特許第6633900号(P6633900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6633900-パーキング機構 図000002
  • 特許6633900-パーキング機構 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633900
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】パーキング機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/34 20060101AFI20200109BHJP
   F16H 61/28 20060101ALI20200109BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20200109BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20200109BHJP
   F16D 127/06 20120101ALN20200109BHJP
   F16D 129/08 20120101ALN20200109BHJP
【FI】
   F16H63/34
   F16H61/28
   B60T1/06 G
   F16D65/16
   F16D127:06
   F16D129:08
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-235880(P2015-235880)
(22)【出願日】2015年12月2日
(65)【公開番号】特開2017-101752(P2017-101752A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100167520
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 良太
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 武雄
(72)【発明者】
【氏名】日沼 俊介
【審査官】 小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−148199(JP,A)
【文献】 特開2008−128444(JP,A)
【文献】 特表2014−517237(JP,A)
【文献】 特開2015−102157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
B60T 1/06
F16D 65/16
F16H 61/28
F16D 127/06
F16D 129/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油圧がかかる受圧面を有し、前記作動油圧に応じてパーキングロッドと一体的に移動するパークピストンと、
前記作動油圧による力とは逆方向に前記パークピストンを付勢する付勢手段と、
前記パークピストンの一部であり、前記付勢手段に当接する部材又は当接する部材と一体となった部材に設けられた溝に係合することで前記パークピストンの移動を規制可能なロック機構とを備えたパーキング機構であって、
前記パークピストンの移動方向と直交する方向から前記ロック機構を見た場合、前記ロック機構と前記パークピストンとの係合位置が、前記付勢手段と重なる、
ことを特徴とするパーキング機構。
【請求項2】
作動油圧がかかる受圧面を有し、前記作動油圧に応じてパーキングロッドと一体的に移動するパークピストンと、
前記作動油圧による力とは逆方向に前記パークピストンを付勢する付勢手段と、
前記付勢手段よりも内側で前記パークピストンに係合することで前記パークピストンの移動を規制可能なロック機構とを備えたパーキング機構であって、
前記パークピストンの移動方向と直交する方向から前記ロック機構を見た場合、前記ロック機構と前記パークピストンとの係合位置が、前記付勢手段と重なる、
ことを特徴とするパーキング機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパーキング機構であって、
前記ロック機構を作動させるアクチュエータを備え、
前記パークピストンの移動方向と直交する方向から前記アクチュエータを見た場合、前記アクチュエータが前記付勢手段と重なる、
