特許第6633923号(P6633923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6633923保護フィルム用粘着剤組成物及び保護フィルム
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  • 特許6633923-保護フィルム用粘着剤組成物及び保護フィルム 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633923
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】保護フィルム用粘着剤組成物及び保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20200109BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200109BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20200109BHJP
【FI】
   C09J133/04
   C09J11/06
   C09J7/00
【請求項の数】7
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-12738(P2016-12738)
(22)【出願日】2016年1月26日
(65)【公開番号】特開2017-132862(P2017-132862A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】堀 崇晴
(72)【発明者】
【氏名】鴨井 彬
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏人
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/116814(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/188840(WO,A1)
【文献】 特開2015−174966(JP,A)
【文献】 特開2014−111705(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/103885(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/128294(WO,A1)
【文献】 特開2009−242745(JP,A)
【文献】 特開2013−194152(JP,A)
【文献】 特開2017−128636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸価が9mgKOH/g以上70mgKOH/g以下である(メタ)アクリル系ポリマーと、
前記(メタ)アクリル系ポリマーの酸性基1当量に対して0.3当量以上2.0当量以下である金属キレート系架橋剤と、
帯電防止剤と、
を含む、保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、下記一般式(1)で表される構成単位を有する請求項1に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【化1】


(一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。Lは、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基及び酸素原子よりなる群より選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基を示す。)
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの酸価と、前記金属キレート系架橋剤の当量と、の積が3以上40以下の範囲内である、請求項1又は請求項2に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項4】
さらに、ポリエーテル変性シリコーンを含み、前記ポリエーテル変性シリコーンの含有量が、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して0.05質量部以上1.00質量部以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項5】
さらに、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を有し、かつ、重量平均分子量が3,000以上30,000以下である(メタ)アクリル系オリゴマーを含み、前記(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量が、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して0.05質量部以上2.00質量部以下である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系オリゴマーは、アルキレンオキシド鎖を有するモノマーに由来する構成単位を全構成単位に対して5質量%以上30質量%以下の範囲で有する、請求項5に記載の保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の保護フィルム用粘着剤組成物を用いて配置された粘着剤層と、基材と、を有する保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護フィルム用粘着剤組成物及び保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられる偏光板などの光学部材は、打抜加工、検査、輸送、液晶表示板の組立などの各工程を経る間、その表面が汚染されたり損傷したりしないよう保護フィルムで保護され、当該保護フィルムは、光学部材の表面の保護が不要となった段階で剥離除去される。
【0003】
保護フィルムを光学部材から剥離する際に、静電気が発生すると、光学部材にほこりなどが付着したり、液晶表示装置の回路が破壊されたりする不具合が生じるため、保護フィルムには、剥離時に発生する静電気を防止できる性質(帯電防止性)が求められる。
また、保護フィルムには、保護が不要となるまで不意な剥離が生じない程度の粘着力が求められる。さらに近年、作業効率を向上させる目的として、保護フィルムの被着体からの剥離は、高速(例えば30m/分)で行われる傾向があり、高速剥離時においても、容易に被着体から剥離できることが求められる。すなわち、保護フィルムには、不意な剥離が生じず、かつ保護フィルムの高速剥離時における粘着力が低く高速剥離性に優れることが求められている。
【0004】
また、保護フィルムに用いられる粘着剤層は、光学部材の視認性を確保するために、透明性が高いアクリル系粘着剤組成物で形成されることが多い。このようなアクリル系の粘着剤層を有する保護フィルムの製造には、粘着剤組成物を基材フィルムに塗工し、乾燥して溶媒を除去した後、架橋反応を終了するまでに、7日間程度養生する必要がある。そのため、養生が完了するまでの間、保護フィルムを保管するスペースの確保が必要となるため、生産効率の面からも養生が完了するまでに要する時間(以下、「養生完了時間」ともいう)の短縮が望まれている。
【0005】
帯電防止性に優れる粘着剤層を形成できる保護フィルム用の粘着剤組成物として、アルキル(メタ)アクリレートを主成分とする酸価が29以下の(メタ)アクリル系ポリマーとフッ素含有リチウムイミド塩を含む粘着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
帯電防止性に優れ養生完了時間も短い粘着剤層を形成できる保護フィルム用の粘着剤組成物として、水酸基を有する(メタ)アクリルアミドに由来する構成単位を有する(メタ)アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、を含む粘着剤組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
養生完了時間が短く、高速剥離時の粘着力が低い粘着剤層を形成できる粘着剤組成物として、アクリル系樹脂と、ウレタン(メタ)アクリレートと、イオン性化合物と、を含有し、活性エネルギー線で架橋された粘着剤層を含む保護シートが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−306937号公報
【特許文献2】特開2009−126929号公報
【特許文献3】特開2010−31255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の保護フィルムは、帯電防止性に優れるものの、養生完了時間が長く、生産性に劣る。
帯電防止性を確保しつつ養生完了時間を短縮する技術としては、上記のように、特許文献2に記載の技術が開示されている。特許文献2に記載の粘着組成物では、養生完了までに3日間程の時間を要しており、養生完了時間として必ずしも満足されているものでなく、更なる短縮が求められる。しかも、高速剥離時の粘着力については検討されておらず、高速剥離時の粘着力が高く、高速剥離性に劣る場合がある。
また、特許文献3に記載の、活性エネルギー線で架橋した粘着剤層を含む保護シートは、養生完了時間が短いものの、保護シートの製造設備として活性エネルギー線の照射機が必要となる。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、養生完了時間が短く、帯電防止性に優れ、不意に剥離しない程度の粘着力を有し、高速剥離時の粘着力が低く高速剥離性に優れる保護フィルム用粘着剤組成物、及びこれを用いてなる保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための具体的な手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 酸価が9mgKOH/g以上70mgKOH/g以下である(メタ)アクリル系ポリマーと、前記(メタ)アクリル系ポリマーの酸性基1当量に対して0.3当量以上2.0当量以下である金属キレート系架橋剤と、帯電防止剤と、を含む、保護フィルム用粘着剤組成物である。
【0012】
<2> 前記(メタ)アクリル系ポリマーは、下記一般式(1)で表される構成単位を有する前記<1>に記載の保護フィルム用粘着剤組成物である。
【0013】
【化1】
【0014】
一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。Lは、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基及び酸素原子よりなる群より選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基を示す。
【0015】
