(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0011】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0012】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、複数の類似の部材(部位)が存在する場合には、総称の符号に記号を追加し個別または特定の部位を示す場合がある。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0013】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0014】
また、断面図および平面図において、各部位の大きさは実デバイスと対応するものではなく、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。また、断面図と平面図が対応する場合においても、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。
【0015】
本実施の形態による半導体装置がより明確となると思われるため、本発明者によって見出されたIGBTにおける課題について説明する。
【0016】
課題(1)
負荷短絡時にIGBTにオン信号が入ると、コレクタとエミッタとの間に電源電圧がかかり、IGBTが流せる限界までの大電流が印加されて、IGBTが破壊する危険性がある。特に、Kirk効果によって、IGBTの基板裏面側の電界強度が高くなると、電界強度が臨界電界強度を超えてアバランシェ降伏が起こり、莫大なキャリアが基板裏面側で発生する。この現象は、コレクタ電流密度が顕著に起こりやすくなる傾向がある(
図30参照)。これにより、基板裏面の寄生バイポーラがオンすると、ラッチアップによりIGBTが破壊する。Kirk効果とは、バイポーラトランジスタにおいて、コレクタ電流が増加して注入レベルが高くなるにともない、ベース・コレクタ空乏層がコレクタ側へ押され、実効ベース幅が増加する現象であり、ベース押出し効果とも呼ばれる。
【0017】
そこで、負荷短絡耐量を確保するために、コレクタ電流を必要以上に流さないように設計することが重要である。
【0018】
しかし、コレクタ電流を低減すると、オン電圧が高くなるという問題がある(
図31参照)。オン電圧とは、ゲート電圧を印加した状態で定格電流を流すために必要なコレクタ電圧(飽和電圧とも言う。)である。できる限りオン電圧を低くするためには、コレクタ電流を増加することが望ましく、このため、負荷短絡耐量とオン電圧とはトレードオフの関係にある。すなわち、低いオン電圧を得るためには、コレクタ電流を増加させることが望ましいが、高い負荷短絡耐量を得るためには、コレクタ電流を減少させることが望ましい。
【0019】
課題(2)
上記Kirk効果は、基板裏面側のPNダイオードから供給される正孔の量を増やして、電子を相殺し、電界強度のピーク位置を基板裏面側のPNダイオードから離すことにより抑制することができる。また、正孔の量を増やすためには、コレクタの濃度を高くすればよい(
図32および
図33参照)。しかし、コレクタの濃度を高くすると、IGBTのスイッチングオフ時の基板裏面側での残留キャリアが増えてしまう。このため、残留キャリアを空乏化によって吐き出すか、または再結合により消滅させなければならず、スイッチングオフ損失性能を劣化させる要因となる。つまり、負荷短絡耐量とスイッチングオフ損失性能とはトレードオフの関係にある。
【0020】
そこで、本実施の形態では、上記課題を解決するため、スイッチングオフ損失性能を劣化させることなく、オン電圧が低く、かつ、Kirk効果による破壊を回避して負荷短絡耐量が高いトレンチゲートIGBTを実現することのできる技術を提供する。
【0021】
(実施の形態1)
トレンチゲートIGBTについて開示した先行技術としては、例えば特開2013−140885号公報(特許文献1)がある。(1)セル領域およびその周辺の平面構造、(2)狭アクティブセル型単位セルおよび交互配列方式、並びに(3)アクティブセル2次元間引き構造については特開2013−140885号公報(特許文献1)に開示されているので、それと重複する部分については、原則として繰り返さないこととする。
【0022】
≪トレンチゲートIGBTの構造≫
本実施の形態1によるトレンチゲートIGBTを含む半導体装置について
図1〜
図5を用いて説明する。
図1は、本実施の形態1によるトレンチゲートIGBTを備える半導体装置(半導体チップ)の要部平面図である。
図2は、本実施の形態1による半導体装置の活性部の一部を拡大して示す要部平面図である。
図3〜
図5は、本実施の形態1によるトレンチゲートIGBTの要部断面図であり、
図3は、
図2に示すA−A線に沿った要部断面図、
図4は、
図2に示すB−B線に沿った要部断面図、
図5は、
図2に示すC−C線に沿った要部断面図である。
【0023】
ここで説明するトレンチゲートIGBTは、互いに間隔を空けて4つのトレンチゲート電極が配列し、中央に配置された2つのトレンチゲート電極の各々が、ゲート電極と電気的に接続され、その両端に配置された2つのトレンチゲート電極の各々が、エミッタ電極と電気的に接続された、所謂EEGG型のトレンチゲートIGBTである。また、本実施の形態1によるトレンチゲートIGBTは、例えば600V程度の耐圧を有する。
【0024】
図1に示すように、半導体チップSCの外周部の上面には、環状のガードリングGRが設けられており、その内側には、環状のフローティングフィールドリング等と接続された数本(単数または複数)の環状のフィールドプレートFPが設けられている。ガードリングGRおよびフィールドプレートFPは、例えばアルミニウムを主要な構成要素とする金属膜からなる。
【0025】
環状のフィールドプレートFPの内側であって、半導体チップSCの活性部の主要部には、セル形成領域CRが設けられており、半導体チップSCの活性部の上面には、半導体チップSCの外周部の近傍までエミッタ電極EEが設けられている。エミッタ電極EEは、例えばアルミニウムを主要な構成要素とする金属膜からなる。エミッタ電極EEの中央部は、ボンディングワイヤ等を接続するためのエミッタパッドEPとなっている。
【0026】
エミッタ電極EEとフィールドプレートFPとの間には、ゲート配線GLが配置されており、ゲート配線GLは、ゲート電極GEに接続されている。ゲート配線GLおよびゲート電極GEは、例えばアルミニウムを主要な構成要素とする金属膜からなる。ゲート電極GEの中央部は、ボンディングワイヤ等を接続するためのゲートパッドGPとなっている。
【0027】
図2に示すように、セル形成領域CRには、第1方向(x方向)に線状単位セル領域LCが周期的に配列されている。各線状単位セル領域LCは、第1線状単位セル領域LC1と第2線状単位セル領域LC2とから構成されており、本実施の形態1では、第1線状単位セル領域LC1の幅W1と第2線状単位セル領域LC2の幅W2とは、同一または実質的に同一である。
【0028】
各第1線状単位セル領域LC1は、中央の線状アクティブセル領域LCaとこれを囲む一対の半幅の線状インアクティブセル領域LCiとから構成されている。線状アクティブセル領域LCaと線状インアクティブセル領域LCiとの間には、ゲート電極(前記
