(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記供給側温度センサー及び前記排出側温度センサーの検出温度の双方の表示、又は、前記供給側温度センサーと前記排出側温度センサーの検出温度の差の表示、の少なくとも一方の表示を行う表示装置を、さらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の成形機の射出装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(基本構成)
図1は、本発明の実施形態に係るダイカストマシン1の要部の構成を示す、一部に断面図を含む側面図である。
【0018】
ダイカストマシン1は、金型101内に溶湯(成形材料)を射出し、その溶湯を金型101内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造するものである。金型101は、例えば、固定金型103及び移動金型105を含んでいる。なお、溶湯は、溶融状態の金属材料である。溶湯に代えて、半凝固状態の金属が用いられてもよい。金属は、例えば、アルミニウムである。
【0019】
ダイカストマシン1は、例えば、金型101の開閉及び型締めを行う型締装置3と、型締めされた金型101の内部に溶湯を射出する射出装置5と、ダイカスト品を固定金型103又は移動金型105(
図1では移動金型105)から押し出す押出装置7と、これら各装置を制御するための制御装置9とを有している。
【0020】
ダイカストマシン1において、射出装置5及び制御装置9以外の構成(例えば型締装置3及び押出装置7)は、従来の種々の構成と同様とされてよく、説明を省略する。射出装置5及び制御装置9も、その基本構成(後述する冷却に係る構成以外)については、公知の種々の構成と同様とされてよい。射出装置5及び制御装置9の基本構成は、例えば、以下のとおりである。
【0021】
射出装置5は、例えば、金型101内に通じるスリーブ11と、スリーブ11内を摺動可能なプランジャ13と、プランジャ13を駆動する射出シリンダ15とを有している。なお、射出装置5の説明において、金型101側を前方、その反対側を後方ということがあり、射出装置5の各部材について、金型101側の端部を先端、その反対側の端部を後端ということがある。
【0022】
スリーブ11は、例えば、固定金型103に挿通された筒状部材であり、上面には給湯口11aが開口している。プランジャ13は、スリーブ11内を前後方向に摺動可能なプランジャチップ13aと、先端がプランジャチップ13aに固定されたプランジャロッド13bとを有している。プランジャチップ13aは、例えば、概略円柱状である。プランジャロッド13bは、プランジャチップ13aよりも径が小さく、プランジャチップ13aよりも長い軸状である。プランジャチップ13a及びプランジャロッド13bは、例えば、金属により構成されている。プランジャロッド13bの後端は、カップリング17によって射出シリンダ15のピストンロッド15aの先端と連結されている。
【0023】
型締装置3により金型101が型締めされると、溶湯が給湯口11aからスリーブ11内に注がれる。そして、プランジャチップ13aが図示の位置からスリーブ11内を摺動する(前進する)ことにより、溶湯は金型101内に押し出される(射出される)。その後、金型101内で溶湯が凝固することにより、ダイカスト品が形成される。ダイカスト品は、型締装置3による金型101の型開き後又は型開きと同時に、押出装置7によって移動金型105から押し出される。
【0024】
制御装置9は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を含むコンピュータによって構成されており、CPUがROM等に記憶されたプログラムを実行することにより所定の制御動作を実行する。なお、制御装置9は、適宜に分割乃至は分散して構成されてよい。例えば、制御装置9は、型締装置3、射出装置5及び押出装置7毎の下位の制御装置と、この下位の制御装置間の同期を図るなどの制御を行う上位の制御装置とを含んで構成されてよい。制御装置9は、ダイカストマシン1の制御装置であるが、各装置(例えば射出装置5)に着目したときは、その装置の制御装置として捉えられてもよい。
【0025】
制御装置9には、例えば、画像を表示する表示装置19と、作業者の操作を受け付ける複数のスイッチ21(操作盤)とが接続されている。表示装置19は、例えば、液晶表示ディスプレイ乃至は有機ELディスプレイを含んだタッチパネルによって構成されている。制御装置9は、表示装置19(タッチパネル)及びスイッチ21からの信号に基づいて、各種の装置(3、5、7等)及び表示装置19にこれらを制御するための制御信号を出力する。
【0026】
(プランジャの冷却に係る構成)
図2は、プランジャ13の冷却に係る構成を示す模式図である。
【0027】
プランジャ13の内部にはプランジャ流路23が形成されている。また、ダイカストマシン1(射出装置5)は、プランジャ流路23に冷却水を流れさせる給排装置25を有している。プランジャ流路23に流れ込んだ冷却水がプランジャ13の熱を吸収し、プランジャ流路23から流れ出ることによって、プランジャ13は冷却される。
