特許第6633790号(P6633790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633790
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/18 20060101AFI20200109BHJP
【FI】
   F02M61/18 330A
   F02M61/18 360C
   F02M61/18 330Z
   F02M61/18 320C
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-50999(P2019-50999)
(22)【出願日】2019年3月19日
(62)【分割の表示】特願2015-120203(P2015-120203)の分割
【原出願日】2015年6月15日
(65)【公開番号】特開2019-116896(P2019-116896A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2019年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 雅之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 典嗣
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−025392(JP,A)
【文献】 特開2004−137931(JP,A)
【文献】 特開2008−121531(JP,A)
【文献】 特開2006−250026(JP,A)
【文献】 特開2008−169774(JP,A)
【文献】 特開2013−087757(JP,A)
【文献】 特開2015−092084(JP,A)
【文献】 特開2013−068125(JP,A)
【文献】 特開2005−139989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 61/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴孔(31、32、33、34、35、36、51、56、66、71、76)、及び、前記噴孔の内側開口(311、321、331、341、351、361、511、561、661、711、761)の周囲に形成される弁座(305)を有するノズルボディ(20)と、
前記ノズルボディ内に往復移動可能に設けられ、前記弁座に当接すると前記噴孔を閉じ前記弁座から離間すると前記噴孔を開くニードル(40)と、
前記ニードルを往復移動可能な駆動部(38、44、47)と、
を備え、
前記噴孔は、前記内側開口の断面積が前記噴孔の外側開口(312、322、332、342、352、362、512、562、662、712、762)の断面積に比べ小さくなるよう形成され、
前記内側開口の中心(C311、C321、C331、C341、C351、C361、C511、C561、C661、C711、C761)と前記外側開口の中心(C312、C322、C332、C342、C352、C362、C512、C562、C662、C712、C762)とを通る噴孔軸(HC36、HC51、HC56、HC66、HC71、HC76)を含む平面であってかつ前記ノズルボディの中心軸(CA30、CA50、CA60、CA70)に平行または前記中心軸を含む平面を第一平面、
前記噴孔軸を含む平面であってかつ前記第一平面に対して垂直な平面を第二平面、
前記第一平面における前記噴孔の内壁の断面の断面形状線と前記噴孔軸とがなす角度を第一広がり角α(α13、α141、α146)、及び、
前記第二平面における前記噴孔の内壁の断面の断面形状線と前記噴孔軸とがなす角度を第二広がり角β(β23、β241、β246)とするとき、前記噴孔は、式(2)の関係を満たすよう形成され、
前記噴孔の内壁は、前記ノズルボディの中心軸側と比較して前記ノズルボディの中心軸とは反対側のほうが短いことを特徴とする燃料噴射弁。
α<β ・・・式(2)
【請求項2】
前記外側開口の断面形状は、前記第一平面における前記外側開口の断面の長さを短軸の長さとし、前記第二平面における前記外側開口の断面の長さを長軸の長さとする楕円形状であることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項3】
前記噴孔は、内壁が前記内側開口から前記外側開口に向かって前記噴孔軸から徐々に離れるよう形成され、前記内側開口と前記外側開口とを連通する噴孔通路(320、330、340、350、360、510、560、660、710、760)を有する請求項1または2に記載の燃料噴射弁。
【請求項4】
前記ノズルボディは、前記中心軸と前記噴孔軸とがなす角度である噴射角(θ51、θ56、θ71、θ76)が異なる複数の前記噴孔を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
【請求項5】
前記第一平面における前記内側開口の断面の長さを長さRi1(Ri11、Ri121、Ri126、Ri13、Ri141、Ri146)、
前記第一平面における前記外側開口の断面の長さを長さRo1(Ro11、Ro121、Ro126、Ro13、Ro141、Ro146)、
前記第二平面における前記内側開口の断面の長さを長さRi2(Ri21、Ri221、Ri226、Ri23、Ri241、Ri246)、及び、
前記第二平面における前記外側開口の断面の長さを長さRo2(Ro21、Ro221、Ro226、Ro23、Ro241、Ro246)とすると、
複数の前記噴孔は、噴射角が大きい噴孔ほど(Ro1/Ri1)/(Ro2/Ri2)が小さくなることを特徴とする請求項4に記載の燃料噴射弁。
【請求項6】