図1に示すゲート電極GE)と電気的に接続された第1線状トレンチゲート電極TG1または第2線状トレンチゲート電極TG2がある。
【0029】
一方、各第2線状単位セル領域LC2は、中央の線状ホールコレクタセル領域LCcとこれを囲む一対の半幅の線状インアクティブセル領域LCiとから構成されている。線状ホールコレクタセル領域LCcと線状インアクティブセル領域LCiとの間には、エミッタ電極EEと電気的に接続された第3線状トレンチゲート電極TG3または第4線状トレンチゲート電極TG4がある。
【0030】
線状アクティブセル領域LCaの幅Waおよび線状ホールコレクタセル領域LCcの幅Wcは、線状インアクティブセル領域LCiの幅Wiよりも狭く形成されており、本実施の形態1によるトレンチゲートIGBTは、いわゆる「狭アクティブセル型単位セル」である。
【0031】
また、線状アクティブセル領域LCaまたは線状ホールコレクタセル領域LCcと、線状インアクティブセル領域LCiとを交互に配列して、線状単位セル領域LCを構成しており、本実施の形態1によるトレンチゲートIGBTは、いわゆる「交互配列方式」である。
【0032】
線状アクティブセル領域LCaおよび線状ホールコレクタセル領域LCcには、それぞれ第1方向(x方向)と直交する第2方向(y方向、長手方向)に沿って、その中央部にコンタクト溝CTが設けられており、その下端部は、半導体基板に形成されたP
+型ボディコンタクト領域PBCに達している。
【0033】
線状アクティブセル領域LCaにおいては、第2方向(y方向、長手方向)に周期的に、N
+型エミッタ領域NEが形成された領域、すなわち、アクティブセクションLCaaと、N
+型エミッタ領域NEが形成されていない領域(P型ボディ領域PB)、すなわち、インアクティブセクションLCaiとが交互に設けられている。
【0034】
線状ホールコレクタセル領域LCcにおいては、第2方向(y方向、長手方向)に周期的に、第3線状トレンチゲート電極TG3と第4線状トレンチゲート電極TG4とを相互に接続する連結トレンチゲート電極(エミッタ接続部)TGcが設けられている。そして、連結トレンチゲート電極(エミッタ接続部)TGcとコンタクト溝CT(P
+型ボディコンタクト領域PBC)との交差部において、第3線状トレンチゲート電極TG3と第4線状トレンチゲート電極TG4とは相互に接続され、エミッタ電極EEと電気的に接続されている。
【0035】
なお、本実施の形態1では、線状ホールコレクタセル領域LCcの幅Wcと線状アクティブセル領域LCaの幅Waとは、同一または実質的に同一であるが、このことは必須ではない。しかし、同一または実質的に同一とすることによって、正孔分布が均一になる利点がある。
【0036】
線状インアクティブセル領域LCiにはP型フローティング領域PFが設けられている。本実施の形態1では、P型フローティング領域PFの深さは、第1、第2、第3および第4線状トレンチゲート電極TG1,TG2,TG3およびTG4が形成されたトレンチの下端部よりも深く、その下端部をカバーする構造となっている。このような構造は必須ではないが、このようにすることによって、線状インアクティブセル領域LCiの第1方向(x方向)の幅Wiを線状アクティブセル領域LCaの第1方向(x方向)の幅Waよりも大きくしても耐圧を維持することが容易になる利点がある。なお、本実施の形態1では、線状アクティブセル領域LCaの第1方向(x方向)の幅Waを線状インアクティブセル領域LCiの第1方向(x方向)の幅Wiよりも狭くしているが、このことは必須ではないが、そのようにすることによって、IE効果を高めることができる。
【0037】
セル形成領域CRの周辺外部には、これを取り巻くように、例えばP型フローティング領域PFpが設けられている部分があり、このP型フローティング領域PFpは、コンタクト溝CT(P
+型ボディコンタクト領域PBCp)によって、エミッタ電極EEと電気的に接続されている。
【0038】
また、セル形成領域CRの周辺外部には、例えばゲート配線GLが配置されており、このゲート配線GLに向けて、セル形成領域CR内から、第1線状トレンチゲート電極TG1および第2線状トレンチゲート電極TG2が延在している。そして、第1線状トレンチゲート電極TG1および第2線状トレンチゲート電極TG2が延在した部分(すなわち、ゲート引き出し部TGw)の端部連結トレンチゲート電極TGzが、ゲート配線−トレンチゲート電極接続部GTGを介して、ゲート配線GLと電気的に接続されている。なお、線状インアクティブセル領域LCiとセル形成領域CRの周辺外部との間は、端部トレンチゲート電極TGpによって区画されている。
【0039】
次に、
図2のA−A線に沿った断面構造について
図3を用いて説明する。
【0040】
図3に示すように、半導体基板SSの主要部は、N
−型ドリフト領域NDが占めており、半導体基板SSの裏面(第2主面、下面)Sb側には、N
−型ドリフト領域NDに接してN型フィールドストップ領域Nsが設けられている。N型フィールドストップ領域Nsの不純物濃度は、例えば1×10
15〜1×10
17/cm
3程度である。
【0041】
さらに、N型フィールドストップ領域NsのN
−型ドリフト領域NDと反対側に、N型フィールドストップ領域Nsに接してP
+型第1コレクタ領域PC1およびP
++型第2コレクタ領域PC2が設けられている。そして、P
++型第2コレクタ領域PC2は、線状アクティブセル領域LCaの半導体基板SSの裏面Sb側に形成されている。
【0042】
P
++型第2コレクタ領域PC2の不純物濃度は、P
+型第1コレクタ領域PC1の不純物濃度よりも高く、P
+型第1コレクタ領域PC1の不純物濃度は、例えば1×10
16〜1×10
17/cm
3程度であり、P
++型第2コレクタ領域PC2の不純物濃度は、例えば1×10
17〜1×10
18/cm
3程度である。
【0043】
さらに、半導体基板SSの裏面Sb上には、P
+型第1コレクタ領域PC1およびP
++型第2コレクタ領域PC2と電気的に接続するコレクタ電極CEが設けられている。コレクタ電極CEは、例えば半導体基板SSの裏面Sbから、アルミニウムシリコン(AlSi)、チタン、ニッケルおよび金が順次積層された積層膜(AlSi/Ti/Ni/Au)からなり、半導体基板SSの裏面Sbには、アルミニウムを含む電極材料が接している。
【0044】
一方、半導体基板SSの表面(第1主面、上面)Sa側には、そのほぼ全面(セル形成領域CRのほぼ全面)に、P型ボディ領域PBが設けられている。
【0045】
線状アクティブセル領域LCaと線状インアクティブセル領域LCiとの境界部における半導体基板SSの表面Sa側には、第1トレンチT1および第2トレンチT2が設けられており、それぞれの内部には、ゲート絶縁膜GIを介して、第1線状トレンチゲート電極TG1および第2線状トレンチゲート電極TG2が設けられている。
【0046】
第1線状トレンチゲート電極TG1および第2線状トレンチゲート電極TG2は、ゲート電極(前記
図1に示すゲート電極GE)と電気的に接続されている。また、第1線状トレンチゲート電極TG1は、半導体基板SSに形成された第1トレンチT1の下端部から上部にわたり埋め込まれている。同様に、第2線状トレンチゲート電極TG2は、半導体基板SSに形成された第2トレンチT2の下端部から上部にわたり埋め込まれている。
【0047】
