(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溝(225)の深さが、前記挿入部(220)の前記基端部(221)と前記自由端部(222)の間にある前記挿入部(220)の中間部(223)の最大厚の5/6以下である、請求項2に記載のバックル。
前記被係止部(230)は、前記本体(110)内への前記挿入部(220)の挿入方向及び前記挿入部(220)の厚み方向に直交する前記挿入部(220)の幅方向で突出し、
前記被係止部(230)の上面と前記面接触領域(238)の間には前記係止部(120)に接触しない非接触領域(236)が設けられる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のバックル。
前記雌部材(100)は、前記係止及び被係止部(120,230)の係合を解除するための操作部(130)と、前記操作部(130)を初期位置に復帰させるためのバネ部(140)を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のバックル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合でも、バックルのある程度の結合強度を確保することができるが、必ずしも十分な結合強度とは言えない場合がある。結合強度を高めるためには、厚み寸法の増加が検討されるが、バックルの薄型化に反するため、安易に採用することができない。このように、バックルの薄型化を大きく阻害しない態様でバックルの結合強度を高めることが望まれる。
【0005】
なお、結合強度とは、バックルの雄部材と雌部材が結合した状態で両者を引き離す力を段階的に増加する態様で付与し、両者の結合が解除するに至る時のその力の大きさを意味する。結合強度の測定は、結合状態の雄部材と雌部材それぞれに取り付けたベルトを反対方向に引き、この引く力を増加させ、雄部材と雌部材が非結合になる時のその引く力の大きさを観察することにより実施できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るバックルは、筒状の本体(110)、及び前記本体(110)の内面に設けられた係止部(120)を有する雌部材(100)と、
基部(210)、及び前記雌部材(100)の本体(110)内に挿入される挿入部(220)を含む雄部材(200)であって、前記挿入部(220)が、前記基部(210)に連結した基端部(221)と、前記基端部(221)とは反対側の自由端部(222)と、前記係止部(120)により係止される被係止部(230)を備える、雄部材(200)を備えるバックル(300)であって、
前記挿入部(220)が、前記基端部(221)から前記自由端部(222)に向けて厚みを有しながら延びると共に、前記係止及び被係止部(120,230)の係合及び係合解除を確保するべく前記基端部(221)を枢動点として弾性的に枢動可能であり、
前記本体(110)から引き抜かれる力が前記雄部材(200)に付与される時、前記被係止部(230)が、前記係止部(120)に面接触する面接触領域(238)を有し、
前記係止及び被係止部(120,230)の係合及び係合解除に際して前記挿入部(220)が初期姿勢から変形姿勢に向かう方向を下方とし、前記挿入部(220)が、前記変形姿勢から前記初期姿勢に復帰する方向を上方とする時、
(i)前記挿入部(220)の厚み方向における前記基端部(221)の中心点である第1中心点(P1)よりも前記厚み方向における前記面接触領域(238)の中心点である第2中心点(P2)が下方に位置する、又は
(ii)前記面接触領域(238)の下端位置が、前記基端部(221)の下面の最も上方の位置よりも下方に位置する。
【0007】
幾つかの場合、前記挿入部(220)の前記基端部(221)の下面には溝(225)が設けられる。
【0008】
幾つかの場合、前記溝(225)の深さが、前記挿入部(220)の前記基端部(221)と前記自由端部(222)の間にある前記挿入部(220)の中間部(223)の最大厚の5/6以下である。
【0009】
幾つかの場合、前記被係止部(230)は、前記本体(110)内への前記挿入部(220)の挿入方向及び前記挿入部(220)の厚み方向に直交する前記挿入部(220)の幅方向で突出し、
前記被係止部(230)の上面と前記面接触領域(238)の間には前記係止部(120)に接触しない非接触領域(236)が設けられる。
【0010】
