特許第6633879号(P6633879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633879
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】光硬化性人工爪組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20200109BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20200109BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20200109BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20200109BHJP
   A61Q 3/02 20060101ALI20200109BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20200109BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20200109BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   A61K8/49
   A61K8/87
   A61K8/37
   A61K8/81
   A61Q3/02
   A61K8/55
   C08F2/50
   C08F290/06
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-189374(P2015-189374)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-66042(P2017-66042A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一生
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103751036(CN,A)
【文献】 特開2018−123057(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/194730(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/194731(WO,A1)
【文献】 特開昭62−199608(JP,A)
【文献】 特開2015−071719(JP,A)
【文献】 特開2010−105967(JP,A)
【文献】 特開2013−043853(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/047565(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロイルモルフォリンと、
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー以外の多官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物と、
を含有する光硬化性人工爪組成物。
【請求項2】
前記多官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物が、イソプロピリデンジフェニルビス(メタクリル酸オキシヒドロキシプロピル)である、請求項1に記載の光硬化性人工爪組成物。
【請求項3】
アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤を含有する請求項1又は2に記載の光硬化性人工爪組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光硬化性人工爪組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
手や足の自爪に装飾を施したり、人工爪を接着してこれに装飾を施すというネイルアートの人気が高まっている。また、装飾や、外力による爪の割れ・剥がれを防止するための補強の目的で、いわゆるマニキュア、ペディキュア、スカルプチュアと呼ばれる樹脂含有の材料を爪に塗布することもなされている。
【0003】
ここで、装飾又は補強のために使用される爪装飾材料としては、ニトロセルロース系のラッカーを有機溶剤に溶解し、これに各種色調の顔料を加えたものがある。これらは、爪や人工爪に塗布した後、有機溶剤を揮発させて、光沢に優れた被膜を形成するものである。そして、この被膜はアセトン等の有機溶剤を用いて容易に拭き取ることができる。
しかし、この種の爪装飾材料は、有機溶剤を含むため、使用時に揮発する有機溶剤を、使用者が直接吸引する恐れがある。また、形成される被膜は強靭な被膜とはなり得ず、擦れ、衝撃等の刺激により容易に剥離してしまう恐れがある。
【0004】
特に最近、ウレタンアクリレート系オリゴマーとアクリル系モノマーを含むジェル状の爪被覆材料を爪に塗布し、紫外線を照射して硬化させる、ジェルネイルと呼ばれる光硬化性人工爪組成物が注目を集めている。
これらは、ラジカル重合反応により、架橋した高分子被膜を形成するため、爪から剥がれにくい強靱な被膜を形成できるとされている。
しかしながら、実際には、爪の表面にヤスリ等でサンディングを行い、爪の表面に細かい凹凸を形成させることが必要であって、爪の表面に設けた凹凸に光硬化性人工爪組成物が馴染むことにより、アンカー効果を発揮して爪表面に硬化した光硬化性人工爪組成物が密着していた。そして、このときには、爪表面に凹凸を設けることを必要とするので、使用者自身の爪を傷つけることとなり、光硬化性人工爪組成物を取り除いた後の使用者自身の爪が薄く、ボロボロになることがある。