【0028】
プランジャ流路23は、例えば、プランジャロッド13bの後端側からプランジャチップ13a側へ延び、プランジャチップ13aを経由して、プランジャロッド13bの後端側へ延びる形状である。すなわち、プランジャ流路23は、プランジャロッド13b内をプランジャロッド13bに沿って延びる流入路23a及び流出路23bと、プランジャチップ13a内に位置するチップ経由部23cと、を有している。
【0029】
流入路23aの後方の流路端は、プランジャ13(プランジャロッド13b)の外部へ開口しており、流入口23eを構成している。同様に、流出路23bの後方の流路端は、プランジャ13(プランジャロッド13b)の外部へ開口しており、流出口23fを構成している。また、流入路23a及び流出路23bのプランジャチップ13a側の流路端は、チップ経由部23cに通じている。
【0030】
冷却水は、給排装置25によって流入口23eに供給され、流入路23a、チップ経由部23c及び流出路23bを順に流れ、流出口23fから給排装置25に排出される。なお、流入路23a及び流出路23bは、可逆であってもよい。すなわち、流入路23a及び流出路23bを構成する2つの流路は、給排装置25に接続されるときに、2つの流路のうちいずれの流路が流入路23a又は流出路23bであるかが決められてもよい。
【0031】
流入路23a、流出路23b及びチップ経由部23cの具体的な形状は、適宜に設定されてよい。流入路23a及び流出路23bは、互いに同一の形状であってもよいし、互いに異なる形状であってもよい。なお、流入路23a及び流出路23bが互いに可逆である場合も同様である。すなわち、2つの流路の形状が同一乃至は対称であることは、2つの流路が可逆であることの必要条件ではない。
【0032】
図2の例では、流入口23e及び流出口23fは、プランジャロッド13bの外周面に、且つ、互いに逆側(紙面上下方向)に開口している。ただし、これらは、例えば、プランジャロッド13bの外周面において、所定の角度で互いに異なる向きで開口したり、プランジャロッド13bの外周面において、前後方向における位置を互いにずらして互いに同一の向きで開口したり、プランジャロッド13bの後端面に開口したりしてもよい。すなわち、流入口23e及び流出口23fは、プランジャロッド13bにおいて適宜な位置に設けられてよい。
【0033】
ただし、流入口23e及び流出口23fは、プランジャ13が前進限まで移動したときに、プランジャロッド13bのうち、スリーブ11の後端から外部に露出する部分に設けられていることが好ましい。給排装置25の、流入口23e及び流出口23fに接続される部分がスリーブ11に干渉することを避ける観点からである。なお、前進限は、究極的には射出シリンダ15の前進限によって規定されるが、実際の成形サイクルにおいてプランジャ13が最大限前進する位置(例えば、型開きのときの押出追従において最大限前進する位置)であってよい。
【0034】
また、
図2の例では、チップ経由部23cは、比較的広い空間状に構成されている。例えば、チップ経由部23cは、プランジャチップ13aの外形の形状と類似した形状であり、その横断面及び縦断面それぞれの面積は、流入路23a及び流出路23bの、流れ方向に直交する断面積の合計よりも大きくされている。ただし、例えば、チップ経由部23cは、流入路23a又は流出路23bの、流れ方向に直交する断面積と概ね同等の断面積を有する流路状であってもよい。
【0035】
給排装置25は、例えば、一端が流入口23eに接続され、他端が流出口23fに接続された給排流路27を有している。この給排流路27は、上述のプランジャ流路23とともに、環状の流路を構成する。冷却水は、当該環状の流路を循環する。
【0036】
給排流路27は、例えば、流入口23eに接続される供給側流路29(第1の流路)と、流出口23fに接続される排出側流路31(第2の流路)とを含んでいる。供給側流路29及び排出側流路31は、例えば、ホース(可撓性の管状部材)、パイプ(非可撓性の管状部材)、若しくは、貫通孔が形成されたブロック状の部材、又は、これらのいずれか2つ以上の組み合わせによって構成されてよい。ただし、プランジャ13の移動に追従して変形できるように、少なくとも一部はホースであることが好ましい。
【0037】
給排装置25は、冷却水の冷却及び供給を行う冷却水供給源32を有している。冷却水供給源32は、例えば、給排流路27に沿って、排出側流路31からの水を貯留する集水箱33、集水箱33の水を供給側流路29へ送出するポンプ35、及び、供給側流路29へ流れる水を冷却可能な冷却装置37を有している。なお、本実施形態の説明では、冷却水供給源32を射出装置5の一部として説明しているが、その全部又は一部は、工場の設備であってもよい。ポンプ35と冷却装置37との順番は逆であってもよい。
【0038】
集水箱33、ポンプ35及び冷却装置37の構成は、公知の種々の構成と同様とされてよい。例えば、集水箱33は、液面が大気開放されたタンクである。ポンプ35は、例えば、非容量式(遠心式若しくは軸流式等)又は容量式(回転式若しくは往復式等)から適宜に選択されてよいし、その送出量は固定及び可変のいずれであってもよい。