幾つかの場合、前記非接触領域(236)は、前記被係止部(230)の上面と前記面接触領域(238)の間の丸み付けられた縁を含む。
【0011】
幾つかの場合、前記雌部材(100)は、前記係止及び被係止部(120,230)の係合を解除するための操作部(130)と、前記操作部(130)を初期位置に復帰させるためのバネ部(140)を含む。
【0012】
幾つかの場合、(a)前記挿入部(220)が前記基部(210)から離間するに応じて下方に延びる、又は
(b)前記挿入部(220)の上面が前記本体(110)内への前記挿入部(220)の挿入方向に関して実質的に平行であり、前記挿入部(220)の下面が前記基部(210)から離間するに応じて下方に傾斜する、又は
(c)前記挿入部(220)の下面が前記本体(110)内への前記挿入部(220)の挿入方向に関して実質的に平行であり、前記挿入部(220)の上面が前記基部(210)から離間するに応じて下方に傾斜する。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、バックルの薄型化を少なくとも大きく阻害しない態様でバックルの結合強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一態様に係るバックルの概略的な斜視図である。
【
図2】本開示の一態様に係るバックルの雌部材の概略的な上面図である。
【
図3】
図2のIII−IIIに沿う雌部材の概略的な断面模式図である。
【
図4】本開示の一態様に係るバックルの雄部材の概略的な斜視図である。
【
図5】本開示の一態様に係るバックルの雄部材の概略的な上面図である。
【
図6】
図5のVI−VIに沿う雄部材の概略的な断面模式図である。
【
図7】雄部材と雌部材の結合過程を示すための概略的な断面模式図である。
【
図8】雄部材と雌部材の結合過程を示すための概略的な断面模式図である。
【
図9】雌部材の係止部と雄部材の被係止部が係合した状態を示す部分拡大模式図である。
【
図10】雄部材の挿入部の基端部を示す部分拡大模式図であり、挿入部の厚み方向における基端部の中心点P1と、挿入部の厚み方向における挿入部の中間部の中心点P3の位置関係を模式的に示す。点線円と点線カッコは、中心点の位置を明示するために図示される。
【
図11】雌部材の係止部と雄部材の被係止部が面接触した状態を示す部分拡大模式図であり、挿入部の厚み方向における面接触領域の中心点P2と、挿入部の厚み方向における挿入部の中間部の中心点P3の位置関係を模式的に示す。点線円と点線カッコは、中心点の位置を明示するために図示される。
【
図12】第2実施形態例に係る雄部材の概略的な断面模式図である。
【
図13】第2実施形態例に係る雌部材の係止部と雄部材の被係止部が係合した状態を示す部分拡大模式図である。
【
図14】第3実施形態例に係る雄部材の概略的な断面模式図である。
【
図15】第3実施形態例に係る雌部材の係止部と雄部材の被係止部が係合した状態を示す部分拡大模式図である。
【
図16】第4実施形態例に係る雄部材の概略的な断面模式図である。
【
図17】第4実施形態例に係る雌部材の係止部と雄部材の被係止部が係合した状態を示す部分拡大模式図である。
【
図18】第5実施形態例に係る雄部材の概略的な上面模式図である。
【
図19】第5実施形態例に係る雄部材の概略的な側面模式図である。
【
図20】第5実施形態例に係る雄部材の概略的な断面模式図である。
【
図21】第5実施形態例に係る雌部材の係止部と雄部材の被係止部が係合した状態を示す部分拡大模式図である。
【
図22】第6実施形態例に係る雄部材の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1乃至
図22を参照しつつ、本開示の非限定の実施形態例について説明する。開示の1以上の実施形態例及び実施形態例に包含される各特徴は、個々に独立したものではない。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態例及び/又は各特徴を組み合わせることができる。また、当業者は、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態例間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている場合がある。
【0016】
図1は、本開示の一態様に係るバックルの概略的な斜視図である。
図2は、本開示の一態様に係るバックルの雌部材の概略的な上面図である。
図3は、
