【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明では、外径計測部による電線外径の実測値を利用してスライド機構を制御して第1矯正ローラと第2矯正ローラとの間の距離を調整するようにした。
【0011】
具体的には、第1の発明では、電線の曲がり癖を矯正する電線矯正装置を対象とし、
上記電線矯正装置は、
供給される上記電線の外径を計測する外径計測部と、
上記外径計測部の下流側又は上流側に設けられた第1支持部材において、上記電線の送出経路に沿って配置された複数の第1矯正ローラと、
上記第1支持部材と送給経路を挟んで設けられた第2支持部材において、上記送出経路に沿ってかつ上記複数の第1矯正ローラが配置された側と上記送給経路を挟んで反対側に、該複数の第1矯正ローラと上記送出経路に関して交互に配置された複数の第2矯正ローラと、
上記第1支持部材と上記第2支持部材の少なくとも一方を上記電線の送出経路と垂直方向にスライド移動させるスライド機構と、
上記外径計測部の計測値に基づいて上記スライド機構を制御し第1矯正ローラと第2矯正ローラとの間の距離を調整する制御部とを備えている。
【0012】
上記の構成によると、使用者が支持部材間距離を手動で設定することなく、実際に流れてくる電線の外径実測値に基づいて最適なローラ間距離に自動で設定されるので、調整間違いや調整忘れによる電線へのダメージや加工不良を未然に防ぐことができると共に、調整にかかる時間を短縮することができる。なお、電線矯正装置は、電源さえあれば単独でも制御可能に構成できる。また、第2支持部材は、単独で第1支持部材に対して電線の送出経路と垂直方向に移動してもよいし、第2支持部材と共に第1支持部材も電線の送出経路と垂直方向に移動するようにしてもよい。
【0013】
第2の発明では、第1の発明において、
上記第1支持部材と上記第2支持部材との間の支持部材間距離を計測するローラ間隔計測部と、
上記制御部は、上記外径計測部によって計測された上記電線の外径値に基づいて適切な支持部材間距離を決定し、上記スライド機構を制御すると共に、上記ローラ間隔計測部の計測値を検知して上記適切な支持部材間距離に調整するように構成されている。
【0014】
上記の構成によると、供給される電線に対して適切なローラ間距離が保たれるので、どの使用者が操作する場合でも安定した品質の電線が得られる。
【0015】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記制御部は、上記電線の外径に対応する目標支持部材間距離を予め記憶しておき、上記外径計測部で計測された外径値に基づいて上記目標支持部材間距離を選択し、該目標支持部材間距離となるように上記スライド機構を制御して支持部材間距離を調整するように構成されている。
【0016】
上記の構成によると、電線の外径をリアルタイムに計測し、その外径に合わせて予め記憶された目標支持部材間距離から適切な目標支持部材間距離が選択され、スライド機構が自動で制御されるので、簡単かつ確実に最適なローラ間距離が維持される。
【0017】
第4の発明では、第3の発明において、
上記外径計測部が計測した外径と、上記制御部が選択した目標支持部材間距離とを表示可能なタッチパネルをさらに備え、
上記タッチパネルを用いて上記目標支持部材間距離を手動入力可能となっている。
【0018】
上記の構成によると、タッチパネルを用いて使用者による手動入力でもローラ間距離を調整でき、微調整が必要な場合にも容易に対応できる。
【0019】
第5の発明では、第3又は第4の発明において、
上記制御部の上位システムの指令によって上記目標支持部材間距離を調整可能に構成されている。
【0020】
上記の構成によると、下流側での加工処理や他のセンサの計測値に合わせて上位システムが目標支持部材間距離を調整することもできる。
【0021】
第6の発明の電線処理装置は、
第1から第5のいずれか1つの発明の電線矯正装置と、
上記電線矯正装置に上記電線を供給する送給装置と、
上記電線矯正装置を通過した上記電線を挟んで搬送するクランプと、
上記クランプに挟まれた上記電線の被覆を剥ぐカッター装置と、
上記クランプに挟まれた上記電線に端子を圧着する端子圧着機と、
上位システムとしての全体コントローラとを備えている。
【0022】
上記の構成によると、電線矯正装置において調整間違いや調整忘れによる電線へのダメージや加工不良を未然に防ぐことができるので、切断、端子圧着などの後処理も容易であり、効率よく品質の高い電線が得られる。
【0023】
第7の発明では、第6の発明において、
上記全体コントローラは、上記外径計測部が計測した計測値に基づいて上記送給装置、上記クランプ、上記カッター装置及び上記端子圧着機の少なくとも一部をフィードバック制御する。
【0024】
上記の構成によると、制御部の上位システムである全体コントローラは、電線矯正装置だけでなく、その下流側のクランプ、カッター装置、端子圧着機などにも電線の外径実測値に基づいて最適な制御を行うことができる。
【0025】
第8の発明の電線の矯正方法は、
供給される上記電線の外径を計測する外径計測部と、
上記外径計測部の下流側又は上流側に設けられた第1支持部材において、上記電線の送出経路に沿って配置された複数の第1矯正ローラと、
上記第1支持部材に対向してスライド移動可能に設けられた第2支持部材において、上記送出経路に沿ってかつ上記複数の第1矯正ローラが配置された側と反対側に、該複数の第1矯正ローラと上記送出経路に関して交互に配置された複数の第2矯正ローラと、
上記第2支持部材を上記第1支持部材に対してスライド移動させるスライド機構と、
上記第1支持部材と上記第2支持部材との間の支持部材間距離を計測するローラ間隔計測部とを備えた電線矯正装置を準備する準備工程と、
電線の送給装置によって電線を供給する電線供給工程と、
上記ローラ間隔計測部によって、上記支持部材間距離を計測するローラ間隔計測工程と、
供給されてきた上記電線の外径を上記外径計測部で計測する外径計測工程と、
上記外径計測部の計測値に基づいて上記スライド機構を制御して第1矯正ローラと第2矯正ローラとの間の距離を調整し、上記電線を上記第1矯正ローラ及び上記第2矯正ローラで矯正する矯正工程とを含む。
【0026】
上記の構成によると、使用者が支持部材間距離を設定することなく、実際に流れてくる電線の外径実測値に基づいて最適なローラ間距離に自動で設定されるので、調整間違いや調整忘れによる電線へのダメージや加工不良を未然に防ぐことができると共に、調整にかかる時間を短縮することができる。
【0027】
第9の発明の電線の製造方法は、第8の発明の電線の矯正方法を含み、
上記外径計測部が計測した計測値に基づいて上記電線を供給する送給装置、該電線を掴むクランプ、該電線の被覆を剥ぐカッター装置及び被覆を剥がれた電線に端子を圧着する端子圧着機の少なくとも一部をフィードバック制御するように構成されている。
【0028】
上記の構成によると、電線矯正装置だけでなく、送給装置、クランプ、カッター装置、端子圧着機などにも電線の外径実測値に基づいて最適な制御を行うことができる。