(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633829
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20200109BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20200109BHJP
B05D 1/18 20060101ALI20200109BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20200109BHJP
B05C 3/09 20060101ALI20200109BHJP
B05C 11/02 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
H01G4/30 311E
H01G4/30 517
H01G13/00 391B
B05D1/18
B05D7/00 H
B05C3/09
B05C11/02
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-236310(P2014-236310)
(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公開番号】特開2016-100459(P2016-100459A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】318004501
【氏名又は名称】株式会社クリエイティブコーティングス
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英児
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雅美
【審査官】
柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−351727(JP,A)
【文献】
特開平01−214008(JP,A)
【文献】
特開平08−097108(JP,A)
【文献】
特開2004−128168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 13/00
B05C 3/09
B05C 11/02
B05D 1/18
B05D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の端面に浸漬塗布された導電ペースト層を、導電ペーストが形成されていない定盤面に接触させる第1工程と、
前記導電ペースト層を前記定盤面に接触させながら、前記電子部品を前記定盤面と平行に移動させる第2工程と、
その後、前記電子部品の前記導電ペースト層を前記定盤面より引き離す第3工程と、
を有し、
前記第3工程は、前記第2工程での前記定盤面と平行な方向への移動を継続しながら、前記定盤面と交差する方向に前記電子部品を同時に移動させることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1工程での位置にて前記電子部品が前記定盤面に投影される第1投影領域と、前記第2工程の終了時での位置にて前記電子部品が前記定盤面に投影される第2投影領域とが重ならないことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1〜第3工程の各々は、複数の電子部品を所定の間隔を離して配列させた状態で実施され、
前記第2工程での移動方向にて隣り合う2つの前記電子部品を投影した2つの前記第1投影領域の間に前記第2投影領域が位置することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記電子部品を前記定盤面と平行に直線移動させる距離を、前記電子部品の移動方向に沿った前記電子部品の長さ以上としたことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記第1工程は、前記定盤面に対する垂線に沿った方向に前記電子部品を初期位置から移動させる工程を含み、
前記第3工程は、前記電子部品を前記初期位置に復帰させる前に、前記電子部品の前記導電ペースト層が前記定盤面より引き離された位置にて一旦停止させる工程を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項6】
電子部品の端面にディップ塗布された導電ペースト層を、導電ペーストが形成されていない定盤面に接触させる第1工程と、
前記導電ペースト層を前記定盤面に接触させた状態で前記電子部品を前記定盤面と平行な方向に移動させながら、前記定盤面と交差する方向に前記電子部品を移動させて、前記導電ペースト層を前記定盤面より引き離す第2工程と、
