特許第6634492号(P6634492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6634492
(24)【登録日】2019年12月20日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20200109BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20200109BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20200109BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/04 N
   H01M8/04 H
   H01M8/0612
   H01M8/12 101
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-192407(P2018-192407)
(22)【出願日】2018年10月11日
【審査請求日】2019年5月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕己
(72)【発明者】
【氏名】菅 博史
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−110781(JP,A)
【文献】 特開2005−231943(JP,A)
【文献】 特開2011−029115(JP,A)
【文献】 特開昭62−176066(JP,A)
【文献】 特許第6030260(JP,B1)
【文献】 特開平11−126626(JP,A)
【文献】 特開2017−212041(JP,A)
【文献】 特開2016−177907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池セルと、
ガス供給室及びガス回収室を有し、前記燃料電池セルを支持するマニホールドと、
前記ガス供給室に供給される燃料ガスを生成し、前記マニホールドの底面と対向するように配置される燃料処理器と、
前記燃料処理器と前記マニホールドの底面とを連結し、前記燃料ガスを前記ガス供給室に供給する燃料ガス供給管と、
前記燃料処理器と前記マニホールドの底面とを連結し、前記ガス回収室からのオフガスを前記燃料処理器に供給するオフガス供給管と、
を備え、
前記燃料ガス供給管及び前記オフガス供給管の少なくとも一方は、前記燃料ガス供給管及び前記オフガス供給管の少なくとも一方を介して前記マニホールドとの接合部分に作用する応力を緩和するように構成された応力緩和部を有する、
燃料電池装置。
【請求項2】
前記応力緩和部は、前記燃料ガス供給管及び前記オフガス供給管の少なくとも一方に応力が作用したときに変形するように構成される、
請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記応力緩和部は、前記燃料ガス供給管及び前記オフガス供給管の一方を他方よりも曲げ剛性を小さくすることによって構成される、
請求項1または2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記応力緩和部は、前記燃料ガス供給管及び前記オフガス供給管の一方を他方よりも肉厚を薄くすることによって構成される、
請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記応力緩和部は、前記燃料ガス供給管及び前記オフガス供給管の一方を他方よりも外径を小さくすることによって構成される、
請求項1から4のいずれかに記載の燃料電池装置。
【請求項6】
前記応力緩和部は、前記燃料ガス供給管及び前記オフガス供給管の少なくとも一方に形成された屈曲部によって構成される、
請求項1から5のいずれかに記載の燃料電池装置。
【請求項7】
前記応力緩和部は、前記燃料ガス供給管及び前記オフガス供給管の少なくとも一方に形成された湾曲部によって構成される、
請求項1から6のいずれかに記載の燃料電池装置。
【請求項8】
前記応力緩和部は、前記燃料ガス供給管及び前記オフガス供給管の一方を構成する材料を他方を構成する材料よりも弾性率を小さくすることによって構成される、
請求項1から7のいずれかに記載の燃料電池装置。
【請求項9】
前記燃料ガス供給管及び前記オフガス供給管の少なくとも一方は、大径部と、前記大径部の外径よりも小さい小径部と、を有し、
前記応力緩和部は、前記小径部によって構成される、
請求項1から8のいずれかに記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルスタック装置は、燃料電池セル及びマニホールドを備えている。特許文献1に開示されたセルスタック装置では、マニホールドは、ガス供給室とガス回収室とを有している。ガス供給室には、燃料ガスが供給される供給部が接続されている。ガス回収室には、マニホールドから燃料ガスを排出する排出部が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6030260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のセルスタック装置のマニホールドには、供給部と排出部との2つの配管が接続されている。供給部及び排出部が燃料処理器に接続される場合、供給部及び排出部を通じてマニホールドに応力が加えられて、クラックが生じる恐れがある。そこで、本発明の課題は、マニホールドに生じる応力を低減することができる燃料電池装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある側面に係る燃料電池装置は、燃料電池セルと、マニホールドと、燃料処理器と、燃料ガス供給管と、オフガス供給管と、を備えている。マニホールドは、ガス供給室及びガス回収室を有する。また、マニホールドは、燃料電池セルを支持する。燃料処理器は、ガス供給室に供給される燃料ガスを生成する。燃料ガス供給管は、燃料処理器とマニホールドとを連結する。また燃料ガス供給管は、燃料ガスをガス供給室に供給する。オフガス供給管は、燃料処理器とマニホールドとを連結する。また、オフガス供給管は、ガス回収室からのオフガスを燃料処理器に供給する。燃料ガス供給管及びオフガス供給管の少なくとも一方は、応力緩和部を有する。応力緩和部は、燃料ガス供給管及びオフガス供給管の少なくとも一方を介してマニホールドとの接合部分に作用する応力を緩和するように構成されている。
