(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、対数周期型アンテナを使用したアンテナ装置は、周波数ごとの指向性が反射板と各素子との距離に依存する。このため、2個の対数周期型アンテナを素子長が短い側が互いに向き合う状態で逆向きに対向配置し、かつ反射板に対し一定距離を隔てて平行する状態に配置した構成では、周波数により指向性が乱れることから、周波数ごとに指向性を調整することが難しい。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、周波数ごとの指向性の調整を大掛かりな対策を講じることなく簡単に行えるようにする対数周期型アンテナを使用した多周波アンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明の第1の態様は、素子長が対数周期的に順次長くなるように設定された複数の素子を誘電体基板の両面に配列した第1および第2の対数周期型アンテナを、前記複数の素子の配列方向が互いに逆向きとなるように配置したアンテナユニットと、前記第1および第2の対数周期型アンテナに対し高周波信号を給電する給電回路と、前記第1および第2の対数周期型アンテナに対し離間して配置される反射板とを具備する多周波アンテナ装置にあって、前記第1および第2の対数周期型アンテナを、その複数の素子の素子長が長くなるに従い当該複数の素子と前記反射板との間隔が大きくなるように前記反射板に対し傾斜する状態に配置し、かつ前記複数の素子と前記反射板との間隔を、当該複数の素子の共振周波数の波長に換算した場合に予め設定した範囲内で一定となるように設定したものである。
【0008】
この発明の第2の態様は、前記反射板上の、前記第1および第2の対数周期型アンテナの前記複数の素子の配列方向と直交する方向に補助反射板を、さらに立設するようにしたものである。
【0009】
この発明の第3の態様は、前記第1および第2の対数周期型アンテナの複数の素子の配列方向の延長上に、それぞれ無給電素子からなる一対の導波器を、さらに配置するようにしたものである。
【0010】
この発明の第4の態様は、前記第1および第2の対数周期型アンテナの前記複数の素子のうち、指向性の調整対象となる周波数に共振する素子と隣接する位置に、前記複数の素子の対数周期と異なる素子長を有するマッチング素子を、さらに配置するようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明の第1の態様によれば、対数周期型アンテナごとにその各素子と反射板との間隔、すなわち反射板に対する各対数周期型アンテナの傾斜角を調整するだけで、各周波数の指向性を最適な状態に調整することが可能となる。
【0012】
この発明の第2の態様によれば、反射板上の第1および第2の対数周期型アンテナの素子の配列方向と直交する方向に補助反射板を立設したことで、反射板自体を大型化することなく反射板の有効面積を増加させることが可能となり、これにより多周波アンテナ装置の小型化を維持しつつ第1および第2の対数周期型アンテナの指向性をさらに向上させることができる。
【0013】
この発明の第3の態様によれば、第1および第2の対数周期型アンテナの素子の配列方向の延長上に無給電素子からなる導波器をそれぞれ配置したことで、多周波アンテナ装置の小型化を維持した上で、使用周波数帯の内の特定の周波数帯に対して指向性を制御することが可能となり、これにより対数周期型アンテナの素子の配列方向における指向性を所望の状態に調整することができる。
【0014】
この発明の第4の態様によれば、第1および第2の対数周期型アンテナの各素子のうち指向性の調整対象となる周波数に共振する素子と隣接する位置に、対数周期と異なる素子長を有するマッチング素子を配置することで、大掛かりなマッチング回路を別途設けることなく電圧定在波比(Voltage Standing Wave Ratio:VSWR)を制御することができ、これにより広帯域性を向上させることができる。
【0015】
すなわちこの発明によれば、周波数ごとの指向性の調整を大掛かりな対策を講じることなく簡単に行えるようにした対数周期型アンテナを使用した多周波アンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の第1の実施形態に係る多周波アンテナ装置の構成の概要を示す斜視図。
【
図2】
図1に示した多周波アンテナ装置の具体的な構造を示すもので、(a)はその正面図、(b)は長辺側から見た側面図、(c)は短辺側から見た側面図。
【
図3】
図1に示した対数周期型アンテナにおける素子の配列パターンの一例を示す図。
【
図4】
図1に示した多周波アンテナ装置において、対数周期型アンテナを反射板に対し傾斜させ、かつ補助反射板および導波器を設置しなかった場合のアンテナ動作を示す図。
【
図5】対数周期型アンテナを反射板に対し傾斜させて配置した場合の対数周期型アンテナと反射板との間隔を示す図。
【
図6】対数周期型アンテナと反射板との間隔を一定にした場合を示す図。
【
図7】
図4に示した条件で得られる750MHzにおけるE面およびH面それぞれの指向性の一例を示す図。