を有することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項7】
定盤と、
端面に浸漬塗布された導電ペースト層をそれぞれ有する複数の電子部品を保持する治具と、
前記治具を前記定盤の表面に対して進退移動させる第1移動手段と、
前記治具を前記定盤の表面と平行な方向に移動させる第2移動手段と、
を有し、
前記第1移動手段は、前記治具を前記定盤に向けて前進移動させて、前記電子部品の端面にディップ塗布された導電ペースト層を、導電ペーストが形成されていない前記定盤面に接触させ、
前記第2移動手段は、前記導電ペースト層を前記定盤の表面に接触させた状態で前記治具を前記定盤面と平行に移動させ、
前記第1及び第2移動手段は、前記定盤面と平行な方向への移動を継続しながら、前記定盤面と交差する方向に前記治具を同時に移動させて、前記電子部品の前記導電ペースト層を前記定盤面より引き離すことを特徴とする電子部品の製造装置。
【請求項8】
定盤と、
端面に浸漬塗布された導電ペースト層をそれぞれ有する複数の電子部品を保持する治具と、
前記治具を前記定盤の表面に対して進退移動させる第1移動手段と、
前記治具を前記定盤の表面と平行な方向に移動させる第2移動手段と、
を有し、
前記第1移動手段は、前記治具を前記定盤に向けて前進移動させて、前記電子部品の端面にディップ塗布された導電ペースト層を、導電ペーストが形成されていない前記定盤の表面に接触させ、
前記第1及び第2移動手段は、前記導電ペースト層を前記定盤の表面に接触させた状態で前記治具を前記定盤の表面と平行な方向に移動させながら、前記定盤の表面と交差する方向に前治具を移動させて、前記導電ペースト層を前記定盤の表面より引き離すことを特徴とする電子部品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法及び装置並びに電子部品等に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者等は、例えば積層セラミックコンデンサー・インダクタ・サーミスタ等の電子部品の端面に導電ペースト層を浸漬塗布して、電子部品に外部電極を形成する装置及び方法を提案している(特許文献1)。また、導電ペーストが浸漬塗布された電子部品を、定盤面に形成された導電ペースト膜層から引き上げた後に、電子部品の端面に形成された導電ペーストのたれ下がり部を、導電ペースト膜層が除去された定盤面に接触させることも提案されている
(特許文献2)。この工程は、電子部品側の余分な導電ペーストを定盤により拭い取ることから、ブロット(blot)工程と称される。このブロット工程の実施により、電子部品の端面にほぼ均一の導電ペースト層が形成されることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−237403号公報
【特許文献2】特開昭63−45813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ブロット工程を実施しても、定盤から電子部品を引き上げると、定盤上の導電ペーストと電子部品の導電ペーストとがつながる糸引き現象が生ずる。電子部品が定盤から離れた位置で糸は切れるが、その糸引き現象に起因して、
図6(A)に示すように電子部品の外部電極の表面に糸引きの痕跡が残る。
図6(A)の例では、外部電極の長方形の表面上の2か所に環状の痕跡が残っている。
【0005】
この痕跡は、
図6(B)に示すように外部電極の表面を凹凸にして平坦性を阻害する。また、痕跡にひび割れ生じ、剥離することもある。この電子部品を基板に半田付けすると、剥がれ易い痕跡のみが半田付けされ、はんだ付けが不安定となる。
【0006】
本発明の幾つかの態様は、電子部品の端面に浸漬塗布された導電ペーストの糸引きによる欠陥を防止又は抑制できる電子部品の製造方法及び装置並びに電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、
電子部品の端面に浸漬塗布された導電ペースト層を定盤面に接触させる第1工程と、
前記電子部品を前記定盤面と平行に移動させる第2工程と、
その後、前記電子部品の前記導電ペースト層を前記定盤面より引き離す第3工程と、
を有する電子部品の製造方法に関する。
【0008】
本発明の一態様によれば、電子部品の端面に浸漬塗布された導電ペースト層は定盤面に接触させられ、さらに電子部品は定盤面と平行に移動させられる。導電ペースト層を定盤面と接触させながら平行移動させることで、導電ペースト層は平坦化されると共に、糸引きの原因となる余分な導電ペーストを定盤面側に転写させて擦り取ることができる。この余分な導電ペーストを定盤面に転写させる効果は、特許文献2のように電子部品を静止状態とするよりも、本発明の一態様のように定盤と平行に電子部品を移動させる方が高い。こうして、糸引きとなる余分な導電ペーストが定盤面に転写されることで、その後導電ペースト層を定盤面より引き離しても、導電ペーストの糸引きは防止または抑制される。
