(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ミッション又はエンジンにオイルを送る循環回路に配置され、複数のベーンが径方向に摺動自在に装着されたロータと、該ロータが内装されるカムリングと、該カムリングの軸方向両側に周方向に沿って第1メイン及びサブ吸入ポートと、第1メイン及びサブ吐出ポートを有する第1側部材と、周方向に沿って第2メイン及びサブ吸入ポートと、第2メイン及びサブ吐出ポートを有する第2側部材が配置されてなるポンプユニットを備えたベーンポンプにおいて、前記第1側部材の第1摺接面には1本の第1メイン背圧供給ポート及び1本の第1サブ背圧供給ポートが形成され、前記第1メイン背圧供給ポートは前記第1摺接面に溝状に形成され、前記第1サブ背圧供給ポートは第1サブ吐出ポートに連通する構成とし、前記第2側部材には第2メイン背圧供給ポート及び第2サブ背圧供給ポートが形成され、前記第2メイン背圧供給ポートは軸方向に貫通し、前記第2サブ背圧供給ポートは軸方向に貫通せず第2摺接面に溝状に形成され、前記ロータが中回転数以上では、サブ吐出路側に備えた流路切替バルブによって、流路が切り替わり、前記サブ吐出路からオイルがサブ吐出還流路に流れ、前記サブ吐出路側では還流状態となり、前記第1メイン背圧供給ポートは、180度を超える角度に形成されると共に、前記第1サブ背圧供給ポートは180度を超えない角度に形成され、該第1サブ背圧供給ポートは前記第1メイン背圧供給ポートよりも短くしてなることを特徴とするベーンポンプ。
ミッション又はエンジンにオイルを送る循環回路に配置され、複数のベーンが径方向に摺動自在に装着されたロータと、該ロータが内装されるカムリングと、該カムリングの軸方向両側に周方向に沿って第1メイン及びサブ吸入ポートと、第1メイン及びサブ吐出ポートを有する第1側部材と、周方向に沿って第2メイン及びサブ吸入ポートと、第2メイン及びサブ吐出ポートを有する第2側部材が配置されてなるポンプユニットを備えたベーンポンプにおいて、前記第1側部材の第1摺接面には1本の第1メイン背圧供給ポート及び1本の第1サブ背圧供給ポートが形成され、前記第1メイン背圧供給ポートは前記第1摺接面に溝状に形成され、前記第1サブ背圧供給ポートは第1サブ吐出ポートに連通する構成とし、前記第2側部材には第2メイン背圧供給ポート及び第2サブ背圧供給ポートが形成され、前記第2メイン背圧供給ポートは軸方向に貫通し、前記第2サブ背圧供給ポートは軸方向に貫通せず第2摺接面に溝状に形成され、前記ロータが中回転数以上では、サブ吐出路側に備えた流路切替バルブによって、流路が切り替わり、前記サブ吐出路からオイルがサブ吐出還流路に流れ、前記サブ吐出路側では還流状態となり、前記第1メイン背圧供給ポートは、前記第1サブ吐出ポートの終端と前記第1側部材の直径中心とを結ぶ仮想線La近傍から前記ロータの回転方向に沿って前記第1サブ吸入ポートの始端と前記直径中心を結ぶ仮想線Lb近傍に亘って対応すると共に前記第1サブ背圧供給ポートは、前記仮想線Lb近傍から前記仮想線La近傍に亘って対応するように前記第1側部材の直径中心寄りで且つロータの背圧室が包囲される位置に形成され、前記第1サブ背圧供給ポートは前記第1メイン背圧供給ポートよりも短くしてなることを特徴とするベーンポンプ。
【背景技術】
【0002】
ベーンポンプには、二つの吐出路を有し、低圧時と高圧時を、制御バルブによって、両方又は片方に切り替えるタイプのものが存在する。この種のものとして、特許文献1が存在する。特許文献1の内容を概説する。なお、括弧付符号は、特許文献1のものがそのまま使用される。
【0003】
特許文献1のベーンポンプでは、1回転する間に、吸入と吐出をそれぞれ2回繰り返す構成となっている。つまり、ポンプ(吐出源)が2つ存在する構成となっている。そして、吸入ポート(221,222)、吐出ポート(231,232)、吐出路(25,26)等は2つ存在する構成とな
っている。
【0004】
吸入路(24)は、2つが共有されて1つとなっている。本説明において、2つのポンプ構成を区別するため、便宜上、特許文献1における
図12に記載された、スプール弁(30)を経由せずに吐出される右側のポンプをメインポンプとし、
図12に記載された、スプール弁(30)を経由して吐出される左側のポンプをサブポンプとする。
【0005】
特許文献1の
図12(A)では、左側のサブポンプから吐出されたオイルは、スプール弁(30)を横切り、メインポンプから吐出されたオイルと合流する。よって、メイン及びサブの両方ポンプから吐出されるため、吐出圧を高くできる。これは一例として、所定の回転数未満の時の動作とする。
【0006】
特許文献1の
図12(B)では、左側のサブポンプから吐出されたオイルの一部は連通ロ(3d)から還流されて吸入路(24)に戻ってくる。これは、一例として、所定の回転数以上の時の動作とする。全ての回転数域において、メインポンプは常に吐出されている。
【0007】