【0039】
冷却装置37は、冷却水の温度を所定の目標温度に調整できるものであってもよいし、できないものであってもよい。冷却装置37は、例えば、給排流路27を空冷するものであってもよいし、冷却水を散水して冷却するクーリングタワーであってもよいし、給排流路27の水と熱交換を行う冷却媒体の圧縮、凝縮及び膨張を行うチラーであってもよい。チラーにおける凝縮は、冷却媒体を空冷するものであってもよいし、クーリングタワーからの冷却水(給排流路27の冷却水とは別)と熱交換を行うものであってもよい。
【0040】
給排装置25は、更に、プランジャ13の冷却量を調整するために、供給側流路29における冷却水の温度を検出する供給側温度センサー39と、排出側流路31における冷却水の温度を検出する排出側温度センサー41と、プランジャ流路23の冷却水の流量を検出する流量センサー43と、プランジャ流路23の冷却水の流量を調整する流量制御弁45とを有している。
【0041】
供給側温度センサー39及び排出側温度センサー41の構成は、公知の種々の構成とされてよい。例えば、これらのセンサーは、いわゆる接触式のものであり、より具体的には、例えば、感温素子として熱電対を有するもの、又は、感温素子としてサーミスタを有するものである。供給側温度センサー39は、(少なくとも感温素子)が供給側流路29に位置している。排出側温度センサー41は、(少なくとも感温素子)が排出側流路31に位置している。なお、温度センサーが流路に位置している、又は、設けられているというとき、好ましくは、感温素子が流路内に露出していることが好ましいが、流路内の冷却水の温度と同等の温度を検出できるのであれば、感温素子が流路内に露出していなくてもよい。
【0042】
流量センサー43は、公知の種々の構成とされてよい。ただし、流量センサー43は、流量に及ぼす影響が小さいもの(例えば電磁式のもの)であることが好ましい。流量センサー43は、例えば、供給側流路29又は排出側流路31に設けられ(
図2では排出側流路31)、直接的には、その流量センサー43が設けられた流路の流量を検出する。ただし、冷却水は、供給側流路29、プランジャ流路23及び排出側流路31に満たされた状態で流れるようにその流量が制御されることから、供給側流路29又は排出側流路31の流量は、概ねプランジャ流路23の流量と同等である。
【0043】
流量制御弁45は、公知の種々の構成とされてよい。ただし、より正確に流量を制御する観点からは、流量制御弁45は、圧力補償付きのもの(流量調整弁)であることが好ましく、また、開口度を無段階で調整できるサーボ弁であることが好ましい。流量制御弁45は、例えば、供給側流路29又は排出側流路31に設けられ(
図2では供給側流路29)、直接的には、その流量制御弁45が設けられた流路の流量を制御する。ただし、供給側流路29に設けられた流量制御弁45によって極端に流量が絞られない限り(プランジャ流路23が冷却水で満たされない状態が生じない限り)は、いずれの流路において流量を制御しても、流量は概ね同様である。
【0044】
(プランジャの冷却に係る動作)
(冷却量の制御)
供給側温度センサー39によってプランジャ13(特にプランジャチップ13a)の熱を吸収する前の冷却水の温度(供給側温度T
1)が検出され、排出側温度センサー41によって、プランジャ13の熱を吸収した後の冷却水の温度(排出側温度T
2)が検出される。ここで、例えば、冷却水の流量が一定であると仮定した場合に、プランジャチップ13aが溶湯から吸収する熱量が相対的に大きく、ひいては、プランジャチップ13aの膨張量が相対的に大きい状況においては、プランジャ13から冷却水に伝達される熱量も相対的に大きい。従って、この状況では、供給側温度と排出側温度との差(ΔT
W=T
2−T
1)は大きい。
【0045】
そこで、本実施形態では、供給側温度と排出側温度との差に基づいて、プランジャ13の冷却量を制御する。例えば、温度差が相対的に大きければ冷却量を大きくし、温度差が相対的に小さければ冷却量を小さくする。冷却量の制御は、例えば、流量制御弁45による流量制御によってなされる。すなわち、流量を大きくすることにより冷却量が大きくされ、流量を小さくすることにより冷却量が小さくされる。
【0046】
より具体的には、例えば、以下のように、温度差に基づいて冷却水がプランジャ13から吸収した熱量を算出し、その熱量に基づいて冷却量を制御する。
【0047】
プランジャ13から冷却水に与えられた熱量Q(J)は、以下の式により表わされる。
Q=m
W×c
W×ΔT
W (1)
ここで、m
Wは水の質量(g)、c
Wは水の比熱(J/g・K)、ΔT
Wは供給側温度T
1と排出側温度T
2との差(K)である。
【0048】
質量m
Wは、例えば、流量センサー43の検出流量q(cm
3/s)に基づいて算出される。例えば、1回の成形サイクルに必要な時間長さ(サイクルタイム)以下の時間長さで、適宜に所定の算定時間T
Lを設定し、また、冷却水においては1cm
3=1gであると仮定し、m
W=q×T
Lにより算出してよい。
【0049】
