(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体噴霧部と前記液体噴霧部に対して異極となる異極部との間に電圧を印加して発生する静電気力によって液体を帯電状態で前記液体噴霧部から離脱させ、被塗物に霧化液体を噴霧する静電噴霧装置に用いるマスキング治具であって、
前記マスキング治具がマスキング補助体と別体のマスキング本体とを備え、
前記マスキング補助体は、前記被塗物の液体を塗布する塗布部と前記被塗物の液体を塗布しない非塗布部との境界を画定するように、前記被塗物に接触するように配置され、
前記マスキング本体は、前記境界よりも前記非塗布部側で少なくとも前記マスキング補助体の覆わない前記被塗物の前記非塗布部を覆うように配置され、
前記マスキング本体が、絶縁材料を用いて、前記液体を反発する帯電状態になるように形成されており、
前記マスキング補助体が、電位的に前記被塗物の一部と見なせる状態になっていて、前記被塗物と前記マスキング補助体とに前記液体が塗着できるように、導電材料若しくは1010Ω以下の表面抵抗の帯電防止材料で形成されていることを特徴とするマスキング治具。
液体噴霧部と前記液体噴霧部に対して異極となる異極部との間に電圧を印加して発生する静電気力によって液体を帯電状態で前記液体噴霧部から離脱させ、被塗物に霧化液体を噴霧する静電噴霧装置に用いるマスキング治具であって、
前記マスキング治具がマスキング補助体とマスキング本体とを備え、
前記マスキング補助体は、前記被塗物の液体を塗布する塗布部と前記被塗物の液体を塗布しない非塗布部との境界を画定するように、前記被塗物に接触するように配置され、
前記マスキング本体は、前記境界よりも前記非塗布部側で前記マスキング補助体に取外し不能に一体に設けられ、少なくとも前記マスキング補助体の覆わない前記被塗物の前記非塗布部を覆うように配置され、
前記マスキング本体が、絶縁材料を用いて、前記液体を反発する帯電状態になるように形成されており、
前記マスキング補助体が、電位的に前記被塗物の一部と見なせる状態になっていて、前記被塗物と前記マスキング補助体とに前記液体が塗着できるように、導電材料若しくは1010Ω以下の表面抵抗の帯電防止材料で形成されていることを特徴とするマスキング治具。
前記マスキング本体は、前記液体を反発する帯電状態になるように所定の厚み以上の厚みとされていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のマスキング治具。
液体噴霧部と前記液体噴霧部に対して異極となる異極部との間に電圧を印加して発生する静電気力によって液体を帯電状態で前記液体噴霧部から離脱させ、被塗物に霧化液体を噴霧する静電噴霧装置を用いて、マスキング治具で前記被塗物の前記液体を塗布しない非塗布部を覆った状態で前記被塗物の前記液体を塗布する塗布部に前記液体を塗布する静電噴霧方法であって、
前記マスキング治具が、
導電材料若しくは1010Ω以下の表面抵抗の帯電防止材料で形成されたマスキング補助体と、
絶縁材料で形成されたマスキング本体と、を備え、
前記塗布部に前記液体を塗布する工程が、
前記マスキング補助体が、前記塗布部と前記非塗布部との境界を画定するように、前記被塗物に接触するように配置され、前記マスキング本体が前記境界よりも前記非塗布部側で少なくとも前記マスキング補助体の覆わない前記被塗物の前記非塗布部を覆うように、前記マスキング冶具を配置する工程と、
前記マスキング本体を前記帯電した液体を反発する帯電状態とするとともに、前記マスキング補助体を電位的に前記被塗物の一部と見なせる状態として、前記被塗物と前記マスキング補助体とに前記液体を塗着可能な帯電状態とする工程とを有することを特徴とする静電噴霧方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
なお、特に断りがない場合、「先(端)」や「前(方)」等の表現は、各部材等において液体の噴霧方向側を表し、「後(端)」や「後(方)」等の表現は、各部材等において液体の噴霧方向と反対側を表すものとする。
【0011】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る第1実施形態の静電噴霧装置10の全体構成を示す斜視図であり、
図2は静電噴霧装置10の全体構成を示す断面図である。
図1及び