線状ホールコレクタセル領域LCcと線状インアクティブセル領域LCiとの境界部における半導体基板SSの表面Sa側には、第3トレンチT3および第4トレンチT4が設けられており、それぞれの内部には、ゲート絶縁膜GIを介して、第3線状トレンチゲート電極TG3および第4線状トレンチゲート電極TG4が設けられている。
【0048】
第3線状トレンチゲート電極TG3および第4線状トレンチゲート電極TG4は、エミッタ電極EEと電気的に接続されている。また、第3線状トレンチゲート電極TG3は、半導体基板SSに形成された第3トレンチT3の下端部から上部にわたり埋め込まれている。同様に、第4線状トレンチゲート電極TG4は、半導体基板SSに形成された第4トレンチT4の下端部から上部にわたり埋め込まれている。
【0049】
線状アクティブセル領域LCaにおいて、半導体基板SSの表面Sa側には、N
+型エミッタ領域NEが設けられており、コンタクト溝CTの下端部には、P
+型ボディコンタクト領域PBCが設けられている。このP
+型ボディコンタクト領域PBCの下には、P
+型ラッチアップ防止領域PLPが設けられており、P
+型ラッチアップ防止領域PLPの下には、N型ホールバリア領域NHBが設けられている。なお、線状ホールコレクタセル領域LCcにおける不純物ドープ構造は、N
+型エミッタ領域NEが設けられていない以外、線状アクティブセル領域LCaと同じである。
【0050】
線状インアクティブセル領域LCiにおいて、半導体基板SSの表面Sa側には、P型ボディ領域PBの下に、例えば第1、第2、第3および第4トレンチT1,T2,T3およびT4よりも深いP型フローティング領域PFが設けられている。
【0051】
ここに示したように、本実施の形態1では、線状ホールコレクタセル領域LCcにも、線状アクティブセル領域LCaと同様に、N型ホールバリア領域NHBおよびP
+型ラッチアップ防止領域PLP等を設けているが、これらは必須ではない。しかし、これらを設けることによって、全体としての正孔の流れのバランスを保つことができる。
【0052】
半導体基板SSの表面Sa上のほぼ全面には、例えば酸化シリコン等からなる層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜IL上には、例えばアルミニウムを主要な構成要素とする金属膜からなるエミッタ電極EEが設けられており、コンタクト溝CTを介して、N
+型エミッタ領域NEおよびP
+型ボディコンタクト領域PBCと接続されている。
【0053】
エミッタ電極EE上には、さらに、例えばポリイミド系の有機絶縁膜等からなるファイナルパッシベーション膜FPFが形成されている。
【0054】
次に、
図2のB−B線に沿った断面構造について
図4を用いて説明する。
【0055】
図4に示すように、この断面においては、線状アクティブセル領域LCaにおいても、N
+型エミッタ領域NEが設けられていないので、図面上、線状アクティブセル領域LCaと線状ホールコレクタセル領域LCcとは、同一となる。その他の部分の構造は、前記
図3で説明したところと同じである。もちろん、前記
図3と同様に、第1線状トレンチゲート電極TG1および第2線状トレンチゲート電極TG2は、ゲート電極(前記
図1に示すゲート電極GE)と電気的に接続されており、第3線状トレンチゲート電極TG3および第4線状トレンチゲート電極TG4は、エミッタ電極EEと電気的に接続されているという点は相違している。
【0056】
次に、
図2のC−C線に沿った断面構造について
図5を用いて説明する。
【0057】
図5に示すように、線状ホールコレクタセル領域LCc以外の構造は、前記
図4で説明したところと同じである。線状ホールコレクタセル領域LCcの部分については、ほぼ連結トレンチゲート電極TGc(エミッタ接続部)のみが占有する構造となっている。
【0058】
なお、本実施の形態1では、「狭アクティブセル型単位セル」を有するトレンチゲートIGBTについて具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、「非狭アクティブセル型単位セル」を有するトレンチゲートIGBTにも適用できることは言うまでもない。
【0059】
また、本実施の形態1では、「交互配列方式」を有するトレンチゲートIGBTについて具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、「非交互配列方式」を有するトレンチゲートIGBTにも適用できることは言うまでもない。
【0060】
ここで、トレンチゲートIGBTの構造をより具体的に例示するために、トレンチゲートIGBTの各部(
図1〜
図5参照)の主要寸法の一例を示す。
【0061】
線状アクティブセル領域LCaの幅Waは、1.3μm程度、線状インアクティブセル領域LCiの幅Wiは、3.3μm程度である。ここで、線状アクティブセル領域LCaの幅Waは、線状インアクティブセル領域LCiの幅Wiよりも狭いことが望ましく、Wi/Waの値は、例えば2〜3の範囲が特に好適である。
【0062】
また、コンタクト溝CTの幅は、0.3μm程度である。第1、第2、第3および第4トレンチT1,T2,T3およびT4の幅は、0.7μm程度(0.8μm以下が特に好適である)、これらの深さは、3μm程度である。半導体基板SSの表面SaからのN
+型エミッタ領域NEの深さは、0.25μm程度、P型ボディ領域PB(チャネル領域)の深さは、0.8μm程度、P
+型ラッチアップ防止領域PLPの深さは、1.4μm程度、P型フローティング領域PFの深さは、4.5μm程度である。半導体基板SSの裏面SbからのN型フィールドストップ領域Nsの深さは、2.0μm程度、P
+型第1コレクタ領域PC1およびP
++型第2コレクタ領域PC2の深さは、0.25〜1.0μm程度である。
【0063】
また、半導体基板SSの厚さは、60〜70μm程度(ここでは、耐圧600V程度の例を示す)である。なお、半導体基板SSの厚さは求められる耐圧に強く依存する。従って、耐圧1,200Vでは、例えば120μm程度であり、耐圧400Vでは、例えば40μm程度である。
【0064】
なお、以下の例においても、対応する部分の寸法は、ここに示したものとほぼ同じであるので、説明は繰り返さない。
【0065】
≪トレンチゲートIGBTの効果≫
本実施の形態1によるトレンチゲートIGBTの効果について、
図6および
図7を用いて説明する。
図6は、本実施の形態1による半導体装置の活性部の一部を拡大して示す要部平面図である。
図7は、本実施の形態1による線状アクティブセル領域の一部を拡大して示す要部断面図である。
【0066】
本実施の形態1によるトレンチゲートIGBTは、半導体基板SSの裏面Sb側に形成されるコレクタ領域の一部領域に、例えば1×10
17〜1×10
18/cm
3程度の相対的に高濃度のP
++型第2コレクタ領域PC2を設けることを特徴としている。
【0067】
前記課題(1)において説明したように、負荷短絡耐量を確保するためには、コレクタ電流を必要以上に流さないように設計することが重要であるが、コレクタ電流を低減すると、オン電圧が高くなるという問題がある。しかし、P
++型第2コレクタ領域PC2を設けることにより、コレクタ電流を増加しても、Kirk効果に起因する半導体基板SSの裏面Sb側の電界強度の高まりを抑制することができるので、負荷短絡耐量を確保することができる。