<3> 前記(メタ)アクリル系ポリマーの酸価と、前記金属キレート系架橋剤の当量と、の積が3〜40の範囲内である、前記<1>又は<2>に記載の保護フィルム用粘着剤組成物である。
【0016】
<4> さらに、ポリエーテル変性シリコーンを含み、前記ポリエーテル変性シリコーンの含有量が、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対する含有量が、0.05質量部以上1.00質量部以下である前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の保護フィルム用粘着剤組成物である。
【0017】
<5> さらに、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を有し、かつ、重量平均分子量が3,000以上30,000以下である(メタ)アクリル系オリゴマーを含み、前記(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量が、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して0.05質量部以上2.00質量部以下である、前記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の保護フィルム用粘着剤組成物である。
【0018】
<6> 前記(メタ)アクリル系オリゴマーは、アルキレンオキシド鎖を有するモノマーに由来する構成単位を全構成単位に対して5質量%以上30質量%以下の範囲で有する、前記<5>に記載の保護フィルム用粘着剤組成物である。
【0019】
<7> 前記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の保護フィルム用粘着剤組成物を用いて配置された粘着剤層と、基材と、を有する保護フィルムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、養生完了時間が短く、帯電防止性に優れ、不意に剥離しない程度の粘着力を有し、高速剥離時の粘着力が低く高速剥離性に優れる保護フィルム用粘着剤組成物、及びこれを用いてなる保護フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】粘着力及び高速剥離時の剥離性を評価する方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の保護フィルム用粘着剤組剤成物及び保護フィルムについて詳細に説明する。なお、本発明において、数値範囲における「〜」は、「〜」の前後の数値を含むことを意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0023】
本明細書において、(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーとは、これを構成するモノマーのうち少なくとも主成分であるモノマーが(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであるポリマー又はオリゴマーを意味する。主成分であるモノマーとは、ポリマー又はオリゴマーを構成するモノマーの中で最も含有率(質量%)が大きいモノマーを意味する。本発明の(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーの好ましい実施態様は、主成分である(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位の含有率が全構成単位の50質量%以上である。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両者を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両者を意味し、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両者を意味する。
【0024】
≪保護フィルム用粘着剤組成物≫
本発明の保護フィルム用粘着剤組成物(以下、単に「本発明の粘着剤組成物」ともいう)は、酸価が9mgKOH/g以上70mgKOH/g以下である(メタ)アクリル系ポリマー(以下、「特定(メタ)アクリル系ポリマー」と称する場合がある)と、前記(メタ)アクリル系ポリマーの酸性基1当量に対して0.3当量以上2.0当量以下である金属キレート系架橋剤と、帯電防止剤と、を含む。
【0025】
保護フィルム用粘着剤組成物が上記構成を有していることで、保護フィルムを作製する場合の養生完了時間を短縮することができ、帯電防止性に優れ、不意に剥離しない程度の粘着力を有し、高速剥離時の粘着力が低く高速剥離性に優れた保護フィルムが得られる。これは以下のように考えることができる。
【0026】
一般に、養生完了時間を短縮するには、(メタ)アクリル系ポリマーが有する架橋点の数を増やし、反応性の高い架橋剤を用いればよいと考えられる。例えば、酸性基であるカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系ポリマーと、金属キレート系架橋剤と、の併用は、架橋反応速度が速い点で広く知られている。
しかし、酸性基を有する(メタ)アクリル系ポリマーと金属キレート系架橋剤とを用いた保護フィルム用粘着剤では、弾性が低くなり、粘着力が高くなる傾向があるため、高速剥離時に保護フィルムを被着体から剥離し難い場合がある。しかも、酸性基は帯電防止性を悪化させるため、そもそも帯電防止性が求められる保護フィルム用粘着剤においては、これらの併用は適しないものとされていた。
本発明において、酸性基の量と、金属キレート系架橋剤の量と、を所定範囲にすることで、酸性基による帯電防止性の低下を最小限に抑えられる。また、(メタ)アクリル系ポリマーの酸価を所定の範囲とすることで、架橋体に適度な硬さを与えることができ、高速剥離時の粘着力を低くできると考えられる。すなわち、本発明は、酸価と金属キレート系架橋剤の量とにより、帯電防止性と粘着力とのバランスを図っている。
さらに、本発明では、酸性基であるカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系ポリマーと、金属キレート系架橋剤と、を併用するため、従来のイソシアネート化合物を架橋剤として用いた場合に比べ、養生完了時間を大幅に短縮することができ、生産効率が高い保護フィルム用粘着剤組成物を得ることができる。
【0027】
[(メタ)アクリル系ポリマー]
本発明における保護フィルム用粘着剤組成物は、酸価が9mgKOH/g以上70mgKOH/g以下である(メタ)アクリル系ポリマーの少なくとも1種を含む。本発明の粘着剤組成物は、必要に応じて、前記(メタ)アクリル系ポリマーとは異なる(メタ)アクリル系ポリマーを更に含んでいてもよい。
本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーの酸価は、高速剥離時の粘着力を低く抑える観点、すなわち高速剥離性をより向上させる観点から、酸価が9mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であり、同様の観点から、酸価が11mgKOH/g以上40mgKOH/g以下が好ましく、酸価が13mgKOH/g以上30mgKOH/g以下がより好ましい。
(メタ)アクリル系ポリマーの酸価が70mgKOH/gを超えると、本発明の粘着剤組成物を含んで作製された粘着剤層が硬くなり、粘着剤層の粘着力が低くなりすぎて、被着体から保護フィルムが不意に剥離し易い。また、帯電防止性も低下する。また、(メタ)アクリル系ポリマーの酸価が9mgKOH/g未満であると、本発明の粘着剤組成物を用いて粘着層を形成した場合に、形成された粘着層は柔らか過ぎて、粘着力が高くなりすぎるので、高速剥離時に剥離し難くなる場合がある。
【0028】
(メタ)アクリル系ポリマー又は後述する(メタ)アクリル系オリゴマーの酸価は、それぞれ以下の計算式によって求められる。
【0029】
酸価(mgKOH/g)={(A/100)÷B}×56.1×1000×C
A=(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーに使用される全モノマー中の、カルボキシ基を有するモノマーの含有率(質量%)
B=(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーに使用されるカルボキシ基を有するモノマーの分子量
C=カルボキシ基を有するモノマー1分子中に含まれるカルボキシ基の数
なお、56.1はKOHの分子量である。
また、カルボキシ基を有するモノマーが複数種ある場合は、それぞれのモノマーについて上記式より求めた値を合算して酸価を求めることができる。
【0030】
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系ポリマーは、酸性基を有する。特定(メタ)アクリル系ポリマーは、酸性基を有する構成単位を含むことが好ましい。酸性基を有する構成単位としては、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位が好ましい。中でも、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位などが挙げられる。カルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位としては、下記一般式(1)で表される構成単位が挙げられる。
一般式(1)で表される構成単位を有すると、カルボキシ基がLを介して結合していることにより、高速剥離時の粘着力を低く抑えることができる。
【0031】
【化2】
【0032】
上記一般式(1)で表される構成単位において、Lはアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基及び酸素原子よりなる群より選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。但し、Lが酸素原子を含む場合には、酸素原子は、アルキレン基、アリーレン基及びカルボニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種と結合した基が形成され、−COO−及び−CO−と結合する。
【0033】
Lにおけるアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。Lにおけるアルキレン基が直鎖状又は分岐鎖状の場合、アルキレン基の炭素数は、1〜12であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、2〜6であることが更に好ましい。
【0034】
また、Lにおけるアルキレン基が環状の場合、例えば、アルキレン基の炭素数が3〜5の環状基となっていてもよい。
【0035】
