特許第6633766号(P6633766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633766
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】摺動可能な継手を有したパッチ型注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20200109BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   A61M5/158 500Z
   A61M5/142 522
【請求項の数】29
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-535062(P2018-535062)
(86)(22)【出願日】2016年10月10日
(65)【公表番号】特表2018-532525(P2018-532525A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】US2016056227
(87)【国際公開番号】WO2017062935
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2018年7月3日
(31)【優先権主張番号】62/284,806
(32)【優先日】2015年10月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/204,542
(32)【優先日】2016年7月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/281,536
(32)【優先日】2016年1月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/269,248
(32)【優先日】2016年9月19日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518123372
【氏名又は名称】ウェスト ファーマ サービシーズ イスラエル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カビリ オズ
(72)【発明者】
【氏名】ノートン ポール エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ヒズキヤ ラン
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−515669(JP,A)
【文献】 特表2006−507067(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0194854(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0296824(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00−5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針を有する少なくとも1つの流体容器と、
皮膚に対して取り付けられた表面を含み、前記流体容器に結合されたフレームと、
を備え、
前記表面を含む前記フレームは、前記流体容器に対して少なくとも第1の継手と第2の継手とにより接続されており、前記第1の継手および前記第2の継手は、それぞれ、前記流体容器をスライド可能に前記フレームと係合させ、前記第1の継手および前記第2の継手の第1の自由度を規定しており、
前記第1の継手および前記第2の継手のうちの少なくとも一方は、前記表面に対して第2の自由度を有し、
前記第2の自由度は、前記フレームに対する前記流体容器の回転を可能とする回転自由度であり、
前記第2の継手は、前記第1の継手と前記針との間に存在し、前記第1の継手の前記第1の自由度を制限するようになっており、
前記流体容器が前記表面に対して回転するとき、前記第1の継手および前記第2の継手の少なくとも一方によって許容される前記流体容器の回転と同時に前記第1の継手および前記第2の継手によって許容される前記流体容器の並進移動は、前記針の移動経路を曲線経路から直線経路に変換し、前記針の先端部分が前記直線経路に対し5°以下となって前記表面を横切るようにする
注射器。
【請求項2】
前記第1の継手の並進経路の少なくとも一部分と、前記第2の継手の並進経路の一部分とが互いに対して角度を有している
請求項1に記載の注射器。
【請求項3】
前記第2の継手の前記並進経路の少なくとも一部分は湾曲している
請求項2記載の注射器。
【請求項4】
前記第2の継手の前記並進経路の少なくとも一部分は正弦曲線である
請求項2記載の注射器。
【請求項5】
前記第2の継手の前記並進経路の少なくとも一部分は蛇行している
請求項2記載の注射器。
【請求項6】
双方の自由度が同一の平面上にある
請求項1に記載の注射器。
【請求項7】
前記流体容器は前記表面に対して回転し、
前記針の先端部分の通過経路の少なくとも一部分は、少なくとも前記第1および前記第2の自由度が前記皮膚の表面を直線に沿って横切ることによって画定される
請求項1に記載の注射器。
【請求項8】
前記一部分は前記針の傾斜の近位縁である
請求項7記載の注射器。
【請求項9】
前記針の傾斜角度は、前記直線に対しておおよそ平行である
請求項7記載の注射器。
【請求項10】
前記針は皮膚内に前記針の直径(Φ’)の2倍の大きさの直径(Φ)を有する入口孔を形成する
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の注射器。
【請求項11】
前記流体容器は前記表面に対して回転し、
前記針の少なくとも一部分の通過経路の少なくとも一部分は、少なくとも前記第1の継手の前記並進経路および前記第2の継手の前記並進経路が前記皮膚の表面に対し直線に沿って交差することによって画定される
請求項2記載の注射器。
【請求項12】
前記並進経路のうち少なくとも1つの少なくとも一部分は前記皮膚に対して平行である
請求項2に記載の注射器。
【請求項13】
前記針の前記移動経路の少なくとも一部が、前記回転自由度と並進自由度との組み合わせによって画定される
請求項3記載の注射器。
【請求項14】
前記針の前記移動経路の少なくとも一部が、前記回転自由度と並進自由度との少なくとも一方によって画定される
請求項3記載の注射器。
【請求項15】
前記一部分は前記針の先端である
請求項7記載の注射器。
【請求項16】
前記第1および第2の自由度は、前記針が前記皮膚の前記表面にて前記直線経路に対して3°未満の角度で横切る、通過経路を画定する
請求項7記載の注射器。
【請求項17】
前記一部分は、前記流体容器の本体とは離れている前面に面し、傾斜した開口端を含む先端である
請求項7記載の注射器。
【請求項18】
前記針の先端部分は、前記回転自由度によって画定される曲線に対して接線方向に向いている
請求項4に記載の注射器。
【請求項19】
前記第1の継手および前記第2の継手の少なくとも1つは、少なくとも1つのピンインスロットヒンジを含む
請求項1に記載の注射器。
【請求項20】
少なくとも1つのスロットが前記皮膚の表面に対して平行をなしている
請求項19記載の注射器。
【請求項21】
前記第1の継手および前記第2の継手の少なくとも1つが前記注射器の非針端である後端と針端である前端との間に位置する
請求項1に記載の注射器。
【請求項22】
前記流体容器は、少なくとも1つの傾斜したヘッドと、そのヘッドの先端に取り付けられたプランジャとを含み、
