特許第6633817号(P6633817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6633817チタン酸アルカリ金属、チタン酸アルカリ金属の製造方法及び摩擦材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6633817
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】チタン酸アルカリ金属、チタン酸アルカリ金属の製造方法及び摩擦材
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20200109BHJP
   F16D 69/02 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   C01G23/00 B
   F16D69/02 F
【請求項の数】4
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2019-528614(P2019-528614)
(86)(22)【出願日】2018年11月13日
(86)【国際出願番号】JP2018041922
【審査請求日】2019年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2018-45005(P2018-45005)
(32)【優先日】2018年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-45006(P2018-45006)
(32)【優先日】2018年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧 大輔
(72)【発明者】
【氏名】堺 英樹
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭42−027264(JP,B1)
【文献】 特公昭50−017960(JP,B1)
【文献】 特開昭46−001359(JP,A)
【文献】 米国特許第03649171(US,A)
【文献】 特開2008−303121(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103359781(CN,A)
【文献】 特開平06−271318(JP,A)
【文献】 特開2009−067639(JP,A)
【文献】 特開2000−192014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G1/00−23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸アルカリ金属相と、AlとSiとNaとを含有する複合酸化物と、を有し、
NaとNa以外のアルカリ金属Xの合計モル数に対するNaのモル数の比の百分率((Na/(Na+X))×100)が50〜100モル%であり、
Tiの含有量に対するSiの含有量とAlの含有量の合計の比の百分率(((Si+Al)/Ti)×100)が、0.3〜10質量%であり、
短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上、かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物の本数割合が0.2%以下であること、
を特徴とするチタン酸アルカリ金属。
【請求項2】
NaとNa以外のアルカリ金属Xの合計モル数に対するNaのモル数の比の百分率((Na/(Na+X))×100)が50〜100モル%となるように、Tiとアルカリ金属とSiとAlとを含有する原料を混合して原料混合物を調製する原料混合工程と、
該原料混合物を、焼成温度900〜1300℃で焼成して原料混合物の焼成物を得る焼成工程と、
該原料混合物の焼成物を粉砕する粉砕工程と、
を有し、
該原料混合物は、Tiを含有するチタン源と、アルカリ金属を含有するアルカリ金属源と、を含有し、
該チタン源として、Tiの含有量に対し、Siの含有量が0.5〜3.0質量%、Alの含有量が0.1〜1.0質量%であるチタン鉱石を含有し、
該チタン源中の該チタン鉱石の含有割合が20質量%以上であること、
を特徴とするチタン酸アルカリ金属の製造方法。
【請求項3】
前記原料混合工程において、前記原料混合物中のNaとNa以外のアルカリ金属Xの合計モル数に対するTiのモル数の比(Ti/(Na+X))が、2.4〜3.6となるように、チタン源とアルカリ金属源とを混合することを特徴とする請求項記載のチタン酸アルカリ金属の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載のチタン酸アルカリ金属を含有することを特徴とする摩擦材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短径が3μm以下かつ長径が5μm以上かつアスペクト比が3以上の化合物(WHOファイバー)の含有量が少ないチタン酸アルカリ金属、該WHOファイバーを少なくすることができるチタン酸アルカリ金属の製造方法、及び該WHOファイバーの含有量が少ないチタン酸アルカリ金属を含有する摩擦材に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸アルカリ金属は、自動車、鉄道車両、航空機及び産業機械類等における制動装置を構成する、ブレーキライニング、ディスクパッド、クラッチフェージング等の摩擦摺動部材用の摩擦材として有用な材料である。
【0003】
チタン酸アルカリ金属の中でも特に、一般式KO・nTiO(nは1〜12の整数)で示され、nが6である6チタン酸カリウムのファイバー(繊維状粒子)を含有する摩擦材は、特に耐熱性等に優れることが知られ、例えば、特許文献1には、平均粒径が0.1〜10mmのチタン化合物とカリウム化合物を混合し、該混合物の焼成温度を800〜1300℃の温度範囲内で調整することにより、所望形状の6チタン酸カリウムを製造できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−266131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような6チタン酸カリウムは、焼成温度によって繊維状構造となり易いため、世界保健機構(WHO)で規定されている形状(以下、WHOファイバー)以外の6チタン酸カリウムを製造するためには、該混合物の焼成温度や焼成時の昇温速度を微調整するといった煩雑な工程が必要とされている。なお、WHOファイバーとは、短径が3μm以下かつ長径が5μm以上かつアスペクト比が3以上の化合物である。チタン酸アルカリ金属中における該WHOファイバーの低減化が望まれている。
【0006】
従って、本発明は、WHOファイバーの含有量が少ないチタン酸アルカリ金属、WHOファイバーを少なくすることができるチタン酸アルカリ金属の製造方法、及びWHOファイバーの含有量が少ないチタン酸アルカリ金属を含有する摩擦材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下に示す本発明により解決される。
すなわち、本発明(1)は、チタン酸アルカリ金属相と、AlとSiとNaとを含有する複合酸化物と、を有し、
NaとNa以外のアルカリ金属Xの合計モル数に対するNaのモル数の比の百分率((Na/(Na+X))×100)が50〜100モル%であり、
Tiの含有量に対するSiの含有量とAlの含有量の合計の比の百分率(((Si+Al)/Ti)×100)が、0.3〜10質量%であること、
を特徴とするチタン酸アルカリ金属を提供するものである。
【0008】
また、本発明(2)は、短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上、かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物の本数割合が0.2%以下であることを特徴とする(1)のチタン酸アルカリ金属を提供するものである。
【0009】
また、本発明(3)は、NaとNa以外のアルカリ金属Xの合計モル数に対するNaのモル数の比の百分率((Na/(Na+X))×100)が50〜100モル%となるように、Tiとアルカリ金属とSiとAlとを含有する原料を混合して原料混合物を調製する原料混合工程と、
該原料混合物を、焼成温度900〜1300℃で焼成して原料混合物の焼成物を得る焼成工程と、
該原料混合物の焼成物を粉砕する粉砕工程と、
を有することを特徴とするチタン酸アルカリ金属の製造方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明(4)は、前記原料混合物は、Tiを含有するチタン源と、アルカリ金属を含有するアルカリ金属源と、を含有し、
該チタン源は、AlとSiを含有すること、
を特徴とする(3)のチタン酸アルカリ金属の製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明(5)は、前記チタン源として、Tiの含有量に対し、Siの含有量が0.5〜3.0質量%、Alの含有量が0.1〜1.0質量%であるチタン鉱石を含有し、
前記チタン源中の該チタン鉱石の含有割合が20質量%以上であること、
を特徴とする(4)のチタン酸アルカリ金属の製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明(6)は、前記原料混合工程において、前記原料混合物中のNaとNa以外のアルカリ金属Xの合計モル数に対するTiのモル数の比(Ti/(Na+X))が、2.4〜3.6となるように、チタン源とアルカリ金属源とを混合することを特徴とする(4)又は(5)いずれかのチタン酸アルカリ金属の製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明(7)は、(1)又は(2)いずれかのチタン酸アルカリ金属を含有することを特徴とする摩擦材を提供するものである。
【0014】