【
図8】
図4に示した条件で得られる950MHzにおけるE面およびH面それぞれの指向性の一例を示す図。
【
図9】対数周期型アンテナを反射板に対し150mmの間隔を隔てて平行に配置した場合の750MHzにおけるE面およびH面それぞれの指向性の一例を示す図。
【
図10】対数周期型アンテナを反射板に対し150mmの間隔を隔てて平行に配置した場合の950MHzにおけるE面およびH面それぞれの指向性の一例を示す図。
【
図11】対数周期型アンテナを反射板に対し120mmの間隔を隔てて平行に配置した場合の750MHzにおけるE面およびH面それぞれの指向性の一例を示す図。
【
図12】対数周期型アンテナを反射板に対し120mmの間隔を隔てて平行に配置した場合の950MHzにおけるE面およびH面それぞれの指向性の一例を示す図。
【
図13】
図7乃至
図12に示したE面およびH面それぞれの指向性の半値幅の計測値とその判定結果を一覧表示した図。
【
図14】
図1に示した多周波アンテナ装置において、対数周期型アンテナを反射板に対し傾斜させ、かつ補助反射板を設置し導波器を設置しなかった場合のアンテナ動作を示す図。
【
図15】
図14に示した条件で得られるE面およびH面それぞれの指向性を示すもので、(a)は750MHzのときの指向性を、(b)は950MHzのときの指向性をそれぞれ示す図。
【
図16】
図1に示した多周波アンテナ装置において、対数周期型アンテナを反射板に対し傾斜させ、かつ補助反射板および導波器を設置した場合のアンテナ動作を示す図。
【
図17】
図16に示した条件で得られるE面およびH面それぞれの指向性を示すもので、(a)は750MHzのときの指向性を、(b)は950MHzのときの指向性をそれぞれ示す図。
【
図18】
図3に示したようにマッチング素子を配置した場合のVSWR特性を示す図。
【
図19】マッチング素子を配置しない場合のVSWR特性を示す図。
【
図20】この発明の第2の実施形態に係る多周波アンテナ装置の構成を示す斜視図。
【
図21】
図20に示した多周波アンテナ装置の構成を別の角度から見たときの斜視図。
【
図22】
図20に示した多周波アンテナ装置で使用される4分配用の電力分配器の構成を示す図。
【
図23】従来の4分配用の電力分配器の構成を示す図。
【
図24】
図22に示した4分配用の電力分配器によるVSWR特性を示す図。
【
図25】
図22に示した4分配用の電力分配器によるアイソレーションの性能を示す通過特性を示す図。
【
図26】
図22に示した4分配用の電力分配器による位相特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
この発明の第1の実施形態に係る多周波アンテナ装置は、トンネル内を走行中の新幹線などの鉄道車両との間で携帯電話通信用の無線高周波を送受信するもので、トンネル内の壁面に固定され、トンネルの長手方向、つまり鉄道車両の走行方向に対応する2方向に指向性を持つように構成される。多周波アンテナ装置は、LowBand用とHighBand用の2種類が用意され、LowBand用の装置は700、800、900MHzをカバーする。一方HighBand用の装置は1.5、1.7、2.1GHzをカバーする。なお、本実施形態ではLowBand用の装置を例にとって説明する。
【0018】
図1は、この発明の第1の実施形態に係る多周波アンテナ装置の構成の概要を示す斜視図である。この多周波アンテナ装置は、接地された導電材料からなる反射板1と、当該反射板1に対し離間して配置される第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bと、上記反射板1上に立設される一対の補助反射板3a,3bと、上記第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bの遠端側に配置される一対の導波器4a,4bとを備える。この多周波アンテナ装置は、トンネル内の壁面5に図示しない架台により固定され、装置前面部には図示しない保護カバーが取り付けられる。
【0019】
第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bは、
図3(a),(b)に示すように、誘電体基板21の表面および裏面に、素子長が対数周期的に順次長くなるように設計された複数の素子22,23の配列パターンを形成したもので、最も短い素子が配置される側の端部にはそれぞれ給電点61,62が設けられている。各配列パターンは、誘電体基板21を挟んで互い違いに対向するように形成され、これにより素子22、23の各々がトンネルの長手方向に指向性を持つダイポール素子として動作するようになっている。
【0020】
図2は、上記多周波アンテナ装置の具体的な構成を示すもので、(a)は正面図、(b)は長辺側から見た側面図、(c)は短辺側から見た側面図である。同図に示すように、第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bは、最も長い素子が配置された側が向き合う状態で互いに逆向きとなるように配置される。そして、対数周期型アンテナ2a,2bの先端部に設けられた給電点61,62には、図示しない給電線路を介して高周波電力が供給される。なお、図中6は外部の無線ユニットに多周波アンテナ装置を接続するためのコネクタである。