【0006】
この構成によれば、燃料ガス供給管及びオフガス供給管の少なくとも一方は、応力緩和部を有している。このため、供給管に応力が加えられても、応力緩和部でマニホールドとの接合部分に作用する応力を緩和することができる。したがって、マニホールドに生じる応力を低減することができる。
【0007】
好ましくは、応力緩和部は、燃料ガス供給管及びオフガス供給管の少なくとも一方に応力が作用したときに変形するように構成される。この構成によれば、応力緩和部が優先的に変形するので、マニホールドに生じる応力を低減することができる。
【0008】
好ましくは、応力緩和部は、燃料ガス供給管及びオフガス供給管の一方を他方よりも曲げ剛性を小さくすることによって構成される。
【0009】
好ましくは、応力緩和部は、燃料ガス供給管及びオフガス供給管の一方を他方よりも肉厚を薄くすることによって構成される。好ましくは、応力緩和部は、燃料ガス供給管及びオフガス供給管の一方を他方よりも外径を小さくすることによって構成される。
【0010】
好ましくは、応力緩和部は、燃料ガス供給管及びオフガス供給管の少なくとも一方に形成された屈曲部によって構成される。好ましくは、応力緩和部は、燃料ガス供給管及びオフガス供給管の少なくとも一方に形成された湾曲部によって構成される。
【0011】
好ましくは、応力緩和部は、燃料ガス供給管及びオフガス供給管の一方を構成する材料を他方を構成する材料よりも弾性率を小さくすることによって構成される。
【0012】
好ましくは、燃料ガス供給管及びオフガス供給管の少なくとも一方は、大径部と、この大径部の外径よりも小さい小径部とを有する。応力緩和部は、小径部によって構成される。
【0013】
好ましくは、燃料処理器は、マニホールドの底面と対向するように配置される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、マニホールドに生じる応力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】燃料電池装置の斜視図。
図2】マニホールドの断面図。
図3】マニホールドの上面図。
図4】セルスタック装置の断面図。
図5】燃料電池セルの斜視図。
図6】燃料電池セルの断面図。
図7】燃料電池装置の概略図。
図8】変形例に係る燃料電池装置の概略図。
図9】変形例に係る燃料電池装置の概略図。
図10】変形例に係る燃料電池装置の概略図。
図11】変形例に係る燃料電池装置の概略図。
図12】変形例に係る燃料電池装置の概略図。
図13】変形例に係るセルスタック装置の断面図。
図14】変形例に係るセルスタック装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る燃料電池装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、燃料電池セルの一例として固体酸化物形燃料電池セル(SOFC)を用いて説明する。図1は燃料電池装置を示す斜視図、図2はマニホールドの断面図である。なお、図1及び図2において、いくつかの燃料電池セルの記載を省略している。
【0017】
[燃料電池装置]
図1に示すように、燃料電池装置100は、マニホールド2と、複数の燃料電池セル10と、燃料処理器70と、燃料ガス供給管P1(図7参照)と、オフガス供給管P2(図7参照)と、を備えている。
【0018】
[マニホールド]
図2に示すように、マニホールド2は、燃料電池セル10にガスを供給するように構成されている。また、マニホールド2は、燃料電池セル10から排出されたガスを回収するように構成されている。マニホールド2は、ガス供給室21とガス回収室22とを有している。ガス供給室21には、燃料処理器70から燃料ガスが供給される。ガス回収室22は、各燃料電池セル10にて使用された燃料ガスを回収する。
【0019】
マニホールド2は、マニホールド本体部23と、仕切板24とを有している。マニホールド本体部23は、内部に空間を有している。マニホールド本体部23は、直方体状である。
【0020】
図3に示すように、マニホールド本体部23の天板部231には、複数の貫通孔232が形成されている。各貫通孔232は、マニホールド本体部23の長さ方向(z軸方向)に間隔をあけて並んでいる。各貫通孔232は、マニホールド本体部23の幅方向(y軸方向)に延びている。各貫通孔232は、ガス供給室21及びガス回収室22と連通している。なお、各貫通孔232は、ガス供給室21と連通する部分とガス回収室22と連通する部分とに分かれていてもよい。
【0021】
仕切板24は、マニホールド本体部23の空間をガス供給室21とガス回収室22とに仕切っている。詳細には、仕切板24は、マニホールド本体部23の略中央部において、マニホールド本体部23の長さ方向に延びている。仕切板24は、マニホールド本体部23の空間を完全に仕切っている必要は無く、仕切板24とマニホールド本体部23との間に隙間が形成されていてもよい。
【0022】
図2に示すように、ガス供給室21の底面には、ガス供給口211が形成されている。また、ガス回収室22の底面には、ガス排出口221が形成されている。ガス供給口211は、例えば、燃料電池セル10の配列方向(z軸方向)において、マニホールド2の中心Cよりも第1端部201側に配置されている。一方、ガス排出口221は、例えば、燃料電池セル10の配列方向(z軸方向)において、マニホールド2の中心Cよりも第2端部202側に配置されている。
【0023】
[燃料電池セル]
図4は、セルスタック装置の断面図を示している。なお、セルスタック装置は、複数の燃料電池セル10とマニホールド2とから構成されている。図4に示すように、燃料電池セル10は、マニホールド2から上方に延びている。燃料電池セル10は、基端部101がマニホールド2に取り付けられている。すなわち、マニホールド2は、各燃料電池セル10の基端部101を支持している。本実施形態では、燃料電池セル10の基端部101は下端部を意味し、燃料電池セル10の先端部102は上端部を意味する。
【0024】
図1に示すように、各燃料電池セル10は、主面同士が対向するように並べられている。また、各燃料電池セル10は、マニホールド2の長さ方向(z軸方向)に沿って間隔をあけて並べられている。すなわち、燃料電池セル10の配列方向は、マニホールド2の長さ方向に沿っている。なお、各燃料電池セル10は、マニホールド2の長さ方向に沿って等間隔に配置されていなくてもよい。