また、本発明(8)は、NaとKの合計モル数に対するNaのモル数の比の百分率((Na/(Na+K))×100)が50〜100モル%であり、
レーザー回折散乱法による平均粒径(D50)が15μm以下であり、
短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上、かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物の含有量が0.025体積%以下であること、
を特徴とするチタン酸アルカリ金属を提供するものである。
【0015】
また、本発明(9)は、平均粒径(D50)が1〜15μmであることを特徴とする(8)のチタン酸アルカリ金属を提供するものである。
【0016】
また、本発明(10)は、NaとKの合計モル数に対するNaのモル数の比の百分率((Na/(Na+K))×100)が50〜100モル%となるように、Tiを含有するチタン源とアルカリ金属を含有するアルカリ金属源とを混合して、原料混合物を調整する原料混合工程と、
該原料混合物を、焼成温度900〜1300℃で焼成して原料混合物の焼成物を得る焼成工程と、
該原料混合物の焼成物を粉砕する粉砕工程と、
を有することを特徴とするチタン酸アルカリ金属の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明(11)は、(8)又は(9)いずれかのチタン酸アルカリ金属を含有することを特徴とする摩擦材を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、WHOファイバーの含有量が少ないチタン酸アルカリ金属、WHOファイバーを少なくすることができるチタン酸アルカリ金属の製造方法、及びWHOファイバーの含有量が少ないチタン酸アルカリ金属を含有する摩擦材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例5のチタン酸アルカリ金属のSTEM像である。
図2】実施例5のチタン酸アルカリ金属のOマッピング解析の結果である。
図3】実施例5のチタン酸アルカリ金属のSiマッピング解析の結果である。
図4】実施例5のチタン酸アルカリ金属のNaマッピング解析の結果である。
図5】実施例5のチタン酸アルカリ金属のAlマッピング解析の結果である。
図6】実施例5のチタン酸アルカリ金属のTiマッピング解析の結果である。
図7図1を部分的に拡大して観察点a〜cを示した図である。
図8図7に示した観察点aの格子観察像である。
図9図7に示した観察点bの格子観察像である。
図10図7に示した観察点cの格子観察像である。
図11図7に示した観察点aのEDS分析の結果である。
図12図7に示した観察点bのEDS分析の結果である。
図13図7に示した観察点cのEDS分析の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属>
以下、本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属にかかる実施形態について、詳細に説明する。以下の説明は、実施形態の一例について説明するものであって、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。なお、本発明の第一の形態において、化合物の組成を元素記号で表記した場合には、金属、イオン、その他状態を限定するものではなく、状況に応じて取り得る状態を全て含んでいる。
【0021】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属は、チタン酸アルカリ金属相と、AlとSiとNaとを含有する複合酸化物と、を有し、
NaとNa以外のアルカリ金属Xの合計モル数に対するNaのモル数の比の百分率((Na/(Na+X))×100)が50〜100モル%であり、
Tiの含有量に対するSiの含有量とAlの含有量の合計の比の百分率(((Si+Al)/Ti)×100)が、0.3〜10質量%であること、
を特徴とするチタン酸アルカリ金属ある。
【0022】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属は、チタン酸アルカリ金属相と、AlとSiとNaとを含有する複合酸化物と、を有するものである。ここで、チタン酸アルカリ金属相とは、後述の式(1a)により表されるチタン酸アルカリ金属を含む相である。本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属は、チタン酸アルカリ金属を含む相が、AlとSiとNaとを含有する複合酸化物を含んだ状態で集合した集合体である。
【0023】
後述する実施例のエネルギー分散型X線分光法にかかるデータから、本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属では、チタン酸アルカリ金属相の粒子間に隙間が存在するものもある。すなわち、本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属には、粒子同士が接触していない部分が存在する。本発明の第一の形態においては、そのようなチタン酸アルカリ金属間の非接触部(間隙)に、AlとSiとNaを含有する複合酸化物が存在している場合があると考えられる。
【0024】
なお、本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属において、AlとSiとNaを含有する複合酸化物が、チタン酸アルカリ金属相の粒子間の隙間に存在していることは、チタン酸アルカリ金属をエネルギー分散型X線分光法(EDX又はEDS;Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)を適用して観察することができる。EDXは、通常、走査電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)又は透過電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)に付属している(SEM−EDX又はTEM−EDX)。
【0025】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属に係るチタン酸アルカリ金属相は、Tiとアルカリ金属とを含有する複合酸化物の粒子であり、アルカリ金属元素として、ナトリウムを必須の元素として含有する。なお、本発明における「アルカリ金属」とは、周期表の第1族元素のうち、水素(H)を除くリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)の6元素の総称を意味する。
【0026】
チタン酸アルカリ金属相としては、下記式(1a):
Ti (1a)
(式中、Aは、1種以上のアルカリ金属である。xは1.5〜2.5、yは5.5〜6.5、zは12.0〜14.0である。y/xは2.4〜3.6であり、好ましくは2.6〜3.4である。)
で表される複合酸化物が挙げられる。上記式(1a)で表されるチタン酸アルカリ金属の複合酸化物(チタン酸アルカリ金属相)は、その一部に格子欠陥や元素置換等の上記式(1a)から外れた組成のチタン酸アルカリ金属が混入している場合がある。本発明においては、そのような構成のチタン酸アルカリ金属相を含有するチタン酸アルカリ金属も許容される。
なお、上記式(1a)において、アルカリ金属元素として、ナトリウムを含有しナトリウム以外のアルカリ金属を含有しない場合は、xはナトリウムの値を指し、また、ナトリウムとナトリウム以外のアルカリ金属の両方を含有する場合は、xはナトリウムとナトリウム以外のアルカリ金属の合計の値を指す。
【0027】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属は、本発明の効果を損なわない範囲で、Na以外のアルカリ金属X、すなわち、K、Li、Rb、Cs、Frを含有していてもよい。本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属において、ナトリウムとナトリウム以外のアルカリ金属Xの合計モル数に対するナトリウムのモル数の比の百分率((Na/(Na+X))×100)は、50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%である。ナトリウムとナトリウム以外のアルカリ金属の合計モル数に対するナトリウムのモル数の比が、上記範囲にあることにより、焼成時に短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物(WHOファイバー)の本数割合が0.2%以下のチタン酸アルカリ金属となり易い。チタン酸アルカリ金属に含まれているアルカリ金属の全量(Na+X)に対するナトリウムの含有量が上記範囲になると、アルミニウムとケイ素とナトリウムを含有する複合酸化物の含有量が増加する。その結果、該アルミニウムとケイ素とナトリウムを含有する複合酸化物により、チタン酸アルカリ金属中の該WHOファイバーの形成が阻害される。従って、チタン酸アルカリ金属の製造の際に、原料混合物を焼成した後に、強い粉砕条件で粉砕をせずとも、該WHOファイバーの本数割合が0.2%以下のものが得られ易くなる。
【0028】
特に、ナトリウム以外のアルカリ金属がカリウムである場合に、本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属に含まれているアルカリ金属の全量に対するカリウムの含有量の割合((K/全アルカリ金属)×100)が、50モル%以上になると、アルミニウムとケイ素とナトリウムとを含有する複合酸化物の形成が阻害されるので好ましくない。その理由として、アルミニウムとケイ素とナトリウムとを含有する複合酸化物は、アルミニウムを含むガラス質から構成されると考えられるが、ケイ素とカリウムではガラス質が形成されないためと推察される。
【0029】
