特許第6634085号(P6634085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6634085
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】フレーク状ガラス及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 25/40 20060101AFI20200109BHJP
   C03C 25/36 20060101ALI20200109BHJP
   C08K 7/28 20060101ALI20200109BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20200109BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20200109BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20200109BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20200109BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   C03C25/40
   C03C25/36
   C08K7/28
   C08K9/04
   C08G59/40
   C08L23/00
   C08L69/00
   C08L67/00
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-532362(P2017-532362)
(86)(22)【出願日】2016年7月11日
(86)【国際出願番号】JP2016003277
(87)【国際公開番号】WO2017022181
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2019年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-151418(P2015-151418)
(32)【優先日】2015年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100143236
【弁理士】
【氏名又は名称】間中 恵子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸一
【審査官】 和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−207075(JP,A)
【文献】 特開平03−052934(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/068255(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/24 − 25/40
C03C 17/28 − 17/32
C03B 37/005
C08K 3/00 − 13/08
C08L 1/00 −101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーク状ガラス基材と、
前記フレーク状ガラス基材の表面の少なくとも一部を被覆する、結合剤からなる被覆膜と、
を含み、
前記結合剤が、ビスマレイミド化合物、樹脂及びシランカップリング剤を必須成分として含み、かつ過酸化物を任意成分として含んでおり、
前記ビスマレイミド化合物は、4,4’−メチレンジフェニルビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、4−メチル−m−フェニレンビスマレイミド、4,4’−エチレンジフェニルビスマレイミド、及び4,4’−ビニレンジフェニルビスマレイミドからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記結合剤における前記過酸化物の含有割合が8質量%以下である、
フレーク状ガラス。
【請求項2】
前記ビスマレイミド化合物が4,4’−メチレンジフェニルビスマレイミドである、
請求項1に記載のフレーク状ガラス。
【請求項3】
前記樹脂がエポキシ変性ポリオレフィン樹脂である、
請求項1に記載のフレーク状ガラス。
【請求項4】
前記樹脂がエポキシ樹脂である、
請求項1に記載のフレーク状ガラス。
【請求項5】
前記シランカップリング剤がγ−アミノプロピルトリエトキシシランである、
請求項1に記載のフレーク状ガラス。
【請求項6】
前記フレーク状ガラスにおける前記被覆膜の含有割合が0.1〜3質量%である、
請求項1に記載のフレーク状ガラス。
【請求項7】
前記フレーク状ガラス基材は、平均厚さが0.1〜7μm、平均粒径が10〜2000μmである、
請求項1に記載のフレーク状ガラス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のフレーク状ガラスと、
マトリックス樹脂と、
を含む、樹脂組成物。
【請求項9】