図2のIII−IIIに沿う雌部材の概略的な断面模式図である。
図4は、本開示の一態様に係るバックルの雄部材の概略的な斜視図である。
図5は、本開示の一態様に係るバックルの雄部材の概略的な上面図である。
図6は、
図5のVI−VIに沿う雄部材の概略的な断面模式図である。
図7は、雄部材と雌部材の結合過程を示すための概略的な断面模式図である。
図8は、雄部材と雌部材の結合過程を示すための概略的な断面模式図である。
図9は、雌部材の係止部と雄部材の被係止部が係合した状態を示す部分拡大模式図である。
図10は、雄部材の挿入部の基端部を示す部分拡大模式図であり、挿入部の厚み方向における基端部の中心点P1と、挿入部の厚み方向における挿入部の中間部の中心点P3の位置関係を模式的に示す。点線円と点線カッコは、中心点の位置を明示するために図示される。
図11は、雌部材の係止部と雄部材の被係止部が面接触した状態を示す部分拡大模式図であり、挿入部の厚み方向における面接触領域の中心点P2と、挿入部の厚み方向における挿入部の中間部の中心点P3の位置関係を模式的に示す。点線円と点線カッコは、中心点の位置を明示するために図示される。
図12は、第2実施形態例に係る雄部材の概略的な断面模式図である。
図13は、第2実施形態例に係る雌部材の係止部と雄部材の被係止部が係合した状態を示す部分拡大模式図である。
図14は、第3実施形態例に係る雄部材の概略的な断面模式図である。
図15は、第3実施形態例に係る雌部材の係止部と雄部材の被係止部が係合した状態を示す部分拡大模式図である。
図16は、第4実施形態例に係る雄部材の概略的な断面模式図である。
図17は、第4実施形態例に係る雌部材の係止部と雄部材の被係止部が係合した状態を示す部分拡大模式図である。
図18は、第5実施形態例に係る雄部材の概略的な上面模式図である。
図19は、第5実施形態例に係る雄部材の概略的な側面模式図である。
図20は、第5実施形態例に係る雄部材の概略的な断面模式図である。
図21は、第5実施形態例に係る雌部材の係止部と雄部材の被係止部が係合した状態を示す部分拡大模式図である。
図22は、第6実施形態例に係る雄部材の概略的な斜視図である。
【0017】
図1は、雌部材100と雄部材200が結合した状態のバックル300を示す。バックル300は、スライドファスナー、ボタン等のファスニング具の一種であり、衣服、鞄、リュックサック等の多品種の商品に用いられ得る。幾つかの場合、雌部材100及び雄部材200は、樹脂の射出成形により製造される。用いられる樹脂の種類は様々であり得る。幾つかの場合、ポリアミドやポリアセタール等の合成樹脂が用いられる。別の場合、金属等の非樹脂材が樹脂成型品に組み込まれる。
【0018】
図2及び
図3に示すように、雌部材100は、筒状の本体110、及び本体110の内面に設けられた係止部120を有する。
図4乃至
図6に示すように、雄部材200は、基部210、及び雌部材100の本体110内に挿入される挿入部220を有する。挿入部220は、基部210に連結した基端部221と、基端部221とは反対側の自由端部222と、係止部120により係止される被係止部230を備える。
図1から分かるように、雌部材100の筒状の本体110と雄部材200の基部210は、同一又は同等の幅及び厚みを有する。従って、雌部材100と雄部材200が結合するとき、バックル300は、あたかも一つの部品の如く見える。
【0019】
雌部材100の筒状の本体110は、雄部材200の挿入部220が差し込まれ、また引き出される出入口として機能する開口103が設けられた開口端部101と、本体110内への挿入部220の挿入方向において開口端部101と反対側にある反対端部102を有する。本体110の開口端部101においては、本体110の上壁、左壁、下壁、及び右壁が連続し、上述の開口103を規定する。
【0020】
なお、本体110内への挿入部220の挿入方向は、
図7及び
図8の参照から極自然に理解される方向である。より具体的には、本明細書に記載の挿入方向は、
図9の二点鎖線で示す軸線AX10に沿う方向である。以下、本体110内への挿入部220の挿入方向を単に挿入方向と呼ぶ場合がある。上下方向は、挿入方向に直交する方向である。上下方向は、バックル300の厚み方向、雌部材100の厚み方向、及び雄部材200の厚み方向に一致する。左右方向は、バックル300の幅方向、雌部材100の幅方向、及び雄部材200の幅方向に一致する。なお、バックル300は、幅に比べて厚みが小さい扁平な部品である。雌部材100及び雄部材200も同様である。上下方向は、後述の説明から理解できるように、挿入部220の厚み方向及び挿入部220の枢動方向に沿う方向である。左右方向は、挿入方向及び上下方向に直交する。
