特許第6633991号(P6633991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6633991
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】遮音壁
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20200109BHJP
【FI】
   E01F8/00
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-160446(P2016-160446)
(22)【出願日】2016年8月18日
(65)【公開番号】特開2018-28209(P2018-28209A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2018年3月30日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594075765
【氏名又は名称】日本環境アメニティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 豊
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−012399(JP,A)
【文献】 特開2009−074274(JP,A)
【文献】 東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社,「設計要領第5集交通管理施設編[遮音壁設計要領]」(平成27年7月版),日本,株式会社高速道路総合研究所,2015年 8月,P1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の側部に立設される遮音壁であって、
前記道路の延伸方向に沿って間隔を置いて複数立設され、前記延伸方向に延設された一組のフランジを備えた支柱と、
前記一組のフランジをガイド手段として前記支柱間に積層立設される複数の遮音板と、
を備え、
路面から少なくとも高さ4.5m以下までの領域に積層される前記遮音板は、JIS K 6735で定められる厚さのポリカーボネート板、JIS K 6718−1で定められる厚さのキャスト板からなるアクリル板、または、JIS K 6718−2で定められる厚さの押出板からなるアクリル板であっていずれも遮音壁施工管理要領で定める耐衝撃性能及び耐燃性能を備える透光板部材を備え、
路面から少なくとも高さ4.5mを超過する領域に積層される前記遮音板は、JIS R 3204で定められる厚さであって前記遮音壁施工管理要領で定める耐燃性能を備える網入単板ガラスの透光板部材を備える、
ことを特徴とする、遮音壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の側部に立設される遮音壁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜4のように、道路から発生する騒音を遮断して道路周辺(民地)の生活環境を保全するために、道路の両側に遮音壁が立設される。遮音壁は、鉛直方向に立設され道路の延伸方向に間隔を置いて複数本設けられたH形鋼等の支柱と、H形鋼のフランジをガイド溝として落とし込まれる遮音板とを含んで構成される。
【0003】
遮音板として、鋼製のケーシング内に吸音材を収容した金属製遮音板と、透光板部材と枠部材を含んで構成される透光性遮音板とが知られている。後者は閉塞感からの解放や、景勝地等の眺望確保といった特徴を備える。
【0004】
遮音板には、所定の安全性能が要求される。例えば非特許文献1によれば、遮音板には耐燃性能と耐衝撃性能とが求められる。耐燃性能は、車両火災等により遮音板が燃焼した場合に、その燃焼態様が二次災害の危険性の少ないものであることが求められ、非特許文献2等により試験法が定められる。
【0005】
耐衝撃性能は、車両の積荷が衝突し遮音板が破損した場合に、その破損態様が人体に及ぼす影響を最小限にとどめるものであることが求められ、非特許文献2等により試験法が定められる。なお、車両の積荷より高い位置に設置された遮音板には、そもそも積荷により破損することは考えられないことから、耐衝撃性能は、路面から所定の高さ(4.5m)までに設置される遮音板に求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−41329号公報
【特許文献2】特開2003−342919号公報
【特許文献3】特開2003−342920号公報
【特許文献4】特開2005−68852号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「設計要領第5集、交通管理施設編[遮音壁設計要領]」、株式会社高速道路総合技術研究所、平成27年7月、p.11-12
【非特許文献2】「遮音壁施工管理要領」、株式会社高速道路総合技術研究所、平成27年7月、p.6-9