前記マトリックス樹脂が、ポリオレフィン、熱可塑性ポリエステル樹脂又はポリカーボネートである、
請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記マトリックス樹脂がポリオレフィンであり、
前記フレーク状ガラスが請求項3に係るフレーク状ガラスである、
請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリオレフィンがポリプロピレンである、
請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記マトリックス樹脂が熱可塑性ポリエステル樹脂であり、
前記フレーク状ガラスが請求項4に係るフレーク状ガラスである、
請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記熱可塑性ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレートである、
請求項9に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーク状ガラスと、それを含む樹脂組成物とに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品では、反り及び変形の低減、及び/又は、機械的強度の向上等を目的として、ガラス繊維、炭素繊維等、マイカ、ガラスビーズ及びフレーク状ガラス等を充填材としてマトリックス樹脂に配合することが一般的に知られている。従来、このような樹脂成形品において、マトリックス樹脂と充填材との接着性を向上させて樹脂成形品の機械的強度をより高めるために、充填材の表面をシランカップリング剤等で表面処理することが好ましいとされている。
【0003】
例えば、マトリックス樹脂がポリプロピレン等のポリオレフィンを含む樹脂成形品について、マトリックス樹脂と充填材との接着性を向上させるための技術が提案されている。例えば、特許文献1では、ポリオレフィン強化用の充填材としてマイカを用い、マイカと、マトリックス樹脂であるポリオレフィンとの接着性の向上のために、マイカの表面を有機シラン化合物で処理し、さらにマトリックス樹脂に特定の化合物(ビスマレイミド化合物及び有機過酸化物)を添加することによって改善する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−90137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
充填材の表面をシランカップリング剤で処理する従来の技術は、充填材とマトリックス樹脂との接着性をある程度改善することができるものの、その接着性は未だ不十分であり、さらなる改善が求められていた。
【0006】
また、特許文献1で提案されているような、マトリックス樹脂全体の成分の調整によって、表面処理が施された充填材とマトリックス樹脂との接着性をより向上させる技術の場合、その成分による接着性改善機能が充填材とマトリックス樹脂との界面で効率良く発揮されず、接着性改善のために配合される成分の添加量が多量になってしまう場合があるという問題がある。また、このようなマトリックス樹脂は、あくまでもマトリックス樹脂として機能することが前提の樹脂組成物であるため、充填材の表面処理剤としてそのまま適用しても接着性改善の高い効果は期待できない。さらに、例えば特許文献1に開示されているマトリックス樹脂は、マイカと組み合わせて用いられる際に接着性を改善できるものであるため、マイカとは材質が全く異なるガラスの充填材を用いる場合にそのまま適用しても、接着性改善の高い効果は期待できない。
【0007】
そこで、本発明の目的の一つは、樹脂成形品を補強するための充填材として用いられた場合に、マトリックス樹脂との高い接着性を実現することができ、その結果、樹脂成形品に高い機械的強度を付与できるフレーク状ガラスを提供することである。さらに、本発明の別の目的の一つは、そのようなフレーク状ガラスが配合された、高い機械的強度を有する樹脂成形品を実現できる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
フレーク状ガラス基材と、
前記フレーク状ガラス基材の表面の少なくとも一部を被覆する、結合剤からなる被覆膜と、
を含み、
前記結合剤が、ビスマレイミド化合物、樹脂及びシランカップリング剤を必須成分として含み、かつ過酸化物を任意成分として含んでおり、
前記結合剤における前記過酸化物の含有割合が8質量%以下である、
フレーク状ガラスを提供する。
【0009】
また、本発明は、上記本発明のフレーク状ガラスと、マトリックス樹脂と、を含む樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフレーク状ガラスは、樹脂成形品を補強するための充填材として用いられた場合に、マトリックス樹脂との高い接着性を実現することができ、その結果、樹脂成形品に高い機械的強度を付与できる。また、本発明の樹脂組成物は、このような本発明のフレーク状ガラスが含まれているので、高い機械的強度を有する樹脂成形品を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】フレーク状ガラス基材の製造装置の一例を説明する模式図