複数の前記噴孔のうち噴射角が他の噴孔(71)に比べて大きい一の噴孔(76)の噴孔軸(HC76)を含む平面であってかつ前記中心軸に平行または前記中心軸を含む平面である前記一の噴孔の第一平面における前記一の噴孔の噴孔通路(760)の内壁の断面と前記一の噴孔の噴孔軸とがなす角度を前記一の噴孔の第一広がり角α1(α146)、前記他の噴孔の噴孔軸(HC71)を含む平面であってかつ前記中心軸に平行または前記中心軸を含む平面である前記他の噴孔の第一平面における前記他の噴孔通路(710)の内壁の断面と前記他の噴孔の噴孔軸とがなす角度を前記他の噴孔の第一広がり角α2(α141)、前記一の噴孔の噴孔軸を含む平面であってかつ前記一の噴孔の第一平面に対して垂直な平面である前記一の噴孔の第二平面における前記一の噴孔の噴孔通路の内壁の断面と前記一の噴孔の噴孔軸とがなす角度を前記一の噴孔の第二広がり角β1(β246)、前記他の噴孔の噴孔軸を含む平面であってかつ前記他の噴孔の第一平面に対して垂直な平面である前記他の噴孔の第二平面における前記他の噴孔の噴孔通路の内壁の断面と前記他の噴孔の噴孔軸とがなす角度を前記他の噴孔の第二広がり角β2(β241)とするとき、前記一の噴孔及び前記他の噴孔は、式(3)、(4)の少なくとも一方の関係を満たすよう形成されていることを特徴とする請求項4または5に記載の燃料噴射弁。
α1<α2 ・・・式(3)
β1>β2 ・・・式(4)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(以下、「エンジン」という)に燃料を噴射供給する燃料噴射弁では、エンジンが有する燃焼室における燃料の噴霧状態を最適化するため、様々な噴孔形状が提案されている。例えば、特許文献1には、噴孔の内側開口を形成する内側内縁部を曲率半径が比較的小さい球面状となるよう形成し、燃料の未燃分である不完全燃焼生成物の付着を防止する燃料噴射弁が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−114925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、噴孔の内側開口と外側開口とを連通する噴孔通路を流れる燃料は、内側開口に流入する前の燃料が内側開口の中心と外側開口の中心とを結ぶ噴孔軸に非平行な方向から流れてくるため、噴孔通路を形成する内壁の一部に沿って流れる。特に、特許文献1に記載の燃料噴射弁が有する噴孔のように内側開口から外側開口に向かって断面積が広くなるよう形成されている場合では、燃料が流れない噴孔通路を形成する内壁の面積が大きくなる。噴孔通路を形成する内壁に沿って流れる燃料は不完全燃焼生成物の付着を抑制するが、燃料が流れない内壁の面積が比較的大きくなると、噴孔通路の内壁に不完全燃焼生成物が堆積しやすくなる。不完全燃焼生成物が堆積すると、噴孔通路の断面形状が変化するため、噴孔から噴射される燃料の噴霧状態が時間とともに変化し、燃料の噴射特性の経時変化が大きくなる。
【0005】
本発明の目的は、不完全燃焼生成物の付着量を低減し、燃料の噴射特性の経時変化を小さくする燃料噴射弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、燃料噴射弁であって、ノズルボディ、ニードル、及び、駆動部を備える。
ノズルボディは、噴孔及び噴孔の内側開口の周囲に形成される弁座を有し、有底筒状に形成されている。
ニードルは、ノズルボディ内に往復移動可能に設けられ、弁座に当接すると噴孔を閉じ弁座から離間すると噴孔を開く。
駆動部は、ニードルを往復移動可能である。
本発明の燃料噴射弁は、内側開口の断面積が外側開口の断面積に比べ小さくなるよう噴孔が形成され、内側開口の中心と外側開口の中心とを通る噴孔軸を含む平面であってかつノズルボディの中心軸に平行または中心軸を含む平面を第一平面、噴孔軸を含む平面であってかつ第一平面に対して垂直な平面を第二平面、第一平面における噴孔の内壁の断面の断面形状線と噴孔軸とがなす角度を第一広がり角α、及び、第二平面における噴孔の内壁の断面の断面形状線と噴孔軸とがなす角度を第二広がり角βとするとき、噴孔は、式(2)の関係を満たすよう形成されることを特徴とする。
α<β ・・・式(2)
また、本発明では、噴孔の内壁は、ノズルボディの中心軸側と比較してノズルボディの中心軸とは反対側のほうが短い。
【0007】
本発明の燃料噴射弁は、内側開口の断面積が外側開口の断面積に比べ小さくなるよう形成されている噴孔を有している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一実施形態による燃料噴射弁の断面図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3図2のIII−III線断面図である。
図4図3のIV−IV線断面図である。
図5】本発明の第一実施形態による燃料噴射弁が有する噴孔に燃料が流れるときの状態を示す模式図である。
図6】比較例の燃料噴射弁が有する噴孔に燃料が流れるときの状態を示す模式図である。
図7】本発明の第二実施形態による燃料噴射弁の部分断面図である。
図8】(a)図7のVIIIa−VIIIa線断面図、(b)図7のVIIIb−VIIIb線断面図である。
図9】本発明の第二実施形態による燃料噴射弁における(a)噴射角と(Ro1/Ri1)/(Ro2/Ri2)との関係を示す特性図、及び、(b)噴射角と不完全燃焼生成物の堆積厚さとの関係を示す特性図である。
図10】本発明の第三実施形態による燃料噴射弁の部分断面図である。
図11図10のXI−XI線断面図である。
図12】本発明の第三実施形態による燃料噴射弁が有する噴孔に燃料が流れるときの状態を示す模式図である。
図13】比較例の燃料噴射弁が有する噴孔に燃料が流れるときの状態を示す模式図である。
図14】本発明の第三実施形態による燃料噴射弁における第二広がり角と燃料の平均粒子径との関係の実験結果を示す特性図である。
図15】本発明の第四実施形態による燃料噴射弁の部分断面図である。
図16】(a)図15のXVIa−XVIa線断面図、(b)図15のXVIb−XVIb線断面図である。
図17】本発明の第四実施形態による燃料噴射弁における(a)噴射角と広がり角との関係を示す特性図、及び、(b)噴射角と比(α/β)との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の複数の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0010】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態による燃料噴射弁を図1〜5に基づいて説明する。図1には、第一実施形態による燃料噴射弁1の断面図を示す。なお、図1には、ニードル40が弁座305から離間する方向である開弁方向、及び、ニードル40が弁座305に当接する方向である閉弁方向を図示する。
【0011】