【0025】
図4及び図5に示すように、燃料電池セル10は、支持基板4と、複数の発電素子部5と、連通部材3と、を有している。各発電素子部5は、支持基板4の第1主面45及び第2主面46に支持されている。なお、第1主面45に形成される発電素子部5の数と第2主面46に形成される発電素子部5の数とは、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。また、各発電素子部5の大きさは、互いに異なっていてもよい。
【0026】
[支持基板]
支持基板4は、マニホールド2から上下方向に延びている。詳細には、支持基板4は、マニホールド2から上方に延びている。支持基板4は、扁平状であり、基端部41と先端部42とを有している。基端部41及び先端部42は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)における両端部である。本実施形態では、支持基板4の基端部41は下端部を意味し、支持基板4の先端部42は上端部を意味する。
【0027】
支持基板4の基端部41は、マニホールド2に取り付けられる。例えば、支持基板4の基端部41は、接合材などによってマニホールド2の天板部231に取り付けられる。詳細には、支持基板4の基端部41は、天板部231に形成された貫通孔234に挿入されている。なお、支持基板4の基端部41は、貫通孔234に挿入されていなくてもよい。このように支持基板4の基端部41がマニホールド2に取り付けられることによって、支持基板4の基端部41は、ガス供給室21及びガス回収室22と連結している。
【0028】
支持基板4は、複数の第1ガス流路43と、複数の第2ガス流路44とを有している。第1ガス流路43は、支持基板4内を上下方向に延びている。すなわち、第1ガス流路43は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に延びている。第1ガス流路43は、支持基板4を貫通している。各第1ガス流路43は、支持基板4の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置されている。なお、各第1ガス流路43は、等間隔に配置されていることが好ましい。支持基板4は、長さ方向(x軸方向)よりも幅方向(y軸方向)の寸法の方が長くてもよい。
【0029】
第1ガス流路43は、燃料電池セル10の基端部101から先端部102に向かって延びている。燃料電池セル10をマニホールド2に取り付けた状態において、第1ガス流路43は、基端部101側において、ガス供給室21と連通している。
【0030】
第2ガス流路44は、支持基板4内を上下方向に延びている。すなわち、第2ガス流路44は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に延びている。第2ガス流路44は、第1ガス流路43と実質的に平行に延びている。
【0031】
第2ガス流路44は、支持基板4を貫通している。各第2ガス流路44は、支持基板4の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置されている。なお、各第2ガス流路44は、等間隔に配置されていることが好ましい。
【0032】
第2ガス流路44は、燃料電池セル10の先端部102から基端部101に向かって延びている。燃料電池セル10をマニホールド2に取り付けた状態において、第2ガス流路44は、基端部101側において、マニホールド2のガス回収室22と連通している。
【0033】
隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44とのピッチp0は、隣り合う第1ガス流路43のピッチp1よりも大きい。また、隣り合う第1ガス流路43と第2ガス流路44とのピッチp0は、隣り合う第2ガス流路44のピッチp2よりも大きい。
【0034】
第1ガス流路43と第2ガス流路44とは、燃料電池セル10の先端部102側において互いに連通している。詳細には、第1ガス流路43と、第2ガス流路44とが、連通部材3の連通流路30を介して連通している。
【0035】
第1ガス流路43及び第2ガス流路44は、第1ガス流路43内におけるガスの圧力損失が第2ガス流路44内におけるガスの圧力損失よりも小さくなるように構成されている。このような構成として、例えば、各第1ガス流路43の流路断面積は、各第2ガス流路44の流路断面積よりも大きい。
【0036】
図5に示すように、支持基板4は、第1主面45と、第2主面46とを有している。第1主面45と第2主面46とは、互いに反対を向いている。第1主面45及び第2主面46は、各発電素子部5を支持している。第1主面45及び第2主面46は、支持基板4の厚さ方向(z軸方向)を向いている。また、支持基板4の各側面47は、支持基板4の幅方向(y軸方向)を向いている。各側面47は、湾曲していてもよい。図1に示すように、各支持基板4は、第1主面45と第2主面46とが対向するように配置されている。
【0037】
図5に示すように、支持基板4は、発電素子部5を支持している。支持基板4は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板4は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成される。または、支持基板4は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板4の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。この気孔率は、例えば、アルキメデス法、又は微構造観察により測定される。
【0038】
支持基板4は、緻密層48によって覆われている。緻密層48は、第1ガス流路43及び第2ガス流路44から支持基板4内に拡散されたガスが外部に排出されることを抑制するように構成されている。本実施形態では、緻密層48は、支持基板4の第1主面45、第2主面46、及び各側面47を覆っている。なお、本実施形態では、緻密層48は、後述する電解質7と、インターコネクタ91とによって構成されている。緻密層48は、支持基板4よりも緻密である。例えば、緻密層48の気孔率は、0〜7%程度である。
