特許第6634319号(P6634319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東日本旅客鉄道株式会社の特許一覧 ▶ ナブテスコ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6634319-戸先ゴム取付構造 図000002
  • 特許6634319-戸先ゴム取付構造 図000003
  • 特許6634319-戸先ゴム取付構造 図000004
  • 特許6634319-戸先ゴム取付構造 図000005
  • 特許6634319-戸先ゴム取付構造 図000006
  • 特許6634319-戸先ゴム取付構造 図000007
  • 特許6634319-戸先ゴム取付構造 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6634319
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】戸先ゴム取付構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/22 20060101AFI20200109BHJP
   B61D 19/00 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   E06B7/22 B
   B61D19/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-53215(P2016-53215)
(22)【出願日】2016年3月17日
(65)【公開番号】特開2017-166239(P2017-166239A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 拓司
(72)【発明者】
【氏名】海戸田 博彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 憲
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩士
(72)【発明者】
【氏名】平野 幸一
(72)【発明者】
【氏名】村山 こずえ
(72)【発明者】
【氏名】熊坂 章子
(72)【発明者】
【氏名】宮森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】上田 晋司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 裕貴
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 実開平4−113271(JP,U)
【文献】 特開平11−324476(JP,A)
【文献】 特開平8−42244(JP,A)
【文献】 実開平6−12692(JP,U)
【文献】 実開平6−61641(JP,U)
【文献】 実開平6−12691(JP,U)
【文献】 米国特許第6401396(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00−13/04
E06B 3/54− 3/88
E06B 7/00− 7/36
B61D 17/00−49/00
B66B 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延在するスリットが設けられている引き戸の戸先に固定され、前記スリットに連通する係止穴が形成されている取付板と、
一方の面に戸先ゴム体が配設され、他方の面に突起部が設けられた戸先ゴム支持板と、
を備え、
前記突起部は下方に突出した係合片を有しており、前記突起部を前記係止穴に落し込み係合させ、前記戸先ゴム支持板を前記取付板に密接させた状態で前記戸先に前記戸先ゴム体が取り付けられていることを特徴とする戸先ゴム取付構造。
【請求項2】
前記スリットは、前記取付板と平行な一対のフランジの間に設けられており、
前記取付板には、短尺側の寸法が前記スリットの幅よりも小さく、長尺側の寸法が前記スリットの幅よりも大きなサイズを有する抜止部材が、当該取付板のネジ穴に通されたネジ部材に螺着されており、
前記スリットから挿し入れた前記抜止部材に向けて前記ネジ部材を螺入することでその向きが切り替わった前記抜止部材と前記取付板とで前記フランジを挟み込んでいることを特徴とする請求項1に記載の戸先ゴム取付構造。
【請求項3】