前記第1の継手および前記第2の継手の少なくとも1つは、前記表面に取り付けられた少なくとも1つのスロット付きシリンダを含み、前記傾斜したヘッドと前記プランジャとをスライド可能に格納するための大きさを有し嵌め込まれている
請求項1に記載の注射器。
【請求項23】
前記針の少なくとも一部分は弾性を有する
請求項1、請求項2、請求項6から請求項8、請求項12から請求項22のいずれか1項に記載の注射器。
【請求項24】
前記針の少なくとも一部分は湾曲している
請求項1、請求項2、請求項6から請求項8、請求項12から請求項22のいずれか1項に記載の注射器。
【請求項25】
前記第1の継手および前記第2の継手の少なくとも1つは、少なくとも1つの溝と、前記溝に対してスライド可能に収容される少なくとも1つの突出部とを含む
請求項1、請求項2、請求項6から請求項8、請求項12から請求項22のいずれか1項に記載の注射器。
【請求項26】
前記第1の継手および前記第2の継手の少なくとも1つは弾性素材を含む
請求項1、請求項2、請求項6から請求項8、請求項12から請求項22のいずれか1項に記載の注射器。
【請求項27】
針を有する少なくとも1つの流体容器と、
皮膚に対して取り付けられた表面を含み、前記流体容器に対して少なくとも第1の継手と第2の継手とによって結合されたフレームと
を備え、
前記第1の継手および前記第2の継手は、それぞれ、前記フレームに対する前記流体容器の並進経路を規定することにより、前記第1の継手および前記第2の継手の第1の自由度を規定し、
前記第1の継手および前記第2の継手のうち少なくとも一方は前記表面に対して前記流体容器の回転を可能にする少なくとも第2の回転自由度を有し、前記第1の継手および前記第2の継手の少なくとも一方は少なくとも2つの結合アームを含み、
前記第2の継手は、前記第1の継手と前記針との間に存在し、前記第1の継手の前記第1の自由度を制限するようになっており、
前記流体容器が前記表面に対して回転するとき、前記第1の継手および前記第2の継手の少なくとも一方によって許容される前記流体容器の回転と同時に前記第1の継手および前記第2の継手によって許容される前記流体容器の並進移動は、前記針の移動経路を曲線経路から直線経路に変換し、前記針の先端部分が前記直線経路に対し5°以下となって前記表面を横切るようにする
注射器。
【請求項28】
少なくとも1つの前記結合アームは前記表面に対して旋回可能に結合されている
請求項27記載の注射器。
【請求項29】
前記少なくとも2つの前記結合アームは、互いに旋回可能に結合されている
請求項27記載の注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野および背景)
本発明は、そのいくつかの実施形態において、自己注射器に関し、より詳細には、但しこれに限定されるものではないが、パッチ型自己注射器に関する。
【0002】
皮下(SC:subcutaneous)注射は、皮下、一般的には皮膚と筋肉との間の脂肪組織に、薬剤を投与する方法である。例えば再利用可能な使い捨てのペン、自動注射器、および皮膚の表面に付着させるパッチ型注入器などの自動注射器を使用して生物学的な皮下注射を行うことが現在の傾向であり、使用者が自宅にて自己注射を自由に行うことが可能となっている。
【0003】
多くの場合、改質薬剤は、高濃度であり、ときには高粘性を有し、1mLを超える注射量であることが望まれる。高粘度の製品の場合、10秒未満の注射であっても痛みを伴う可能性があるので、結果として使用者が治療計画に従わなくなる可能性がある。ペン型やその他の直立型注射器を正確な角度で10秒を上回る時間、あるいは数分間に亘って静止させ続けることは、ときには使用者に対し困難となることもある。したがって、自己投与型SC注射用のパッチ型自動注射器やパッチ型自己注射器が、より一般的になりつつある。
【0004】
さらなる背景技術としては、米国特許第6,843,782号および米国特許第5,858,001号が含まれる。
【発明の概要】
【0005】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、針を有する1または複数の流体容器と、皮膚と当接する表面とを含む注射器が開示される。その表面は、1または複数の第1の継手および1または複数の第2の継手により、少なくとも1つの継手の1つ以上の部分が摺動可能になるように、流体容器に接続されている。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態によると、第1の継手の摺動可能な部分の並進経路の少なくとも一部分と第2の継手の並進経路の一部分とが互いに対して角度を有している。第2の継手の一部分の並進経路の少なくとも一部分は第1の継手の一部分の並進経路の少なくとも一部分を制限している。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態によると、第2の継手の並進経路の少なくとも一部分は湾曲している。本発明のいくつかの実施形態によると、第2の継手の並進経路の少なくとも一部分は正弦曲線である。本発明のいくつかの実施形態によると、第2の継手の並進経路の少なくとも一部分は蛇行している。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によると、1つ以上の継手が表面に対して2つ以上の自由度を有する。その1つ以上は回転自由度であり、双方の自由度は同一平面上にある。流体容器が表面に対して回転すると、少なくとも2つの自由度によって画定された針の1つ以上の部分の移動経路の1つ以上の部分が、直線に沿って皮膚の表面を横切る。本発明のいくつかの実施形態によると、部分とは針の傾斜部の近位端である。本発明のいくつかの実施形態によると、針の傾斜角は直線経路に対しておおむね平行である。本発明のいくつかの実施形態によると、針は、針の直径(Φ')の2倍の直径(Φ)を有する入口孔を形成する。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態によると、流体容器が表面に対して回転するとき、針の一部分またはそれ以上の通過経路の1つ以上の部分は、少なくとも2つの平行移動の経路が皮膚表面を直線に沿って横切ることによって画定される。本発明のいくつかの実施形態によると、1つ以上の経路平行移動が皮膚に平行であり、針の1つ以上の部分が、回転自由度と並進自由度との組み合わせによって定義される経路に沿って移動する。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によると、針は、その1つ以上の部分が1つ以上の回転自由度および並進自由度によって画定される経路に沿って移動する。本発明のいくつかの実施形態によると、当該部分は針先端である。本発明のいくつかの実施形態によると、当該部分は針の傾斜の上方端である。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によると、少なくとも2つの自由度は、針の1つ以上の部分が直線に対して3°未満で傾斜した皮膚の表面と交差する移動経路を規定する。本発明のいくつかの実施形態によると、当該部分は前向き(流体容器本体と離れた向き)の傾斜した開口端を有した先端であり、針の1つ以上の部分は回転自由度によって規定される曲線に対して接線方向である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によると、針の1つ以上の部分は、回転自由度によって画定される曲線の半径に対して垂直である。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、1つ以上の継手は1つ以上のピンインスロットヒンジを含んでいる。本発明のいくつかの実施形態によると、1つ以上のスロットは皮膚に対して平行であるように配向されている。