特許文献1では、さらに、ロータ(11)には各ベーン溝(11a)の底部を構成する背圧室(11d)が形成され、またカバー(2)の一部である底壁(2c)と第2サイドプレート(14)との間には、ポンプ室(18)から吐出された作動油の一部が、第2サイドプレート(14)に形成された各第2背圧用供給路(71,72)を介して導入される高圧室(70)(
図2参照)が形成される。
【0008】
そして、ベーンポンプ(P)の運転後は、各第2背圧用供給路(71,72)を通じて高圧室(70)の作動油が背圧用作動油として背圧室(11d)に導かれ、この背圧用作動油の背圧が各ベー
ン(12)の内端の端面である背面(12e)に作用することにより各ベーン(12)はベーン溝(11a)内で且つ径方向で外方に押し出されて、各ベーン(12)の外端がカム面(17)に押し付けられる。
【0009】
これにより、各ベーン(12)の外周先端はカムリング(10)により強く押し付けられるため、オイル漏れが減少し、もって吐出性能が向上される。第1背圧用供給路(62)は、各開ロ(63a,63b)を通じて、第2背圧用供給路(71,72)及び背圧室11dを介して高圧室70に連通すると共に、吐出域から吸入域への移行域にあるベーン(12)に対応する背圧室(11d)に背圧用作動液を供給する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、第1背圧用供給路(62)はメインポンプの角度範囲とサブポンプの角度範囲の両方に連通しているため、サブポンプが還流となっている状態においても、サブポンプ側のベーン(12)の内周側にオイルによる背圧が掛かり続ける。そのため、ベーン(12)の外周先端はカムリング(10)により強く押し付けられるため、駆動トルクは増大し、もって効率が低下するおそれがある。
【0012】
以上より、効率を上げようとして、サブポンプを還流させたとしても、ベーン12はカムリング(10)に強く押し付けられているため、駆動トルクが上昇してしまい、効率の向上には限界があった。そこで、本発明の目的(解決しようとする課題)は、高圧時におけるサブポンプのベーンがカムリングの内周壁に対する接触圧を減少させ、これによって、高圧時におけるポンプ効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、請求項1の発明を、ミッション又はエンジンにオイルを送る循環回路に配置され、複数のベーンが径方向に摺動自在に装着されたロータと、該ロータが内装されるカムリングと、該カムリングの軸方向両側に周方向に沿って第1メイン及びサブ吸入ポートと、第1メイン及びサブ吐出ポートを有する第1側部材と、周方向に沿って第2メイン及びサブ吸入ポートと、第2メイン及びサブ吐出ポートを有する第2側部材が配置されてなるポンプユニットを備えたベーンポンプにおいて、前記第1側部材の第1摺接面には
1本の第1メイン背圧供給ポート及び
1本の第1サブ背圧供給ポートが形成され、前記第1メイン背圧供給ポートは前記第1摺接面に溝状に形成され、前記第1サブ背圧供給ポートは第1サブ吐出ポートに連通する構成とし、前記第2側部材には第2メイン背圧供給ポート及び第2サブ背圧供給ポートが形成され、前記第2メイン背圧供給ポートは軸方向に貫通し、前記第2サブ背圧供給ポートは軸方向に貫通せず第2摺接面に溝状に形成され、前記ロータが中回転数以上では、サブ吐出路側に備えた流路切替バルブによって、流路が切り替わり、前記サブ吐出路からオイルがサブ吐出還流路に流れ、前記サブ吐出路側では還流状態となり、前記第1メイン背圧供給ポートは、180度を超える角度に形成され
ると共に、前記第1サブ背圧供給ポートは180度を超えない角度に形成され、該第1サブ背圧供給ポートは前記第1メイン背圧供給ポートよりも短くしてなるベーンポンプとしたことにより上記課題を解決した。
【0014】
請求項2の発明を、ミッション又はエンジンにオイルを送る循環回路に配置され、複数のベーンが径方向に摺動自在に装着されたロータと、該ロータが内装されるカムリングと、該カムリングの軸方向両側に周方向に沿って第1メイン及びサブ吸入ポートと、第1メイン及びサブ吐出ポートを有する第1側部材と、周方向に沿って第2メイン及びサブ吸入ポートと、第2メイン及びサブ吐出ポートを有する第2側部材が配置されてなるポンプユニットを備えたベーンポンプにおいて、前記第1側部材の第1摺接面には
1本の第1メイン背圧供給ポート及び
1本の第1サブ背圧供給ポートが形成され、前記第1メイン背圧供給ポートは前記第1摺接面に溝状に形成され、前記第1サブ背圧供給ポートは第1サブ吐出ポートに連通する構成とし、前記第2側部材には第2メイン背圧供給ポート及び第2サブ背圧供給ポートが形成され、前記第2メイン背圧供給ポートは軸方向に貫通し、前記第2サブ背圧供給ポートは軸方向に貫通せず第2摺接面に溝状に形成され、前記ロータが中回転数以上では、サブ吐出路側に備えた流路切替バルブによって、流路が切り替わり、前記サブ吐出路からオイルがサブ吐出還流路に流れ、前記サブ吐出路側では還流状態となり、前記第1メイン背圧供給ポートは、前記第1サブ吐出ポートの終端と前記第1側部材の直径中心とを結ぶ仮想線La近傍から前記ロータの回転方向に沿って前記第1サブ吸入ポートの始端と前記直径中心を結ぶ仮想線Lb近傍に亘って対応する
