(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態を図面に基づいて簡単に説明する。本実施形態の眼科装置(例えば、眼科装置1)は、例えば、被検眼を検査する。例えば、眼科装置は、被検眼の眼屈折力、角膜曲率、眼圧等を測定してもよいし、被検眼の前眼部、眼底等の画像を撮影してもよい。眼科装置は、例えば、検眼部(例えば、検眼部2)と、駆動部(例えば、駆動部4)と、第1撮影部(例えば、顔撮影部2)と、制御部(例えば、制御部70)等を備える。検眼部は、例えば、被検眼を検査する。検眼部は、例えば、眼屈折力測定光学系、角膜曲率測定光学系、眼圧測定光学系、眼底撮影光学系、断層像撮影光学系など、種々の検査光学系の少なくとも一つを備えてもよい。駆動部は、被検眼に対して検眼部を3次元的に相対移動させる。第1撮影部は、例えば、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔を撮影する。
【0011】
制御部は、駆動部の駆動を制御する。制御部は、例えば、第1画像上における被検眼の2次元位置と、第1撮影部に関する情報と、に基づいて駆動部の駆動範囲を制約する。これによって、検眼部2を被検眼に対して効率的なアライメントを行える。なお、第1画像は、例えば、第1撮影部によって撮影された画像である。第1画像上における被検眼の2次元位置は、例えば、第1画像に対する画像処理によって特定される。第2撮影部に関する情報は、例えば、第2撮影部の位置情報、第2撮影部のカメラパラメータ等である。
【0012】
なお、制御部は、第1画像上における被検眼の2次元位置と第1撮影部に関する情報とに基づいて算出された被検眼と第1撮影部の3次元的な相対方向に基づいて、駆動部の駆動範囲を制約してもよい。
【0013】
なお、検眼部は、第2撮影部(例えば、前眼部撮影光学系60)を備えてもよい。第2撮影部は、例えば、前眼部を観察する。第2撮影部は、第1撮影部とは別に設けられる。第2撮影部は、第1撮影部とは異なる。例えば、第2撮影部は、第1撮影部とは異なる位置に設けられる。
【0014】
例えば、制御部は、第2撮影部によって撮影された第2画像に対する画像処理によって被検眼と検眼部との位置関係が取得される場合、取得された位置関係に基づいて駆動部を制御することによって被検眼に対する検眼部のアライメント(位置合わせ)を行ってもよい。また、第2画像から被検眼と検眼部との位置関係が取得されなかった場合、第1画像に対する画像処理によって特定された第1画像上における被検眼の2次元位置と、第1撮影部に関する情報と、に基づいて駆動部の駆動範囲を制約してもよい。制御部は、制約された駆動範囲において被検眼を探索することによって、第2撮影部によるアライメントを効率的に行える。
【0015】
なお、制御部は、第1撮影部の位置を通り、3次元的な相対方向を方向ベクトルとする直線を求めてもよい。この場合、第2撮影部のアライメント可能領域に前述の直線の少なくとも一部が含まれるように駆動範囲を制約してもよい。例えば、制御部は、制約された駆動範囲において駆動部を制御し、第2撮影部によるアライメント可能領域に被検眼が含まれる位置に検眼部を移動させてもよい。ここで、アライメント可能領域は、例えば、第2撮影部の撮影範囲の少なくとも一部であってもよい。例えば、アライメント可能領域は、第2撮影部の撮影範囲において、撮影された前眼部画像から被検眼の3次元位置が求まる領域である。例えば、アライメント可能領域の領域内に被検眼が位置する場合、制御部は、第2撮影部によって撮影された前眼部画像から被検眼の3次元位置を取得することができる。
【0016】
なお、制御部は、第2撮影部のアライメント可能領域を前述の直線に沿って移動させるように、駆動部を制御してもよい。これによって、制御部は、第2撮影部のアライメント可能領域を被検眼の位置にスムーズに移動できる。
【0017】
なお、制御部は、第1撮影部によって新たに撮影された第1画像に基づいて駆動範囲の制約条件を更新してもよい。これによって、検眼部のアライメント中に、被検眼の移動、被検眼の視線方向の変化等が生じた場合であってもスムーズにアライメントを行える。