本発明のいくつかの実施形態によると、第1の継手および第2の継手のうちの1つ以上は注射器の後端(非針端)と前端(針端)との間に位置している。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、流体容器はさらに、1つ以上の傾斜ヘッドと、そのヘッドの先端に結合されたプランジャとを含む。1つ以上の継手は、表面に対して結合した、傾斜ヘッドとプランジャとを摺動可能に収容する大きさを有して適合されている、スロット付きシリンダを1つ以上含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、針の1つ以上の部分は弾力性を有する。本発明のいくつかの実施形態では、針の1つ以上の部分は湾曲している。本発明のいくつかの実施形態では、1つ以上の継手は1つ以上の溝と、その溝に摺動可能に収容可能な1つ以上の突出部とを含む。本発明のいくつかの実施形態では、1つ以上の継手は弾性部材を含む。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態の一つの側面によれば、針を有する1つ以上の流体容器と、皮膚に取り付けられ、1つ以上の第1の継手および第2の継手によって流体容器に結合される表面とを含む注射器が提供される。1つ以上の継手は、少なくとも2つの結合アームを含む。本発明のいくつかの実施形態によると、1つ以上の結合アームは表面に対してピボット結合している。本発明のいくつかの実施形態によると、結合アームは互いに対してピボット結合している。
【0018】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載された方法および材料と類似、または同等の方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験に使用することができるが、例示的な方法、および/または材料を以下に記載する。紛争の場合、定義を含む特許明細書が支配する。さらに、材料、方法、および実施例は例示に過ぎず、必ずしも限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明のいくつかの実施の形態を、ほんの一例として、添付図面を参照しつつ説明する。ここで、図面を具体的にかつ詳細に参照するが、図示された事項は一例であり、本発明の実施の形態を例示的に説明するためのものであることを強く主張する。この点に関し、当業者であれば、図面を考慮することによって、本発明の実施の形態をどのように実施し得るかを説明から明らかにすることができる。添付図面において:
図1A図1B)本技術分野で知られている自己注射器の簡略化した断面図である。
図2)固定長半径を介して回転点に接続された接線点による曲線経路の形成を示す簡略図である。
図3A図3B図3C)半径を介して回転点に接続された接線点の曲線移動経路を実質的に直線的な移動経路に変換する、任意の継手の簡略図である。
図4A図4B図4C)自己注射器の例示的な実施形態の3つの連続した操作段階を示す側面簡略図である。
図5A図5B図5C図5D図5E)自己注射器の針、および皮膚への針の貫通時に針の角度に対する継手の影響を示す簡略図である。
図5F図5G)皮膚に侵入する針の斜角に対する背圧に対する注射器の継手調整効果を示すグラフである。
図6A図6B図6C図6D)自己注射器の例示的な実施形態の動作段階の簡略化された側面図および断面図である。
図7A図7B図7C図7D)自己注射器の例示的な実施形態の動作段階の簡略化された側面図および断面図である。
図8A図8B図8C)自己注射器の例示的な実施形態の簡略化された側面図および平面図である。
図9A図9B)本発明による自己注射器の例示的な実施形態の側面図である。
【0020】
(発明の特定の実施形態の説明)
本発明は、そのいくつかの実施の形態において、自己注射器(self injector)に関するものであり、特に、これに限定されるものではないが、パッチ型自己注射器に関する。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態の一側面は、皮膚に接した表面の少なくとも一部分に対して接続した少なくとも2つの継手と流体容器とを有した自己注射器に関しており、1つの継手のうち1つの少なくとも一部分は継手の他の部分に対して摺動可能である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの継手は摺動式継手を含んでよい。いくつかの実施形態において、第2の継手の通過経路は、第1の継手の一部分の通過経路を制限する。いくつかの実施形態において、当該制限は通過経路間の角度に依存する。いくつかの実施形態において角度は鋭角である。いくつかの実施形態において角度は90°未満である。いくつかの実施形態において、2つの継手の通過経路は同一平面上にある。
【0022】
いくつかの実施形態では、流体容器はシリンジである。いくつかの実施形態において、流体容器はカートリッジである。いくつかの実施形態において、流体容器はバイアルである。
【0023】
いくつかの実施形態では、継手は少なくとも1つのスロットを含んでいる。いくつかの実施形態では、継手は少なくとも1つのレールを含んでいる。いくつかの実施形態では、継手は少なくとも1つの溝を含んでいる。いくつかの実施形態では、継手は少なくとも1つのスリーブを含んでいる。いくつかの実施形態では、スリーブは針の周囲に配置される。いくつかの実施形態では、スリーブは少なくとも1つのスロットを含んでいる。いくつかの実施形態では、流体容器およびフレームは互いに対して摺動可能である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの継手は少なくとも2つの連結アームを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、注射器の後端(非針端)に少なくとも1つの継手が配置されている。いくつかの実施形態では、注射器の前端(針端)に少なくとも1つの継手が配置されている。いくつかの実施形態では、注射器の後端(非針端)と前端(針端)との間に少なくとも1つの継手が配置されている。いくつかの実施形態では、皮膚への進入点を維持しつつ、注射針の貫通角度が変化する。いくつかの実施形態では、注射針は、皮膚への進入点を維持しながら、移動経路に対する針の進入角度を変えると同時に少なくとも2つの面に沿って移動する。
【0025】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの継手は平面継手を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの継手は非平面継手を含む。いくつかの実施形態では、継手付き注射器は平面継手および非平面継手の双方を含む。いくつかの実施形態では、平面継手の少なくとも一部分と非平面継手の少なくとも一部分とが、回転軸に対して垂直をなす同一平面上にある。いくつかの実施形態では、平面継手と非平面継手とは、回転軸に対して垂直をなす同一平面上にはない。いくつかの実施形態では、平面継手はピンインスロット継手を含んでいる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの継手は1つの自由度を有する。いくつかの実施形態では、継手は2つの自由度を有する。いくつかの実施形態では、継手は2を超える自由度を有する。いくつかの実施形態では、継手は少なくとも1つの軸方向自由度を有する。いくつかの実施形態では、継手は少なくとも1つの回転自由度と1つの軸方向自由度を有する。