と共に前記第1サブ背圧供給ポートは、前記仮想線Lb近傍から前記仮想線La近傍に亘って対応するように前記第1側部材の直径中心寄りで且つロータの背圧室が包囲される位置に形成され、前記第1サブ背圧供給ポートは前記第1メイン背圧供給ポートよりも短くしてなるベーンポンプとしたことにより、上記課題を解決した。
【0015】
請求項3の発明を、請求項1又は2において、前記第1サブ背圧供給ポートは溝状とし、該溝状の一部に軸方向に沿って小貫通孔が形成され、該小貫通孔は前記第1摺接面とは反対側の面に形成された排出溝を介して前記第1サブ吐出ポートに連通する構成としてなるベーンポンプとしたことにより、上記課題を解決した。請求項4の発明を、請求項1又は2において、前記第1サブ背圧供給ポートは前記第1側部材の軸方向に沿って貫通すると共に前記第1摺接面とは反対側の面に形成された排出溝を介して前記第1サブ吐出ポートに連通する構成としてなるベーンポンプとしたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項1又は2において、前記第1サブ背圧供給ポートは溝状とし、該溝状の一部と前記第1サブ吐出ポートの軸方向中間箇所との間に連通する排出孔流路が形成されてなるベーンポンプとしたことにより、上記課題を解決した。
【0016】
請求項6の発明を、請求項1,2,3,4又は5の何れか1項の記載において、前記第1サブ吐出ポートから機器にオイルを送るときには、前記第1サブ吐出ポートから前記第1サブ背圧供給ポートへ供給される油圧は高圧となると共に還流時には低圧としてなるベーンポンプとしたことにより、上記課題を解決した。請求項7の発明を、請求項1,2,3,4,5又は6の何れか1項の記載において、前記ロータ3の背圧室は、前記第1サブ背圧供給ポート又は前記第1メイン背圧供給ポートの何れか一方に連通する構成としてなるベーンポンプとしたことにより、上記課題を解決した。請求項8の発明を、請求項1,2,3,4,5,6又は7の何れか1項の記載において、前記第1サブ背圧供給ポートは、前記第1サブ吸入ポートの始端と前記第1側部材の直径中心とを結ぶ仮想線近傍からロータの回転方向に沿って前記第1サブ吐出ポートの終端と前記第1側部材の直径中心とを結ぶ仮想線近傍の範囲に亘って形成されてなるベーンポンプとしたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0017】
請求項1
及び請求項2の発明では、所定の回転数以上で、ベーンポンプに具備された流路切換弁によってメイン吐出路側とサブ吐出路側の吐出オイルは合流しなくなり、サブ吐出路では還流となる。したがって、第1サブ吐出ポートから吐出されるオイルの一部は第1サブ背圧供給ポートを介して背圧室に流入することになるが、同時にほとんどのオイルは、第1サブ吐出ポートからサブ吐出還流路に送り出される。
【0018】
そのために、第1サブ背圧供給ポートから背圧室に流入するオイルは極めて少なく、ほとんど圧力を有しておらず、単に背圧室にオイルが存在するだけである。このオイルは圧力を有したとしても極めて僅少である。したがって、背圧室に存在するオイルによって、ベーンには、ロータの径方向外方に押し出される力(押圧力ともいう)はかからず、遠心力による力のみとなり、ベーンの先端によるカムリングの内周側面への押し付ける力を弱くする。これによりポンプの駆動トルクを低減できるので、効率を向上でき、燃費も向上する。
【0019】
請求項
3では、第1サブ背圧供給ポートから第1サブ吐出ポートへのオイルを他の部位に漏れることなく送り出すことができる。請求項
4では、第1サブ背圧供給ポートから第1サブ吐出ポートへのオイルを他の部位に一度に多くの量を送り出すことができ、ベーンにかかる背圧を即座に減少させることができる。請求項
5では、第1サブ背圧供給ポートから第1サブ吐出ポートへのオイルを他の部位に無駄なく送り出すことができる。請求項
6,請求項
7及び請求項
8では、第1サブ吐出ポートから機器側への吐出時では、背圧室におけるオイル圧力を高くし、還流時ではオイル圧力を低くすることにより、ベーンポンプの稼動において無駄なトルクを排除し、ポンプ効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明のベーンポンプは、無段変速機に供給するための油圧ポンプ等として使用される(
図8参照)。本発明は、主に、ポンプユニットAと、ポンプハウジング1とを備えている。前記ポンプハウジング1は、ボディ半体11とボディ半体12によって構成されポンプユニットAを収納する〔
図1(A)参照〕。
【0022】
ボディ半体11は、筐体部分で、ボディ半体12がカバー部分であるが、その反対でも構わない。また、ボディ半体11とボディ半体12とは共に筐体状とすることもある。ボディ半体11とボディ半体12とは、ボルト・ナット等の固着具にて接続され、その両者の合わせ面には、シールプレート等の密封材が挟まれ、密封構造のポンプハウジング1が構成される。ポンプハウジング1は、後述する流路切替バルブ95等が内装されることもあり、その形状には、限定されないものである。