図2】フレーク状ガラス基材の製造装置の別の例を説明する模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0013】
本実施形態のフレーク状ガラスは、フレーク状ガラス基材と、当該フレーク状ガラス基材の表面の少なくとも一部を被覆する、結合剤からなる被覆膜と、を含んでいる。この結合剤は、ビスマレイミド化合物、樹脂及びシランカップリング剤を必須成分として含み、かつ過酸化物を任意成分として含んでいる。さらに、結合剤における過酸化物の含有割合が8質量%以下である。以下に、フレーク状ガラス基材及び被覆膜について、より詳しく説明する。
【0014】
本実施形態のフレーク状ガラスに用いられるフレーク状ガラス基材は、例えば、特公昭41−17148号公報及び特公昭45−3541号公報に開示されている、いわゆるブロー法や、特開昭59−21533号公報及び特表平2−503669号公報に開示されている、いわゆるロータリー法で作製することができる。
【0015】
ブロー法では、図1に示すガラス製造装置を使用できる。このガラス製造装置は、耐火窯槽12、ブローノズル15及び押圧ロール17を備えている。耐火窯槽12(熔解槽)で熔融されたガラス素地11は、ブローノズル15に送り込まれたガスによって、風船状に膨らまされ、中空状ガラス膜16となる。中空状ガラス膜16を押圧ロール17により粉砕し、フレーク状ガラス基材1を得る。中空状ガラス膜16の引張速度、ブローノズル15から送り込むガスの流量等を調節することにより、フレーク状ガラス基材1の厚さを制御できる。
【0016】
ロータリー法では、図2に示すガラス製造装置を使用できる。このガラス製造装置は、回転カップ22、1組の環状プレート23及び環状サイクロン型捕集機24を備えている。熔融ガラス素地11は、回転カップ22に流し込まれ、遠心力によって回転カップ22の上縁部から放射状に流出し、環状プレート23の間を通って空気流で吸引され、環状サイクロン型捕集機24に導入される。環状プレート23を通過する間に、ガラスが薄膜の形で冷却及び固化し、さらに、微小片に破砕されることにより、フレーク状ガラス基材1を得る。環状プレート23の間隔、空気流の速度等を調節することによって、フレーク状ガラス基材1の厚さを制御できる。
【0017】
フレーク状ガラス基材の組成としては、一般的に知られているガラスの組成を使用できる。具体的には、Eガラス等のアルカリ金属酸化物の少ないガラスを好適に使用できる。Eガラスの代表的な組成を以下に示す。下記の組成の単位は質量%である。
【0018】
SiO2:52〜56
Al23:12〜16
CaO:16〜25
MgO:0〜6
Na2O+K2O:0〜2(好ましくは0〜0.8)
23:5〜13
2:0〜0.5
【0019】
また、アルカリ金属酸化物の少ないガラスとして、質量%で表して、
59≦SiO2≦65、
8≦Al23≦15、
47≦(SiO2−Al23)≦57、
1≦MgO≦5、
20≦CaO≦30、
0<(Li2O+Na2O+K2O)<2、
0≦TiO2≦5、
の成分を含有し、B23、F、ZnO、BaO、SrO、ZrO2を実質的に含有しないガラス組成を使用できる。当該ガラス組成は、国際公開2006/068255号に、本出願人によって開示されている。
【0020】
なお、「実質的に含有しない」とは、例えば工業用原料により不可避的に混入される場合を除き、意図的に含ませないことを意味する。具体的には、B23、F、ZnO、BaO、SrO及びZrO2のそれぞれの含有率が0.1質量%未満(好ましくは0.05質量%未満、より好ましくは0.03質量%未満)であることを意味する。
【0021】
また、フレーク状ガラス基材の平均厚さ及び平均粒径は、特に限定はされない。薄いフレーク状ガラス基材は、薄くなるほどアスペクト比(平均粒径を平均厚さで除した値)が大きくなるので、フレーク状ガラスを充填した樹脂組成物への水分やガスなどの浸透を防止する遮蔽効果が大きくなるが、作業性が悪化する。また平均厚さと平均粒径は、遮蔽効果、樹脂成形品の補強効果、作業性、技術的難易度及び製品の経済性などのバランスから決定することができる。具体的には、フレーク状ガラスを作製する際に、平均厚さが7μm以下であって、かつアスペクト比が50以上のフレーク状ガラスを用いることが、上記の遮蔽効果、樹脂成形品の補強効果、作業性及び製品の経済性のバランスが取れており、好ましい。また、技術的難易度及び製品の経済性を考慮すると、平均厚さは0.1μm以上が好ましい。さらに、平均粒径は、樹脂成形品の補強効果をより効果的に実現するために、10〜2000μmであることが好ましい。また、平均アスペクト比は、樹脂への分散性の理由から、2000以下が好ましい。なお、本明細書において、フレーク状ガラス基材の平均厚さとは、フレーク状ガラス基材から100枚以上のフレーク状ガラスを抜き取り、それらのフレーク状ガラス基材について走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて厚さを測定し、その厚さ合計を測定枚数で割った値のことである。平均粒径とは、レーザー回折散乱法に基づいて測定された粒度分布において、累積質量百分率が50%に相当する粒径(D50)のことである。
