特許第6634202号(P6634202)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6634202担体、担体の製造方法、及び標的物の精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6634202
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】担体、担体の製造方法、及び標的物の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/22 20060101AFI20200109BHJP
   C12N 11/02 20060101ALI20200109BHJP
   C12N 11/14 20060101ALI20200109BHJP
   B01D 15/08 20060101ALI20200109BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20200109BHJP
   B01J 20/24 20060101ALI20200109BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20200109BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20200109BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20200109BHJP
   C07K 17/02 20060101ALI20200109BHJP
   C07K 17/14 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   C07K1/22
   C12N11/02
   C12N11/14
   B01D15/08
   B01J20/22 C
   B01J20/24 C
   B01J20/30
   B01J20/28 Z
   B01J20/34 G
   C07K17/02
   C07K17/14
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-168929(P2014-168929)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2016-44138(P2016-44138A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513133022
【氏名又は名称】JSRライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】則信 智哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡
【審査官】 林 康子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−507237(JP,A)
【文献】 特表平10−509805(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/086660(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/080174(WO,A1)
【文献】 特開2010−133734(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/199196(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 11/00〜13/00
B01J 20/00〜20/34
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
酸性基を含む基と、
当該酸性基を含む基を介さずに前記支持体表面上に結合したリガンドと、を有し、
前記リガンドが、イムノグロブリン結合タンパク質であり、
前記酸性基を含む基が、前記支持体表面上に結合しており、前記酸性基を含む基の含有量が、担体の表面積1m2あたり、1.0μmol以上であり、前記酸性基が、−C(=O)OH、−C(=O)O-+、−C(=O)O-、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+、又は−S(=O)2-である(M+は、対イオンを示す)ことを特徴とする、
担体。
【請求項2】
前記酸性基が、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+、又は−S(=O)2-である(M+は、対イオンを示す)、請求項1に記載の担体。
【請求項3】
前記酸性基を含む基のpKaが、−3.0〜5.0である、請求項1又は2に記載の担体。
【請求項4】
前記酸性基を含む基が、以下の式(1)で表される1価の基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の担体。
【化1】
〔式(1)中、R1は、炭素数1〜12の2価の有機基を示し、Xは、−C(=O)OH、−C(=O)O-+、−C(=O)O-、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+、又は−S(=O)2-(M+は、対イオンを示す)を示す。〕
【請求項5】
1が、以下の式(2)で表される2価の基である、請求項4に記載の担体。
【化2】
〔式(2)中、R2は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基を示し、Y1は、>S、>S=O、>S(=O)2、>NH、又は>Oを示し、*は、式(1)中のXとの結合位置を示す。〕
【請求項6】
1が、>S、>S=O、又は>S(=O)2である、請求項5に記載の担体。
【請求項7】