【0021】
また第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bは、反射板1に対しハ型に傾斜する状態に配置される。すなわち、給電点61,62側の素子から素子長が長くなるに従い徐々に反射板1との間の距離が大きくなるように、誘電体基板21全体に傾斜をつけて配置される。このとき、反射板1に対する誘電体基板21の傾斜角および給電点61,62の距離は、各素子と反射板1との距離が各素子が共振する周波数の波長に換算した場合にほぼ一定となるように設定される。なお、上記した反射板1に対する対数周期型アンテナ2a,2bの傾斜角および給電点61,62の距離は、スペーサ5a,5bにより規定される。
【0022】
また、上記対数周期型アンテナ2a,2bの素子配列方向と直交する方向、つまり対数周期型アンテナ2a,2bの短辺方向の両側には、一対の補助反射板3a,3bが配置されている。これらの補助反射板3a,3bは反射板1上にネジ止めにより立設される。補助反射板3a,3bの幅方向の長さは、指向性の調整対象となる低周波域に対応する素子に対向するように設定され、また高さ方向の寸法は対数周期型アンテナ2a,2bと反射板1との距離よりも短くなるように設定される。
【0023】
さらに、上記対数周期型アンテナ2a,2bの長手方向の延長上には、一対の導波器4a,4bが配置されている。これらの導波器4a,4bは対数周期型アンテナ2a,2bの各先端部を支持するスペーサ5a,5bの外側面に取り付けられ、対数周期型アンテナ2a,2bに対し無給電素子として動作する。
【0024】
またさらに、対数周期型アンテナ2a,2bにおいて、誘電体基板21の裏面側に形成された素子23の配列パターンには、素子長が最も長い素子と2番目に長い素子との間に、マッチング素子24が形成されている。このマッチング素子24の素子長は、素子23の対数周期と異なる長さに設定される。
【0025】
以上のように構成された多周波アンテナ装置によれば、以下のような作用効果が奏せられる。
(1)第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bは、給電点61,62側の素子から素子長が長くなるに従い徐々に反射板1との間の距離が大きくなるように、誘電体基板21全体を傾斜させて配置される。このとき、反射板1に対する誘電体基板21の傾斜角および給電点61,62の距離は、各素子と反射板1との距離が各素子の共振周波数の波長に換算した場合にほぼ一定となるように設定される。この結果、いずれの周波数に対しても指向性の乱れを抑制して周波数ごとの指向性を容易に調整することが可能となる。
【0026】
以上の効果を指向性の計測結果により例示する。いま
図4に示すように電界面E(E面)および磁界面H(H面)における指向性をそれぞれ計測する。なお、電界面Eの指向性は磁界面H(H面)の最大放射方向において計測した。
【0027】
先ず、
図5に示すように反射板1に対し第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bを傾斜させて配置し、素子長が最も長い素子と反射板1との間の距離をh1=150mm、素子長が最も短い素子と反射板1との間の距離をh2=120mmとしたとき、750MHzにおけるE面の指向性E11およびH面の指向性H11はそれぞれ
図7(a),(b)に示すようになる。そして、E面の指向性E11に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はE11′となり、その半値幅は83.2°となる。同様に、H面の指向性H11に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はH11′となり、その半値幅は44.7°となる。
【0028】
また、同じ条件で950MHzにおけるE面の指向性E12およびH面の指向性H12を計測すると
図8(a),(b)に示すようになる。そして、E面の指向性E12に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はE12′の半値幅は64.0°となり、またH面の指向性H12に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はH12′の半値幅は49.0°となる。
【0029】
すなわち、反射板1に対し第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bを傾斜させて配置することで、750MHzに代表される比較的低い周波数帯に対しても、また950MHz以上の比較的高い周波数帯においても、E面およびH面のいずれにおいても良好な指向性を得ることができる。
【0030】
ちなみに、
図6に示すように反射板1に対し第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bを平行に配置させ、その離間距離をh1,h2=150mmとしたとき、750MHzにおけるE面の指向性E13およびH面の指向性H13はそれぞれ