【0022】
被覆膜を形成する結合剤は、上述のとおり、ビスマレイミド化合物、樹脂及びシランカップリング剤を必須成分として含有する。
【0023】
ビスマレイミド化合物は、架橋剤として機能する。ビスマレイミド化合物としては、4,4’−メチレンジフェニルビスマレイミドが好適に用いられるが、例えば、m−フェニレンビスマレイミド、4−メチル−m−フェニレンビスマレイミド、4,4’−エチレンジフェニルビスマレイミド、4,4’−ビニレンジフェニルビスマレイミド等を用いることも可能である。
【0024】
樹脂としては、エポキシ変性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂等を用いることができる。フレーク状ガラスがマトリックス樹脂と混合されて樹脂組成物を構成する場合に、フレーク状ガラスとマトリックス樹脂とのより高い接着性を実現するために、被覆膜の結合剤に含まれる樹脂は使用されるマトリックス樹脂の種類に応じて適宜決定されることが望ましい。例えば、マトリックス樹脂にポリオレフィンが用いられる場合、被覆膜の結合剤に含まれる樹脂としては、エポキシ変性ポリオレフィン樹脂が好適に用いられる。また、例えば、マトリックス樹脂に熱可塑性ポリエステル樹脂が用いられる場合、被覆膜の結合剤に含まれる樹脂としては、エポキシ樹脂が好適に用いられる。
【0025】
エポキシ変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリオレフィン−グリシジルメタクリレート共重合体、ポリオレフィン−アリルグリシジルエーテル共重合体、及び/又は、ポリオレフィンにグリシジルメタクリレート又はアリルグリシジルエーテルが有機過酸化物ともに作用してグラフト結合されている共重合体が好ましい態様であり、エチレンとグリシジルメタクリレートとを必須構成成分とするエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(特にエチレン−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体)が好適に用いられる。しかし、これらに限定されるものではなく、例えば、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸メチルエステル−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸エチルエステル−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸ブチルエステル−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸エステルーグリシジルメタクリレート共重合体、エチレンーメタクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−ポリプロピレン共重合体−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体や、さらには、ポリプロピレン−グリシジルメタクリレート共重合体、ポリプロピレン−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体なども使用できる。
【0026】
シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が例示される。これらの中でも、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−ウレイドプロピルトリエトキシシランが好適に用いられる。シランカップリング剤に加えて、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニア系カップリング剤等を使用することもできる。
【0027】
結合剤において、シランカップリング剤及び樹脂の合計質量と、ビスマレイミド化合物の質量との成分比率(シランカップリング剤+樹脂:ビスマレイミド化合物)は、水や溶媒等を除いた固形分質量比率で、例えば、1:99〜90:10であり、好ましくは30:70〜85:15であり、より好ましくは50:50〜80:20である。
【0028】
結合剤は、ビスマレイミド化合物、樹脂及びシランカップリング剤以外に、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。例えば、結合剤は、上記成分以外に、必要に応じてエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、界面活性剤及び/又は消泡剤等の他の成分をさらに含んでいてもよい。ただし、結合剤が、架橋剤として過酸化物をさらに含む場合、すなわちビスマレイミド化合物と過酸化物とが架橋剤として併用された場合、結合剤における過酸化物の含有量がある一定量を超えると、本実施形態のフレーク状ガラスによる樹脂成形品の高い補強効果を得ることが困難となる。したがって、結合剤は、過酸化物を含まないか、又は、含む場合は結合剤における過酸化物の含有割合が8質量%以下となるようにする。