【0039】
[発電素子部]
複数の発電素子部5が、支持基板4の第1主面45及び第2主面46に支持されている。各発電素子部5は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に配列されている。詳細には、各発電素子部5は、支持基板4上において、基端部41から先端部42に向かって互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、各発電素子部5は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に沿って、間隔をあけて配置されている。なお、各発電素子部5は、後述する電気的接続部9によって、互いに直列に接続されている。
【0040】
発電素子部5は、支持基板4の幅方向(y軸方向)に延びている。発電素子部5は、支持基板4の幅方向において第1部分51と第2部分52とに区画される。なお、第1部分51と第2部分52との厳密な境界はない。例えば、燃料電池セル10をマニホールド2に取り付けた状態において、支持基板4の長さ方向視(x軸方向視)において、ガス供給室21とガス回収室22との境界と重複する部分を、第1部分51と第2部分52との境界部とすることができる。
【0041】
支持基板4の厚さ方向視(z軸方向視)において、第1ガス流路43は、発電素子部5の第1部分51と重複している。また、支持基板4の厚さ方向視(z軸方向視)において、第2ガス流路44は、発電素子部5の第2部分52と重複している。なお、複数の第1ガス流路43のうち、一部の第1ガス流路43が第1部分51と重複していなくてもよい。同様に、複数の第2ガス流路44のうち、一部の第2ガス流路44が第2部分52と重複していなくてもよい。
【0042】
図6は、第1ガス流路43に沿って切断した燃料電池セル10の断面図である。なお、第2ガス流路44に沿って切断した燃料電池セル10の断面図は、第2ガス流路44の流路断面積が異なる以外は、図6と同じである。
【0043】
発電素子部5は、燃料極6、電解質7、及び空気極8を有している。また、発電素子部5は、反応防止膜11をさらに有している。燃料極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極6は、燃料極集電部61と燃料極活性部62とを有する。
【0044】
燃料極集電部61は、凹部49内に配置されている。凹部49は、支持基板4に形成されている。詳細には、燃料極集電部61は、凹部49内に充填されており、凹部49と同様の外形を有する。各燃料極集電部61は、第1凹部611及び第2凹部612を有している。燃料極活性部62は、第1凹部611内に配置されている。詳細には、燃料極活性部62は、第1凹部611内に充填されている。
【0045】
燃料極集電部61は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部61は、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部61の厚さ、及び凹部49の深さは、50〜500μm程度である。
【0046】
燃料極活性部62は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部62は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部62の厚さは、5〜30μmである。
【0047】
電解質7は、燃料極6上を覆うように配置されている。詳細には、電解質7は、一のインターコネクタ91から他のインターコネクタ91まで長さ方向に延びている。すなわち、支持基板4の長さ方向(x軸方向)において、電解質7とインターコネクタ91とが交互に配置されている。また、電解質7は、支持基板4の第1主面45、第2主面46、及び各側面47を覆っている。
【0048】
電解質7は、支持基板4よりも緻密である。例えば、電解質7の気孔率は、0〜7%程度である。電解質7は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質7は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0049】
反応防止膜11は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜11は、平面視において、燃料極活性部62と略同一の形状である。反応防止膜11は、電解質7を介して、燃料極活性部62と対応する位置に配置されている。反応防止膜11は、電解質7内のYSZと空気極8内のSrとが反応して電解質7と空気極8との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。反応防止膜11は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜11の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0050】
空気極8は、反応防止膜11上に配置されている。空気極8は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極8は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極8は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極8の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0051】
[電気的接続部]
電気的接続部9は、隣り合う発電素子部5を電気的に接続するように構成されている。電気的接続部9は、インターコネクタ91及び空気極集電膜92を有する。インターコネクタ91は、第2凹部612内に配置されている。詳細には、インターコネクタ91は、第2凹部612内に埋設(充填)されている。インターコネクタ91は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ91は、支持基板4よりも緻密である。例えば、インターコネクタ91の気孔率は、0〜7%程度である。インターコネクタ91は、例えば、LaCrO(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ91の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0052】