また、本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属は、ナトリウム以外のアルカリ金属Xを複数含有していてもよい。本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属において、例えばナトリウム以外のアルカリ金属としてカリウムを含有し、さらにナトリウム及びカリウム以外のアルカリ金属Y(Li、Rb、Cs、Fr)を含有する場合、アルカリ金属Yの合計モル数に対するナトリウムとカリウムの合計モル数の比の百分率(((Na+K)/Y)×100)は、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、より好ましくは100モル%である。
【0030】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属において、アルカリ金属の合計モル数に対するTiのモル数の比(Ti/アルカリ金属)は、好ましくは2.4〜3.6、特に好ましくは2.6〜3.4である。本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属が、アルカリ金属として、ナトリウムのみを含有する場合は、上記アルカリ金属はナトリウムの値を指し、また、ナトリウム及びナトリウム以外のアルカリ金属を含有する場合は、上記アルカリ金属はナトリウムとナトリウム以外のアルカリ金属の合計の値を指す。
【0031】
なお、本発明において、チタン酸アルカリ金属中に含まれるアルカリ金属の含有割合と、Tiの含有割合を、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、型番SPS3100)を用いて求めることができる。
【0032】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属中、Tiの含有量に対するSiの含有量とAlの含有量の合計の比の百分率(((Si+Al)/Ti)×100)は、0.3〜10質量%、好ましくは0.3〜2.0質量%、特に好ましくは0.35〜2.0質量%である。チタン酸アルカリ金属のSiの含有量とAlの含有量の合計が、上記範囲にあることにより、短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上、かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物(WHOファイバー)の含有量が少なくなる。一方、チタン酸アルカリ金属のSiの含有量とAlの含有量の合計が、上記範囲未満だと、該WHOファイバーの含有量が多くなる。また、チタン酸アルカリ金属のSiの含有量とAlの含有量の合計が、上記範囲を超えると、摩擦材にしたときのブレーキ性能が悪くなる。
【0033】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属において、Siの含有量とAlの含有量の比(Si:Al)は、質量比で、好ましくは4:1〜2:1、特に好ましくは3.7:1〜2.2:1である。チタン酸アルカリ金属のSiの含有量とAlの含有量の比(Si:Al)が、上記範囲にあることにより、該WHOファイバーの含有量が少なくなり易い。
【0034】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属は、他の元素を含有していてもよい。他の元素としては、例えばFe、Mg等の金属元素等が挙げられる。なお、本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属においては、不可避不純物の混入は許容される。
【0035】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属の平均粒径(D50)は、15μm以下、好ましくは1〜10μmである。チタン酸アルカリ金属の平均粒径D50が、上記範囲にあることにより、摩擦材にしたときのブレーキ性能に優れる。なお、チタン酸アルカリ金属の平均粒径は、レーザー回折散乱法により求められるD50であり、体積基準の累積分布が50%となる粒径を指す。
【0036】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属中、短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上、かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物(WHOファイバー)の本数割合は、好ましくは0.2%以下、特に好ましくは0.15%以下である。なお、本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属中の該WHOファイバーの本数割合とは、本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属中の化合物の全個数に対する該WHOファイバーの本数の割合を指す。
【0037】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属において、動的画像解析により求められる、測定対象物の短径d、長径L、アスペクト比(L/d)、及び本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属中の該WHOファイバーの本数割合の測定方法は、本発明の要旨を逸脱しなければ、特に限定されないが、例えば、以下の手順によって求められる。動的画像解析装置(セイシン企業社製、PITA−3)を用いて、測定対象物のチタン酸アルカリ金属の粒子を1万〜10万点撮影し、得られた画像中の各粒子の短径を粒子の「短径d」とし、長径を粒子の「長径L」とし、各々の粒子のアスペクト比を、「アスペクト比=L/d」の式により算出する。また、各々の粒子を、短径d、長径Lの円柱として、当該円柱の体積を各々の粒子の体積として、「体積=π×(d/2)×L」の式により算出する。そして、「((観測された短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上かつアスペクト比(L/d)が3以上の粒子の本数の合計)/(観測された全粒子の個数の合計))×100」の式により、該WHOファイバーの本数割合を求める。なお、測定対象物の撮影点数は、用いる解析装置によって適宜変更され得るものである。本発明では、該WHOファイバーの本数割合を求めることができれば、例えば、撮影点数が1万点未満で解析が可能な解析装置や、10万点を超過した撮影点数が必要な解析装置が用いられてもよい。
【0038】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属では、AlとSiとNaとを含有する複合酸化物が、チタン酸アルカリ金属相の隙間に存在している場合がある。本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属では、この相間の隙間を埋めるように、AlとSiとNaを含有する複合酸化物が存在している場合がある。このような構成により、チタン酸アルカリ金属中における該WHOファイバーの形成が阻害されるが、その理由として以下のメカニズムが考えられる。
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属は、焼成の際に原料混合物中に存在するNa、Si及びAlから生成するAlとSiとNaとを含有する複合酸化物(シリカアルミナ複合酸化物(ケイ酸アルミニウム))が、焼成の際に、チタン酸アルカリ金属相の結晶の成長方向に存在して、チタン酸アルカリ金属相が繊維状の結晶に成長するのを阻害し、また、繊維状のチタン酸アルカリ金属相が生成したとしても、AlとSiとNaとを含有する複合酸化物が接着剤として機能して、繊維状の結晶同士を結合させて粒状にすることで、該WHOファイバーの形成が防がれ、該WHOファイバーの含有量が少なくなったものと推測される。
【0039】
<本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属の製造方法>
以下、本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属の製造方法にかかる実施形態について、詳細に説明する。以下の説明は、実施形態の一例について説明するものであって、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0040】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属の製造方法は、NaとNa以外のアルカリ金属Xの合計モル数に対するNaのモル数の比の百分率((Na/(Na+X))×100)が50〜100モル%となるように、Tiとアルカリ金属とSiとAlとを含有する原料を混合して原料混合物を調製する原料混合工程と、
該原料混合物を、焼成温度900〜1300℃で焼成して原料混合物の焼成物を得る焼成工程と、
該原料混合物の焼成物を粉砕する粉砕工程と、
を有することを特徴とするチタン酸アルカリ金属の製造方法である。
【0041】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属の製造方法は、原料混合工程と、焼成工程と、粉砕工程と、を有する。
【0042】
原料混合工程は、Tiとアルカリ金属とSiとAlとを含有するチタン酸アルカリ金属製造用の原料を混合して、Tiと、アルカリ金属と、Siと、Alと、を、所定割合で含有する原料混合物を調整する工程である。原料混合物は、チタンを含有するチタン源と、アルカリ金属を含有するアルカリ金属源と、を含有する。チタン源は、短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上、かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物(WHOファイバー)の含有量を低減する観点から、AlとSiを含むものであることが好ましい。原料混合工程は、Tiと、アルカリ金属と、Siと、Alと、を、所定割合で含有する原料混合物を得ることができれば、チタン酸アルカリ金属製造用の原料は特に限定されない。原料混合工程では、チタン酸アルカリ金属製造用の原料として、例えば、チタン源とアルカリ金属源とケイ素源とアルミニウム源とを用い、これらを混合する。また、原料混合工程では、チタン酸アルカリ金属製造用の原料として、例えば、AlとSiの供給源として、AlとSiを含むチタン源を用いてもよいし、Alを含有するアルミニウム源と、Siを含有するケイ素源とを用いてもよい。
