(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633765
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】遠隔キュービット間の調整可能なバス媒介結合
(51)【国際特許分類】
H01L 39/22 20060101AFI20200109BHJP
【FI】
H01L39/22 KZAA
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-533894(P2018-533894)
(86)(22)【出願日】2016年12月20日
(65)【公表番号】特表2019-506734(P2019-506734A)
(43)【公表日】2019年3月7日
(86)【国際出願番号】US2016067827
(87)【国際公開番号】WO2017127205
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2018年6月27日
(31)【優先権主張番号】15/003,232
(32)【優先日】2016年1月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503178185
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】NORTHROP GRUMMAN SYSTEMS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ネイアマン、オフェル
(72)【発明者】
【氏名】キーン、ザカリー カイル
(72)【発明者】
【氏名】スタウティモア、ミカ
(72)【発明者】
【氏名】ファーガソン、デイビッド ジョージ
【審査官】
棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0148853(US,A1)
【文献】
国際公開第2014/028302(WO,A2)
【文献】
YU CHEN ET.AL.,Qubit architecture with High Coherence and Fast Tunable Coupling,PHYSICAL REVIEW LETTERS,米国,American Physical Society,2014年11月28日,113,220502
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 39/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導システムであって、
第1のキュービットを含む第1のキュービットシステムと、
前記第1のキュービットシステムから離間し、かつ第2のキュービットを含む第2のキュービットシステムと、
前記第1のキュービットと前記第2のキュービットとの間に配置された調整可能なバス媒介カプラーであって、
第1の1/4波長伝送線路共振器を介してジョセフソン接合の第1の端部に結合された第1のポートと、前記第1のポートは、前記第1のキュービットに結合され、
第2の1/4波長伝送線路共振器を介して前記ジョセフソン接合の第2の端部に結合された第2のポートと、前記第2のポートは、前記第2のキュービットに結合され、
第1の端部では前記第1の1/4波長伝送線路共振器と前記ジョセフソン接合との間に結合され、第2の端部では接地される第1の終端インダクタと、
第1の端部では前記第2の1/4波長伝送線路共振器と前記ジョセフソン接合との間に結合され、第2の端部では接地される第2の終端インダクタとを含み、前記第1の終端インダクタ、前記ジョセフソン接合、および前記第2の終端インダクタはRF−SQUIDを形成する、前記調整可能なバス媒介カプラーと、
前記第1の終端インダクタと前記第2の終端インダクタのうちの一方に誘導結合されたバイアスインダクタであって、前記バイアスインダクタを通る電流量が、前記第1のキュービットと第2のキュービットとの間の結合強度を制御する、前記バイアスインダクタと、
前記第1および第2の終端インダクタのうちの一方に誘導結合された前記バイアスインダクタを流れる電流量を制御して、前記第1のキュービットと前記第2のキュービットとの間の強力な結合を提供する低インダクタンス状態と、前記第1のキュービットと前記第2のキュービットとの間の分離を提供する高インダクタンス状態との間で前記ジョセフソン接合のインダクタンスを制御するコントローラとを備える超電導システム。
【請求項2】
前記第1のキュービットと前記第1の1/4波長伝送線路共振器との間に結合された第1の結合コンデンサと、前記第2の1/4波長伝送線路共振器と前記第2のキュービットとの間に結合された第2の結合コンデンサとをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記RF−SQUID内に正味の磁束を誘起せず前記第1のキュービットと前記第2のキュービットとの間の結合を可能にする無電流と、前記第1のキュービットと前記第2のキュービットとの間の分離を提供する、0.1Φ0から0.45Φ0のSQUID内の正味の磁束を誘起する電流との間で前記バイアスインダクタを流れる電流を提供し、ここで、Φ0は磁束量子と等しい、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