【0029】
結合剤の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、結合剤を含む溶液(結合剤溶液)は、予め樹脂を乳化剤などにより水に均一に分散させたものと、シランカップリング剤を加水分解させたものと、ビスマレイミド化合物とを混合して使用するか、又は、常温大気圧下で樹脂、シランカップリング剤及びビスマレイミド化合物等を有機溶媒中に適宜添加し、均一になるまで攪拌することにより、製造できる。
【0030】
本実施形態では、例えば、結合剤溶液をフレーク状ガラス基材に添加して攪拌し、乾燥させることによって、フレーク状ガラス基材の表面の少なくとも一部を被覆する被覆膜を形成する。結合剤溶液の添加、攪拌及び乾燥の具体的な方法は、特には限定されないが、その例を以下に説明する。
【0031】
例えば、回転円盤混合機や、混合容器内に回転式ブレードを備えたヘンシェルミキサー等の混合機において、フレーク状ガラス基材を流動させつつ所定量の結合剤をスプレー等で添加し、混合攪拌する。次に、混合機中で攪拌しながらフレーク状ガラス基材を乾燥させる、又は混合機からフレーク状ガラス基材を取り出して乾燥させる。この方法により、被覆膜が設けられたフレーク状ガラスを得ることができる。
【0032】
また、別の例として、特開平2−124732号公報に記載されるような転動造粒方式を用いても、フレーク状ガラス基材を作製することができる。すなわち、攪拌羽根を備える水平振動型造粒機内にフレーク状ガラス基材を入れ、これに結合剤溶液を噴霧して造粒することによっても、フレーク状ガラスを作製できる。
【0033】
上記以外でも、一般的に攪拌造粒法、流動層造粒法、噴射造粒法及び回転造粒法と呼ばれる公知の方法を適用することによって、フレーク状ガラスを作製できる。
【0034】
乾燥工程は、例えば、結合剤溶液に用いられている溶媒の沸点以上の温度にフレーク状ガラス基材を加熱して、溶媒が揮発するまで乾燥させることによって行われる。
【0035】
フレーク状ガラスにおける被覆膜の含有割合は、添加又は噴霧する結合剤溶液における結合剤の濃度を調整することにより制御できる。すなわち、所定量のフレーク状ガラス基材に対して、所定量の結合剤溶液を結合剤が所定量になるように添加又は噴霧することにより、結合剤からなる被覆膜の含有割合が所定値となるフレーク状ガラスを製造できる。
【0036】
フレーク状ガラスにおいて、被覆膜の含有割合は、例えば0.1〜3質量%であり、0.2〜1.8質量%であることが望ましく、0.4〜1.0質量%であることがより望ましい。被覆膜の含有割合が0.1質量%未満の場合、フレーク状ガラス基材を結合剤で十分に被覆することができず、樹脂成形品の強度低下を引き起こす場合がある。被覆膜の含有割合が3質量%よりも大きい場合、押出し成形時にガスが発生し、金型の汚染を引き起こしたり、樹脂成形品が変色したりする等の問題が発生する場合がある。また、被覆膜の含有割合が3質量%を超えると、フレーク状ガラス同士の結合力が強くなりすぎて、樹脂成形の混練が不十分な場合にはフレーク状ガラスが凝集物として樹脂成形品中に残存し、樹脂成形品の強度低下を引き起こす場合がある。さらには、被覆膜の含有割合が3質量%よりも大きいと、過剰な被覆膜の各成分が逆にフレーク状ガラスとマトリックス樹脂との密着性を阻害し、良好な成形品特性が得られない場合がある。
【0037】
次に、本実施形態の樹脂組成物について説明する。
【0038】
本実施形態の樹脂組成物は、上記のような本実施形態のフレーク状ガラスと、マトリックス樹脂とを含む。
【0039】
マトリックス樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド又はこれらの共重合体、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、並びに、液晶ポリマー(I型、II型及びIII型)等が挙げられる。本実施形態のフレーク状ガラスは、特にポリオレフィンや熱可塑性ポリエステル樹脂やポリカーボネートがマトリックス樹脂として用いられる場合に、樹脂成形品に対する高い補強効果を実現できる。本実施形態のフレーク状ガラスは、ポリオレフィンの中でも特にポリプロピレン、熱可塑性ポリエステル樹脂の中でもポリブチレンテレフタレートを用いた場合に、より高い補強効果を実現できる。
【0040】
樹脂組成物中のフレーク状ガラスの含有率は、5〜70質量%が好ましい。5質量%以上とすることで、フレーク状ガラスの補強材としての機能を十分に発揮させることができる。一方、70質量%以下とすることで、樹脂組成物中でフレーク状ガラスを均一に分散させることができる。成形収縮率をより低く抑えるために、フレーク状ガラスの含有率を30質量%以上60質量%以下とすることがより好ましい。
【0041】
なお、樹脂組成物は、その用途に応じて、ガラス繊維等のフレーク状ガラス以外の補強材を含有してもよい。例えば、電器・電子機器部品の用途では、非常に高い強度が要求されることから、フレーク状ガラスと同量程度のガラス繊維を混合してもよい。
【0042】