図9(a),(b)に示すようになる。そして、E面の指向性E13に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はE13′となり、その半値幅は80.0°となる。同様に、H面の指向性H13に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はH13′となり、その半値幅は41.2°となる。
【0031】
また、同じ条件で950MHzにおけるE面の指向性E14およびH面の指向性H14を計測すると
図10(a),(b)に示すようになる。そして、E面の指向性E14に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はE14′の半値幅は66.7°となり、またH面の指向性H14に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はH14′の半値幅は52.3°となる。
【0032】
すなわち、第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bと反射板1との距離をh1,h2=150mmとした場合、950MHzにおけるE面およびH面の指向性の半値幅がいずれも大きくなり過ぎる。
【0033】
同様に、反射板1に対し第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bを平行に配置させ、その離間距離をh1,h2=120mmとしたとき、750MHzにおけるE面の指向性E15およびH面の指向性H15はそれぞれ
図11(a),(b)に示すようになる。そして、E面の指向性E15に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はE15′となり、その半値幅は87.3°となる。同様に、H面の指向性H15に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はH15′となり、その半値幅は79.5°となる。
【0034】
また、同じ条件で950MHzにおけるE面の指向性E16およびH面の指向性H16を計測すると
図12(a),(b)に示すようになる。そして、E面の指向性E16に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はE16′の半値幅は60.0°となり、またH面の指向性H16に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はH16′の半値幅は48.5°となる。
【0035】
すなわち、第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bと反射板1との距離をh1,h2=120mmとした場合、750MHzにおけるE面およびH面の指向性の半値幅がいずれも大きくなり過ぎる。
図13は、上記
図7乃至
図12に示した各指向性の半値幅に対する判定結果を一覧表示したものである。同図からも明らかなように、反射板1に対し第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bを傾斜させて配置し、素子長が最も長い素子と反射板1との間の距離をh1=150mm、素子長が最も短い素子と反射板1との間の距離をh2=120mmとすることで、750MHzにおいても、また950MHzにおいても指向性を良好な状態に調整することができる。すなわち、反射板1に対する各対数周期型アンテナ2a,2bの傾斜角を調整するだけで、各周波数の指向性を最適な状態に調整することが可能となる。
【0036】
(2)対数周期型アンテナ2a,2bの素子配列方向と直交する方向、つまり対数周期型アンテナ2a,2bの短辺方向の両側に、一対の補助反射板3a,3bが配置されている。このため、反射板1自体を大型化することなく反射板1の有効面積を増加させることが可能となり、これにより多周波アンテナ装置の小型化を維持しつつ第1および第2の対数周期型アンテナ2a,2bの指向性をさらに向上させることができる。この効果は、例えばトンネル内の壁面のように設置スペースが制限される場所に設置する場合に特に有効である。
【0037】
いま、
図14に示すように電界面E(E面)および磁界面H(H面)における指向性をそれぞれ計測したとする。なお、電界面Eの指向性は磁界面H(H面)の最大放射方向において計測した。
【0038】
図5に示したように反射板1に対し第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bを傾斜させて配置し、かつ反射板1上の上記対数周期型アンテナ2a,2bの両側部に相当する位置に補助反射板3a,3bを立設するものとする。なお、上記対数周期型アンテナ2a,2bの傾斜角は、素子長が最も長い素子と反射板1との間の距離がh1=150mm、素子長が最も短い素子と反射板1との間の距離がh2=120mmとなるように設定している。