燃料噴射弁1は、図示しない直噴式エンジンの燃料噴射装置に用いられ、燃料としてのガソリンを直噴式エンジンに噴射供給する。燃料噴射弁1は、ノズルボディ20、ニードル40、可動コア47、固定コア44、コイル38、スプリング24、26などを備える。可動コア47、固定コア44及びコイル38は、特許請求の範囲に記載の「駆動部」に相当する。
【0012】
ノズルボディ20は、第一筒部材21、第二筒部材22、第三筒部材23、及び、噴射ノズル30などから構成されている。第一筒部材21、第二筒部材22及び第三筒部材23は、いずれも略円筒状の部材であって、第一筒部材21、第二筒部材22、第三筒部材23の順に同軸となるよう配置され、互いに接続している。
【0013】
噴射ノズル30は、第一筒部材21の第二筒部材22とは反対側の端部に設けられている。噴射ノズル30は、有底筒状の部材であって、第一筒部材21に溶接されている。噴射ノズル30は、所定の硬度を有するよう焼入れ処理が施されている。噴射ノズル30は、噴射部301及び筒部302から形成されている。
【0014】
噴射部301は、噴射ノズル30の中心軸CA30上の点を中心とした球体の外郭状の部位である。噴射部301の外壁304は、中心軸CA30の方向に突出している。噴射部301は、ノズルボディ20の内部と外部とを連通する噴孔を複数有する。第一実施形態では、図2に示すように、六個の噴孔31、32、33、34、35、36が等間隔に配置されている。
【0015】
噴孔31は、内壁303上の開口である内側開口311、外壁304上の開口である外側開口312、及び、内側開口311と外側開口とを連通する噴孔通路310などから構成されている。噴孔31は、内側開口311の中心C311と外側開口312の中心C312とを通る噴孔軸HC31に垂直な断面形状が曲線から形成されている。
【0016】
噴孔32は、内壁303上の開口である内側開口321、外壁304上の開口である外側開口322、及び、内側開口321と外側開口322とを連通する噴孔通路320などから構成されている。噴孔32は、内側開口321の中心C321と外側開口322の中心C322とを通る噴孔軸HC32に垂直な断面形状が曲線から形成されている。
【0017】
噴孔33は、内壁303上の開口である内側開口331、外壁304上の開口である外側開口332、及び、内側開口331と外側開口332とを連通する噴孔通路330などから構成されている。噴孔33は、内側開口331の中心C331と外側開口332の中心C332とを通る噴孔軸HC33に垂直な断面形状が曲線から形成されている。
【0018】
噴孔34は、内壁303上の開口である内側開口341、外壁304上の開口である外側開口342、及び、内側開口341と外側開口342とを連通する噴孔通路340などから構成されている。噴孔34は、内側開口341の中心C341と外側開口342の中心C342とを通る噴孔軸HC34に垂直な断面形状が曲線から形成されている。
【0019】
噴孔35は、内壁303上の開口である内側開口351、外壁304上の開口である外側開口352、及び、内側開口351と外側開口352とを連通する噴孔通路350などから構成されている。噴孔35は、内側開口351の中心C351と外側開口352の中心C352とを通る噴孔軸HC35に垂直な断面形状が曲線から形成されている。
【0020】
噴孔36は、噴射部301の内壁303上の開口である内側開口361、外壁304上の開口である外側開口362、及び、内側開口361と外側開口362とを連通する噴孔通路360などから構成されている。噴孔36は、内側開口361の中心C361と外側開口362の中心C362とを通る噴孔軸HC36に垂直な断面形状が曲線から形成されている。
【0021】
内壁303にはニードル40が当接可能な環状の弁座305が形成される。噴孔31、32、33、34、35、36の詳細な形状は後述する。
【0022】
筒部302は、噴射部301の径方向外側を囲み、噴射部301の外壁304が突出する方向とは反対側に延びるように設けられている。筒部302は、一方の端部が噴射部301に接続し、他方の端部が第一筒部材21に接続している。
【0023】
ニードル40は、ノズルボディ20内に往復移動可能に収容されている。ニードル40は、軸部41、シール部42、及び、大径部43などから構成されている。
軸部41は、円筒棒状の部位である。軸部41とシール部42との間には摺接部45が設けられている。摺接部45は、略円筒状の部位であって、外壁451の一部が面取りされている。摺接部45は、外壁451の面取りされていない部分が噴射ノズル30の内壁と摺接可能である。これにより、ニードル40は、弁座305側の先端部での往復移動が案内される。軸部41は、摺接部45が設けられる側とは反対側に端部に軸部41の内壁と外壁とを接続する孔46を有する。
シール部42は、軸部41の弁座305側の端部に弁座305に当接可能に設けられている。ニードル40は、シール部42が弁座305に当接すると噴孔31、32、33、34、35、36が閉じられる。また、シール部42が弁座305から離間すると噴孔31、32、33、34、35、36が開く。
大径部43は、軸部41のシール部42とは反対側に設けられている。大径部43は、その外径が軸部41の外径より大きい。大径部43の弁座305側の端面は、可動コア47に当接している。
【0024】
ニードル40は、摺接部45が噴射ノズル30の内壁により支持され、また、軸部41が可動コア47を介して第二筒部材22の内壁により支持されつつ、ノズルボディ20の内部を往復移動する。
【0025】
可動コア47は、磁気安定化処理が施されている略円筒状の部材である。可動コア47は、大径部43の噴射ノズル30側に往復移動可能に設けられる。可動コア47は、略中央に貫通孔49を有する。貫通孔49には、ニードル40の軸部41が挿通されている。
【0026】
固定コア44は、磁気安定化処理が施されている略円筒状の部材である。固定コア44は、ノズルボディ20の第三筒部材23と溶接され、ノズルボディ20の内側に固定されている。
【0027】
コイル38は、略円筒状の部材であって、主に第二筒部材22及び第三筒部材23の径方向外側を囲むよう設けられている。コイル38は、電力が供給されると磁界を発生する。コイル38の周囲に磁界が発生すると、固定コア44、可動コア47、第一筒部材21及び第三筒部材23に磁気回路が形成される。これにより、固定コア44と可動コア47との間に磁気吸引力が発生し、可動コア47は、固定コア44に吸引される。このとき、可動コア47の噴射ノズル30側とは反対側の面に当接しているニードル40は、可動コア47とともに固定コア44側、すなわち、開弁方向へ移動する。
