2グラフがとる角度位置をθ
AVE2とすると、スクロール部36は、
図6に示すように、周方向において角度位置θ
AVE2よりも下流側の角度位置において、軸方向におけるスロート幅bの最小値b
MINを有する。なお、図示する例示的形態では、N=M、θ
AVE2=θ
AVE1、及びb
MIN=b2を満たす。
【0054】
かかる構成によれば、スクロール部36における角度位置θ
AVE2よりも下流側において、排気脈動を考慮してスクロール流れの適切な流れ角を設定することができ、より高効率なタービン10を実現することができる。
【0055】
なお、
図6に示す例示的形態では、スクロール部36の第1区間部52における軸方向のスロート幅b1と、スクロール部36の第2区間部54における軸方向のスロート幅b2とはそれぞれ一定である。また、スクロール部36は、第1区間部52と第2区間部54とを接続するとともに周方向において下流側に向かうにつれて軸方向におけるスロート幅bが減少するよう構成された第3区間部56と、第2区間部54の下流側に接続するとともに周方向において下流側に向かうにつれて軸方向におけるスロート幅bが増加して舌部41の先端に接続するよう構成された第4区間部58とを含む。
【0056】
かかる構成によれば、スクロール部36の流路壁面に段差を設けることなく、排気脈動を考慮してスクロール流れの適切な流れ角を設定することができ、高効率なタービンを実現することができる。
【0057】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、
図6に示す形態では、第1区間部52における軸方向のスロート幅b1と第2区間部54における軸方向のスロート幅b2とがそれぞれ一定の場合を例示したが、第1区間部52における軸方向のスロート幅と、第2区間部54における軸方向のスロート幅とは、それぞれ周方向における角度位置θに応じて変化してもよい。