【0009】
(2)本発明の一態様では、前記第1工程での位置にて前記電子部品が前記定盤面に投影される第1投影領域と、前記第2工程の終了時での位置にて前記電子部品が前記定盤面に投影される第2投影領域とが重ならないことが好ましい。第1投影領域では、定盤面側に転写された導電ペーストが存在する。第1投影領域とは重ならない第2投影領域まで電子部品を移動させると、転写ペーストが残存していないフレッシュな面に導電ペースト層を接触させることができ、転写効率が向上する。
【0010】
(3)本発明の一態様では、前記第1〜第3工程の各々は、複数の電子部品を所定の間隔を離して配列させた状態で実施され、前記第2工程での移動方向にて隣り合う2つの前記電子部品を投影した2つの前記第1投影領域の間に前記第2投影領域を位置させることができる。このようにバッチ処理する場合には、2つの第1投影領域間の第2投影領域まで電子部品を移動させると、転写ペーストが残存していないフレッシュな面に導電ペースト層を接触させることができ、転写効率が向上する。
【0011】
(4)本発明の一態様では、前記電子部品を前記定盤面と平行に直線移動させる距離を、前記電子部品の移動方向に沿った前記電子部品の長さ以上とすることができる。第1工程にて導電ペースト層が定盤面と接触した領域では、定盤面側に転写された導電ペーストが存在する。第2工程での直線移動距離がその移動方向に沿った電子部品の長さ未満であると、搬送下流域にある導電ペースト層は転写ペーストが残存する既接触領域内を移動することになり、定盤面側へ導電ペーストが転写される転写効率が落ちる可能性がある。よって、第2工程での移動距離がその移動方向に沿った電子部品の長さ以上とすることが好ましい。
【0012】
(5)本発明の一態様では、前記第3工程は、前記定盤面に対する垂線に沿った方向と、前記定盤面と平行な方向とに、前記電子部品を同時に移動させる工程を含むことができる。電子部品を同一高さ位置に維持したまま移動させ過ぎると、定盤面に転写される導電ペーストが多くなる。特に、搬送上流側の導電ペーストが多く転写される傾向がある。よって、第2工程開始後の適宜のタイミングで、第3工程を開始すれば、第3工程の初期にて導電ペーストを定盤面側に転写させながら、導電ペースト層を定盤面から引き離すことができる。それにより、リードタイムも短縮される。
【0013】
(6)本発明の一態様では、前記第1工程は、前記定盤面に対する垂線に沿った方向に前記電子部品を初期位置から移動させる工程を含み、前記第3工程は、前記電子部品を前記初期位置に復帰させる前に、前記電子部品の前記導電ペースト層が前記定盤面より引き離された位置にて一旦停止させる工程を含むことができる。こうすると、仮に第3工程にて電子部品の端面に形成された導電ペースト層と定盤に転写された導電ペーストとの間で糸引きが生じても、初期の段階でその糸切りすることができる。しかも、第1工程の実施により糸引きとなる余分な導電ペーストが定盤面に転写されることから、糸引き量は少なく、糸引きの痕跡は生じないか無視し得る程度に僅かとなる。
【0014】
(7)本発明の他の一態様は、
電子部品の端面にディップ塗布された導電ペースト層を定盤面に接触させる第1工程と、
前記導電ペースト層を前記定盤面に接触させた状態で前記電子部品を前記定盤面と平行な方向に移動させながら、前記定盤面と交差する方向に前記電子部品を移動させて、前記導電ペースト層を前記定盤面より引き離す第2工程と、
を有する電子部品の製造方法に関する。
本発明の他の態様によれば、本発明の一態様の第2工程及び第3工程を同時に実施する工程を含んでいる。この場合も、導電ペースト層を定盤面と接触させながら電子部品を移動させることで、導電ペースト層は平坦化されると共に、糸引きの原因となる余分な導電ペーストを定盤面側に転写させて擦り取ることができる。一定高さを維持して電子部品を移動させることにより、特に移動上流側の端面にある導電ペーストが定盤に多く転写される傾向がある場合には、本発明の一態様の製造方法での第2および第3工程を同時に実施することができる。こうして、端面全体で糸引きとなる余分な導電ペーストが定盤面に比較的均一に転写されることで、導電ペースト層を定盤面より引き離しても、導電ペーストの糸引きは防止または抑制される。
【0015】
(8)本発明のさらに他の態様は、
定盤と、
端面に浸漬塗布された導電ペースト層をそれぞれ有する複数の電子部品を保持する治具と、
前記治具を前記定盤の表面に対して進退移動させる第1移動手段と、