前記リガンドが、プロテインA又はプロテインGである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の担体。
【請求項8】
前記リガンドが、プロテインAである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の担体。
【請求項9】
前記リガンドが、環状エーテル基が開環してなる基を介して前記支持体表面上に結合している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の担体。
【請求項10】
前記支持体が、有機系支持体、無機系支持体、有機−有機複合系支持体又は有機−無機複合系支持体である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の担体。
【請求項11】
前記支持体が、多孔質である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の担体。
【請求項12】
前記支持体が、粒子状、モノリス状、板状、繊維状又は膜状である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の担体。
【請求項13】
ヒドロキシ基を含む基を更に有し、当該ヒドロキシ基を含む基が、前記支持体表面上に結合している、請求項1〜12のいずれか1項に記載の担体。
【請求項14】
ヒドロキシ基を含む基が、以下の式(3)で表される1価の基である、請求項13に記載の担体。
【化3】
〔式(3)中、R3は、炭素数1〜12の2価又は3価の有機基を示し、nは、1又は2を示す。〕
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の担体がカラム容器に充填されているクロマトグラフィーカラム。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の担体を用いることを特徴とする、試料中の標的物を精製する方法。
【請求項17】
以下の工程A及びBを含むことを特徴とする、標的物の精製方法。
(工程A)請求項1〜14のいずれか1項に記載の担体と、前記リガンドに結合する標的物を含む試料とを接触させる工程
(工程B)前記リガンドと前記標的物とを解離させる解離液と、前記工程Aで標的物を捕捉した担体とを接触させる工程
【請求項18】
以下の工程1及び2を含むことを特徴とする、酸性基を含む基の含有量が担体の表面積1m2あたり1.0μmol以上であり、前記酸性基が、−C(=O)OH、−C(=O)O-+、−C(=O)O-、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+、又は−S(=O)2-である(M+は、対イオンを示す)担体の製造方法。
(工程1)イムノグロブリン結合タンパク質リガンドと結合可能な反応性基を表面に有する支持体の前記反応性基の一部に、イムノグロブリン結合タンパク質リガンドを結合する工程
(工程2)残りの反応性基に、当該反応性基と反応可能な官能基及び酸性基を有し、前記酸性基が、−C(=O)OH、−C(=O)O-+、−C(=O)O-、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+、又は−S(=O)2-である(M+は、対イオンを示す)化合物を反応させる工程
【請求項19】
前記イムノグロブリン結合タンパク質リガンドと結合可能な反応性基が、環状エーテル基である、請求項18に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体、担体の製造方法、及び標的物の精製方法に関する。より詳細には、優れた防汚性を有する担体、担体の製造方法、及び標的物の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質等の標的物を、分離精製、定量又は検出する方法として、標的物に対して親和性又は反応性のある化合物(リガンド)を不溶性支持体上に固定した担体を用いる手法が知られている。
この担体には、標的物への結合能を備えることの他に、不純物が非特異吸着しにくいこと等が要求される。非特異吸着は、標的物の検出感度や定量性、精製した標的物を生体内に応用する場合の安全性に大きく影響を与えるため、これを低減することは重要である。
【0003】
一方、担体には、天然高分子又は合成高分子で構成される有機系支持体を用いたもの、多孔性シリカゲル粒子等の無機系支持体を用いたものがある。天然高分子で構成される支持体を用いた担体として、多孔性アガロース粒子や多孔性デキストラン粒子に各種官能基を導入したもの等が知られている(特許文献1等)。斯様な天然高分子系の担体は非特異吸着しにくいものではあるが、物理的強度が小さいため耐圧性に欠け、高圧下での分析操作を行うことが困難という欠点がある。
他方、合成高分子で構成される支持体を用いた担体として、ポリアクリルアミドゲル、ポリアクリレートゲル、ポリスチレン、エチレン−無水マレイン酸共重合物等から構成される粒子が開発されているが(特許文献2)、斯様な合成高分子系の担体は、非特異吸着が起こり易いという欠点がある。また、無機系支持体を用いた担体も同様に、非特異吸着が起こり易い欠点がある。このように、支持体の種類や組成等によっては、非特異吸着が起こり易くなる、すなわち担体の防汚性が不十分になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−23437号公報
【特許文献2】国際公開第2011/125674号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、標的物の動的結合容量が高く、且つ非特異吸着が起こり易い支持体を用いた場合であったとしても優れた防汚性を有する担体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者らが鋭意検討した結果、酸性基を含む基とリガンドをそれぞれ支持体表面上に結合させた担体が、標的物の動的結合容量が高く、且つ非特異吸着が起こり易い支持体を用いた場合であったとしても優れた防汚性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔4〕を提供するものである。