Lにおけるアリーレン基は、炭素数が6〜10であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。アリーレン基における結合位置は特に制限されない。例えばアリーレン基がフェニレン基の場合、結合位置は1位と4位、1位と2位、及び1位と3位のいずれであってもよく、1位と2位であることが好ましい。
【0036】
Lにおけるアルキレン基及びアリーレン基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、フェニル基などが挙げられる。
【0037】
一般式(1)におけるLで表される2価の連結基は、帯電防止性及び高速剥離性の観点から、下記一般式(2a)又は一般式(2b)で表される2価の連結基であることが好ましい。
【0038】
【化3】

【0039】
一般式(2a)及び(2b)中、R21〜R24はそれぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキレン基又は炭素数6〜10のアリーレン基を示す。nは0〜10の数を示し、mは1〜10の数を示す。
21〜R24におけるアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
21〜R24におけるアリーレン基における結合位置は特に制限されない。例えばアリーレン基がフェニレン基又はシクロヘキシレン基の場合、結合位置は1位と4位、1位と2位、及び1位と3位のいずれであってもよく、1位と2位であることが好ましい。
【0040】
21及びR22におけるアルキレン基は、各々独立に、炭素数が2〜10であることが好ましく、炭素数が2〜6であることがより好ましい。R21及びR22におけるアルキレン基は、同一であっても異なっていてもよい。
21及びR22におけるアリーレン基は、各々独立に、フェニレン基又はナフチレン基であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。
【0041】
一般式(2a)におけるR21及びR22は、帯電防止性及び高速剥離性の観点から、各々独立に、炭素数1〜12のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基がより好ましく、炭素数2〜6であって直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることが更に好ましい。
【0042】
一般式(2a)において、nは0〜10の数を表す。特定(メタ)アクリル系ポリマーが、一般式(1)で表される構成単位を1種類のみ含む場合には、nは整数であり、2種以上含む場合には、nは平均値である有理数となる。nは0〜4であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。
【0043】
23は、炭素数1〜12のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることが更に好ましい。
【0044】
24は、炭素数2〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、炭素数4〜8の環状アルキレン基(2価のシクロ環基)、又は炭素数6〜10のアリーレン基であることが好ましく、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、炭素数5〜6の環状アルキレン基、又はフェニレン基であることがより好ましく、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、シクロヘキシレン基、又はフェニレン基であることが更に好ましい。
【0045】
一般式(2b)において、mは1〜10の数を表す。特定(メタ)アクリル系ポリマーが、一般式(1)で表される構成単位を1種類のみ含む場合には、mは整数であり、2種以上含む場合には、mは平均値である有理数となる。mは1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。
【0046】
一般式(1)で表される構成単位は、例えば、下記一般式(1a)で表されるモノマーを、特定(メタ)アクリル系ポリマーを構成する他のモノマーとともに共重合することで、特定(メタ)アクリル系ポリマーに導入することができる。
【0047】
【化4】

【0048】
一般式(1a)中、R及びLは一般式(1)におけるR及びLとそれぞれ同義である。
【0049】
一般式(1a)で表されるモノマーは、常法により製造したものであっても、市販のモノマーから適宜選択したものであってもよい。一般式(1a)で表されるモノマーのうちLが一般式(2a)で表されるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ダイマー(好ましくは、一般式(2a)におけるnの平均値が約0.4のもの)、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート(好ましくは、一般式(2a)におけるnの平均値が約1.0のもの)が挙げられる。これらのモノマーは、例えば、「アロニックスM−5600」、「アロニックスM−5300」(以上、東亞合成株式会社製、商品名)として市販されているものを用いることができる。
【0050】
また、一般式(1a)で表されるモノマーのうちLが一般式(2b)で表されるモノマーとしては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフマル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸が挙げられる。これらのモノマーは例えば「ライトエステルHO−MS」、「ライトアクリレートHOA−MS(N)」、「ライトアクリレートHOA−HH(N)」、「ライトアクリレートHOA−MPL(N)」(以上、共栄社化学株式会社製、商品名)として市販されているものを用いることができる。
【0051】
特定(メタ)アクリル系ポリマーにおける一般式(1)で表される構成単位の含有率は、全構成単位に対して、3質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、8質量%以上が更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系ポリマーにおける一般式(1)で表される構成単位の含有率が3質量%以上であると、高速剥離時における粘着力がより低く抑えられる。
また、特定(メタ)アクリル系ポリマーにおける一般式(1)で表される構成単位の含有率は、高速剥離性と帯電防止性の点で40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0052】
特定(メタ)アクリル系ポリマーは、一般式(1)で表される構成単位に加えて、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の少なくとも1種を更に含むことが好ましい。
【0053】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖、分枝または環状のいずれであってもよい。
中でも、単独重合体としたときのガラス転移温度が−30℃以下であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0054】
特定(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を1種単独で含んでいても2種以上含んでいてもよく、2種以上含んでいることが好ましい。
【0055】
中でも、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位としては、n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートの少なくとも一方を含むことが好ましく、両方を含有することがより好ましい。
【0056】
特定(メタ)アクリル系ポリマーが、アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(好ましくは、単独重合体としたときのガラス転移温度が−30℃以下であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位)を含む場合、アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位(好ましくは単独重合体としたときのガラス転移温度が−30℃以下であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位)の総含有率は、全構成単位に対して、65質量%以上99質量%以下であることが好ましく、75質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上95質量%以下であることが更に好ましい。アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の総含有率が65質量%以上であると、なじみ性(濡れ性)により優れる傾向がある。また、アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の総含有率が99質量%以下であると、高速剥離時の粘着力が高くなりすぎず、高速剥離性により優れる傾向がある。
【0057】
特定(メタ)アクリル系ポリマーは、一般式(1)で表される構成単位及びアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位以外のその他の構成単位を更に含んでいてもよい。その他の構成単位としては、一般式(1)で表される構成単位と共にポリマーを構成可能であれば特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
その他の構成単位を形成し得るモノマーとしては、例えば、水酸基を有するモノマー、アルキレンオキシド鎖を有するモノマー、環状基を有するモノマーが挙げられる。
【0058】
水酸基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0059】
アルキレンオキシド鎖を有するモノマーとしては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0060】
環状基を有するモノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
特定(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、高速剥離性の観点から、−40℃以下が好ましく、−50℃以下がより好ましい。
【0062】
特定(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、下記式から計算により求められる絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算したモル平均ガラス転移温度である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k−1)/Tg(k−1)+mk/Tgk