2つの共振器の間の実効的な相互結合が、前記RF−SQUIDに印加される磁束の関数である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
共振器の間の実効的な相互結合は、前記RF−SQUID内に閉じ込められた磁束がゼロまたはΦ0の整数倍に近いときに、終端インダクタのインダクタンスの積を、前記ジョセフソン接合および前記終端インダクタのインダクタンスとの和で除算したものに等しい、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記RF−SQUID内に閉じ込められた磁束がΦ0/2に近いとき、共振器の間の実効的な相互結合が負となる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
システムは、異なるバス周波数を有する2つの発振固有モードを示し、2つのモードは、共振器の両端の電圧が180度位相をずらして発振する、前記システムの半波長周波数に近いバス周波数を有する奇数モードと、共振器の両端の電圧が同相で発振する、異なるバス周波数を有する偶数モードとを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
共振器の間の実効的な相互結合は、前記RF−SQUID内に閉じ込められた磁束がゼロまたはΦ0の整数倍に近いときに、終端インダクタのインダクタンスの積を、前記ジョセフソン接合および前記終端インダクタのインダクタンスの和で除算したものに等しく、前記偶数モードおよび前記奇数モードは、実効的な相互結合に比例した量だけ周波数が分割される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記バス周波数から離調されるキュービットの周波数によって特徴付けられる分散領域においてキュービット間の実効的なバス媒介相互作用が存在する、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1のキュービットと前記第1の1/4波長伝送線路共振器との間に結合された第1の結合コンデンサと、前記第2の1/4波長伝送線路共振器と前記第2のキュービットとの間に結合された第2の結合コンデンサとをさらに備え、前記分散領域におけるキュービット間の実効的なバス媒介相互作用の結合強度は、2つのキュービットの周波数が等しい場合、結合コンデンサを介した各共振器に対するキュービットの固定結合強度と、前記奇数モードからの離調と前記偶数モードからの離調との積で除算されたバスモード分割の2倍との積に等しい、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して超電導回路に関し、より詳細には、遠隔キュービット間の調整可能なバス媒介結合に関する。
【背景技術】
【0002】
量子計算およびシミュレーションの基本的な課題は、様々な処理を実行するために、高度に接続されたコヒーレントキュービットの大規模システムを構築することである。超電導キュービットは、量子情報を処理するためにマクロ回路を利用し、かつこの目的のための将来有望な候補である。最近、材料研究および回路の最適化は、キュービットコヒーレンス(qubit coherence)の大幅な向上をもたらしている。超電導キュービットは、コヒーレンス時間内に何百もの演算を実行できるようになり、エラー訂正などの複雑なアルゴリズムの研究が可能となった。多くの適用では、コヒーレントな局所演算と動的に変化するキュービット相互作用との両方が可能となるので、これらの高コヒーレンスキュービットを、調整可能なキュービット間結合と組み合わせることが望ましい。量子計算では、単一のキュービットゲートに対する分離を提供すると同時に、デコヒーレンスによるエラーを最小化する高速の2個のキュービットゲートを可能にする。調整可能な結合におけるこれまでの試みにもかかわらず、これらの応用は、高コヒーレンスデバイスで調整可能な長距離結合を取り入れるという課題のために、現在のところ実現されていない。
【発明の概要】
【0003】
一例では、第1の共振器を介して可変インダクタンス結合要素の第1の端部に結合された第1の入力ポートと、第2の共振器を介して可変インダクタンス結合要素の第2の端部に結合された第2の入力ポートとを含む調整可能なバス媒介結合システムが提供される。第1の入力ポートは、第1のキュービットに結合されるように構成され、第2の出力ポートは、第2のキュービットに結合されるように構成される。コントローラは、第1キュービットと第2のキュービットとの間の強力な結合を提供する低インダクタンス状態と、第1のキュービットと第2のキュービットとの間の分離を提供する高インダクタンス状態との間で可変インダクタンス結合要素のインダクタンスを制御するように構成される。
【0004】