前記引き戸の上面には、前記戸先ゴム支持板の上端部に当接する押え板が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の戸先ゴム取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の乗降扉等、引き戸の戸先に設置される戸先ゴムの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両に設けられている引戸式の乗降扉の戸先には、緩衝材として戸先ゴムが設置されている。戸先に設置する戸先ゴムの取り付け構造として、長尺な戸先ゴムGを戸先の縦枠に沿って差し込んだ構造のものがある。例えば、図7に示すように、戸先の縦枠には左右一対のフランジ11が設けられており、一対のフランジ11の間のスリット12に戸先ゴムGを差し込むようになっている。
このような取り付け構造の戸先ゴムを交換する場合、古い戸先ゴムを縦枠の上端から引き抜いた後、新しい戸先ゴムを縦枠の上端から差し込むのであるが、戸先ゴムと縦枠との摩擦抵抗が大きく、戸先ゴムを縦枠に沿って抜き差しする作業は非常に力のいるものであるため、その交換作業には必然的に複数の作業者を要し、手間と時間がかかるものであった。
【0003】
そこで、戸先ゴムの交換を容易にするため、落し掛け金具が突設されているゴムホルダーに戸先ゴムを保持させるとともに、戸先の縦枠に設けられた掛止穴に落し掛け金具を係入するようにして、戸先ゴム体を縦枠にワンタッチで取り付け可能にした取付構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−113271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の取付構造の場合、新設車両の乗降扉であれば予め設計した掛止穴を戸先の縦枠に形成すればよいが、この取付構造を既存の車両の乗降扉に適用するには、戸先の縦枠に掛止穴を形成するために車両から乗降扉を外さなければならず、煩わしかった。また、外した乗降扉を車両に組み付けた後には乗降扉の動作調整を行う必要が生じるのも煩わしかった。
このように上記特許文献1の取付構造は、既存の車両の乗降扉(引き戸)に適用するには不向きな技術であった。
【0006】
本発明の目的は、既存の引き戸の戸先に設置する戸先ゴム体の交換が容易な戸先ゴム取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明は、戸先ゴム取付構造であって、
上下方向に延在するスリットが設けられている引き戸の戸先に固定され、前記スリットに連通する係止穴が形成されている取付板と、
一方の面に戸先ゴム体が配設され、他方の面に突起部が設けられた戸先ゴム支持板と、
を備え、
前記突起部は下方に突出した係合片を有しており、前記突起部を前記係止穴に落し込み係合させ、前記戸先ゴム支持板を前記取付板に密接させた状態で前記戸先に前記戸先ゴム体が取り付けられているようにした。
【0008】
かかる構成の戸先ゴム取付構造であれば、例えば一対のフランジの間に上下方向に延在するスリットが設けられている既存の引き戸の戸先に、取付板と戸先ゴム支持板を介して戸先ゴム体を取り付けることができる。
なお、ここでいう戸先ゴム体とは、戸先ゴムの単体は勿論、戸先ゴムとその付属物の組み物(戸先ゴム部材)を指す。
具体的に、引き戸の戸先に固定されている取付板の係止穴に戸先ゴム支持板の突起部を落し込み係合させ、その突起部が設けられている戸先ゴム支持板の面(他方の面)を取付板に密接させた状態にすることで、戸先ゴム支持板の突起部とは反対の面(一方の面)に配設されている戸先ゴム体を引き戸の戸先に取り付けることができる。
そして、この戸先ゴム取付構造の戸先ゴム体が劣化または損傷するなどして、その交換が必要になった場合、例えば係合片と係止穴の重なり分だけ、古い戸先ゴム体を引き上げるようにして戸先ゴム支持板を取付板から外し、新しい戸先ゴム体が配設されている戸先ゴム支持板を取付板に係着させるようにして、戸先ゴム体の交換を容易に行うことができる。
【0009】
また、望ましくは、
前記スリットは、前記取付板と平行な一対のフランジの間に設けられており、
前記取付板には、短尺側の寸法が前記スリットの幅よりも小さく、長尺側の寸法が前記スリットの幅よりも大きなサイズを有する抜止部材が、当該取付板のネジ穴に通されたネジ部材に螺着されており、
前記スリットから挿し入れた前記抜止部材に向けて前記ネジ部材を螺入することでその向きが切り替わった前記抜止部材と前記取付板とで前記フランジを挟み込んでいるようにする。
【0010】