【0021】
雌部材100の本体110は、開口端部101と反対端部102の間に、係止部120と被係止部230の係合を解除するための操作部130を有する。図示例の操作部130は、本体110の上壁に設けられ、換言すれば、上壁の一部を構成する。操作部130は、本体110内への挿入部220の挿入方向に沿って延びる。操作部130の両隣、端的には、左右両隣には、一対のスリット118,119が存在する。各スリット118,119は、本体110内への挿入部220の挿入方向に沿って延びる。各スリット118,119は、本体110の開口端部101近傍の位置にあるスリット幅よりも幅広の孔116,117に連通する。
【0022】
操作部130は、開口端部101に連結した基端部138と、挿入方向において基端部138の反対側の自由端部139を有し、基端部138を枢動中心として弾性的に枢動可能である。本体110の上壁の一部を構成する操作部130は、本体110の下壁に対してバネ部140を介して結合する。これにより、操作部130は、下方に変位した変位位置から初期位置に復帰することが許容される。換言すれば、バネ部140は、かかる操作部130の弾性を確保するべく設けられる。幾つかの場合、バネ部140は、本体110の下壁と操作部130の間を一か所以上で屈曲して延びる。図示例のバネ部140は、本体110に一体的に設けられた樹脂バネである。別例においては、金属製バネが本体110内に組み込まれ得る。
【0023】
バネ部140は、本体110内に設けられ、操作部130の下方に配される。バネ部140は、操作部130の基端部138の下方で本体110の下壁から上方に延びる下部柱と、操作部130の自由端部139から下方に延びる上部柱と、下部柱の上端と上部柱の下端の間で延びて両者を連結する中間延在部を有する。バネ部140の中間延在部は、本体110内への挿入部220の挿入方向に沿って延びる。操作部130が下方に押されて下方に変位するとき、バネ部140の上部柱と中間延在部の間の屈曲部が、本体110の下壁に達する以上に下方変位し得る。図示例においては、本体110の下壁は、下方変位する屈曲部を受容可能な受容部150を有し、これにより、バネ部140との干渉が回避される。受容部150は、挿入方向沿いに延びる。図示の受容部150は、本体110の下壁を貫通するが、別例では、下壁を貫通せずに凹設され得る。
【0024】
操作部130は、基端部138と自由端部139の間に中間部137を有する。中間部137の幅W137は、スリット118,119により規定される。基端部138の幅W138は、孔116,117により規定される。W137>W138を満足し、操作部130の枢動が円滑化される。
【0025】
操作部130の自由端部139の上面には上方に突出した上部突起131が設けられる。上部突起131は、操作部130を下方に押し下げるために操作部130上に配されるヒトの親指の滑り止めとして機能し得る。操作部130の自由端部139の下面には挿入部220の自由端部222を下方に押し下げるための下部突起132が設けられる。下部突起132としては、後述の挿入部220の左挿入部228と右挿入部229に対応して左下部突起と右下部突起が設けられる。なお、操作部130は、必ずしも挿入方向沿いに延びる必要はない。操作部130が異なる方向に延びる別例が想定される。複数の操作部130が設けられる別例に想定される。
【0026】
雌部材100の本体110の反対端部102には左右方向に延びる棹160が設けられる。棹160は、挿通方向において、本体110の開口端部101から、操作部130の自由端部139よりも更に離れて設けられる。本体110は、開口端部101から棹160の左端まで延びる左上壁部105と、開口端部101から棹160の右端まで延びる右上壁部106を有する。左上壁部105の下面に左側の係止部120が設けられ、右上壁部106の下面に右側の係止部120が設けられる。左上壁部105の下面及び右上壁部106の下面は、本体110の内面に一致する。
【0027】
図3から分かるように、係止部120は、本体110の上壁から下方に突出する。幾つかの場合、係止部120は、上壁に加えて左壁又は右壁に連結する。係止部120は、開口103を臨むように配される傾斜面121と、挿通方向において傾斜面121の反対側にある係止面122を有する。係止面122は、本体110の上壁の下面に対して垂直である。なお、図示例では2つの係止部120が設けられるが、別例では、1つ又は2以上の係止部120が設けられ得る。