本実施形態の樹脂組成物を用いて作製した樹脂成形品は、フレーク状ガラスによる補強効果によって、高い引張強度及び曲げ強度を得ることができる。また、本実施形態の樹脂組成物は、成形収縮率が低いため、寸法安定性に優れた樹脂成形品を得ることができる。また、本実施形態の樹脂組成物に含まれるフレーク状ガラスの平均厚さは従来の樹脂組成物に含まれるフレーク状ガラスよりも小さいので、本実施形態の樹脂組成物によれば、表面粗さが小さく、滑らかな表面を有する樹脂成形品を得ることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。
【0044】
[実施例1]
(フレーク状ガラス)
まず、表1に示す組成を有するEガラスを用い、図1を参照して説明したブロー法によりフレーク状ガラス基材を作製した。具体的には、1200℃以上に加熱した溶解槽にEガラスを入れて溶解した。ノズルから空気を吹き込みながら薄いガラスを作製し、この薄いガラスをローラーで連続的に引き出した。空気の吹き込み量及びローラー回転数を調節し、平均厚さ0.7μmのガラスを得た。その後、粉砕及び分級を行い、平均粒径160μmのフレーク状ガラス基材を得た。フレーク状ガラス基材を粉砕した後、適切な目開きを有する篩を用いてフレーク状ガラス基材を分級することにより、大きさの揃ったフレーク状ガラス基材を得ることができる。
【0045】
【表1】
【0046】
次に、このフレーク状ガラス基材5kgをヘンシェルミキサーに投入し、結合剤溶液をスプレーで添加しながら15分間混合攪拌を行った。結合剤溶液に含まれる結合剤(固形分)において、シランカップリング剤成分は45質量部、樹脂成分は45質量部、架橋剤成分は10質量部であった。シランカップリング剤成分としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、樹脂成分としてエチレン−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体(グリシジルメタクリレート含有率:約15質量%)、架橋剤のビスマレイミド化合物として4,4’−メチレンジフェニルビスマレイミドを用いた。また、結合剤溶液の溶媒には水を用いた。その後、ミキサーからフレーク状ガラス(未乾燥)を取り出し、乾燥機にて125℃で8時間乾燥を行い、実施例1のフレーク状ガラスを得た。
【0047】
得られたフレーク状ガラスにおける結合剤の付着率を強熱減量法にて調べた。具体的には、適量のフレーク状ガラスを110℃にて乾燥した後、625℃の雰囲気で加熱してフレーク状ガラスの表面から結合剤を除去した。加熱前のフレーク状ガラスの質量と加熱後のフレーク状ガラスの質量との差から、フレーク状ガラスにおける結合剤の付着率を算出した。結果を表2に示す。なお、表2において、エチレン−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体は「PE−GMA」と表記されている。
【0048】
(樹脂成形品)
実施例1のフレーク状ガラスとポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックBC06C)とを押出成形機(株式会社テクノベル製、KZW15−30MG、成形温度:約210〜220℃)にて混練し、マトリックス樹脂としてのポリプロピレンと、補強用の充填材としてのフレーク状ガラスとを含む樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、HM7)にて成形して、樹脂成形品を得た。得られた樹脂成形品におけるフレーク状ガラスの含有率は30質量%であった。
【0049】
また、樹脂成形品の特性を調べた。最大引張強度、引張弾性率及び引張ひずみはJISK 7113に従って測定した。最大曲げ強度、曲げ弾性率及び曲げひずみはJIS K7171に従って測定した。アイゾット衝撃強度はJIS K 7111−1に従って測定した。測定結果を表2に示す。
【0050】
[実施例2〜6]
結合剤溶液に含まれる結合剤において、ビスマレイミド化合物、樹脂及びシランカップリング剤の比率を表2に示すように変更した点以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2〜6のフレーク状ガラスを作製した。なお、実施例1と同様に、ビスマレイミド化合物として4,4’−メチレンジフェニルビスマレイミドを用い、樹脂としてエチレン−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体(グリシジルメタクリレート含有率:約15質量%)を用い、シランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシランを用いた。得られたフレーク状ガラスについて、実施例1と同じ方法でフレーク状ガラスにおける被覆膜の含有割合を測定した。また、実施例1と同じ方法で樹脂成形品を作製し、それらの各種特性を測定した。結果を表2に示す。
【0051】
[実施例7及び8]