【0043】
チタン源は、チタンを含有する化合物であれば、特に制限されず、例えば、酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸、塩化チタン、チタン鉱石、含水チタニア等のチタンを含有する化合物が挙げられる。チタン鉱石としては、ルチル鉱石、チタン鉄鉱、鋭錐鉱、及び板チタン石等が挙げられる。チタン源として含有されるチタン鉱石中、Ti含有量は、チタン鉱石の全質量に対し、TiO換算で、好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0044】
チタン源として用いられる上記チタン鉱石には、チタンの他に様々な元素が含まれている。例えば、チタン源としてルチル鉱を適用した場合、ケイ素やアルミニウムが含まれているため、ケイ素源としてのケイ素を含有する化合物やアルミニウム源としてのアルミニウムを含有する化合物を用いなくてもよい。チタン鉱石は、原料のハンドリング性等の観点から、チタン源として適している。
【0045】
チタン源となるチタンを含有する化合物は、固体であっても、液体であってもよい。チタン源が固体の場合、チタン源の平均粒径は、原料のハンドリング性、他の原料との混合性および反応性に優れる点で、好ましくは0.5〜1000μm、特に好ましくは0.5〜850μmである。なお、チタン源の平均粒径は、レーザー回折散乱法により求められるD50であり、体積基準の累積分布が50%となる粒径を指す。
【0046】
アルカリ金属源は、アルカリ金属を含有する化合物であり、本発明においては、アルカリ金属としてナトリウムを必須の元素として含有する。従って、アルカリ金属源としては、ナトリウムを含有する化合物が適用される。また、本発明においては、ナトリウムを含有する化合物中に、K、Li、Rb、Cs、Frの1種又は複数種のナトリウム以外の他のアルカリ金属が含まれていてもよい。あるいは、アルカリ金属源としてナトリウムを含有する化合物に加えて、カリウムを含有する化合物、ルビジウムを含有する化合物、セシウムを含有する化合物、フランシウムを含有する化合物、これらの混合物等のアルカリ金属を有する化合物が含まれていてもよい。
【0047】
ナトリウム源、すなわち、ナトリウムを含有する化合物としては、特に制限されないが、例えば、炭酸ナトリウム、酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、硝酸ナトリウム等の化合物が挙げられる。これらのうち、ナトリウム源としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムが、チタン源との混合性および反応性に優れ、また安価で入手し易い点で好ましい。カリウム源、すなわち、カリウムを含有する化合物としては、特に制限されないが、例えば、炭酸カリウム、水酸化カリウム、硝酸カリウム等のアルカリ金属塩等の化合物が挙げられる。これらのうち、カリウム源としては、炭酸カリウム、水酸化カリウムが、チタン源との混合性及び反応性に優れ、また安価で入手し易い点で好ましい。
【0048】
なお、ルビジウム源、セシウム源、フランシウム源としては、それぞれ各種アルカリ金属塩等が挙げられる。
【0049】
アルカリ金属源となるアルカリ金属を含有する化合物は、固体であっても、液体であってよい。アルカリ金属源が固体の場合、アルカリ金属源の粒径分布は、他の原料との混合のし易さや粉砕のし易さを考慮し、好ましくは1mm以上が4質量%以下かつ125μm以下が7質量%以下であり、特に好ましくは1mm以上が3質量%以下かつ125μm以下が6質量%以下である。なお、アルカリ金属源の粒径分布は、篩別による粒度評価である。
【0050】
チタン源として用いられる化合物中に、ケイ素やアルミニウムが含まれていない場合には、ケイ素源やアルミニウム源を別途用意する必要がある。例えば、ケイ素源は、ケイ素を含有し、かつ、ハロゲンを含有しない化合物であれば、特に制限されず、例えば、二酸化ケイ素、シリカ、コロイダルシリカ等のケイ素の酸化物が挙げられる。その他、ケイ素源としては、シロキサン結合を有するシリコーン化合物等の有機ケイ素化合物等が挙げられる。
【0051】
ケイ素源となるケイ素を含有する化合物は、固体であっても、液体であってもよい。ケイ素源が固体の場合、ケイ素源の平均粒径は、原料のハンドリング性、他の原料との混合性および反応性に優れる点で、好ましくは100μm以下、特に好ましくは1〜50μmである。なお、ケイ素源の平均粒径は、レーザー回折散乱法により求められるD50であり、体積基準の累積分布が50%となる粒径を指す。
【0052】
また、アルミニウム源は、アルミニウムを含有する化合物であれば、特に制限されず、例えば、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウムの酸化物等の化合物が挙げられる。
【0053】
アルミニウム源となるアルミニウムを含有する化合物は、固体であっても、液体であってもよい。アルミニウム源が固体の場合、アルミニウム源の平均粒径は、原料のハンドリング性、他の原料との混合性および反応性に優れる点で、好ましくは100μm以下、特に好ましくは1〜50μmである。なお、アルミニウム源の平均粒径は、レーザー回折散乱法により求められるD50であり、体積基準の累積分布が50%となる粒径を指す。
【0054】
原料混合物は、シリカアルミナ複合酸化物を含有することができる。つまり、原料混合工程では、ケイ素源の全部又は一部及びアルミニウム源の全部又は一部として、シリカアルミナ複合酸化物を用いることができる。そして、原料混合物に含有させるケイ素源及びアルミニウム源として、シリカアルミナ複合酸化物を含有することが、原料の供給、配合の手順の省略といった作業性に優れる点で、好ましい。
【0055】
原料混合物は、「Tiの含有量に対し、Siの含有量が、0.5〜3.0質量%、好ましくは0.5〜2.5質量%であり、Tiの含有量に対し、Alの含有量が、0.1〜1.0質量%、好ましくは0.1〜0.8質量%であるチタン鉱石」(以下、原料混合物に係るチタン鉱石とも記載する。)を、含有することができる。つまり、原料混合工程では、チタン源の全部又は一部、ケイ素源の全部又は一部及びアルミニウム源の全部又は一部として、上記の原料混合物に係るチタン鉱石を用いることができる。
【0056】
原料混合物中、全チタン源に対し、上記の原料混合物に係るチタン鉱石の含有割合が、後述する範囲にあることにより、焼成工程及び粉砕工程を経て得られるチタン酸アルカリ金属中の短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物(WHOファイバー)の含有量を少なくすることができる。
【0057】
全チタン源に対する、上記の原料混合物に係るチタン鉱石の含有割合は、20質量%以上、好ましくは25質量%以上、特に好ましくは50質量%以上、より好ましくは100質量%である。全チタン源に対する、上記の原料混合物に係るチタン鉱石の含有割合が、上記範囲にあることにより、焼成工程及び粉砕工程を経て得られるチタン酸アルカリ金属中の該WHOファイバーの含有量を少なくすることができる。
【0058】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属の製造方法において、焼成工程及び粉砕工程を経て得られるチタン酸アルカリ金属中の該WHOファイバーの含有量が少なくなる理由としては、原料混合物中のチタン源に含まれるNa、Si及びAlが、焼成の際に、アルミニウムとケイ素とナトリウムとを含有するシリカアルミナ複合酸化物を形成し、このアルミニウムとケイ素とナトリウムとを含有するシリカアルミナ複合酸化物が、チタン酸アルカリ金属相の結晶の成長方向に存在することにより、チタン酸アルカリ金属相が繊維状に結晶が成長するのを阻害することが考えられる。さらに、該チタン酸アルカリ金属中の該WHOファイバーの含有量の減少の理由として、繊維状のチタン酸アルカリ金属相が生成したとしても、アルミニウムとケイ素とナトリウムとを含有するシリカアルミナ複合酸化物が接着剤として機能して、繊維状の相同士を結合させて粒状にするので、該WHOファイバーの形成を防ぐことができることが推測される。チタン鉱石中のSiの含有量が、上記範囲未満だと、該WHOファイバーの含有量を少なくする効果が得られ難く、また、上記範囲を超えると目的の結晶構造をもつチタン酸アルカリ金属を得ることが難しくなる。また、チタン鉱石中のAlの含有量が、上記範囲未満だと、該WHOファイバーの含有量を少なくする効果が得られ難く、また、上記範囲を超えると、目的の結晶構造をもつチタン酸アルカリ金属を得ることが難しくなる。また、全チタン源に対する上記の原料混合物に係るチタン鉱石の含有割合が、上記範囲未満だと、該WHOファイバーの含有量を少なくする効果が得られ難い。
【0059】
原料混合工程では、原料混合物中のNaとNa以外のアルカリ金属Xの合計モル数に対するNaのモル数の比の百分率((Na/(Na+X))×100)が、50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%となるように、アルカリ金属源を混合する。原料混合物中のNaとNa以外のアルカリ金属Xの合計モル数に対するNaのモル数の比が、上記範囲にあることにより、短径dが3μm超過、長径Lが5μm未満かつアスペクト比(L/d)が3未満のチタン酸アルカリが得られ易くなり、そのため、焼成工程及び粉砕工程を経て得られるチタン酸アルカリ金属中の該WHOファイバーの含有量を少なくすることができる。
【0060】