空気極集電膜92は、隣り合う発電素子部5のインターコネクタ91と空気極8との間を延びるように配置される。例えば、図6の左側に配置された発電素子部5の空気極8と、図6の右側に配置された発電素子部5のインターコネクタ91とを電気的に接続するように、空気極集電膜92が配置されている。空気極集電膜92は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。
【0053】
空気極集電膜92は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜92の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0054】
[連通部材]
図4に示すように、連通部材3は、支持基板4の先端部42に取り付けられている。そして、連通部材3は、第1ガス流路43と第2ガス流路44とを連通させる連通流路30を有している。詳細には、連通流路30は、各第1ガス流路43と各第2ガス流路44とを連通する。連通流路30は、各第1ガス流路43から各第2ガス流路44まで延びる空間によって構成されている。連通部材3は、支持基板4に接合されていることが好ましい。また、連通部材3は、支持基板4と一体的に形成されていることが好ましい。連通流路30の数は、第1ガス流路43の数よりも少ない。本実施形態では、一本の連通流路30のみによって、複数の第1ガス流路43と複数の第2ガス流路44とが連通されている。
【0055】
連通部材3は、例えば、多孔質である。また、連通部材3は、その外側面を構成する緻密層31を有している。緻密層31は、連通部材3の本体よりも緻密に形成されている。例えば、緻密層31の気孔率は、0〜7%程度である。この緻密層31は、連通部材3と同じ材料や、上述した電解質7に使用される材料、結晶化ガラス等によって形成することができる。
【0056】
[燃料処理器]
図7に示すように、燃料処理器70は、マニホールド2のガス供給室21に供給される燃料ガスを生成する。例えば、燃料処理器70は、改質器である。燃料処理器70は、原料ガス(天然ガス、液化石油ガス、灯油など)を改質して燃料ガス(水素含有ガス)を生成する。例えば、下記(1)式及び(2)式に示すように、都市ガスの主成分であるメタン(CH)及び水蒸気から、燃料ガス(水素含有ガス)を生成する。
CH+2HO→4H+CO ・・・(1)
CH+HO→3H+CO ・・・(2)
【0057】
燃料処理器70は、二重円筒式である。燃料処理器70は、燃料電池セル10が延びる方向(x軸方向)に延びている。本実施形態では燃料電池セル10及び燃料処理器70は、上下方向に延びている。なお、燃料処理器70は、長さ方向(x軸方向)の寸法の方が、幅方向(y軸方向)の寸法よりも長い。
【0058】
燃料処理器70は、改質部71と燃焼部72とを有している。燃料処理器70の内側の円筒内が燃焼部72を構成している。そして、燃料処理器70の内側の円筒と外側の円筒との間の空間が改質部71を構成している。
【0059】
改質部71内には触媒が収容されている。改質部71は、原料ガス供給管P3および水蒸気供給管P4が連結されている。この原料ガス供給管P3を介して、改質部71内に原料ガスが供給される。また、水蒸気供給管P4を介して、改質部71内に水蒸気が供給される。この改質部71内において、原料ガスを改質して燃料ガスを生成する。
【0060】
燃焼部72は、ガス回収室22から排出されたオフガスを燃焼するように構成されている。詳細には、燃焼部72は、バーナ721を有している。バーナ721は、燃料処理器70の筐体に設けられている。バーナ721には、オフガス供給管P2及び空気供給管P5が連結されている。オフガス供給管P2を介して、ガス回収室22内のオフガスがバーナ721に排出される。バーナ721は、オフガスに空気を混合させて燃焼させる。
【0061】
燃料処理器70は、マニホールド2の底面と対向するように配置されている。本実施形態では、燃料処理器70は、マニホールド2の下方に配置されている。すなわち、マニホールド2から各燃料電池セル10が上方に延びている場合は、燃料処理器70はマニホールド2の下方に配置される。
【0062】
燃料処理器70は、第1排出部73を有している。本実施形態において、第1排出部73は、燃料処理器70に形成された開口部である。第1排出部73は、生成した燃料ガスをガス供給室21へと排出する。
【0063】
第1排出部73は、燃料処理器の軸方向端面に形成されている。第1排出部73は、マニホールド2側に開口している。第1排出部73は、燃料ガス供給管P1と連結されている。第1排出部73は、燃料電池セル10の先端面103よりもマニホールド2側に配置されている。本実施形態のように、燃料電池セル10の先端部102が上端部であり、基端部101が下端部である場合、第1排出部73は、燃料電池セル10の先端面103よりも下方に配置されている。そして、第1排出部73とマニホールド2との距離は、燃料電池セル10の先端面103とマニホールド2との距離よりも短い。
【0064】
燃料処理器70は、第2排出部74を有している。本実施形態では、第2排出部74は、筒状の部材であるが、単なる開口であってもよい。第2排出部74は、燃焼部72からのガスを排出する。第2排出部74は、水平面よりも下方を向いている。なお本実施形態では、第2排出部74は、真下を向いているが、第2排出部74の排出方向は、水平面よりも下方を向いていればよい。例えば、第2排出部74の排出方向と水平面とのなす角度が3度以上とすることが好ましい。
【0065】
[燃料ガス供給管]
燃料ガス供給管P1は、燃料処理器70とマニホールド2とを連結する。詳細には、燃料処理器70の上面と、マニホールド2の底面とを連結する。燃料ガス供給管P1は、燃料処理器70で生成された燃料ガスを、マニホールド2のガス供給室21に供給する。
【0066】
本実施形態の燃料ガス供給管P1は、燃料処理器70の第1排出部73と、ガス供給室21とを連結する。燃料ガス供給管P1は、ガス供給口211から第1排出部73に向かって延びている。
【0067】
燃料ガス供給管P1は、1つの部材で構成されてもよく、複数の部材で構成されてもよい。
【0068】
[オフガス供給管]