【0008】
〔1〕支持体と、酸性基を含む基と、当該酸性基を含む基を介さずに前記支持体表面上に結合したリガンドとを有し、前記酸性基を含む基が、前記支持体表面上に結合していることを特徴とする、担体。
【0009】
〔2〕上記〔1〕の担体がカラム容器に充填されているクロマトグラフィーカラム。
【0010】
〔3〕上記〔1〕の担体を用いることを特徴とする、試料中の標的物を精製する方法。
【0011】
〔4〕以下の工程1及び2を含むことを特徴とする、担体の製造方法。
(工程1)リガンドと結合可能な反応性基を表面に有する支持体の前記反応性基の一部に、リガンドを結合する工程
(工程2)残りの反応性基に、当該反応性基と反応可能な官能基及び酸性基を有する化合物を反応させる工程
【発明の効果】
【0012】
本発明の担体は、標的物の動的結合容量が高く、且つ非特異吸着が起こり易い支持体を用いた場合であったとしても、防汚性に優れる。したがって、本発明の担体は、支持体の組成等に依存することなく、優れた防汚性を示し、極めて高い分離選択性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1及び2の担体の解離応答性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔担体〕
本発明の担体は、支持体と、酸性基を含む基と、当該酸性基を含む基を介さずに前記支持体表面上に結合したリガンドとを有し、前記酸性基を含む基が、前記支持体表面上に結合していることを特徴とする。
【0015】
<支持体>
支持体としては、合成高分子系支持体、天然高分子系支持体等の有機系支持体;無機系支持体;これらを組み合わせた有機−有機複合系支持体や有機−無機複合系支持体等が挙げられる。
合成高分子系支持体としては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリ(メタ)アクリルアミド類、ポリスチレン類、エチレン−無水マレイン酸共重合物等で構成されるもの挙げられる。天然高分子系支持体としては、例えば、セルロース(結晶性セルロース等)、アガロース、デキストラン等の多糖類で構成されるものが挙げられる。無機系支持体としては、ガラスビーズ、シリカゲル、金属、金属酸化物等で構成されるものが挙げられる。
これらの中でも、支持体の耐圧性の観点から、合成高分子系支持体が好ましく、ポリビニルアルコール類、ポリ(メタ)アクリレート類及びポリ(メタ)アクリルアミド類から選ばれる合成高分子で構成される支持体がより好ましい。
【0016】
また、支持体は、担体表面の表面積が大きく、多孔質であることが好ましい。また、支持体の形態は、粒子状、モノリス状、板状、チップ状、繊維状、膜状(中空糸を含む)等のいずれでもよく、任意の形態でよいが、標的物の動的結合容量の観点から、粒子状、モノリス状、板状、繊維状、膜状が好ましく、粒子状がより好ましい。
【0017】
支持体は、市販品を用いても、常法に従い合成したものを用いてもよい。市販品としては、多孔質セルロースゲルであるGCL2000(生化学工業株式会社製)、架橋アガロース系の支持体であるSepharose CL4B(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)、架橋セルロース系の支持体であるCellufine(JNC株式会社製)、デキストランであるSephadex(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)、アリルデキストランとメチレンビスアクリルアミドを共有結合で架橋したSephacryl S−1000(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)、アクリレート系の支持体であるToyopearl(東ソー株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
<酸性基を含む基>
本発明の担体は、酸性基を含む基が、支持体表面上に結合しているものである。これによって、優れた防汚性が得られる。
酸性基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホジエステル基、スルフィノ基等が挙げられ、これらが解離したイオン性の官能基及びその塩も含むものとする。これらの中では、酸性基の化学的安定性の観点から、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホジエステル基、これらが解離したイオン性の官能基又はその塩が好ましい。
【0019】
酸性基としては、具体的には、−C(=O)OH、−C(=O)O-+、−C(=O)O-、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+、−S(=O)2-、−O−P(=O)(OH)2、−O−P(=O)(O-+2、−O−P(=O)(O-2、−O−P(=O)(OH)(O-+)、−O−P(=O)(OH)(O-)等の1価の酸性基;−O−(O=P−OH)−O−、−O−(O=P−O-+)−O−、−O−(O=P−O-)−O−等の2価の酸性基が挙げられる。なお、上記1価の酸性基は、結合手が1つの酸性基を意味し、2価の酸性基は、結合手が2つの酸性基を意味する。
上記M+は、それぞれ対イオンを示す。対イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;有機アンモニウムイオン等が挙げられる。
これら酸性基の中でも、上記1価の酸性基が好ましく、防汚性の観点から、−C(=O)OH、−C(=O)O-+、−C(=O)O-、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+、−S(=O)2-がより好ましく、リガンドから標的物を解離する際に少ない解離液の使用量で解離させ、効率よく標的物を分離精製、定量又は検出する観点から、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+、−S(=O)2-が特に好ましい。