ことを特徴とするパーキング機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパーキング機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧シリンダに供給される作動油圧を制御することで、パーキングポールを移動させるパーキング装置が特許文献1に開示されている。また、特許文献1のパーキング装置は、保持用ソレノイドのコイルへの電流供給を制御することでローラと凹部との係合状態を切り替えて、パーキングロッドの移動を防止するロック機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−128444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のパーキング装置では、油圧シリンダとロック機構とがパーキングロッドの軸方向(移動方向)に並んで配置されているため、パーキングロッドの軸方向におけるパーキング装置の全長が長くなる。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、ロック機構を有するパーキング装置の全長を短くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係るパーキング機構は、作動油圧がかかる受圧面を有し、作動油圧に応じてパーキングロッドと一体的に移動するパークピストンと、作動油圧による力とは逆方向にパークピストンを付勢する付勢手段と、パークピストンの一部であり、付勢手段に当接する部材又は当接する部材と一体となった部材に設けられた溝に係合することでパークピストンの移動を規制可能なロック機構とを備えたパーキング機構であって、パークピストンの移動方向と直交する方向からロック機構を見た場合、ロック機構とパークピストンとの係合位置が、付勢手段と重なる。
また、本発明の別の態様に係るパーキング機構は、作動油圧がかかる受圧面を有し、作動油圧に応じてパーキングロッドと一体的に移動するパークピストンと、作動油圧による力とは逆方向にパークピストンを付勢する付勢手段と、付勢手段よりも内側でパークピストンに係合することでパークピストンの移動を規制可能なロック機構とを備えたパーキング機構であって、パークピストンの移動方向と直交する方向からロック機構を見た場合、ロック機構とパークピストンとの係合位置が、付勢手段と重なる。
【発明の効果】
【0007】
この態様によると、パークピストンの移動方向におけるパーキング機構の全長を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態のパーキング機構を示す構成図である。
図2】変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
本発明の実施形態の構成を図1を用いて説明する。図1は、本実施形態のパーキング機構を示す構成図である。ここでは、車両に搭載されるパーキング機構を一例として説明する。
【0011】
パーキング機構100は、パーキングギヤ1と、パーキングポール2と、パークピストン3と、チャンバ4と、パーキングロッド5と、油圧制御弁6と、ロック機構7と、アクチュエータ8と、コントローラ9とを備える。
【0012】
パーキングギヤ1は、出力軸(図示せず)の外周に固定され、出力軸と共に回転または停止する。
【0013】
パーキングポール2は、後述するパーキングロッド5のカム部50に当接し、パーキングロッド5の動きに応じて揺動し、パーキングギヤ1との係合状態が変更される。
【0014】
パーキングポール2がパーキングギヤ1に係合すると、パーキングギヤ1が機械的にロックされ、出力軸もロックされる。これにより、車両の移動が規制される。パーキングポール2とパーキングギヤ1との係合が解除されると、パーキングギヤ1及び出力軸のロックが解除され、パーキングギヤ1及び出力軸が回転可能となる。これにより、車両の移動規制が解除される。
【0015】
パークピストン3は、ピストン部30と、ロッド部31とを備える。パークピストン3は、チャンバ4によって、ロッド部31の軸方向に移動可能となるように支持される。
【0016】
ピストン部30は、チャンバ4内に設けられ、チャンバ4内を第1室43と第2室44とに区画する。ピストン部30は、チャンバ4内を摺動可能である。ピストン部30の外周壁には全周に渡り凹部31aが形成され、凹部31aにシール部材31bが設けられる。このシール部材31bにより、第1室43と第2室44とは隔離される。ピストン部30は、第2室44側に延設されるストッパー31cを備える。ストッパー31cは、後述するチャンバ4の底部40に当接すると、底部40側へのパークピストン3の移動を規制する。