図2に示すように、静電噴霧装置10は、液体ノズル22を有する液体噴霧部20と、マスキング治具30と、液体噴霧部20と液体噴霧部20に対して異極となる異極部40との間に電圧を印加する電圧印加手段(電圧電源)50と、を備える。
【0012】
なお、本実施形態では、電圧印加手段(電圧電源)50からの電気配線を被塗物に直接接続して、被塗物自体を異極部40としている場合を示しているが、例えば、被塗物を載置する載置部(図示せず)に電圧印加手段(電圧電源)50からの電気配線を接続して、この載置部を異極部40として載置部を介して被塗物が電圧印加手段(電圧電源)50に電気的に接続されるようになっていても良い。
【0013】
異極部40となる被塗物は、アース手段60でアースされるようになっている。
このアース手段60は必須の要件ではないが、被塗物のようなものの場合、作業者が触れたりすることがあり得るので安全面の観点で設けることが好ましい。
【0014】
(液体噴霧部)
図3は、液体噴霧部20だけを示した断面図である。
なお、
図3では、液体噴霧部20から後述するように塗料などの液体が噴霧されている状態を合わせて図示したものになっている。
図3に示すように、液体噴霧部20は、液体の供給される液体供給口21aを有する液体流路21bが形成された絶縁材料からなる胴体部21と、貫通孔が胴体部21の液体流路21bに連通するように胴体部21の先端に設けられる液体ノズル22と、胴体部21の液体流路21b内及び液体ノズル22の貫通孔内に配置される導電材料からなる心棒23と、を備えている。
【0015】
胴体部21には、心棒23を後端側に取り出すために、液体流路21bと連通した孔部21cが設けられ、その孔部21c内には、心棒23との間の隙間をシールして液体が漏れないようにするシール部材24が設けられている。
なお、本実施形態では、シール部材24としてOリングを用いているが、Oリングに限らず、シールが可能なものであればよい。
【0016】
そして、孔部21cを通じて胴体部21の後端側に位置する心棒23の後端には、絶縁材料からなる摘み部23aが設けられているとともに、摘み部23aのほぼ中央を貫通するように設けられた導電材料からなる電気配線接続部23bが設けられている。
【0017】
図1及び
図2に示すように、電気配線接続部23bには、電圧印加手段50からの電気配線が接続される。
そして、
図3に示すように、電気配線接続部23bが心棒23に接触するようにされることで心棒23と電気配線接続部23bとが電気的に接続されている。
【0018】
なお、本実施形態では、心棒23を液体噴霧部20側の電極としているが、例えば、液体噴霧部20の液体ノズル22を導電材料からなるものとして、この液体ノズル22に電圧印加手段50からの電気配線を接続するようにし、液体ノズル22を液体噴霧部20側の電極としても良い。
【0019】
また、胴体部21の後端開口部21dの内周面には、摘み部23aを螺合接続するための雌ネジ構造21eが設けられ、一方、摘み部23aの先端外周面には、雄ネジ構造23cが設けられている。
【0020】
したがって、胴体部21の後端開口部21dの雌ネジ構造21eに摘み部23aの先端外周面の雄ネジ構造23cを螺合させることで心棒23が取外し可能に胴体部21に取付けられている。
また、摘み部23aの螺合量を調節することで心棒23を前後方向に移動させることができ、心棒23の先端面23dの位置を前後方向に調節できるようになっている。
【0021】
ここで、一般に、静電噴霧装置の液体を噴霧するノズルは、液体が流れる貫通孔の直径が小さい微細な液体流路とされる。
これは、液体が流れ出るノズル先端の開口直径が大きいと、安定した液体の霧化状態が得られなくなるためと推察される。
例えば、一般には、ノズル先端の開口直径は0.1mm未満とされている。
【0022】
このため、液体が乾燥したりすると直ぐに、ノズル先端の開口部が目詰まりするが、開口直径が小さいため、この目詰まりを解消することが難しいという問題がある。
【0023】
しかしながら、理由については、後ほど説明するが、心棒23を用いるようにすることで、従来に比較して、ノズル先端の開口径を大きな開口直径としても良好な霧化ができることを見出し、このため、本実施形態の液体ノズル22の先端の開口部22bの開口直径は0.2mmの大きな開口直径にできている。
この結果、目詰まりが発生する頻度を大幅に低減することができるようになっている。
【0024】
なお、液体ノズル22の開口部22bの開口直径は0.2mmに限定されるものではなく、心棒23を用いる形態においては、開口直径は1mm程度であっても問題はない。