【0028】
操作部130と棹160の間には上部開口が存在する。上部開口の下方には、本体110の下壁と棹160の間の下部開口が存在する。上下方向に連続配置されたこれらの上部及び下部開口を通じて棹160に対してベルト又は紐を巻き付け可能である。上述の一対のスリット118,119が上部開口に連通する。上述の本体110の下壁を貫通する受容部150が下部開口に連通する。
【0029】
上述したように、雄部材200は、基部210、及び雌部材100の本体110内に挿入される挿入部220を有する。雄部材200は、オプションとして、更に、挿入部220の左右両側に配された一対のガイド240を有する。各ガイド240は、基部210に連結した基端部と、挿通方向において基部210から離間した自由端部を有し、これらの基端部及び自由端部の間を挿通方向沿いに直線的に延びる。各ガイド240は、挿入部220と一緒に雌部材100の本体110内に挿入される。各ガイド240は、挿入部220よりも厚く、また雌部材100の本体110の開口103の上下開口幅と同等の厚みを有する。ガイド240を設けることにより、雌部材100の本体110内への挿入部220の挿入が簡便になる。なお、挿入部220は、その弾性変形の確保のため相対的に薄く構成されており、挿入部220の薄さに起因する挿入の非容易さを補うべくガイド240が設けられる。
【0030】
雄部材200の基部210は、雌部材100の本体110内に挿入されない部分であり、また、ベルト又は紐の巻き付け用の1以上の棹211,212が設けられる。各棹211,212は、雌部材100の本体110の棹160と同様、左右方向に延びる。
【0031】
挿入部220は、基部210に連結した基端部221と、基端部221とは反対側の自由端部222と、係止部120により係止される被係止部230を備える。挿入部220は、基端部221から自由端部222に向けて厚みを有しながら延びる。挿入部220は、係止及び被係止部120,230の係合及び係合解除を確保するべく基端部221を枢動点として弾性的に枢動可能である。雌部材100の本体110内に挿入部220を挿入する時、及び雌部材100の本体110内から挿入部220を引き抜く時、挿入部220が弾性的に枢動する。
【0032】
挿入部220は、雌部材100の本体110の上壁の下面に設けられた係止部120と挿入部220に設けられた被係止部230の係合を確保するべく、雄部材200の基部210の上面寄りに設けられる。挿入部220は、上述した雌部材100の本体110内のバネ部140、特にその下部柱及び中間連結部との干渉を回避するために挿入部220の自由端部222から挿入部220の基端部221に向けて挿通方向沿いに延びる貫通穴250を有する。挿入部220は、この貫通穴250により二股に分岐した形状を有し、端的には、左挿入部228と右挿入部229を有する。挿入部220が貫通穴250により左挿入部228と右挿入部229に区分され、これにより、挿入部220の弾性変形の容易さが促進される。
【0033】
挿入部220は、その基端部221の下面に、左右方向、換言すれば、挿入部220の幅方向に延びる溝225を有する。この溝225は、挿入部220の枢動変形を促進するために設けたものではない。挿入部220は、溝225を設けるまでもなく、十分に弾性変形可能である。後述の説明から理解できるように、この溝225は、バックル300の結合強度を高めるために設けられる。溝225は、図示例の如く断面矩形状の溝に限らず、断面三角形状の溝であり得る。溝225の底面は、挿入部220の基端部221の下面の最も上方の位置にある。溝225は、左右方向又は幅方向で連続する必要はない。幾つかの場合、左右方向において複数の溝225が設けられ、各溝225は、同一直線上にあり、若しくは挿通方向に交差する態様で平行に延びる。溝225の深さは、実施形態毎に様々であり得る。
【0034】
幾つかの場合、挿入部220の最大厚Max1は、1.7mm以下である。挿入部220の最小厚Min2は、0.8mm以下である。溝の最大深さDP1は、0.9mm以下、又は0.5mm以下である。挿入部220の基端部221の最小厚Min1は、1.2mm以下、又は0.8mm以下である。挿入方向沿いの溝225の幅L1は、1.5mmである。挿入方向沿いの挿入部220の長さL2は、12.1mmである。本体110の空洞内の高さ方向の寸法は4.2mmである。挿入部220の最大厚Max1が1.7mmである場合、雄部材と雌部材が結合した状態において本体110の空洞内の残りの寸法は2.5mmである。この空洞内の残りの寸法が、挿入部220が弾性変形可能とする空間であり、挿入部220の最大厚Max1以上である。