【0068】
但し、前記課題(2)において説明したように、半導体基板SSの裏面Sb側全面にP
++型第2コレクタ領域PC2を設けると、スイッチングオフ時の半導体基板SSの裏面Sb側での残留キャリアが増えて、スイッチングオフ損失性能が劣化する。
【0069】
そこで、本実施の形態1によるトレンチゲートIGBTでは、半導体基板SSの裏面Sb側の一部領域、具体的には、線状アクティブセル領域LCaにP
++型第2コレクタ領域PC2を設ける。これにより、注入された電子を、このP
++型第2コレクタ領域PC2において、正孔と相殺し、スイッチングオフ損失性能の劣化を抑制する。
図6に、前記
図2にP
++型第2コレクタ領域PC2を重ねた平面図を示す。
図6中、P
++型第2コレクタ領域PC2を網掛けのハッチングで示している。
【0070】
図7に示すように、ゲート電極(前記
図1に示すゲート電極GE)と電気的に接続された線状トレンチゲート電極TGに正電圧を印加すると、線状トレンチゲート電極TGが埋め込まれたトレンチTの側面のP型ボディ領域PBにチャネル(反転層)が形成され、チャネルは深さ方向(半導体基板SSの裏面Sb方向)へ広がる。さらに、トレンチTの側面のN型ホールバリア領域NHBに電子蓄積層が形成され、電子蓄積層は深さ方向(半導体基板SSの裏面Sb方向)へ広がる。そして、N
+型エミッタ領域NEから供給された電子は、チャネルおよび電子蓄積層を流れて、半導体基板SSの裏面Sb側へ到達する。従って、半導体基板SSの表面Sa側から供給された電子は、トレンチTとN
+型エミッタ領域NEとの界面の真下およびその周辺のコレクタ電極CEへ到達しやすい。
【0071】
そこで、本実施の形態1では、多くの電子が到達すると考えられる、半導体基板SSの裏面Sb側領域にP
++型第2コレクタ領域PC2を設ける。すなわち、前記
図3〜
図6に示したように、第1線状トレンチゲート電極TG1が埋め込まれた第1トレンチT1とN
+型エミッタ領域NEとの界面の真下および第2線状トレンチゲート電極TG2が埋め込まれた第2トレンチT2とN
+型エミッタ領域NEとの界面の真下を含む半導体基板SSの裏面Sb側領域にP
++型第2コレクタ領域PC2を設ける。言い換えれば、平面視において第1線状トレンチゲート電極TG1が埋め込まれた第1トレンチT1とN
+型エミッタ領域NEとの界面および第2線状トレンチゲート電極TG2が埋め込まれた第2トレンチT2とN
+型エミッタ領域NEとの界面を含むように、P
++型第2コレクタ領域PC2を設ける。これにより、スイッチングオフ損失性能を劣化させることなく、オン電圧が低く、かつ、負荷短絡耐量が高いトレンチゲートIGBTを備える半導体装置を実現することができる。
【0072】
なお、P
++型第2コレクタ領域PC2が形成される領域は、平面視において第1線状トレンチゲート電極TG1が埋め込まれた第1トレンチT1とN
+型エミッタ領域NEとの界面およびその周辺並びに第2線状トレンチゲート電極TG2が埋め込まれた第2トレンチT2とN
+型エミッタ領域NEとの界面およびその周辺であればよい。しかし、本実施の形態1では、半導体装置の製造工程における合わせ余裕等を考慮して、線状アクティブセル領域LCaにP
++型第2コレクタ領域PC2を形成した。但し、P
++型第2コレクタ領域PC2の形成領域はこれに限定されるものではなく、その変形例については後述する。
【0073】
≪トレンチゲートIGBTの製造方法≫
本実施の形態1によるトレンチゲートIGBTの製造方法を
図8〜
図21を用いて説明する。
図8〜
図21は、本実施の形態1によるトレンチゲートIGBTの製造工程を示す要部断面図である。以下では、セル形成領域を中心に説明するが、周辺部等については、必要に応じて前記
図1を参照する。また、以下では、線状アクティブセル領域LCaおよび線状インアクティブセル領域LCiを含む第1線状単位セル領域LC1並びに線状ホールコレクタセル領域LCcおよび線状インアクティブセル領域LCiを含む第2線状単位セル領域LC2について具体的に説明する。
【0074】
まず、
図8に示すように、N
−型シリコン単結晶(例えばリン濃度2×10
14/cm
3程度)からなる半導体基板(この段階ではウェハと称する平面略円形状の半導体の薄板)SSを準備する。半導体基板SSは、例えば200φのウェハ(150φ、100φ、300φ、450φ等の各種径のウェハでもよい)である。また、ウェハの厚さは、例えば800μm程度(好適な範囲としては、450〜1,000μm程度)である。ここでは、例えばFZ(Floating Zone)法によるウェハが最も好適であるが、CZ(Czochralski)法によるウェハでもよい。
【0075】
次に、半導体基板SSの表面Sa上の全面に、N型ホールバリア領域導入用のレジスト膜(図示は省略)を塗布等により形成し、通常のリソグラフィにより、パターニングする。パターニングされたレジスト膜をマスクとして、例えばイオン注入により、半導体基板SSの表面SaにN型不純物を導入することによって、N型ホールバリア領域NHBを形成する。このときのイオン注入条件としては、例えばイオン種をリン、ドーズ量を6×10
12/cm
2程度、注入エネルギーを80KeV程度としたイオン注入条件を、好適なものとして例示することができる。その後、アッシング等により、不要になったレジスト膜を除去する。
【0076】
次に、半導体基板SSの表面Sa上の全面に、P型フローティング領域導入用のレジスト膜(図示は省略)を塗布等により形成し、通常のリソグラフィにより、パターニングする。パターニングされたレジスト膜をマスクとして、例えばイオン注入により、半導体基板SSの表面SaにP型不純物を導入することによって、P型フローティング領域PFを形成する。このときのイオン注入条件としては、例えばイオン種をボロン、ドーズ量を3.5×10
13/cm
2程度、注入エネルギーを75KeV程度としたイオン注入条件を、好適なものとして例示することができる。その後、アッシング等により、不要になったレジスト膜を除去する。なお、P型フローティング領域PFの導入の際に、例えばセル周辺接合領域およびフローティングフィールドリングも同時に導入する。
【0077】
次に、半導体基板SSの表面Sa上の全面に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)等により、例えば酸化シリコンからなるハードマスク膜HMを成膜する。ハードマスク膜HMの厚さは、例えば450nm程度である。
【0078】
次に、
図9に示すように、半導体基板SSの表面Sa上の全面に、ハードマスク膜加工用のレジスト膜(図示は省略)を塗布等により形成し、通常のリソグラフィにより、パターニングする。パターニングされたレジスト膜をマスクとして、例えばドライエッチングにより、ハードマスク膜HMをパターニングする。その後、アッシング等により、不要になったレジスト膜を除去する。
【0079】
次に、
図10に示すように、パターニングされたハードマスク膜HMを用いて、例えば異方性ドライエッチングにより、第1、第2、第3および第4トレンチT1,T2,T3およびT4を形成する。この異方性ドライエッチングのガス系としては、例えばCl
2/O
2系ガスを好適なものとして例示することができる。
【0080】
その後、例えばフッ酸系のエッチング液等を用いたウエットエッチングにより、不要になったハードマスク膜HMを除去する。
