特許第6634265号(P6634265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6634265
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】断熱材の止着固定方法及びその構造
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20200109BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   F17C13/00 302E
   F16L59/02
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-206963(P2015-206963)
(22)【出願日】2015年10月21日
(65)【公開番号】特開2017-78470(P2017-78470A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134464
【氏名又は名称】株式会社トスカバノック
(74)【代理人】
【識別番号】100081570
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰芳
(72)【発明者】
【氏名】平井 智行
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−521629(JP,A)
【文献】 特開2014−184875(JP,A)
【文献】 特開2015−143753(JP,A)
【文献】 特開2014−224648(JP,A)
【文献】 特開2006−170221(JP,A)
【文献】 実開昭55−117622(JP,U)
【文献】 米国特許第04140073(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第102006043477(DE,A1)
【文献】 実開平02−004097(JP,U)
【文献】 特開2000−072099(JP,A)
【文献】 特開2005−042721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
F16L 59/02
B65D 90/02
B64G 1/58
F17C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスが収容される内容器と、その内容器の外表面と間隔を隔てて外装体を設けているタンクであって、そのタンクの前記内容器の外表面をシート状の断熱材で囲い止着固定する方法であって、内容器の外表面に設けられる複数のスタッドで金網を固定し、その金網の表面側にプラスチック製の止着ピンにより、前記シート状の断熱材を止着固定する断熱材の止着固定方法において、前記した金網は、前記した断熱材のつなぎ目部分の裏面に設置されていることを特徴とする断熱材の止着固定方法。
【請求項2】
液化ガスが収容される内容器と、その内容器の外表面と間隔を隔てて外装体を設けているタンクであって、そのタンクの前記内容器の外表面をシート状の断熱材で囲い止着固定する方法であって、内容器の外表面に設けられる複数のスタッドで金網を固定し、その金網の表面側にプラスチック製の止着ピンにより、前記シート状の断熱材を止着固定する断熱材の止着固定方法において、前記した金網は、前記した断熱材の周縁裏面に設置されていることを特徴とする断熱材の止着固定方法。
【請求項3】
液化ガスが収容される内容器の外表面に弾性を有する発泡体を接着し、シート状の断熱材をその表面に被せ、プラスチック製の止着ピンによりそのシート状の断熱材を、前記した発泡体の表面側に止着固定することを特徴とする断熱材の止着固定方法。
【請求項4】
前記したシート状の断熱材は多層構成のMLIを使用することを特徴とする請求項1から3のうち1項に記載の断熱材の止着固定方法。
【請求項5】
前記したプラスチック製の止着ピンはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用することを特徴とする請求項1から4のうち1項に記載の断熱材の止着固定方法。
【請求項6】
前記した止着ピンはランナー部材に連結部材に連結部(ゲート)によって複数並設されているアッセンブリを装着器具を使用して装着するものとし、前記連結部は径を0.3〜0.8mmとし、両端の抜け防止部をつなぐファイバー部は径を0.2〜1.0mmとしてあることを特徴とする請求項5に記載の断熱材の止着固定方法。
【請求項7】
液化ガスが収容される内容器と、その内容器の外表面と間隔を隔てて外装体を設けているタンクであって、そのタンクの前記内容器の外表面をシート状の断熱材で囲い止着固定する構造であって、内容器の外表面に弾性を有する発泡体を接着し、その発泡体の表面側にプラスチック製の止着ピンにより、前記シート状の断熱材を止着固定してあることを特徴とする断熱材の止着固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は断熱材の構造と断熱材の止着固定方法及びその構造に関し、特に液化ガスを収容するタンクに対し、極力真空状態を保持して、収容された液化ガスからの放熱と、外部からの吸熱を遮断して良好な液化状態を長時間に亘って維持することのできる断熱材の構造と断熱材の止着固定方法及びその構造に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは−162℃(参考窒素ガス−196℃)以下の低温で液化し、水素にいたっては−253℃以下で液化する。その液化ガスを貯蔵し、あるいは輸送するために用いられるタンクは、この低温を維持することが要求されるもので、液化ガスが収容される内容器とその内容器の外側に間隔を隔てて装備される外装体から成る二重構造とされ、内容器と外装体との間隔は吸気された高真空状態とされる。真空状態は当然のことながら対流がなく断熱作用に優れている。