なお、後述する計測実験において示すように、1回の成形サイクル内で流量q及び温度差ΔT
Wは変動する。従って、(1)式の流量q及び温度差ΔT
Wは、例えば、算定時間T
Lにおける平均値とされてよい。また、より正確に熱量Qを算出したい場合においては、q×c
W×ΔT
Wを算定時間T
Lに亘って積分してもよい。
【0050】
プランジャ13において、溶湯との熱交換及び冷却水との熱交換に支配的なのは、プランジャチップ13aである。プランジャチップ13aは、溶湯から吸熱しつつ冷却水に放熱するが、簡単のために、溶湯から吸熱して第1温度になった後、上記の熱量Qだけ冷却水に放熱して第2温度になったと考える。
【0051】
そうすると、第1温度と第2温度との差ΔT
P(K)は、以下の式によって表わされる。
ΔT
P=Q/(m
P×c
P) (2)
ここで、m
Pはプランジャチップ13aの質量(g)、c
Pはプランジャチップ13aの比熱(J/g・K)である。
【0052】
そして、この温度差ΔT
Pを用いて、第1温度から第2温度になったときのプランジャチップ13aの直径の変化量ΔD(cm)は、以下の式によって表わされる。
ΔD=α×D×ΔT
P (3)
ここで、αはプランジャチップ13aの線膨張係数(1/K)、Dはプランジャチップ13aの直径(cm)である。
【0053】
ここで、後述する計測実験に示すように、流量q及び供給側温度を一定とした状態で、成形サイクルを繰り返すと、排出側温度は安定する(温度差ΔT
Wは安定する)。すなわち、溶湯がプランジャチップ13aに付与する熱量と、プランジャチップ13aが冷却水に付与する熱量とは均衡する。従って、上記の変化量ΔDは、プランジャチップ13aが溶湯から熱を受けたときの膨張量とみなすことができる。
【0054】
従って、例えば、膨張量ΔDが、所定の許容範囲(その上限値)よりも大きくなるのであれば、かじりが生じるおそれがあることから、冷却量を増加する。また、膨張量ΔDが、所定の許容範囲(その下限値)よりも小さくなるのであれば、プランジャチップ13aとスリーブ11との隙間から溶湯が後方へ漏れることによって、やはりかじりが生じるおそれがあることから、冷却量を減少する。また、膨張量ΔDが許容範囲内に収まるのであれば、現状の冷却量を維持する。このようにすることにより、好適に冷却量を制御できる。
【0055】
ただし、上記のように、ΔT
Pは、プランジャチップ13aが溶湯から吸熱して第1温度になった後、冷却水に放熱して第2温度になったと仮定したものである。また、実際には、プランジャチップ13aのうち特に高温になるのは表面付近である。また、プランジャチップ13aは、内部にチップ経由部23cが形成されているなど、完全な円柱形状をしているわけではない。また、プランジャロッド13bも冷却水の温度に影響する。
【0056】
そこで、プランジャチップ13aの直径の膨張量ΔDに補正係数を乗じた、又は、補正定数を加算した値を、膨張量ΔD′とし、この膨張量ΔD′に基づいて、冷却量の制御を行う。例えば、膨張量ΔD′は以下の式で表わされる。
ΔD′=ΔD×Ca (4)
ここで、Caは、補正係数である。補正係数Caは、例えば、実験等に基づいて求められてよい。
【0057】
なお、上記の例では、補正係数Caは、種々の補正要因に対応した、いわば大雑把なものとなっているが、補正要因毎に補正係数又は補正定数を用意し、(1)〜(4)式までの計算途中に適宜に組み込んでもよい。別の観点では、補正した熱量Qを算出したり、補正した温度差T
Pを算出したりしてもよい。この場合、例えば、鋳造条件の変更等によって変化した補正要因についてのみ補正係数等を求めればよい。
【0058】
図3は、上述した冷却量の制御を実現するために、制御装置9が実行する冷却制御処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、例えば、複数回繰り返される成形サイクルの開始時に開始される。
【0059】
ステップST1では、制御装置9は、上述した算定時間T
Lの開始時期が到来したか否か判定し、到来するまで待機し、到来したと判定したときは、ステップST2に進む。なお、算定時間T
Lの開始時点及びその長さ(又は終了時点)は、例えば、ダイカストマシン1の製造者又は作業者(ユーザ)により、予め制御装置9に設定されている。
【0060】
ステップST2では、制御装置9は、流量センサー43、供給側温度センサー39及び排出側温度センサー41による、流量q、供給側温度T
1及び排出側温度T
2の計測を開始する。なお、ここでいう計測開始は、例えば、これらのセンサーによる検出信号の出力開始であってもよいし、既に出力が開始されている検出信号からのサンプリング開始であってもよい。
【0061】
ステップST3では、制御装置9は、算定時間T
Lの終了時期が到来したか否か判定し、到来するまで流量q、供給側温度T
1及び排出側温度T
2の計測を継続し、到来したと判定したときは、ステップST4に進む。
【0062】
ステップST4では、制御装置9は、流量q、供給側温度T
1及び排出側温度T
2の計測を終了する。なお、計測終了は、計測開始と同様に、検出信号の出力終了であってもよいし、その後も継続して出力される検出信号からのサンプリング終了であってもよい。