樹脂を、エチレン−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体から酸変性ポリプロピレン樹脂(東邦化学工業製、ハイテックP−9018。表2において、変性PPと記載する。)又はウレタン樹脂(住化バイエルウレタン株式会社製、インプラニールDLC−F。表2において、ウレタンと記載する。)に変更した点以外は、実施例4と同様の方法で、実施例7及び8のフレーク状ガラスを作製した。得られたフレーク状ガラスについて、実施例1と同じ方法でフレーク状ガラスにおける被覆膜の含有割合を測定した。また、実施例1と同じ方法で樹脂成形品を作製し、それらの各種特性を測定した。結果を表2に示す。
【0052】
[実施例9]
結合剤に架橋剤として過酸化物をさらに添加した点以外は、実施例1と同様の方法で、実施例9のフレーク状ガラスを作製した。実施例9で使用した過酸化物は、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドであった。ただし、実施例9のフレーク状ガラスについての、結合剤におけるビスマレイミド化合物、シランカップリング剤、樹脂及び過酸化物の比率は、表2に示すとおりであった。得られたフレーク状ガラスについて、実施例1と同じ方法でフレーク状ガラスにおける被覆膜の含有割合を測定した。また、実施例1と同じ方法で樹脂成形品を作製し、それらの各種特性を測定した。結果を表2に示す。
【0053】
[比較例1]
結合剤にビスマレイミド化合物を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1のフレーク状ガラスを作製した。ただし、比較例1のフレーク状ガラスについての、結合剤における樹脂及びシランカップリング剤の比率は、表2に示すとおりであった。なお、実施例1と同様に、樹脂としてエチレン−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体(グリシジルメタクリレート含有率:約15質量%)を用い、シランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシランを用いた。得られたフレーク状ガラスについて、実施例1と同じ方法でフレーク状ガラスにおける被覆膜の含有割合を測定した。また、実施例1と同じ方法で樹脂成形品を作製し、それらの各種特性を測定した。結果を表2に示す。
【0054】
[比較例2]
結合剤にビスマレイミド化合物及びシランカップリング剤を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2のフレーク状ガラスを作製した。すなわち、比較例2における結合剤は、樹脂として用いられたエチレン−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体(グリシジルメタクリレート含有率:約15質量%)からなるものであった。得られたフレーク状ガラスについて、実施例1と同じ方法でフレーク状ガラスにおける被覆膜の含有割合を測定した。また、実施例1と同じ方法で樹脂成形品を作製し、それらの各種特性を測定した。結果を表2に示す。
【0055】
[比較例3]
結合剤にシランカップリング剤及び樹脂を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の方法で、比較例3のフレーク状ガラスを作製した。すなわち、比較例3における結合剤は、ビスマレイミド化合物として用いられた4,4’−メチレンジフェニルビスマレイミドからなるものであった。得られたフレーク状ガラスについて、実施例1と同じ方法でフレーク状ガラスにおける被覆膜の含有割合を測定した。また、実施例1と同じ方法で樹脂成形品を作製し、それらの各種特性を測定した。結果を表2に示す。
【0056】
[比較例4]
結合剤に樹脂を添加しなかった点以外は、実施例1と同様の方法で、比較例4のフレーク状ガラスを作製した。ただし、比較例4のフレーク状ガラスについての、結合剤におけるビスマレイミド化合物及びシランカップリング剤の比率は、表2に示すとおりであった。なお、実施例1と同様に、ビスマレイミド化合物として4,4’−メチレンジフェニルビスマレイミドを用い、シランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシランを用いた。得られたフレーク状ガラスについて、実施例1と同じ方法でフレーク状ガラスにおける被覆膜の含有割合を測定した。また、実施例1と同じ方法で樹脂成形品を作製し、それらの各種特性を測定した。結果を表2に示す。
【0057】
[比較例5]
結合剤に架橋剤として過酸化物をさらに添加した点以外は、実施例1と同様の方法で、比較例5のフレーク状ガラスを作製した。比較例5で使用した過酸化物は、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドであった。ただし、比較例5のフレーク状ガラスについての、結合剤におけるビスマレイミド化合物、シランカップリング剤、樹脂及び過酸化物の比率は、表2に示すとおりであった。なお、実施例1と同様に、ビスマレイミド化合物として4,4’−メチレンジフェニルビスマレイミドを用い、シランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシランを用い、エポキシ変性ポリオレフィン樹脂としてエチレン−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体(グリシジルメタクリレート含有率:約15質量%)を用いた。得られたフレーク状ガラスについて、実施例1と同じ方法でフレーク状ガラスにおける被覆膜の含有割合を測定した。また、実施例1と同じ方法で樹脂成形品を作製し、その各種特性を測定した。結果を表2に示す。