【0023】
ボディ半体11とボディ半体12には、ポンプユニットAのロータ3を回転駆動するための駆動軸が貫通する軸孔13a,13bが形成されている。ポンプハウジング1には、ポンプユニットAにオイル等の流体を送り込む吸入路14が形成されている〔
図1(A)参照〕。該吸入路14は、前記ボディ半体11と前記ボディ半体12にそれぞれ分離されて形成されている。
【0024】
次に、ポンプユニットAについて説明する。ポンプユニットAは、カムリング2,ロータ3,ベーン4,第1側部材5,第2側部材6等から構成される(
図1参照)。前記カムリング2は、環状に形成され、略楕円形状の内周側面21が形成されている。該内周側面21の軸方向断面形状は楕円又は略楕円形状である〔
図1(A),(B)参照〕。カムリング2は、内部にベーン4が装着されたロータ3が収納されるので、ロータハウジング、ロータケーシングと称してもよい。
【0025】
内周側面21の形状は略樽形状で角が円弧状に形成されることもある。前記内周側面21は、ロータ3に装着された複数のベーン4,4,…の先端が当接する部位であり、ロータ3の回転時に遠心力にてベーン4が外方に飛び出そうとするときに、前記カムリング2の内周側面21の形状に沿って、ベーン4がベーン溝31から出入する。したがって、内周側面21は、カムとしての役目を果たすものであり、カム内周側面、或いは内周カム面と称することもできる。ロータ3は、円筒形状に形成され、軸方向に沿い且つ直径中心方向に向かって切り込まれたベーン溝31が周方向に沿って等間隔に複数が形成される。ロータ3の各ベーン溝31内には、ベーン4が径方向に摺動自在となるように挿入される〔
図1(B)参照〕。
【0026】
ベーン溝31の径方向内端には背圧室32が形成されている。該背圧室32と前記ベーン溝31とは連通している。背圧室32の軸方向に直交する断面は円形状であり、該背圧室32の内径はベーン溝31の溝幅よりも大きく形成される。また、前記背圧室32は、ベーン溝31のロータ3における直径中心側寄りの端部を兼用して使用することもある。前記背圧室32には、オイルが送りこまれて、ベーン4の内端側を押圧して、ベーン4をベーン溝31からロータ3の径方向外方に押し出そうとする。
【0027】
このようにして構成されたロータ3が前記カムリング2内に収納される。ロータ3の回転中心には、駆動軸8が挿通されるロータ軸孔38が形成され、駆動軸8は、キー又はスプライン等の固定手段にて固着される。ロータ3の各ベーン溝31に挿入されたベーン4の外端は、ロータ3の回転時における遠心力と共に前記背圧室32内に溜まったオイルの圧力により内周側面21に常時当接する。
【0028】
カムリング2の軸方向の一方の端部には、第1側部材5が接触配置され、カムリング2に軸方向の他方には第2側部材6が接触配置され、ベーン4の軸方向両端は、前記第1側部材5及び第2側部材6にそれぞれ摺動自在に当接する。そしてカムリング2,ロータ3,ベーン4,第1側部材5,第2側部材6とからなるポンプユニットAは、前記ボディ半体11と前記ボディ半体12とからなるポンプハウジング1に収納される(
図1参照)。
【0029】
ここで、カムリング2、ロータ3、ベーン4及び第1側部材5,第2側部材6は、2本の固定軸7,7により周方向に固定されてポンプユニットAが構成される。カムリング2には、固定軸孔39が形成され、第1側部材5には固定軸孔59が形成され、第2側部材6には固定軸孔69が形成されている。そして、ロータ3の軸方向の両側に第1側部材5及び第2側部材6が配置され、固定軸孔59,39,69に固定軸7が挿通され、これらが一体化されたポンプユニットAがポンプハウジング1に収納される〔
図1(B),(C
),(D),
図2参照〕。そして、ポンプハウジング1に装着される駆動軸8の回転によって、ロータ3が回転する。
【0030】
カムリング2,第1側部材5,第2側部材6は、前記固定軸7によって周方向,軸方向に固定される構成としたが、必ずしも前記固定軸7によって固定されるものではなく、カムリング2と第1側部材5又はカムリング2と第2側部材6とにそれぞれ嵌合又は係止し合う凸部及び凹部を形成し、これらが嵌合又は係止することにより、カムリング2,第1側部材5,第2側部材6が接合固定される構成としても構わない。そして、前記カムリング2の内周側面21と、ロータ3の周囲に装着された複数のベーン4,4,…によって仕切られた空間(又は部屋)の容積が、ロータ3の回転と共に拡縮を繰り返し、吸入,吐出を行う構成となる。
【0031】
ポンプハウジング1に形成された吸入路14は、後述する第1側部材5に形成された第1メイン吸入ポート52,第1サブ吸入ポート51及び第2側部材6に形成された第2メイン吸入ポート62,第2サブ吸入ポート61と連通し、流体をポンプユニットAに送り込むことができる。
【0032】
本発明のベーンポンプは、前記第1メイン吸入ポート52と第1メイン吐出ポート53によって構成されるメインポンプと、第1サブ吸入ポート51と第1サブ吐出ポート54とによって構成されるサブポンプを備えたものである。そして、メインポンプ側では、ミッション又はエンジン等の機器96に常時オイルを送るが、サブポンプはミッション又はエンジン等の機器96にオイルを送る状態と、該機器96に向かって流れずに、サブ吐出還流路93を循環する状態となる。