【0063】
ステップST5では、制御装置9は、ステップST2からST3までの間に計測した流量q、供給側温度T
1及び排出側温度T
2を用いて、(1)式により熱量Qを算出する。既に述べたように、(1)式に相当する積分が行われてもよい。なお、比熱c
Wは、ダイカストマシン1の製造者又は作業者により、予め制御装置9に設定されている。
【0064】
ステップST6では、制御装置9は、ステップST5で算出した熱量Qを用いて、(2)式〜(4)式により膨張量ΔD′(指標値)を算出する。なお、質量m
P、比熱c
P、線膨張係数α、直径Dは、例えば、ダイカストマシン1の製造者又は作業者により、予め制御装置9に設定されている。
【0065】
なお、
図3の例では、熱量Qの算出と膨張量ΔD′の算出とを分けているが、実際には、(1)式〜(4)式が1つの式に纏められて、流量q、供給側温度T
1及び排出側温度T
2から直接に膨張量ΔD′が算出されてもよいし、逆に、より細分化された式によって膨張量ΔD′が算出されてもよい。
【0066】
ステップST7では、制御装置9は、ステップST6で算出した膨張量ΔD′が許容範囲の上限値よりも大きいか否か判定し、大きいと判定したときは、ステップST8に進み、大きくないと判定したときは、ステップST9に進む。
【0067】
ステップST8では、制御装置9は、プランジャ流路23を流れる冷却水の流量を増加させるように流量制御弁45を制御する。制御装置9は、ステップST8の後、制御装置9は、ステップST11に進む。
【0068】
ステップST9では、制御装置9は、ステップST6で算出した膨張量ΔD′が許容範囲の下限値よりも小さいか否か判定し、小さいと判定したときは、ステップST10に進み、小さくないと判定したときは、ステップST11に進む。
【0069】
ステップST10では、制御装置9は、プランジャ流路23を流れる冷却水の流量を減少させるように流量制御弁45を制御する。制御装置9は、ステップST10の後、制御装置9は、ステップST11に進む。
【0070】
ステップST11では、制御装置9は、冷却制御の終了条件が満たされたか否か判定する。終了条件は、例えば、成形サイクルの繰り返しが停止されたことなどである。そして、制御装置9は、終了条件が満たされていないと判定したときは、ステップST1に排出側、満たされたと判定したときは処理を終了する。
【0071】
なお、ステップST7及びST9で否判定がなされ、ステップST11を経由して、ステップST1に戻ったときは、ステップST8及びST10のいずれも実行されないから、冷却水の流量は、現状が維持されることになる。
【0072】
また、算定時間T
Lは、サイクルタイム以下の時間長さで設定され、その開始時点は、サイクルタイム内の1時点であるから、ステップST1〜ST4により、成形サイクル毎に、流量、供給側温度及び排出側温度が計測される。
【0073】
ステップST8及びST10において、流量を増減させるときに、その流量の変化量は、適宜に設定されてよい。例えば、変化量は、指標値と許容範囲(その上限値又は下限値)との差に比例してもよいし、前記の差に関わらずに、一定の量であってもよい。なお、比例係数若しくは一定量は、ダイカストマシン1の製造者及び作業者のいずれが設定してもよい。
【0074】
上記では、ステップST1〜ST10が成形サイクル毎に繰り返されるものとして説明した。しかし、ステップST7〜ST10は、所定回数の成形サイクル毎に行うようにしてもよい。例えば、ステップST6で算出した指標値について、所定回数の成形サイクルの平均値を求め、その平均値に基づいてステップST7〜ST10を実行してもよい。また、ステップST7〜ST10を成形サイクル毎に行うものの、その判定の基になる指標値を、それまでの所定回数の成形サイクルの平均値としたりしてもよい。このようにすることにより、冷却量の調整量が温度差T
Wの変化に対して過敏に反応して制御が発散するおそれが低減される。
【0075】
(冷却量の表示)
上記の冷却量の制御に代えて、又は、加えて、制御装置9は、供給側温度T
1及び排出側温度T
2の双方、及び/又は、その温度差T
Wを表示装置19に表示させる。これにより、例えば、作業者は、温度差T
Wに基づいて、流量制御弁45の開口度等を調整し、冷却量を適切なものとすることができる。
【0076】
なお、温度及び/又は温度差の表示時期は、計測時期からずれたサイクル中の適宜な時期とされてもよいし、計測と同時とされてもよい(リアルタイムで表示されてもよい)。また、表示態様は、文字でも図形でもよく、好ましくは、後述する
図4(b)〜
図4(d)のように、時間を横軸、温度を縦軸として、温度及び/又は温度差がリアルタイムで表示されることが好ましい。
【0077】
作業者による冷却量の調整は、調整部(流量制御弁45等)に対して直接的に人力で行うものであってもよいし、スイッチ21等の操作部に対する操作によって行うものであってもよい。
【0078】