前記治具を前記定盤の表面と平行な方向に移動させる第2移動手段と、
を有し、
前記第2移動手段は、前記導電ペースト層が前記定盤の表面に接触した状態で前記治具を移動させる電子部品の製造装置に関する。
本発明の他の態様によれば、本発明の一態様に係る電子部品の製造方法(1)を好適に実施することができる。
【0016】
(9)本発明のさらに他の態様は、
定盤と、
端面に浸漬塗布された導電ペースト層をそれぞれ有する複数の電子部品を保持する治具と、
前記治具を前記定盤の表面に対して進退移動させる第1移動手段と、
前記治具を前記定盤の表面と平行な方向に移動させる第2移動手段と、
を有し、
前記第1及び第2移動手段は、前記導電ペースト層を前記定盤面に接触させた状態で前記電子部品を前記定盤面と平行な方向に移動させながら、前記定盤面と交差する方向と前記電子部品を移動させて、前記導電ペースト層を前記定盤面より引き離す電子部品の製造装置に関する。
本発明のさらに他の態様によれば、本発明の他の態様に係る電子部品の製造方法(7)を好適に実施することができる。
【0017】
(10)本発明のさらに他の態様は、上述した(1)〜(7)のいずれかに記載の方法によって製造される電子部品であって、前記導電ペースト層により形成される外部電極を前記端面に有し、前記外部電極の表面には前記第3工程の実施により形成される得る導電ペーストの糸引きによる環状の痕跡が存在しない電子部品に関する。
糸引き現象があると、電子部品の導電ペースト層が固化して形成される外部電極の表面には、環状の痕跡が残る。この環状の痕跡は、導電ペースト層を凸状として平坦性を阻害する。痕跡部分にひび割れ生じ、剥離することもある。電子部品を基板に半田付けすると、痕跡部分のみが半田付けされ、はんだ付けが不安定となる。環状の痕跡がない本発明に係る電子部品は、そのような弊害を解消できる。
【0018】
(11)本発明のさらに他の態様は、上述した(1)〜(7)のいずれかに記載の方法によって製造される電子部品であって、前記導電ペースト層により形成される外部電極を前記端面に有し、前記外部電極の表面の凹凸の最大深さが50μm以下である電子部品に関する。
糸引きによる環状の痕跡は、導電ペースト層の凹凸の最大深さが70〜180μmとなるが、本発明に係る電子部品は導電ペースト層の平坦性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1(A)(B)は治具搬入工程及び電子部品の端面高さ調整工程を示す図である。
【
図2】
図2(A)〜
図2(C)は、導電ペーストのディップ塗布工程を示す図である。
【
図3】
図3(A)〜
図3(C)は、ブロット工程の概要を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るブロット工程を示す図である。
【
図5】
図5(A)(B)は、本発明の一実施形態に係る電子部品の端面に形成された外部電極の正面図及び側面図である。
【
図6】
図6(A)(B)は、比較例である電子部品の端面に形成された外部電極の正面図及び側面図である。
【
図7】ブロット工程における電子部品の水平移動距離を説明する図である。
【
図8】隣り合う2つの電子部品間の間隔と、ブロット工程における電子部品の水平移動距離との関係を説明する図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るブロット工程を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る電子部品の製造装置を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0021】
1.電子部品の製造方法
1.1.外部電極形成方法の概要
図1〜
図3は、電子部品の製造方法として、コンデンサーの外部電極成形方法の主たる工程を模式的に示している。先ず、電子部品の外部電極形成装置の概要について説明する。各図において、コンデンサー等の電子部品10は、治具20に垂下して支持される。治具20は例えばゴム板上の二次元面に直交二軸に沿って複数の孔を有し、この孔に電子部品10が嵌合支持される。
【0022】
電子部品10の位置調整工程、浸漬塗布工程およびブロット工程に兼用することができる定盤30は、例えばセラミック、御影石、金属等で形成される。定盤30上にはスキージユニット40が設けられる。スキージユニット40は、定盤30の表面(定盤面ともいう)31に沿って移動可能である。スキージユニット40は、導電ペーストのディップ層(導電ペースト膜層)50を均一高さで敷き詰める例えば金属製のブレード42と、定盤30の表面31から導電ペーストを掻き取る例えばゴム製のブレード44とを、それぞれ独立して昇降可能に支持している。
【0023】