例えば、Na以外のアルカリ金属がKであり、さらにNa及びK以外のアルカリ金属Y(Li、Rb、Cs及びFrのうちのいずれか1種以上)を含んでいる場合、原料混合工程では、原料混合物中のアルカリ金属Yの合計モル数に対するNaとKの合計モル数の比の百分率(((Na+K)/Y)×100)は、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、より好ましくは100モル%となるように、アルカリ金属源を混合する。なお、原料混合物が、アルカリ金属として、ナトリウムを含有しカリウムを含有しない場合は、上記(Na+K)はナトリウムの値を指し、また、ナトリウムとカリウムの両方を含有する場合は、上記(Na+K)はナトリウムとカリウムの合計の値を指す。
【0061】
原料混合工程において、原料混合物中のアルカリ金属の合計モル数に対するTiのモル数の比(Ti/アルカリ金属)が、好ましくは2.4〜3.6、特に好ましくは2.6〜3.4となるように、チタン源とアルカリ金属源とを混合する。原料混合物中のアルカリ金属の合計モル数に対するTiのモル数の比が、上記範囲にあることにより、目的とするチタン酸塩の複合化合物の化学式にあったものが得られる。なお、原料混合物が、アルカリ金属として、ナトリウムのみ含有する場合は、上記アルカリ金属の値はナトリウムの値を指し、また、ナトリウム及びカリウムのみを含有する場合は、上記アルカリ金属の値はナトリウムとカリウムの合計の値を指す。
【0062】
原料混合工程において、チタン源やアルカリ金属源等の各原料を混合する方法としては、特に制限されず、乾式混合であっても、湿式混合であってもよい。乾式でチタン源とアルカリ金属源とを混合する方法としては、例えば、乳鉢等を用いた粉砕のほか、振動ミル、振動ロッドミル、ボールミル、ビーズミル、ターボミル、遊星ボールミル、ヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて、乾式で混合する方法が挙げられる。また、湿式でチタン源とアルカリ金属源とを混合する方法としては、例えば、振動ミル、振動ロッドミル、ボールミル、ビーズミル、ターボミル、遊星ボールミル等の混合装置を用いて、湿式で混合する方法が挙げられる。湿式で混合する場合、湿式混合に用いる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、ブタノール、アセトン、ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0063】
原料混合工程では、チタン源やアルカリ金属源等の各原料以外に、必要に応じて、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム等の無機酸化物や、木屑、木片ペレット等の有機物、メタノール、エタノール、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、アセトン等の有機溶剤や、水等を混合してもよい。
【0064】
焼成工程は、原料混合工程を行い得られる原料混合物を焼成して、該原料混合物の焼成物を得る工程である。
【0065】
焼成工程おける焼成温度は、900〜1300℃、好ましくは950〜1250℃である。焼成温度が、上記範囲にあることにより、短径dが3μm超過、長径Lが5μm未満、かつアスペクト比(L/d)が3未満のチタン酸アルカリ金属が得られ易くなり、そのため、焼成工程及び粉砕工程を経て得られるチタン酸アルカリ金属中の短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上、かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物(WHOファイバー)の含有量を少なくすることができる。一方、焼成温度が、上記範囲未満だと、未反応の原料混合物が残留してしまい、また、上記範囲を超えると、短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上、かつアスペクト比(L/d)が3以上のチタン酸アルカリ金属が得られ易くなる。
【0066】
焼成工程において、必要に応じて、焼成時間を適宜選択することができる。ただし、焼成時間が長過ぎると、チタン酸アルカリ金属相の結晶が成長し過ぎるために、チタン酸アルカリ金属の比表面積が小さくなりすぎる傾向にある。また、焼成温度によって、チタン酸アルカリ金属相の結晶の成長速度は異なる。そのため、焼成工程においては、粉砕工程を経て、目的とするチタン酸アルカリ金属の比表面積が得られるように、焼成温度に応じた焼成時間が選択される。
【0067】
粉砕工程を経て得られるチタン酸アルカリ金属の比表面積は、0.5〜4.5g/mが好ましく、特に0.7〜4.0g/mが更に好ましい。チタン源としてチタン鉱石を用いた場合、チタン源中に含まれるチタン鉱石の含有割合が上記範囲内にあると、チタン酸アルカリ金属における該WHOファイバーの含有量を低減することができる。そして、そのようなチタン酸アルカリ金属は、焼成条件が調整され、容易に粉砕することができることから、比表面積を小さくすることができる。
【0068】
焼成工程において、原料混合物を焼成するときの焼成雰囲気は、必要に応じて適宜選択され、例えば、大気雰囲気、酸素ガス雰囲気等の酸化性雰囲気が挙げられる。
【0069】
焼成工程では、原料混合物を焼成して得られる焼成物を、再度、焼成することを、繰り返してもよい。
【0070】
そして、焼成工程を行うことにより、原料混合物の焼成物が得られる。
【0071】
粉砕工程は、原料混合物の焼成物を粉砕して、所望の粉体物性を有するチタン酸アルカリ金属を得る工程である。
【0072】
粉砕工程において、焼成工程を行い得られる焼成物を粉砕する方法としては、特に制限されない。乾式粉砕を行う方法としては、例えば、乳鉢等を用いた粉砕のほか、振動ミル、振動ロッドミル、ボールミル、ビーズミル、ターボミル、遊星ボールミル、パルベライザー、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル等の粉砕装置を用いて、乾式で粉砕する方法が挙げられる。
【0073】
粉砕工程において、焼成工程を行い得られる原料混合物の焼成物を粉砕するときの粉砕条件は、製造目的とするチタン酸アルカリ金属に要求される物性により、適宜選択される。
【0074】
そして、粉砕工程を行うことにより、所望の粉体物性を有する本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属を得る。
【0075】
本発明の第一の形態のチタン酸アルカリ金属の製造方法では、原料混合物中に、チタン及びアルカリ金属と共に、ケイ素及びアルミニウムを存在させることにより、焼成工程及び粉砕工程を経て得られるチタン酸アルカリ金属中の短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上、かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物(WHOファイバー)の含有量を少なくすることができる。
【0076】
<本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属>
以下、本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属にかかる実施形態について、詳細に説明する。以下の説明は、実施形態の一例について説明するものであって、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。なお、本発明の第二の形態において、化合物の組成を元素記号で表記した場合には、金属、イオン、その他状態を限定するものではなく、状況に応じて取り得る状態を全て含んでいる。
【0077】
本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属は、NaとKの合計モル数に対するNaのモル数の比の百分率((Na/(Na+K))×100)が50〜100モル%であり、
レーザー回折散乱法による平均粒径(D50)が15μm以下であり、
短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上、かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物(WHOファイバー)の含有量が0.025体積%以下であること、
特徴とするものである。
【0078】
本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属は、チタンとアルカリ金属とを含有する複合酸化物の粒子であり、アルカリ金属として、ナトリウムを必須の元素として含有する。なお、本発明における「アルカリ金属」とは、周期表の第1族元素のうち、水素(H)を除くリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)の6元素の総称を意味する。
【0079】
本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属は、本発明の効果を損なわない範囲で、Na及びK以外のアルカリ金属、すなわち、Li、Rb、Cs、Frを含有していてもよい。本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属において、アルカリ金属の合計モル数に対するNaとKの合計モル数の比の百分率(((Na+K)/アルカリ金属)×100)は、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、より好ましくは100モル%である。
【0080】
本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属において、アルカリ金属の合計モル数に対するTiのモル数の比(Ti/アルカリ金属)は、好ましくは2.4〜3.6、特に好ましくは2.6〜3.4である。本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属が、アルカリ金属として、ナトリウムのみを含有する場合は、上記アルカリ金属はナトリウムの値を指し、また、ナトリウム及びカリウムのみを含有する場合は、上記アルカリ金属はナトリウムとカリウムの合計の値を指す。本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属としては、例えば、下記式(1b):