【0028】
スプリング24は、一端が大径部43のスプリング当接面431に当接するよう設けられている。スプリング24の他端は、固定コア44の内側に圧入固定されたアジャスティングパイプ11の一端に当接している。スプリング24は、軸方向に伸びる力を有している。これにより、スプリング24は、ニードル40を可動コア47とともに弁座305の方向、すなわち閉弁方向に付勢している。
【0029】
スプリング26は、一端が可動コア47の段差面48に当接するよう設けられている。スプリング26の他端は、第一筒部材21の内壁に有する環状の段差面211に当接している。スプリング26は、軸方向に伸びる力を有している。これにより、スプリング26は可動コア47をニードル40とともに弁座305とは反対の方向、すなわち開弁方向に付勢している。
本実施形態では、スプリング24の付勢力は、スプリング26の付勢力より大きく設定されている。これにより、コイル38に電力が供給されていない状態では、ニードル40のシール部42は、弁座305に着座した状態、すなわち閉弁状態となる。
【0030】
第三筒部材23の第二筒部材22とは反対側の端部には、略円筒状の燃料導入パイプ12が圧入及び溶接されている。燃料導入パイプ12の内側には、フィルタ13が設けられている。フィルタ13は、燃料導入パイプ12の導入口14から流入した燃料に含まれる異物を捕集する。
【0031】
燃料導入パイプ12及び第三筒部材23の径方向外側は、樹脂によりモールドされている。当該モールド部分にはコネクタ15が設けられている。コネクタ15には、コイル38へ電力を供給するための端子16がインサート成形されている。また、コイル38の径方向外側には、コイル38を覆うよう筒状のホルダ17が設けられている。
【0032】
燃料導入パイプ12の導入口14から流入する燃料は、固定コア44の径内方向、アジャスティングパイプ11の内部、ニードル40の大径部43及び軸部41の内側、孔46、第一筒部材21とニードル40の軸部41との間の隙間を流通し、噴射ノズル30の内部に導かれる。すなわち、燃料導入パイプ12の導入口14から第一筒部材21とニードル40の軸部41との間の隙間までが噴射ノズル30の内部に燃料を導入する燃料通路18となる。
【0033】
第一実施形態による燃料噴射弁1は、噴孔の形状に特徴がある。ここでは、図3、4に基づいて、噴孔36の形状について説明する。
【0034】
図3、4に噴孔36を含む噴射ノズル30の断面図を示す。図3に示す断面図は、中心軸CA30を含む平面であってかつ噴孔軸HC36を含む平面(以下、「噴孔36の第一平面」という)における噴射ノズル30の断面を示している。また、図4に示す断面図は、図3のIV−IV線断面図であって、第一平面に垂直な平面であってかつ噴孔軸HC36を含む平面(以下、「噴孔36の第二平面」という)における噴射ノズル30の断面を示している。
【0035】
噴孔軸HC36は、噴孔36の内側開口361の中心C361と外側開口362の中心C362を通る仮想線である。内側開口361の中心C361は、噴孔36が形成される前の内壁303上に設けられる。噴孔36を形成するとき、内側開口361は、形状が中心C361を中心とする円形状となるよう加工される。また、外側開口362の中心C362は、噴孔36が形成される前の外壁304上に設けられる。噴孔36を形成するとき、外側開口362は、形状が中心C362を中心とする円形状となるよう加工される。噴孔36は、図3、4に示すように、内側開口361の断面積が外側開口362の断面積に比べ小さくなるよう形成されている。
【0036】
第一実施形態では、噴孔36は、図3に示す長さRi11、Ro11、及び、図4に示す長さRi21、Ro21を用いて式(2)で表される関係式を満たすよう形成される。
(Ro11/Ri11)<(Ro21/Ri21) ・・・式(2)
ここで、長さRi11は、噴孔36の第一平面における内側開口361の断面の長さである。具体的には、長さRi11は、噴孔36の第一平面において中心C361を通り噴孔軸HC36に対して垂直な仮想線Li11が噴孔36の第一平面における噴孔通路360の内壁の断面形状線L363、L364または当該内壁の断面形状線L363、L364の延長線Le36と交わる二点間の距離である。
また、長さRo11は、噴孔36の第一平面における外側開口362の断面の長さであって、具体的には、長さRo11は、噴孔36の第一平面において中心C362を通り噴孔軸HC36に対して垂直な仮想線Lo11が噴孔36の第一平面における噴孔通路360の内壁の断面形状線L363、L364または当該内壁の断面形状線L363、L364の延長線Le36と交わる二点間の距離である。
また、長さRi21は、噴孔36の第二平面における内側開口361の断面の長さである。具体的には、長さRi21は、噴孔36の第二平面において中心C361を通り噴孔軸HC36に対して垂直な仮想線Li21が噴孔36の第一平面における噴孔通路360の内壁の断面形状線L365、L366または当該内壁の断面形状線L365、L366の延長線Le36と交わる二点間の距離である。
また、長さRo21は、噴孔36の第二平面における外側開口362の断面の長さである。具体的には、長さRo21は、噴孔36の第二平面において中心C362を通り噴孔軸HC36に対して垂直な仮想線Lo21が噴孔36の第一平面における噴孔通路360の内壁の断面形状線L365、L366または当該内壁の断面形状線L365、L366の延長線Le36と交わる二点間の距離である。
【0037】
また、外側開口362は、断面形状が長さRo11を短軸の長さとし、長さRo21を長軸と長さとする楕円形状となるよう形成されている。
【0038】
ここでは、噴孔36の形状について説明したが、燃料噴射弁1では、他の噴孔31、32、33、34、35のそれぞれの形状についても式(2)の関係を満たすよう形成されている。
【0039】
第一実施形態による燃料噴射弁1の効果について、図6に示す比較例の燃料噴射弁の構成と比較しつつ図5に基づいて説明する。
図5には燃料噴射弁1の噴孔36の第一平面における噴射ノズル30の断面図を示す。
図6には比較例の燃料噴射弁の断面図を示す。図6に示す断面図は、比較例の燃料噴射弁が有する噴射ノズル90の中心軸CA90と平行な平面であって噴孔96の噴孔軸HC96(図6(a)参照)を含む噴孔96の第一平面における噴射ノズル90の断面を示している。