オフガス供給管P2は、燃料処理器70とマニホールド2とを連結する。オフガス供給管P2は、マニホールド2のガス回収室22からのオフガスを、燃料処理器70に供給する。
【0069】
本実施形態のオフガス供給管P2は、マニホールド2のガス回収室22とバーナ721とを連結している。詳細には、オフガス供給管P2は、ガス排出口221と、バーナ721とを連結している。オフガス供給管P2は、ガス排出口221からバーナ721に向かって延びている。
【0070】
オフガス供給管P2は、1つの部材で構成されてもよく、複数の部材で構成されてもよい。なお、オフガス供給管P2及び燃料ガス供給管P1を構成する材料は、特に限定されないが、本実施形態のオフガス供給管P2を構成する材料は、燃料ガス供給管P1を構成する材料と同じである。
【0071】
[応力緩和部]
燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の少なくとも一方は、応力緩和部を有する。応力緩和部は、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の少なくとも一方を介してマニホールド2との接合部分に作用する応力を緩和するように構成されている。すなわち、応力緩和部は、マニホールド2において燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2が接合される部分に生じる応力を低減するために設けられた構成である。なお、接合部分とは、接合材、溶接材などによって、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2とマニホールド2とが接合された部分である。
【0072】
応力緩和部は、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の少なくとも一方に応力が作用したときに変形するように構成されている。詳細には、応力緩和部は、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の延びる方向と直交する方向(図7ではy軸方向)から、燃料処理器70に徐々に増加するように荷重を加えたときに、マニホールド2よりも先に変形するように構成されている。すなわち、応力緩和部は、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2に応力が加えられたときに、変形しやすい部分である。
【0073】
本実施形態の応力緩和部は、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の一方を他方よりも曲げ剛性を小さくすることによって構成されている。曲げ剛性とは、JIS Z 2248に基づいて曲げ試験により測定される値である。燃料ガス供給管P1の曲げ剛性に対するオフガス供給管P2の曲げ剛性の比、またはオフガス供給管P2の曲げ剛性に対する燃料ガス供給管P1の曲げ剛性の比は、例えば0.01〜0.95である。
【0074】
応力緩和部は、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の一方を他方よりも外径を小さくすることによって構成されている。すなわち、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の外径は、異なっており、外径が小さい方の供給管が応力緩和部となる。「外径が小さい方の供給管」とは、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の最小の外径を比較して、小さい方の外径を有する供給管を意味する。本実施形態では、オフガス供給管P2の外径D2は、燃料ガス供給管P1の外径D1よりも小さいため、オフガス供給管P2が応力緩和部である。燃料ガス供給管P1の外径D1に対するオフガス供給管P2の外径D2の比(D2/D1)は、例えば0.05〜0.95である。
【0075】
なお、燃料ガス供給管P1の外径D1がオフガス供給管P2の外径D2よりも小さくてもよい。この場合、燃料ガス供給管P1が応力緩和部である。オフガス供給管P2の外径D2に対する燃料ガス供給管P1の外径D1の比(D1/D2)は、例えば0.05〜0.95である。
【0076】
本実施形態の燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2は、燃料処理器70の中心軸に対して、非対称である。このため、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の一方は、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2を介してマニホールド2との接合部分に作用する応力を緩和できる。
【0077】
[発電方法]
上述したように構成された燃料電池装置100では、燃料処理器70によって生成された燃料ガスをマニホールド2のガス供給室21に供給するとともに、燃料電池セル10を空気などの酸素を含むガスに曝す。すると、空気極8において下記(3)式に示す化学反応が起こり、燃料極6において下記(4)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる。
(1/2)・O+2e→O2− …(3)
+O2−→HO+2e …(4)
【0078】
詳細には、ガス供給室21に供給された燃料ガスは、各燃料電池セル10の第1ガス流路43内を流れ、各発電素子部5の燃料極6において、上記(4)式に示す化学反応が起こる。各燃料極6において未反応であった燃料ガスは、第1ガス流路43を出て連通部材3の連通流路30を介して第2ガス流路44へ供給される。そして、第2ガス流路44へ供給された燃料ガスは、再度、燃料極6において上記(4)式に示す化学反応が起こる。第2ガス流路44を流れる過程において燃料極6において未反応であった燃料ガスは、マニホールド2のガス回収室22へ回収される。
【0079】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0080】
変形例1