このような人工爪組成物として、特許文献1に記載されているように、該組成物中に紫外線の照射により重合可能なポリウレタンアクリレートやモノマー成分を含有する、爪への密着性や除去性に優れた人工爪組成物は公知である。
また、特許文献2に記載されているように、人体に安全なUVAにより短時間で十分に硬化させることができる人工爪組成物も公知である。
しかし、これらの組成物の使用では、未だ硬化性が不十分であり、皮膚への刺激性を低くすると共に、未硬化のモノマーを拭き取ることが必要で、艶と硬度を十分に有する人工爪の塗膜を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−229725号公報
【特許文献2】特開2010−105967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記各特許文献には光硬化性の人工爪組成物が記載されているものの、未硬化のモノマーの拭き取り性を向上させるための人工爪組成物ではなく、同時に、艶と硬度を十分に有し、皮膚への刺激性を低くすることまでを意図するものではない。
本発明は光硬化性人工爪組成物において、可視光により硬化させることによっても十分な硬化性を有し、皮膚への刺激性が低く、かつ、硬化後において未硬化のモノマー等の拭き取り性を向上させることによって、艶がある塗膜を得ると共に、使用者自身の爪表面に対してサンディングを行う必要がなく、かつ爪への密着性が高く、その表面にシワが発生することを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の組成物からなる光硬化性人工爪組成物とすることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には以下の通りである。
1.アクリロイルモルフォリンを含有する光硬化性人工爪組成物。
2.ウレタンアクリレートを含有する1に記載の光硬化性人工爪組成物。
3.アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤を含有する1又は2に記載の光硬化性人工爪組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有機溶媒を使用することなく、装飾や補強の目的でも爪表面を長期にわたり、確実に被覆することができる。
そして、硬度を十分に有し、皮膚への刺激性を低くしながら、硬化後における未硬化のモノマー等の拭き取り性を向上させることによって、艶がある塗膜を得ると共に、使用者自身の爪表面に対してサンディングを行う必要がなく、かつ爪への密着性が高く、その表面にシワが発生することを防止できるという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の光硬化性人工爪組成物は、いわゆる一般のマニキュアやペディキュア、ジェルネイルのように爪の表面に、ベースコート、中間層であるカラーコート層、あるいはトップコート層として被覆を行うための組成物であり、使用者自身の爪の表面をサンディングする等して凹凸がある表面とする必要はなく、従来の紫外線等により硬化されるラジカル重合性のマニキュア等と同様の設備、紫外線硬化用の設備を用いて爪表面を被覆するものである。さらに、硬化後の表面にシワが発生することを防止できる。
本発明の光硬化性人工爪組成物は特にジェルネイルとして使用することができる。その中でも使用者の爪に直接塗布されるベースコート、該ベースコートの上に塗布されるカラーコート、さらにその上に塗布されるトップコートのいずれにも使用されるものである。
ベースコートは一般的には透明又は僅かに黄色、場合により微量の紫や青の色素を配合して、経時劣化による色調の変化を防止することがある。
カラーコートはソリッドカラーやラメ調、金属光沢調、暗色や明色等多彩に着色されるコートである。
トップコートは、ベースコートと同様に、透明又は僅かに黄色、場合により微量の紫や青の色素を配合して、経時劣化による色調の変化を防止することがある。最上層であるため、ジェルネイルの艶を発揮させる作用を有する。
硬化後には酸素による重合阻害等を原因として、未重合の光重合性成分が本発明の人工爪組成物中に存在するが、本発明の人工爪の組成によれば、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチルやアセトン等の溶剤、特にエタノールを用いて拭き取り、艶を出すことができる。
いずれの層に関しても硬化後少なくとも2週間、欠けることなく、剥がれず、また下層や使用者の爪に対して浮きが発生しない。
【0010】
以下に本発明の光硬化性人工爪組成物の具体的組成について説明する。
[単官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物]
本発明の光硬化性人工爪組成物は、単官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物としてアクリロイルモルフォリンを含有する組成物を基本としている。本発明の光硬化性人工爪組成物中にアクリロイルモルフォリンを10〜90重量%含有させることができ、好ましくは30〜70重量%である。10重量%未満であると、硬化後における拭き取り性が悪化し、艶に優れた人工爪塗膜を得ることが困難になり、また塗膜に傷が付きやすくなる。90重量%を超えると光重合性組成物の硬化性が悪化する。
【0011】