【0035】
幾つかの場合、溝225の深さが、挿入部220の基端部221と自由端部222の間にある挿入部220の中間部223の最大厚の5/6以下である。幾つかの場合、溝225の深さが、挿入部220の基端部221と自由端部222の間にある挿入部220の中間部223の最大厚の1/2以下である。溝225の深さが深いほど、結合強度が高くなる。しかし、溝225が深くなりすぎると、溝225を起点にして挿入部220が破壊する確率が高まる。この点に鑑みて、幾つかの場合、溝225の位置における挿入部220の最小厚は、挿入部220の中間部223の最大厚の1/6以上である。幾つかの場合、溝225の位置における挿入部220の最小厚は、挿入部220の中間部223の最大厚の1/6以上であり、挿入部220の中間部223の最大厚の2/3以下である。幾つかの場合、溝225の位置における挿入部220の最小厚は、挿入部220の中間部223の最大厚の1/3以上であり、挿入部220の中間部223の最大厚の2/3以下である。
【0036】
幾つかの場合、本体110内への挿入部220の挿入方向における溝225の幅L1が、挿入方向における挿入部220の長さL2の1/6以下である。
【0037】
挿入部220は、係止部120により係止される被係止部230を有する。被係止部230は、挿入部220の自由端部222側に設けられ、また左右方向、換言すれば、挿入部220の幅方向において貫通穴250から離れる方向に突出する。被係止部230が上下方向において突出する場合と比べて、挿入部220を薄くすることができ、バックル300の薄型化が促進される。図示例を含む幾つかの場合、被係止部230は、挿入部220の最大厚以下の厚みを有する。なお、挿入部220の幅方向は、本体110内への挿入部220の挿入方向及び挿入部220の厚み方向に直交する。
【0038】
挿入部220の自由端部222は先細りに構成される。被係止部230は、基部210を臨むように設けられる被係止面231と、挿通方向において被係止面231の反対側の傾斜面232を有する。傾斜面232は、基部210から離間するに応じて下方に下る下り傾斜面である。この傾斜面232の斜度は、係止部120の傾斜面121の斜度よりも小さい。
【0039】
ガイド240は、上部ガイド241と下部ガイド242を有する。上部ガイド241は、下部ガイド242よりも左右幅が狭く、下部ガイド242よりも左右方向において挿入部220寄りに設けられる。上部ガイド241と下部ガイド242の間には段差243が設けられる。雌部材100の本体110には、このガイド240の段差243に嵌合する凸部が設けられる。雌部材100の本体110内に雄部材200の挿入部220及びガイド240を挿入する時の挿入性が高められる。
【0040】
ガイド240の自由端部と挿入部220の被係止部230の間にはクリアランスが存在する。挿入部220の枢動変位に際してガイド240と被係止部230の干渉が回避される。
【0041】
図7及び
図8を参照して雌部材100と雄部材200が結合する過程について説明する。まず、雌部材100の本体110の開口端部101の開口103を通じて本体110の空洞に雄部材200の挿入部220を挿入する。挿入部220の自由端部222が開口103を通過して本体110の空洞内に進入するに続いて、ガイド240の自由端部が開口103を通過して本体110の空洞内に進入する。ガイド240の自由端部が本体110の空洞内に進入した後、挿入部220の被係止部230が、本体110の上壁から下方に突出する係止部120に衝突する。被係止部230は、係止部120の傾斜面121に案内され、進行するに応じて下方に変位する。被係止部230の下方変位は、挿入部220が初期姿勢から変形姿勢に変化することに等しい。より詳細には左挿入部228及び右挿入部229夫々が、下方変位し、換言すれば、下方に撓む。被係止部230が係止部120の頂部を通過するに応じ、挿入部220が変形姿勢から初期姿勢に弾性的に復帰する。
図8に示すように被係止部230は係止部120を乗り越える。被係止部230と係止部120は、互いに面接触する。つまり、被係止部230の被係止面231と係止部230の係止面122が面接触領域238において面接触する。
【0042】