図5図6には、燃料の流れ方向を実線矢印F1で示し、噴孔を流れる燃料及び噴孔から噴射される燃料の表面を点線F0で示す。
【0040】
比較例の燃料噴射弁では、噴孔96の形状は、噴孔96の第一平面における内側開口961の断面の長さに対する外側開口962の長さと、噴孔96の第一平面に垂直な平面であってかつ噴孔軸HC96を含む噴孔96の第二平面における内側開口961の断面の長さに対する外側開口962の長さとの関係が式(2)を満たしていない。例えば、噴孔96は、噴孔軸HC96に垂直な断面形状が、図6(b)に示すように、真円となるよう形成されている。
【0041】
比較例の燃料噴射弁において、ニードル99が弁座905から離間すると、燃料は噴射ノズル90の内壁903に沿って噴射ノズル90の中心軸CA90の径外方向から径内方向に向かって流れ、ニードル99と噴射ノズル90との間に形成されているサック室990に流入する。サック室990に流入した燃料は、サック室990への流入の勢いによって噴孔通路960を形成する噴射ノズル90の内壁のうち中心軸CA90側の内壁963に沿って流れる。しかしながら、内壁963に沿って流れる燃料は、噴射ノズル90の内壁のうち噴射ノズル90の中心軸CA90とは反対側の内壁964まで燃料が広がりにくい。このため、燃料が流れない内壁964には不完全燃焼生成物が堆積しやすい。
【0042】
一方、燃料噴射弁1において、ニードル99が弁座905から離間すると、燃料は噴射ノズル30の内壁303に沿って噴射ノズル30の中心軸CA30の径外方向から径内方向に向かって流れ、ニードル40と噴射ノズル30との間に形成されているサック室400に流入する。サック室400に流入した燃料は、サック室400への流入の勢いによって噴孔通路360を形成する噴射ノズル30の内壁のうち中心軸CA30側の内壁363に沿って流れる。噴孔36は、式(2)の関係を満たすよう形成されているため、噴孔36では、内壁363に沿って流れる燃料が噴射ノズル30の内壁のうち中心軸CA30とは反対側の内壁364まで広がりやすくなる。これにより、燃料が流れない内壁の面積が比較例に比べて小さくなり、噴孔通路360の内壁に不完全燃焼生成物が付着しにくくなる。
【0043】
第一実施形態による燃料噴射弁1では、噴孔31、32、33、34、35、36は、式(2)の関係を満たすよう形成されている。具体的には、外側開口312、322、332、342、352、362の噴孔軸HC31、HC32、HC33、HC34、HC35、HC36に垂直な断面形状は、内側開口311、321、331、341、351、361の噴孔軸HC31、HC32、HC33、HC34、HC35、HC36に垂直な断面形状に比べ噴射ノズル30の周方向に長くなるよう形成されている。
ニードル40が弁座305から離間しノズルボディ20内の燃料が噴孔31、32、33、34、35、36から噴射されるとき、噴孔通路310、320、330、340、350、360の中心軸CA30側の内壁(噴孔通路360の場合、内壁363)に沿って流れる燃料は、噴孔通路310、320、330、340、350、360の中心軸CA30とは反対側の内壁にも沿って流れるよう噴孔通路310、320、330、340、350、360で広がる。噴孔通路310、320、330、340、350、360における燃料の広がりによって燃料が流れない噴孔通路310、320、330、340、350、360の内壁(噴孔通路360の場合、内壁364)の面積が比較的小さくなる。これにより、燃料の流れによって不完全燃焼生成物の付着が抑制され、不完全燃焼生成物が噴孔通路310、320、330、340、350、360の内壁に堆積しにくくなるため、噴孔31、32、33、34、35、36の断面形状の経時変化を小さくすることができる。したがって、燃料噴射弁1では、噴孔31、32、33、34、35、36から噴射される燃料の噴射量や噴射方向、噴射される燃料の微粒化の度合いなど燃料の噴射特性の経時変化を小さくすることができる。
【0044】
また、燃料噴射弁1では、外側開口312、322、332、342、352、362は、断面形状が第一平面における断面の長さを短軸の長さとし、第一平面における断面の長さを長軸と長さとする楕円形状となるよう形成されている。これにより、噴孔通路310、320、330、340、350、360の中心軸CA30側の内壁に沿って流れる燃料は、噴孔通路310、320、330、340、350、360でさらに広がりやすくなるため、噴孔通路310、320、330、340、350、360の内壁に不完全燃焼生成物がさらに堆積しにくくなる。したがって、燃料の噴射特性の経時変化をさらに小さくすることができる。
【0045】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態による燃料噴射弁を図7〜9に基づいて説明する。第二実施形態は、複数の噴孔間の噴孔の形状の関係が第一実施形態と異なる。なお、第一実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0046】
第二実施形態による燃料噴射弁2が備える噴射ノズル50の断面図を図7、8に示す。噴射ノズル50は、複数の噴孔を有している。図7、8は、これら複数の噴孔のうち噴射ノズル50の中心軸CA50を挟むよう設けられる噴孔51、56を含む断面図である。
【0047】
噴孔51は、噴射ノズル50の内壁503上の開口である内側開口511、噴射ノズル50の外壁504上の開口である外側開口512、及び、内側開口511と外側開口512とを連通する噴孔通路510などから構成されている。噴孔51は、内側開口511の中心C511と外側開口512の中心C512とを通る噴孔軸HC51を有する。噴孔51は、噴孔軸HC51に垂直な断面形状が曲線から形成されている。
【0048】
噴孔56は、内壁503上の開口である内側開口561、外壁504上の開口である外側開口562、及び、内側開口561と外側開口562とを連通する噴孔通路560などから構成されている。噴孔56は、内側開口561の中心C561と外側開口562の中心C562とを通る噴孔軸HC56を有する。噴孔56は、噴孔軸HC56に垂直な断面形状が曲線から形成されている。
【0049】