さらに含有させることが可能な、アクリロイルモルフォリン以外の単官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物であるラジカル重合性不飽和基を1分子中に1個有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物である(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有ラジカル重合性不飽和基含有化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレン等のビニル芳香族化合物;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素アルキル(メタ)アクリレートを使用することもできる。さらに、モノペンタエリスリトールアクリレート、ジペンタエリスリトールアクリレート、トリペンタエリスリトールアクリレート、テトラペンタエリスリトールアクリレートを使用することもできる。
このような一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等の中でもヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレートが好ましい。
【0012】
単官能アクリルアミド化合物としては、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の重合性アミド化合物等が挙げられる。
【0013】
[酸性のラジカル重合性不飽和基を有する化合物]
酸性のラジカル重合性不飽和基を有する化合物は、上記単官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物又は多官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物に包含される化合物であり、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート、2−オキセパノンホモポリマー、2−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エチルエステルも使用することができる。
【0014】
これらのアクリロイルモルフォリン以外の単官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物を使用することにより、臭いの発生を防止し、また刺激性を低くし、爪への密着性に優れると同時に、硬化後の塗膜に透明感を付与できる。この化合物を使用する場合の光硬化性人工爪組成物中の配合割合としては1〜90重量%が好ましく、10〜60重量%とすることがさらに好ましい。配合割合が1重量%未満であると爪や下層との密着性が低くなったり、拭き取り性が悪化したりする可能性があり、90重量%を超えると硬化膜が脆くなり、硬化膜を維持することができなくなる。
【0015】
[(メタ)アクリレート含有オリゴマー]
本発明の光硬化性人工爪組成物には、多官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物のなかでも、(メタ)アクリレート含有オリゴマーを配合させることができる。そのような(メタ)アクリレート含有オリゴマーとしてはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーやエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられ、特に好ましくはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーに、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を加えて、前記ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基総数の10%以上のイソシアネート基に、前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を付加反応させて得ることができる。
このような(メタ)アクリレート含有オリゴマーを配合することにより、臭いが少なく伸縮性に優れ、かつ被膜の透明度が高く黄変せず、艶を有する高い硬度に硬化した光硬化性人工爪組成物の被膜を得ることができる。そのため、トップコート用に適した光硬化性人工爪組成物とすることができる。
光硬化性人工爪組成物に(メタ)アクリレート含有オリゴマーを配合する場合の配合比率としては、10〜90重量%、好ましくは30〜70重量%である。90重量%を超えて配合すると、硬化後において被膜が剥離しやすくなる。また10重量%未満であると塗膜が形成されにくくなったり、傷が付きやすくなったりする可能性がある。
【0016】
[多官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物]
多官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物は、ラジカル重合しうる不飽和基を1分子中に2以上有する化合物であって、本発明中にて使用する光重合性化合物の1種である。ラジカル重合しうる不飽和基としては、炭素−炭素間二重結合をもつ官能基であり(重合性二重結合ともいう)、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、アリル基等を挙げることができる。
そしてこれらの化合物を使用した場合には、光硬化性人工爪組成物の臭いを少なくし、透明であって、低刺激性であり、適度な重合性を備えつつ硬化膜を収縮させず、かつ使用者の爪に対する密着性を備えることができる。
【0017】