幾つかの場合、雌部材100と雄部材200の結合状態において、被係止部230と係止部120の間に遊び空間、別名、クリアランスが設けられる。従って、本体110から引き抜かれる力が雄部材200に付与される時、被係止部230が、係止部120に面接触する面接触領域238を有する、と記述するほうが妥当である。面接触領域238は、被係止部230の被係止面231に含まれる。面接触領域238において係止部120の係止面122と被係止部230の被係止面231が面接触する。
【0043】
静止状態の雌部材100に対して雄部材200を動かすように説明した。しかし、雄部材200を静止状態とし、雌部材100を動かしても同様の現象が生じ、また当業者により同様に理解される。
【0044】
図9乃至
図11を参照してバックル300の結合強度が増加することについて説明する。本実施形態においては、挿入部220の厚み方向における基端部221の中心点である第1中心点P1よりも、挿入部220の厚み方向における面接触領域238の中心点である第2中心点P2が下方に位置する。この場合、操作部130の操作無しで雌部材100と雄部材200の結合を解除する力が付与される時、挿入部220が下方ではなく上方に向かう力が生じ、被係止部230が係止部120を乗り越える方向に動き難くなる。結果として、バックル300の結合強度が高められる。なお、第1中心点P1と第2中心点P2を結ぶ仮想線AX5は、本体110内への挿入部220の挿入方向に関して傾斜する。
図9では、挿入方向に合致する軸線AX10が参考までに図示される。幾つかの場合、軸線AX10に対する軸線AX5のなす角は、2.0°〜10.0°であり、又は2.2°〜5.0°である。
【0045】
図1乃至
図11に示す例では、挿入部220の基端部221に溝225を設けることにより、第1中心点P1が上方に推移し、この結果、第2中心点P2が、第1中心点P1よりも下方に位置する。挿入部220の厚みは、溝225の有無に依存しない。従って、バックル300の薄型化を阻害することなく、バックル300の結合強度を高めることができる。
【0046】
念のため説明すれば、係止及び被係止部120,230の係合及び係合解除に際して挿入部220が初期姿勢から変形姿勢に向かう方向が下方である。挿入部220が、変形姿勢から初期姿勢に復帰する方向が上方である。
【0047】
図10に示すように、第1中心点P1は、挿入部220の基端部221の溝225に応じて上方に推移する。挿入部220の厚み方向における挿入部220の中間部223の第3中心点P3と比較すると、第1中心点P1の上方の推移が理解できる。第1中心点P1の上方推移は、挿入部220の下面の上方変位に応じたものである。挿入部220の下面の上方変位は、溝225に応じて生じたものである。
図10では、複数の第1中心点P1が例示的に図示される。幾つかの場合、溝225の最大深さに対応する位置の第1中心点P1が第2中心点P2との比較のため、若しくは仮想線AX5の決定のために用いられる。
【0048】
図11に示すように、挿入部220の厚み方向における面接触領域238の第2中心点P2は、挿入部220の厚み方向における挿入部220の中間部223の第3中心点P3と比較して下方に位置する。被係止部230は、被係止部230の上面と面接触領域238の間に係止部120に接触しない非接触領域236を有する。非接触領域236により面接触領域238が下方推移し、仮想線AX5の傾斜の増加に寄与し得る。非接触領域236は、被係止部230の上面と面接触領域238の間の丸み付けられた縁を有する。
【0049】
図11に示すように、係止部120の頂点は、被係止部230の下面よりも下方に突出しない。
【0050】
上述の説明では、第1中心点P1と第2中心点P2の関係について注目して述べた。しかしながら、代替的又は追加的に、挿入部220の基端部221に溝225が設けられること自体により同様の効果が得られるとも理解できる。幾つかの場合、(a)挿入部220の基端部221の最小厚が、中間部223の厚み未満であること、及び(b)面接触領域238の上下幅が、中間部223の厚み未満であることの条件を満足する場合に有効である。
【0051】
代替的又は追加的に、被係止部230の面接触領域238の下端位置が、挿入部220の基端部221の下面の最も上方の位置よりも下方に位置することにより同様の効果が得られるとも理解できる。幾つかの場合、(a)挿入部220の基端部221の厚み又は最小厚が、挿入部220の最大厚以下又は未満であること、及び(b)面接触領域238の上下幅が、挿入部220の最大厚以下又は未満であることの条件を満足する場合に有効である。幾つかの場合、被係止部230の面接触領域238の下端位置が、係止部120の頂部の下端位置に等しく、これにより読み替えられる。