図7に示す断面図は、中心軸CA50に平行な平面であってかつ噴孔軸HC51、HC56を含む平面(以下、「噴孔51、56の第一平面」という)における噴孔51、56の断面を示している。また、図8(a)に示す断面図は、図7のVIIIa−VIIIa線断面図であって、噴孔51、56の第一平面に垂直な平面であってかつ噴孔軸HC56を含む平面(以下、「噴孔56の第二平面」という)における噴射ノズル50の断面を示している。図8(b)に示す断面図は、図7のVIIIb−VIIIb線断面図であって、噴孔51、56の第一平面に垂直な平面であってかつ噴孔軸HC51を含む平面(以下、「噴孔51の第二平面」という)における噴射ノズル50の断面図を示している。なお、噴射ノズル50では、噴孔軸HC51と噴孔軸HC56とは同一平面上にある。
【0050】
噴孔51、56は、それぞれ内側開口の断面積が外側開口の断面積に比べ小さくなるよう形成されている。
噴孔51は、図7に示すように、噴孔軸HC51と中心軸CA50とがなす角度である噴射角θ51が噴孔軸HC56と中心軸CA50とがなす角度である噴射角θ56より小さくなるよう形成されている。
【0051】
噴孔51は、噴孔51の第一平面における内側開口511の断面の長さを長さRi121、噴孔51の第一平面における外側開口512の断面の長さを長さRo121、噴孔51の第二平面における内側開口511の断面の長さを長さRi221、及び、噴孔51の第二平面における外側開口512の断面の長さを長さRo221とすると、式(3)で表される関係式を満たすよう形成される。
(Ro121/Ri121)<(Ro221/Ri221) ・・・式(3)
また、噴孔56は、噴孔56の第一平面における内側開口561の断面の長さを長さRi126、噴孔56の第一平面における外側開口562の断面の長さを長さRo126、噴孔56の第二平面における内側開口561の断面の長さを長さRi226、及び、噴孔56の第二平面における外側開口562の断面の長さを長さRo226とすると、式(4)で表される関係式を満たすよう形成される。
(Ro126/Ri126)<(Ro226/Ri226) ・・・式(4)
ここでは、噴孔51、56は、それぞれが式(3)、(4)の関係を満たすよう形成されるとしたが、燃料噴射弁2が有する他の噴孔についても同様の関係を満たすよう形成される。
【0052】
また、噴孔51と噴孔56とで比較すると、図7に示すように、噴孔56の噴射角θ56は噴孔51の噴射角θ51に比べ大きいため、噴孔56の{(Ro126/Ri126)/(Ro226/Ri226)}は、噴孔51の{(Ro121/Ri121)/(Ro221/Ri221)}に比べ小さくなるよう噴孔51、56は形成されている。このように、燃料噴射弁2では、複数の噴孔の全てにおいて、噴孔同士を比較したとき、噴射角が大きい噴孔の方が、第一平面における内側開口の断面の長さRi1、第一平面における外側開口の断面の長さRo1、第二平面における内側開口の断面の長さRi2、及び、第二平面における外側開口の断面の長さRo2に基づいて導出される噴孔拡大比{(Ro1/Ri1)/(Ro2/Ri2)}は小さくなるよう形成されている。
【0053】
従来、燃料噴射弁では、噴射角が大きくなると、噴孔通路の内壁のうち中心軸とは反対側の内壁に沿って燃料が流れにくくなるため、噴孔通路の内壁に不完全燃焼生成物が堆積しやすくなる(図9(b)参照)。
そこで、第二実施形態による燃料噴射弁2では、図9(a)に示すように、噴射角が大きいほど当該噴孔の噴孔拡大比{(Ro1/Ri1)/(Ro2/Ri2)}を小さくするよう噴孔を形成する。これにより、噴射角が大きい噴孔ほど、外側開口の噴孔軸に垂直な断面形状は、内側開口の噴孔軸に垂直な断面形状に比べ噴射ノズル50の周方向に長くなるよう形成されている。これにより、不完全燃焼生成物が比較的堆積しやすい噴射角が大きい噴孔においても燃料が噴孔通路の内壁に沿って広がり、不完全燃焼生成物が堆積しにくくなる。したがって、第二実施形態は、第一実施形態の効果を奏するとともに、複数の噴孔間における燃料の噴霧状態のばらつきを小さくすることができる。
【0054】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態による燃料噴射弁を図10〜14に基づいて説明する。第三実施形態は、噴孔の形状が第一実施形態と異なる。なお、第一実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0055】
第三実施形態による燃料噴射弁3が備える噴射ノズル60の断面図を図10、11に示す。
噴孔66は、噴射ノズル60の内壁603上の開口である内側開口661、噴射ノズル60の外壁604上の開口である外側開口662、及び、内側開口661と外側開口662とを連通する噴孔通路660などから構成されている。噴孔66は、内側開口661の中心C661と外側開口662の中心C662とを通る噴孔軸HC66を有する。噴孔66は、噴孔軸HC66に垂直な断面形状が曲線から形成されている。噴孔66は、図10、11に示すように、内側開口661の断面積が外側開口662の断面積に比べ小さくなるよう形成されている。
【0056】
図10に示す断面図は、噴射ノズル60の中心軸CA60に平行な平面であって噴孔軸HC66を含む平面(以下、「噴孔66の第一平面」という)における噴射ノズル60の断面図を示している。また、図11に示す断面図は、図10のXI−XI線断面図であって、噴孔66の第一平面に垂直な平面であって噴孔軸HC66を含む平面(以下、「噴孔66の第二平面」という)における噴射ノズル60の断面図を示している。
【0057】
第三実施形態では、噴孔66は、図10に示す長さRi13、Ro13、及び、図11に示す長さRi23、Ro23を用いて式(5)で表される関係式を満たすよう形成される。
(Ro13/Ri13)<(Ro23/Ri23) ・・・式(5)
【0058】
ここで、長さRi13は、噴孔66の第一平面において中心C661を通り噴孔軸HC66に対して垂直な仮想線Li13が噴孔66の第一平面における噴孔通路660の内壁の断面形状線L663、L664または当該内壁の断面形状線L663、L664の延長線Le66と交わる二点間の距離である。
また、長さRo13は、噴孔66の第一平面において中心C662を通り噴孔軸HC66に対して垂直な仮想線Lo13が噴孔66の第一平面における噴孔通路660の内壁の断面形状線L663、L664または当該内壁の断面形状線L663、L664の延長線Le66と交わる二点間の距離である。