【0020】
酸性基を含む基としては、リガンドから標的物を解離する際に少ない解離液の使用量で解離させ、効率よく標的物を分離精製、定量又は検出する観点から、pKaが−3.0〜5.0の範囲内の基であるのが好ましい。特に、pKaが−3.0〜1.0の範囲内であると、標的物を解離させる際に使用する解離液として一般的に用いられているような解離液を用いた場合でも解離液の量を少なく抑えることができ、標的物を高濃度で回収することができる。
【0021】
酸性基を含む基としては、酸性基を含む有機基が挙げられ、好適な例としては、以下の式(1)で表される1価の基が挙げられる。
【0022】
【化1】
【0023】
〔式(1)中、R1は、炭素数1〜12の2価の有機基を示し、Xは酸性基を示す。〕
【0024】
上記式(1)中のXで示される酸性基は、上記1価の酸性基と同様である。中でも、防汚性、動的結合容量の観点から、−C(=O)OH、−C(=O)O-+、−C(=O)O-、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+、−S(=O)2-が好ましく、リガンドから標的物を解離する際に少ない解離液の使用量で解離させ、効率よく標的物を分離精製、定量又は検出する観点から、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+、−S(=O)2-が特に好ましい。
【0025】
また、R1で示される2価の有機基の炭素数は、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6であり、更に好ましくは1〜4である。
1で示される2価の有機基としては、以下の式(2)で表される2価の基が好ましい。
【0026】
【化2】
【0027】
〔式(2)中、R2は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基を示し、Y1は、>S、>S=O、>S(=O)2、>NH、又は>Oを示し、*は、式(1)中のXとの結合位置を示す。〕
【0028】
1としては、>S、>NHが好ましく、>Sがより好ましい。
【0029】
2で示される2価の炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6であり、更に好ましくは1〜4である。また、2価の炭化水素基は、好ましくは2価の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはアルカンジイル基である。アルカンジイル基の具体例としては、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0030】
酸性基を含む基の含有量としては、防汚性の観点から、担体の表面積1m2あたり、0.05μmol以上が好ましく、0.5〜30μmolがより好ましく、1.0〜10μmolがさらに好ましく、2.0〜5.0μmolが特に好ましい。
酸性基を含む基の含有量は、後述する実施例と同様の方法で測定すればよい。
【0031】
<リガンド>
本発明の担体は、酸性基を含む基を介さずに支持体表面上にリガンドが結合したものである。これによって、リガンドの多点結合が抑えられ、リガンドの三次元構造が維持されるため、リガンドの活性が保たれ、標的物へのアフィニティー低下を防ぐことができる。
【0032】
本発明において、リガンドは、標的物と特異的に結合するものであればよいが、例えば、タンパク質、核酸、ペプチド、酵素、キレート化合物、レセプター、アプタマー、抗体、抗原、ビタミン、金属イオン等が挙げられる。
タンパク質としては、プロテインA、プロテインG、アビジン、レクチン等が挙げられる。核酸としては、DNA、RNAが挙げられる。ペプチドとしては、インシュリン、グルタチオン等が挙げられる。酵素としては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ等が挙げられる。キレート化合物としては、ニトリロ三酢酸等が挙げられる。レセプターとしては、ホルモンレセプター、サイトカインレセプター等が挙げられる。アプタマーとしては、DNAアプタマー、RNAアプタマー等が挙げられる。抗体としては、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、IgY等が挙げられる。ビタミンとしては、ビオチン等が挙げられる。金属イオンとしては、Ni2+、Co2+、Cu2+、Zn2+、Fe3+等が挙げられる。
斯様なリガンドの中でも、タンパク質、核酸、ペプチド、酵素、キレート化合物が好ましく、タンパク質、ペプチドがより好ましい。中でも、精製の標的物が抗体である場合は、タンパク質が好ましく、イムノグロブリン結合タンパク質がより好ましく、プロテインAが特に好ましい。
【0033】
リガンド結合量としては、動的結合容量の観点から、担体の乾燥重量1gあたり、好ましくは10〜200mg、より好ましくは25〜100mg、更に好ましくは30〜100mg、特に好ましくは50〜100mgである。
リガンド結合量は、後述する実施例と同様の方法で測定すればよい。
【0034】
<ヒドロキシ基を含む基>
また、本発明の担体は、ヒドロキシ基を含む基が、支持体表面上に結合していてもよい。酸性基が、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+、−S(=O)2-等のpKaが低い酸由来である場合において、更にヒドロキシ基を含む基が支持体表面上に結合していると、標的物を解離させる際のテーリングを抑えることができる。
【0035】
ヒドロキシ基を含む基としては、ヒドロキシ基を含む有機基が挙げられ、好適な例としては、以下の式(3)で表される1価の基が挙げられ、より好ましくは以下の式(4)で表される1価の基である。