このような、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー以外の多官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物の具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のトリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート化合物;その他、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートが挙げられる。さらに、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン化合物や、(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ樹脂、(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル樹脂、下記のようなジエポキシ化合物の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのジエーテル化合物等が挙げられる。
【0018】
これらの多官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物のなかでも、アクリレートモノマーを使用することによって、適度な重合性を備え、硬化時に臭気が生じにくく、低刺激性であり、硬化被膜が透明で、収縮せず、かつ適切な硬度を付与でき各種着色剤を配合させやすくなる。
また、中でもビスフェノールAのジメタクリレートや、下記(化1)で示されるイソピリデンジフェニルビス(メタクリル酸オキシヒドロキシプロピル)等のプロポキシ化ビスフェノールAジメタクリレートを使用することが好ましい。多官能のラジカル重合性不飽和基含有化合物を使用する場合の含有量としては、光硬化性人工爪組成物に対して1〜90重量%であり、好ましくは3〜60重量%、さらに好ましくは3〜30重量%である。1〜90重量%の範囲内とすることにより硬化被膜の硬度を適切な範囲に調整することができる。
1重量%未満であると硬化膜の密着性が低くなり、また拭き取り性が悪化する可能性がある。また、90重量%を超えると、硬化した組成物が脆くなり、膜を維持することが困難になる可能性がある。
【化1】
【0019】
[光重合開始剤]
本発明の光硬化性人工爪組成物に配合される光重合開始剤は、LEDを光源とした紫外線や365〜410nm付近の波長の光(可視光の一部)によっても十分に硬化することができ、硬化時の発熱量を抑制することができるものが好ましい。
そのような光重合開始剤として、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、アシッドエステル類、α−アミノアルキルフェノン類、アシルフォスフィンオキシド類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、チタノセン類等を使用することができる。
これらの光重合開始剤として、具体的には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、フェニル酢酸、α−オキソ−, オキシジ−2,1−エタンジイルエステル、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、又はオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル、あるいはこれらの化合物の混合物、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル) −フェニルフォスフィンオキシド、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド、1,2−オクタンジオン、1−(4−(フェニルチオ)−2,2−(O−ベンゾイルオキシム))1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、および1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノンなどが好適に用いられる。 これらの開始剤は、染料、顔料や重合性化合物の光吸収によってもラジカル生成反応が阻害されず、またラジカル発生効率が高く、光硬化性人工爪組成物の硬化性を高めることができる点で好ましい。
これらの光重合開始剤は本発明の光硬化性人工爪組成物中0.5〜20.0重量%、好ましくは5.0〜15.0重量%となるように配合することができる。20.0重量%を超えると、過剰な量のラジカルが発生することになるので、ラジカル重合反応が多くの開始点からなされ、その結果、硬化後のポリマーの分子量が小さくなって硬化膜が脆くなり、膜を維持できない可能性がある。また、0.5重量%未満であると十分な量のラジカルが発生できないので、ラジカル重合反応が長時間に及ぶこととなり、硬化不良となる可能性が高い。
【0020】
本発明の光硬化性人工爪組成物には、粘度や透明性、硬化性などに悪影響を与えない範囲で各種の添加剤を配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、ポリオール類、シリコーン系やフッ素系の消泡剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、充填剤、表面張力調整剤、難燃剤、酸化防止剤、イオン吸着体、着色剤、顔料、低応力化剤、抗菌剤、重合禁止剤、可撓性付与剤、ワックス類、ハロゲントラップ剤、レベリング剤、濡れ改良剤等の各種の添加剤を配合することができる。
【0021】
上記のポリオール類には、希釈剤としての機能に加えて本発明の組成物において接着性を向上させる働きもある。例えばアルキルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、フェノリックポリオール等が挙げられる。中でも、アルキルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールが好ましく、特にポリエーテルポリオールが好ましい。接着性を向上させるために用いるときは、ポリオールを除いたその他のエポキシ樹脂成分100重量部に対してポリオールを0.1〜40重量部、好ましくは2〜15重量部で配合する。