【0018】
なお、第1撮影部は、検眼部に設けられてもよい。この場合、第1撮影部は、駆動部によって第2撮影部とともに移動される。つまり、第1撮影部と第2撮影部の相対的な位置関係は一定となる。
【0019】
なお、本装置は、被検者の顔を支持する顔支持部(例えば、顔支持部9)をさらに備えてもよい。この場合、顔支持部と第1撮影部の相対的な位置関係は一定でとなる。
【0020】
なお、制御手段は、第1撮影部によって撮影された第1画像から被検眼の瞳孔を検出し、第1画像上における瞳孔の2次元位置と第1撮影部に関する情報とに基づいて駆動部の駆動範囲を制約してもよい。
【0021】
なお、本装置は、指標投影光学系(例えば、アライメント指標投影光学系50)をさらに備えてもよい。指標投影光学系は、例えば、被検眼の角膜にアライメント指標を投影する。この場合、制御部は、例えば、第2撮影部によって撮影された第1画像からアライメント指標の位置を検出してもよい。そして、アライメント指標の位置に基づいて、被検眼に対する検眼部のアライメントを行ってもよい。
【0022】
なお、制御部は、記憶部(例えば、記憶部74)等に記憶された眼科装置制御プログラムを眼科装置に実行させてもよい。眼科装置制御プログラムは、例えば、撮影ステップと、駆動ステップと、検眼ステップとを含む。撮影ステップは、例えば、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔を撮影部によって撮影するステップである。駆動ステップは、例えば、影ステップにおいて撮影された第1画像に対する画像処理によって特定された第1画像上における被検眼の2次元位置と撮影部に関する情報とに基づいて、被検眼に対して検眼部を3次元的に相対移動させるステップである。検眼ステップは、被検眼を検査するステップである。
【0023】
<実施例>
本開示に係る眼科装置を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、眼科装置として眼屈折力測定装置を例に説明するが、角膜曲率測定装置、眼圧測定装置、眼底カメラ、OCT(optical coherence tomography)、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)等の他の眼科装置にも適用可能である。
【0024】
本実施例の眼科装置は、例えば、被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する。例えば、本実施例の眼科装置は、片眼毎に測定を行ってもよいし、両眼同時に(両眼視で)測定を行う装置であってもよい。眼科装置は、例えば、検眼部と、撮影部と、駆動部と、制御部と、を主に備える。
【0025】
<外観>
図1に基づいて、眼科装置の外観を説明する。
図1に示すように、本実施例の眼科装置1は、検眼部2と、顔撮影部3と、駆動部4と、を主に備える。検眼部2は、被検眼を検査する。検眼部2は、例えば、被検眼の眼屈折力、角膜曲率、眼圧等を測定する光学系を備えてもよい。また、検眼部2は、被検眼の前眼部、眼底等を撮影するための光学系等を備えてもよい。本実施例では、屈折力を測定する検眼部2を例に説明する。顔撮影部3は、例えば、被検眼の顔を撮影する。顔撮影部3は、例えば、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔を撮影する。駆動部4は、例えば、検眼部2および撮影部3を基台5に対して上下左右前後方向(3次元方向)に移動させる。
【0026】