【0039】
この条件下で、750MHzにおけるE面の指向性E21およびH面の指向性H21を計測すると、
図15(a)に示すようになる。そして、E面の指向性E21に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はE21′となり、その半値幅は45.1°となる。同様に、H面の指向性H21に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はH21′となり、その半値幅は57.4°となる。
【0040】
また、同じ条件で950MHzにおけるE面の指向性E22およびH面の指向性H22を計測すると
図15(b)に示すようになる。そして、E面の指向性E22に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はE22′の半値幅は62.8°となり、またH面の指向性H22に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はH22′の半値幅は49.2°となる。
【0041】
すなわち、反射板1に対し第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bを傾斜させて配置し、かつ補助反射板3a,3bを設けることで、特に750MHzに代表される比較的低い周波数帯において、E面およびH面のいずれに対しても指向性をさらに向上させることができる。
【0042】
(3)対数周期型アンテナ2a,2bの長手方向の延長上には、一対の導波器4a,4bが配置される。これらの導波器4a,4bは、対数周期型アンテナ2a,2bに対し無給電素子として動作する。このため、反射板1のサイズを大型化することなく、対数周期型アンテナ2a,2bの素子配列方向における指向性をさらに高めることが可能となる。
【0043】
いま、
図16に示すように電界面E(E面)および磁界面H(H面)における指向性をそれぞれ計測したとする。なお、電界面Eの指向性は磁界面H(H面)の最大放射方向において計測した。
【0044】
反射板1に対し第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bを傾斜させて配置し、かつ反射板1上の上記対数周期型アンテナ2a,2bの両側部に相当する位置に補助反射板3a,3bを立設すると共に、対数周期型アンテナ2a,2bの長手方向の延長上に一対の導波器4a,4bを配置するものとする。なお、上記対数周期型アンテナ2a,2bの傾斜角は、素子長が最も長い素子と反射板1との間の距離がh1=150mm、素子長が最も短い素子と反射板1との間の距離がh2=120mmとなるように設定する。
【0045】
この条件下で、750MHzにおけるE面の指向性E31およびH面の指向性H31を計測すると、
図17(a)に示すようになる。そして、E面の指向性E31に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はE31′となり、その半値幅は46.2°となる。同様に、H面の指向性H31に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はH31′となり、その半値幅は56.2°となる。
【0046】
また、同じ条件で950MHzにおけるE面の指向性E32およびH面の指向性H32を計測すると
図17(b)に示すようになる。そして、E面の指向性E32に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はE32′の半値幅は44.7°となり、またH面の指向性H32に対し最大放射方向から−3dBの位置における指向性範囲はH32′の半値幅は37.6°となる。
【0047】
すなわち、反射板1に対し第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bを傾斜させて配置し、かつ対数周期型アンテナ2a,2bの両側に補助反射板3a,3bを配置すると共に、対数周期型アンテナ2a,2bの長手方向の延長上に導波器4a,4bを配置したことで、特に750MHzに代表される比較的低い周波数帯において、E面およびH面のいずれに対しても指向性をさらに向上させることができる。
【0048】
(4)対数周期型アンテナ2a,2bの誘電体基板21の裏面側に形成された素子23の配列パターンにおいて、
図3(b)に示したように、素子長が最も長い素子と2番目に長い素子との間に、対数周期とは異なる素子長を有するマッチング素子24を形成している。このマッチング素子24は、それ自体でスタブとして動作し得るほか、隣接する対数周期素子と電磁的に結合してある種の装荷素子として動作する。すなわち、マッチング素子24の特徴は、対数周期型アンテナの一方の極(基板の片面)にのみ設けられ、電気的な言い方をすれば、平衡回路中に非対称(不平衡)に設けられていることである。この結果、大掛かりなマッチング回路を別途設けることなくVSWRを制御することができ、これにより広帯域性を向上させることができる。
【0049】