式中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k−1)、Tgkは、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する各モノマーの単独重合体としたときの絶対温度(K)で表さられるガラス転移温度をそれぞれ表す。m1、m2、・・・、m(k−1)、mkは、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する各モノマーのモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k−1)+mk=1である。
なお、「単独重合体としたときの絶対温度(K)で表されるガラス転移温度」は、そのモノマーを単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度をいう。
単独重合体のガラス転移温度は、その単独重合体を、示差走査熱量測定装置(DSC)(セイコーインスツルメンツ社製、EXSTAR6000)を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られたDSCカーブの変曲点を、単独重合体のガラス転移温度としたものである。
【0063】
代表的なモノマーの「単独重合体のセルシウス温度(℃)で表されるガラス転移温度」は、メチルアクリレートは5℃であり、エチルアクリレートは−27℃であり、メチルメタクリレートは103℃であり、n−ブチルアクリレートは−57℃であり、2−エチルヘキシルアクリレートは−76℃であり、n−ドデシルメタクリレートは−65℃であり、n−オクチルアクリレートは−65℃であり、イソオクチルアクリレートは−58℃であり、イソノニルアクリレートは−58℃であり、イソミリスチルアクリレートは−56℃であり、アクリル酸は163℃であり、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートは−30℃であり、2−アクリロイルオキシエチル−コハク酸は−40℃である。
例えば、これら代表的なモノマーを用いることで、既述のガラス転移温度を適宜調整することが可能である。
【0064】
特定(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は特に制限されないが、特定(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、20万以上100万以下であることが好ましく、30万以上80万以下であることがより好ましい。特定(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)が20万以上であれば、高速剥離時に、特定(メタ)アクリル系ポリマーが被着体に残ることをより効果的に抑制でき、汚染性をより低くする傾向がある。また、100万以下であれば、なじみ性(濡れ性)により優れる傾向がある。
【0065】
また、特定(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)は、20以下であることが好ましく、3〜15の範囲であることがより好ましい。分散度(Mw/Mn)の値が20以下であれば、高速剥離時に、特定(メタ)アクリル系ポリマーが被着体に残ることをより効果的に抑制でき、汚染性をより低くする傾向がある。
【0066】
なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、下記の(1)〜(3)に従って測定される値である。
【0067】
(1)(メタ)アクリル系ポリマーの溶液を剥離紙に塗布し、100℃で2分間乾燥し、フィルム状の(メタ)アクリル系ポリマーを得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル系ポリマーとテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算値として、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定する。
【0068】
(条件)
GPC :HLC−8220 GPC〔東ソー株式会社製〕
カラム :TSK−GEL GMHXL 4本使用
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :0.6mL/分
カラム温度:40℃
【0069】
粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系ポリマーの含有率は、目的などに応じて適宜選択することができる。特定(メタ)アクリル系ポリマーの含有率は、粘着剤組成物の固形分総質量中に、80質量%以上99質量%以下であることが好ましく、85質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上98質量%以下であることが更に好ましい。なお、固形分総質量とは粘着剤組成物から、溶剤などの揮発性成分を除いた残渣の総質量を意味する。
【0070】
[(メタ)アクリル系オリゴマー]
本発明の粘着剤組成物は、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位を有し、重量平均分子量が3,000以上30,000以下である(メタ)アクリル系オリゴマーを含むことができる。
本発明の粘着剤組成物が上記の(メタ)アクリル系オリゴマーを更に含むことで、帯電防止剤及び後述のポリエーテル変性シリコーンを含む場合のポリエーテル変性シリコーンの量を抑えることができる。これにより、保護フィルムを被着体から剥離した際に粘着剤層の一部が被着体に残りにくくなるため、被着体への汚染(クモリ)の発生が抑制され、汚染性を低くする傾向にある。くわえて、(メタ)アクリル系ポリマーの相溶性が低下することで発生する白濁を抑制することができる。
【0071】
本発明の粘着剤組成物が(メタ)アクリル系オリゴマーを含む場合、(メタ)アクリル系オリゴマーは、1種のみであってもよく、モノマーの組成、重量平均分子量などが異なる2種以上であってもよい。
【0072】
(メタ)アクリル系オリゴマーに含まれるカルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位は、高速剥離性の向上に寄与する。カルボキシ基を有するモノマーの種類は、特に制限されない。
カルボキシ基を有するモノマーとしては、既述の(メタ)アクリル系ポリマーにおけるカルボキシ基を有するモノマーを挙げられ、それらの中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0073】
(メタ)アクリル系オリゴマーにおけるカルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位の含有率は、汚染性を低くする観点から、全構成単位に対して0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上7.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下が更に好ましい。
【0074】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位は、粘着力の調整に寄与する。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、既述の(メタ)アクリル系ポリマーにおけるアルキル(メタ)アクリレートを挙げられる。
中でも、粘着剤層を高温高湿環境下に曝した場合であっても、高い耐久性が発揮される点で、炭素数4〜12のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、分岐鎖を有する炭素数4〜12のアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、2−エチルヘキシルメタクリレートが更に好ましい。
【0075】
(メタ)アクリル系オリゴマーにおけるアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有率は、耐久性の観点から、全構成単位に対して65質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
また、(メタ)アクリル系オリゴマーにおけるアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有率は、耐久性の点で99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が更に好ましい。
【0076】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、アルキレンオキシド鎖を有するモノマーに由来する構成単位を含むことが好ましい。
【0077】
(メタ)アクリル系オリゴマーにおけるアルキレンオキシド鎖を有するモノマーに由来する構成単位の含有率は、全構成単位に対して5質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましく、5質量%以上15質量%以下が特に好ましい。
アルキレンオキシド鎖を有するモノマーに由来する構成単位の含有率が5質量%以上であると、帯電防止性により優れる傾向がある。また、アルキレンオキシド鎖を有するモノマーに由来する構成単位の含有率が30質量%以下であると、重合反応後に重合せず残存するモノマーが少なくなり、汚染性をより低くする傾向がある。
【0078】
(メタ)アクリル系オリゴマーは、本発明の効果が発揮される範囲内において、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位及びアルキレンオキシド鎖を有するモノマーに由来する構成単位以外の構成単位(その他の構成単位)を含んでもよい。
この場合、(メタ)アクリル系オリゴマーの全構成単位に占める、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位と、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位と、アルキレンオキシド鎖を有するモノマーに由来する構成単位と、の合計の含有率は、全構成単位に対して80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
【0079】
その他の構成単位を構成するモノマーとしては、既述の水酸基を有するモノマー、環状基を有するモノマーなどが挙げられる。
【0080】