さらに、本実施例の眼科装置1は、例えば、筐体6、表示部7、操作部8、顔支持部9等を備えてもよい。例えば、筐体6は、検眼部2、顔撮影部3、駆動部4等を収納する。表示部7は、例えば、被検眼の観察画像および測定結果等を表示させる。表示部7は、例えば、装置1と一体的に設けられてもよいし、装置とは別に設けられてもよい。眼科装置1は、操作部8を備えてもよい。操作部8は、装置1の各種設定、測定開始時の操作に用いられる。操作部8には、検者による各種操作指示が入力される。例えば、操作部8は、タッチパネル、ジョイスティック、マウス、キーボード、トラックボール、ボタン等の各種ヒューマンインターフェイスであってもよい。顔支持部9は、例えば、額当て10と顎台11を備えてもよい。顎台11は、顎台駆動部12の駆動によって上下方向に移動されてもよい。
【0027】
<制御系>
図2に示すように、本装置1は制御部70を備える。制御部70は、本装置1の各種制御を司る。制御部70は、例えば、一般的なCPU(Central Processing Unit)71、フラッシュROM72、RAM73等を備える。例えば、フラッシュROM72には、眼科装置を制御するための眼科装置制御プログラム、初期値等が記憶されている。例えば、RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部70は、検眼部2、顔撮影部3、駆動部4、表示部7、操作部8、顎台駆動部12、記憶部(例えば、不揮発性メモリ)74等と接続されている。記憶部74は、例えば、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、着脱可能なUSBフラッシュメモリ等を記憶部74として使用することができる。
【0028】
<顔撮影部>
顔撮影部3は、例えば、左右の被検眼のうち少なくとも一方を含む顔を撮影する。例えば、
図3に示すように、本実施例の顔撮影部3は、例えば、被検者の顔を撮影する撮影光学系3Aを備える。撮影光学系3Aは、例えば、撮像素子3Aaと、撮像レンズ3Abを主に備える。顔撮影部3は、例えば、非テレセントリック光学系である。これによって、例えば、テレセントリックレンズ等を備えなくてもよく、構成を簡単にすることができる。また、テレセントリック光学系に比べ、撮影範囲を広くできる。
【0029】
本実施例の顔撮影部3は、駆動部4によって検眼部2とともに移動される。もちろん、顔撮影部3は、例えば、基台5に対して固定され、移動しない構成でもよい。
【0030】
なお、
図1では、顔撮影部3は検眼部2の下方に設けられているが、顔撮影部3の位置はこれに限定されない。例えば、顔撮影部3は、検眼部2の上方に設けられてもよいし、側方に設けられてもよい。もちろん、検眼部2の測定光軸と顔撮影部3の撮影光軸が同軸となるように設けられてもよい。また、顔撮影部3は、検眼部2の移動とは独立して配置されてもよい。例えば、顔撮影部3は基台5に3次元的に駆動可能に設けられ、駆動部(第1駆動部)4とは別の駆動部(第2駆動部)によって被検眼に対して3次元的に駆動されてもよい。もちろん本実施例のように検眼部2を移動させる第1駆動部と、顔撮影部3を移動させる第2駆動部が兼用されてもよい。
【0031】
<検眼部>
検眼部2は、被検眼の測定,検査,撮影などを行う。検眼部2は、例えば、被検眼の屈折力を測定する測定光学系を備えてもよい。例えば、
図3に示すように、検眼部2は、測定光学系20と、固視標呈示光学系40と、アライメント指標投影光学系50と、観察光学系(撮像光学系)60と、を備えてもよい。
【0032】
測定光学系20は、投影光学系(投光光学系)20aと、受光光学系20bと、を有している。投影光学系20aは、被検眼の瞳孔を介して眼底Efに光束を投影する。また、受光光学系20bは、瞳孔周辺部を介して眼底Efからの反射光束(眼底反射光)をリング状に取り出し、主に屈折力の測定に用いるリング状の眼底反射像を撮像する。
【0033】
投影光学系20aは、測定光源21と、リレーレンズ22と、ホールミラー23と、対物レンズ24と、を光軸L1上に有している。光源21は、リレーレンズ22から対物レンズ24、および、瞳孔中心部を介して眼底Efにスポット状の光源像を投影する。光源21は、移動機構33によって光軸L1方向に移動される。ホールミラー23には、リレーレンズ22を介した光源21からの光束を通過させる開口が設けられている。ホールミラー23は、被検眼の瞳孔と光学的に共役な位置に配置されている。