【0022】
アルキルポリオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0023】
ポリエステルポリオールとしては、縮合型ポリエステルポリオール、付加重合ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。縮合型ポリエステルポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−ヘキサンジメタノール、ダイマー酸ジオール、ポリエチレングリコール等のジオール化合物と、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、セバシン酸等の有機多塩基酸との縮合反応によって得られ、分子量は100〜100,000が好ましい。付加重合ポリエステルポリオールとしては、ポリカプロラクトンが挙げられ、分子量は100〜100,000が好ましい。ポリカーボネートポリオールはポリオールの直接ホスゲン化、ジフェニルカーボネートによるエステル交換法などによって合成され、分子量は100〜100,000が好ましい。
【0024】
着色剤としては公知の顔料、光輝材、染料を使用することができ、特に爪被覆用として使用されている無機顔料、光輝材有機顔料や染料を使用することができる。また、これらの着色剤を添加しない場合や透明となる程度の量、若しくは染料を添加することにより透明性がある光硬化性人工爪組成物とすることもできる。また、硬化前の光硬化性人工爪組成物には、顔料等のみではなく樹脂粒子や、公知の光硬化性人工爪組成物に配合できる装飾用材料等を配合しておくことも可能である。
使用できる顔料、光輝材及び染料の種類、及びそれらの含有量としては、紫外線の照射による硬化を阻害しない程度のものとすることが必要である。
【0025】
[光硬化性人工爪組成物による被覆方法]
本発明の光硬化性人工爪組成物は、使用者自身の爪の表面にサンディングを施して、爪表面に凹凸を形成させる必要がない他は、公知の紫外線硬化性の光硬化性人工爪組成物と同様の方法により爪表面に塗布することができる。また、爪への下地層として、あるいは中間層、さらにトップコート層として使用することができる。
そのため、本発明の光硬化性人工爪組成物は筆等の塗布具によって十分に塗布することができる程度の粘度を有すればよい。もちろん、爪表面に本発明の光硬化性人工爪組成物を塗布後、硬化前に小さな飾りや粉体等を被膜表面に付着させることも可能である。
また、シートの片面に、本発明の未硬化の光硬化性人工爪組成物からなり、かつ爪の形状を有する層を設けておき、この層を爪表面に重ねるようにして付着させ、この光硬化性人工爪組成物からなる層からシートを剥離するか又は剥離せずに、紫外線を照射して硬化することもできる。このようなシート表面に予め光硬化性人工爪組成物からなる層を設けておけば、使用時に筆等の塗布具を使用することなく、爪の表面に均一かつ正確な模様を被覆することが可能である。そして使用後においても該塗布具を洗浄等する必要がない。
被覆される爪は、人の手の爪と足の爪のいずれでもよく、犬や猫などの動物の爪でも良い。
塗布後の光硬化性人工爪組成物の硬化に関しても公知の紫外線硬化用の装置を用いて行うことができる。含有される化合物や顔料等の成分によって、硬化に必要な照射エネルギーは異なるものの、その光照射による照射エネルギー(積算光量)は、5mJ/cm以上1000mJ/cm以下であるのが好ましく、10mJ/cm以上800mJ/cm以下であるのがより好ましい。照射エネルギーがこの範囲内であれば、十分な密着性および耐擦性を有するネイルアートが得られる。
光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV−LED)、紫外線レーザーダイオード(UV−LD)等の公知の紫外線の光源を用いることができる。
その中でも、小型、高寿命、高効率、低コストの観点から、紫外線発光ダイオード(UV−LED)および紫外線レーザーダイオード(UV−LD)が好ましい。
【実施例】
【0026】
全配合成分を容器内に投入し、ディゾルバーにより撹拌しつつ80℃まで加温し1時間撹拌した。撹拌後2時間静置し脱泡した。
<組成物の評価>
(グロス値)
硬質塩化ビニル板上に一定膜厚で作成した塗膜に、32W LED−UV(405nm)を20秒照射し硬化させた。得られた硬化後の塗膜に対して、70%エタノール水溶液、又は一部の塗膜に対しては水を用いて拭くことにより未硬化の成分を除去した。その後、硬質塩化ビニル板を黒画用紙上に乗せて、グロスチェッカーによりグロス値を測定した。
【0027】
UA :ウレタンアクリレートオリゴマー
ACMO :アクリロイルモルフォリン
HEMA :2−ヒドロキシエチルメタアクリレート
IBXA :イソボルニルアクリレート
Bis-GMA:イソプロピリデンジフェニルビス(メタクリル酸オキシヒドロキシプロピル)
184 :ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
TPO :トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
【0028】
【表1】
【0029】
上記の実施例1〜7の70%エタノールで拭きとった結果によると、本発明の光硬化性人工爪組成物による塗膜は、高いグロス値を有し、これに対して、比較例1〜3による塗膜は、グロス値が低いものであった。
目視においても、実施例1〜7においては全ての未硬化樹脂が完全に除去されて良好な艶を有する塗膜が得られたが、比較例1〜3では未硬化樹脂を完全に除去できず、艶及び透明性にも劣っていた。
一方、水での拭き取りは実施例・比較例共に未硬化樹脂を完全に拭き取ることはできなかった。