いくつかの実施形態では、回転自由度と軸方向自由度とは同一平面上にある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの継手は、回転軸に対し垂直である旋回軸の周りで、フレームおよび流体容器における相互の旋回運動を防止する。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態の一側面は、皮膚に取り付けられた表面の少なくとも一部と流体容器とを接続する少なくとも2つの継手を有する自己注射器に関するものであり、継手の1つ以上は、表面に対して少なくとも2つの自由度を含み、そのうち少なくとも1つは回転自由度である。いくつかの実施形態において、自由度の双方は同一の平面上にある。いくつかの実施形態において、その平面は皮膚に対して垂直である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態の一側面は、皮膚に取り付けられた表面の少なくとも一部と針を有した流体容器とを接続する、少なくとも2つの継手によって規定される、流体容器の針の少なくとも一部についての移動経路に関する。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の継手は、表面に対する少なくとも2つの自由度を含み、それらのうち少なくとも1つは回転自由度である。いくつかの実施形態では、2つの自由度によって規定される、針の少なくとも一部分の移動経路は、直線に沿って皮膚の表面を横切る。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態の一側面は、液体容器の針が皮膚の表面を直線に沿って横切り、その直線に対して3°未満の角度をなす移動経路に関する。いくつかの実施形態では、流体容器の針の少なくとも一部分の進入角度は、皮膚に取り付けられた表面の少なくとも一部分と、針が取り付けられた流体容器とに接続された、少なくとも2つの継手によって規定される。いくつかの実施形態では、1つ以上の継手は表面に対する少なくとも2つ以上の自由度を含み、それらのうちの少なくとも1つは回転自由度である。いくつかの実施形態において、針は傾斜した先端を含む。いくつかの実施形態において、針の傾斜は前方(流体容器から離れる方向)に向かっている。いくつかの実施形態において、針は湾曲している。
【0029】
図面の図3ないし図8に示されている、本発明のいくつかの実施形態をよりよく理解する目的で、図1Aおよび図1B図1と総称する)における自動注入装置の構成および動作が参照される。図1は、当技術分野で知られている自己注射器の断面略図である。
【0030】
図1Aに示すように、自己注射器102は流体容器104と、一般的に流体容器104の長手方向軸に対して垂直に配向されている針106とを含む。流体容器104は、定位置に固定されている、すなわち固定位置から動かないヒンジ110を介し、基部108に回転可能に連結されている。操作時には図1Bに示されるように、基部108は皮膚の表面112に配置され、流体容器104は、針106が皮膚の表面112を進入点170において貫通するように、ヒンジ110を中心に矢印150で示す方向に回転される。
【0031】
針106の皮膚内への挿入にあたって、針106の先端114は、矢印190で示される曲線経路に従う。矢印190の成分は、流体容器104の回転軸方向に向けられた内向き半径方向運動成分(図2も参照)である。針の先端114の内向きの半径方向運動は、いくつかの例では、進入点170と最終静止点175との間の曲線経路190のすぐ後に組織116を引き伸ばし、場合によっては引き裂く可能性がある。図1Bに示すように、先端114は、それが取り付けられる流体容器の本体または回転軸に面する傾斜した開口118を備える。先端114の曲線経路190に沿った、進入点170と最終静止点175との間において、組織が開口118内部に押し込まれ、針先端114が閉塞することがある。
【0032】
図2は、図1Bの経路190のような曲線経路の形成を示す簡略図である。図2において、接線方向点202は、固定長半径(r)を介して回転点(P)に接続されている。回転点(P)は定位置に固定されている。すなわち、回転点(P)の位置は不変である。点202が水平線(h)を横切る矢印250によって示される方向に動かされると、固定長半径(r)および固定された所定の回転点(P)は点202の移動を曲線経路270に制限する。曲線経路270に沿った動きは、回転点(P)の方に向けられた、運動の半径方向内向き成分275を含んでよい。いくつかの場合において、点202は針106の先端114を表し、また水平線(h)は皮膚の表面112を表すことがある。
【0033】
発明の実施形態の少なくとも1つを詳細に説明する前に、本発明はその適用において、以下に図面、および/または例示によって、記述、および/または図解される、構成の詳細および構成要素の配置、および/または方法に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、もしくは様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0034】
いくつかの自己注射器では、注射針が移動する経路の形状が重要である。上述したように、運動の半径方向内向き成分275を最小限に抑えながら、実質的に直線的な(直線の)経路に沿って組織を貫通する針は、場合によっては、過度の組織伸張および場合によっては裂け目(例えば、図1Bの116)などの組織損傷を軽減する。上述したように、図3Aおよび図3B図3と総称する)は、半径方向(r)を介して回転点(P)に接続された接線点の移動経路を曲線経路から実質的に直線(直線)経路に変換し、半径方向内向き成分275を最小にする、任意の機構を示す簡略図である。いくつかの実施形態において、接線方向の点は針の一部を含み、針は半径(r)に対して垂直である。
【0035】
いくつかの実施形態において、水平線(h)上部から水平線(h)下部までの接線点304の曲線的な移動は、接線直線経路306に沿って矢印352によって示される方向の直線移動に変換することができる。図3Aによって示すいくつかの実施形態において、半径(r)は少なくとも1つの弾性部材308、例えば半径(r)を許容するばねを含む。いくつかの実施形態において、弾性部材308は線形弾性部材であってよい。いくつかの実施形態において、弾性部材308は伸長して経路306上の点304を維持する。これに代わって、かつ任意に、いくつかの実施形態において、図3Bに示すように、半径(r)は固定長であり、回転点(P)は経路306上の点304を維持する必要に応じて経路306に近づくように移動することができる。
【0036】
円に接する経路に沿って移動する針の空間的な向きの概略図である図3A図3Bおよび図3Cに示す例において、点304は針の先端を、水平線(h)は皮膚表面112を表している。いくつかの例において、制限要素、例えば、弾性部材308(図3A)の抵抗または物理的障壁は、点304の経路306への平行移動を制限してよい。
【0037】
より小さい規模では、図3Cに示し、本明細書の他の部分にて詳細に説明するとおり、場合によっては機械的制限のために、継手(例として継手の操作機構を図3Aおよび図3Bに図示)は針の経路306に沿った移動の半径方向内向き成分275を除去してよい。しかしながら、図3Cに図示するとおり、針本体は、経路306を移動中に僅かに回転することがあり、さらに針先端(接線点403)は経路306から僅かにずれることがある。いくつかの例において、限定因子、例えば弾性部材308の抵抗(図3A参照)または物理的障壁は、交差点の水平線(h)における針の角度を経路306から3°未満に維持する。図3Aないし図3Cに詳細を示すように、いくつかの実施形態において、回転点(P)は、皮膚に取り付けられた表面に対して2つ以上の自由度を有する継手を含み、少なくとも1つは回転自由度である。いくつかの実施形態において、双方の自由度は同一平面上にある。いくつかの実施形態において、当該平面は皮膚に対して垂直である。いくつかの実施形態において、並進自由度は直線を画定する。いくつかの実施形態において、並進自由度は皮膚に対して平行である。