【0058】
[実施例10]
樹脂を、エチレン−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体からエポキシ樹脂(ヘンケルジャパン株式会社製、エポルジョンEA10)に変更した点以外は、実施例1と同様の方法で、実施例10のフレーク状ガラスを作製した。ただし、実施例10のフレーク状ガラスについての、結合剤におけるビスマレイミド化合物、シランカップリング剤及びエポキシ樹脂の比率は、表3に示すとおりであった。得られたフレーク状ガラスについて、実施例1と同じ方法でフレーク状ガラスにおける被覆膜の含有割合を測定した。また、実施例10の樹脂成形品は、マトリックス樹脂としてポリブチレンテレフタレート(ウィンテックポリマー株式会社製、ジュラネックス2000)を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で作製された。実施例10の樹脂成形品の各種特性は、実施例1と同じ方法で測定された。なお、表3中の湿熱とは、85℃、85RH%の条件下に所定日数だけ曝した試験片の強度を測定したことを意味する。
【0059】
[比較例6]
結合剤にビスマレイミド化合物を添加しなかった点以外は、実施例10と同様の方法で、比較例6のフレーク状ガラスを作製した。ただし、比較例6のフレーク状ガラスについての、結合剤におけるシランカップリング剤及びエポキシ樹脂の比率は、表3に示すとおりであった。また、実施例10と同じ方法で樹脂成形品を作製し、それらの各種特性を測定した。結果を表3に示す。
【0060】
表2に示すように、実施例1〜9の樹脂成形品の機械強度は、結合剤がビスマレイミド化合物を含まない比較例1及び2の樹脂成形品、結合剤がビスマレイミド化合物のみの比較例3の樹脂成形品、結合剤がビスマレイミド化合物及びカップリング剤のみからなる比較例4の樹脂成形品よりもバランス良く高い機械強度特性を示した。比較例4の樹脂成形品は、高い衝撃強度を示すが、引張強度と曲げ強度は極めて低いレベルになった。また、実施例4、7及び8の結果を比較すると、マトリックス樹脂がポリプロピレンの場合、結合剤に用いる樹脂はエポキシ変性ポリオレフィンが好適であることがわかった。また、比較例5では、架橋剤としてビスマレイミド化合物と過酸化物との2つを併用したが、結合剤における過酸化物の含有割合が8質量%を超えていたため、結合剤における各成分の比率が似ている実施例2の結果と比較すると、機械強度特性の向上は見られなかった。なお、結合剤における過酸化物の含有割合が8質量%以下である実施例9の樹脂組成物は、ビスマレイミド化合物と過酸化物とが併用されているが、高い機械的強度を示した。
【0061】
なお、樹脂成形品におけるフレーク状ガラスの含有率は、全ての実施例及び比較例で一定(30質量%)である。したがって、シランカップリング剤、樹脂及びビスマレイミド化合物を含む結合剤は、ポリプロピレンを含む樹脂と相関があるといえる。すなわち、カップリング剤、樹脂及びビスマレイミド化合物を含む結合剤をフレーク状ガラスの被覆膜に使用することにより、フレーク状ガラスで強化された樹脂成形品の機械特性を向上することができる。
【0062】
[実施例11及び12]
結合剤におけるビスマレイミド化合物、シランカップリング剤及びエポキシ樹脂の比率を表4に示すとおりに変えた点以外は、実施例10と同様の方法で、実施例11及び12のフレーク状ガラスを作製した。得られたフレーク状ガラスについて、実施例1と同じ方法でフレーク状ガラスにおける被覆膜の含有割合を測定した。また、実施例11及び12の樹脂成形品は、マトリックス樹脂としてポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ユーピロンS3000F)を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で作製され、それらの各種特性を測定された。結果を表4に示す。
【0063】
[比較例7]
結合剤にビスマレイミド化合物を添加しなかった点以外は、実施例11と同様の方法で、比較例7のフレーク状ガラスを作製した。ただし、比較例7のフレーク状ガラスについての、結合剤におけるシランカップリング剤及びエポキシ樹脂の比率は、表4に示すとおりであった。また、実施例11と同じ方法で樹脂成形品を作製し、それらの各種特性を測定した。結果を表4に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のフレーク状ガラスは、樹脂成形品の反りや収縮性の低減に効果を発揮するだけでなく、樹脂成形品を効果的に補強することができるため様々な用途に適用可能である。例えば、本発明のフレーク状ガラスとポリプロピレンとを含む樹脂組成物は、自動車の分野、電子部品の分野等で好適に用いられる。
図1
図2