特許第6633786号(P6633786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6633786-布団 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633786
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】布団
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/02 20060101AFI20200109BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20200109BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20200109BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20200109BHJP
   D06C 15/00 20060101ALI20200109BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20200109BHJP
【FI】
   A47G9/02 K
   D03D15/00 F
   D03D1/00 Z
   D06M15/53
   D06C15/00
   D06M101:32
【請求項の数】7
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-8432(P2019-8432)
(22)【出願日】2019年1月22日
(62)【分割の表示】特願2017-43960(P2017-43960)の分割
【原出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2019-70222(P2019-70222A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2019年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500560129
【氏名又は名称】株式会社ニトリホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100080609
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 正孝
(72)【発明者】
【氏名】藤原 敬久
(72)【発明者】
【氏名】安光 玲
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/067053(WO,A1)
【文献】 特開2014−205933(JP,A)
【文献】 特開2004−204365(JP,A)
【文献】 特開2015−001025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/0027/18
A47G 9/00−11/00
A41D 31/00−31/02
A47C 27/00−27/22
A47C 31/00−31/12
A41D 1/02− 1/04
A41D 3/00− 3/08
A41D 29/00
D06C 15/00
D06M 15/507
D06M 15/53
D06M 101/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維繊度0.5dtex以下、フィラメント数144本以上、総繊度50dtex以下のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント延伸糸のみからなり、下記式に定義するカバーファクターCFが1200以上であり、目付け30〜80g/mかつ通気度1.0cc/cm・sec以下の織物で構成されることを特徴とする布団側地を用いてなる布団
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【請求項2】
前記織物に吸水加工および/またはカレンダー加工が施されてなる、請求項1に記載の布団側地を用いてなる布団
【請求項3】
前記ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント延伸糸に、仮撚捲縮加工または空気加工または撚糸が施されたものである、請求項1または請求項2に記載の布団側地を用いてなる布団。
【請求項4】
前記織物が平織組織またはリップストップ組織を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の布団側地を用いてなる布団
【請求項5】
前記ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント延伸糸が艶消し剤を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の布団側地を用いてなる布団
【請求項6】
前記織物に染色加工が施されている、請求項1〜5のいずれかに記載の布団側地を用いてなる布団
【請求項7】
ウォータージェットルームを用いて、請求項1〜6のいずれかに記載の織物を製織した後、該織物を布団側地として用いて布団を得る布団の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性に優れた布団側地を用いた布団に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダウンジャケット、中綿入りジャケット、防寒服、寝袋、中綿入りふとん、羽毛ふとんなど、側地と中材(中綿、ダウンなど)とで構成される繊維製品が広く使用されている。そして、前記側地としては、中材がもれないようにするため低通気度織物が用いられることが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、低通気度織物では柔軟性に劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−12739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、柔軟性に優れた布団側地を用いた布団を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、単繊維繊度が小さく、かつフィラメント数が大きく、かつ総繊度が小さいマルチフィラメントを用いて織物を得た後、かかる織物で側地を構成することにより柔軟性に優れた布団側地が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明に到達した。
【0006】
かくして、本発明によれば「単繊維繊度0.5dtex以下、フィラメント数144本以上、総繊度50dtex以下のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント延伸糸のみからなり、下記式に定義するカバーファクターCFが1200以上であり、目付け30〜80g/mかつ通気度1.0cc/cm・sec以下の織物で構成されることを特徴とする布団側地を用いてなる布団が提供される。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]」