(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量は、被着体から不意に剥離しない程度に必要な粘着力を粘着剤層に付与しつつ、優れた高速剥離性も保持させる観点から、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.05質量部以上2.00質量部以下が好ましく、0.10質量部以上1.50質量部以下がより好ましく、0.10質量部以上1.20質量部以下が更に好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量が0.05質量部以上であると、高速剥離時の粘着力が高くなりすぎず、高速剥離性がより優れる傾向がある。(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量が2.00質量部以下であると、被着体から保護フィルムが不意に剥離しない程度に必要な粘着力を粘着剤層に付与することができ、高速剥離性に優れる。
【0081】
(メタ)アクリル系オリゴマーの酸価は、(メタ)アクリル系ポリマーと十分に架橋させ、高速剥離性をより向上させる観点から、10mgKOH/g以上が好ましく、15mgKOH/g以上がより好ましい。
また、(メタ)アクリル系オリゴマーの酸価は、帯電防止性を良好に保つ観点から、200mgKOH/g以下が好ましく、100mgKOH/g以下がより好ましく、50mgKOH/g以下が更に好ましい。
なお、(メタ)アクリル系オリゴマーの酸価の算出方法は、既述の通りである。
【0082】
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は、高速剥離時に(メタ)アクリル系オリゴマーが被着体に残ることを防ぐ観点からは、1,000以上が好ましく、4,000以上がより好ましく、7,000以上が更に好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は、粘着剤層のヘイズを低くする観点からは、30,000以下が好ましく、25,000以下がより好ましく、20,000以下が更に好ましい。
【0083】
(メタ)アクリル系オリゴマーの数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される分散度(Mw/Mn)は、特に制限されない。例えば、汚染性をより低くする観点から、(メタ)アクリル系オリゴマーの分散度(Mw/Mn)は、1〜30の範囲が好ましい。
【0084】
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、既述の(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定方法と同様にして測定される。
【0085】
(メタ)アクリル系オリゴマーのガラス転移温度(Tg)は、50℃以下が好ましい。(メタ)アクリル系オリゴマーのTgが50℃以下であると、加熱処理による粘着力の上昇を抑制できるため、高速剥離性がより優れる。
【0086】
(メタ)アクリル系オリゴマーのガラス転移温度は、既述の(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度の計算方法と同様にして計算される。
【0087】
[金属キレート系架橋剤]
本発明の粘着剤組成物は、特定の(メタ)アクリル系ポリマーとともに、(メタ)アクリル系ポリマーの酸性基に対して、0.3当量以上2.0当量以下の金属キレート系架橋剤の少なくとも1種を含む。
金属キレート系架橋剤は、(メタ)アクリル系ポリマーに含まれるカルボキシ基と反応して架橋構造を形成する。金属キレート系架橋剤を使用することで、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤などを用いる場合に比べ、架橋反応が早く、養生完了時間を短縮することができる。
【0088】
金属キレート系架橋剤としては、多価金属が有機化合物と配位結合しているものが挙げられる。多価金属原子としては、例えば、Al、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Tiが挙げられる。これらの中でも、低コスト及び入手し易さの観点から、Al、Zr、及びTiが好ましく、Alがより好ましい。
配位結合する有機化合物中の原子としては、酸素原子などが挙げられ、有機化合物としては、アルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物などが挙げられる。
本発明においては、特に安定で取り扱いが容易なアルミニウムトリスアセチルアセトネートなどを好適に用いることができる。また、金属キレート系架橋剤は、2種以上を併用してもよい。
【0089】
金属キレート系架橋剤の当量は、特定(メタ)アクリル系ポリマーの酸性基1当量に対して、0.3当量以上2.0当量以下であり、好ましくは、0.4当量以上1.5当量以下であり、より好ましくは、0.6当量以上1.2当量以下である。金属キレート系架橋剤の含有量が、0.3当量未満であると、高速剥離時の粘着力が高くなる。金属キレート系架橋剤の含有量が、2.0当量を超えると、粘着剤層の粘着力が低くなりすぎて、被着体から保護フィルムが不意に剥離しやすく、また、帯電防止性も低下する。
【0090】
上記当量は、以下の式より計算した値である。
当量=( A×B/C)/(D×E/F+D×E/F+・・・・+D×E×F
A=金属キレート系架橋剤の金属の価数
B=金属キレート系架橋剤の質量部数(固形分としての量)
C=金属キレート系架橋剤の分子量
、D、・・・D=(メタ)アクリル系ポリマーに使用される全モノマー中の酸性基を有する各モノマーの含有率(質量%)
、E、・・・E=酸性基を有する各モノマーの1分子中に含まれる酸性基の数
、F、・・・F=(メタ)アクリル系ポリマーに使用される、酸性基を有する各モノマーの分子量
なお、nは、使用されたモノマーの種類の数を表し、例えば、使用された(メタ)アクリル系モノマーが1種である場合は、Dのみが計算に用いられ、D・・・Dは計算に用いられない。
【0091】
金属キレート系架橋剤は、特定(メタ)アクリル系ポリマーの酸価と、金属キレート系架橋剤の当量との積が、3以上40以下となる範囲で用いることが好ましく、5以上35以下となる範囲で用いることがより好ましく、8以上35以下となる範囲で用いることが更に好ましい。特定(メタ)アクリル系ポリマーの酸価と、金属キレート系架橋剤の当量との積が、3以上であると、高速剥離性により優れる傾向がある。また、金属キレート系架橋剤の当量との積が、40以下であると、被着体から保護フィルムが不意に剥離しない程度に必要な粘着力を粘着剤層に付与しやすく、高速剥離性と帯電防止性により優れる傾向がある。
【0092】
[帯電防止剤]
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止剤の少なくとも1種を含有する。
【0093】
帯電防止剤としては、イオン性化合物が挙げられる。前記イオン性化合物としては、アルカリ金属塩、有機塩などが挙げられる。前記帯電防止剤としては、イオン解離性が高く、少量であっても優れた帯電防止性を発現しやすい点で、アルカリ金属塩及び有機塩が好ましい。帯電防止剤の含有量を少なくできると、汚染性がより抑えられる観点から好ましい傾向がある。
【0094】
前記アルカリ金属塩は、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、ルビジウム(Rb)などをカチオンとする金属塩であれば特に制限されない。
例えば、Li、Na、Kよりなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンと、Cl、Br、I、BF、PF、SCN、ClO、CFSO、(FSO、(CFSO、(CSO-、(CFSOよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、から構成される金属塩が好適に用いられる。
【0095】
中でも、アルカリ金属塩は、帯電防止性の観点から、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiClO、LiCFSO、Li(FSON、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOCなどのリチウム塩が好ましく、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOCがより好ましい。これらのアルカリ金属塩は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0096】
前記有機塩は、有機カチオンとその対イオンとを含む。
有機塩は、融点が30℃以上であることが好ましい。有機塩の融点が30℃以上であると、被着体への移行が少なく、汚染性が低く好ましい。
有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アルキルピロリジニウムカチオン、有機基を置換基として有するアンモニウムカチオン、有機基を置換基として有するスルホニウムカチオン、有機基を置換基として有するホスホニウムカチオンが挙げられる。これらの中でも、帯電防止性の観点から、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンが好ましい。
【0097】
有機カチオンの対イオンとなるアニオン部は、特に限定されるものではなく、無機アニオン又は有機アニオンのいずれでもよい。中でも、特に、帯電防止性に優れるため、フッ素原子を含むフッ素含有アニオンが好ましく、更にはヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF)が好ましい。
【0098】
有機塩の例としては、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルピロリジニウム塩、アルキルホスホニウム塩などが好適に挙げられる。中でも、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩が好ましく、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンと、フッ素含有アニオンとの塩が特に好ましい。
【0099】
本発明の粘着剤組成物における帯電防止剤の含有量は、特定(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.05質量部以上0.50質量部以下であることが好ましく、0.10質量部以上0.30質量部以下であることがより好ましい。帯電防止剤の含有量が特定(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.05質量部以上であると、帯電防止性に優れる傾向がある。一方、帯電防止剤の含有量が0.50質量部以下であることで、帯電防止剤の含有量に対する帯電防止効果の効率が高くなる傾向がある。
【0100】
[ポリエーテル変性シリコーン]
本発明の粘着剤組成物は、ポリエーテル変性シリコーンの少なくとも1種を含有することができる。ポリエーテル変性シリコーンが反応性基を有することで、粘着フィルムは被着体から容易に剥離することができ、且つ被着体に対する汚染が少ない粘着フィルムが得られる。
【0101】