定盤30の上方には、固定盤34に対して昇降可能な圧盤32が配置されている。圧盤32に治具20が着脱自在に支持される。固定盤34には昇降モーター36が支持され、昇降モーター36により回転駆動されるねじ軸38により圧盤32が昇降される。なお、
図1〜
図3では、昇降モーター36の取付構造や、昇降ガイド軸や、ねじ軸に螺合するナット部材などは図示が省略されている。
【0024】
図1(A)は、外部電極形成装置への治具20の搬入工程を示している。搬入された治具20は圧盤32に固定される。
図1(B)は、電子部品10の端面高さの調整工程を示している。
図1(B)では、導電ペーストが敷き詰められていない定盤30に対して、圧盤32により電子部品10を下降させ、電子部品10の端面12を定盤30に接触させる。その後、圧盤32により電子部品10は上昇される。それにより、電子部品10の端面12の高さが均一になる。なお、電子部品10の端面高さの調整工程は省略しても良い。
【0025】
図2(A)〜
図2(C)は、導電ペーストの浸漬塗布工程を示している。
図2(A)では、所定高さに設定されたブレード42をスキージユニット40により水平移動させて、定盤30上に導電ペーストによる一定高さのペースト膜層50を形成する。
図2(B)では、圧盤32により電子部品10を下降させ、電子部品10の端面12を定盤30上のペースト膜層50に接触させる。この際、電子部品10の端面12を定盤30の表面31に接触させても良く、あるいは接触させなくても良い。その後、圧盤32により電子部品10は上昇される。それにより、電子部品10の端面12に導電ペースト層14が形成される。
【0026】
図3(A)〜
図3(C)は、ブロット工程を示している。
図3(A)は、定盤30の表面31と接触するように下降されたブレード44をスキージユニット40により水平移動させて、定盤30上の導電ペーストを掻き取る工程を示している。
図3(B)では、圧盤32により電子部品10を下降させ、電子部品10の端面12に形成された導電ペースト層14を定盤30に接触させる。この際、電子部品10の端面12を定盤30の表面31に接触させても良く、あるいは接触させなくても良い。その後、圧盤32により電子部品10は上昇される。それにより、電子部品10の端面12の導電ペースト層14が平坦化されることが期待される。
【0027】
1.2.ブロット工程の詳細
1.2.1.第1実施形態
1.2.1.1.第1工程(P0→P2)
本発明の実施形態では、
図3(B)(C)に示すブロット工程を改良している。後述するように、改良されたブロット工程を実施するために、
図1〜
図3に示すねじ軸(y軸)38に加え、圧盤32の駆動軸を少なくとも一軸(例えばx軸)追加している。
図4は、改良されたブロット工程(第1〜第3工程)を、定盤30からの高さH0である初期位置(復帰位置)にある電子部品10の端面12上の中心点P0の移動軌跡により示している。
図4において、第1工程では、電子部品10の端面12に浸漬塗布された導電ペースト層14を定盤面31に接触させる。
図4では、第1工程は例えば2段階で実施され、先ず、初期位置(復帰位置)にある電子部品10の端面12上の中心点P0を、y軸に沿って高さH1の位置まで比較的高速に荒送り下降させ、その後、高さH2の位置まで比較的低速で下降させる。高さH2は、導電ペースト層14の厚さにより適宜調整され、高さH2=0として電子部品10の端面12を定盤面31に接触させても良い。昇降モーター36は例えばステッピングモーターであり、高さH2の位置をμmオーダーで制御することができる。
【0028】
1.2.1.2.第2工程(P2→P3)
第2工程では、電子部品10を定盤面31と平行に移動させる。つまり、
図4に示すように、電子部品10の高さH2を維持しながら、追加されたx駆動軸により電子部品10をx方向に距離L1だけ定盤30と平行に移動させる(P2→P3)。それにより導電ペースト層14は定盤30と接触しながら移動することで平坦化されると共に、後述の第3工程にて糸引きの原因となる余分な導電ペーストを定盤面31側に転写させて擦り取ることができる。この余分な導電ペーストを定盤面に転写させる効果は、特許文献2のように電子部品を静止状態とするよりも、本発明の一態様のように定盤30と平行に電子部品10を移動させる方が高い。
【0029】
1.2.1.3.第3工程(P3→P0)
その後の第3工程では、電子部品10の導電ペースト層14を定盤面31より引き離す。
図4では、第3工程は例えば3段階で実施される。先ず、電子部品10を例えばx軸及びy軸で同時に移動させ、電子部品10の導電ペースト層14を定盤面31より引き離す(P3→P4)。こうすると、
図4の実線に示すように、電子部品10は位置P3から位置P4に向けて、x軸方向に距離L2だけ移動すると同時にy方向に高さ(H1−H2)だけ上昇されて、斜め上方に移動する。これに代えて、