別の例では、第1のキュービットを有する第1のキュービットシステムと、第1のキュービットシステムから離間し、かつ第2のキュービットを有する第2のキュービットシステムとを含む超電導システムが提供される。調整可能なバス媒介カプラーが、第1のキュービットと第2のキュービットとの間に配置される。調整可能なバス媒介カプラーは、第1のキュービットを第2のキュービットに強力に結合する第1の状態と、第1のキュービットを第2のキュービットから分離する第2の状態とを有する。
【0005】
さらに別の例では、第1のキュービットを含む第1のキュービットシステムと、第1のキュービットシステムとは離間し、かつ第2のキュービットを含む第2のキュービットシステムと、第1および第2のキュービット間に配置された調整可能なバス媒介カプラーとを含む超電導システムが提供される。調整可能なバス媒介カプラーは、第1の共振器を介してジョセフソン接合の第1の端部に結合された第1の入力ポートと、第2の共振器を介してジョセフソン接合の第2の端部に結合された第2の入力ポートとを備える。第1の入力ポートは第1のキュービットに結合され、第2の出力ポートは第2のキュービットに結合される。調整可能なバス媒介カプラーは、第1の端部で第1の共振器とジョセフソン接合との間に結合され、かつ第2の端部で接地される第1の終端インダクタと、第1の端部で第2の共振器とジョセフソン接合との間に結合され、かつ第2の端部で接地される第2の終端インダクタとを含み、第1の終端インダクタ、前記ジョセフソン接合、および前記第2の終端インダクタは、RF−Squidを形成する。バイアスインダクタは、第1の終端インダクタおよび第2の終端インダクタの一方に誘導結合されている。バイアスインダクタを通る電流の量によって、第1および第2のキュービット間の結合強度が制御される。コントローラは、第1および第2の終端インダクタの一方に誘導結合されたバイアスインダクタを通る電流量を制御して、第1のキュービットと第2のキュービットとの間の強力な結合を提供する低インダクタンス状態と第1のキュービットと第2のキュービットとの間の分離を提供する高インダクタンス状態との間でジョセフソン接合のインダクタンスを制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】
図1において使用可能な調整可能なバス媒介カプラーの一例の概略図である。
【
図3】偶数(破線)モードと奇数(実線)発振モードを示す組み合わされた結合共振器システムの長さに沿った電圧のグラフを示す。
【
図4】周波数分割偶数および奇数モードを生成する
図2のハイブリッド化された左右の共振器を示す概略レベルの図である。
【
図5】特定の磁束設定のシミュレーション結果を示す図形パネルを示す。
【
図6】磁束依存結合による偶数および奇数バスモードの周波数分割を示すグラフィックパネルを示す。
【
図7】磁束依存臨界電流に応じたバスモード分割およびキュービット対キュービットバス媒介結合の依存性を示すシミュレーション結果のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、概して超電導回路に関し、より詳細には、遠隔キュービット間の調整可能なバス媒介結合(またはカプラー)に関する。一例では、可変インダクタンス結合要素が、別々の遠隔超電導システムに存在し得る2つのキュービットの間に配置される。可変インダクタンス結合要素は、キュービット間の強力な結合状態と非結合(または分離)状態との間で調整するとともに、キュービット間の中間結合強度の様々な状態に調整することができる。このようにして、非結合状態で独立したキュービットの状態情報に対して操作を行うことができ、一方、強力な結合状態の間に状態情報をキュービットの間で交換することができる。さらに、状態情報は、キュービット間の中間結合強度状態において、元のキュービットの状態情報を破壊することなく、キュービット間で操作および通過させることができる。一例では、可変インダクタンス結合要素は、ジョセフソン接合であり得る。可変インダクタンス結合要素は、単一のジョセフソン接合またはN個のジョセフソン接合の直列アレイとして配置することができ、それぞれが元のジョセフソン接合よりN倍大きい臨界電流を有する。
【0008】
別の例では、RF−SQUID調整可能なカプラーは、半波長共振器バスの中間に埋め込まれたジョセフソン接合を含む。RF−SQUIDは、結合のためにキュービット間のバス媒介分散相互作用を可能にする。バス媒介結合の利点は、キュービットが物理的に、例えば量子プロセッサチップ上の別個の回路ブロック内に互いに離れて配置することができることである。所望のときに本質的にオフにすることができる調整可能なカプラーの利点は、周波数の混雑とキュービット間の望ましくない残留相互作用の低減である。さらに、相互作用強度は、製造プロセスのばらつきを補償するために現場で較正および調整することができ、かつ計算プロトコルの一部としてリアルタイムで制御することができる。
【0009】
ジョセフソン接合は、SQUIDに電流が誘起されないか、または低電流が誘起される場合に第1のインダクタンスを有し、かつ例えば、約0.1Φ
0を超え、約0.45Φ
0未満の磁束を生成または誘導する所定の閾値である電流またはより高電流が個々のSQUIDにおいて誘起される場合に第2のインダクタンスを有することができる。ここで、Φ
0は、磁束量子と等しい。第1のインダクタンス(例えば、hバー/2e*1/I