【0038】
この開示の他の部分で説明されるように、注射による使用者の不快感は、主に針が皮膚に貫通する経路の性質および皮膚に侵入する貫通経路に対する針の角度によってもたらされ得る。例えば、湾曲経路(図1Bも参照)に沿って皮膚を貫通する針は、皮膚および皮下組織を断裂して、使用者に不快感を与える可能性がある。それに加えて、またはこれに代わって、皮膚の直線的な貫通経路に関して過剰に傾斜した針は、同様に使用者に不快感を引き起こす可能性がある。
【0039】
図4A図4Bおよび図4C図4と総称する)は、自己注射器の針を皮膚に導入する間の自己注射器の、例示的な実施形態の3つの連続する操作段階を示す側面図の簡略図である。いくつかの実施形態では、自己注射器400は使用者の皮膚表面に接着されたパッチ型自己注射器である。いくつかの実施形態では、自己注射器は、表面404と、針410を有する流体容器408とを連結させる、少なくとも1つの継手402/420を有している。いくつかの実施形態では、フレーム404は使用者の皮膚に取り付けられている。いくつかの実施形態では、表面404はフレームを含む。いくつかの実施形態では、継手402/420は少なくとも1つの自由度を有している。いくつかの実施形態では、継手402/420は表面404に対して少なくとも2つ以上の自由度を有している。いくつかの実施形態では、自由度のうち少なくとも1つは回転自由度である。例えば、流体容器408を継手402/420回りに回転させることによって針410は皮膚412の表面と交差し、皮膚412を貫通する。いくつかの実施形態では、双方の自由度は皮膚412に垂直である同一平面上にある。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの自由度は、並進移動の自由度を含み、例えば流体容器408と針410とを任意に軸方向に前後方向(すなわち、注射器400の後端(非針端)から前端(針端)への方向、およびその逆の方向)に移動させる。
【0040】
図4に例示した実施形態では、流体容器408は支持板406によって支持される。支持板406は、流体容器408と少なくとも1つの針410とを少なくとも支持するように取り付けられている。例示的な実施形態では、自己注射器400は、支持板406とフレーム404とを回転可能に接続する1つ以上の継手402/420を備える。図4に示す実施形態の継手402は、支持板406に取り付けられ、フレーム404内の細長いスロット418を介してフレーム404に摺動可能に係合する少なくとも1つの第1のピン405を備える。細長いスロットは、針410が直線状に移動し、本開示の他の箇所に記載されているように、適切に調整された角度(β)で皮膚412の表面に入るように計算された、直線、曲線、蛇行線、正弦曲線または任意の幾何学的形状の形状である。いくつかの実施形態では、細長いスロット418は、フレーム404の長軸、流体容器408の長軸および皮膚表面412に平行な長手方向に向けられ、任意に第1のピン405に対して前後方向(後端(非針端)から注射器400の前端(針端)に向かう方向、またはその逆方向)に自由に移動する。いくつかの実施形態では、ピン405および細長いスロット418は、皮膚の表面412に対して垂直である平面上のフレーム404の長軸に平行なピンインスロットジョイントを形成する。いくつかの実施形態では、ピン405および細長いスロット418は、皮膚の表面412に平行な平面上のフレーム404の長軸に平行なピンインスロットジョイントを形成する。
【0041】
いくつかの実施形態において、支持板406は、流体容器408の傾斜ネック416から突出する少なくとも1つの針410を有する少なくとも1つの流体容器408を支持するように適合される。いくつかの実施形態において、針410の少なくとも一部は流体容器408の長手方向軸に対して垂直である。いくつかの実施形態において、針410の少なくとも一部は支持板406に対して垂直である。
【0042】
図4に例示した実施形態において、支持板406がフレーム404に対して継手402の周りを、矢印450にて指示した方向に回転することにより、それによって支持された流体容器408の共回転をもたらし、針410を皮膚表面412に向かって移動させる。いくつかの実施形態において、継手402は、流体容器408のフレーム404に対する、前方向(注射器400の後端(非針端)から前端(針端)に向かう方向)および後ろ方向の移動と、任意に軸に沿った移動を支持する。
【0043】
いくつかの実施形態では、注射器400は、第2のピン422を含む第2の継手420を少なくとも備える。第2のピン422は、支持板406に取り付けられ、フレーム404内の細長いスロット424を介してフレーム404に摺動可能に係合する。いくつかの実施形態では、第2の継手420は継手402の前方向への移動および後方向への移動を制限し、また任意に軸方向の移動を制限する。制限の度合いは継手402と継手420の並進経路間の角度(α)に依存する。図4において、並進経路は夫々の継手402/420内の夫々の細長いスロット418/424によって画定される。図4に例示した実施形態において、細長いスロット424は前方に傾斜する傾斜426に沿って、継手402および420の並進経路間の角度(α)が40〜90°、50〜80°、60〜70°、90°よりも大きい、または40°未満、もしくはその中間の角度を形成するよう配向される。支持板406がフレーム404に対して継手402の周りを回転すると、細長いスロット424はピン422を傾斜426に沿って案内し、任意に続いて軸周りに支持板と第1のピン405とを前方上方へと、角度αにて画定される限界まで持ち上げる。
【0044】
支持板406および流体容器408の、フレーム404に対する回転と同時に起こる、支持板406および流体容器408の前方への移動は、流体容器408の前端(針端)上の傾斜ネック416の曲線運動を、本明細書の他の部分にて説明するように、針414の直線的な接線方向の動きへ変換することに寄与する。図4A図4Bおよび図4Cにて図示するのは、支持板406および流体容器408が、皮膚表面412に平行な任意の高い角度状態から最終水平状態へと回転し続けるように、針先端414を皮膚に導入する連続段階である。針先端414は、本開示の他の箇所で論じられた少なくとも2つの自由度によって規定される経路に沿って移動し、皮膚表面412に近づき、最終的に貫通する。任意に、針先端414は、図3Aおよび図3Bにて示す経路306に類似した接線方向の直線経路452を矢印455方向に移動する。
【0045】
継手402/420の複合作用の潜在的な利点は、皮膚表面412を通る針先端414の直線的な移動経路を形成し、針を皮膚に導入する間に使用者に与える不快感を低減することにある。
【0046】
図5A図5B図5C図5Dおよび図5E図5と総称する)は、皮膚412に対して図3において示した角度にて針の先端414が貫通する効果を示す、継手の例示的な実施形態における針410の先端414の側面図の簡略図である。
【0047】
本開示の他の箇所で論じられるように、いくつかの実施形態において、継手402/420は針先端の半径方向内向き成分275を低減するだけでなく、直線移動経路306に対する針410の本体の傾斜または角度を補償する。角度(β)が小さくなると、針410を皮膚内に導入する際に使用者が経験する不快感が低減される。図5Aに示すように、いくつかの実施形態では、針410は角度(β)だけ傾斜している。いくつかの実施形態では、角度(β)は直線経路452に対して5°未満であり、あるいは3°未満であり、あるいは1°未満であり、あるいは5°を超え、あるいはその中間の角度である。