上記実施形態では、応力緩和部は、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の一方を他方よりも外径を小さくすることによって構成しているが、これに限定されない。例えば、応力緩和部は、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の一方を他方よりも肉厚を薄くすることによって構成されてもよい。すなわち、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の肉厚は異なっており、肉厚の薄い方の供給管が応力緩和部となる。「肉厚が薄い方の供給管」とは、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の最小の肉厚を比較して、薄い方の肉厚を有する供給管である。燃料ガス供給管P1の肉厚に対するオフガス供給管P2の肉厚の比、またはオフガス供給管P2の肉厚に対する燃料ガス供給管P1の肉厚の比は、例えば0.1〜0.9である。
【0081】
変形例2
燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2を構成する材料は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。本変形例の応力緩和部は、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の一方を構成する材料を他方を構成する材料よりも弾性率を小さくすることによって構成されている。弾性率とは、JIS Z 2241に基づいて測定される値である。燃料ガス供給管P1の弾性率に対するオフガス供給管P2の弾性率の比、またはオフガス供給管P2の弾性率に対する燃料ガス供給管P1の弾性率の比は、例えば0.2〜0.95である。
【0082】
燃料ガス供給管P1は、例えばフェライト系ステンレス鋼で構成される。オフガス供給管P2は、例えばオーステナイト系ステンレス鋼で構成される。この場合、オフガス供給管P2が応力緩和部となる。
【0083】
変形例3
応力緩和部は、図8に示すように、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の少なくとも一方に形成された屈曲部によって構成されてもよい。本変形例の応力緩和部は、オフガス供給管P2において、延在する方向がx軸方向からy軸方向に折れ曲がる部分である。
【0084】
変形例4
応力緩和部は、図9に示すように、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の少なくとも一方に形成された湾曲部によって構成されてもよい。本変形例の応力緩和部は、供給管全体が湾曲しているオフガス供給管である。
【0085】
なお、変形例3の屈曲部及び変形例4の湾曲部は、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0086】
変形例5
変形例3の屈曲部及び変形例4の湾曲部は、遊び部を含んでもよい。「遊び部」とは、マニホールド2と燃料処理器70とを連結する最短経路よりも、供給管の経路が長くなるように設けた部分である。最短経路とは、マニホールド2の連結部と燃料処理器70の連結部とを、上下(x軸)方向及び水平(y軸及びz軸)方向の少なくとも一方に延びる部分で最短に結ぶ経路である。すなわち、遊び部は、マニホールド2と燃料処理器70との連結経路において、無駄に長く形成した部分である。
【0087】
例えば、図10に示す遊び部は、段差部である。図11に示す遊び部は、燃料ガス供給管P1の一部が湾曲している湾曲部である。
【0088】
変形例6
上記実施形態では、1つの供給管全体が応力緩和部を構成しているが、これに限定されない。例えば、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の少なくとも一方は、異なる材料で形成された複数の部分を備えてもよい。この場合、変形しやすい材料で構成された部分が応力緩和部となる。
【0089】
変形例7
本変形例の応力緩和部は、図12に示すように、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の少なくとも一方に設けられた小径部P12である。燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の少なくとも一方は、大径部P13と小径部P12とを有している。小径部P12の外径D12は、大径部P13の外径D13よりも小さい。小径部P12は、1つの供給管において最も外径が小さい部分である。燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2において、最小の外径の小径部P12は、他の部分よりも変形しやすい。大径部P13の外径D13に対する小径部P12の外径D12の比(D12/D13)は、例えば0.05〜0.95である。
【0090】
図12では、燃料ガス供給管P1において、マニホールド2側に大径部P13が設けられ、燃料処理器70側に小径部P12が設けられている。小径部P12の位置は、これに限定されず、マニホールド2側に設けられてもよく、供給管の中間位置に設けられてもよい。また、小径部P12は、複数設けられてもよい。さらに、小径部P12は、オフガス供給管P2のみに設けられてもよく、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の両方に設けられてもよい。
【0091】
大径部P13には、変形例3の屈曲部または変形例4の湾曲部が設けられてもよい。この場合、小径部P12が応力緩和部となるとともに、大径部P13の屈曲部または湾曲部も応力緩和部となる。
【0092】
変形例8
上記実施形態では、マニホールド本体部23の幅方向(y軸方向)において、燃料処理器70の中心軸がガス供給室21側に寄っているように配置されているが、これに限定されない。例えば、マニホールド本体部23の幅方向(y軸方向)において、燃料処理器70の中心軸がガス供給室21側に寄っていてもよいし、燃料処理器70の中心軸がマニホールド2の仕切板24と実質的に一致してもよい。
【0093】
なお、応力緩和部は、マニホールド本体部23の幅方向において、中央部側に位置する供給管であってもよく、端部側に位置する供給管であってもよい。
【0094】
また、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の外径が異なる場合、外径の大きい方の供給管に、変形例3の屈曲部または変形例4の湾曲部が設けられてもよい。この場合、外径の小さい方の供給管全体が応力緩和部となるとともに、外径の大きい方の供給管の屈曲部または湾曲部も応力緩和部となる。