C、hバーはプランク定数を2πで除算したものであり、eは電子電荷であり、I
Cはジョセフソン接合の臨界電流である)は第1のキュービットと第2のキュービットとの間の結合を提供する。第2のインダクタンス(例えば、大きなインダクタンス値)は、第1のキュービットと第2のキュービットとの間の非結合を提供することができる。
【0010】
図1は、超電導システム10の一例のブロック図を示す。超電導システムは、調整可能なカプラーシステム14を介して第2のキュービットシステム16に結合された第1のキュービットシステム12を含む。第1のキュービットシステム12は、キュービット(11,1)からキュービット(1、N)とラベル付けされた複数のキュービットを含み、第2のキュービットシステム16は、キュービット(2,1)からキュービット(2、N)とラベル付けされた複数のキュービットを含み、(X、N)は、キュービットシステムを表すXを提供し、Nはキュービットシステム内のキュービット番号を表し、Nは1以上の整数である。第1のキュービットシステム12及び第2のキュービットシステム16は、個々のゲート動作、エラー訂正動作、メモリ動作、又は様々な任意の他の超電導動作のような個々の論理動作を実行する別個の論理ブロックとすることができる。第1のキュービットシステム12および第2のキュービットシステム16は、他のキュービットシステムのキュービットに結合されていないが、様々なキュービットおよび他の超電導動作を実行するその個々のシステムにおける他のキュービットに結合され得る様々な追加のキュービットおよび他の超電導要素を含むことができる。
【0011】
第1のキュービットシステム12内の各キュービットは、調整可能なカプラー1から調整可能なカプラーNとラベル付けされたN個の調整可能なカプラーを有する調整可能なカプラーシステム14の個々の調整可能なカプラーによって第2のキュービットシステム16内の個々のキュービットに結合されている。各調整可能なカプラーは、対向するキュービットシステム12および16の2つの独立したキュービットの間の結合強度の制御を可能にするように調整することができる可変インダクタンス結合要素をそれぞれ含む。可変インダクタンス結合要素は、調整可能なバス媒介カプラーを介して2つの独立したキュービットの遠隔結合を可能にするように2つの共振器の間に配置される。一例では、可変インダクタンス結合要素は、2つの共振器の間に配置されたRF SQUID内に存在するジョセフソン接合である。超電導スイッチングシステム10はまた、スイッチコントローラ18およびバイアス要素16を含む。可変インダクタンス結合要素は、バイアス要素16およびスイッチコントローラ18を介して磁束によって結合および非結合するとともに、対向するキュービットシステム12および16における個々の独立したキュービット間の結合強度を制御するように制御される。
【0012】
図2は、
図1において使用可能な調整可能なバス媒介カプラー30の一例の概略図である。調整可能なバス媒介カプラー30は、第1の1/4波長伝送線路共振器TL1と第2の1/4波長伝送線路共振器TL2とからなる。第1の結合コンデンサC1は第1のポート(ポート1)を第1の1/4波長伝送線路共振器TL1の第1の端部に結合し、第2の結合コンデンサC2は第2のポート(ポート2)を第2の1/4波長伝送線路共振器TL2の第1の端部に結合する。第1のポート(ポート1)は第1のキュービットに結合され、第2のポート(ポート2)は第2のキュービットに結合される。第1の1/4波長伝送線路共振器TL1の第2の端部は、第1の終端インダクタL1を介してグランドに短絡され、第2の1/4波長伝送線路共振器TL2の第2の端部は、第2の終端インダクタL2を介してグランドに短絡される。終端インダクタL1とL2との間にさらにジョセフソン接合J1が接続されており、ジョセフソン接合J1は終端インダクタL1およびL2と共にRF−SQUID32を形成する。
【0013】
RF−SQUID32は、第3のポート(ポート3)と第4のポート(ポート3)との間にバイアスインダクタンスL3を介して流れる電流によって誘起される相互インダクタンスMによりRF−SQUIDループ内で誘起される磁束Φ
eによって制御される可変トランスとして機能する。ジョセフソン接合J1とRF−SQUID32内の線形インダクタンスL1、L2との比によって決定されるような、RF−SQUID32内に閉じ込められた磁束Φ
eがΦ
0/2の相当量(appreciable fraction)であるとき、2つの共振器TL1とTL2との間の実効的な相互結合は本質的にゼロである。閉じ込められた磁束がゼロに近いか、またはΦ
0の整数倍であるとき、共振器TL1とTL2との間の実効的な相互結合はかなりの程度のM
eff=L
1*L
2/(L
J1+L
1+L
2)に等しい。閉じ込められた磁束がΦ
0/2に近くなると、実効的な相互結合はかなりの程度の負となる。従って、2つの共振器TL1とTL2との間の実効的な相互結合M
eff(Φ
e)は、印加される磁束の関数である。バイアスインダクタンスL3を流れる電流を変化させることによって磁束がゼロとΦ