【0036】
【化3】
【0037】
〔式(3)中、R3は、炭素数1〜12の2価又は3価の有機基を示し、nは、1又は2を示す。〕
【0038】
【化4】
【0039】
〔式(4)中、R4は、炭素数1〜12の2価又は3価の炭化水素基を示し、Y2は、>S、>S=O、>S(=O)2、>NH、又は>Oを示し、nは、1又は2を示す。〕
【0040】
式(3)中、R3で示される2価又は3価の有機基の炭素数は、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6であり、更に好ましくは1〜4である。
【0041】
式(4)中、Y2としては、>Sが好ましい。
【0042】
4で示される2価又は3価の炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。2価又は3価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6であり、更に好ましくは1〜4である。
また、2価又は3価の炭化水素基は、好ましくは2価又は3価の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはアルカンジイル基、アルカントリイル基である。
上記アルカンジイル基の具体例としては、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
上記アルカントリイル基の具体例としては、メタン−1,1,1−トリイル基、エタン−1,1,2−トリイル基、プロパン−1,2,3−トリイル基、プロパン−1,2,2−トリイル基等が挙げられる。
【0043】
酸性基を含む基の含有量(α)とヒドロキシ基を含む基の含有量(β)とのモル比〔(α):(β)〕は特に限定されないが、好ましくは100:0〜5:95、より好ましくは99:1〜25:75、更に好ましくは90:10〜50:50、更に好ましくは85:15〜55:45、特に好ましくは85:15〜60:40とした場合には、酸性基が、−S(=O)2OH、−S(=O)2-+、−S(=O)2-等のpKaが低い酸由来であるときでも、標的物を解離させる際のテーリングを抑えながら、優れた防汚性を得ることができる。
【0044】
本発明の担体において、リガンド、酸性基を含む基、ヒドロキシ基を含む基は、担体の安定性の観点から、環状エーテル基が開環してなる基、ホルミル基が還元してなる基、トシル基が求核置換されてなる基等のような、反応性基が開環、還元又は求核置換等してなる基を介して、支持体表面上に共有結合しているものが好ましく、環状エーテル基が開環してなる基を介して支持体表面上に結合しているものがより好ましい。環状エーテル基が開環してなる基としては、開環エポキシ基が好ましい。
【0045】
ここで、「環状エーテル基」としては、環を構成する原子数が3〜7個の環状エーテル基が好ましい。環状エーテル基は、置換基としてアルキル基を有していてもよい。環状エーテル基の具体例としては、以下の式(5)〜(10)で表される環状エーテル基が挙げられ、式(5)で表される環状エーテル基がより好ましい。
【0046】
【化5】
【0047】
〔式中、R5〜R8は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示し、*は結合位置を示す。〕
【0048】
5〜R8で示されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1又は2である。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
また、R5〜R8としては、水素原子が好ましい。
【0049】
〔担体の製造方法〕
本発明の担体の製造方法は、以下の工程1及び2を含むことを特徴とする。斯かる方法によれば、簡便且つ容易に、上記本発明の担体を得ることができる。
(工程1)リガンドと結合可能な反応性基(以下、単に反応性基ともいう)を表面に有する支持体(以下、原料支持体ともいう)の前記反応性基の一部に、リガンドを結合する工程
(工程2)残りの反応性基に、当該反応性基と反応可能な官能基及び酸性基を有する化合物を反応させる工程
【0050】
<工程1>
工程1は、原料支持体の反応性基の一部に、リガンドを結合する工程である。反応性基に対してリガンドを結合させる手法は特に限定されるものではなく、例えば、リガンドに存在するアミノ基やカルボキシ基、チオール基等を利用した、従来のカップリング法で行えばよい。カップリング法としては、(i)臭化シアン、エピクロロヒドリン、ジグリシジルエーテル、トシルクロライド、トレシルクロライド、ヒドラジン、過ヨウ素酸ナトリウム等を用いて原料支持体を活性化し、リガンドとカップリング反応を行い固定する方法、(ii)原料支持体とリガンドが存在する系に、カルボジイミドのような縮合試薬やグルタルアルデヒドのような分子中に複数の反応性基を持つ試薬を加えて、縮合・架橋することにより固定する方法、(iii)原料支持体に反応性基をあらかじめ導入しておき、原料支持体の活性化を経ずに、カップリング反応を行い固定する方法等が挙げられる。
【0051】
なお、原料支持体として多孔質粒子を用いる場合には、公知のシード重合、懸濁重合等で多孔質粒子を合成すればよい。重合に際しては、モノマーに加えて、重合開始剤、多孔化剤、水系媒体、分散安定剤、界面活性剤、重合調整剤、重合禁止剤、シード粒子等を必要に応じて使用する。モノマーとしては、反応性基を有するモノマーに加え、必要に応じて当該モノマー以外のモノマーを用いてよい。これらモノマーとしては、いずれも、エチレン性不飽和モノマーが挙げられる。具体的には、スチレン系モノマー、ビニルケトン系モノマー、(メタ)アクリロニトリル系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー及び(メタ)アクリルアミド系モノマーから選ばれる1種又は2種以上のモノマーを例示できる。
【0052】