また、長さRi23は、噴孔66の第二平面において中心C661を通り噴孔軸HC66に対して垂直な仮想線Li23が噴孔66の第一平面における噴孔通路660の内壁の断面形状線L665、L666または当該内壁の断面形状線L665、L666の延長線Le66と交わる二点間の距離である。
また、長さRo23は、噴孔66の第二平面において中心C662を通り噴孔軸HC66に対して垂直な仮想線Lo23が噴孔66の第一平面における噴孔通路660の内壁の断面形状線L665、L666または当該内壁の断面形状線L665、L666の延長線Le66と交わる二点間の距離である。
【0059】
また、噴孔66は、噴孔66の第一平面における噴孔通路660の内壁の断面の断面形状線L664と噴孔軸HC66とがなす角度を第一広がり角α13、及び、噴孔66の第二平面における噴孔通路660の内壁の断面形状線L666と噴孔軸HC66とがなす角度を第二広がり角β23とするとき、式(6)の関係を満たすよう形成される。
α13<β23 ・・・式(6)
【0060】
第三実施形態による燃料噴射弁3の効果について、図13に示す比較例の燃料噴射弁の構成と比較しつつ図12に基づいて説明する。
図12には燃料噴射弁3の噴孔66の第二平面における噴射ノズル60の断面図を示す。
図13には比較例の燃料噴射弁の断面図を示す。図13に示す断面図は、比較例の燃料噴射弁が有する噴射ノズル90の中心軸CA90と平行な平面であって噴孔96の内側開口961の中心C961と外側開口962の中心C962とを通る噴孔軸HC96を含む噴孔96の第二平面における噴射ノズル90の断面図を示している。
図12及び図13には、噴孔を流れる燃料及び噴孔から噴射される燃料の表面を点線F0で示す。
【0061】
比較例の燃料噴射弁では、噴孔96の形状は、噴孔96の第一平面における噴孔通路960の内壁の断面と噴孔軸HC96とがなす角度である第一広がり角と噴孔96の第二平面における噴孔通路960の内壁の断面と噴孔軸HC96とがなす角度である第二広がり角との関係が式(6)を満たしていない。例えば、噴孔96は、噴孔軸HC96に垂直な断面形状が、図13(b)に示すように、真円となるよう形成されている。すなわち、噴孔96では、第一広がり角と第二広がり角とは同じ大きさである。
【0062】
比較例の燃料噴射弁において燃料が噴孔96から噴射されるとき、噴孔通路960を流れる燃料は、噴孔通路960を形成する噴射ノズル90の内壁のうち噴射ノズル90の中心軸CA90側の内壁963に沿って流れる(図13(b)参照)。このため、噴射ノズル90の内壁のうち噴射ノズル90の中心軸CA90とは反対側の内壁964には、燃料が流れない。このため、燃料が流れない内壁964には不完全燃焼生成物が堆積しやすい。
【0063】
一方、図12に示す燃料噴射弁3において燃料が噴孔66から噴射されるとき、燃料は、噴孔通路660を形成する噴射ノズル60の内壁のうち中心軸CA60側の内壁663に沿って流れる。噴孔66では、式(5)及び式(6)の関係を満たすよう形成されているため、噴孔66では、内壁663に沿って流れる燃料が噴射ノズル60の内壁のうち中心軸CA60とは反対側の内壁664まで広がりやすくなる。これにより、燃料が流れない内壁の面積が比較例に比べて小さくなり、噴孔通路660の内壁に不完全燃焼生成物が堆積しにくくなる。
【0064】
本願発明者らは、燃料噴射弁3を用いて噴孔の第二広がり角と当該噴孔から噴射される燃料の平均粒子径との関係を明らかにする実験を行った。その結果を図14に示す。
図14に示す特性図では、横軸に噴孔の第二広がり角を示し、縦軸に当該噴孔から噴射される燃料の平均粒子径を示している。図14より、第二広がり角が大きくなるほど燃料の平均粒子径は小さくなることが明らかとなった。
【0065】
第三実施形態による燃料噴射弁3では、噴孔66は、式(5)を満たすよう形成されるとともに第一広がり角と第二広がり角との関係が式(6)を満たすよう形成されている。具体的には、外側開口662の噴孔軸HC66に垂直な断面形状は、内側開口661の噴孔軸HC66に垂直な断面形状に比べ噴射ノズル60の周方向に長くなるよう形成されている。これにより、噴孔66が有する噴孔通路660の中心軸CA60側の内壁663に沿って流れる燃料は、噴孔通路の中心軸CA30とは反対側の内壁にも沿って流れるよう噴孔通路で広がるため、不完全燃焼生成物が噴孔通路の内壁に堆積しにくくなる。したがって、第三実施形態は、第一実施形態の効果を奏する。
【0066】
また、図14に示すように、噴孔の第二広がり角を比較的大きくすることによって当該噴孔から噴射される燃料の平均粒子径を小さくすることができる。これにより、当該噴孔から噴射された燃料の噴霧状態を良好にすることができ、燃料噴射弁3が燃料を供給するエンジンの燃焼効率を向上することができる。
【0067】
(第四実施形態)
次に、本発明の第四実施形態による燃料噴射弁を図15〜17に基づいて説明する。第四実施形態は、複数の噴孔間の噴孔の形状の関係が第三実施形態と異なる。なお、第三実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0068】
第四実施形態による燃料噴射弁4が備える噴射ノズル70の断面図を図15、16に示す。噴射ノズル70は、複数の噴孔を有している。図15、16は、これら複数の噴孔のうち噴射ノズル70の中心軸CA70を挟むよう設けられる噴孔71、76を含む断面図である。
【0069】
噴孔71は、噴射ノズル70の内壁703上の開口である内側開口711、噴射ノズル70の外壁704上の開口である外側開口712、及び、内側開口711と外側開口712とを連通する噴孔通路710などから構成されている。噴孔71は、内側開口711の中心C711と外側開口712の中心C712とを通る噴孔軸HC71を有する。噴孔71は、噴孔軸HC71に垂直な断面形状が曲線から形成されている。
【0070】
噴孔76は、内壁703上の開口である内側開口761、外壁704上の開口である外側開口762、及び、内側開口761と外側開口762とを連通する噴孔通路760などから構成されている。噴孔76は、内側開口761の中心C761と外側開口762の中心C762とを通る噴孔軸HC76を有する。噴孔76は、噴孔軸HC76に垂直な断面形状が曲線から形成されている。
【0071】