【0034】
受光光学系20bは、ホールミラー23と、対物レンズ24と、を投影光学系20aと共用する。また、受光光学系20bは、リレーレンズ26と、全反射ミラー27と、を有している。更に、受光光学系20bは、受光絞り28と、コリメータレンズ29と、リングレンズ30と、撮像素子32と、をホールミラー23の反射方向の光軸L2上に有している。撮像素子32には、エリアCCD等の二次元受光素子を用いることができる。受光絞り28、コリメータレンズ29、リングレンズ30、及び撮像素子32は、移動機構33によって、投影光学系20aの測定光源21と一体的に光軸L2方向に移動される。移動機構33によって光源21が眼底Efと光学的に共役な位置に配置される場合、受光絞り28及び撮像素子32も、眼底Efと光学的に共役な位置に配置される。
【0035】
リングレンズ30は、対物レンズ24からコリメータレンズ29を介して導かれる眼底反射光を、リング状に整形するための光学素子である。リングレンズ30は、リング状のレンズ部と、遮光部と、を有している。また、受光絞り28及び撮像素子32が、眼底Efと光学的に共役な位置に配置される場合、リングレンズ30は、被検眼の瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。撮像素子32では、リングレンズ30を介したリング状の眼底反射光(以下、リング像という)が受光される。撮像素子32は、受光したリング像の画像情報を、CPU71に出力する。その結果、CPU71では、表示部7でのリング像の表示、およびリング像に基づく屈折力の算出等が行われる。
【0036】
また、
図3に示すように、本実施例では、対物レンズ24と被検眼との間に、ダイクロイックミラー39が配置されている。ダイクロイックミラー39は、光源21から出射された光、および、光源21からの光に応じた眼底反射光を透過する。また、ダイクロイックミラー39は、後述の固視標呈示光学系40からの光束を被検眼に導く。更に、ダイクロイックミラー39は、後述のアライメント指標投影光学系50からの光の前眼部反射光を反射して、その前眼部反射光を観察光学系60に導く。
【0037】
図3に示すように、被検眼の前方には、アライメント指標投影光学系50が配置されている。アライメント指標投影光学系50は、主に、被検眼に対する光学系の位置合わせ(アライメント)に用いられる指標像を前眼部に投影する。アライメント指標投影光学系50は、リング指標投影光学系51と、指標投影光学系52と、を備える。リング指標投影光学系51は、被検者眼Eの角膜に拡散光を投影し、リング指標を投影する。リング指標投影光学系51は、本実施例の眼科装置1では、被検者眼Eの前眼部を照明する前眼部照明としても用いられる。指標投影光学系52は、被検眼の角膜に平行光を投影し、無限遠指標を投影する。
【0038】
視標呈示光学系40は、光源41、固視標42、リレーレンズ43、反射ミラー46の反射方向の光軸L4上に有している。固視標42は、他覚屈折力測定時に被検眼を固視させるために使用される。例えば、光源41によって固視標42が照明されることによって、被検眼に呈示される。
【0039】
光源41及び固視標42は、駆動機構48によって光軸L4の方向に一体的に移動される。光源41及び固視標42の移動によって、固視標の呈示位置(呈示距離)を変更してもよい。これによって、被検眼に雲霧をかけて屈折力測定を行うことができる。
【0040】
前眼撮影光学系60は、撮像レンズ61と、撮像素子62とを、ハーフミラー63の反射方向の光軸L3上に備える。撮像素子62は、被検眼の前眼部と光学的に共役な位置に配置される。撮像素子62は、リング指標投影光学系61によって照明される前眼部を撮像する。撮像素子62からの出力は、CPU71に入力される。その結果、撮像素子62によって撮像される被検眼の前眼部画像Iaが、表示部7に表示される(