【0081】
次に、
図11に示すように、P型フローティング領域PFおよびN型ホールバリア領域NHBに対する引き延ばし拡散(例えば1,200℃、30分程度)を実施する。これにより、P型フローティング領域PFの深さは、第1、第2、第3および第4線状トレンチゲート電極TG1,TG2,TG3およびTG4が形成される第1、第2、第3および第4トレンチT1,T2,T3およびT4の下端部よりも深く形成され、その下端部をカバーする。半導体基板SSのうち、P型フローティング領域PFおよびN型ホールバリア領域NHBが形成されていない領域がN
−型ドリフト領域NDとなる。
【0082】
次に、例えば熱酸化等により、半導体基板SSの表面Sa上並びに第1、第2、第3および第4トレンチT1,T2,T3およびT4の内壁の全面に、ゲート絶縁膜GIを形成する。ゲート絶縁膜GIの厚さは、例えば0.12μm程度である。
【0083】
次に、
図12に示すように、半導体基板SSの表面Sa上並びに第1、第2、第3および第4トレンチT1,T2,T3およびT4の内部に、例えばCVD等により、リンがドープされた多結晶シリコン(Doped Poly-Silicon)膜DPSを成膜する。多結晶シリコン膜DPSの厚さは、例えば0.6μm程度である。
【0084】
次に、例えばドライエッチングにより、多結晶シリコン膜DPSをエッチバックする。これにより、第1トレンチT1の内部に第1線状トレンチゲート電極TG1、第2トレンチT2の内部に第2線状トレンチゲート電極TG2、第3トレンチT3の内部に第3線状トレンチゲート電極TG3および第4トレンチT4の内部に第4線状トレンチゲート電極TG4を形成する。このエッチングバックのガス系としては、例えばSF
6等を好適なものとして例示することができる。
【0085】
次に、
図13に示すように、半導体基板SSの表面Sa上の全面に、P型ボディ領域導入用のレジスト膜(図示は省略)を塗布等により形成し、通常のリソグラフィにより、パターニングする。パターニングされたレジスト膜をマスクとして、例えばイオン注入により、セル形成領域CRの全面およびその他必要な部分にP型不純物を導入することによって、P型ボディ領域PBを形成する。このときのイオン注入条件としては、例えばイオン種をボロン、ドーズ量を3×10
13/cm
2程度、注入エネルギーを75KeV程度としたイオン注入条件を、好適なものとして例示することができる。その後、アッシング等により、不要になったレジスト膜を除去する。
【0086】
さらに、半導体基板SSの表面Sa上の全面に、N
+型エミッタ領域導入用のレジスト膜(図示は省略)を塗布等により形成し、通常のリソグラフィにより、パターニングする。パターニングされたレジスト膜をマスクとして、例えばイオン注入により、線状アクティブセル領域LCaのP型ボディ領域PBの上部表面の全面にN型不純物を導入することによって、N
+型エミッタ領域NEを形成する。このときのイオン注入条件としては、例えばイオン種を砒素、ドーズ量を5×10
15/cm
2程度、注入エネルギーを80KeV程度としたイオン注入条件を、好適なものとして例示することができる。その後、アッシング等により、不要になったレジスト膜を除去する。
【0087】
次に、
図14に示すように、半導体基板SSの表面Sa上の全面に、例えばCVD等により、層間絶縁膜ILとして、例えばPSG(Phosphsilicate Glass)膜を成膜する。層間絶縁膜ILの厚さは、例えば0.6μm程度である。この層間絶縁膜ILの材料としては、PSG膜のほか、BPSG(Borophosphsilicate Glass)膜、NSG(Non-doped Silicate Glass)膜、SOG(Spin-On-Glass)膜、またはこれらの複合膜等を好適なものとして例示することができる。
【0088】
次に、
図15に示すように、層間絶縁膜IL上の全面に、コンタクト溝形成用のレジスト膜(図示は省略)を塗布等により形成し、通常のリソグラフィにより、パターニングする。パターニングされたレジスト膜をマスクとして、例えば異方性ドライエッチング等により、コンタクト溝CTを形成する。この異方性ドライエッチングのガス系としては、例えばAr/CHF
3/CF
4系ガス等を好適なものとして例示することができる。その後、アッシング等により、不要になったレジスト膜を除去する。
【0089】
次に、例えば異方性ドライエッチングにより、コンタクト溝CT(またはコンタクトホール)を半導体基板SS内に延長する。この異方性ドライエッチングのガス系としては、例えばCl
2/O
2系ガスを好適なものとして例示することができる。
【0090】
次に、
図16に示すように、例えばコンタクト溝CTを通して、P型不純物をイオン注入することにより、P
+型ボディコンタクト領域PBCを形成する。このときのイオン注入条件としては、例えばイオン種をフッ化ボロン(BF
2)、ドーズ量を5×10
15/cm
2程度、注入エネルギーを80KeV程度としたイオン注入条件を、好適なものとして例示することができる。
【0091】
同様に、例えばコンタクト溝CTを通して、P型不純物をイオン注入することにより、P
+型ラッチアップ防止領域PLPを形成する。このときのイオン注入条件としては、例えばイオン種をボロン、ドーズ量を5×10
15/cm
2程度、注入エネルギーを80KeV程度としたイオン注入条件を、好適なものとして例示することができる。
【0092】
次に、
図17に示すように、エミッタ電極EEを形成する。具体的には、例えば以下のような手順で実行する。まず、例えばスパッタリングにより、半導体基板SSの表面Sa上の全面にバリアメタル膜としてチタンタングステン(TiW)膜を形成する。チタンタングステン膜の厚さは、例えば0.2μm程度である。チタンタングステン膜中のチタンの多くの部分は、後の熱処理によって、シリコン界面に移動してシリサイドを形成し、コンタクト特性の改善に寄与するが、これらの過程は煩雑であるので図面には表示しない。
【0093】
次に、例えば600℃、10分程度のシリサイドアニールを窒素雰囲気において実施した後、バリアメタル膜上の全面に、コンタクト溝CTを埋め込むように、例えばスパッタリングにより、アルミニウム系金属膜(例えば数%シリコン添加、残りはアルミニウム)を形成する。アルミニウム系金属膜の厚さは、例えば5μm程度である。
【0094】
次に、半導体基板SSの表面Sa上の全面に、エミッタ電極形成用のレジスト膜(図示は省略)を塗布等により形成し、通常のリソグラフィにより、パターニングする。パターニングされたレジスト膜をマスクとして、例えばドライエッチングにより、アルミニウム系金属膜およびバリアメタル膜からなるエミッタ電極EEをパターニングする。このドライエッチングのガス系としては、例えばCl
2/BCl
3系ガス等を好適なものとして例示することができる。その後、アッシング等により、不要になったレジスト膜を除去する。
【0095】
次に、エミッタ電極EE上に、例えばポリイミドを主要な成分とする有機膜等からなるファイナルパッシベーション膜FPFを形成する。ファイナルパッシベーション膜FPFの厚さは、例えば2.5μm程度である。
【0096】
次に、半導体基板SSの表面Sa上の全面に、開口部形成用のレジスト膜(図示は省略)を塗布等により形成し、通常のリソグラフィにより、パターニングする。パターニングされたレジスト膜をマスクとして、例えばドライエッチングにより、ファイナルパッシベーション膜FPFをパターニングして、前記