【0033】
また、ボディ半体11とボディ半体12とからなるポンプハウジング1には、メイン吐出路15とサブ吐出路16が形成されている。メイン吐出路15は、後述する第1側部材5に形成された第1メイン吐出ポート53及び第2側部材6に形成された第2メイン吐出ポート63と連通し、流体が吐出することができる。
【0034】
また、サブ吐出路16は、第1側部材5に形成された第1サブ吐出ポート54及び第2側部材6に形成された第2サブ吐出ポート64と連通し、流体が吐出することができる。第1側部材5は、第1メイン吸入ポート52,第1サブ吸入ポート51,第1メイン吐出ポート53,第1サブ吐出ポート54を有している〔
図1(B),(C),
図3(A)乃至(D)参照〕。第1側部材5の第1メイン吸入ポート52と第1サブ吸入ポート51は、円板の径方向両側の一部に円弧形状に切除された部位を有する形状である。
【0035】
また、第1メイン吐出ポート53,第1サブ吐出ポート54は、軸方向に貫通孔として形成されている。また、第1側部材5は、カムリング2,ロータ3及びベーン4に接触する側を第1摺接面5aとし、その反対側を第1外面5bとする。そして、第1側部材5がカムリング2と接合した状態で、ロータ3の回転方向に沿って第1メイン吸入ポート52,第1メイン吐出ポート53,第1サブ吸入ポート51、第1サブ吐出ポート54の順番で、等間隔に配置されている。
【0036】
第1側部材5の径方向中心には、軸孔58が形成されており、該軸孔58の周囲で且つ第1摺接面5aには、第1メイン背圧供給ポート55及び第1サブ背圧供給ポート56が形成されている。また、前記軸孔58の中心点を直径中心P1と称する。該直径中心P1は、第1側部材5の中心となる。したがって、直径中心P1は、第1側部材5の直径中心といえる。第1メイン背圧供給ポート55と第1サブ背圧供給ポート56は、前記軸孔58の直径中心に対して点対称の位置に形成され、且つ複数の前記背圧室32,32,…を包囲するように形成されている〔
図3(A),(B)参照〕。したがって、第1メイン背圧供給ポート55と、第1サブ背圧供給ポート56は、前記軸孔58を略直径中心とする円弧状の溝として形成されている。
【0037】
そして、第1メイン背圧供給ポート55は第1摺接面5aに軸方向に貫通することなく溝状に形成されている。また、第1サブ背圧供給ポート56は、前記第1サブ吐出ポート54と連通している。さらに具体的には、前記第1摺接面5aとは反対側の面側で前記第1サブ吐出ポート54に連通する構成としている。この第1サブ背圧供給ポート56と第1サブ吐出ポート54との連通構成には、複数の実施形態が存在する。
【0038】
その第1実施形態では、
図3(A)乃至(D)に示すように、第1サブ背圧供給ポート56は、第1摺接面5a上で溝状とし、該溝状の一部に軸方向に沿って小貫通孔56aが形成され、該小貫通孔56aの一端と前記第1サブ吐出ポート54に連通する前記排出溝571と連通する構成である。
【0039】
その第2実施形態では、
図7(A)に示すように、第1サブ背圧供給ポート56は、第1側部材5の全領域が該第1側部材5の軸方向に沿って、つまり第1摺接面5aから第1外面5bに向かって貫通する。そして、第1外面5b側での第1サブ背圧供給ポート56の開口部分と前記第1サブ吐出ポート54の間に排出溝571が形成され、該排出溝571によって第1サブ吐出ポート54と連通する構成としたものである。
【0040】
その第3実施形態では、
図7(B)に示すように、第1サブ背圧供給ポート56は、第1摺接面5a上では溝状に形成され、第1サブ背圧供給ポート56の領域の一部から第1サブ吐出ポート54の軸方向の中間箇所との間を連通する排出孔流路572が形成されたものである。該排出孔流路572は、第1側部材5の肉部内を略トンネル状の通路孔として形成されたものである。
【0041】
次に、第2側部材6は、第2メイン吸入ポート62,第2サブ吸入ポート61,第2メイン吐出ポート63,第2サブ吐出ポート64を有している〔
図2,
図3(E)乃至(G)参照〕。第2側部材6の第2メイン吸入ポート62と第2サブ吸入ポート61は、円板の径方向両側に段差状に形成された形状である。また、第2側部材6の第2メイン吸入ポート62と第2サブ吸入ポート61は、前記第1側部材5の第1メイン吸入ポート52及び第1サブ吸入ポート51と同様に貫通する構成とすることもある。
【0042】
この場合、第2側部材6の形状は、第1側部材5と略同等形状で、円板の直径方向両側が切除されたような形状となる。前記第2メイン吐出ポート63は、前記第2側部材6を軸方向に貫通する構成となっている。具体的には、第2メイン吐出ポート63は、第2側部材6の第2摺接面6a側で窪み状の凹部63aが形成され、該凹部63aの底面の一部と、第2側部材6の第2外面6bとの間を軸方向に貫通する貫通孔63bが形成されたものである〔
図3(E),(F),