また、原料支持体が有する反応性基としては、水系中でも安定してカップリング反応を実施できる観点から、環状エーテル基が好ましく、環を構成する原子数が3〜7個の環状エーテル基がより好ましい。環状エーテル基は、置換基としてアルキル基を有していてもよい。環状エーテル基の具体例としては、上記式(5)〜(10)で表される環状エーテル基が挙げられる。
【0053】
また、原料支持体に結合させるリガンドは上記と同様であり、上記でも述べたとおり、精製の標的物が抗体である場合は、プロテインAが特に好ましい。
リガンドの合計使用量は、原料支持体1gに対し、通常50〜300mg程度であるが、好ましくは120〜180mgである。
【0054】
また、工程1は、塩を添加したバッファー存在下で行うのが好ましい。塩の種類としては、クエン酸三ナトリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられ、バッファーとしては、リン酸ナトリウムバッファー、リン酸カリウムバッファー、ホウ酸バッファー等が挙げられる。バッファーの合計使用量は、原料支持体に対し、通常20〜80質量倍程度であるが、好ましくは35〜45質量倍である。
また、工程1の反応時間は特に限定されないが、通常0.5〜72時間程度であり、反応温度は通常1〜60℃程度である。
【0055】
<工程2>
工程2は、残りの反応性基に、当該反応性基と反応可能な官能基及び酸性基を有する化合物(以下、酸性基含有化合物ともいう)を反応させる工程である。
【0056】
酸性基含有化合物としては、メルカプト酢酸(pKa=3.5〜4.0)、3−メルカプトプロピオン酸(pKa=3.5〜4.0)、4−メルカプトブタン酸(pKa=3.5〜4.0)等のメルカプトカルボン酸;グリシン(pKa=2.0〜2.5)、β−アラニン(pKa=2.0〜2.5)等のアミノ酸;2−メルカプトエタンスルホン酸(pKa=−2.5〜−2.0)、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸(pKa=−2.5〜−2.0)等のメルカプトスルホン酸;アミノメタンスルホン酸(pKa=−2.0〜−1.0)、2−アミノエタンスルホン酸(pKa=−2.0〜−1.0)、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸(pKa=−2.3〜−1.3)等のアミノ基含有スルホン酸;これらの塩等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;有機アンモニウム塩等が挙げられる。
酸性基含有化合物の合計使用量は、残留反応性基1モルに対し、通常0.1〜40モル当量であるが、リガンドの多点結合を防ぐ観点から、2〜40モル当量の過剰量にて残留反応性基をブロッキングすることが好ましい。
【0057】
なお、ヒドロキシ基を含む基を導入する場合は、メルカプトエタノール、チオグリセロール等のメルカプト基を含むアルコール等を酸性基含有化合物と組み合わせて添加すればよい。
【0058】
また、工程2の反応時間は特に限定されないが、通常0.5〜72時間程度であり、好ましくは1〜48時間である。また、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよいが、通常2〜100℃程度である。
なお、上記工程1と工程2は、効率やコストの面から工程1から工程2の順に行うのが好ましい。
【0059】
そして、上記のようにして得られる本発明の担体は、標的物の動的結合容量が高く、且つ非特異吸着が起こり易い支持体を用いた場合であったとしても、防汚性に優れる。したがって、本発明の担体は、支持体の組成等に依存することなく、宿主細胞に含まれるHCP(Host Cell Protein)やDNA等の生体由来不純物等に対して優れた防汚性を示し、極めて高い分離選択性を有する。したがって、本発明の担体は、クロマトグラフィー用担体として特に有用である。
【0060】
〔クロマトグラフィーカラム〕
本発明のクロマトグラフィーカラムは、上記本発明の担体がカラム容器に充填されているものである。該カラムはアフィニティクロマトグラフィーへの使用に適する。
【0061】
〔標的物の精製方法〕
本発明の試料中の標的物を精製する方法は、上記本発明の担体を用いることを特徴とする。具体的には、以下の工程A及びBを含む方法が挙げられる。
(工程A)本発明の担体と、前記リガンドに結合する標的物を含む試料とを接触させる工程
(工程B)前記リガンドと前記標的物とを解離させる解離液と、前記工程Aで標的物を捕捉した担体とを接触させる工程
精製は、本発明の担体を用いる以外は常法に従い行えばよいが、解離液としては、標的物の解離性の観点から、酸性溶液が好ましく、25℃におけるpHが2.5を超える酸性溶液がより好ましい。上記pHは、より好ましくは3.0〜5.0である。
なお、標的物としては、タンパク質、抗体等の生体関連物質が挙げられる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例における各分析条件を以下に示す。
<エポキシ基含有量>
重合で使用したエポキシ基含有モノマー量より計算されるエポキシ基のモル数が1.00mmolとなるように、支持体水分散体をポリエチレンボトルに正確に測り取り、これに塩化カルシウム37.5質量%水溶液25mL及び0.2規定の塩酸10mLを加えて、75℃で1時間撹拌することによりエポキシ基を開環し、冷却後、0.2規定の水酸化ナトリウム水溶液10mLで中和し、さらにpHメーターでpHをモニターしながら0.1規定の塩酸で逆滴定することにより、リガンド結合前の支持体のエポキシ基含有量を定量した。
【0064】
<プロテインA結合量>
プロテインA固定粒子(S−4)、アフィニティクロマトグラフィー用担体7のプロテインAの結合量は、ビシンコニン酸(BCA)試薬を用いた試薬セットで定量した。具体的には、固形分換算で1mgの粒子(S−4)、アフィニティクロマトグラフィー用担体7をテストチューブに採取し、これをThermoFisher Scientific社のBCA Protein Assay Kitで定量した。反応は、37℃で30分間、転倒混和することによって行った。検量線は、担体に結合させたプロテインAと同一のロットのものを用いて作成した。