Ti (1b)
(式中、Aは、Naであるか又はNa及びKである。xは1.5〜2.5、yは5.5〜6.5、zは12.0〜14.0である。y/xは2.4〜3.6、好ましく2.6〜3.4である。)
で表される複合酸化物が挙げられる。上記式(1b)で表されるチタン酸アルカリ金属の複合酸化物は、その一部に格子欠陥や元素置換等の上記式(1b)から外れた組成のチタン酸アルカリ金属が混入している場合がある。本発明においては、そのような構成のチタン酸アルカリ金属も許容される。
なお、上記式(1b)において、アルカリ金属として、ナトリウムを含有しカリウムを含有しない場合は、xはナトリウムの値を指し、また、ナトリウムとカリウムの両方を含有する場合は、xはナトリウムとカリウムの合計の値を指す。
【0081】
本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属において、NaとKの合計モル数に対するNaのモル数の比の百分率((Na/(Na+K))×100)は、50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%である。NaとKの合計モル数に対するNaのモル数の比が、上記範囲にあることにより、チタン酸アルカリ金属の製造の際に、原料混合物を焼成した後に、強い粉砕条件で粉砕をせずとも、短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上、かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物(WHOファイバー)の含有量が0.025体積%以下のものが得られ易くなる。また、本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属は、強い粉砕条件で粉砕する強粉砕工程が不要になることから安価となる。
【0082】
なお、本発明において、チタン酸アルカリ金属中に含まれるアルカリ金属の含有割合と、チタンの含有割合は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、型番SPS3100)を用いて求められる。
【0083】
本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属中の該WHOファイバーの含有量は、0.025体積%以下である。
【0084】
本発明の第二の形態において、動的画像解析により求められる、測定対象物の短径d、長径L、アスペクト比(L/d)、本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属中の該WHOファイバーの本数割合の測定方法は、本発明の要旨を逸脱しなければ、特に限定されないが、例えば、以下の手順によって求められる。動的画像解析装置(セイシン企業社製、PITA−3)を用いて、測定対象物のチタン酸アルカリ金属の粒子を1万〜10万点撮影し、得られた画像中の各粒子の短径を粒子の「短径d」とし、長径を粒子の「長径L」とし、各々の粒子のアスペクト比を、「アスペクト比=L/d」の式により算出する。また、各々の粒子を、短径d、長径Lの円柱として、当該円柱の体積を各々の粒子の体積として、「体積=π×(d/2)×L」の式により算出する。そして、「((観測された短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上かつアスペクト比(L/d)が3以上の粒子の合計体積)/(観測された全粒子の個数の合計体積))×100」の式により、該WHOファイバーの含有量(体積割合)を求める。なお、測定対象物の撮影点数は、用いる解析装置によって適宜変更され得るものである。本発明では、該WHOファイバーの本数割合を求めることができれば、例えば、撮影点数が1万点未満で解析が可能な解析装置や、10万点を超過した撮影点数が必要な解析装置が用いられてもよい。
【0085】
本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属のレーザー回折法による平均粒径(D50)は、15μm以下、好ましくは1〜15μmである。チタン酸アルカリ金属のレーザー回折法による平均粒径(D50)が、上記範囲にあることにより、摩擦材の耐久性が高くなる。なお、本発明において、D50は、レーザー回折散乱法により求められ、体積基準の累積分布が50%となる粒径を指す。
【0086】
本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属の平均結晶子径は、好ましくは150nm以下、特に好ましくは80〜150nmである。なお、本発明において、平均結晶子径は、粉末X線回折装置を用いて表1に示す測定条件にてX線回折分析を行い、得られるXRD測定結果より求められるメインピークの半値幅(面指数(200))に基づいて、下記シェラーの式(2)で算出される値である。
τ=Κλ/((β−βstd)・cosθ) (2)
τ:結晶子径(Å)
Κ:シェラー定数(形状因子(0.9))
λ:X線波長(X線波長Cu−Kα1 1.5405(Å))
β:メインピークの半値幅(200)
βstd:標準物質の半値幅(=0.029(°))
θ:フラッグ角(°)
【0087】
【表1】
【0088】
<本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属の製造方法>
本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属の製造方法は、NaとKの合計モル数に対するNaのモル数の比の百分率((Na/(Na+K))×100)が50〜100モル%となるように、Tiを含有するチタン源とアルカリ金属を含有するアルカリ金属源とを混合して、原料混合物を調整する原料混合工程と、
該原料混合物を、焼成温度900〜1300℃で焼成して原料混合物の焼成物を得る焼成工程と、
該原料混合物の焼成物を粉砕する粉砕工程と、
を有することを特徴とする本発明のチタン酸アルカリ金属を製造する方法である。
【0089】
本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属の製造方法は、原料混合工程と、焼成工程と、粉砕工程と、を有する。
【0090】
原料混合工程は、Tiを含有するチタン源とアルカリ金属を含有するアルカリ金属源とを混合して、Tiとアルカリ金属とを所定割合で含有する原料混合物を調整する工程である。
【0091】
チタン源は、チタンを含有する化合物であれば、特に制限されず、例えば、酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸、塩化チタン、ルチル鉱石、含水チタニア等が挙げられる。これらのうち、酸化チタン、ルチル鉱石が、原料のハンドリング性、アルカリ源との混合性および反応性に優れ、また安価である点で好ましい。
【0092】
チタン源となるチタンを含有する化合物は、固体であっても、液体であってもよい。チタン源が固体の場合、チタン源の平均粒径は、原料のハンドリング性、アルカリ源との混合性および反応性の点で、好ましくは0.5〜1000μm、特に好ましくは0.5〜850μmである。なお、チタン源の平均粒径は、レーザー回折散乱法により求められるD50である。
【0093】
アルカリ金属源は、アルカリ金属を含有する化合物であり、例えば、ナトリウムを含有する化合物、カリウムを含有する化合物、ナトリウムとカリウムを含有する化合物、これらの混合物が挙げられる。そして、原料混合物は、アルカリ金属源として、ナトリウムを含有し、カリウムを含んでもよい化合物である。また、原料混合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、アルカリ金属源として、Na及びK以外のアルカリ金属、すなわち、Li、Rb、Cs、Frを含有する化合物を含んでいてもよい。
【0094】
ナトリウム源、すなわち、ナトリウムを含有する化合物としては、特に制限されないが、例えば、炭酸ナトリウム、酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、硝酸ナトリウム等が挙げられる。これらのうち、ナトリウム源としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムが、チタン源との混合性および反応性に優れ、また安価で入手し易い点で好ましい。カリウム源、すなわち、カリウムを含有する化合物としては、特に制限されないが、例えば、炭酸カリウム、水酸化カリウム、硝酸カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。これらのうち、カリウム源としては、炭酸カリウム、水酸化カリウムが、チタン源との混合性及び反応性に優れ、また安価で入手し易い点で好ましい。
【0095】
アルカリ金属源となるアルカリ金属を含有する化合物は、固体であっても、液体であってよい。アルカリ金属源が固体の場合、アルカリ金属源の粒径分布は、チタン源との混合のし易さや粉砕のし易さを考慮し、好ましくは1mm以上が4質量%以下且つ125μm以下が7質量%以下であり、特に好ましくは1mm以上が3質量%以下且つ125μm以下が6質量%以下である。なお、アルカリ金属源の粒径分布は、篩別による粒度評価である。
【0096】
原料混合工程では、原料混合物中のNaとKの合計モル数に対するNaのモル数の比の百分率((Na/(Na+K))×100)が、50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%となるように、アルカリ金属源を混合する。原料混合物中のNaとKの合計モル数に対するNaのモル数の比が、上記範囲にあることにより、アスペクト比が3以上の粒子の割合が2.0体積%以下のチタン酸アルカリ金属が得られ易くなり、そのため、チタン酸アルカリ金属の製造の際に、原料混合物を焼成した後に、粉砕工程において、強い条件での粉砕を行わなくとも、短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上、かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物(WHOファイバー)の含有量が0.025体積%以下のものが得られ易くなる。