図6等参照〕。また、前記第2メイン吐出ポート63は、凹部63aの開口形状のままで第2側部材6を軸方向に貫通する構成としてもよい。
【0043】
また、第1メイン吐出ポート53,第1サブ吐出ポート54は、軸方向に貫通孔として形成されている。また、第2側部材6は、カムリング2,ロータ3及びベーン4に接触する側を第2摺接面6aとし、その反対側を第2外面6bとする。そして、第2側部材6がカムリング2と接合した状態で、ロータ3の回転方向に沿って第2メイン吸入ポート62,第2メイン吐出ポート63,第2サブ吸入ポート61、第2サブ吐出ポート64の順番で、等間隔に配置されている。第2側部材6の径方向中心には、軸孔68が形成されており、該軸孔68の直径中心の周囲で且つ第2摺接面6aには、第2メイン背圧供給ポート65と第2サブ背圧供給ポート66が形成されている。
【0044】
第2メイン背圧供給ポート65と第2サブ背圧供給ポート66は、前記軸孔68の直径中心に対して点対称の位置に形成され、且つ複数の前記背圧室32,32,…を包囲するように形成されている。前記第2メイン背圧供給ポート65は軸方向つまり、第2摺接面6aから第2外面6bに沿って貫通している。
【0045】
具体的には、第2メイン背圧供給ポート65は、溝部65aと貫通部65bとからなり、該貫通部65bによって、前記第2メイン背圧供給ポート65は第2側部材6に対して軸方向に貫通している〔
図3(G)参照〕。前記溝部65aと前記貫通部65bとは、略一体形成され、第2メイン背圧供給ポート65が溝状貫通孔として形成される構成としたり、或いは前記貫通部65bが、前記溝部65aの一部分に形成された貫通孔とする構成としても良い。第2サブ背圧供給ポート66は第2摺接面6a上に軸方向に貫通することなく溝状に形成されている。
【0046】
ポンプハウジング1には、ポンプユニットAと共に、流路切替バルブ95が具備されている。該流路切替バルブ95は、本発明のベーンポンプのサブ吐出路16側でのサブ循環吐出流路92とサブ吐出還流路93とを切り替える役目をなすものである。具体的には、ミッション又はエンジン等の機器96にオイルを送る循環回路で、メイン吐出路15側のメイン循環吐出流路91と合流するサブ循環吐出流路92と、サブ吐出路16から吸入路14側との間でオイルが還流するサブ吐出還流路93とに切り替える役目をなすものである(
図8参照)。
【0047】
つまり、流路切替バルブ95によって、サブ吐出路16側の吐出オイルは、ミッション又はエンジンに、メイン循環吐出流路91に合流して送り込むか、或いは吸入路14側に戻して還流動作を行うかの何れかに切り替えることができる。流路切替バルブ95は、油圧による駆動するタイプ又はソレノイドバルブ等が使用される。流路切替バルブ95は、前述したように、ポンプハウジング1内に具備される以外に、ポンプハウジング1の外部に備えられる構成としても構わない。
【0048】
次に、本発明のベーンポンプをミッション又はエンジン等の機器96にオイルを送る循環回路に備えた場合を例にして
図5,
図6及び
図8等に基づいて動作を説明する。まず、本発明のベーンポンプは、所定回転数以下(例えば低回転数)では、吸入路14から吸入したオイルは、メイン吐出路15とサブ吐出路16から吐出され、両方を流れるオイルは合流してミッション又はエンジン等の機器96の循環回路等に送られる。また、ポンプが稼動しているときには、第1サブ背圧供給ポート56及び第2サブ背圧供給ポート66と連通する背圧室32にはオイルが入り込んでいる。そして、これらの背圧室32内のオイルに対して第1サブ吐出ポート54から吐出されるオイルの圧力が伝播されるようになっている。
【0049】
このミッション又はエンジン等の機器96の循環回路で、メイン吐出路15はメイン循環吐出流路91に流れ、サブ吐出路16はサブ循環吐出流路92に流れる。また、ミッション又はエンジン等の機器96からベーンポンプには戻り流路94によってオイルが戻る〔
図8(A)参照〕。このメイン吐出路15はメイン循環吐出流路91に流れ、サブ吐出路16はサブ循環吐出流路92に流れる状態では、第1サブ吐出ポート54からの吐出圧力が増加し、その大きな圧力が第1サブ背圧供給ポート56及び該第1サブ背圧供給ポート56に連通する背圧室32に伝播して、該背圧室32からベーン溝31内のベーン4に対する押圧力が増加し、ベーン4の先端がカムリング2の内周側面21に接する圧力が増加し、無駄の無いポンプ動作が行われる。
【0050】
次に、ベーンポンプが、所定回転数以上(例えば中・高回転数)となったときには、吸入路14から吸入したオイルは、メイン吐出路15とサブ吐出路16から吐出されるが、サブ吐出路16側に備えた流路切替バルブ95によって、流路が切り替わり、サブ吐出路16からオイルがサブ吐出還流路93に流れ、これによって、サブ吐出側では還流状態となる〔
図8(B)参照〕。
【0051】
そして、第1側部材5の第1サブ背圧供給ポート56は、第1サブ吐出ポート54と連通する構造であり、排出溝571等を介して第1サブ吐出ポート54と略等しい油圧となっている(
図5,
図6参照)。これによって、サブ吐出側では、還流状態となる