図18は、本実施形態に係るアンテナ装置のVSWR特性の計測結果の一例を示すもので、750MHz〜950MHzの広帯域に渡り良好な特性を得ることができる。ちなみに、
図19はマッチング素子24を設けなかったときのVSWR特性を示す。
図18および
図19から明らかなように、本実施形態によれば750MHz帯のVSWR特性を改善することが可能となり、これにより750MHzから950MHzの広帯域に渡り良好なVSWR特性を得ることができる。
【0050】
[第2の実施形態]
この発明の第2の実施形態は、第1の実施形態で述べたように素子長が最も長い素子同士が向き合う状態で互いに逆向きに配置された一対の対数周期型アンテナを2対設け、これらの対数周期型アンテナの対を反射板に対し屋根状に傾けた状態で並行して配置したものである。
【0051】
図20はこの発明の第2の実施形態に係る多周波アンテナ装置の外観を正面方向から見た斜視図、
図21は側面方向から見た斜視図である。これらの図に示すように、第2の実施形態に係る多周波アンテナ装置は、素子長が最も長い素子同士が向き合う状態で互いに逆向きに配置された一対の対数周期型アンテナ2a,2bに加え、同様の構成を有する対数周期型アンテナ2c,2dをもう一対備えている。対数周期型アンテナ2a,2bと対数周期型アンテナ2c,2dは、素子の配列方向と直交する方向に並べて配置され、かつ並行する対数周期型アンテナ2aと2c、および対数周期型アンテナ2bと2dがそれぞれ屋根状に傾斜した状態で配置される。なお、図中8は多周波アンテナ装置をトンネル壁面に固定するための架台である。
【0052】
このように構成された多周波アンテナ装置であれば、対数周期型アンテナ2a,2bと2c,2dとが同方向に同相でスタックされることになり、指向性を良好に保持した上でアンテナ利得を高めることが可能となる。
【0053】
また、反射板1上には上記対数周期型アンテナ2a,2bおよび2c,2dに対し高周波電力を給電するための4分配用の電力分配器7が配置されている。この電力分配器7は、
図22に示すように誘電体基板の一方の面に接地パターンを形成すると共に、他方の面に導体線路パターンを形成している。この導体線路パターンは、図示しない無線ユニットに接続される入力端子P1から、線路幅が3段階に渡りW1,W2,W3と順次大きくなるように構成された階段状の導電線路を有し、各導電線路の線路長は1/4波長以下に設定されている。また線路幅が最も大きい導電線路(線路幅=W3)の先端辺には4本の突起線路が形成され、これらの突起線路の先端部にはそれぞれ給電端子P2〜P5が設けられている。これらの給電端子P2〜P5は、図示しない同軸ケーブルまたはマイクロストリップ線路を介して、上記対数周期型アンテナ2a,2bおよび2c,2dの給電端子に接続される。ちなみに、
図23は従来使用されている4分配用の電力分配器の一構成を示すもので、4分配された各線路は同一の線路幅に設定されている。
【0054】
このように構成された4分配用の電力分配器7を用いると、線路幅が段階的に大きくなるように形成された導電線路の線路長L1,L2,L3と線路幅W1,W2,W3を適宜調整することで、各対数周期型アンテナ2a,2bおよび2c,2dに対する電力分配器7のインピーダンスを整合させ、かつ出力側の4本の突起線路の長さを変更することで、各対数周期型アンテナ2a,2bおよび2c,2dの給電端子に供給する無線信号の位相を調整することが可能となる。
【0055】
図24、
図25および
図26はそれぞれ、
図22に示したように電力分配器7のサイズを縦が88mm、横が50mmとし、線路長をL1=27mm、L2=15mm、L3=16.2mmに設定すると共に、線路幅をW1=7mm、W2=14mm、W3=18mmに設定した場合の、VSWR特性、アイソレーションの性能を示す通過特性、および位相特性を示したものである。
【0056】
[その他の実施形態]
第1の実施形態では、対数周期型アンテナ2a,2bを反射板1に対し傾斜させ、かつ補助反射板3a,3bに加えて導波器4a,4bを設置した場合について説明したが、対数周期型アンテナ2a,2bを反射板1に対し傾斜させた状態で補助反射板3a,3bのみを設けた場合や、対数周期型アンテナ2a,2bを反射板に対し傾斜させた状態で導波器4a,4bのみを設けた場合も、本発明の範囲に含まれる。
【0057】
第1の実施形態では、第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bの両側部にそれぞれ1個の補助反射板3a,3bを配置した場合を例にとって説明したが、第1及び第2の対数周期型アンテナ2a,2bのそれぞれに対し独立して計4個の補助反射板を設置するようにしてもよい。その他、カバー対象の周波数帯や対数周期型アンテナ自体の構成、補助反射板、導波器、マッチング素子および電力分配器のサイズや形状、数などについても、この発明の要旨を逸脱しない範囲でどのように選択してもよい。
【0058】
要するにこの発明は、上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、各実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。