【0048】
いくつかの実施形態において、針410の直線経路452に対する角度(β)は、針先端414を直線経路452から微小にずらす。図5Aないし図5Eにおいて、先端414は、直線経路452に関して針の角度の変化による偏差(d)の距離だけ直線経路452から微妙に外れてよい。いくつかの実施形態において、偏差(d)の距離は、針先端414の侵入点504と皮膚表面412との間で、皮下組織内の先端414の最終静止位置506まで測定される。
【0049】
任意に、本開示の他の部分において論じられるように、針開口の閉塞と高背圧を防止するために、いくつかの実施形態において、針先端414の傾斜した開口502は上方(すなわち、取り付けられている流体容器の本体から離れた方向)を向いている。
【0050】
図5Bは例示的な実施形態を示し、当該図において、継手402/420は針410の傾斜角を経路452と平行に近づくように適正に調整し、針先端414の経路452からの偏差(d)を最小限にし、皮膚表面412に最適サイズの入口孔506を形成する。針先端414を、侵入点504から最終静止位置575まで移動させることにより、後側(すなわち、流体容器408本体側)の組織508は圧縮され、前側(すなわち、流体容器418の本体から離れる側)の組織510は伸長される。そして針先端414から離れた側において開口502は、注射に抵抗する背圧の発生と針先端414の開口における閉塞の発生とを低減する。
【0051】
いくつかの実施形態と図5Cにおいて、針410の角度(β)が適正に調整されると、針410は注射部位の最終静止位置575への到着時に最適化された大きさを持つ入口孔506を形成する。その直径(Φ)は、針410の直径(Φ')に対して1.5〜2.5倍の大きさであって、例えばΦ=1.5Φ',Φ=2Φ',Φ=2.25Φ', Φ=2.35Φ', Φ=2.5Φ'、あるいはその中間倍の大きさである。
【0052】
最適サイズの入口孔506の潜在的な利点は、皮膚表面の引き裂きに伴う痛みが最小限であり、注射期間中の皮膚表面の開口部の直径が小さいことにより、皮膚の表面および表面の外側に注入される注射可能なものの漏れの可能性が最小限に抑えられることである。
【0053】
いくつかの実施形態と図5Dにおいて、継手402/420の過度の補償(すなわち、継手402の前方への過度の移動)は、針410を後方へと過度に傾斜させ(すなわち、流体容器418本体側へと傾かせ)、組織510を先端414から前方(すなわち、流体容器418の本体から離れた側)へと圧縮し、組織508を先端414から後方(すなわち、流体容器418の本体側)へと伸長させる。そして注射に抵抗する背圧と、矢印552で示す針先端414の傾斜した開口502の閉塞とを増大させる。
【0054】
いくつかの実施形態と図5Eに示すように、継手402/420の補償のもとで(すなわち、継手402の前方への充分でない移動下で)、針410が過度に前方に傾き(すなわち、流体容器418の本体から傾斜し)、皮膚表面412を伸長させ、皮膚412への穿刺によって孔512が拡大されることがある。大きい穿刺孔は、矢印554で示すように、注射部位からの漏れを発生させることがある。
【0055】
いくつかの実施形態において、継手402/420は、傾斜502の近位(上側)端(図5A参照)が直線経路452を辿るように配向されている。いくつかの実施形態において、継手402/420は、少なくとも針410の中央の長手方向軸が直線経路452を辿るように配向されている。直線経路452と皮膚表面412との交点(すなわち、針先端414の皮膚表面412に対する侵入点504)がいったん既知となると、継手402/420は、継手402/420/808の少なくとも一部分の前方への移動が針410の先端414の経路452に沿った移動を維持し、また先端414が皮膚に対して侵入点504において挿入されるように移動するよう、針410の角度をできるだけ経路452に平行となるように保持してよい。
【0056】
少なくとも継手402/420の複合作用の潜在的な利点は、針410の角度を可能な限り移動経路に維持しながら、皮膚表面412を通る針先端414の直線移動経路を形成することと、皮膚内部への針の導入中に使用者への不快感を低減することにある。
【0057】
角度(β)が小さくなると、針410が皮膚内部へと導入された際に使用者が感じる不快感が低減される。いくつかの実施形態において、針410の傾きに起因する針先端414の経路452からの偏差(d)の距離は、0.1〜1.0mm、あるいは0.2〜0.5mm、あるいは0.3〜0.4mm、あるいは0.1mm未満、あるいは1.0mmを上回り、もしくはその中間値である。
【0058】
図5Fおよび図5Gは、針が皮膚に進入する経路を通って生じる針の斜角に対する、背圧についての注射器の継手の調整(例えば、補償)の効果を示すグラフである。図5Fは、通過経路および/または針が皮膚内に侵入する際の針の傾きに対する補償などの調整の不足に起因する、皮膚への注射液の注入に対する高い背圧(抵抗)を示している(図5Dも併せて参照すること)。図5Fに示すように、約51秒後、注射は停止され、第2の試行は86秒後になされている。双方の事例において、注射に対する抵抗は、最初は指数関数的に0psiと33psiの間で増加し、その後対数的には24psiと43〜45psiの間で増加した。
【0059】
しかしながら、補償が適用されると、図5Gに示すように、15〜29秒後の背圧の小さな初期ピークに続いて、注射中の低プラトーが3〜4psiのレベルにとどまる。図5Fおよび図5Gは、皮膚表面を横切るときの針の移動経路および傾斜角の適切な調整補償が、針の移動経路および傾斜が補償されていない場合の背圧の80〜85%のレベルまで背圧を低減できることを示す。
【0060】
図6A図6Bおよび図6C図6と総称する)は、皮膚への針の導入中の自己注射器の例示的な実施形態の3つの連続的な操作段階を示す簡略化した側面図である。また、図6D図6AのW−W軸に沿って矢印650の向きに見た、継手602の断面を示した簡略図である。
【0061】
いくつかの実施形態において、自己注射器600は、使用者の皮膚に接着されるパッチ型自己注射器である。図6の例示的な実施形態において、自己注射器600は1つ以上の継手602を含み、流体容器408とフレーム404に対して回転可能に接続されている。これに加えて、また任意に、継手402は支持板406とフレーム404とに対して回転可能に取り付けられている。
【0062】
いくつかの実施形態において、継手602は、フレーム404に結合されたスロット付きシリンダ604を少なくとも1つ備え、摺動可能に、任意に部分的に旋回して、傾斜ヘッド416のプランジャ606を収容する。いくつかの実施形態において、シリンダ602は背面に沿って(流体容器408に面して)スロットが付けられている。いくつかの実施形態において、任意に、自己注射器600が角度が上昇した状態から皮膚表面412に平行な最終的な水平状態に回転するにつれて、傾斜ヘッド416がシリンダ604内を上下に動くことを可能にするためにスロット608が取り付けられる。任意に、いくつかの実施形態において、スロット608は、傾斜ヘッド416がシリンダ604内で部分的に自由に回転することを可能にするように適合される。いくつかの実施形態において、シリンダ602の壁は、傾斜ヘッド416の湾曲経路と針先端414との両方を摺動可能に収容するように湾曲している。
【0063】