図4の破線で示すように、電子部品を位置P3から位置P4に向けてサインカーブなどの湾曲線に沿って上昇させても良い。この上方移動の初期段階では、導電ペースト層14は定盤30と接触しながら移動する。よって、
第3工程の初期段階でも、
第2工程での転写効果を発揮することができると共に、電子部品10の高さはH2からH1に復帰するので、戻し移動のリードタイムの短縮にも寄与する。ただし、必ずしも電子部品10は傾斜線または湾曲線に沿って上昇移動させなくても良く、電子部品10を垂直上方に移動させても良い。いずれの場合も、
第2工程の実施により糸引きとなる余分な導電ペーストが定盤面31に転写されることで、その後導電ペースト層14を定盤面31より引き離しても、導電ペーストの糸引きは防止または抑制される。
【0030】
電子部品10は、高さH1の位置P4にて所定時間停止させても良い。こうすると、仮に第3工程にて電子部品10の端面12に形成された導電ペースト層14と定盤30に転写された導電ペーストとの間で糸引きが生じても、初期の段階でその糸切りすることができる。しかも、第1工程の実施により糸引きとなる余分な導電ペーストが定盤面31に転写されることから、糸引き量は少なく、糸引きの痕跡は生じないか無視し得る程度に僅かとなる。この停止時間は、糸切りに必要な時間となる。
【0031】
第3工程の第2段階では、電子部品10をx軸に移動させ(P4→P1)、さらに電子部品10をy軸方向に上昇させることで、電子部品10が初期位置(復帰位置)に復帰される(P1→P0)。
【0032】
1.2.1.4.電子部品の外部電極の平坦性評価
図5(A)(B)は、本実施形態の方法によりディップ塗布及びブロット工程が実施されることで製造された電子部品10の端面を示している。比較例として、特許文献2に開示されたディップ塗布及びブロット工程が実施されることで製造された電子部品10の端面を
図6(A)(B)に示す。なお、
図5(A)及び
図6(A)は、導電ペースト層14が固化して形成された外部電極の表面を示し、
図5(B)及び
図6(B)は外部電極の側面を示している。
【0033】
図5(A)と
図6(A)との比較から明らかなように、
図5(A)では外部電極の表面には導電ペーストの糸引きによる環状の痕跡が存在しないのに対して、上述した通り
図6(A)では明確な管状の痕跡が2か所に生じている。
図6(A)に示す環状の痕跡は、
図6(B)に示すように外部電極の表面を凸状として平坦性を阻害する。痕跡部分にひび割れ生じ、剥離することもある。電子部品10を基板に半田付けすると、剥離し易い痕跡部分のみが半田付けされ、はんだ付けが不安定となる。環状の痕跡がない本実施形態に係る電子部品は、そのような弊害を解消できる。
【0034】
図6(B)の2か所の環状痕跡に起因した外部電極の表面の凹凸の最大深さは、70〜180μmとなることが判明した。これに対して、
図5(B)に示す本実施形態の電子部品では、外部電極に環状の痕跡が存在しないことから、外部電極の表面の凹凸の最大深さは50μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下の平坦性を有することができる。
【0035】
1.2.1.5.水平移動距離L1
次に、
図4に示すx方向の移動距離L1について考察する。ここで、
図7に示すように、第1工程終了後での位置P2にて電子部品10が定盤面31(x−y平面)に投影される領域を第1投影領域10Aとし、第2工程の終了時での位置P3にて電子部品10が定盤面31に投影される領域を第2投影領域10Aaまたは10Abとする。
図7に示すように、第1投影領域10Aと第2投影領域10Aaまたは10Abとが重ならないことが好ましい。第1投影領域10Aでは、定盤面31側に転写された導電ペーストが存在する。第1投影領域10Aとは重ならない第2投影領域10Aaまたは10Abまで電子部品10を移動させると、転写ペーストが残存していないフレッシュな面に導電ペースト層14を接触させることができ、転写効率が向上する。
【0036】
図4に示すように、電子部品10を定盤面31と平行に直線移動させる場合には、距離L1を、
図7に示すように電子部品10の移動方向xに沿った電子部品の長さW1以上とすることができる。
図7に示す移動距離L1aはW1≦L1a<2×W1であり、
図7に示す移動距離L1bは、2×W1≦L1としたものである。いずれの場合も、転写ペーストが残存していないフレッシュな面に導電ペースト層14を接触させることができ、転写効率が向上する。一方、第2工程での直線移動距離L1がその移動方向に沿った電子部品10の長さW1未満であると、移動下流域にある導電ペースト層14は転写ペーストが残存する既接触領域内を移動することになり、定盤面31側へ導電ペーストが転写される転写効率が落ちる可能性がある。