図1に示すエミッタパッドEP等を開口する。その後、アッシング等により、不要になったレジスト膜を除去する。
【0097】
次に、
図18に示すように、半導体基板SSの裏面Sbに対して、バックグラインディング処理を施すことによって研削し、例えば800μm程度の厚さを、必要に応じて、例えば30〜200μm程度に薄膜化する。例えば耐圧が600V程度とすると、最終厚さは、60μm程度であり、耐圧が1,200V程度とすると、最終厚さは120μm程度であり、耐圧が1,800V程度とすると、最終厚さは180μm程度である。また、必要に応じて、裏面Sbのダメージ除去のためのケミカルエッチング等も実施する。
【0098】
次に、半導体基板SSの裏面Sbの全面に、例えばイオン注入により、N型不純物を導入することによって、N型フィールドストップ領域Nsを形成する。このときのイオン注入条件としては、例えばイオン種をリン、ドーズ量を5×10
12/cm
2程度、注入エネルギーを350KeV程度としたイオン注入条件を、好適なものとして例示することができる。
【0099】
次に、
図19に示すように、半導体基板SSの裏面Sbの全面に、例えばイオン注入により、P型不純物を導入することによって、P
+型第1コレクタ領域PC1を形成する。このときのイオン注入条件としては、例えばイオン種をボロン、ドーズ量を7×10
12/cm
2程度、注入エネルギーを40KeV程度としたイオン注入条件を、好適なものとして例示することができる。
【0100】
次に、
図20に示すように、半導体基板SSの裏面Sb上の全面に、P
++型第2コレクタ領域導入用のレジスト膜R1を塗布等により形成し、通常のリソグラフィにより、パターニングする。パターニングされたレジスト膜R1をマスクとして、例えばイオン注入により、半導体基板SSの裏面SbにP型不純物を導入することによって、P
++型第2コレクタ領域PC2を形成する。このときのイオン注入条件としては、例えばイオン種をボロン、ドーズ量を5×10
13/cm
2程度、注入エネルギーを40KeV程度としたイオン注入条件を、好適なものとして例示することができる。その後、アッシング等により、不要になったレジスト膜R1を除去する。また、必要に応じて、不純物活性化のために、半導体基板SSの裏面Sbに対して、レーザアニール等を実施する。ここで、P
++型第2コレクタ領域PC2を線状アクティブセル領域LCaに形成する(前記
図6等参照)。
【0101】
次に、
図21に示すように、例えばスパッタリングにより、アルミニウムシリコン(AlSi)、チタン、ニッケルおよび金を順次積層して、半導体基板SSの裏面Sb上の全面に、コレクタ電極CEを形成する。その後、ダイシング等により、半導体基板SSのチップ領域に分割し、必要に応じて、パッケージに封止することにより、トレンチゲートIGBTを含む半導体装置が完成する。
【0102】
このように、本実施の形態1によるトレンチゲートIGBTでは、半導体基板SSの裏面Sb側に形成されるコレクタ領域を、相対的に低濃度のP
+型第1コレクタ領域PC1と相対的に高濃度のP
++型第2コレクタ領域PC2とで構成する。そして、P
++型第2コレクタ領域PC2を、平面視において第1線状トレンチゲート電極TG1が埋め込まれた第1トレンチT1とN
+型エミッタ領域NEとの境界および第2線状トレンチゲート電極TG2が埋め込まれた第2トレンチT2とN
+型エミッタ領域NEとの境界を含む領域に設けている。これにより、スイッチングオフ損失性能を劣化させることなく、オン電圧が低く、かつ、負荷短絡耐量が高いトレンチゲートIGBTを備える半導体装置を実現することができる。
【0103】
(変形例1)
本実施の形態1の変形例1によるトレンチゲートIGBTを含む半導体装置について
図22を用いて説明する。
図22は、本実施の形態1の変形例1による半導体装置の活性部の一部を拡大して示す要部平面図であり、前記
図2にP
++型第2コレクタ領域を重ねた平面図である。
図22中、P
++型第2コレクタ領域を網掛けのハッチングで示している。
【0104】
前述の実施の形態1と相違する点は、P
++型第2コレクタ領域PC2の広さである。すなわち、前述の実施の形態1では、P
++型第2コレクタ領域PC2を線状アクティブセル領域LCaに設けた。
【0105】
しかしながら、変形例1では、
図22に示すように、P
++型第2コレクタ領域PC2を、線状インアクティブセル領域LCiへ広げている。例えば中央の線状アクティブセル領域LCaとこれを囲む一対の半幅の線状インアクティブセル領域LCiとから構成される第1線状単位セル領域LC1に、P
++型第2コレクタ領域PC2を設けている。
【0106】
前記
図7に示したように、N
+型エミッタ領域NEから供給された電子は、チャネルおよび電子蓄積層を流れて、半導体基板SSの裏面Sb側へ到達する。従って、半導体基板SSの表面Sa側から供給された電子の多くは、第1線状トレンチゲート電極TG1が埋め込まれた第1トレンチT1とN型ホールバリア領域NHBとの界面の真下およびその周辺並びに第2線状トレンチゲート電極TG2が埋め込まれた第2トレンチT2とN型ホールバリア領域NHBとの界面の真下およびその周辺のコレクタ電極CEへ到達する。しかし、一部の電子はN
−型ドリフト領域NDを移動する際に、半導体基板SSの裏面Sbの法線方向に角度を有して徐々に拡散する。
【0107】
そこで、変形例1では、N
+型エミッタ領域NEから供給された電子をP
++型第2コレクタ領域PC2の正孔で相殺する実効性を高めるために、前述の実施の形態1よりもP
++型第2コレクタ領域PC2を広く設けている。但し、前述の実施の形態1よりもP
++型第2コレクタ領域PC2を広く設けたことにより、前述の実施の形態1よりもスイッチングオフ損失性能は劣化すると考えられる。
【0108】
(変形例2)
本実施の形態1の変形例2によるトレンチゲートIGBTを含む半導体装置について
図23を用いて説明する。
図23は、本実施の形態1の変形例2による半導体装置の活性部の一部を拡大して示す要部平面図であり、前記
図2にP
++型第2コレクタ領域を重ねた平面図である。
図23中、P
++型第2コレクタ領域を網掛けのハッチングで示している。
【0109】
前述の実施の形態1と相違する点は、P
++型第2コレクタ領域PC2の広さである。すなわち、前述の実施の形態1では、P
++型第2コレクタ領域PC2を線状アクティブセル領域LCaに設けた。
【0110】
しかしながら、変形例2では、
図23に示すように、P
++型第2コレクタ領域PC2を、平面視においてN
+型エミッタ領域NEおよびその周辺のみに設けている。
【0111】
前記
図7に示したように、N
+型エミッタ領域NEから供給された電子は、チャネルおよび電子蓄積層を流れて、半導体基板SSの裏面Sb側へ到達する。従って、半導体基板SSの表面Sa側から供給された電子の多くは、第1線状トレンチゲート電極TG1が埋め込まれた第1トレンチT1とN型ホールバリア領域NHBとの界面の真下およびその周辺並びに第2線状トレンチゲート電極TG2が埋め込まれた第2トレンチT2とN型ホールバリア領域NHBとの界面の真下およびその周辺のコレクタ電極CEへ到達する。
【0112】
そこで、変形例2では、N
+型エミッタ領域NEから供給された電子の多くが到達すると考えられる領域のみにP