以上のとおり、本実施形態に係るダイカストマシン1の射出装置5は、金型101内に通じるスリーブ11内の溶湯を、スリーブ11内を摺動するプランジャチップ13aを有するプランジャ13によって金型101内へ押し出す射出装置であって、プランジャチップ13aの内部へ流れ込む冷却水の温度を検出する供給側温度センサー39と、プランジャチップ13aの内部から流れ出る冷却水の温度を検出する排出側温度センサー41と、を有している。
【0079】
従って、供給側温度センサー39及び排出側温度センサー41の検出した温度の差ΔT
Wに基づいて、冷却量を制御することができる。さらに、例えば、プランジャチップ13aの温度を直接検出する態様に比較して、温度センサーが高温に晒されるおそれが低い。従って、温度センサーとして、耐熱性の低いものを選択することができる。また、例えば、後述する計測実験にて示すように、プランジャチップ13aの温度は、その測定位置によって値が大きく変化する。その結果、例えば、測定位置が変化すると、それまでの経験乃至はデータを利用することが困難になる。これに比較して、本実施形態では、測定位置による温度の変化は、プランジャチップ13aよりも後方の位置での測定である限り、あまり生じない。その結果、例えば、測定位置が変化しても、それまでの経験乃至はデータを利用することが容易である。別の観点では、温度センサーの取り付け位置の自由度が高い。
【0080】
また、本実施形態では、ダイカストマシン1の射出装置5は、金型101内に通じるスリーブ11内の溶湯をプランジャ13によって金型101内へ押し出す射出装置であって、プランジャ13に冷却水を供給可能な供給側流路29と、プランジャ13からの冷却水を排出可能な排出側流路31と、供給側流路29に設けられた供給側温度センサー39と、排出側流路31に設けられた排出側温度センサー41と、を有している。
【0081】
従って、例えば、消耗品であるプランジャ13を交換しても、温度センサーを交換したり、取り付け直したりする必要はない。その結果、プランジャ13に温度センサーを設ける態様に比較して、長期的な観点においてコストを低減することができる。
【0082】
また、本実施形態では、射出装置5は、プランジャ13を流れる冷却水の流量を調整可能な流量制御弁45と、供給側温度センサー39及び排出側温度センサー41の検出温度の双方の検出結果に基づいて流量制御弁45を制御する制御装置9とを有している。
【0083】
従って、例えば、供給側温度センサー39及び排出側温度センサー41の検出温度に基づく冷却量の制御を自動的に行うことができる。また、例えば、1サイクル毎に冷却量を制御するなど、ダイカストマシン1若しくはその周囲の温度変化等に起因するプランジャチップ13aの温度変化に即座に対応することができる。
【0084】
また、本実施形態では、制御装置9は、供給側温度センサー39及び排出側温度センサー41の検出温度の差ΔT
Wと、プランジャ13を流れる冷却水の流量q及び比熱c
Wとに基づいて、冷却水が吸収した熱量Q(別の観点では温度差ΔT
Wと流量qとの積に比例する値)を算出し、その熱量Qに基づいて流量制御弁45を制御する。
【0085】
従って、例えば、冷却水の温度だけでなく、冷却水の流量qを踏まえて、より正確にプランジャチップ13aの熱に係る状態を把握することができ、かじりの発生をより確実に低減することができる。具体的には、例えば、温度差ΔT
Wのみに基づく制御では、何らかの要因によって冷却水の流量が少なく、それにより温度差ΔT
Wが大きいときに、誤って更に流量を少なくしてしまうおそれがある。しかし、温度差ΔT
Wだけでなく、流量qも用いることにより(熱量Qを算出することにより)、そのような不都合を解消できる。
【0086】
また、本実施形態では、制御装置9は、算出した熱量Qに基づいて算出したプランジャチップ13aの膨張量が、所定の許容範囲内のときは現状の冷却量を維持するように、許容範囲よりも大きいときは冷却量を増加するように、許容範囲よりも小さいときは冷却量を減少させるように、流量制御弁45に冷却水の流量を調整させる。
【0087】
従って、例えば、制御に係る最終的な判定は、温度差や熱量ではなく、かじりに直接に影響を及ぼす膨張量によってなされることになる。その結果、かじりの発生をより確実に低減することができる。また、例えば、許容範囲内であるときは現状を維持することから、スリーブ11に注がれた溶湯の量若しくは温度の変動(誤差)、又は、ダイカストマシン1若しくはその周囲の温度変化等に過剰に反応するおそれが低減される。
【0088】
また、本実施形態に係る射出装置5によって、本実施形態に係る成形方法が実現される。当該成形方法は、金型101内に通じるスリーブ11内の溶湯を、スリーブ11内を摺動するプランジャチップ13aを有するプランジャ13によって金型101内へ押し出して、ダイカスト品を製造する成形方法であって、プランジャチップ13aの内部へ流れる冷却水の温度を検出する第1の温度検出ステップ(ステップST2〜ST4における供給側温度センサー39による計測)と、プランジャチップ13aの内部から流れる冷却水の温度を検出する第2の温度検出ステップ(ステップST2〜ST4における排出側温度センサー41による計測)と、第1の温度検出ステップ及び第2の温度検出ステップの検出温度の差に基づいて、プランジャチップ13aの内部を流れる冷却媒体の流量を調整する調整ステップ(ステップST5〜ST10)と、を有している。