ポリエーテル変性シリコーンは、一般式(1)で表される構成単位を有する特定(メタ)アクリル系ポリマー及び、金属キレート系架橋剤とともに用いた場合に、帯電防止性が効果的に発現する。
【0102】
ポリエーテル変性シリコーンが、ポリエーテル基と、ポリエーテル基の末端にヒドロキシ基と、を有することで、優れた帯電防止性を示し、被着体に対する汚染を効果的に抑制することができる。特に、ポリエーテル変性シリコーンの分子内に末端がヒドロキシ基であるポリアルキレンオキシド鎖を有することで、帯電防止性能が効果的に発揮される。これは、ポリエーテル変性シリコーンが保護フィルム用粘着剤組成物に由来する粘着剤層の表面近傍に偏在することにより、アルカリ金属塩と相互作用するポリアルキレンオキシド鎖が粘着剤層の表面近傍に局在することになり、その結果、粘着剤層の表面における表面抵抗値を低下させるためと考えることができる。このように、ポリエーテル変性シリコーンを併用することで、本発明の粘着剤組成物における帯電防止剤の量を抑えることができる。
【0103】
ポリエーテル変性シリコーンは、帯電防止性と被着体に対する汚染性を低くする観点から、ジアルキルシロキサンに由来する構成単位とアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンに由来する構成単位とを含むポリシロキサン化合物であることが好ましい。
ジアルキルシロキサンにおけるアルキル基は、炭素数が1〜4であることが好ましく、1であることがより好ましい。
またアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキレンオキシド鎖は、炭素数が2〜4であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキレンオキシド鎖の含有数は、1〜100であることが好ましく、10〜100であることがより好ましい。アルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンにおけるアルキル基は、炭素数が1〜4であることが好ましい。
【0104】
ポリエーテル変性シリコーンが、ジアルキルシロキサンに由来する構成単位とアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンに由来する構成単位とを含む場合、ジアルキルシロキサンに由来する構成単位の含有数は100以下であることが好ましく、1〜80であることがより好ましい。またアルキル(ヒドロキシポリアルキレンオキシアルキル)シロキサンに由来する構成単位の含有数は2〜100であることが好ましく、2〜80であることがより好ましい。
【0105】
ポリエーテル変性シリコーンは、粘着性、帯電防止性及び被着体に対する汚染性を低くする観点から、下記一般式(3)で表されるポリシロキサン化合物であることが好ましい。
【0106】
【化5】

【0107】
一般式(3)中、pはジメチルシロキサン構成単位の繰り返し数であって0〜100の数を表す。qはポリエチレンオキシド鎖を有するメチルプロピレンシロキサン構成単位の繰り返し数であって2〜100の数を表す。またaはエチレンオキシド構成単位の繰り返し数であって1〜100の数をそれぞれ表わす。ここで、一般式(3)で表される化合物が複数の化合物の集合体である場合、p、q及びaは化合物の集合体としての平均値であり、有理数である。
【0108】
ポリエチレンオキシド構成単位の繰り返し数aは1〜100の数であるが、10〜100の数であることが好ましい。aが1以上であると充分な導電性が得られ、帯電防止効果が向上する傾向がある。またaが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性がより向上する傾向がある。
【0109】
また、ジメチルシロキサン構成単位の繰り返し数pは、0〜100の数であるが、1〜80の数であることが好ましい。pが0以上の場合には帯電防止効果が向上する傾向がある。また、pが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
さらに、メチルプロピレンシロキサン構成単位の繰り返し数qは、2〜100の数であるが、2〜80の数であることが好ましい。qが2以上であると充分な導電性が得られ、帯電防止効果が向上する傾向がある。またqが100以下であると粘着剤組成物を構成する他の成分との相溶性が向上し、粘着剤層の透明性が向上する傾向がある。
【0110】
ポリエーテル変性シリコーンの重量平均分子量については特に制限はなく、例えば、5,000以上20,000以下とすることができ、6,000以上15,000以下であることが好ましい。
【0111】
また、ポリエーテル変性シリコーンのHLB値については特に制限されないが、樹脂との相溶性、表面偏在性、及び粘着性の観点から、5以上16未満であることが好ましく、7以上15以下であることがより好ましい。
前記HLB値は、ポリエーテル変性シリコーンの親水性と疎水性のバランスを示す尺度である。本発明においては、下記式で算出されるグリフィン法の定義に従うが、ポリエーテル変性シリコーンが市販品の場合、そのカタログデータを優先して採用する。
HLB= {(親水性基部分の式量の総和)/(ポリエーテル変性シリコーンの分子量)}×20
【0112】
ポリエーテル変性シリコーンは分子内に、ジメチルシロキサン構成単位と、ポリエチレンオキシド鎖を有するメチルプロピレンシロキサン構成単位とを有する。これらの構成単位は、それぞれブロック共重合体を構成していても、ランダム共重合体を構成していてもよい。
【0113】
前記一般式(3)で表されるポリエーテル変性シリコーンの具体例としては、例えば、「SF−8428」、「FZ−2162」、「SH−3773M」〔以上、東レ・ダウコーニング株式会社製〕が挙げられる。
【0114】
ポリエーテル変性シリコーンは、上記のような市販品から選択されたものであってもよい。また、ポリエーテル変性シリコーンは、水素化ケイ素を有するジメチルポリシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリエチレンオキシド鎖を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトさせることによって得ることもできる。
【0115】
本発明の粘着剤組成物中における、ポリエーテル変性シリコーンの含有量は、特定(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.05質量部以上1.00質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上0.70質量部以下であることがより好ましく、0.05質量部以上0.30質量部以下であることが更に好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンの含有量が0.05質量部以上であると、帯電防止性により優れる傾向がある。またポリエーテル変性シリコーンの含有量が1.00質量部以下であることで、被着体への汚染(クモリ)の発生が抑制され、また、特定(メタ)アクリル系ポリマーとの相溶性が低下して白濁が発生することを抑制することができる。
【0116】
本発明の粘着剤組成物は、前記一般式(3)で表されるポリシロキサン化合物と、一般式(3)とは異なる構造を有し、ポリエチレンオキシ基を含むジメチルポリシロキサン化合物とを含んでいてもよい。
一般式(3)とは異なる構造を有し、ポリエチレンオキシド鎖を含むジメチルポリシロキサン化合物としては、例えば、ポリエチレンオキシド鎖の末端がアルコキシ基、アシルオキシ基である化合物、ポリオキシエチレンド鎖が側鎖ではなく、主鎖又は末端に含まれる化合物が挙げられる。
【0117】
具体的には例えば、「BY−16−201」、「FZ−77」、「FZ−2104」、「FZ−2110」、「FZ−2203」、「FZ−2207」、「FZ−2208」、「L−7001」、「L−7002」、「SF−8427」、「SH−3749」、「SH−8400」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)が挙げられる。
【0118】
前記粘着剤組成物が、前記一般式(3)とは異なる構造を有し、ポリエチレンオキシド鎖を含むジメチルポリシロキサン化合物を含む場合、その含有率はポリシロキサン化合物の総質量中に、0.05質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以下であることがより好ましい。
【0119】
[その他の成分]
本発明の保護フィルム用粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系ポリマー、金属キレート系架橋剤、及び帯電防止剤の他に、必要に応じて、耐候性安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、剥離助剤、染料、顔料、無機充填剤、界面活性剤などを適宜含有することができる。
【0120】
<保護フィルム>
本発明の保護フィルムは、保護フィルム用粘着剤組成物に由来する粘着剤層と、基材と、を備える。
前記粘着剤層が、保護フィルム用粘着剤組成物に由来するものであることにより、粘着性、剥離帯電による静電気の発生抑制、及び高速剥離性に優れる粘着剤層を構成することができる。
【0121】
本発明の保護フィルムに用いられる基材は、前記基材上に粘着剤層が形成可能であれば特に制限されない。
基材は、透視による光学部材の検査及び管理の観点から、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びアクリル系樹脂などから選択される樹脂を用いたフィルムが挙げられる。中でも、基材は、表面保護性能の観点から、ポリエステル系樹脂を用いたフィルムが好ましく、実用性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いたフィルムが特に好ましい。
【0122】
基材の厚さは、一般には500μm以下とすることができ、好ましくは5μm以上300μm以下であり、より好ましくは10μm以上200μm以下である。
【0123】
基材の片面又は両面には、帯電防止層を設けてもよい。また基材の、粘着剤層が設けられる側の表面には、粘着剤層との密着性を向上させるためにコロナ放電処理などが施されていてもよい。
【0124】
基材上には、本発明の粘着剤組成物に由来する粘着剤層が設けられている。
粘着剤層の形成方法としては、例えば、粘着剤組成物を、そのままで又は必要に応じて適宜の溶媒で希釈し、これを基材に塗布した後、乾燥して溶媒を除去する方法を採用することができる。
また、先ずシリコーン樹脂などにより離型処理が施された紙やポリエステルフィルムなどの適宜のフィルムからなる剥離シート上に粘着剤組成物を塗布し、加熱乾燥して粘着剤層を形成し、次に前記剥離シートの粘着剤層側を基材に圧接して前記粘着剤層を前記基材に転写させる方法を採用することもできる。
【0125】
本発明における粘着剤層は、金属キレート系架橋剤によって、特定(メタ)アクリル系ポリマーが架橋されてなる粘着剤層である。これにより、粘着剤層の高速剥離時の粘着力が低く抑えられ、更に、養生完了時間を短縮することができる。