このように、一対のフランジの間に設けられているスリットから挿し入れた抜止部材に向けてネジ部材を螺入すると、抜止部材はネジ部材とともに回転してその向きが切り替わり、抜止部材がフランジの間から抜け出なくなる。さらに抜止部材に向けてネジ部材を螺入し、相対的に抜止部材をネジ部材に引き寄せて、抜止部材と取付板とでフランジを挟み込むようにすれば、取付板を引き戸の戸先に固定することができる。
このような取付板と抜止部材をネジ部材の組体を用いれば、一対のフランジの間にスリットが設けられている引き戸であれば、引き戸を車両などから外すことなく、引き戸の戸先に取付板を固定することができる。
【0011】
また、望ましくは、
前記引き戸の上面には、前記戸先ゴム支持板の上端部に当接する押え板が設けられているようにする。
【0012】
このように、戸先ゴム支持板の上端部に当接する押え板を設けることで、取付板に係着している戸先ゴム支持板が上方へ移動するのを規制することができ、戸先ゴム体が配設されている戸先ゴム支持板が取付板から外れないようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、既存の引き戸の戸先に設置する戸先ゴム体の交換を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】鉄道車両の引き戸の一例を示す説明図である。
図2】本実施形態の戸先ゴム取付構造を示す側面図(a)と、その断面図(b)である。
図3】戸先ゴム取付構造の取付板を示す側面図(a)と正面図(b)、その取付板と抜止部材を示す説明図(c)である。
図4】戸先ゴム取付構造の戸先ゴム支持板を示す側面図(a)と正面図(b)、その戸先ゴム支持板と戸先ゴム体を示す説明図(c)である。
図5】既存の引き戸の戸先に取付板を固定する手順を示す説明図(a)(b)(c)である。
図6】戸先ゴム取付構造の変形例を示す側面図(a)と、その断面図(b)である。
図7】従来の戸先ゴムの取り付け構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る戸先ゴム取付構造の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0016】
図1は、鉄道車両の乗降扉である引き戸10の一例を示す図である。
鉄道車両の引き戸10の上部には、ドアレールRに沿って転動する戸車Wが設けられており、引き戸10の戸先1に戸先ゴム体20が取り付けられている。
この戸先ゴム体20の取り付け構造について説明する。
【0017】
本実施形態の戸先ゴム取付構造100は、図2図5に示すように、引き戸10の戸先に固定されている取付板30と、取付板30に係着されている戸先ゴム支持板40と、戸先ゴム支持板40に配設されている戸先ゴム体20と、引き戸10の上面に設けられている押え板50等を備えて構成されている。なお、戸先ゴム体20は、断面視略半円形状を呈する戸先ゴム単体である。
この引き戸10の戸先1には、図5(a)に示すように、左右一対のフランジ11が設けられており、一対のフランジ11の間に上下方向に延在するスリット12が設けられている。
【0018】
取付板30は、例えば金属製の平板部材であり、引き戸10の戸先のフランジ11と平行に取り付けられ、その引き戸10の戸先のスリット12に連通する位置に係止穴31が形成されている。
また、取付板30には、皿ネジNが通されるネジ穴32が形成されており、そのネジ穴32に通された皿ネジNに抜止部材3が螺着されている。
抜止部材3は、取付板30を引き戸10の戸先に固定するための金属製の部材であり、短尺側の寸法がスリット12の幅よりも小さく、長尺側の寸法がスリット12の幅よりも大きなサイズを有している。
【0019】
この取付板30を引き戸10の戸先に固定するには、図5(a)〜(c)に示すように、引き戸10の戸先のスリット12から挿し入れた抜止部材3に向けて皿ネジNを螺入する。このとき、抜止部材3は皿ネジNとともに約90°回転し、抜止部材3が戸先の内壁面に当たるなどして、その向きが切り替わる。さらに抜止部材3に向けて皿ネジNを螺入し、相対的に抜止部材3を皿ネジNに引き寄せて、抜止部材3と取付板30でフランジ11を挟み込むことで、取付板30を引き戸10の戸先に固定することができる。
このような取付板30であれば、引き戸10を車両から外さなくても、引き戸10の戸先に固定することができる。具体的に、図5(a)や図7に示したような、一対のフランジ11の間にスリット12が設けられている引き戸10であれば、引き戸10を車両から外すことなく、引き戸10の戸先に取付板30を固定することができる。