【0017】
ロッド部31は、チャンバ4を貫通し、チャンバ4から突出するロッド部31の一方の端部は、センサホルダ10に接続され、もう一方の端部は、ボルト11などを用いてパーキングロッド5に接続される。ロッド部31にはピストン部30が取り付けられ、ロッド部31とピストン部30とは一体となってロッド部31の軸方向に移動する。すなわち、ロッド部31の軸方向と、パークピストン3の移動方向とは一致する。ロッド部31には、後述するロック機構7の爪部71が係合可能な係合溝32が、軸方向に所定の間隔を設けて2箇所形成される。
【0018】
係合溝32は、ピストン部30よりも第2室44側に位置するロッド部31に形成される。係合溝32は、パーキングポール2がパーキングギヤ1に係合する出力軸ロック時にロック機構7の爪部71が挿入される第1係合溝32aと、パーキングポール2がパーキングギヤ1に係合しない出力軸解除時にロック機構7の爪部71が挿入される第2係合溝32bとによって構成される。すなわち、所定の間隔は、パーキングポール2とパーキングギヤ1との係合状態を切り替えるパークピストン3の移動量に対応して設定される。
【0019】
第1係合溝32aには、爪部71が第1係合溝32aに挿入された場合に、軸方向にパークピストン3が所定量だけ移動可能な余裕代が設けられる。例えば、爪部71が第1係合溝32aを形成する壁面32cに当接して係合した場合、逆側の壁面32dと爪部71との間に、所定量の隙間が形成される。第2係合溝32bにも、同様に軸方向にパークピストン3が所定量だけ移動可能な余裕代が設けられる。所定量は、パーキングポール2とパーキングギヤ1との係合状態に影響を与えない範囲で設定される。つまり、爪部71が第1係合溝32a、または第2係合溝32bに挿入された状態でパークピストン3が軸方向に移動しても、パーキングポール2とパーキングギヤ1との係合状態は変わらない。
【0020】
本実施形態において、爪部71と係合溝32とが係合するとは、爪部71が、係合溝32を形成するロッド部31の軸方向における壁面に当接した状態のことである。そのため、爪部71が係合溝32に挿入された状態は、爪部71が係合溝32に係合可能な状態である、とも言える。
【0021】
チャンバ4は、底部40を有する筒部41の開口側に蓋部42を設けて構成され、蓋部42によって開口側が閉塞されている。チャンバ4内には、蓋部42とピストン部30との間に第1室43が形成され、ピストン部30と底部40との間に第2室44が形成される。底部40には貫通孔45aが形成され、蓋部42には貫通孔45bが形成され、貫通孔45a、45bにロッド部31が挿入される。蓋部42の外周壁には全周に渡り凹部46aが形成され、蓋部42の貫通孔45bを形成する内周壁には全周に渡り凹部46bが形成される。凹部46aにはシール部材47aが設けられ、凹部46bにはシール部材47bが設けられる。これにより、第1室43の液密性が保たれる。
【0022】
第1室43には、油圧制御弁6によって油圧が給排され、第1室43内の油圧が増減する。第1室43に供給された油圧は、ピストン部30に作用し、ピストン部30を底部40側に押す力を発生させる。第1室43を形成するピストン部30の壁は、受圧面として機能する。
【0023】
第2室44には、ピストン部30のストッパー31cよりも径方向内側に圧縮バネ48が設けられる。圧縮バネ48の一方の端部はチャンバ4の底部40に当接し、もう一方の端部はピストン部30に当接する。圧縮バネ48により、ピストン部30には、ピストン部30を蓋部42側に押す付勢力が発生する。圧縮バネ48とパークピストン3のロッド部31との間には、隙間が形成され、この隙間に後述するロック機構7の第1レバー70aが挿入される。
【0024】
パーキングロッド5は、一方の端部側でパークピストン3のロッド部31に接続される。パーキングロッド5は、パークピストン3と一体となってロッド部31の軸方向に移動する。パーキングロッド5には、もう一方の端部にカム部50が取り付けられる。
【0025】
カム部50は、先端となるにつれて径が小さくなる。カム部50には、パーキングポール2をパーキングギヤ1に係合させる係合面50aと、パーキングポール2をパーキングギヤ1に係合させない解除面50bとが形成される。解除面50bは、係合面50aよりもカム部50の先端側に形成される。カム部50は、パーキングポール2に当接し、パークピストン3の動きに応じてパーキングポール2を移動させ、パーキングポール2とパーキングギヤ1とを係合し、または係合を解除する。