特定(メタ)アクリル系ポリマーを金属キレート系架橋剤で架橋する条件は特に制限されない。
【0126】
基材上に形成される粘着剤層の厚さは、保護フィルムに求められる粘着力、光学部材の表面粗さなどに応じて適宜設定することができ、一般に1μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上50μm以下、更に好ましくは15μm以上30μm以下程度の厚さを例示することができる。
【0127】
粘着剤層の粘着力が高くなると大面積における高速剥離時の作業性が低下するので、剥離速度30m/分(高速剥離)における粘着力(剥離力)が2.00N/25mm未満であることが好ましく、1.20N/25mm未満であることがより好ましく、0.70N/25mm未満であることが更に好ましい。
また、保護フィルムの不意な剥離を防止する観点から、剥離速度30m/分(高速剥離)における粘着力(剥離力)が0.05N/25mm以上であることが好ましく、0.20N/25mm以上であることがより好ましい。
【0128】
保護フィルムは、光学部材の表面に積層されて、その光学部材の表面が汚染されたり損傷したりしないよう保護し、光学部材が液晶表示板などに加工される際には、保護フィルムが光学部材に積層された状態のまま、打抜加工、検査、輸送、液晶表示板の組立などの各工程に供され、必要に応じて、オートクレーブ処理、高温エージング処理などの加熱加圧処理が施され、表面保護が不要となった段階で光学部材から剥離除去される。
【0129】
光学部材としては、画像表示装置、入力装置などの機器(光学機器)を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルムなど)が挙げられる。
本発明の保護フィルムが用いられる光学部材としては偏光板が好ましい。
【実施例】
【0130】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0131】
(製造例A−1)
−(メタ)アクリル系ポリマー(A−1)の製造−
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、酢酸エチル70.0質量部を入れ、また別の容器に、モノマーとしてn−ブチルアクリレート(BA)60.0質量部、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)31.0質量部、一般式(1a)で表されるモノマー(製品名:アロニックスM−5300、東亞合成株式会社製)9.0質量部を入れ、混合してモノマー混合物とした。このモノマー混合物のうち、20.0質量%を反応器中に加え、次いで前記反応容器の空気を窒素ガスで置換した後、重合開始剤としてアゾビスブチロニトリル(以下、「AIBN」ともいう。)0.01質量部を添加して、攪拌下に窒素雰囲気中で、前記反応容器内の混合物温度を85℃に昇温させて、初期反応を開始させた。初期反応がほぼ終了した後、残りのモノマー混合物80.0質量%、並びに酢酸エチル15.0質量部、及びAIBN0.10質量部の混合物をそれぞれ逐次添加しながら約2時間反応させ、引き続いて、さらに2時間反応させた。その後、酢酸エチル25.0質量部にt−ブチルペルオキシピバレート0.10質量部を溶解させた溶液を、上記混合物に1時間かけて滴下し、さらに1.5時間反応させた。反応終了後、(メタ)アクリル系ポリマー(A−1)の溶液を得た。
(メタ)アクリル系ポリマー(A−1)の溶液の固形分は48.0質量%であった。得られた(メタ)アクリル系ポリマー(A−1)の溶液の酸価、ガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量(Mw)、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比である分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
なお、「固形分」とは(メタ)アクリル系ポリマーの溶液から溶媒を除去した残渣である。酸価、ガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は既述の方法で算出したものである。
酸価は、次のとおり計算した。
酸価(mgKOH/g)={(A/100)÷B}×56.1×1000×C
A=(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系オリゴマーに使用される全モノマー中の、カルボキシ基を有するモノマーの含有率(質量%):9.0
B=アロニックスM−5300の分子量:300.4
C=カルボキシ基を有するモノマー1分子中に含まれるカルボキシ基の数:1
酸価={(9.0/100)÷300.4}×56.1×1000×1=約16.8
【0132】
(製造例A−2〜A−10)
−(メタ)アクリル系ポリマー(A−2)〜(A−10)の製造−
製造例1において、表1に示すモノマー組成に変更し、適宜開始剤量などを調整したこと以外は、製造例1と同様にして、(メタ)アクリル系ポリマー(A−2)〜(A−10)の溶液を製造した。得られたアクリル系ポリマーの酸価、ガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
なお、酸価、ガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は既述の方法で算出したものである。
【0133】
(製造例B)
−(メタ)アクリル系オリゴマー(B)の製造−
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロートを備えた反応容器内に、メチルエチルケトン100.0質量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(アルキレンオキシド単位の平均付加モル数23)(MePEGMA)10.0質量部を入れ、窒素雰囲気下で攪拌しながら還流温度まで加熱した。滴下ロートに、予め混合しておいた、2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)87.0質量部、アクリル酸(AA)3.0質量部、メチルエチルケトン100.0質量部、アゾビスイソブチロニトリル5.0質量部の混合溶液を入れ、120分かけて還流温度の反応容器に逐次添加した。その後、240分間還流温度を維持したまま反応させ、反応を終了した。
得られた(メタ)アクリル系オリゴマー(B)の溶液の固形分は33.0質量%であった。(メタ)アクリル系オリゴマー(B)の溶液の酸価、重量平均分子量(Mw)分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
なお、酸価、ガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は既述の方法で算出したものである。
【0134】
【表1】
【0135】
表1における略号は、以下の通りである。
・BA:n−ブチルアクリレート
・2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
・M−5300:ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート(商品名:アロニックスM−5300、東亞合成株式会社製)(一般式(1a)で表されるモノマー)
・2EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
・AA:アクリル酸
・HOA−MS:2−アクリロイルオキシエチル−コハク酸(一般式(1a)で表されるモノマー、共栄社化学株式会社製のライトアクリレートHOA−MS(N))
・MePEGMA:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(アルキレンオキシド単位の平均付加モル数は23)
【0136】
<実施例1>
撹拌羽根、温度計、冷却器、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに製造例1で調製した(メタ)アクリル系ポリマー(A−1)の溶液(固形分48.0質量%)を208.3質量部(固形分として100質量部)、製造例3で調製した(メタ)アクリル系オリゴマー(B)の溶液(固形分33.0質量%)1.5質量部(固形分として0.50質量部)、帯電防止剤としてLi(CFSON(森田化学工業株式会社製LiTFSI)0.20質量部を仕込み、フラスコ内の液温を25℃付近に保って4.0時間混合撹拌を行った。これにポリエーテル変性シリコーンとして、SH−3773M(東レダウコーニング製、固形分100.0質量%)0.10質量部、金属キレート系架橋剤として、アルミニウムトリスアセチルアセトネート(商品名:アルミキレートA、川研ファインケミカル株式会社製)をアセチルアセトンとトルエンで希釈したアルミキレートA希釈物(固形分9.72質量%)32.9質量部(固形分として3.2質量部、1.0当量)を添加し、十分に攪拌して、保護フィルム用粘着剤組成物溶液を得た。この粘着剤組成物溶液を用いて、以下の試験用粘着シートの作製方法に従い、試験用保護フィルムを作製し、各種物性試験を行った。得られた結果を表2に示した。
なお、上記アルミキレートA希釈物に含まれるアルミニウムトリスアセチルアセトネート(アルミニウムキレート)の当量は、(メタ)アクリル系ポリマーに含まれるカルボキシ基に対して、1当量を示したものである。
アルミニウムキレートの当量の計算は、既述の方法で計算したものであり、具体的には次のとおり計算した。
当量=(A×B/C)/(D×E/F+D×E/F+・・・・+D×E×F
A=アルミニウムキレートの金属の価数:3.0
B=アルミニウムキレートの質量部数(固形分としての量):3.2質量部
C=アルミニウムキレートの分子量:324.3
=(メタ)アクリル系ポリマーに使用される全モノマー中の酸性基を有する各モノマーの含有率(質量%):9.0質量%
=各酸性基を有するモノマーの1分子中に含まれる酸性基の数:1
=アロニックスM−5300の分子量:300.4
n=使用された(メタ)アクリル系モノマーの種類:1
当量=(A×B/C)/(D×E/F)=(3×3.2/324. 3)/(9×1/300.4)=約1.0
【0137】
(1)試験用保護フィルムの作製
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:帝人テトロンフィルムタイプG2、厚み38μm、帝人デュポンフィルム株式会社製)上に、乾燥後の塗工量が20g/mとなるように、粘着剤組成物溶液を塗布し、100℃で60秒間熱風循環式乾燥機にて乾燥して粘着剤層を形成した粘着剤層付PETフィルムを作製した。その後、シリコーン系離型剤で表面処理された離型フィルム(商品名:フィルムバイナ100E−0010NO23、厚み100μm、藤森工業株式会社製)上に、該粘着剤層面が接するように粘着剤層付PETフィルムを載置して積層体とし、この積層体を加圧ニップロール対に通して圧着して貼り合わせた後、23℃、50%RHの条件下で1時間養生し、試験用保護フィルムを得た。