++型第2コレクタ領域PC2を設ける。但し、前述の実施の形態1よりもP
++型第2コレクタ領域PC2を狭くしたことにより、スイッチングオフ損失性能は向上し、Kirk効果により負荷短絡耐量は低下すると考えられる。
【0113】
(変形例3)
本実施の形態1の変形例3によるトレンチゲートIGBTを含む半導体装置について
図24および
図25を用いて説明する。
図24(a)および(b)はそれぞれ、本実施の形態1の変形例3による半導体装置を示す表面側および裏面側の要部平面図であり、
図24(a)は、前記
図1にP
+型第1コレクタ領域を重ねた平面図、
図24(b)は、半導体基板を裏面側からコレクタ電極を透過して見た平面図である。
図24(a)および(b)中、P
+型第1コレクタ領域を網掛けのハッチングで示している。
図25は、本実施の形態1の変形例3による半導体装置の一部を拡大して示す要部断面の概略図である。
【0114】
前述の実施の形態1と相違する点は、P
+型第1コレクタ領域PC1の広さおよびP
++型第2コレクタ領域PC2の有無である。すなわち、前述の実施の形態1では、半導体基板SSの裏面Sb側全面に、P
+型第1コレクタ領域PC1を形成し、P
++型第2コレクタ領域PC2を線状アクティブセル領域LCaに設けた。
【0115】
しかしながら、変形例3では、
図24(a)に示すように、P
++型第2コレクタ領域PC2は形成せず、P
+型第1コレクタ領域PC1を、平面視においてエミッタ電極EEおよびゲート電極GEと重なる領域に形成する。すなわち、
図25に示すように、セル形成領域の半導体基板SSの裏面Sb側のみにP
+型第1コレクタ領域PC1を形成し、それ以外にはP
+型第1コレクタ領域PC1は形成しない。従って、
図24(b)に示すように、セル形成領域の半導体基板SSの裏面SbにはP
+型第1コレクタ領域PC1が露出し、セル形成領域以外の半導体基板SSの裏面SbにはN型フィールドストップ領域Nsが露出することになる。
【0116】
前記
図7に示したように、N
+型エミッタ領域NEから供給された電子は、チャネルおよび電子蓄積層を流れて、半導体基板SSの裏面Sb側へ到達する。従って、半導体基板SSの表面Sa側から供給された電子は、セル形成領域のコレクタ電極CEへ到達する。一方、半導体チップSCの外周部からは電子は供給されないため、不要に半導体基板SSの裏面SbにPNP構造を作り、ラッチアップの懸念を残す必要はない。
【0117】
そこで、変形例3では、セル形成領域の半導体基板SSの裏面Sb側のみにP
+型第1コレクタ領域PC1を設ける。但し、前述の実施の形態1よりもスイッチングオフ損失性能は劣化すると考えられる。なお、P
+型第1コレクタ領域PC1の濃度が低いと、Kirk効果により負荷短絡耐量が低下する懸念があることから、変形例3では、前述の実施の形態1よりもP
+型第1コレクタ領域PC1の濃度を高くしてもよい。
【0118】
(変形例4)
本実施の形態1の変形例4によるトレンチゲートIGBTを含む半導体装置について
図26および
図27を用いて説明する。
図26は、本実施の形態1の変形例4による半導体装置を示す表面側の要部平面図であり、前記
図1にP
+型第1コレクタ領域を重ねた平面図である。
図26中、P
+型第1コレクタ領域を網掛けのハッチングで示している。
図27は、本実施の形態1の変形例4による半導体装置の活性部の一部を拡大して示す要部平面図であり、前記
図2にP
++型第2コレクタ領域を重ねた平面図である。
図27中、P
++型第2コレクタ領域を網掛けのハッチングで示している。
【0119】
前述の実施の形態1と相違する点は、P
+型第1コレクタ領域PC1の広さである。すなわち、前述の実施の形態1では、半導体基板SSの裏面Sb側全面に、P
+型第1コレクタ領域PC1を形成し、P
++型第2コレクタ領域PC2を線状アクティブセル領域LCaに設けた。
【0120】
しかしながら、変形例4では、
図26に示すように、P
+型第1コレクタ領域PC1を、平面視においてエミッタ電極EEおよびゲート電極GEと重なる領域に形成する。そして、
図27に示すように、P
++型第2コレクタ領域PC2を、前述の実施の形態1と同様に、線状アクティブセル領域LCaに設けている。従って、前記
図24(b)と同様に、セル形成領域の半導体基板SSの裏面SbにはP
+型第1コレクタ領域PC1が露出し、セル形成領域以外の半導体基板SSの裏面SbにはN型フィールドストップ領域Nsが露出することになる。しかし、P
+型第1コレクタ領域PC1内には、複数のP
++型第2コレクタ領域PC2が露出することになる。
【0121】
前記
図7に示したように、N
+型エミッタ領域NEから供給された電子は、チャネルおよび電子蓄積層を流れて、半導体基板SSの裏面Sb側へ到達する。従って、半導体基板SSの表面Sa側から供給された電子は、セル形成領域のコレクタ電極CEへ到達する。一方、半導体チップSCの外周部からは電子は供給されないため、不要に半導体基板SSの裏面SbにPNP構造を作り、ラッチアップの懸念を残す必要はない。
【0122】
そこで、変形例4では、セル形成領域の半導体基板SSの裏面Sb側のみにP
+型第1コレクタ領域PC1およびP
++型第2コレクタ領域PC2を設ける。
【0123】
(実施の形態2)
本実施の形態2によるトレンチゲートIGBTを
図28および
図29を用いて説明する。
図28は、本実施の形態2による半導体装置の活性部の一部を拡大して示す要部平面図である。
図29は、
図28に示すD−D線に沿った要部断面図である。
【0124】
ここで説明するトレンチゲートIGBTは、互いに間隔を空けて3つのトレンチゲート電極が配列し、中央に配置されたトレンチゲート電極が、ゲート電極と電気的に接続され、両端に配置された2つのトレンチゲート電極の各々が、エミッタ電極と電気的に接続された、所謂EGE型のトレンチゲートIGBTである。前述の実施の形態1によるトレンチゲートIGBTと比較すると、線状アクティブセル領域LCa、線状インアクティブセル領域LCiおよび線状ホールコレクタセル領域LCcの構造が相違する。従って、以下の説明では原則として、前述の実施の形態1によるトレンチゲートIGBTと異なる部分のみを説明する。
【0125】
図28に示すように、本実施の形態2による線状単位セル領域LCは、線状ハイブリッドセル領域LChと、その両側の半幅の線状インアクティブセル領域LCiとから構成されており、線状ハイブリッドセル領域LChの幅Whは、線状インアクティブセル領域LCiの幅Wiよりも狭い。
【0126】
線状ハイブリッドセル領域LChは、相互に面対象である第1線状ハイブリッドサブセル領域LCh1と第2線状ハイブリッドサブセル領域LCh2とから構成されている。第1線状ハイブリッドサブセル領域LCh1は、前記
図2に示した線状アクティブセル領域LCaの右ハーフセルと線状ホールコレクタセル領域LCcの左ハーフセルとを一体化したハイブリッドセルである。一方、第2線状ハイブリッドサブセル領域LCh2は、前記
図2に示した線状アクティブセル領域LCaの左ハーフセルと線状ホールコレクタセル領域LCcの右ハーフセルとを一体化したハイブリッドセルである。
【0127】
すなわち、線状ハイブリッドセル領域LChは、中央に、ゲート電極(前記