図2参照)。また、撮像素子62では、アライメント指標投影光学系50によって被検眼の角膜に形成されるアライメント指標像(本実施例では、リング指標および無限遠指標)が撮像される。その結果、CPU71は、撮像素子62の撮像結果に基づいてアライメント指標像を検出できる。また、CPU71は、アライメント状態の適否を、アライメント指標像が検出される位置に基づいて判定できる。
【0041】
<制御方法>
以下、本装置1の制御動作について説明する。本装置1は、例えば、被検眼を検査するために、検眼部2と被検眼との位置合わせ(アライメント)を自動で行う。本実施例では、例えば、前眼撮影光学系60の輝点検出と顔撮影部3での眼検出を並行して行う。CPU71は、前眼部画像Ia(
図2参照)から輝点(アライメント指標)を検出した場合、その位置からアライメント位置を求めることができる。顔画像Ifから瞳孔が検出できた場合は、顔画像Ifの被検眼座標と顔撮影部3の情報(例えば、位置情報、カメラパラメータなど)から実質空間の顔撮影部3から見た被検眼の方向が分かる。本実施例ではこの2種類を利用する。前眼撮影光学系60で輝点が検出できるまでは顔画像で求めた被検眼の方向に基づいて検眼部2を移動させる。CPU71は、例えば、前眼撮影光学系60で輝点が検出できた後は、輝点に基づいてアライメントし、アライメントが完了すると測定する。
図4のフローチャートに基づいて、制御の流れを説明する。
【0042】
(S1:輝点検出)
まず、CPU71は、指標投影光学系50によって被検眼の前眼部に投影された指標(例えば、輝点)が検出できるか否か判定する。例えば、CPU71は、前眼撮影光学系60によって撮影された画像を処理することによって輝点を検出する。例えば、CPU71は、前眼撮影光学系60によって撮影された画像Iaの輝度情報を取得する。
【0043】
(S2:輝点有無判定)
続いて、CPU71は、例えば、ステップS1の検出結果に基づいて、前眼部画像Iaに輝点が有るか否か判定する。CPU71は、例えば、輝点があった場合はステップS7の処理に進み、輝点が無かった場合は、ステップS3の処理に進む。例えば、CPU71は、閾値以上の輝度が検出された場合に輝点が検出されたと判定し、閾値以上の輝度が検出されなかった場合は、輝点が検出されなかったと判定してもよい。
【0044】
(S3:瞳孔検出)
ステップS2において、輝点が検出されなかった場合、CPU71は、顔撮影部3によって撮影された被検眼を含む顔の画像を取得する。そして、CPU71は、取得した顔画像If(
図5参照)を解析し、被検眼(例えば、瞳孔)を検出する。例えば、CPU71は、顔画像のエッジを検出し、その形状などに基づいて、被検眼の瞳孔を検出してもよい。
【0045】
(S4:瞳孔有無判定)
ステップS3において、CPU71は、瞳孔が検出された場合はステップS5の処理に進み、瞳孔が検出されなかった場合はステップS1の処理に戻る。
【0046】
(S5:顔撮影部3から見た被検眼の方向導出)
ステップ4において瞳孔が検出された場合、CPU71は、顔撮影部3から見た被検眼の方向を算出する(
図5参照)。被検眼の方向は、例えば、3次元的な方向(例えば、空間ベクトル)であってもよい。まず、CPU71は、顔画像Pi上の被検眼(例えば、瞳孔)の座標P(x
e,y
e)を求める。例えば、顔画像Piの輝度、エッジ等を解析することによって、被検眼の座標を求めてもよい。
【0047】
ここで、顔撮影部3からみた被検眼の3次元座標をE=(X
e,Y
e,Z
e)とする(ただし、原点が顔撮影部3)。このとき、顔撮影部3からみた被検眼の方向は、Eの単位ベクトルE(E/|E|)である。CPU71は、例えば、この被検眼の方向Eを求める。
【0048】
被検眼が顔画像Pi上の座標P=(x
e,y
e)に投影されるとき、Eと(x
e,y
e)の関係は次式(1)で与えられる。
【0049】
【数1】
ここで、行列Jは顔撮影部3の内部パラメータ行列で、fx,fyは焦点距離、sはスキュー歪み、(c
x,c