【0138】
(2)粘着力と高速剥離時の剥離性
上記(1)で得られた試験用保護フィルムを25mm×150mmにカットして、保護フィルム片を作製した。この保護フィルム片から剥離フィルムを除き、露出した粘着剤層をTACフィルム(商品名:ロンザTAC100、パナック株式会社製)に貼りつけ、2kgのゴムロールを2往復して圧着し、試験サンプルとした。この試験サンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、図1に示すような、180゜剥離における粘着力を剥離速度30m/分の高速条件にて測定し、以下の評価基準に従って高速剥離時の剥離性と粘着力とのバランスを評価し、その結果を表2に示した。
評価は、図1のように、ガラス板上にTACフィルム表面が接するようにして試験サンプルを置き、試験サンプルの一端を把持して、ガラス板の表面に沿って180°方向に引っ張ることでPETフィルムを粘着剤層から剥離して行った。
【0139】
[評価基準]
AA:0.20N/25mm以上0.70N/25mm未満(剥離性が非常に優れ、かつ不意な剥離を生じにくく、粘着力に優れている)
A:0.05N/25mm以上0.20N/25mm未満、又は0.70N/25mm以上1.20N/25mm未満(剥離性に優れ、かつ不意な剥離がやや生じにくく、粘着力にやや優れている)
B:1.20N/25mm以上2.0N/25mm未満(剥離性はやや劣るが許容範囲内である)
C:2.0N/25mm以上(剥離性に劣り、許容できない範囲である)
D:0.05N/25mm未満(不意な剥離が生じる可能性があり、許容できない範囲である)
【0140】
(3)帯電防止性
上記(1)で得られた試験用保護フィルムを25mm×150mmにカットして、試験用保護フィルム片を作製した。この試験用保護フィルム片から剥離フィルムを除き、露出した粘着剤層をTACフィルム(商品名:ロンザTAC100、パナック株式会社製)に貼りつけ、2kgのゴムロールを2往復して圧着し、試験サンプルとした。この試験サンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、上記(2)と同様の方法で図1に示すように、180゜方向に剥離速度30m/分(高速)にて剥離した。このときに発生するTACフィルム表面の電位を、所定の位置(TACフィルム表面から10mm離れた位置)に固定配置してある電位測定器(商品名:KSD−0303、春日電機株式会社製)にて測定した。その測定値の絶対値を剥離帯電圧として、以下の評価基準に従って帯電防止性を評価し、その結果を表2に示した。
【0141】
[評価基準]
AA: 0.4kv未満(帯電防止性が非常に優れる)
A:0.4kv以上0.6kv未満(帯電防止性が優れる)
B:0.6kv以上1.0kv未満(帯電防止性にやや劣るが、許容できる範囲である)
C:1.0kv以上(帯電防止性に劣る)
【0142】
(4)養生完了時間
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:帝人テトロンフィルムタイプG2、厚み:38μm、帝人デュポンフィルム株式会社製)上に、乾燥後の塗工量が20g/mとなるように、保護フィルム用粘着剤組成物溶液を塗布し、100℃で60秒間、熱風循環式乾燥機にて乾燥して粘着剤層を形成し、粘着剤層付PETフィルムを作製した。その後、シリコーン系離型剤で表面処理された離型フィルム(商品名:フィルムバイナ100E−0010NO23、厚み:100μm、藤森工業株式会社製)上に、粘着剤層面が接するように粘着剤層付PETフィルムを載置して積層体とし、この積層体を、加圧ニップロール対に通して圧着して貼り合わせた。23℃、50%RH環境下で養生して、試験用保護フィルムを得た。このとき、養生時間は1時間、24時間、96時間とし、それぞれの養生時間が経過した直後に、試験用保護フィルムを25mm×150mmにカットして得られた試験用保護フィルム片の各々を、離型フィルムを剥がして露出した粘着剤層を接触させて、TACフィルム(商品名:ロンザTAC100、パナック株式会社製)に貼りつけ、2kgのゴムロールを2往復して圧着し、試験サンプルとした。
この試験サンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、上記(2)と同様の方法で図1に示すように、180゜方向に剥離速度30m/分(高速)にて剥離し、以下の評価基準にしたがって、養生完了時間を評価した。得られた結果を表2に示した。
【0143】
[評価基準]
A:養生1時間後の粘着力と、養生24時間後の粘着力と、の差の絶対値が0.05N/25mm以下(養生が1時間以内に完了しており、養生完了時間が短く、良好である)
B:評価Aに該当せず、かつ養生24時間後の粘着力と、養生96時間後の粘着力と、の差の絶対値が0.05N/25mm以下(養生が1時間以上24時間以内に完了しており、養生完了時間がやや短く、やや良好である)
C:評価A、Bのいずれにも該当しない(養生が24時間以内に完了しておらず、養生完了時間が長く、不良である)
【0144】
<実施例2〜実施例18、比較例1〜7>
実施例1の組成を表2に示した組成に変更した以外は、実施例1と同様にして表2に示すような保護フィルム用粘着剤組成物を作製した。作製した粘着剤組成物を用い、以下の試験用保護フィルムの作製方法に従って試験用保護フィルムを作製し、各種物性試験を行った。得られた結果を表2に示した。
なお、養生が1時間以内に完了しない場合、すなわち養生完了時間の評価がB又はCである場合は、養生を240時間行い、試験用保護フィルムを得た。具体的には、比較例5、6、7は養生を240時間行い、試験用保護フィルムを得た。
なお、比較例5、6における架橋剤の添加部数は、(メタ)アクリル系ポリマーに含まれるカルボキシ基の合計に対して、イソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基が1当量となる量とした。また比較例7における架橋剤の添加部数は、(メタ)アクリル系ポリマーに含まれるカルボキシ基の合計に対して、エポキシ化合物に含まれるエポキシ基が1当量となる量とした。
【0145】
【表2】
【0146】
表2における略号は以下の通りである。
・LiTFSI:Li(CFSON(森田化学工業株式会社製)
・LiTFS:LiCFSO(森田化学工業株式会社製)
・有機塩A:N−ヘキシルピリジニウム・PF(有機カチオンとしてヘキシルピリジニウムイオンを有する有機塩、融点45℃)
・SH−3773M:側鎖にポリオキシアルキレン基を導入したジメチルシロキサン化合物(東レ・ダウコーニング株式会社製、ポリオキシアルキレン基の末端は水酸基、HLB値=8)
・Alキレート:アルミニウムトリスアセチルアセトネート(商品名:アルミキレートA、川研ファインケミカル株式会社製)をトルエン及びアセチルアセトンを用いて固形分9.7質量%に希釈したもの
・イソシアネート架橋剤A:トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体(商品名:コロネートL、東ソー株式会社製、固形分100質量%)
・イソシアネート架橋剤B:ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体(商品名:デスモジュールN3300、住化コベストロウレタン株式会社製、固形分100質量%)
・エポキシ架橋剤A:1,3‐フェニレンビス(N,N‐ジグリシジルメタンアミン)(商品名:TETRAD−X、三菱瓦斯化学株式会社製、固形分100質量%)
【0147】
本実施例1〜5では、酸価が9mgKOH/g以上70mgKOH/g以下である(メタ)アクリル系ポリマーと、上記(メタ)アクリル系ポリマーの酸性基1当量に対して0.3当量以上2.0当量以下である金属キレート系架橋剤と、帯電防止剤とを用いているため、養生完了時間が短く、帯電防止性に優れ、不意に剥離しない程度の粘着力を有し、高速剥離性に優れていることが分かる。特に、本実施例2〜5では、(メタ)アクリル系ポリマーの酸価を9mgKOH/g以上70mgKOH/g以下の範囲で増減させた場合であっても、養生完了時間が短く、帯電防止性に優れ、不意に剥離しない程度の粘着力を有し、高速剥離性に優れていることが分かる。
本実施例6〜8では、金属キレート系架橋剤の当量を(メタ)アクリル系ポリマーの酸性基1当量に対して0.3当量以上2.0当量以下の範囲で増減させた場合であっても、養生完了時間が短く、帯電防止性に優れ、不意に剥離しない程度の粘着力を有し、高速剥離時の剥離性に優れていることが分かる。
本実施例9及び10では、帯電防止剤として、LiTFSI以外のアルカリ金属塩であるLiTFS及びアルカリ金属塩以外のイオン性化合物である有機塩Aを用いた場合でも、養生完了時間が短く、帯電防止性に優れ、不意に剥離しない程度の粘着力を有し、高速剥離性に優れていることが分かる。
本実施例11〜13では、モノマー組成中の主成分又は、酸性基の種類を変えたモノマーを用いた場合でも、得られた保護フィルム用粘着剤組成物は、養生完了時間が短く、帯電防止性に優れ、不意に剥離しない程度の粘着力を有し、高速剥離性に優れていることが分かる。
実施例14及び15では、ポリエーテル変性シリコーンの含有量を0.05質量部以上1.0質量部の範囲で増減させた場合でも、養生完了時間が短く、帯電防止性に優れ、不意に剥離しない程度の粘着力を有し、高速剥離性に優れていることが分かる。
実施例16〜18では、(メタ)アクリル系オリゴマーの含有量を増減させた場合や、(メタ)アクリル系オリゴマー及びポリエーテル変性シリコーンを含まない場合であっても、養生完了時間が短く、帯電防止性に優れ、不意に剥離しない程度の粘着力を有し、高速剥離性に優れていることが分かる。
【0148】
比較例1では、酸価が9mgKOH/g未満の(メタ)アクリル系ポリマーを用いているため、高速剥離性に劣っていることが分かる。比較例2では、酸価が70mgKOH/gを超える(メタ)アクリル系ポリマーを用いているため、粘着力が低く被着体からの不意な剥離が生じる可能性が有り、加えて、帯電防止性能に劣っていることが分かる。比較例3では、金属キレート系架橋剤の当量が0.3当量未満であるため、高速剥離性に劣っていることが分かる。比較例4では、金属キレート系架橋剤の当量が2.0当量を超えるため、粘着力が低く被着体からの不意な剥離が生じる可能性が有り、加えて、帯電防止性能に劣っていることが分かる。比較例5では、金属キレート系架橋剤ではなく、トリレンジイソシアネート系架橋剤を用いているため、帯電防止性に劣り、加えて、養生完了時間も長いことが分かる。比較例6では、金属キレート系架橋剤ではなく、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤を用いていることから、養生完了時間が長いことが分かる。比較例7では、エポキシ系架橋剤を用いているため、養生完了時間が長いことが分かる。
【0149】
これに対して、本発明の粘着剤組成物から形成された保護フィルムは、養生完了時間が短く、帯電防止性に優れ、不意に剥離しない程度の粘着力を有し、高速剥離時の粘着力が低く抑えられることが分かる。
図1