【0065】
<酸性基の結合量>
固形分換算で0.5gのアフィニティクロマトグラフィー用担体1〜7を正確に測り取り、電気伝導度測定計(Metrohm製 794 Basic Titrino)を用いて、酸性基の結合量を算出した。
【0066】
(実施例1)
(1)360gの純水にポリビニルアルコール(クラレ社製 PVA−217)0.72gを添加し、加熱撹拌しポリビニルアルコールを溶解させ、冷却した後、ドデシル硫酸ナトリウム(花王社製 エマール10G)0.18g、炭酸ナトリウム0.36g及び亜硝酸ナトリウム0.18gを添加し、撹拌して、水溶液(S−1)を調製した。
一方、グリシジルメタクリレート(三菱レーヨン社製)6.88g、グリセロールモノメタクリレート(日油社製)1.37g、トリメチロールプロパントリメタクリレート(サートマー社製)4.12g及びポリエチレングリコール#400ジメタクリレート(新中村化学社製、9G)1.37gからなる単量体組成物を、2−オクタノン(東洋合成社製)20.63g及びアセトフェノン(井上香料製造所社製)5.30gの混液に溶解させ、単量体溶液(S−2)を調製した。
次いで、前記水溶液(S−1)を、500mLセパラブルフラスコ内に全量投入し、温度計、撹拌翼及び冷却管を装着して、温水バスにセットし、窒素雰囲気下で撹拌を開始した。セパラブルフラスコ内に前記単量体溶液(S−2)を全量投入して、温水バスにより加温し内温が85℃に到達したところで2,2’−アゾイソブチロニトリル(和光純薬工業社製)0.53gを添加し、86℃に温度を維持した。
(2)その後、86℃に温度を維持したまま3時間撹拌を行い、反応液を冷却した後、斯かる反応液をろ過し、純水とエタノールで洗浄した。洗浄した粒子を純水に分散させてデカンテーションを3回行い、小粒子を除いた。次いで、粒子の濃度が10質量%となるように粒子を純水に分散させ、多孔質粒子分散液(S−3)を得た。この多孔質粒子のエポキシ基含有量は、粒子の乾燥重量1gあたり1.57mmolであった。
(3)次に、改変プロテインA(Repligen製 rSPA)0.15gを、1.0Mクエン酸三ナトリウム/0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH6.6)40mLに分散させプロテインA分散液を得、このプロテインA分散液に、前記多孔質粒子分散液(S−3)を粒子乾燥重量換算で1g添加した。この分散液を25℃で5時間振とう撹拌し、プロテインAを粒子に固定した。この粒子を、プロテインA固定粒子(S−4)とする。プロテインA固定粒子(S−4)のプロテインA結合量は、粒子の乾燥重量1gあたり63.2mgであった。
(4)前記プロテインA固定粒子(S−4)を、0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.6)で洗浄した後、1.0Mメルカプト酢酸(和光純薬工業社製)/0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)40mLに分散させ、25℃で17時間振とう撹拌することで、未反応のエポキシ基を完全に開環(ブロッキング)させた。
その後、0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.6)、0.5M水酸化ナトリウム水溶液、0.1Mクエン酸ナトリウムバッファー(pH3.2)で洗浄し、アフィニティクロマトグラフィー用担体1を得た。メルカプト酢酸の結合量は、担体の表面積1m2あたり、2.48μmolであった。
【0067】
(実施例2)
実施例1のエポキシ開環工程に用いる溶液を、1.0Mメルカプト酢酸(和光純薬工業社製)/0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)から、1.0M 3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)/0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、アフィニティクロマトグラフィー用担体2を得た。3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウムの結合量は、担体の表面積1m2あたり、3.12μmolであった。
【0068】
(実施例3)
実施例1のエポキシ開環工程に用いる溶液を、1.0Mメルカプト酢酸(和光純薬工業社製)/0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)から、0.80M 3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)/0.20M チオグリセロール(旭化学工業社製)/0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、アフィニティクロマトグラフィー用担体3を得た。3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウムの結合量は、担体の表面積1m2あたり、2.88μmolであった。
【0069】
(実施例4)
実施例1のエポキシ開環工程に用いる溶液を、1.0Mメルカプト酢酸(和光純薬工業社製)/0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)から、0.50M 3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)/0.50M チオグリセロール(旭化学工業社製)/0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、アフィニティクロマトグラフィー用担体4を得た。3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウムの結合量は、担体の表面積1m2あたり、1.83μmolであった。