【0089】
(計測実験)
図4(a)〜
図4(d)は、実施形態と同様のダイカストマシンにおいて、プランジャ13に係る温度(供給側温度及び排出側温度等)の計測実験結果を示す図である。
【0090】
この計測実験においては、溶湯の温度は680℃であり、プランジャチップ13aの直径は70mmであり、スリーブ充填率は30%であった。また、温度を計測するショット数(成形サイクル数)は20回とした。冷却水の流量qは、0(l/s)、3.0(l/s)、5.0(l/s)、8.5(l/s)の4ケースとした。プランジャの速度は、低速射出のみのケースと、低速射出、高速射出及び増圧を行うケースとの2ケースとした。ただし、両者は巨視的には同様の結果であったので、以下では、前者の速度のケースの計測結果のみを示す。
【0091】
図4(a)は、実施形態とは異なり、サーモカメラによって、押出追従のときにプランジャ13の温度を計測した結果を示している。横軸は、冷却水の流量q(l/s)を示し、縦軸は、温度T(℃)を示している。
【0092】
線L1は、チップ中央における20ショットの最大値を示している。線L2は、チップ中央における20ショットの最小値を示している。線L3は、チップ側面における20ショットの最大値を示している。線L4は、チップ側面における20ショットの最小値を示している。線L5は、これらの平均値を示している。
【0093】
この図に示すように、プランジャチップ13aの温度は、100℃を超える比較的高い温度となっている。すなわち、熱電対若しくはサーミスタ等の接触式の温度センサーを用いる場合においては、耐熱性が高いセンサーが必要である。
【0094】
また、プランジャチップ13aの温度は、測定位置によってばらつきが大きく、また、冷却水の流量を変化させたときの変化の態様も測定位置によって大きく相違する。すなわち、プランジャチップ13aの温度に基づく流量制御では、一貫性を確保することが困難である。
【0095】
図4(b)〜
図4(d)は、実施形態と同様に、供給側温度及び排出側温度を計測した結果を示している。横軸は、時間t(s)を示し、縦軸は、温度T(℃)を示している。
【0096】
なお、
図4(a)を参照して説明した、サーモカメラによる温度計測では、その計測時期が押出追従のときのような時期に限定されることから、
図4(b)〜
図4(d)のような時系列では温度変化を示していない。このように、計測時期が限られないことも、本実施形態の計測方法の利点の一つである。
【0097】
図4(b)〜
図4(d)はそれぞれ、冷却水の流量が8.5(l/s)、5.0(l/s)及び3.0(l/s)のケースに対応している。なお、当然に、
図4(a)とは異なり、冷却水の流量が0(l/s)では、計測はできない。各図において、線L11は、供給側温度を示し、線L12は、排出側温度を示している。
【0098】
これらの図に示すように、冷却水の温度は、常温の範囲内(例えば20℃±15℃)に収まっている。すなわち、熱電対若しくはサーミスタ等の接触式の温度センサーの耐熱性は、さほど高くなくてよい。
【0099】
また、排出側温度(温度差ΔT
W)は、成形サイクルが繰り返されると、成形サイクル中の変動を残しつつも、巨視的には安定していく。これは既に述べたように、鋳造条件及び冷却水の流量等が一定であれば、溶湯がプランジャ13に与える熱量と、プランジャ13が冷却水に与える熱量とは、いつかは均衡することからである。従って、これも既に述べたように、巨視的には、供給側温度と排出側温度との差に基づいて算出される、プランジャ13が冷却水に与えた熱量は、プランジャ13が溶湯から受けた熱量とみなされてよい。
【0100】
なお、この計測実験では、20サイクルについてのみ計測を行ったことから、
図4(c)及び
図4(d)では、まだ完全に排出側温度が安定していないようにも見える。ただし、図示しないケースの結果も踏まえると、今回の計測実験の鋳造条件では、概ね20サイクルまでには排出側温度は安定した。
【0101】
排出側温度が巨視的に安定した部分においては、
図4(b)〜
図4(d)を比較すると、冷却水の流量が増加するほど、供給側温度と排出側温度との差は小さくなる。このことから、温度差ΔT
Wに基づいて冷却水の流量を調整する制御が可能であることが確認された。
【0102】
なお、以上の実施形態において、供給側温度センサー39は第1の温度検出器の一例であり、供給側温度センサー41は第2の温度検出器の一例であり、供給側流路29は第1の流路の一例であり、排出側流路31は第2の流路の一例である。
【0103】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0104】
例えば、成形機は、ダイカストマシンに限定されず、プラスチックを成形する射出成形機であってもよいし、他の金属成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、縦型締めのもの及び/又は縦射出のものであってもよい。また、成形機は、液圧機器(油圧機器)によって駆動されるものに限定されず、電動機によって駆動されるものであってもよいし、液圧機器と電動機とを組み合わせたハイブリッド式のものであってもよい。