【0026】
ここでは、カム部50とパーキングポール2との当接位置を解除面50bから係合面50aに変更し、パーキングポール2とパーキングギヤ1とを係合するようにパークピストン3及びパーキングロッド5が移動することを前進すると言う。また、カム部50とパーキングポール2との当接位置を係合面50aから解除面50bに変更し、パーキングポール2とパーキングギヤ1との係合を解除するようにパークピストン3及びパーキングロッド5が移動することを後退すると言う。
【0027】
ロック機構7は、レバー部70と、爪部71とを備える。ロック機構7は、チャンバ4の底部40付近において、チャンバ4に回動可能に支持され、アクチュエータ8の動作に応じて回転軸73を中心に回動する。
【0028】
レバー部70は、チャンバ4の底部40を貫通して第2室44内まで延びる第1レバー70aと、第1レバー70aに直交する第2レバー70bとを備えたL字状部分を有する形状に形成される。第2レバー70bは、バネ72によって後述するアクチュエータ8側に付勢される。バネ72は、爪部71が係合溝32に挿入されるように、すなわち図1においてロック機構7に反時計回りのモーメントが発生するようにロック機構7に付勢力を付与している。
【0029】
爪部71は、第2室44内に延設された第1レバー70aの端部からロッド部31側に向けて延設される。爪部71は、ロッド部31に形成された係合溝32に係合可能となるように形成される。爪部71は、第2室44内に設けられる。つまり、パークピストン3(ロッド部31)の軸方向に対して直交する方向から見た場合に、爪部71と係合溝32とが係合する場合の係合位置が圧縮バネ48と重なるようにロック機構7が設けられる。
【0030】
以下において、爪部71が係合溝32に挿入されている状態をロック状態と言い、爪部71が係合溝32に挿入されていない状態、すなわち爪部71が係合溝32から抜かれた状態を解除状態と言う。ロック機構7は、アクチュエータ8によって回転軸73を中心に回動し、爪部71が係合溝32に挿抜される。
【0031】
アクチュエータ8は、パークピストン3に対して並列に配置される。アクチュエータ8は、パークピストン3(ロッド部31)の軸方向に対して直交する方向から見た場合に、アクチュエータ8と第2室44に配置される圧縮バネ48とが重なるように配置される。アクチュエータ8は、ロック機構7がロック状態にある場合に、第2レバー70bがアクチュエータ8の端面8aに当接し、第2レバー70bがロッド部31の軸方向と直交するように配置される。つまり、ロック機構7がロック状態にある場合には、ロック機構7は所定状態で支持される。ロック機構7の支持は、例えばアクチュエータ8の軸部80、別に設けたストッパー等により行われる。アクチュエータ8は、ソレノイド式のアクチュエータであり、コイル(図示せず)への通電状態を切り替えることで、軸部80を出没させる。
【0032】
アクチュエータ8のコイルに通電していない場合には、バネ72による付勢力がロック機構7の第2レバー70bを介して軸部80に伝達され、軸部80はアクチュエータ8のケース81内に押し込められ、第2レバー70bがアクチュエータ8の端面8aに当接する。アクチュエータ8のコイルに通電すると、バネ72による付勢力に抗して軸部80がアクチュエータ8のケース81外に突出し、第2レバー70b(ロック機構7)を図1において時計回りに回動させる。アクチュエータ8のコイルに通電した状態から、コイルへの通電を終了すると、バネ72による付勢力によって第2レバー70b(ロック機構7)は図1において反時計回りに回動し、軸部80はケース81内に押し込められ、第2レバー70bがアクチュエータ8の端面8aに当接する。
【0033】
なお、アクチュエータ8は、油圧の給排によって軸部80を移動させる油圧式のアクチュエータであってもよい。
【0034】
油圧制御弁6は、コントローラ9からの指示信号に基づいてソレノイド6aが駆動することで第1室43から油圧を給排する。
【0035】