【0020】
戸先ゴム支持板40は、例えば金属製の平板部材であり、一方の面に戸先ゴム体20が配設され、他方の面に突起部41が設けられている。
この突起部41は、下方に突出した係合片42を有しており、突起部41を取付板30の係止穴31に落し込み係合させることで、戸先ゴム支持板40を取付板30に係着することができる。
また、戸先ゴム支持板40には、ネジ穴43が形成されており、ネジ穴43を通した皿ネジNを用いて戸先ゴム体20を戸先ゴム支持板40に固定している。
【0021】
この戸先ゴム支持板40を取付板30に係着させることで、戸先ゴム体20を引き戸10の戸先に取り付けることができる。具体的に、戸先ゴム支持板40の突起部41を取付板30の係止穴31に落し込み係合させ、戸先ゴム支持板40を取付板30に密接させた状態にすることで、戸先ゴム支持板40に固定されている戸先ゴム体20を所定箇所に取り付けることができる。
このような戸先ゴム支持板40であれば、引き戸10の戸先に取付板30が固定されていれば、引き戸10を車両から外すことなく、戸先ゴム体20を引き戸10の戸先に取り付けることができる。
【0022】
また、戸先ゴム支持板40の突起部41を取付板30の係止穴31に落し込み係合させた後、戸先ゴム支持板40の上端部に当接させるように押え板50を引き戸10の上面に固定具51で固定する。
戸先ゴム支持板40の上端部に当接する押え板50を設けることで、取付板30に係着している戸先ゴム支持板40が上方へ移動するのを規制することができ、取付板30から戸先ゴム支持板40が外れないようにすることができる。
【0023】
以上のように、本実施形態の戸先ゴム取付構造100であれば、一対のフランジ11の間にスリット12が設けられている既存の引き戸10の戸先に、取付板30と戸先ゴム支持板40を介して戸先ゴム体20を取り付けることができる。
そして、この戸先ゴム取付構造100の戸先ゴム体20が劣化または損傷するなどして、その交換が必要になった場合、押え板50を外した後、係合片42と係止穴31の重なり分だけ古い戸先ゴム体20を引き上げるようにして戸先ゴム支持板40を取付板30から外し、新しい戸先ゴム体20が固定されている戸先ゴム支持板40を取付板30に係着させるようにして、戸先ゴム体20の交換を容易に行うことができる。
【0024】
このように、本実施形態の戸先ゴム取付構造100は、既存の引き戸10の戸先に設置する戸先ゴム体20の交換を容易に行うことが可能な構造を有している。
特に、この戸先ゴム取付構造100であれば、引き戸10を車両から外すことなく、引き戸10の戸先に戸先ゴム体20を取り付けたり、その交換を行ったりすることができるので、引き戸10を車両から外さなければ戸先ゴムの交換ができない取り付け構造に比べてメンテナンス性に優れている。
【0025】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図6に示すように、ゴムローラ21の回転軸21aが上下一対の軸受部22に支持されている戸先ゴム体23が戸先ゴム支持板40に配設されている戸先ゴム取付構造100であっても、その戸先ゴム体23の交換を容易に行うことができる。この戸先ゴム体23は、一対の軸受部22が戸先ゴム支持板40に皿ネジで固定されている。
このようにゴムローラ21が回転可能に軸支されているタイプの戸先ゴム体23であれば、引き戸10に乗客の荷物などが挟まる「戸挟み」が生じても、戸挟みしたものを引っ張ることでゴムローラ21を回転させるようにして、引き戸10に挟まったものを容易に引き抜くことができる。
【0026】
なお、以上の実施の形態においては、断面視略半円形状を呈する戸先ゴム体20を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、長尺な戸先ゴムの軸心に沿って空洞部が形成されている断面視略D字形状を呈する戸先ゴム体などであってもよい。
【0027】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
10 引き戸
1 戸先
11 フランジ
12 スリット
20 戸先ゴム体
21 ゴムローラ
21a 回転軸
22 軸受部
23 戸先ゴム体
30 取付板
3 抜止部材
31 係止穴
32 ネジ穴
40 戸先ゴム支持板
41 突起部
42 係合片
43 ネジ穴
50 押え板
51 固定具
100 戸先ゴム取付構造
N 皿ネジ(ネジ部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7