【0003】
また、このタンクの構造にあって、より一層の断熱性を高めるため、内容器の外表面をシート状の断熱材で囲み覆うことがなされている。従来、このシート状断熱材の固定は、面状ファスナーの使用が一般的とされている。
【0004】
しかしながら、面状ファスナーの使用は、止着作業が非常に面倒なものとなってしまい作業効率が悪いものとなっている。また、内容器と断熱材との固着力が不確実で、断熱性能の低下をもたらしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
出願人は、本願発明について、先行する技術文献を調査したが、格別に本願発明と関連し、類似していると思われる文献は発見できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする問題点は、取り扱い易い断熱材の構造や、液化ガス用のタンクにあって、シート状の断熱材を容易に精度よく止着固定することができ、しかも、その構造から悪影響が生じる虞がないという断熱材の止着固定方法及びその構造が存在していなかったという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この問題点の解決するために、本発明に係る断熱材の止着固定方法は、液化ガスが収容される内容器と、その内容器の外表面と間隔を隔てて外装体を設けているタンクであって、そのタンクの前記内容器の外表面をシート状の断熱材で囲い止着固定する方法であって、内容器の外表面に設けられる複数のスタッドで金網を固定し、その金網の表面側にプラスチック製の止着ピンにより、前記シート状の断熱材を止着固定する断熱材の止着固定方法において、前記した金網は、前記した断熱材のつなぎ目部分の裏面に設置されていることを特徴とし、液化ガスが収容される内容器と、その内容器の外表面と間隔を隔てて外装体を設けているタンクであって、そのタンクの前記内容器の外表面をシート状の断熱材で囲い止着固定する方法であって、内容器の外表面に設けられる複数のスタッドで金網を固定し、その金網の表面側にプラスチック製の止着ピンにより、前記シート状の断熱材を止着固定する断熱材の止着固定方法において、前記した金網は、前記した断熱材の周縁裏面に設置されていることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る断熱材の止着固定方法は、液化ガスが収容される内容器の外表面に弾性を有する発泡体を接着し、シート状の断熱材をその表面に被せ、プラスチック製の止着ピンによりそのシート状の断熱材を、前記した発泡体の表面側に止着固定することを特徴としている。

【0009】
さらに、本発明に係る断熱材の止着固定方法は、前記したシート状の断熱材は多層構成のMLIを使用することを特徴としている。
【0010】
そして、本発明に係る断熱材の止着固定方法は、前記したプラスチック製の止着ピンはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用することを特徴とし、前記した止着ピンはランナー部材に連結部材に連結部(ゲート)によって複数並設されているアッセンブリを装着器具を使用して装着するものとし、前記連結部は径を0.3〜0.8mmとし、両端の抜け防止部をつなぐファイバー部は径を0.2〜1.0mmとしてあることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る断熱材の止着固定構造は、液化ガスが収容される内容器と、その内容器の外表面と間隔を隔てて外装体を設けているタンクであって、そのタンクの前記内容器の外表面をシート状の断熱材で囲い止着固定する構造であって、内容器の外表面に弾性を有する発泡体を接着し、その発泡体の表面側にプラスチック製の止着ピンにより、前記シート状の断熱材を止着固定してあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る断熱材の構造と断熱材の止着固定方法及びその構造は上記のように構成されている。特に、断熱材としてのMLIは当初、バラバラの一枚物が重ねられているのみのもので、取り扱いが非常に面倒であり、従前は手縫いで適度の隙間を残して縫着して一体化されていたが、かかる熟練性も必要なく、取り扱いが容易となり、ベース材との一体化によって、その断熱材の曲成、変形等の作業もベース材とともに容易に実行することができる。特に、ベース材として金網を用いるとその剛性によって変形塑性も確保することができる。また、シート状の断熱材はベース材に対し、プラスチック製の止着ピンで、装着器具を用いて止着するので、ワンタッチ作業で連続して作業が行なえ、非常に効率が良くなり、止着ピンとしてPEEKを使用して、その特性を変更することで作業の容易性が向上し、また、ナイロン等のように吸湿性もないので、真空状態に悪影響を与えることもないものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】模擬的に内容器の外表面を示す図である。
図2】模擬的に複数本のスタッドを取り付けた図である。
図3】模擬的に金網を取り付けた図である。
図4】模擬的に断熱材を装着器具を用いて、止着ピンで金網に止着固定する作業の図である。
図5】模擬的に断熱材を金網に取り付けた状態の図である。
図6】模擬的に断熱材の外側に外装体を取り付けた状態の図である。
図7】内容器と分離させたスタッドに金網を取り付けた図である。
図8】止着ピンを示す図である。
図9】止着ピンのアッセンブリを示す図である。
図10】装着器具を示す図である。
図11】断熱材(MLI)を金網と止着ピンで一体化した部分斜視図である。
図12】断熱材(MLI)を止着ピンでシート状に綴じた部分斜視図である。