【非特許文献3】「遮音壁標準設計図集」、株式会社高速道路総合技術研究所、平成27年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、設置される高さに応じて安全性能(耐衝撃性能)が異なるにも拘らず、全高さで同一の遮音板が立設されるような場合がある。これは統一性のある外観を提供するとの利点はあるものの、場合によってはコスト高となるおそれがある。そこで本発明は、安全性能を満たしつつ、従来よりもコスト低減の可能な、遮音壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、道路の側部に立設される遮音壁に関する。当該遮音壁は、前記道路の延伸方向に沿って間隔を置いて複数立設され、前記延伸方向に延設された一組のフランジを備えた支柱と、前記一組のフランジをガイド手段として前記支柱間に積層立設される複数の遮音板と、を備える。路面から少なくとも高さ4.5m以下までの領域に積層される前記遮音板は、樹脂材料の透光板部材を備える。路面から少なくとも高さ4.5mを超過する領域に積層される前記遮音板は、網入単板ガラスの透光板部材を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安全性能を満たしつつ、従来よりもコスト低減の可能な、遮音壁を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る遮音壁の設置例を示す斜視図である。
図2】本実施の形態に係る遮音壁の遮音板であり、透光板部材が樹脂材料から構成された遮音板を例示する斜視図である。
図3】本実施の形態に係る遮音壁の遮音板であり、透光板部材が網入単板ガラスから構成された遮音板を例示する斜視図である。
図4】本実施の形態に係る遮音壁の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本実施例に係る遮音壁10を例示する。なお、図1図4において、X軸は道路の延伸方向を示し、Y軸は道路の幅方向を示し、Z軸は高さ方向(鉛直方向)を示すものとする。遮音壁10は、高速道路等の道路12の側部に設置される。図1に示されているように、遮音壁10は、例えば道路12の側部に設けられた基礎18の側面に、アンカーボルト等の固定手段により固定される。
【0013】
遮音壁10は、道路12の側部から高さ方向(Z軸方向)に延伸する直壁部14と、道路12側に張り出すアーチ形状の張出部16を備える。遮音壁10は、例えば道路12の路面32から8m程度までの高さとなるように設置される。
【0014】
遮音壁10は、支柱20及び遮音板22(22A,22B)を備える。支柱20は、道路12の延伸方向(X軸方向)に沿って間隔を置いて複数立設される。立設間隔は遮音板22の幅(X軸方向長さ)に応じて定められ、例えば2m間隔または4m間隔で設けられる。
【0015】
支柱20は例えばH形鋼から構成される。支柱20は、延伸方向(X軸方向)に沿って延設されるとともに、当該延伸方向の直交方向(Y軸方向)に対向する一組のフランジ24A,24Bと、両フランジを繋ぐウェブ26を備える。支柱20は遮音壁10の骨格となる部材であり、直壁部14及び張出部16の形状に曲げ加工(例えば冷間曲げ加工)される。
【0016】
本実施形態に係る遮音板22は、樹脂材料の透光板部材28Aを備える遮音板22A(図2参照)と、網入単板ガラスの透光板部材28Bを備える遮音板22B(図3参照)を含んで構成される。遮音板22Aは、少なくとも路面32から4.5m以下までの領域h(路面≦h≦4.5m)に積層され、遮音板22Bは、少なくとも路面から4.5mを超過する領域h(4.5m<h)に積層される。
【0017】
図2には、遮音板22Aが例示される。なお、図2図3では、遮音板22の長手方向をX軸で示し、厚さ方向をY軸で示し、高さ方向をZ軸で示す。遮音壁設置時に、図1図2図3図4のX軸、Y軸、及びZ軸は略一致する。
【0018】
遮音板22Aは、透光板部材28A及び枠部材30を備える。図2に示すように、遮音板22Aは、中央枠30Aを挟んで2枚の透光板部材28A,28Aを備えるものであってよい。
【0019】
遮音板22Aの寸法は、例えば非特許文献3に示されているように、長さ(X軸方向)1960mまたは3960mm、厚さ(Y軸方向)95mm、高さ(Z軸方向)1000mm程度になるように形成される。
【0020】
枠部材30は、透光板部材28Aの4辺を支持する。枠部材30は、中央枠30A、上辺枠30B、下辺枠30C、及び側辺枠30Dを備える。いずれの枠部材も、厚さ方向(Y軸方向)に透光板部材28Aを狭持する一組の押さえ部材を備える。枠部材30はいずれも、スチール枠材またはアルミ枠材から構成される。スチール枠材である場合、枠部材30は、例えばSGH400等の高耐候性めっき鋼板から構成される。アルミ枠材である場合、枠部材30は、例えばJIS H 4100で定められるアルミ材料が用いられる。
【0021】
透光板部材28Aは、ポリカーボネート及びアクリル等の樹脂材料から構成される矩形の薄板部材である。ポリカーボネートである場合、透光板部材28Aは、JIS K 6735で定められるポリカーボネート板が用いられる。アクリルである場合、透光板部材28Aは、JIS K 6718−1(キャスト板)またはJIS K 6718−2(押出板)で定められるアクリル板が用いられる。
【0022】
遮音板22Aは、耐衝撃性能及び耐燃性能を備える。例えば耐衝撃性能について、非特許文献2で定める試験法902の実施時に、飛散防止率が99.0%以上であり、破片最大重量が1.0g以下となるように、透光板部材28Aが形成される。