【0025】
液体ノズル22の開口部22bの開口直径は、目詰まりが起きにくく、また、目詰まりが起きても清掃ができることを考慮すると、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、さらに0.2mmより大きくすることが好ましい。
【0026】
一方、液体ノズル22の開口部22bの開口直径は、霧化の安定性を考慮すると、1.0mm以下が好適であり、より好ましく0.8mm以下であり、さらに好ましくは0.5mm以下とするのが良い。
【0027】
また、本実施形態では、上述のように、心棒23を前後方向に移動させることができるため、目詰まりが起きても心棒23を移動させることで目詰まりの解消を行うことができる。
さらに、液体ノズル22の貫通孔の内径も心棒23を配置できる程度に大きくできているため、心棒23を取り外して洗浄液を大量に流して洗浄することも可能になっている。
【0028】
図4は、液体噴霧部20の先端側を拡大した拡大図であり、
図4(a)は、心棒23の先端面23dが後方に位置する場合であり、
図4(b)は、
図4(a)の状態よりも心棒23の先端面23dが前方に位置する場合である。
【0029】
図4(a)に示すように液体ノズル22は、開口部22b側に向かってテーパ状に内径が小さくなるテーパ角度がαであるテーパ状内径部(範囲A参照)を有しており、心棒23は、先端面23dに向かって外径が小さくなるテーパ角度がβであるテーパ形状部(範囲B参照)を有している。
【0030】
そして、液体ノズル22のテーパ状内径部のテーパ角度αが、心棒23のテーパ形状部のテーパ角度βよりも大きくされている。
また、心棒23の先端面23dの直径は、液体ノズル22の開口部22bの開口直径よりも小さい直径とされているが、心棒23のテーパ形状部は、後端側に向かって徐々に直径が大きくなり、液体ノズル22の開口部22bの開口直径よりも直径の大きい部分を有するように形成されている。
【0031】
上記のように、液体ノズル22及び心棒23の先端側を形成することによって、
図4(a)及び
図4(b)を見比べるとわかるように、心棒23を前後方向に移動させることで液体ノズル22と心棒23とで形成される隙間の幅を調節できるようになり、液体ノズル22の開口部22bから出る液体の量を調節することができる。
【0032】
また、
図4(b)で示す状態よりも、さらに、心棒23を前方側に動かすことで、心棒23が液体ノズル22の内周面に当接し、液体ノズル22の開口部22bを閉塞することが可能である。
したがって、塗料などの液体を噴霧しない状態において、液体ノズル22の開口部22bを心棒23で閉塞させ、液体ノズル22内の液体が乾燥することを防止することが可能であり、液体ノズル22の目詰まりを抑制できる。
【0033】
(異極部40)
本実施形態では、上述したように、異極部40に被塗物を用いた場合を示しており、電圧印加手段(電圧電源)50の心棒23に接続されるのと反対側の電気配線が被塗物に接続されることで被塗物自体が液体噴霧部20に対する異極となるようにされている。
【0034】
しかしながら、上記でも少し触れたが、例えば、被塗物が搬送装置などによって、塗料などの液体を塗布する位置に搬送されるような場合には、電圧印加手段50からの電気配線を搬送装置の被塗物が載置される載置部に接続されているようにして、載置部を介して被塗物が電圧印加手段50に電気的に接続されるようにしても良い。
【0035】
次に、
図3を参照しながら、まず、液体噴霧部20から液体が噴霧される状態について説明を行い、その後、その噴霧される液体が被塗物の所定の範囲にだけ塗布されるようにするマスキング治具30について説明を行う。
【0036】
胴体部21の液体供給口21aに供給された液体は、液体ノズル22の先端側に供給されていき、異極部40(被塗物)と心棒23との間に印加される電圧に伴う静電気力によって、前方側に引っ張られて前方に離脱・霧化する。
【0037】
なお、液体の供給は、噴霧により消費されることで液体噴霧部20から失われる分の液体が順次供給されていれば良く、液体ノズル22の開口部22b(より正確には、開口部22bと心棒23との間の隙間)から液体が噴射するような圧力で圧送供給される必要はなく、液体が勢いよく噴射される状態の場合、かえって霧化ができなくなるようなことが起こる。
【0038】