図15に示す断面図は、中心軸CA70に平行な平面であってかつ噴孔軸HC71、HC76を含む平面(以下、「噴孔71、76の第一平面」という)上の噴孔71、76の断面を示している。また、図16(a)に示す断面図は、図15のXVIa−XVIa線断面図であって、噴孔71、76の第一平面に垂直な平面であってかつ噴孔軸HC76を含む平面(以下、「噴孔76の第二平面」という)における噴射ノズル70の断面図を示している。図16(b)に示す断面図は、図15のXVIb−XVIb線断面図であって、噴孔71、76の第一平面に垂直な平面であってかつ噴孔軸HC71を含む平面(以下、「噴孔71の第二平面」という)における噴射ノズル70の断面図を示している。なお、噴射ノズル70では、噴孔軸HC71と噴孔軸HC76とは同一平面上にある。
【0072】
噴孔71、76は、図15、16に示すように、内側開口の断面積が外側開口の断面積に比べ小さくなるよう形成されている。
噴孔71は、図7に示すように、噴孔軸HC71と中心軸CA70とがなす角度である噴射角θ71が噴孔軸HC76と中心軸CA70とがなす角度である噴射角θ76より小さい。
【0073】
噴孔71は、噴孔71の第一平面における内側開口711の断面の長さを長さRi141、噴孔71の第一平面における外側開口712の断面の長さを長さRo141、噴孔71の第二平面における内側開口711の断面の長さを長さRi241、及び、噴孔71の第二平面における外側開口712の断面の長さを長さRo241とすると、式(7)で表される関係式を満たすよう形成される。
(Ro141/Ri141)<(Ro241/Ri241) ・・・式(7)
また、噴孔76は、噴孔76の第一平面における内側開口761の断面の長さを長さRi146、噴孔76の第一平面における外側開口762の断面の長さを長さRo146、噴孔76の第二平面における内側開口761の断面の長さを長さRi246、及び、噴孔76の第二平面における外側開口762の断面の長さを長さRo246とすると、式(8)で表される関係式を満たすよう形成される。
(Ro146/Ri146)<(Ro246/Ri246) ・・・式(8)
ここでは、噴孔71、76は、それぞれが式(7)、(8)の関係を満たすよう形成されるとしたが、燃料噴射弁4が有する他の噴孔についても同様の関係を満たすよう形成される。
【0074】
また、噴孔71の第一平面における噴孔通路710の内壁の断面形状線L714と噴孔軸HC71とがなす角度である第一広がり角を第一広がり角α141、噴孔71の第二平面における噴孔通路710の内壁の断面形状線L716と噴孔軸HC71とがなす角度である第二広がり角を第二広がり角β241、噴孔76の第一平面における噴孔通路760の内壁の断面形状線L764と噴孔軸HC76とがなす角度である第一広がり角を第一広がり角α146、及び、噴孔76の第二平面における噴孔通路760の内壁の断面形状線L765と噴孔軸HC76とがなす角度である第二広がり角を第二広がり角β246とするとき、噴孔71、76は、式(9)〜(12)の関係を満たすよう形成される。
α141<β241 ・・・式(9)
α146<β246 ・・・式(10)
α146<α141 ・・・式(11)
β246>β241 ・・・式(12)
【0075】
第四実施形態では、噴射角の大きさに応じて式(11)に示す第一広がり角の関係及び式(12)に示す第二広がり角の関係を満たすよう複数の噴孔が形成されている。このとき、噴射角が大きくなるほど第一広がり角が小さくなるよう噴孔を形成する(図17(a)の実線Lα)。また、噴射角が大きくなるほど第二広がり角が大きくなるよう噴孔を形成する(図17(a)の実線Lβ)。これにより、図17(b)に示すように、燃料噴射弁4では、噴射角が大きくなるほど、第二広がり角に対する第一広がり角の相対的な大きさである比(α/β)が小さくなるよう噴孔が形成されている。比(α/β)が小さくなると、噴孔の断面形状は、噴孔通路の噴孔軸に垂直な断面形状が噴射ノズルの周方向に長くなるため、燃料が噴孔通路の内壁に沿って流れやすくなる。これにより、不完全燃焼生成物が比較的堆積しやすい噴射角が大きい噴孔においても燃料が噴孔通路で広がり、不完全燃焼生成物が堆積しにくくなる。したがって、第四実施形態は、第一実施形態の効果を奏するとともに、複数の噴孔間における燃料の噴霧状態のばらつきを小さくすることができる。
【0076】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、第一平面は、噴射ノズルの中心軸に平行な平面であるとした。しかしながら、第一平面は、噴射ノズルの中心軸を含んでもよい。
【0077】
第一実施形態では、複数の噴孔全てが式(1)の関係を満たすよう形成されるとした。しかしながら、複数の噴孔のうち一つの噴孔が式(1)の関係を満たすよう形成されればよい。
【0078】
第二実施形態では、複数の噴孔の全てについて噴射角が大きい噴孔の方が噴孔拡大比{(Ro1/Ri1)/(Ro2/Ri2)}は小さくなるとした。しかしながら、複数の噴孔の全てに適用しなくてもよい。
【0079】
第四実施形態では、噴孔の形状において式(11)及び式(12)の両方の関係を同時に満たすとした。しかしながら、式(11)及び式(12)の少なくとも一方の関係を満たせばよい。
【0080】
第一実施形態では、外側噴孔は,断面形状が長さRo11を短軸の長さとし、長さRo21を長軸と長さとする楕円形状となるよう形成されているとした。しかしながら、外側噴孔の断面形状は楕円でなくてもよい。また、第二〜四実施形態において外側噴孔が楕円であってもよい。
【0081】
上述の実施形態では、複数の噴孔は等間隔に形成されるとした。しかしながら、等間隔でなくてもよい。
【0082】
第一、三実施形態では、噴孔は一つであってもよい。
【0083】
第二、三実施形態では、二つの噴孔のそれぞれの噴孔軸は同一平面上にあるとした。しかしながら、二つの噴孔のそれぞれの噴孔軸は別々の平面上にあってもよい。
【0084】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0085】
1、2、3、4 ・・・燃料噴射弁
305 ・・・弁座
31、32、33、34、35、36、51、56、66、71、76・・・噴孔
311、321、331、341、351、361、511、561、661、711、761・・・内側開口
312、322、332、342、352、362、512、562、662、712、762・・・外側開口
CA30、CA50、CA60、CA70・・・中心軸
HC36、HC51、HC56、HC66、HC71、HC76・・・噴孔軸
図1
図2
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