【0095】
変形例9
上記実施形態では、マニホールド2の底面に、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2が連結されているが、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の連結位置はこれに限定されない。例えば、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の少なくとも一方は、マニホールド2の側面に形成されていてもよいし、マニホールド2の上面に形成されていてもよい。
【0096】
変形例10
上記実施形態では、燃料処理器70は、改質器によって構成されているが、これに限定されない。例えば、燃料処理器70は、改質器に加えて、CO変性器及びCO浄化器などを有していてもよい。CO変性器は、改質器で発生した一酸化炭素および水から二酸化炭素及び水素を生成するように構成されている。また、CO浄化器は、改質器で発生した一酸化炭素に酸素を加えて、二酸化炭素へ変化させるように構成されている。
【0097】
変形例11
上記実施形態では、燃料処理器70は、燃料電池セル10が延びる方向に延びているが、これに限定されない。例えば、燃料処理器70は、燃料電池セル10が延びる方向と交差する方向(y軸方向又はz軸方向)に延びていてもよい。詳細には、燃料電池セル10が上下方向に延びる場合、燃料処理器70は水平方向に延びていてもよい。
【0098】
変形例12
上記実施形態では、燃料処理器70は、マニホールド2の底面と対向するように配置されているが、燃料処理器70の配置はこれに限定されない。例えば、燃料処理器70は、燃料電池セル10の側面および主面の少なくとも一方と対向するように配置されていてもよい。このとき、燃料処理器70の一部が燃料電池セル10の先端面103よりも上方に配置されていてもよい。
【0099】
変形例13
上記実施形態のマニホールド2は、ガス供給室21及びガス回収室22を有しているが、これに限定されない。例えば、マニホールドは、複数のマニホールド部を有していてもよい。この場合、第1マニホールド部がガス供給室を有し、第2マニホールド部がガス回収室を有する。また、上記実施形態のマニホールド2は、燃料電池セル10の基端部を支持しているが、これに限定されない。このため、本発明は、いわゆる平板型の燃料電池にも適用可能である。
【0100】
変形例14
上記実施形態では、第1ガス流路43と第2ガス流路44とは、連通部材3が有する連通流路30によって連通されていたが、この構成に限定されない。例えば、図13に示すように、支持基板4が、内部に連通流路30を有していてもよい。この場合、燃料電池装置100は、連通部材3を備えていなくてもよい。この支持基板4内に形成された連通流路30によって、第1ガス流路43と第2ガス流路44とが連通されている。
【0101】
変形例15
図14に示すように、支持基板4は、第1支持基板4aと第2支持基板4bとに分かれていてもよい。この場合、第1支持基板4aに第1ガス流路43が形成され、第2支持基板4bに第2ガス流路44が形成される。
【0102】
変形例16
上記実施形態では、支持基板4は、複数の第1ガス流路43を有しているが、1つの第1ガス流路43のみを有していてもよい。同様に、支持基板4は、複数の第2ガス流路44を有しているが、1つの第2ガス流路44のみを有していてもよい。
【0103】
変形例17
上記実施形態では、燃料電池セル10はマニホールド2から上方に延びるように構成されているが、これに限定されない。例えば、燃料電池セル10は、マニホールド2から下方に延びていてもよい。この場合、燃料処理器70は、例えばマニホールド2の上方に配置される。また、マニホールド2の底面は上方を向いている。
【0104】
変形例18
上記実施形態のマニホールド2では、1つのマニホールド本体部23を仕切板24で仕切ることによって、ガス供給室21とガス回収室22とを画定しているが、マニホールド2の構成はこれに限定されない。例えば、2つのマニホールド本体部23によってマニホールド2を構成することもできる。この場合、1つのマニホールド本体部23がガス供給室21を有し、別のマニホールド本体部23がガス回収室22を有している。
【0105】
変形例19
上記実施形態の燃料電池セル10は、各発電素子部5が支持基板4の長さ方向(x軸方向)に配列されている、いわゆる横縞型の燃料電池セルであるが、燃料電池セル10の構成はこれに限定されない。例えば、燃料電池セル10は、支持基板4の第1主面45に1つの発電素子部5が支持された、いわゆる縦縞型の燃料電池セルであってもよい。この場合、支持基板4の第2主面46に一つの発電素子部5が支持されていてもよいし、支持されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0106】
2 マニホールド
21 ガス供給室
22 ガス回収室
10 燃料電池
70 燃料処理器
P1 燃料ガス供給管
P2 オフガス供給管
【要約】
【課題】マニホールドに生じる応力を低減できる燃料電池装置を提供する。
【解決手段】燃料電池装置100は、燃料電池セル10、マニホールド2、燃料処理器70、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2を備えている。マニホールド2は、ガス供給室21及びガス回収室22を有する。マニホールド2は、燃料電池セル10を支持する。燃料処理器70は、ガス供給室21に供給される燃料ガスを生成する。燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2は、燃料処理器70とマニホールド2とを連結する。燃料ガス供給管P1は、燃料ガスをガス供給室21に供給する。オフガス供給管P2は、ガス回収室22からのオフガスを燃料処理器に供給する。燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の少なくとも一方は、燃料ガス供給管P1及びオフガス供給管P2の少なくとも一方を介してマニホールド2との接合部分に作用する応力を緩和するように構成された応力緩和部を有する。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14