0/2との間で変化して、第1のポート(ポート1)および第2のポート(ポート2)に結合される第1および第2のキュービット間の実効的な結合の強度を変化させることができる。
【0014】
図3は、偶数(破線)と奇数(実線)の発振モードを示す
図2の組み合わされた結合共振器の長さに沿った電圧のグラフ40を示す。2つの伝送線路共振器TL1とTL2との間の結合により、組み合わされたシステムは異なる周波数を有する2つの発振固有モードを示す。最初の偶数モードは、組み合わされたシステムの半波長周波数に近い周波数Ω
0を有し、伝送線路の両端の電圧が180度位相をずらして発振する。偶数モードは、異なる周波数Ωeを有し、伝送線路の両端の電圧が同相で発振する。結合が正であるとき、偶数モードの周波数は奇数モードの周波数よりも大きい。結合が負の場合、偶数モードの周波数は奇数モードの周波数よりも小さい。いずれの場合も、偶数モードと奇数モードは、実効的な相互M
eff(Φ
e)に比例した量2g
cで周波数が分割される。
【0015】
図2のコンデンサC1およびC2を介して結合共振器バスの2つのポートに接続されたキュービットは、各々バスの偶数モードと奇数モードの両方で相互作用する。分散領域(dispersive regime)では、キュービットの周波数がバスの周波数から十分に離調されると、キュービット間の実効的なバス媒介相互作用が存在する。しかしながら、偶数モードによる媒介された相互作用の符号は、奇数モードによる相互作用の符号とは反対であり、従って、総合的な実効的な媒介結合は、2つのバスモードによる結合のバランスとして決定することができる。特に、2つの寄与は、大きさが等しく、符号が反対であり、その結果、結合がキャンセルされる。
図4は、周波数分割偶数および奇数モードを生成するハイブリッド化された左右の共振器と、左右のキュービットがそれぞれ個々に奇数モードから離調Δ
L、Roおよび偶数モードから離調Δ
L、Reすることを示す概略レベルの
図50である。
【0016】
分散領域におけるキュービット間の全体的なバス媒介結合は、以下の式によって離調の関数として与えられる。
【0017】
【数1】
ここで、g
L、Rは、
図2のコンデンサC1およびC2を介した各共振器に対するキュービットの固定結合強度である。2つのキュービットの周波数が等しい場合、Δ
Le=Δ
Re=Δ
eおよびΔL
o=Δ
Ro=Δ
oとなり、実効的なバス媒介キュービット結合の式は以下のように簡略化される。
【0018】
【数2】
ここで、g
effはg
cにより、かつ潜在的にΔ
eおよびΔ
oにより磁束Φ
eに依存し、これらは、全て磁束依存である。
【0019】
アジレント社のアドバンスト・デザイン・シミュレーション(ADS)ツールシミュレーションを、線形インダクタで近似された接合部を用いて実施し、その際、線形インダクタの値は、公称ゼロ電流ジョセフソン・インダクタンスの値の50倍大きい値に変更した。特定の磁束設定に関するシミュレーションの結果は、
図5のパネル60および
図6のパネル70に示されている。
図5は、実効的な相互作用g
effに起因するキュービットスペクトルにおける分割を示し、
図6は、磁束依存結合g
cによる偶数および奇数バスモードの周波数分割を示す。このシミュレーションにより、g
effのg
cに対する関数依存性が確認され、ジョセフソン接合の磁束調整可能なインダクタンスに対するg
cの予想される依存性が確認される。
【0020】
図7は、キュービットバス周波数離調のある値に対する接合部の磁束依存臨界電流の関数として、バスモード分割g
cおよびキュービット対キュービットのバス媒介結合g
effの依存性を示すシミュレーション結果のグラフ80を示す。示されている例では、バス周波数はキュービット周波数よりも高いが、バス周波数がキュービット周波数よりも低い場合、同じ動作が再現される。
【0021】
要約すると、RF−SQUID調整可能カプラーは、組み合わされたシステムが、媒介されたキュービット対キュービット相互作用に対して反対の信号で寄与する2つのモードを有する量子バスを形成するように、2つの4分の1波長共振器の間に埋め込まれている。従って、キュービット間の総合的な実効的な相互作用は、2つのバスモードからの媒介された結合に対する寄与の間のバランスとして磁束によって調整可能である。所望するときに本質的にオフにすることができる調整可能な結合の利点は、周波数集中およびキュービット間の望ましくない残留相互作用の減少である。さらに、相互作用の強度は、製造プロセスのばらつきを補償するために現場で較正および調整することができ、かつ計算プロトコルの一部としてリアルタイムで制御することができる。
【0022】
上記の説明は、本発明の例である。当然のことながら、本発明を説明する目的で構成要素または方法の考えられるすべての組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者であれば、本発明の多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることを認識するであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を含む本出願の範囲内に含まれるそのような変更、修正、および変形をすべて包含することが意図されている。