より具体的には、心棒23の先端面23d及び液体ノズル22の先端外周縁22aへの表面張力や粘度による付着力に対して、液体を前方に引っ張る静電気力が釣り合うことで、
図3に示すように、液体ノズル22の先端側に供給された液体が、その先端で円錐形の形状となるテーラコーン80が形成される。
【0039】
このテーラコーン80は、電場の作用によって、液体中で正/負電荷の分離が起こり、過剰電荷で帯電した液体ノズル22先端のメニスカスが変形して円錐状となって形成されているものである。
そして、テーラコーン80の先端から静電気力によって液体が真直ぐに引っ張られ、その後静電爆発によって広い範囲に液体が噴霧される。
【0040】
この噴霧される液体、つまり、液体ノズル22から離脱して液体粒子となった液体は、離脱前の状態に比べ、空気に触れる面積が飛躍的に大きくなるため溶媒の気化が促進され、その溶媒の気化に伴って帯電している電子間の距離が近づき、静電反発(静電爆発)が発生して、さらに、小さい粒径の液体粒子に分裂する。
【0041】
この分裂が起こると、さらに、分裂前に比べ空気に触れる表面積が増えることになるため、溶媒の気化が促進され、上述したのと同様に静電爆発が発生し、さらに、小さい粒径の液体粒子に分裂する。
このような静電爆発が繰り返されることで液体が霧化される。
【0042】
ここで、本実施形態では、液体ノズル22内に心棒23を設けるようにしている。
仮に、従来の静電噴霧装置のように、この心棒23を設けないものとすると、液体が付着できる部分は、液体ノズル22の先端外周縁22aだけとなる。
【0043】
そして、このような状態で液体ノズル22の開口部22bの開口直径を大きくすると、液体の付着できる部分が、液体ノズル22の先端外周縁22aだけのため、例えば、液体ノズル22の上下左右に液体がふらついたりし易く、きれいなテーラコーン80が形成できなくなったり、また、テーラコーン80自体が維持できなくなるため、液体ノズル22から離脱する液体粒子の安定性(粒子の大きさ、数、及び、帯電状態などの安定性)が得られなくなり、結果、液体の安定した霧化ができなくなるものと推察される。
【0044】
一方、本実施形態では、液体ノズル22内に心棒23を配置して、液体ノズル22の先端外周縁22aだけでなく、心棒23の先端面23dとの間でも液体は付着する。
したがって、液体ノズル22の開口部22bの開口直径が大きくても、開口部22bの中央部に液体が付着できる心棒23の先端面23dが存在するため、安定したテーラコーン80を形成することができ、液体の安定した霧化ができるようになっているものと考えられる。
【0045】
なお、心棒23の先端面23dが液体ノズル22の先端外周縁22a(つまり、液体ノズル22の開口部22bの先端面)から前方に出過ぎると液体ノズル22から出る液体に電場が作用し難くなり、一方、心棒23の先端面23dが液体ノズル22の開口部22bの先端面から後方に引っ込み過ぎると、開口部22bの中央部に液体が付着できる部分が存在しないのと同じ状態となる。
【0046】
このことから、心棒23の先端面23dの位置は、液体を噴霧する状態において、液体ノズル22の開口部22bの先端面を基準にして、心棒23の中心軸に沿った前後方向で、液体ノズル22の先端の開口部22bの開口直径の10倍以内に位置することが好適であり、より好ましくは5倍以内に位置することが好適であり、さらに、好ましくは3倍以内に位置することが好適である。
【0047】
例えば、本実施形態では、液体ノズル22の開口部22bの開口直径が0.2mmであり、静電気力を考慮しない場合、液体ノズル22の開口部22bから出た液体は、液体ノズル22の先端で直径が約0.2mmの半球状となるように出てくる。
【0048】
そして、この液体ノズル22の先端に出てきた液体に電場(静電気力)が作用して円錐状のテーラコーン80が形成できるように、心棒23の先端は、この液体の近くに存在することが良く、このため液体ノズル22の開口部22bの先端面から前方(出る方向)に2mm以内に位置するようにするのが好適であり、一方、液体の付着に作用するように、心棒23の先端が液体ノズル22の開口部22bの先端面から後方(引っ込む方向)に2mm以内に位置するようにするのが好適である。
【0049】
上記のように、心棒23を設けることによって、液体ノズル22の開口部22bの開口直径を大きくしても安定した液体の霧化が行える。
このため、液体ノズル22の開口部22bの開口直径を目詰まりが抑制できるような大きな開口直径にすることができる。