【0037】
図8は、治具20に所定の間隔を離して一次元又は二次元配列させた複数の電子部品10を定盤面31に投影した投影領域を示ししている。この場合、第2工程での移動方向xにて隣り合う2つの電子部品10を投影した2つの第1投影領域10A,10Aの間に第2投影領域10Aaまたは10Abを位置させることができる。このようにバッチ処理する場合には、2つの第1投影領域10A,10A間の第2投影領域10Aaまたは10Abまで電子部品10を移動させると、転写ペーストが残存していないフレッシュな面に導電ペースト層14を接触させることができ、転写効率が向上する。
【0038】
1.2.2.第2実施形態
図9に、
図4とは異なるブロット工程を有する本発明の第2実施形態を示している。この第2実施形態では、
図4に示す第2工程及び第3工程を同時に実施する工程を含んでいる。つまり、第2実施形態では、第1工程終了後の電子部品10を、位置P2から位置P3へと移動させるために、導電ペースト層14を定盤面31に接触させた状態で電子部品を定盤面31と平行な方向xに移動させながら、定盤面31と交差する方向yに電子部品10を移動させて、導電ペースト層14を定盤面31より引き離している。
【0039】
この場合も、導電ペースト層14を定盤面31と接触させながら電子部品10を移動させることで、導電ペースト層14は平坦化されると共に、糸引きの原因となる余分な導電ペーストを定盤面31側に転写させて擦り取ることができる。一定高さH2を維持して電子部品10を移動させることにより、特に移動上流側の端面12にある導電ペーストが定盤30に多く転写される傾向がある場合には、第2実施形態を実施することが好ましい。こうして、端面12全体で糸引きとなる余分な導電ペーストが定盤面31に比較的均一に転写されることで、導電ペースト層14を定盤面31より引き離しても、導電ペーストの糸引きは防止または抑制される。
【0040】
2.電子部品の製造装置
図10は、本発明の実施形態に係る電子部品の製造装置を示している。
図10において、
図1〜
図3に付した符号と同一機能を有する部材については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
図10では、昇降軸であるねじ軸38に追加して、例えば水平軸であるねじ軸60が追加されている。固定盤34には例えばステッピングモーターであるモーター37が設けられ、例えばベルト37Aにより駆動力を伝達して水平ねじ軸60を駆動する。なお、ねじ軸38,60の少なくとも一方は、ベルト駆動でなく、モーター出力をギア等で減速して伝達しても良い。
【0041】
なお、治具20を定盤30の表面31に対して進退移動させる第1移動手段(36,36A,38,39)の移動精度は、治具20を定盤30の表面31と平行な方向に移動させる第2移動手段(35,37,37A,60)の移動精度よりも高く設定される。導電ペースト層14の塗布厚が高い精度で求められるからである。
【0042】
固定盤34にはリニアガイド34Aを介して水平移動盤35が支持されている。水平ねじ軸60が回転されると、固定盤34に対して水平移動盤35が
図10の紙面と直交する方法xに水平移動される。水平移動盤35に、昇降モーター36と、ねじ軸38に螺合するナット部39が固定されている。ねじ軸38が回転駆動されると、固定されたナット部39と螺合されるねじ軸38が昇降され、圧盤32を昇降することができる。
【0043】
このように、本実施形態の製造装置は、少なくとも2本の駆動軸38,60を有することから、上述した第1,第2実施形態において、電子部品10の昇降駆動、水平駆動または昇降及び水平同時駆動を実現することができる。
【0044】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【0045】
例えば、本発明の電子部品の製造装置及びその方法では、定盤30を導電ペースト層14の浸漬塗布工程とブロット工程とに共用しても良いし、浸漬塗布工程で用いた定盤とは異なる定盤を用いてブロット工程を実施しても良い。また、
図4や
図7に示したブロット工程のための電子部品10の移動軌跡、移動速度、停止時間は、例えば操作パネル上にてパラメータ入力することで、任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 電子部品、10A 第1投影領域、10Aa,10Ab 第2投影領域、
12 端面、14 導電ペースト層、
20 治具、30 定盤、31 表面(定盤面)、32 圧盤、34 固定盤、
36,36A,38,39 第1移動手段、
35,37,37A,60 第2移動手段
40 スキージユニット、42,44 ブレード、
50 ディップ層