【0105】
プランジャ内を流れる冷却媒体は、水に限定されない。水以外の液体であってもよいし、気体であってもよい。ただし、水であれば安価である。また、工場は、通常、冷却水を供給する設備を有していることから、当該設備を利用できる。また、プランジャ内の流路を含む、冷却媒体の流路は、冷却媒体を循環させるものに限定されない。例えば、冷却に利用された水は、工場外へ排出されてもよい。
【0106】
供給側温度及び排出側温度は、プランジャ内を流れる冷却媒体の、プランジャ外部における温度でなくてもよい。換言すれば、供給側温度センサー及び排出側温度センサーは、給排装置の供給側流路及び排出側流路に設けられるものでなく、プランジャに設けられるものであってもよい。プランジャのうち、冷却水の温度変化に支配的なのはプランジャチップであり、プランジャチップよりも供給側及び排出側において温度が検出されれば、実施形態において説明した冷却量の調整を行うことができる。従って、例えば、温度センサーは、実施形態のプランジャ13の流入口23e及び流出口23f付近においてプランジャ13に取り付けられるものであってもよい。
【0107】
本発明の一態様に係る成形方法において、射出装置は、供給側温度センサー及び排出側温度センサーを有していなくてもよい。例えば、試運転のときなど、適宜な時期に一時的に温度センサーを射出装置に取り付け、その検出結果を踏まえて、作業者が冷却量を調整してもよい。
【0108】
冷却量の調整は、プランジャ内を流れる冷却媒体の流量を調整することによるものに限定されない。例えば、流量の調整に代えて又は加えて、プランジャ内を流れる冷却媒体の温度が調整されてよい。換言すれば、冷却量を調整する調整部は、プランジャ内を流れる冷却媒体の温度を制御する冷却装置であってもよい。例えば、実施形態の冷却装置37が、プランジャ内を流れる冷却媒体をファンによって空冷するものである場合は、そのファンの回転数を調整してもよい。また、例えば、冷却装置37がプランジャ内を流れる冷却媒体と熱交換を行うチラーである場合においては、チラーの冷却媒体の流量を調整したり、チラーの冷却媒体を冷却する装置(例えばファン又はクーリングタワー)の冷却量を調整したりしてよい。
【0109】
また、冷却量の調整がプランジャ内を流れる冷却媒体の流量を調整することによる場合において、流量を調整する構成は、流量制御弁に限定されない。例えば、プランジャ内に冷却媒体を送出するポンプとして、その送出量を変化させることが可能なものを用い、このポンプを調整部として利用してもよい。なお、送出量の変化は、回転数の変化によって実現されてもよいし、1回転あたりの吐出量の変化によって実現されてもよい。
【0110】
射出装置は、供給側温度と排出側温度とに基づいて、プランジャの冷却量を調整するための調整部を有していなくてもよい。例えば、工場設備からプランジャへ冷却水が供給される場合において、その工場設備によって冷却水の流量及び温度が調整されてもよい。ただし、調整部が工場設備のものであるとしても、射出装置の設置後においては、調整部を射出装置の一部としてみなすか否かの定義の問題に過ぎない。
【0111】
射出装置は、調整部を制御する制御装置を有していなくてもよい。既に述べたように、供給側温度及び排出側温度に基づいて、及び/又は、その温度差に基づいて、作業者が調整部を制御してもよいからである。逆に、射出装置は、作業者にそのような冷却量の調整をさせるための構成を有していなくてもよい。すなわち、射出装置の表示装置は、供給側温度及び排出側温度の双方の表示、及び、その温度差の表示を行わなくてもよい。
【0112】
検出温度の差に基づく冷却量の調整方法(調整部の制御方法)は、温度差に基づいて熱量を算出し、その熱量に基づいて膨張量を算出するものに限定されない。例えば、温度差が所定の許容範囲に収まるか否かが判定され、その判定に基づいて冷却量が制御されたり、算出した熱量が所定の許容範囲に収まるか否か判定され、その判定に基づいて冷却量が制御されたりしてもよい。また、指標値(膨張量等)が許容範囲に収まるか否かの判定を行わずに、指標値の目標値からの偏差に応じて冷却量が制御されてもよい。
【0113】
熱量に基づいて冷却量の調整がなされる場合、実質的に熱量が算出されていればよい。例えば、(1)〜(4)式が纏められて1つの式にされ、(1)式自体はプログラムになかったり、さらには、(1)〜(4)式の係数同士が乗じられた値が当初から用いられており、プログラムに比熱c
wが表れていなかったり、計算途中で補正係数が乗じられ、補正された熱量が算出されたりしていてもよい。なお、例えば、温度差T
wと冷却媒体の流量qとの双方に概略比例した値に基づいて制御が行われていれば、熱量が実質的に算出されていると考えることができる。熱量について述べたが、膨張量についても同様である。
【0114】
供給側温度、排出側温度及び流量に基づく、熱量又は膨張量の算出において、その一部又は全部は、予め構築されたデータベース(マップ)からの値の抽出(特定)を含んでいてもよい。例えば、供給側温度及び排出側温度(又は温度差)並びに流量をキーとして、マップを探索し、熱量又は膨張量を特定してもよい。