【0070】
(比較例1)
実施例1のエポキシ開環工程に用いる溶液を、1.0Mメルカプト酢酸(和光純薬工業社製)/0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)から、1.0M チオグリセロール(旭化学工業社製)/0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、アフィニティクロマトグラフィー用担体5を得た。酸性基の結合量は、担体の表面積1m2あたり、<0.05μmolであった。
【0071】
(比較例2)
実施例1のエポキシ開環工程に用いる溶液を、1.0Mメルカプト酢酸(和光純薬工業社製)/0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)から、0.1M硫酸ナトリウム水溶液(pH8.3)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、アフィニティクロマトグラフィー用担体6を得た。酸性基の結合量は、担体の表面積1m2あたり、<0.05μmolであった。
【0072】
(比較例3)
特開2010−133734号公報の実施例3を再現して多孔質粒子(S−5)分散液を得た。多孔質粒子(S−5)のエポキシ基含有量は、粒子の乾燥重量1gあたり0.25mmolであった。次いで、rProteinATMから、改変プロテインA(Repligen製 rSPA)に変更した以外は特開2010−133734号公報の実施例6と同様の操作を行うことで、上記多孔質粒子(S−5)に改変プロテインAを固定し、アフィニティクロマトグラフィー用担体7を得た。このアフィニティクロマトグラフィー用担体7のプロテインA結合量は、粒子の乾燥重量1gあたり27.7mgであった。また、酸性基の結合量は、担体の表面積1m2あたり、<0.05μmolであった。
【0073】
(試験例1 動的結合容量(DBC)測定試験)
GEヘルスケア社製AKTAprime plusを用いて、線流速60cm/hrにおけるタンパク質(ヒトIgG抗体、Equitech Bio社製 HGG−1000)に対する実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた担体1〜7のDBCを測定した。カラムは容量4mL(5mmφ×200mm長)のものを、タンパク質は20mMリン酸ナトリウム/150mM塩化ナトリウムバッファー(pH7.5)で25mg/mLに希釈したものをそれぞれ使用し、溶出先端10%ブレークスルーのときのタンパク質捕捉量とカラム充填体積からDBCを求めた。結果を表1に示す。
【0074】
また、実施例1〜2で得られた担体1〜2から、捕捉したタンパク質を50mMクエン酸緩衝液(pH3.2)で解離させ、その際の解離応答性をGEヘルスケア社製AKTAprime plusで3CV(3 Column Volume)まで測定した。結果を図1に示す。
図1に示すように、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸のpKa=−2.5〜−2.0)で表面修飾した実施例2の担体2は、メルカプト酢酸(pKa=3.5〜4.0)で表面修飾した実施例1の担体1より少ない量の解離液でタンパク質の解離が始まった。
また、実施例3〜4で得られた担体3〜4から、捕捉したタンパク質を50mMクエン酸緩衝液(pH3.2)で解離させ、その際の解離応答性をGEヘルスケア社製AKTAprime plusで3CV(3Column Volume)まで測定したところ、テーリングがほとんどみられなかった。
【0075】
(試験例2 HCP測定試験)
実施例1で得られた担体1を70μL(湿潤状態)秤取り、1.0mg/mLモノクローナル抗体溶液(モノクローナル抗体Trastuzumabのバイオシミラーを含有するCHO細胞培養上清)2.45mLを加えて、室温で1.5時間撹拌振とうして、抗体を担体に捕捉した。
次いで、前記抗体を捕捉させた担体の全量をスピンカラム(Thermo製)に移し、遠心分離(1000rpm)によって抗体溶液を除いた。
次に、20mMリン酸ナトリウム/150mM NaClバッファー(pH7.5)をスピンカラムに加え、合計840μLを遠心分離によって通液し、担体を洗浄した。
次いで、20mMリン酸ナトリウム/1.0M NaClバッファー(pH7.5)をスピンカラムに加え、合計840μLを遠心分離によって通液し、担体を洗浄した。
次に、20mMリン酸ナトリウム/150mM NaClバッファー(pH7.5)をスピンカラムに加え、合計840μLを遠心分離によって通液し、担体を洗浄した。
その後、50mMクエン酸緩衝液(pH3.2)をスピンカラムに加え、合計700μLを遠心分離によって通液し、担体に捕捉されていたモノクローナル抗体を解離した。解離液中の抗体濃度を、BioRAD製Smartspec Plusを使用して吸光度から算出した。
そして、Cygnus Technologies社製 CHO HCP ELISA kit,3Gを用い、Host Cell Protein(HCP)濃度を測定し、抗体濃度でスタンダード化した。
また、実施例2〜4及び比較例1〜3で得られた担体2〜7についても、上記と同様にしてHCP測定試験を行った。
結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
酸性基を有する化合物で表面を修飾した実施例1〜4の担体1〜4は、防汚性に優れるためHCP値が低く、また、DBCも高かった。一方、水酸基を有する化合物のみで表面を修飾した比較例1の担体5は、防汚性が不十分であるためHCP値が高くなった。また、表面を修飾していない比較例2〜3の担体6〜7は、防汚性が不十分であるためHCP値が高く、また、DBCが低かった。
このように、実施例1〜4の担体1〜4は、標的物の動的結合容量が高く、且つ優れた防汚性を有するものであった。
図1