コントローラ9は、位置センサ101からの信号に基づいてパークピストン3の位置、またはパークピストン3のストローク量(移動量)を検出する。すなわち、コントローラ9は、位置センサ101からの信号に基づいてパーキングポール2とパーキングギヤ1の係合状態を検出することができる。また、コントローラ9は、シフトレバーの位置を検出するシフトデバイス102からの信号に基づいてソレノイド6aへの供給電流を制御して、第1室43への油圧の給排を制御し、パークピストン3及びパーキングロッド5を前進、または後退させ、パーキングポール2とパーキングギヤ1とを係合し、または係合を解除する。さらに、コントローラ9は、シフトデバイス102からの信号及び位置センサ101からの信号に基づいてアクチュエータ8を制御し、ロック機構7を回動させる。
【0036】
コントローラ9は、CPU、ROM、RAMなどから構成される。コントローラ9では、ROMに記憶されたプログラムをCPUが読み出すことで、コントローラ9の各機能が発揮される。
【0037】
次に本実施形態の作用について説明する。
【0038】
シフトレバーがPレンジ以外のレンジの場合には、油圧制御弁6により第1室43に油圧が供給されており、ピストン部30は、圧縮バネ48の付勢力に抗してチャンバ4の底部40側に後退した位置で保持されている。そのため、パークピストン3及びパーキングロッド5も後退した位置で保持されており、パーキング機構100は、パーキングポール2とパーキングギヤ1との係合が解除された状態に保持される。
【0039】
また、ロック機構7は爪部71が第2係合溝32bに挿入されたロック状態となっている。そのため、油圧制御弁6などの故障により第1室43に供給される油圧が低下した場合には、爪部71が第2係合溝32bに係合し、ロック機構7によってパークピストン3の移動が規制されるので、パーキング機構100は、パーキングポール2とパーキングギヤ1との係合が解除された状態に保持される。
【0040】
シフトレバーがPレンジ以外のレンジからPレンジに変更された場合には、ロック機構7を回動させて、ロック機構7をロック状態から解除状態に変更し、油圧制御弁6により第1室43から油圧を排出する。これにより、パークピストン3及びパーキングロッド5は圧縮バネ48の付勢力によって前進し、パーキングポール2がパーキングギヤ1に係合し、パーキング機構100によって車両の移動が規制される。
【0041】
なお、ロック機構7を回動させる際に、油圧制御弁6により第1室43から油圧を排出し、爪部71を第2係合溝32bに係合させつつ、ロック機構7を回動させてもよい。これにより、爪部71が第2係合溝32bの壁面に係合することで、ロック機構7には、図1の時計回りにモーメントが発生する。このようなモーメントが発生することにより、ロック機構7をロック状態から解除状態に変更する際にアクチュエータ8によってロック機構7を回動させるための力を小さくすることができ、小型のアクチュエータ8によってロック機構7を回動させることができる。そのため、ロッド部31の軸方向に直交する方向におけるパーキング機構100の長さを短くすることができる。
【0042】
パーキングポール2がパーキングギヤ1に係合する位置までパークピストン3及びパーキングロッド5が前進すると、アクチュエータ8によってロック機構7を回動させて、ロック機構7を解除状態からロック状態に変更する。本実施形態では、アクチュエータ8のコイルへの通電を終了することで、バネ72の付勢力によってロック機構7が回動し、ロック機構7がロック状態となる。このロック状態では、爪部71は第1係合溝32aに係合する。これにより、例えば油圧制御弁6の故障により第1室43に油圧が供給された場合でも、ロック機構7によってパークピストン3の移動が制限されるので、パーキング機構100は、パーキングポール2とパーキングギヤ1とが係合した状態に保持される。
【0043】
シフトレバーがPレンジからPレンジ以外のレンジに変更された場合には、アクチュエータ8によってロック機構7を回動させてロック機構7をロック状態から解除状態に変更し、油圧制御弁6により第1室43に油圧を供給する。これにより、圧縮バネ48の付勢力に抗してパークピストン3及びパーキングロッド5が後退し、パーキングポール2とパーキングギヤ1との係合が解除され、車両の移動規制が解除される。
【0044】
パーキングポール2がパーキングギヤ1に係合しない位置までパークピストン3及びパーキングロッド5が、後退すると、アクチュエータ8によってロック機構7を回動させて、ロック機構7を解除状態からロック状態に変更する。
【0045】
本発明の実施形態の効果について説明する。
【0046】
本実施形態の構成とはせずに、ロック機構及びアクチュエータをパークピストンの移動方向に並べて設けると、パークピストンの移動方向におけるパーキング機構の全長が長くなり、車両レイアウトが制限されるおそれがある。