【0052】
第1中心点P1と第2中心点P2は、挿通方向に平行な同一の軸線上に配されず、挿通方向に平行な異なる軸線上に配される。軸線AX10に対する軸線AX5のなす角は、
図9に示すごとくバックル300を左又は右の側方から見る状態を前提とする。面接触領域238を左右方向に幅広にすることによりバックル300の結合強度を高めることができる。
【0053】
図12及び
図13に示す第2実施形態例では、挿入部220が基部210から離間するに応じて下方に延びる。換言すれば、挿入部220は、基部210から斜め下方に延びる。第2実施形態例においても、第1中心点P1よりも第2中心点P2が下方に位置し、第1実施形態例と同様の効果が得られる。第2実施形態例においても、被係止部230の面接触領域238の下端位置が、挿入部220の基端部221の下面の最も上方の位置よりも下方に位置し、第1実施形態例と同様の効果が得られる。
【0054】
図14及び
図15に示す第3実施形態例では、挿入部220の下面が基部210から離間するに応じて下方に傾斜する。挿入部220の上面は基部210から離間するに応じて傾斜しない。換言すれば、挿入部220の上面が挿入方向に関して実質的に平行であり、挿入部220の下面が基部210から離間するに応じて下方に傾斜する。
【0055】
挿入部220の厚みは、挿入部220の先細りの自由端部222を除いて、基部210から離間するに応じて増加する。第3実施形態例においても、第1中心点P1よりも第2中心点P2が下方に位置し、第1実施形態例と同様の効果が得られる。第3実施形態例においても、被係止部230の面接触領域238の下端位置が、挿入部220の基端部221の下面の最も上方の位置よりも下方に位置し、第1実施形態例と同様の効果が得られる。
【0056】
図16及び
図17に示す第4実施形態例では、挿入部220の上面が基部210から離間するに応じて下方に傾斜する。挿入部220の下面は基部210から離間するに応じて傾斜しない。換言すれば、挿入部220の下面が挿入方向に関して実質的に平行であり、挿入部220の上面が基部210から離間するに応じて下方に傾斜する。
【0057】
挿入部220の厚みは、挿入部220の先細りの自由端部222を除いて、基部210から離間するに応じて減少する。第4実施形態例においては、挿入部220の基端部221の厚みが増加した分、第1中心点P1が上方に推移し、第2中心点P2が第1中心点P1よりも下方に位置する。この場合においても、第1実施形態例と同様の効果が得られる。
【0058】
図18乃至
図21に示す第5実施形態例では、挿入部220の自由端部222に設けられた被係止部230が挿入部220の上面から上方に突出する。挿入部220が基部210から離間するに応じて下方に延びる。第5実施形態例においても、第1中心点P1よりも第2中心点P2が下方に位置し、第1実施形態例と同様の効果が得られる。第5実施形態例においても、被係止部230の面接触領域238の下端位置が、挿入部220の基端部221の下面の最も上方の位置よりも下方に位置し、第1実施形態例と同様の効果が得られる。
【0059】
図22に示す第6実施形態例では、ガイド240が挿入部220を周囲する枠状に構成され、挿入部220に設けられる被係合部230が挿入部220に貫通穴250を設けることにより提供される。第1中心点P1よりも第2中心点P2が下方に位置する、及び/又は被係止部230の面接触領域238の下端位置が、挿入部220の基端部221の下面の最も上方の位置よりも下方に位置する時、第1実施形態例と同様の効果が得られる。
【0060】
第1乃至第6実施形態例と各実施形態例を区別して説明した。しかし、第1実施形態例の溝225を第2乃至第6実施形態例それぞれに適用することも想定され、バックル300の結合強度のより一層の向上が期待される。他の態様での実施形態の組み合わせも、明示的に説明するまでもなく可能であろう。
【0061】
上述の教示を踏まえると、当業者は、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。雌部材100を第1部材又はソケットと呼び、雄部材200を第2部材又はプラグと呼ぶこともできる。同様に、基端部を第1端部と呼び、自由端部を第2端部と呼ぶこともできる。第1、第2、第3は、これが付された要素の区別のために用いられ、個数や順番に関して何らの制限も有しない。結合強度を係合強度と呼ぶこともできる。