【0097】
原料混合工程では、原料混合物中のアルカリ金属の合計モル数に対するNaとKの合計モル数の比の百分率(((Na+K)/アルカリ金属)×100)は、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、より好ましくは100モル%となるように、アルカリ金属源を混合する。なお、原料混合物が、アルカリ金属として、ナトリウムを含有しカリウムを含有しない場合は、上記(Na+K)はナトリウムの値を指し、また、ナトリウムとカリウムの両方を含有する場合は、上記(Na+K)はナトリウムとカリウムの合計の値を指す。
【0098】
原料混合工程では、原料混合物中のNaとKの合計モル数に対するTiのモル数の比(Ti/(Na+K))が、好ましくは2.4〜3.6、特に好ましくは2.6〜3.4となるように、チタン源とアルカリ金属源とを混合する。原料混合物中のNaとKの合計モル数に対するTiのモル数の比が、上記範囲にあることにより、目的とするチタン酸塩の複合化合物の化学式にあったものが得られる。
【0099】
原料混合工程において、チタン源とアルカリ金属源とを混合する方法としては、特に制限されず、乾式混合であっても、湿式混合であってもよい。乾式でチタン源とアルカリ金属源とを混合する方法としては、例えば、振動ミル、振動ロッドミル、ボールミル、ビーズミル、ターボミル、遊星ボールミル、ヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて、乾式で混合する方法が挙げられる。また、湿式でチタン源とアルカリ金属源とを混合する方法としては、例えば、振動ミル、振動ロッドミル、ボールミル、ビーズミル、ターボミル、遊星ボールミル等の混合装置を用いて、湿式で混合する方法が挙げられる。湿式で混合する場合、湿式混合に用いる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、ブタノール、アセトン、ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0100】
原料混合工程では、チタン源及びアルカリ金属源以外に、必要に応じて、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム等の無機酸化物や、木屑、木片ペレット等の有機物、メタノール、エタノール、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、アセトン等の有機溶剤や、水等を混合してもよい。
【0101】
焼成工程は、原料混合工程を行い得られる原料混合物を焼成して、原料混合物の焼成物を得る工程である。
【0102】
焼成工程おける焼成温度は、900〜1300℃、好ましくは950〜1250℃である。焼成温度が、上記範囲にあることにより、チタン酸アルカリ金属の製造の際に、原料混合物を焼成した後に、粉砕工程において、強い条件での粉砕を行わなくとも、短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上、かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物(WHOファイバー)の含有量が0.025体積%以下のものが得られ易くなる。また、本発明のチタン酸アルカリ金属の製造方法によれば、強い粉砕条件で粉砕しなくても、焼成及び粉砕を経て、該WHOファイバーの含有量が0.025体積%以下のものが得られるので、安価なチタン酸アルカリ金属を製造することができる。一方、焼成温度が、上記範囲未満だと、未反応の焼成原料が残留してしまい、また、上記範囲を超えると、該WHOファイバーの割合が0.025体積%を超えるチタン酸アルカリ金属が得られ易くなる。
【0103】
焼成工程において、必要に応じて、焼成時間を適宜選択することができる。ただし、焼成時間が長過ぎると、チタン酸アルカリ金属の結晶が成長し過ぎるために、平均粒径(D50)が15μm以下のチタン酸アルカリ金属が得られ難くなる傾向にある。また、焼成温度によって、チタン酸アルカリ金属の結晶の成長速度は異なる。そのため、焼成工程においては、焼成により得られるチタン酸アルカリ金属の平均粒径(D50)が、15μm以下、好ましくは1〜15μmとなるように、焼成温度に応じた焼成時間が選択される。
【0104】
焼成工程において、原料混合物を焼成するときの焼成雰囲気は、必要に応じて適宜選択され、例えば、大気雰囲気、酸素ガス雰囲気等の酸化性雰囲気が挙げられる。
【0105】
焼成工程では、原料混合物を焼成して得られる焼成物を、再度、焼成することを、繰り返してもよい。
【0106】
そして、焼成工程を行うことにより、原料混合物の焼成物が得られる。
【0107】
粉砕工程は、原料混合物の焼成物を粉砕して、所望の粉体物性を有するチタン酸アルカリ金属を得る工程である。
【0108】
粉砕工程において、焼成工程を行い得られる焼成物を粉砕する方法としては、特に制限されない。乾式粉砕を行う方法としては、例えば、乳鉢等を用いた粉砕のほか、振動ミル振動ミル、振動ロッドミル、ボールミル、ビーズミル、ターボミル、遊星ボールミル、パルベライザー、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル等の粉砕装置を用いて、乾式で粉砕する方法が挙げられる。
【0109】
粉砕工程において、焼成工程を行い得られる原料混合物の焼成物を粉砕するときの粉砕条件は、製造目的とするチタン酸アルカリ金属に要求される物性により、適宜選択される。
【0110】
そして、粉砕工程を行うことにより、所望の粉体物性を有する本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属を得る。
【0111】
チタン酸カリウム又はアルカリ金属としてカリウムを主として含んでいるチタン酸アルカリ金属は、焼成時に、長径Lに対する短径dの比であるアスペクト比(L/d)が3を超えるような繊維状の結晶に成長し易い。そのため、従来のチタン酸カリウム又はアルカリ金属としてカリウムを主として含んでいるチタン酸アルカリ金属を充填材として用いる摩擦材の場合は、充填材であるチタン酸カリウム又はアルカリ金属としてカリウムを主として含んでいるチタン酸アルカリ金属の繊維長が大きいほど、アンカー効果により、充填材がマトリックスから脱落し難くなるので、摩耗耐久性が高くなる。
【0112】
それに対し、本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属は、アルカリ金属としてナトリウムを主として含むチタン酸アルカリ金属なので、焼成時に、長径Lに対する短径dの比であるアスペクト比(L/d)が3以下の結晶になり易い。そして、本発明者らは、該アスペクト比(L/d)が3以下であり且つアルカリ金属としてナトリウムを主として含むチタン酸アルカリ金属を摩擦材の充填材として用いる場合は、充填材の粒径が小さいほど、すなわち、平均粒径(D50)が15μm以下、好ましくは1〜15μmであることにより、摩耗耐久性が高くなることを見出した。また、充填材の平均粒径(D50)が15μm以下、好ましくは1〜15μmである範囲おいては、充填材がチタン酸カリウム又はアルカリ金属としてカリウムを主として含んでいるチタン酸アルカリ金属である場合に比べ、充填材がアルカリ金属としてナトリウムを主として含むチタン酸アルカリ金属である方が、摩耗耐久性が高くなることを見出した。
【0113】
また、チタン酸アルカリ金属の製造において、チタン酸アルカリ金属の原料混合物中、アルカリ金属が主としてナトリウムであることにより、焼成時に、該アスペクト比(L/d)が3以下の結晶になり易くなるので、焼成後に、粉砕工程において、強い粉砕条件で粉砕しなくても、短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上、かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物(WHOファイバー)の含有量が0.025体積%以下のものが得られ易くなる。また、本発明のチタン酸アルカリ金属の製造方法によれば、強い粉砕条件で粉砕しなくても、焼成及び粉砕を経て、該WHOファイバーの含有量が0.025体積%以下のものが得られるので、安価なチタン酸アルカリ金属を製造することができる。
【0114】
これらのことにより、本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属は、安価且つ耐久性に優れる摩擦材を得ることができる摩擦材用の素材を提供することができる。
【0115】
アルカリ金属としてカリウムのみが含まれているチタン酸カリウムは、該WHOファイバーの含有量の低減を実現するためには、強い粉砕条件での粉砕を必要とする。しかしながら、強粉砕を行うためには、例えば、粉砕の回数が増えることにより製造工程が増加して高コスト化を招くことや、強粉砕を行うことにより、粉砕装置の寿命の低下に繋がるという問題が生じる。
【0116】
本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ及び本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属の製造方法では、アルカリ金属として、ナトリウムを用いるか又はカリウムとナトリウムを併用したチタン酸アルカリとすることにより、強い粉砕条件での粉砕を必要としないので、粉砕の実行に伴う諸問題を解消することができる。具体的には、本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ及び本発明の第二の形態のチタン酸アルカリ金属の製造方法では、アルカリ金属中のナトリウムの含有割合を、50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%とする。
【0117】