その際、前記織物に吸水加工および/またはカレンダー加工が施されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、柔軟性に優れた布団側地を用いた布団が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の布団側地を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を実施するための形態を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。まず、織物に含まれるマルチフィラメントにおいて、単繊維繊度0.5dtex以下(好ましくは0.000001〜0.5dtex)、かつフィラメント数144本以上(好ましくは144〜10000本)、かつ総繊度50dtex以下(好ましくは20〜50dtex、特に好ましくは20〜35dtex)であることが重要である。前記マルチフィラメントがかかる要件を満足しない場合は、柔軟性に優れた布団側地が得られないおそれがあり好ましくない。なお、前記マルチフィラメントはナノファイバーと称される単繊維径1000nm以下の超極細繊維であってもよい。
【0010】
前記マルチフィラメントにおいて長繊維であることが肝要である。短繊維からなる紡績糸では、織物の組織間空隙が大きくなり中材が飛び出るおそれがあり好ましくない。単繊維の断面形状は特に限定されず、丸、三角、扁平、くびれつき扁平、中空など公知の断面形状でよい。
【0011】
前記マルチフィラメントを形成するポリマーは、ポリエチレンテレフタレートである。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルや、特開2009−091694号公報に記載された、バイオマスすなわち生物由来の物質を原材料として得られたモノマー成分を使用してなるポリエチレンテレフタレートであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、艶消し剤、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0012】
前記マルチフィラメントは、例えば以下の製造方法により製造することができる。すなわち、例えば、固有粘度が0.55〜0.80の前記ポリエステルなどを、常法により紡糸し、2000〜4300m/分の速度で未延伸糸(中間配向糸)として一旦巻き取り、延伸するか、または、巻き取る前に延伸して、前記マルチフィラメントを得る。
また、中間配向糸を、180〜200℃に加熱されたヒーターを用いて、弛緩状態(オーバーフィード1.5〜10%)で熱処理することにより、加熱下で自己伸長性を有する未延伸糸(中間配向糸)としてもよい。さらには、仮撚捲縮加工や空気加工や撚糸などを施してもよい。
【0013】
本発明において、織物はマルチフィラメント延伸糸のみからなる。
前記織物において、通気度は1.0cc/cm・sec以下(好ましくは、0.1〜1.0cc/cm・sec)である。通気度が1.0cc/cm・secよりも大きいと、中材がもれたり、蓄熱性が損なわれるおそれがある。
【0014】
このように、低通気度の織物を得るために、下記式に定義する織物のカバーファクターCFを1200以上(より好ましくは1300〜2500)とする。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【0015】
また、かかる織物の織物組織は特に限定されず、例えば、平織、斜文織、朱子織等の三原組織、変化組織、変化斜文織等の変化組織、経二重織、緯二重織等の片二重組織、たてビロード、リップストップ組織などが例示される。なかでも、引裂き強度の点でリップストップ組織が好ましい。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。製織方法も通常の織機(例えば、通常のウオータージェットルーム、エアージェットルームなど)を用いた通常の方法でよい。
【0016】
また、織物にカレンダー加工および/または吸水加工を施すと、組織間空隙が小さくなるため、低通気度がさらに向上し、運動時や睡眠時に人間から発する蒸気や汗を吸収できる事から好ましい。吸水加工としては、例えば、親水性加工剤を付与する方法にて、親水剤(高松油脂(株)製SR−1000)を5%owf用いて130℃30分間、通常の染色加工と同時に施す方法等を用いる事が有効であるが限定されるものではない。
また、カレンダー加工の条件としては、温度130℃以上(より好ましくは140〜195℃)、線圧200〜20000N/cmの範囲内であることが好ましい。
【0017】
さらには、常法の染色加工、撥水加工、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工、バッフィング加工またはブラシ処理加工を付加適用してもよい。
また、織物の目付けは30〜80g/mである。軽量性の点では目付けが小さいほどよいが、目付けがあまり小さくなると吸水性が低下するおそれがある。
【0018】
本発明の側地は前記の織物で構成される。その際、適宜、縫製や装飾を施したり、付属品を付加してもよい。
本発明の側地は柔軟性に優れるので、ダウンジャケット、中綿入りジャケット、スポーツウエア、アウトドアウエア、作業衣、防護服、防寒服、寝袋、座布団、こたつ布団、布団などの側地として好適に使用される。特に、布団側地が好ましい。
【実施例】
【0019】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)目付け
JISL1096 6.4により測定した。
(2)通気性
JIS L1096 6.27.1 A法(フラジール法)により通気性(cc/cm・sec)を測定した。
(3)織物のカバーファクターCF
下記式により、織物のカバーファクターCFを算出した。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
(4)側地の柔軟性
試験者の評価により、3級:柔軟性に優れる、2級:普通、1級:柔軟性に劣る、の3段階に評価した。
【0020】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント延伸糸(総繊度30dtex/144fil)を経糸および緯糸に用いて公知のリップストップ組織の生機を織成した。そして、該織物に通常の染色仕上げ加工(分散染料により青色に染色)を行い、吸水加工したあとでファイナルセットを施し、カレンダー加工を行い側地を得た。その際の吸水加工は、下記加工剤の処方にて130℃30分間、染色加工と同時に施した。また、カレンダー加工は、ロール温度160℃の条件でカレンダー加工を行った。
<加工剤組成>
・吸水加工剤 5%owf(繊維重量に対して5wt%)
(高松油脂(株)製SR−1000)
・水 95.0wt%
得られた側地用織物において、目付け57gr/m、CF1760であり、柔軟性に優れたものであった(3級)。また、通気性は0.4cc/cm・secであった。
次いで、該側地を布団側地として用いて布団を得て使用したところ、柔軟性に優れたものであった。
【0021】
[比較例1]
実施例1において、ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント延伸糸(総繊度56dtex/72fil)を用いること以外は実施例1と同様にした。得られた側地は柔軟性に劣るものであった(1級)。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、柔軟性に優れた布団側地を用いた布団が提供され、その工業的価値は極めて大である。

図1