また、液体ノズル22の開口部22bの開口直径を大きくできるため機械加工で液体ノズル22が製作できる。
【0050】
なお、本実施形態では、心棒23の先端が先端面23dとして平坦な平面としている場合を示しているが、必ずしも、心棒23の先端が平坦な平面である必要はなく、安定したテーラコーン80の形成に寄与すれば良いので、例えば、心棒23の先端はR形状のように、前方側に向かって突出する曲面になっていても良い。
【0051】
このようにして液体噴霧部20(液体ノズル22)から噴霧された液体は、静電爆発を繰り返しながら霧化液体となり、この微粒化した液体は電荷を帯びた状態であるため、異極部40(被塗物)側に静電気力で引き寄せられて被塗物に塗着することになる。
【0052】
(マスキング治具)
図1及び
図2に示すように、マスキング治具30は、絶縁材料を用いたマスキング本体31と、マスキング補助体32を備える。
なお、本実施形態では、被塗物は異極部40を構成しているため、被塗物を記載するにあたって、以下では、被塗物40として異極部と同符号を用いて説明を進める。
【0053】
そして、マスキング補助体32は、中央に噴霧された液体が通過するための円形の開口32aを有している。
つまり、本実施形態は、被塗物40上に円形パターンに液体を塗着させる場合を例示している。
【0054】
ここで、
図2に示すように、マスキング補助体32は、被塗物40に接触するように配置され、被塗物40の液体を塗布する塗布部41と被塗物40の液体を塗布しない非塗布部42との境界43を画定するものになっている。
つまり、マスキング治具30において、マスキング補助体32が、塗布部41と非塗布部42との境界43を画定するように、被塗物40に接触するように配置される部分になっている。
【0055】
一方、
図5に示すマスキング治具30の分解断面図を見るとわかるように、本実施形態のマスキング治具30は、マスキング補助体32とマスキング本体31とが別体であり、マスキング本体31には、マスキング補助体32が着脱可能に取付けられる開口31aが形成されており、その開口31aにマスキング補助体32が着脱可能に取付けられている。
【0056】
そして、このように構成されることで、
図2に示すように、マスキング本体31は、境界43よりも非塗布部42側で少なくともマスキング補助体32の覆わない被塗物40の非塗布部42を覆うように被塗物40上に配置されるようになっている。
つまり、マスキング治具30において、マスキング本体31が、境界43よりも非塗布部42側で少なくともマスキング補助体32の覆わない被塗物40の非塗布部42を覆うように配置される部分になっている。
【0057】
上述したように、マスキング本体31には、絶縁材料が用いられている。
そして、マスキング本体31は、被塗物40と液体噴霧部20との間に印加された電圧によって発生する静電気力により表面が噴霧される液体と同様の帯電状態(つまり、液体が正電荷に帯電していれば表面が正電荷に帯電し、液体が負電荷に帯電していれば表面が負電荷に帯電する状態)になるための所定の厚み以上の厚みを有するように形成されている。
【0058】
例えば、所定の厚みは0.5mm以上が好ましく、さらに、好ましくは1.0mm以上であるのが好ましい。
このように、厚みを厚くして分極を起こしやすくすると、マスキング本体31は、容易に帯電した液体を反発する良好な帯電状態になり、マスキング本体31上に液体が塗着するのを防止若しくは軽減することができる。
このため、マスキング本体の洗浄回数を大幅に低減することが可能である。
【0059】
一方、マスキング補助体32は、導電材料若しくは10
10Ω以下の表面抵抗の帯電防止材料で形成するようにして、噴霧される液体が塗着できるようにされている。
【0060】
そして、上述のように、マスキング補助体32は、被塗物40に接触するように配置されているので被塗物40と同電位と見なせる状態、つまり、マスキング補助体32は、電位的に被塗物40の一部と見なせる状態になっている。
【0061】
このため、噴霧された液体が、静電反発によって、マスキング補助体32の開口32aの中央側に集められることがなく、開口32aから外れたマスキング補助体32上に噴霧された液体は、マスキング補助体32上に塗着するとともに、開口32a上に噴霧された液体が被塗物40上に塗着するようになる。
したがって、開口32aより外側に噴霧された液体が、被塗物40の境界43近傍の塗布部41に塗着して、塗着した液体の厚みが他の部分と比較して厚くなることが抑制される。