図8(B)の場合には、第1サブ吐出ポート54からの吐出圧力は小さくなり、第1サブ背圧供給ポート56及び該第1サブ背圧供給ポート56に連通する背圧室32内のオイルに対して、圧力の伝播が小さくなる。これによって、第1サブ吐出ポート54での油圧は低くなるため、連動して第1側部材5の第1サブ背圧供給ポート56の油圧は低いものとなり、背圧室32からベーン溝31内のベーン4を押圧する力が弱くなり、無駄な抵抗力の増加を防止し、ポンプ効率の低下を防止する。
【0052】
上記構成によりサブ吐出側がオイルをミッション又はエンジン等の機器96に吐出しない場合、言い換えるとサブ吐出側がオイルを吐出するという仕事をしない場合では、第1サブ背圧供給ポート56の油圧を低くし、該第1サブ背圧供給ポート56に対応した背圧室32の油圧を低くすることで、第1サブ背圧供給ポート56の位相に対応したサブ吐出側におけるベーン4のカムリング2の内周側面21への押し付ける力を弱くする。これによりベーンポンプの駆動トルクを低減できるのでポンプ効率を向上でき、もって燃費も向上できる。
【0053】
なお、
図8(A)に示された状態であるメイン吐出側とサブ吐出側とが合流して、サブ吐出側のオイルもミッション又はエンジン等の機器96に送られる場合は、第1サブ吐出ポート54には高油圧が掛かり、連動して第1サブ背圧供給ポート56に対応した背圧室32の油圧も高くなり、もってサブ吐出側の吐出圧を高く保つことができるという効果も合わせて奏する。
【0054】
次に、前記第1側部材5における第1メイン背圧供給ポート55と第1サブ背圧供給ポート56の形成範囲について説明する。第1メイン背圧供給ポート55及び第1サブ背圧供給ポート56における形成範囲の実施形態は複数存在する。まず、第1メイン背圧供給ポート55及び第1サブ背圧供給ポート56における形成範囲の第1実施形態では、
図5に示すように、第1メイン背圧供給ポート55は、第1メイン吸入ポート52における始端52aと第1側部材5の直径中心P1とを結ぶ仮想線La近傍から第1メイン吸入ポート52における終端52bと直径中心P1を結ぶ仮想線Lb近傍に亘って対応するように前記第1側部材5の直径中心P1寄りで且つロータ3の背圧室32が包囲される位置に形成されている。
【0055】
ここで、第1メイン吸入ポート52,第1メイン吐出ポート53,第1サブ吸入ポート51,第1サブ吐出ポート54の始端52a,53a,51a,54a及び終端52b,53b,51b,54bとは、ロータ3の回転方向に従って設定された位置であり、回転方向前方側を始端とし、回転方向後方側を終端とする〔
図5,
図9(A)参照〕。
【0056】
第1メイン背圧供給ポート55と第1メイン吸入ポート52とは、第1側部材5の直径方向において、同一位置には存在することなく、且つ相互に交わらない。また、第1側部材5の直径方向において第1メイン背圧供給ポート55は、第1メイン吸入ポート52の内周側の面よりも直径中心P1寄りに位置している。ここで第1側部材5の直径中心P1
は、第1側部材5の軸孔58の直径中心である。
【0057】
第1サブ背圧供給ポート56は、第1サブ吸入ポート51における始端51aと直径中心P1とを結ぶ仮想線La近傍から第1サブ吸入ポート51における終端51bと直径中心P1とを結ぶ仮想線Lb近傍に亘って対応するように前記第1側部材5の直径中心P1寄りで且つロータ3の背圧室32が包囲され且つ連通される位置に形成されている。第1サブ背圧供給ポート56と第1サブ吸入ポート51とは、第1側部材5の直径方向において、同一位置には存在することなく、且つ相互に交わらない。
【0058】
また、第1側部材5の直径方向において第1サブ背圧供給ポート56は、第1サブ吸入ポート51の内周側の面よりも直径中心P1寄りに位置している。第1実施形態における第1メイン背圧供給ポート55と第1サブ背圧供給ポート56の形成範囲では、ロータ3の全背圧室32,32,…が、回転時において第1メイン背圧供給ポート55及び第1サブ背圧供給ポート56の何れにも交わらないときがある(
図5参照)。
【0059】
つまり、ロータ3の回転時において、第1メイン背圧供給ポート55及び第1サブ背圧供給ポート56を背圧室32が通過するときに、第1メイン背圧供給ポート55及び第1サブ背圧供給ポート56に包囲されて連通し、オイルの圧力が伝搬され、背圧室32からベーン溝31内のベーン4を押圧する。本発明の実施形態では、ロータ3の背圧室32の数を10としており、第1メイン背圧供給ポート55及び第1サブ背圧供給ポート56には、それぞれ3個の背圧室32が包囲且つ連通される。
【0060】
次に、第1メイン背圧供給ポート55と第1サブ背圧供給ポート56の形成範囲における第2実施形態について説明する(
図9参照)。この実施形態では、ロータ3の全背圧室32,32,…は、第1メイン背圧供給ポート55又は第1サブ背圧供給ポート56の何れか一方に包囲され連通される構成としたものである〔
図9(A)参照〕。つまり、回転時のロータ3の背圧室32は、第1メイン背圧供給ポート55及び第1サブ背圧供給ポート56の何れか一方に包囲且つ連通可能な状態となる。
【0061】