図13】断熱材(MLI)を発泡体(発泡ゴム体)に止着ピンで一体化した部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面として示し、実施例で説明したように構成したことで実現した。
【実施例1】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施の一例を図面を参照して説明する。これらの図にあって、1は模擬的に示す液化ガス用タンクの内容器である。この内容器1の外表面には全面に亘って後述する外装体を取り付け、その外装体との間で間隔を確保するためのスペーサを兼ねた複数の第一スタッド2、2‥が所定ピッチをもって植設されている。
【0016】
また、この内容器1の外表面には、前記した第一スタッド2、2‥よりも短寸、即ち高さを低くした第二スタッド3、3‥も内容器1の外表面の全面に亘って所定ピッチで、予め形成されている植設穴3a、3a‥に複数植設する。
【0017】
次いで、前記した第二スタッド3、3‥に対して金網4をボルト(ねじ)によって取り付ける。ここで、金網4は取り付け前にベーキング処理(加熱処理)されて、不純物が除去されており、後述する真空状態に悪影響を及ぼすことがないよう図られている。そのため、ここで使用するネット材は金網4が好適で、汎用プラスチックやナイロン等の素材は好ましくない。そして、この金網4の装着は内容器1の外表面の全周に亘って巻装するようになされる。
【0018】
この止着ピン6は断熱材5を貫通するファイバー部6aを有し、前記した金網4の網目を通って、その網目を構成する線材に係止して抜け止めを図る係止部6bと、断熱材5の表面と当圧接して抜け止めを図る抜け止め部6cとが、前記ファイバー部6aの両端に一体に形成されているもので、ファイバー部6aは径を0.2〜1.0mmとしている。
【0019】
また、この止着ピン6は図9として示すアッセンブリAとして金型により成形される。このアッセンブリAは直線状のランナー部材7を有しており、このランナー部材7の一方側面に、止着ピン6、6‥が所定の間隔をおいて複数本設けられ、このランナー部材7と各止着ピン6、6‥とは各々連結部6dによって一体的に接続されている。
【0020】
前記したアッセンブリAは装着器具8にセットされ、トリガー8aを握り操作することで、止着ピン6を一本ずつランナー部材7から切離し、図示しないピストン部材によって断熱材5を貫通させ、係止部6bを金網4の網目を貫通させ、その網目を形成する線材と係止させる。ランナー部材7は装着器具8の取り付け部8bにセットされ、トリガー8aを一回操作することで、止着ピン6が一本ずつ爪を利用した送り機構で中空ニードル8cに対応され、前記したピストン部材により中空ニードル8cを通って送り出される。
【0021】
中空ニードル8cには長手方向に沿ってファイバー部6aが通るためのスリットが形成されており、ピストン部材で止着ピン6を中空ニードル8c内に押し送りする寸前に連結部6dはカッターで切断され、止着ピン6はランナー部材7から切離され、単品となる。このカッターでの切断が容易となるように、連結部6dは径を0.3〜0.8mmの細いものとしてある。
【0022】
この装着器具8を使用しての止着ピン6、6‥の装着作業はトリガー8aを握り込むワンタッチで連続して行なうことができ、非常に効率的で煩わしさもなく、作業時間も短縮することができる。また、止着ピン6の素材であるPEEKからは不純物が発生することもない。
【0023】
そして、この断熱材5の取り付けが終了したら、前記した第一スタッド2、2‥に対して外装体9を取り付け、タンクを内容器1と外装体9との間に間隔を形成した二重構造とする。その二重構造とされた間隔内を排気して真空状態とする。この真空状態は内容器1内の液化ガスの低温を保持するものであるが、本発明に用いられる止着ピン6を係止させるための金網4、止着ピン6から不純物が発生することなく、断熱材5の効能も劣化することなく確保できるものとなっている。
【0024】
さらに、前記した金網4の装着について、金網4に予め第二スタッド3、3‥を取り付けておき、この状態で、即ち、金網4を有する状態の第二スタッド3、3‥を内容器1の植設穴3a、3a‥へ植設することもできる。
【0025】
また、実施例で示した第二スタッド3、3‥と金網4の使用に代え、発泡ゴム等の弾性を有する発泡体10を内容器1の外表面に接着し、その発泡体10に対して、断熱材5を止着ピン6、6‥で止着固定する構成とすることもでき、同等の効果が得られる。この際の接着剤は蒸発劣化が少なく、アウトガスの発生がないものが採択される。
【0026】
さらに、ベース材としての金網4や発泡体10は内容器1の外表面全体に亘るものではなく、断熱材5の周縁裏面、即ち、断熱材5が矩形になされている場合には周縁の裏面のみでもよく、あるいは断熱材5が巻装されるつなぎ目部分のみに対応して設置することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本実施例に係る断熱材の構造と断熱材の止着固定方法及びその構造は上記のように構成されている。本実施例では液化ガス用のタンクに対しての実施を前提としているが、対象としてこれに限定されるものでないことは勿論で、MLIが常用的に使用される宇宙空間をはじめ、種々の物体間での断熱、特定された物体の外気との断熱として用いることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 内容器
2 第一スタッド
3 第二スタッド
4 金網
5 断熱材
6 止着ピン
6a ファイバー部
6b 係止部
6c 抜け止め部
6d 連結部
7 ランナー部材
8 装着器具
8a トリガー
8b 取り付け部
8c 中空ニードル
9 外装体
10 発泡体
A アッセンブリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13