【0062】
さらに、開口32aの縁部で液体が反発されることがないため、境界43の際まできれいに液体が塗着されることになるため、非塗布部42と塗布部41との境界43を精度よく形成することが可能となる。
【0063】
なお、本実施形態では、マスキング本体31として平らなプレートであるものを例示しているが、マスキング本体31自体の形状は任意であり、そのプレートの形状は、被塗物40の形状に合わせて湾曲するように形成されていても良い。
また、マスキング本体31の厚みは、均一でなくても良く、液体が塗着するのを防止低減できる厚みがあるようになっていればよい。
【0064】
さらに、本実施形態では、マスキング補助体32が、マスキング本体31の開口31aに着脱可能に取付けられる場合を示している。
しかしながら、被塗物40の塗布部41と非塗布部42の状態によっては、マスキング本体31に開口31aを設けることなく、マスキング本体31の外側の外周縁31b(
図1参照)にマスキング補助体32が着脱可能に取付けられるようにされていても良く、開口31a及び外周縁31bの双方に着脱可能にマスキング補助体32が取付けられるようにされていても良い。
【0065】
上述のように、マスキング補助体32には、液体が塗着されることになるので、このように着脱可能に取付けられる形態としておくことで、マスキング補助体32だけを取外して洗浄するようにすることが可能となり、作業性を向上することができるようになる。
【0066】
但し、良好な液体の塗着の観点からすれば、マスキング補助体32がマスキング本体31に着脱可能に取付けられている必要はない。
したがって、例えば、
図6に示すように、マスキング補助体32とマスキング本体31とは取外し不能に一体化されていても良い。
このようにしても、マスキング治具全体を液体が塗着できるようにする場合に比較すれば、マスキング補助体32の部分だけを部分洗浄すれば良いだけであるので、作業効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0067】
このような、マスキング補助体32とマスキング本体31を取外し不能に一体化したマスキング治具30は、例えば、導電性プラスチック材料と絶縁性プラスチック材料とを用いて、二色成形するようにして形成することが可能である。
また、別の方法として、マスキング補助体32を導電材料若しくは10
10Ω以下の表面抵抗の帯電防止材料で作製しておき、そのマスキング補助体32に対して絶縁性プラスチック材料を用いたインサート成形等を施して、取外し不能に一体化されたマスキング本体31を形成するようにしても良い。
【0068】
ところで、マスキング本体31は、液体の塗着という観点では、液体が塗着し難いように構成されるものの、完全に液体の塗着が防止できるわけではない。
【0069】
例えば、塗布作業中に幾分液体が塗着するような場合もあり、また、塗布作業が終了して静電気力が発生しなくなった時に周りに舞っている液体が塗着したりすることもある。
【0070】
このため、マスキング本体31は、溶剤等に曝されることになるため、絶縁材料の中でも耐溶剤性に優れた材料を用いて形成されることが好適である。
したがって、マスキング本体31には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートやフッ素系樹脂の耐溶剤性に優れた材料を用いるのが好適である。
【0071】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。
第2実施形態でも基本的な構成(液体噴霧部20、異極部40(被塗物)及びマスキング本体31)の構成は、第1実施形態と同様であり、マスキング補助体32の構成が異なる。
【0072】
図7は、第2実施形態のマスキング治具30を示す斜視図であり、
図8は第2実施形態のマスキング治具30の断面図である。
なお、
図7では、被塗物40を図示していないが、
図8に示すように、第2実施形態でもマスキング補助体32は被塗物40と開口32aの周縁35(
図7参照)が接触している。
【0073】
第2実施形態のマスキング補助体32は、開口32aを形成した薄いフィルム状のものとして形成されている。
そして、マスキング補助体32の一方の面に粘着性を持たせるなどして、マスキング本体31の開口縁部と被塗物40との双方に着脱可能に取付けられるようになっている。
【0074】