支持板406および流体容器408がフレーム404に対して、任意に、角度が上昇した状態から皮膚表面412に平行な最終水平状態へと回転すると、プランジャ606は、シリンダ604の壁に摺動可能に係合し、針の先端414が皮膚の表面412に接近して最終的に貫通するように、シリンダ604の壁に沿ってガイドされる。そして任意に、接線直線経路452に沿って、皮膚表面412にほぼ垂直に矢印455で示す方向に移動する。任意に、プランジャ606の湾曲したシリンダ604壁面に沿った移動は、流体容器408およびそれに取り付けられた支持板406の前進運動をもたらすことができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、プランジャ606は、弾性材料、すなわち軟質ポリマーまたはエラストマー(例えば、シリコーン)で作られる。
【0065】
任意に、図6に示される例示的な実施形態は、継手402と同様の継手を含むことができる。その動作は、図4を参照して説明され、説明は繰り返されない。
【0066】
図7A図7Bおよび図7C図7と総称する)は、自己注射器の針を皮膚に導入する際の自己注射器の例示的な実施形態における3つの連続する操作段階を示す側面図の簡略図である。また、図7Dは、図7AのW−W軸に沿って矢印750の向きに見た、継手702の断面を示した簡略図である。
【0067】
いくつかの実施形態において、自己注射器700は使用者の皮膚に接着されるパッチ型自己注射器である。図7の例示的な実施形態において、自己注射器700は1つ以上の継手702を含み、流体容器408とフレーム404に対して回転可能に接続されている。これに加えて、また任意に、継手402は支持板406とフレーム404に対して回転可能に接続されている。
【0068】
いくつかの実施形態において、継手702は、フレーム404に接続されて傾斜ヘッド416を摺動可能に収容するためのスロットを少なくとも1つ有した、概念的シリンダ壁704の少なくとも一部分を含む。図7の例示的な実施形態において、概念的シリンダ壁704は、傾斜ヘッド416に取り付けられたピン722を少なくとも1つ含み、概念的シリンダ壁704に沿った細長いスロット724を介してシリンダ704と摺動可能に係合している。図7の例示的な実施形態において、細長いスロット724は概念的シリンダ壁704が傾斜ヘッド416と針先端414との曲線経路の両方を摺動可能に収容できるように湾曲している。
【0069】
支持板406および流体容器408がフレーム404に対して、任意に、角度が上昇した状態から皮膚表面412に平行な最終水平状態に回転すると、ピン722は、概念的シリンダ壁704のスロット724と摺動可能に係合し、針先端414が皮膚表面412に接近して最終的に貫通し、任意に、皮膚表面412に対してほぼ垂直な接線方向の直線路452に沿って移動する。任意に、湾曲したスロット724に沿ったピン722の移動は、流体容器408およびそれに取り付けられた支持板406の前進運動をもたらすことができる。
【0070】
任意に、図7に示される例示的な実施形態は、継手402と同様の継手を含むことができる。その動作は、本開示の他の部分を参照して説明され、説明は繰り返されない。
【0071】
図8Aおよび図8Bは、自己注射器の例示的な実施形態を示す側面および上面簡略図を表している。いくつかの実施形態において、自己注射器800は使用者の皮膚に取り付けられているパッチ型自己注射器である。
【0072】
図8A図8Bおよび図8Cの実施形態は、流体容器408およびフレーム404を回転可能に接続する継手702と類似した1つまたは複数の継手802を含む。継手702の操作は本開示の他の箇所にて説明され、説明は繰り返されない。
【0073】
図8Aおよび図8Bは自己注射器の例示的な実施形態であり、フレーム404内に溝804を有した少なくとも1つの継手802と、支持板406に取り付けられ溝804内に摺動可能に収容される突起806とを含んでいる。いくつかの実施形態において溝804は支持板406内にあり、突起806はフレーム404に対して取り付けられている。いくつかの実施形態において、継手802はフレーム404と支持板406との間の表面上に位置する。いくつかの実施形態において、継手802は、皮膚表面412に平行なフレーム404と支持板406との間の表面上に位置する。
【0074】
図8Aおよび図8Bに示した例示的な実施形態では、突起806はフィンの形態であるが、突起806は、溝804との摺動係合に適した任意の幾何学的形状を有してもよい。溝804は、流体容器408の長手方向軸に平行となるように配置される。
【0075】
支持板406および流体容器408がフレーム404に対して、任意に、角度が上昇した状態から皮膚表面412に平行な最終水平状態へと回転すると、突起806が溝804と摺動係合し、溝804に沿って案内される。いくつかの実施形態において、図6で例示したように、流体容器408および支持板406が湾曲スロット624に沿って継手602のピン622の移動によって前方に引っ張られるように、溝804の幅は、支持板406がフレーム404に対して旋回することができる程度を決定する。
【0076】
図8Cの例示的な実施形態において、注射器800は継手602に類似し、流体容器408とフレーム404とに回転可能に接続された少なくとも1つの継手802を含んでいる。継手602の操作は本開示の他の箇所にて説明され、説明は繰り返されない。いくつかの実施形態において、注射器800は、支持板406とフレーム404との間に1つ以上の継手を含んでいる。いくつかの実施形態において、継手808は1つ以上の弾性部材810を含んでいる。図8Cの例示的な実施形態において、弾性部材はばねに代表される。
【0077】
いくつかの実施形態では、支持板406と流体容器408とが回転し、任意に、角度が上昇した状態から最終水平状態へと移行し、皮膚表面412に平行となると、図6を参照して説明したように、フレーム404に対する流体容器408および支持板406が湾曲スロット624に沿ったジョイント602のピン622の移動によって前方に引っ張られるとき、弾性部材810は前進運動および旋回を減衰させる。図8Cに示す例示的な実施形態において、流体容器408と支持板406とは、ジョイント802によって前方に引っ張られている結果、支持板406とフレーム404との間に形成された間隙850が明瞭に示すように、最終的な水平状態(図6C)にある。
【0078】
例示的な実施形態では、継手808は、流体容器408と支持板406とが角度が上昇した状態にあるとき収縮状態にあるばねであってよい。当該構成において、いったん注射工程が完了して流体容器408と支持板406とが角度が上昇した状態へと巻き戻ると、継手808の弾性部材810は流体容器408および支持板406およびフレーム404を再接近させるのを補助してよい。いくつかの実施形態では、継手808は、流体容器408と支持板406とが角度が上昇した状態にあるとき休止状態にあるばねであってよい。
【0079】
図9Aおよび図9Bは、自己注射器の例示的な実施形態を示した簡略図である。いくつかの実施形態において、自己注射器900は、使用者の皮膚に接着されるパッチ型自己注射器を含む。いくつかの実施形態において、自己注射器は、表面904および流体容器908を少なくとも1つの針910と結合する少なくとも1つの継手902/920を含んでいる。いくつかの実施形態において、フレーム表面904は、使用者の皮膚に取り付けられるフレーム906の一部分を含む。いくつかの実施形態において、継手902/920は少なくとも1つの自由度を有する。いくつかの実施形態において、継手902/920はフレーム表面904に対して2つ以上の自由度を有する。いくつかの実施形態において、自由度のうち1つは回転自由度であり、例えば流体容器908を、針910が皮膚表面412と交差するように回転させる。いくつかの実施形態において、双方の自由度は、皮膚表面412に対して垂直である同一平面上にある。いくつかの実施形態において、少なくとも自由度のうち1つは並進自由度であり、例えば、流体容器908と針910とは任意に軸方向に、前後方向(すなわち、注射器900の後端(非針端)から前端(針端)、およびその逆方向)に移動する。