y)は画像上の光学中心である。これらは予め顔撮影部3のキャリブレーションを行うことで取得しておく。式(1)は、展開して書き換えると、連立方程式(2)となる。
【0051】
連立方程式(2)を解いてX
e/Z
e,Y
e/Z
eを求めることで、比X
e:Y
e:Z
eがわかる。つまり、顔撮影部3から見た被検眼の方向Eが求まる。このようにして、CPU71は、顔撮影部3から見た被検眼の方向を求めてもよい。
【0052】
(S6:被検眼の方向に基づいて移動)
CPU71は、検出された被検眼の方向Eに基づいて駆動部4の駆動範囲を設定し、設定した駆動範囲において検眼部2を移動させる。例えば、CPU71は、前眼部撮影光学系60によるアライメント可能領域Aaを顔撮影部3と被検眼とを結ぶ直線K上に移動させる。ここで、アライメント可能領域Aaは、例えば、ある位置において前眼部撮影光学系60によって撮影された前眼部画像Iaから被検眼の3次元的な位置を検出できる領域である。顔撮影部3の原点Oと、前眼撮影光学系60によるアライメント可能領域Aaとの位置関係は、装置の設計上既知であるため、CPU71は、駆動部4によってアライメント可能領域Aaを直線Kに移動させることができる。例えば、CPU71は、
図6のように、アライメント可能領域Aaの領域内に直線Kが含まれるように、前眼部撮影光学系60を位置Q1から位置Q2に移動させる。ここで、位置Q2は、例えば、直線Kにおいて検眼部2による測定が可能な測定可能範囲Eaの最も原点O側の位置G1がアライメント可能領域Aaの重心と一致する位置である。なお、測定可能範囲Eaは、例えば、検眼部2の作動距離と駆動部4の駆動範囲によって定まる。
【0053】
CPU71は、例えば、前眼部撮影光学系60を位置Q2に移動させ、アライメント可能領域Aaを直線K上に位置させる。そして、CPU71は、前眼部画像Iaで輝点が検出できるか判定を行いながら、前眼部撮影光学系60をさらに直線Kに基づく方向に移動させる。例えば、
図7のように、前眼部撮影光学系60を位置Q2から位置Q3に向けて移動させてもよい。ここで、位置Q3は、例えば、測定可能範囲Eaの原点Oと最も離れた位置G2がアライメント可能領域Aaの重心と一致する位置である。
【0054】
CPU71は、例えば、アライメント可能領域Aaが直線Kの少なくとも一部を含むように、前眼部撮影光学系60を直線Kに沿う方向Eに移動させることによって、位置Q2から位置Q3に移動する間にアライメント可能領域Aaに被検眼を位置させることができる。アライメント可能領域Aaに被検眼が入った場合、CPU71は、前眼部撮影光学系60によって撮影された前眼部画像Iaから被検眼と検眼部2のアライメントを行うことができる。
【0055】
なお、検眼部2を移動させる際に、検眼部2と顔支持部9の相対距離(Z)が充分に遠い位置から移動を開始するようにしてもよい。これによって、検眼部2が被検者に衝突することを抑制できる。
【0056】
なお、前眼部撮影光学系60を位置Q1から位置Q2に移動させる場合、例えば、アライメント可能領域Aaと直線Kが最短で重なるように移動させてもよいし、全体の移動距離が短くなるように移動させてもよいし、任意の移動方向でよい。例えば、CPU71は、アライメント可能領域Aaを直線Kに垂直な方向に移動させて、最短距離でアライメント可能領域Aaを直線Kに対して移動させてもよい。
【0057】
なお、位置Q2から移動する際、アライメント可能領域Aaが直線K上の領域を含むように移動できればよく、その移動方向は直線Kに沿う方向Eとは限らない。例えば、
図8のようにアライメント可能領域Aaが測定可能範囲Eaに対してZ方向に十分広い場合、前眼部撮影光学系60を位置Q2から位置Q3にXY方向に移動させてもよい。ここで、位置Q3は、例えば、測定可能範囲Eaにおいて原点Oと離れた位置G2がアライメント可能領域Aaに含まれる位置で、Z座標はQ2と等しい位置である。
【0058】
なお、CPU71は、この被検眼の方向Eは随時更新しても良い。アライメントをする過程では、被検眼の視線が変化することがある。例えば、固視標が被検者に見えていないときは視線が定まらない。前眼部画像Ia上の瞳孔の座標(x