本発明のチタン酸アルカリ金属(第一の形態及び第二の形態)又は本発明のチタン酸アルカリ金属の製造方法(第一の形態及び第二の形態)により得られるチタン酸アルカリ金属は、ブレーキ用摩擦材の素材として、好適に用いられる。例えば、本発明のチタン酸アルカリ金属又は本発明のチタン酸アルカリ金属の製造方法により得られるチタン酸アルカリ金属をブレーキ用摩擦材の素材として用いる場合、本発明のチタン酸アルカリ金属又は本発明のチタン酸アルカリ金属の製造方法により得られるチタン酸アルカリ金属を15〜25質量%、フェノール樹脂を9〜11質量%、黒鉛(人造黒鉛)を7〜9質量%、硫酸バリウム(バライト)を25〜30質量%、珪酸ジルコニウムを6〜8質量%、三硫化アンチモンを2〜4質量%、銅繊維および粉末を0〜9質量%、カシューダストを4〜6質量%、ラバーパウダーを1〜3質量%、アラミド繊維を3〜5質量%、雲母(マイカ)を4〜6質量%、クロム鉄鉱(クロマイト)を0〜2質量%を含有する摩擦材用原料混合物を、ブレーキの摩擦材の形状に成形し、面圧10〜400kgf/cm、熱成型70〜250℃の温度で加圧して、ブレーキ用摩擦材を得る。
【0118】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0119】
(実施例1)
(原料混合)
チタン源として、酸化チタン(原料用のTiO(市販品)、平均粒径0.6μm)、ルチル鉱石(市販品)を、ナトリウム源として、炭酸ナトリウム(株式会社トクヤマ社製、品名ソーダ灰デンス)、カリウム源として、炭酸カリウム(Unid社製)を用い、表2に示す混合割合で、アルミナ製の乳鉢で10分以上粉砕混合して原料混合物を得た。
【0120】
<ルチル鉱石の組成>
ルチル鉱石中の各酸化物の含有量は、ルチル鉱石全質量に対し、それぞれ、TiOが95質量%、SiO1.8質量%、Alが0.4質量%であった。すなわち、TiOの含有量に対するSiOの含有量とAlの含有量の合計の比の百分率(((SiO+Al)/TiO)×100)は、2.3質量%であった。
また、各元素を原子換算すると、ルチル鉱石中のTiの含有量は、ルチル鉱石全質量に対し、ルチル鉱石中のTiの含有量は、57質量%であった。また、ルチル鉱石中のTiの含有量に対するSiの含有量が1.5質量%、Alの含有量が0.4質量%であり、Tiの含有量に対するSiの含有量とAlの含有量の合計の比の百分率(((Si+Al)/Ti)×100)は、1.9質量%であった。
【0121】
(焼成)
上記で得られた原料混合物を、ボックス炉(株式会社モトヤマ製)、大気雰囲気下、5℃/分の昇温速度で下記表1に示す焼成温度まで昇温し、下記表1で示す時間で焼成し、その後自然放冷とした。次いで、アルミナ製の乳鉢を用いて5分以上の粉砕処理を行うことにより、粉末状のチタン酸アルカリ金属を得た。
得られたチタン酸アルカリ金属を分析した。その結果を下記表2に示す。
【0122】
(実施例2〜16および比較例1〜6)
チタン源、ナトリウム源およびカリウム源を、それぞれ表2〜表6に示す混合割合で混合したこと以外は実施例1と同様にして、原料混合物を得た。その後、実施例1と同様にしてチタン酸アルカリ金属を得て、得られたチタン酸アルカリ金属を分析し、その結果を、それぞれ表2〜表6に示した。
【0123】
(分析)
<組成>
粉末X線回折装置(X線源:CuKα線、パナリティカル社製 型番:X‘Part−ProMPD)より測定した。
【0124】
<WHOファイバーの分析>
短径dが3μm以下、長径Lが5μm以上、かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物(WHOファイバー)の含有率(体積割合)、該WHOファイバーの本数及び該WHOファイバーの本数割合については、動的画像解析装置(セイシン企業社製、PITA−3)を用いて測定した。なお、分析条件は以下の通りである。
試料:20mg
キャリア液:純水(16g)
分散条件
キャリア液流量:500μL/秒
試料分散液流量:0.31μL/秒
観察倍率:10倍
測定試料個数:70000個
【0125】
<含有元素分析>
Ti源としてルチル鉱石のみ(含有割合100質量%)を用いて得られたチタン酸アルカリ金属(実施例5)について、下記の通り含有元素分析を行った。
実施例5で得られたチタン酸アルカリ金属を可視硬化型樹脂に包埋して硬化させた後に薄片を作製し、エネルギー分散型X線分光器(EDS)(日本電子社製、JED−2300T)を設けた透過電子顕微鏡(日本電子社製、JEM−2100F)で観察し、得られたSTEM像を図1に示した。また、該STEM像は、EDSデータを用いて解析(マッピング画像処理、組成定性)を行った。該EDSデータを用いた含有元素マッピング解析の結果を、図2図6に示した。なお、図2図6は、それぞれO、Si、Na、Al、Tiの含有元素マッピングの結果である。
また、実施例5で得られたチタン酸アルカリ金属について、図7に示した通りの観察点a〜cを透過電子顕微鏡で観察し、得られた格子観察像を図8図10に示した。また、該EDSデータを用いた観察点a〜cのEDS分析の結果(組成定性)を図11図13に示した。なお、図7は、図1を部分的に拡大して観察点a〜cを示した図であり、図8図10に示した格子観察像は、それぞれ図11図13に示したEDS分析結果に対応している。
【0126】
(実施例17)
(摩擦材)
実施例4で得られたチタン酸アルカリ金属を用いて摩擦材を作製した。
摩擦材原料として、実施例4で作製したチタン酸アルカリ金属とともに、フェノール樹脂、人造黒鉛、珪酸ジルコニウム、三硫化アンチモン、銅繊維、銅粉、カシューダスト、ラバーパウダー、アラミド繊維、雲母(マイカ)およびクロム鉄鉱を表7に示す混合割合で混合することにより、摩擦材原料混合粉とした。
得られた摩擦材原料混合粉を200kgf/cmで予備成形し、得られた予備成形物を70℃で2時間予熱した後、180℃、400kgf/cmで熱成形を行い、次いで、250℃で10kgf/cm、3時間熱処理して成型体を得て、得られた成型体を縦10mm、横50mm、厚さ10mmの摩擦材を得た。
【0127】
<ブレーキ試験>
実施例17で得られた摩擦材について、該摩擦材の摩擦係数を、日本自動車技術会規格であるJASO−C406に準拠して測定した。第2フェードリカバリ試験の第2フェード試験の摩擦係数の平均値は、0.36であった。
【0128】
【表2】
【0129】
【表3】
【0130】
【表4】
【0131】
【表5】
【0132】
【表6】
【0133】
【表7】
【0134】
(実施例18)
(原料混合)
チタン源として、酸化チタン(原料用のTiO(市販品)、平均粒径0.6μm)48.6kgとルチル鉱石(市販品)50.4kgを、ナトリウム源として、炭酸ナトリウム(株式会社トクヤマ社製、品名ソーダ灰デンス)23.6kgを用いて、上記のとおり計量した各原料と、変性アルコール(三協化学社製)0.5Lとを、振動ミル(中央化工機社製)を用い、振幅幅6mmで、20分間混合して原料混合物を得た。
【0135】
(焼成)
上記で得られた原料混合物を、ロータリーキルン炉、大気雰囲気下、温度1060℃で焼成して原料混合物を得た。次いで、振動ミル(中央化工機社製)および衝撃型粉砕機(ホソカワミクロン社製ACMパルベライザー)に対してこの順番で、原料混合物を順次50kg/時間で投入して、粉砕処理を行うことにより、粉末状のチタン酸アルカリ金属を得た。
得られたチタン酸アルカリ金属を分析した。その結果を表8に示す。
【0136】
(分析)
<組成>
粉末X線回折装置(X線源:CuKα線、パナリティカル社製 型番:X‘Part−ProMPD)より測定した。
【0137】
<平均粒径>
レーザー回折散乱法により平均粒径(D50)の測定を行った。分析装置には堀場製作所社製のLA920を用いた。
【0138】
<平均結晶子径>
平均結晶子径については、粉末X線回折装置(PANalytical社製、型番X‘Pert PRO)を用いて、表1に示す測定条件にて、測定対象のX線回折分析を行い、得られるXRD測定結果より求められるメインピークの半値幅(面指数(200))に基づいて、上記シェラーの式(2)で算出した。
【0139】
(摩擦耐久性の評価)
(摩擦材の作製)
実施例18で得られたチタン酸アルカリ金属を用いて摩擦材を作製した。
摩擦材原料として、実施例18で作製したチタン酸アルカリ金属とともに、フェノール樹脂、人造黒鉛、珪酸ジルコニウム、三硫化アンチモン、銅繊維、銅粉、カシューダスト、ラバーパウダー、アラミド繊維、雲母(マイカ)およびクロム鉄鉱を表9に示す混合割合で混合することにより、摩擦材原料混合粉とした。
得られた摩擦材原料混合粉を200kgf/cmで予備成形し、得られた予備成形物を70℃で2時間予熱した後、180℃、400kgf/cmで熱成形を行い、次いで、250℃で10kgf/cm、3時間熱処理して成型体を得て、得られた成型体を縦10mm、横50mm、厚さ10mmの摩擦材を得た。
【0140】
(摩擦耐久試験)
JASO C427に準拠して行った。その結果を表10に示す。
【0141】
(実施例19)
原料混合物を、トンネルキルン炉、大気雰囲気下、温度1250℃で焼成に変更した以外は、実施例18と同様にして、チタン酸アルカリ金属と試験用摩擦材を得た。
【0142】
(比較例7)
配合原料を、ナトリウム源として使用した炭酸ナトリウムから、カリウム源として炭酸カリウム(Unid製)30.7kgに変更した以外は実施例18と同様にして、チタン酸アルカリ金属と試験用摩擦材を得た。
【0143】
【表8】
【0144】
【表9】
【0145】
【表10】
【要約】
チタン酸アルカリ金属相と、AlとSiとNaとを含有する複合酸化物と、を有し、NaとNa以外のアルカリ金属Xの合計モル数に対するNaのモル数の比の百分率((Na/(Na+X))×100)が50〜100モル%であり、Tiの含有量に対するSiの含有量とAlの含有量の合計の比の百分率(((Si+Al)/Ti)×100)が、0.3〜10質量%であること、を特徴とするチタン酸アルカリ金属。
本発明によれば、短径dが3μm以下かつ長径Lが5μm以上かつアスペクト比(L/d)が3以上の化合物の含有量が少ないチタン酸アルカリ金属を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13