【0080】
図9Aおよび図9Bの例示的な実施形態において、流体容器908(例:シリンジ、バイアル、カートリッジ)は支持板906によって少なくとも流体容器908と、少なくとも1つの針910とを支持するために適合するように支持されている。例示的な実施形態において、自己注射器900は支持板906とフレーム904とに摺動可能に接続される1つ以上の継手902/920を含む。図9Aおよび図9Bによって示されている継手902は少なくとも2つの接続アームを含む少なくとも1つの継手を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、支持板906は、流体容器908の傾斜ネック916から突出する少なくとも1つの針910を有する少なくとも1つの流体容器908を支持するように適合される。いくつかの実施形態において、針910の少なくとも一部分は流体容器908の長手方向軸に対して垂直である。いくつかの実施形態において、針910の少なくとも一部分支持板906に対して垂直である。
【0082】
いくつかの実施形態では、注射器900は、支持板906に取り付けられたピン922を含む、第2の継手920を少なくとも備え、フレーム904の細長いスロット924を介してフレーム904に摺動可能に係合する。細長いスロットは、本開示の他の部分で説明されるように、直線、曲線、蛇行線、正弦曲線、または針910を直線状に移動させ、適切に調整された傾斜角(β)で皮膚412の表面に入るように計算された任意の幾何学的形状を含むことができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、継手920は継手902の移動を制限する。制限の程度は、継手902と継手920の通過経路間の角度(α)に依存する。図9Aおよび図9Bにおいて、継手902/920の平行移動の経路は、継手920の細長いスロット918、1つ以上の接続アーム950の長さ、および接続アームを互いに結合する支持板906およびフレーム904のピボット位置における回転限界によって規定される。図9Aおよび図9Bの例示的な実施形態において、細長いスロット924は、40〜90°、または50〜80°、または60〜70°、または90°以上、または40°未満、またはその中間の、継手902/920の通過経路の角度(α)で前方に減少する斜面926に沿って配向される。支持板906がフレーム904に対して継手902にて回転すると、細長いスロット924はピン922を斜面926に沿って導き、順番に支持板と第1の継手902とを、角度(α)で規定される限界まで上方へと持ち上げる。
【0084】
継手902/920の複合作用の潜在的な利点は、皮膚表面412を通る針先914の直線的な移動経路を形成し、針を皮膚に導入する間に使用者に与える不快感を低減することにある。
【0085】
用語「含む(comprises)」、「含み(comprising)」、「含む(includes)」、「含み(including)」、「有する(have)」、「有し(having)」およびそれらの活用形は「含むがしかしこれらに限られず」を意味する。
【0086】
用語「からなる」は「含み、かつこれらに限定される」を意味する。
【0087】
用語「本質的に〜からなる」は、組成物、方法または構造において、追加の成分、ステップ、および/または部分が、請求される組成物、方法または構造の基本的かつ新規である性質を実質的に変更しない場合にのみ、当該追加の成分、ステップ、および/または部分を含みうる旨を意味する。
【0088】
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の言及を含む。
【0089】
本願を通して、本発明の実施形態を範囲形式で提示することができる。範囲の形式の記載は、便宜上のものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、その範囲内のすべての可能な部分範囲および個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1〜6のような範囲の記述は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6のような下位範囲を具体的に開示したものと考えるべきであり、その範囲内の個々の数字、例えば1、2、3、4、5および6を含む。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0090】
本明細書において示された数値範囲(例:「10〜15」「10から15」、もしくはこれらの別の範囲表示によってリンクされたいかなる数字のペア)はいかなるときでも、示された範囲内に任意の引用数字(分数または整数)が含まれることを意味する。第1の指示数字と第2の指示数字ならびに「〜の範囲」という語句、および第1の指示数字「から」第2の指示数字「まで」という語句(およびその他のこのような範囲を意味する語句)は、本明細書においては交換可能に使用され、第1の指示数字、第2の指示数字、およびそれらの間のすべての分数および整数を含む。
【0091】
他に示さない限り、本明細書で使用される数字およびそれに基づく任意の数の範囲は、当業者によって理解されるように、合理的な測定および丸め誤差の精度内の近似値である。
【0092】
明確さのために、別個の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴は、別々に、または任意の適切なサブコンビネーションで、または本発明の任意の他の記載された実施形態に適している。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしで動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴と見なすべきではない。
【0093】
本発明は、その特定の実施形態と関連して記載されているが、当業者であれば、種々の代替、変更および変形をなし得ることを理解することができる。従って、添付の請求の範囲によって定められる本開示の精神および範囲内において、数々の代替、変更および変形を包含することを意図するものである。
【0094】
個々の刊行物、特許または特許出願が、具体的かつ個々に参照により本明細書に組み込まれると示されているのと同程度に、本明細書中で言及されたすべての刊行物、特許および特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における任意の参考文献の引用または識別は、そのような参照が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されてはならない。セクション見出しが使用される限り、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。
(符号の説明)
400(600、700、800)…自己注射器、402(602、802、902)…継手、404(904)…フレーム、406…指示板、408(908)…流体容器、410(910)…針、412…皮膚、416(916)…傾斜ネック、420(920)…継手、422(622、722、922)…ピン、502…針開口、506…入口孔、508(510)…組織、704…概念的シリンダ壁、804…溝、806…突起、810…弾性部材。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B