図1に示すゲート電極GE)と電気的に接続された第1線状トレンチゲート電極TG1がくるように、第1線状ハイブリッドサブセル領域LCh1と第2線状ハイブリッドサブセル領域LCh2とを組み合わせたものということができる。従って、本実施の形態2では、第1線状ハイブリッドサブセル領域LCh1の幅Wh1と第2線状ハイブリッドサブセル領域LCh2の幅Wh2とは、同一または実質的に同一である。
【0128】
また、エミッタ電極EEと電気的に接続される第2線状トレンチゲート電極TG2および第3線状トレンチゲート電極TG3が、線状インアクティブセル領域LCiを挟んでその両側に分かれている。従って、相互接続は、端部トレンチゲート電極TGpに加えて、第2線状トレンチゲート電極TG2および第3線状トレンチゲート電極TG3と同層の多結晶シリコン膜からなる接続用ゲート引き出しパッド(エミッタ接続部)TGxを設けることによって実現している。そして、第2線状トレンチゲート電極TG2および第3線状トレンチゲート電極TG3をエミッタ電極EEと電気的に接続するコンタクト溝CTが、接続用ゲート引き出しパッド(エミッタ接続部)TGxに平面的に内包されている。このような構造とすることによって、接続の信頼性をさらに向上させることができる。
【0129】
次に、
図28のD−D線に沿った断面構造について
図29を用いて説明する。
【0130】
図29に示すように、半導体基板SSの主要部は、N
−型ドリフト領域NDが占めており、半導体基板SSの裏面Sb側には、N
−型ドリフト領域NDに接してN型フィールドストップ領域Nsが設けられている。N型フィールドストップ領域Nsの不純物濃度は、例えば1×10
15〜1×10
17/cm
3程度である。
【0131】
さらに、N型フィールドストップ領域NsのN
−型ドリフト領域NDと反対側に、N型フィールドストップ領域Nsに接してP
+型第1コレクタ領域PC1およびP
++型第2コレクタ領域PC2が設けられている。そして、P
++型第2コレクタ領域PC2は、第1線状トレンチゲート電極TG1が埋め込まれた第1トレンチT1を挟んだ第1線状ハイブリッドサブセル領域LCh1の半幅と第2線状ハイブリッドセル領域LCh2の半幅に設けた。P
++型第2コレクタ領域PC2の不純物濃度は、P
+型第1コレクタ領域PC1の不純物濃度よりも高く、P
+型第1コレクタ領域PC1の不純物濃度は、例えば1×10
16〜1×10
17/cm
3程度であり、P
++型第2コレクタ領域PC2の不純物濃度は、例えば1×10
17〜1×10
18/cm
3程度である。
【0132】
さらに、半導体基板SSの裏面Sb上には、P
+型第1コレクタ領域PC1およびP
++型第2コレクタ領域PC2と電気的に接続するコレクタ電極CEが設けられている。
【0133】
半導体基板SSの表面Sa側には、そのほぼ全面(セル形成領域CRのほぼ全面)に、P型ボディ領域PBが設けられている。
【0134】
第1線状ハイブリッドサブセル領域LCh1と第2線状ハイブリッドサブセル領域LCh2との境界部における半導体基板SSの表面Sa側には、第1トレンチT1が設けられており、その内部には、ゲート絶縁膜GIを介して、第1線状トレンチゲート電極TG1が設けられている。
【0135】
第1線状トレンチゲート電極TG1は、ゲート電極(前記
図1に示すゲート電極GE)と電気的に接続されている。また、第1線状トレンチゲート電極TG1は、半導体基板SSに形成された第1トレンチT1の下端部から上部にわたり埋め込まれている。
【0136】
一方、線状ハイブリッドセル領域LChと線状インアクティブセル領域LCiとの境界部における半導体基板SSの表面Sa側には、第2トレンチT2および第3トレンチT3が設けられており、それぞれの内部には、ゲート絶縁膜GIを介して、第2線状トレンチゲート電極TG2および第3線状トレンチゲート電極TG3が設けられている。
【0137】
第2線状トレンチゲート電極TG2および第3線状トレンチゲート電極TG3は、エミッタ電極EEと電気的に接続されている。また、第2線状トレンチゲート電極TG2は、半導体基板SSに形成された第2トレンチT2の下端部から上部にわたり埋め込まれている。同様に、第3線状トレンチゲート電極TG3は、半導体基板SSに形成された第3トレンチT3の下端部から上部にわたり埋め込まれている。
【0138】
第1線状ハイブリッドサブセル領域LCh1および第2線状ハイブリッドサブセル領域LCh2において、半導体基板SSの表面Sa側には、第1線状トレンチゲート電極TG1側にのみN
+型エミッタ領域NEが設けられており、コンタクト溝CTの下端部には、P
+型ボディコンタクト領域PBCが設けられている。このP
+型ボディコンタクト領域PBCの下には、P
+型ラッチアップ防止領域PLPが設けられており、P
+型ラッチアップ防止領域PLPの下には、N型ホールバリア領域NHBが設けられている。
【0139】
線状インアクティブセル領域LCiにおいて、半導体基板SSの表面Sa側には、P型ボディ領域PBの下に、例えば第1、第2および第3トレンチT1,T2およびT3よりも深いP型フローティング領域PFが設けられている。
【0140】
半導体基板SSの表面Sa上のほぼ全面には、例えば酸化シリコン等からなる層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜IL上には、例えばアルミニウムを主要な構成要素とする金属膜からなるエミッタ電極EEが設けられており、コンタクト溝CTを介して、N
+型エミッタ領域NEおよびP
+型ボディコンタクト領域PBCと接続されている。
【0141】
エミッタ電極EE上には、さらに、例えばポリイミド系の有機絶縁膜等からなるファイナルパッシベーション膜FPFが形成されている。
【0142】
前述の実施の形態1において説明したように(前記
図7参照)、ゲート電極と電気的に接続された第1線状トレンチゲート電極TG1に正電圧を印加すると、第1線状トレンチゲート電極TG1が埋め込まれた第1トレンチT1の側面のP型ボディ領域PBにチャネル(反転層)が形成され、チャネルは深さ方向(半導体基板SSの裏面Sb方向)へ広がる。さらに、第1トレンチT1の側面のN型ホールバリア領域NHBに電子蓄積層が形成され、電子蓄積層は深さ方向(半導体基板SSの裏面Sb方向)へ広がる。そして、N
+型エミッタ領域NEから供給された電子は、チャネルおよび電子蓄積層を流れて、半導体基板SSの裏面Sb側へ到達する。従って、半導体基板SSの表面Sa側から供給された電子は、第1トレンチT1とN型ホールバリア領域NHBとの界面の真下およびその周辺のコレクタ電極CEへ到達しやすい。
【0143】
そこで、本実施の形態2では、第1線状トレンチゲート電極TG1が埋め込まれた第1トレンチT1とN型ホールバリア領域NHBとの界面の真下を含む半導体基板SSの裏面Sb側領域にP
++型第2コレクタ領域PC2を設ける。言い換えれば、平面視において第1線状トレンチゲート電極TG1が埋め込まれた第1トレンチT1とN
+型エミッタ領域NEとの界面を含むように、P
++型第2コレクタ領域PC2を設ける。これにより、前述の実施の形態1とほぼ同様の効果を得ることができて、スイッチングオフ損失性能を劣化させることなく、オン電圧が低く、かつ、負荷短絡耐量が高いトレンチゲートIGBTを備える半導体装置を実現することができる。
【0144】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。