具体的には、第1メイン背圧供給ポート55は、第1サブ吐出ポート54の終端54bと第1側部材5の直径中心P1とを結ぶ仮想線La近傍からロータ3の回転方向に沿って
第1サブ吸入ポート51の始端51aと直径中心P1を結ぶ仮想線Lb近傍に亘って対応
するように前記第1側部材5の直径中心寄りで且つロータ3の背圧室32が包囲される位置で且つ180度を超える角度に形成されている。第1サブ吐出ポート54の終端54b近傍の範囲に亘って対応するように前記第1側部材5の直径中心寄りで且つロータ3の背圧室32が包囲され且つ連通される位置に形成されている。
【0062】
第1メイン背圧供給ポート55と第1メイン吸入ポート52とは、第1側部材5の直径方向において、同一位置には存在することなく、且つ相互に交わらない。また、第1側部材5の直径方向において第1メイン背圧供給ポート55は、第1メイン吸入ポート52の内周側の面よりも直径中心P1寄りに位置している。
【0063】
また、第1サブ背圧供給ポート56は、第1サブ吸入ポート51における始端51aと第1側部材5の直径中心P1とを結ぶ仮想線Lb近傍から第1サブ吐出ポート54の終端
54bと直径中心P1を結ぶ仮想線La近傍に亘って対応するように前記第1側部材5の
直径中心寄りで且つロータ3の背圧室32が包囲される位置に形成されている。
【0064】
第1サブ吐出ポート54の終端54b近傍の範囲に亘って対応するように前記第1側部材5の直径中心P1寄りで且つロータ3の背圧室32が包囲され且つ連通される位置に形
成されている。本発明の実施形態では、ロータ3の背圧室32の数を10としており、第1メイン背圧供給ポート55には7個の背圧室32が包囲連通され、第1サブ背圧供給ポート56には、3個の背圧室32が包囲且つ連通される。
【0065】
次に、サブポンプ側の還流状態〔
図8(B)参照〕における背圧室32内の圧力状態とベーン4との関係を説明する。ロータ3の全背圧室32は、第1メイン背圧供給ポート55及び第1サブ背圧供給ポート56の何れかに包囲且つ連通されている。
【0066】
そして、メインポンプ側では、第2メイン吐出ポート63にオイルが流入すると、第2側部材6の軸方向に貫通する第2メイン背圧供給ポート65からオイルが流れ込み、背圧室32に流れようとする(
図6参照)。背圧室32には、通常オイルが充填されているので、第2メイン背圧供給ポート65のオイルが背圧室32内のオイルに圧力を伝播する。
【0067】
この圧力の伝播によって、ベーン溝31内のベーン4を外に押し出す圧力がかかり、メインポンプ側におけるベーン4は、常時カムリング2の内周側面21に適正に大きな押圧力にて押圧し、良好なポンプ効率にて稼動する。次に、サブポンプ側では、メインポンプ側と共にミッション又はエンジン等の機器96にオイルを送るときには、第1サブ吐出ポート54の吐出圧は大きく、そのために、第1サブ吐出ポート54から第1サブ背圧供給ポート56に送り込まれるオイルの圧力も高い。
【0068】
そのために、第1サブ背圧供給ポート56から背圧室32へ高い圧力を伝播する。これによって、ベーン溝31のベーン4が適正に大きな押圧力にて押圧され、サブポンプ側におけるベーン4は、常時カムリング2の内周側面21に適正に大きな押圧力にて押圧し、良好なポンプ効率にて稼動する。
【0069】
そして、サブポンプ側が還流に切り替わり、サブ吐出還流路93内をオイルが循環する状態となると、第1サブ吐出ポート54からの吐出圧が小さくなる。これによって、第1サブ吐出ポート54から第1サブ背圧供給ポート56に送り込まれるオイルの圧力も小さくなり、背圧室32に伝播されるオイル圧力も小さくなる。その結果、サブポンプ側における背圧室32からのベーン4を押圧する力も小さくなり、ベーン4の先端とカムリング2の内周側面21との押圧力も小さくなる。
【0070】
以上の構成により、ポンプ稼動時には、ロータ3の背圧室32の極端な圧力上昇が生じない構成となる。ベーン4先端とカムリング2内面の摺動抵抗が減少し、駆動トルクを更に低減することが可能となる。ポンプ性能の一つであるメインポンプの吐出圧を確保するため、第1メイン背圧供給ポート55は、ロータ3の回転方向に沿って第1サブ吐出ポート54の終端位置から第1サブ吸入ポート51の始端位置に亘って形成されることで、ポンプ性能を低下させない構成となる。
【0071】
これは、特にメインポンプ側の吸入ポート(第1メイン吸入ポート52,第2メイン吸入ポート62)全域で、メインポンプ側背圧供給ポート(第1メイン背圧供給ポート55,第2メイン背圧供給ポート65)より背圧室32に常に油圧を供給することで、ベーン4の先端部分がカムリング2の内周側面21に、常にしっかりと接することができ、もってしっかりとオイルを吸い込むことができる。
【0072】
本発明により、ミッション,エンジン等の機器96に供給するオイルは、高い吐出圧を確保しながら、且つサブポンプ側の吐出ポート(第1サブ吐出ポート54,第2サブ吐出ポート64)が還流状態となったときには、第1サブ背圧供給ポート56及び第2サブ背圧供給ポート66へのオイルの圧力伝播を小さくしてポンプの駆動トルクを低減することができ、もって燃費向上が図れる。