【0047】
本実施形態では、パークピストン3の移動方向と直交する方向から見た場合に、ロック機構7の爪部71がパークピストン3の係合溝32に挿入される挿入位置が、圧縮バネ48と重なるようにロック機構7を設ける。これにより、パークピストン3の移動方向におけるパーキング機構100の全長を短くすることができ、車両レイアウトの自由度を高めることができる(請求項1に対応する効果)。
【0048】
パークピストン3の移動方向と直交する方向から見た場合に、ロック機構7を作動させるアクチュエータ8が圧縮バネ48と重なるようにアクチュエータ8を配置することで、パークピストン3の移動方向におけるパーキング機構100の全長を短くすることができる(請求項3に対応する効果)。
【0049】
パーキング機構100の全長を短くすることで、特にFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両へのパーキング機構100の搭載が容易となる。
【0050】
次に本実施形態の変形例について図2を用いて説明する。図2は変形例におけるパーキング機構の一部を示す概略図である。
【0051】
変形例では、パークピストン201の係合溝202が圧縮バネ203よりも径方向外側に設けられ、ロック機構204の爪部205はパークピストン201の移動方向に対して直交する方向に移動する。このような構成においても、パーキング機構200の全長を短くすることができる。
【0052】
上記本実施形態と比較例とを比較すると、本実施形態では、ロック機構7の爪部71がパークピストン3の係合溝32に挿入される挿入位置を圧縮バネ48よりも径方向内側にしている。具体的には、パークピストン3のロッド部31に係合溝32を設けている。これにより、ロック機構7やパークピストン3の剛性を高くせずに、ロック機構7によってロック状態にすることができる。
【0053】
比較例のように、ロック機構204の爪部205とパークピストン201の係合溝202との係合位置を圧縮バネ203よりも径方向外側に設けた場合には、ロック機構204やパークピストン201の剛性が低いと、例えばロック機構204によってパークピストン201の移動を制限している場合に、係合溝202付近のパークピストン201が変形するおそれがある。
【0054】
比較例においても、ロック機構204やパークピストン201の剛性を高くすることで、ロック機構204やパークピストン201が変形を防ぐことができる。しかし、ロック機構204やパークピストン201の剛性を高くするために、各部材を大きくなるおそれがあり、パーキング機構200が大きくなるおそれがある。
【0055】
これに対し、本実施形態では、ロック機構7の爪部71がパークピストン3の係合溝32に挿入される挿入位置を圧縮バネ48よりも径方向内側にすることで、比較例よりもロック機構7やパークピストン3の剛性を高くせずに、ロック機構7やパークピストン3の変形を防止することができる。これにより、比較例と比較してパーキング機構100を小型にすることができる(請求項2に対応する効果)。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0057】
上記実施形態では、パーキングロッド5とパークピストン3とを別部材で構成したが、これらを1つの部材で構成してもよい。すなわち、パーキングロッド5とパークピストン3とが一体的に移動するとは、1つの部材がパーキングロッド5とパークピストン3との機能を有し、その部材が移動することを含んでいる。
【0058】
また、上記実施形態においてロック機構7をパークピストン3の軸方向とは直交する方向に移動させて、ロック機構7をロック状態と解除状態との間で変更してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 :パーキングギヤ
2 :パーキングポール
3 :パークピストン
4 :チャンバ
5 :パーキングロッド
6 :油圧制御弁
7 :ロック機構
8 :アクチュエータ
9 :コントローラ
30 :ピストン部
32 :係合溝
32a :第1係合溝
32b :第2係合溝
43 :第1室
44 :第2室
48 :圧縮バネ(付勢手段)
71 :爪部
100 :パーキング機構
200 :パーキング機構
201 :パークピストン
202 :係合溝
203 :圧縮バネ(付勢手段)
204 :ロック機構
205 :爪部
図1
図2