e,y
e)は被検眼の視線の向きによって変わり、それに伴い被検眼の方向も変わる。したがって、例えば測定開始時に求めた被検眼の方向に、測定可能状態時(固視状態)の被検眼が存在しない場合もある。そこで、CPU71は、時間変化や装置の移動に伴い被検眼の方向を更新しても良い。
【0059】
(S7:輝点でアライメント)
CPU71は、ステップS1で検出された輝点の位置に基づいて、駆動部4を制御し、検眼部2の測定光軸L1を被検眼に合わせる。
【0060】
(S8:アライメント完了判定)
アライメント駆動が完了すると、CPU71は、アライメントが完了したかどうか判定する。例えば、前眼撮影光学系60の画像から角膜反射像がアライメント許容範囲に入っているかどうか判定する。
【0061】
(S9:測定)
CPU71は、ステップS8において、アライメントが完了したと判定すると、検眼部2によって被検眼の測定を開始する。例えば、検眼部2は被検眼の眼屈折力の測定を行う。もちろん、屈折力の測定に限らず、検眼部の種類に応じた種々の測定・撮影等が実行される。
【0062】
以上のように、本実施例の眼科装置1では、顔撮影部3によって撮影された顔画像Ifから得られた被検眼の方向に基づいて検眼部2をアライメント可能領域Aaまで移動させる。これによって、例えば、顔撮影部3の撮影光学系3Aとしてテレセントリック光学系、ステレオカメラ等を用いずとも、検眼部2を被検眼に対してアライメント可能な位置まで自動で移動させることができる。
【0063】
なお、本実施例のように、測定系(例えば、検眼部2など)とは別に顔撮影部3を設ける場合、測定系に依存せずにアライメント可能な位置まで自動で検眼部2を移動させることができるため、種々の眼科装置に適用しやすい。
【0064】
なお、以上の実施例では、顔撮影部3からみた被検眼の方向を求めるとしたが、これに限らない。たとえば、CPU71は、顔撮影部3からみた目頭の方向を求めても良い。例えば、予め、目頭と瞳孔の3次元相対位置を決めておき、その情報を装置に記憶させておく。この場合、CPU71は顔画像Ifで目頭を検出し、上記と同様に目頭の方向を求める。そして、CPU71は、この目頭の方向から得られる制約条件と目頭と瞳孔の3次元相対位置より、顔撮影部3からみた被検眼の方向を求める。これを利用し、CPU71は、上記のようなアライメントを行ってもよい。目頭は視線変動による位置変化が小さいため、視線変動が生じても安定した方向に検眼部2を移動できる。
【0065】
なお、CPU1は、顔撮影部3によって左右の被検眼の両方が写った顔画像Ifを取得してもよい。この場合、CPU71は、顔撮影部3からみた左右の被検眼の両方の方向を算出し、記憶部74などに記憶させてもよい。そして、一方の被検眼の測定が完了し、他方の被検眼にアライメントを行う際に、測定が完了した被検眼の位置と、顔撮影部3からみた他方の被検眼の方向に基づいて、左右眼の切り換えを行ってもよい。例えば、CPU71は、一方の被検眼を測定した位置から、他方の被検眼が存在する直線に向けて検眼部2を移動させてもよい。これによって、左右眼の切り換えをスムーズに行うことができる。
【0066】
なお、画像から被検眼を検出する方法としては、例えば、赤外撮影による瞳孔検出、輝度値のエッジ検出等の種々の画像処理方法が挙げられる。例えば、被検者の顔を赤外撮影した場合、肌は白く写り、瞳孔は黒く写る。したがって、CPU71は、赤外撮影によって得られた赤外画像から丸くて黒い(輝度の低い)部分を瞳孔として検出してもよい。上記のような方法を用いて、CPU71は、顔画像Ifから被検眼を検出し、その2次元位置情報を取得する。
【0067】
なお、本実施例では、前眼撮影光学系60によって撮影された前眼部画像Iaにおいて、アライメント指標を検出することによって最終的なアライメントを行うものとしてが、これに限らない。例えば、CPU71は、前眼部画像Iaの瞳孔位置、コントラスト、エッジ等から最終的なアライメントを行ってもよい。