【0023】
また、耐燃性能ついては、非特許文献2で定める試験法906により求められる耐燃性能を備えるように、透光板部材28Aが形成される。なお、透光板部材28Aがアクリルから構成される場合には、試験法906に加えて、非特許文献2で定める試験法904により求められる耐燃性能を備える事が好適である。
【0024】
図3に示すように、遮音板22Bは、透光板部材28B及び枠部材30を備える。遮音板22Aと同様にして、遮音板22Bは、中央枠30Aを挟んで2枚の透光板部材28B,28Bを備えるものであってよい。
【0025】
遮音板22Bの寸法は、遮音板22Aと同一であってよい。例えば非特許文献3に示されているように、長さ(X軸方向)1960mまたは3960mm、厚さ(Y軸方向)95mm、高さ(Z軸方向)1000mm程度になるように形成される。
【0026】
枠部材30は、遮音板22Aのものと寸法、構成、及び材料が同一であってよい。つまり、枠部材30は、透光板部材28Bの4辺を支持する、中央枠30A、上辺枠30B、下辺枠30C、及び側辺枠30Dを備える。いずれの枠部材も、厚さ方向(Y軸方向)に透光板部材28Bを狭持する一組の押さえ部材を備える。なお、遮音壁10の張出部16に設置される遮音板22Bの側辺枠30Dは、張出部16のアーチ形状に沿うように曲面加工されていてもよい。なおこの場合においても、透光板部材28Bは平面(平板)形状であってよい。
【0027】
透光板部材28Bは、網入単板ガラスから構成される矩形の薄板部材である。例えば、図3のX軸方向に対して45°及び−45°に配向された格子状のアルミ製の網が単板ガラス内に埋め込まれている。網入単板ガラスは、例えばJIS R 3204で定める網入単板ガラスが用いられる。
【0028】
遮音板22Bは、耐燃性能を備える。例えば、非特許文献2で定める試験法906により求められる耐燃性能を備えるように、透光板部材28Aが形成される。
【0029】
図4には、本実施形態に係る遮音壁10の側面断面図(Z−Y断面)が例示されている。遮音壁10は、最下部のコンクリート製遮音板34にアンカーボルト36が打ち込まれることで道路12の側面に固定される。支柱20のフランジ24A,24Bをガイド手段(ガイド溝)として、隣り合う支柱20,20間に複数の遮音板22A,22Bが積層立設される。フランジ24Bと遮音板22A,22Bの背面との隙間に固定金具を挿入してもよい。また、遮音板22A,22Bの側部に設けられたアイボルト(図示せず)に脱落防止用のワイヤー(図示せず)を通してもよい。
【0030】
本実施形態では、遮音板22の積層に当たり、道路12の路面32から少なくとも高さ4.5m以下までの領域に積層される遮音板22(4.5m以下の領域に少なくとも一部が含まれる遮音板)として、耐衝撃性能及び耐燃性能を有する樹脂材料の透光板部材28Aを備える、遮音板22Aを設置している。また、路面32から少なくとも高さ4.5mを超過する領域に積層される遮音板22(4.5m以下の領域には含まれない遮音板)として、耐燃性能を有する単板板ガラスの透光板部材28Bを備える、遮音板22Bを設置している。
【0031】
上述したように、非特許文献1、2によれば、路面32から4.5m以下までの高さに設置される遮音板22には耐衝撃性能及び耐燃性能が要求され、路面32から4.5mを超過する高さに設置される遮音板22には耐燃性能が要求される。このように、路面からの高さに応じて変化する要求性能に応じて、本実施形態では遮音板22A,22Bを適宜選択している。
【0032】
一般的にポリカーボネートは、網入単板ガラスと比較して単位面積当たりの単価が高いことが知られている。したがって、遮音壁10の全高さに亘って遮音板22Aを積層立設させる場合と比較して、路面32から4.5mを超過する領域に、相対的に安価な遮音板22Bを用いることで、安全性能を満たしつつ、コスト低減が可能となる。
【0033】
また、網入ガラスはガラスが破損したときにその破片が網に捕捉され、飛散が回避されるという特徴を備えている。したがって、遮音壁10の張出部16等、路面32の直上に設置される遮音板22を、網入単板ガラスを透光板部材28Bとする遮音板22Bとすることで、透光板部材28Bが地震や飛び石等により破損した場合であっても、ガラス片が路面上に落下することが抑制される。これにより、比較的擦り傷や引っ掻き傷が付き易い樹脂製の透光板部材28Aへの、ガラス片の飛散が抑制される。
【0034】
また、網入ガラスとして単板ガラスを用いることで、例えば合わせガラスと比較して軽量化を図ることができる。例えば耐衝撃性能及び耐燃性能を十分に持たせるために、樹脂製の透光板部材28Aが厚くなり、重量が嵩む場合であっても、その上層に積層される遮音板22の透光板部材28Bが軽量な網入単板ガラスから構成されることで、遮音壁10全体の重量増加を抑制できる。したがって、遮音壁10及び道路12を支持する橋梁等への負荷が抑制される。
【0035】
さらに、合わせガラスを遮音壁10の上層に設けた場合、道路12上で万が一火災が発生したときに、道路側のガラスと民地側のガラスとの温度差が生じて剥離(割れ)するおそれがあるが、単板ガラスを用いることでそのような剥離が回避される。
【符号の説明】
【0036】
10 遮音壁、12 道路、20 支柱、22A,22B 遮音板、28A,28B 透光板部材、32 路面。
図1
図2
図3
図4