マスキング補助体32は、導電材料若しくは10
10Ω以下の表面抵抗の帯電防止材料で形成するようにするのが好適であるが、このように薄く構成する場合には、絶縁材料であっても良い。
絶縁材料をマスキング補助体32に用いる場合は、厚みを薄くしてマスキング補助体32上に液体が塗着できるようにする。
【0075】
具体的には、分極が起きて帯電した液体を反発する作用が大きく発生しないようにするためにマスキング本体31の好適な厚みの半分以下、つまり、0.25mm以下の厚みになるようにするのが良く、より好ましくは、0.2mm以下の厚みにするのが好ましく、さらに好ましくは、0.15mm以下の厚みになるようにするのが良い。
このようにすることで、マスキング補助体32が絶縁材料のようなものであっても、良好にマスキング補助体32上に液体が塗着される、つまり、帯電した液体を反発しないようになり、第1実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
【0076】
第2実施形態のように、マスキング補助体32を薄いフィルム状のものとして安価に製作できるようにしておけば、マスキング補助体32を洗浄するのではなく、使い捨てのように使用することも可能となる。
【0077】
例えば、生産量の少ない被塗物40への塗装等の場合、マスキング補助体32を金型を用いて作製するのではなく、第2実施形態のように、マスキング補助体32をフィルム状のものとして作製しておき、必要な開口32aを被塗物40の塗布部41の形状に合わせて作る(例えば、切り取る)ようにすれば、マスキング補助体32を作製するために金型などを作る必要がなく、コストを低減することが可能である。
【0078】
なお、第1実施形態でも述べたように、被塗物40の塗布部41と非塗布部42の状態によっては、マスキング本体31の外側の外周縁31b(
図7参照)にマスキング補助体32を設ける場合もあり、このような場合、マスキング補助体32の形状がテープ状である方が使い勝手が良い場合があるので、マスキング補助体32をテープ状のような形状としても良い。
【0079】
一方、第2実施形態では、マスキング補助体32をマスキング本体31と被塗物40との間を渡すように、マスキング本体31と被塗物40の双方にマスキング補助体32を着脱可能に取付けた場合について、具体的な例示を行ったが、例えば、被塗物40に対してだけ着脱可能にマスキング補助体32を取付けるようにし、塗布部41を覆わないように、境界43より非塗布部42側でマスキング補助体32上にマスキング本体31を重ねるように配置してマスキング補助体32の覆っていない非塗布部42をマスキング本体31が覆うように、マスキング本体31を設けるようにしても良い。
【0080】
そして、第1実施形態や第2実施形態で詳細に説明したマスキング治具30、つまり、被塗物40の塗布部41と非塗布部42との境界43を画定するマスキング補助体32と、境界43よりも非塗布部42側に配置され、少なくともマスキング補助体32の覆わない被塗物40の非塗布部42を覆うように設けられるマスキング本体31と、を備えているマスキング治具30で、被塗物40の液体を塗布しない非塗布部42を覆った状態で被塗物40の液体を塗布する塗布部41に液体を塗布するように、液体噴霧部20と液体噴霧部20に対して異極となる異極部(上記実施形態では、被塗物)40との間に電圧印加手段(電圧電源)50で電圧を印加して発生する静電気力によって液体を帯電状態で液体噴霧部20から離脱させ、被塗物40に霧化液体を噴霧する静電噴霧装置で静電噴霧を行うようにした静電噴霧方法によれば、被塗物40の液体を塗布する塗布部41と液体を塗布しない非塗布部42との境界43を精度よく形成することができるとともに、塗布部41の境界43近傍に塗布される液体の厚みが厚くなることを抑制することができる。
【0081】
以上、具体的な実施形態に基づいて本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を実施しても良い。
例えば、液体噴霧部20の液体ノズル22近傍に液体を帯電状態で離脱させるのを促進する追加の異極部を設けるようにしても良い。
【0082】
このように、本発明は、具体的な実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を施したものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。