特許第6634916号(P6634916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6634916
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】管状物のチャック方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/86 20060101AFI20200109BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   B65G47/86 B
   B25J15/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-60950(P2016-60950)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-171475(P2017-171475A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 肇
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特公平07−074082(JP,B2)
【文献】 特公昭56−005063(JP,B2)
【文献】 特開平07−014509(JP,A)
【文献】 実開昭62−136021(JP,U)
【文献】 特開昭60−009692(JP,A)
【文献】 特開2002−018761(JP,A)
【文献】 特開2011−212826(JP,A)
【文献】 特開昭56−091996(JP,A)
【文献】 米国特許第04350381(US,A)
【文献】 実開昭48−038578(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/86
B25J 15/08
C03B 35/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直立姿勢の管状物を保持するための管状物のチャック方法であって、
前記管状物の軸心と平行な平面を有する第一当接部と、
前記軸心に沿って円弧状に湾曲しつつ前記管状物に向かって膨出する曲面を有する第二当接部と、
により前記管状物を水平方向に挟持する、
ことを特徴とする管状物のチャック方法。
【請求項2】
前記第一当接部は、
水平方向に延出する第一アームにおいて、
その延出方向の一方の端部に設けられるとともに、
前記延出方向に対して平行な第一平面部と、
前記延出方向に対して直交し、且つ前記第一平面部と前記延出方向の他方の端部にて連結する第二平面部と、
により構成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の管状物のチャック方法。
【請求項3】
前記第二当接部は、
水平方向に延出しつつ前記第一アームと平行に配置される第二アームにおいて、
その延出方向の一方の端部に前記第一当接部と対向して設けられるとともに、
前記延出方向の一方に向かって徐々に前記第一アーム側に傾斜するように構成される、
ことを特徴とする、請求項2に記載の管状物のチャック方法。
【請求項4】
前記第二アームにはカム機構が備えられ、
該カム機構によって前記第二アームを可動させることにより、
前記第二当接部が前記第一当接部に対して近接離間する、
ことを特徴とする、請求項3に記載の管状物のチャック方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状物のチャック方法の技術に関し、より詳しくは、例えばリードスイッチやトランスポンダなどの用途に用いられる管ガラスの生産ラインにおいて、直立姿勢の管ガラスをチャック(挟持)して保持する際に、その姿勢精度を容易に確保することが可能な管状物のチャック方法の技術を提供する。
【背景技術】
【0002】
例えば管状物の一例として、リードスイッチやトランスポンダなどの電子部品に用いられる管ガラスの生産ラインにおいては、管ガラスの端部の封止を行う封止工程が設けられている。
前記封止工程は一般的に、複数の管ガラスを順に移送するインデックステーブルや、レーザー等の溶接機などにより構成されている。
そして、インデックステーブルには複数のチャック装置が備えられ、これらのチャック装置によって複数の管ガラスは直立姿勢で保持される。また、直立姿勢で保持された複数の管ガラスは、溶接機が配置された所定位置へと順次運ばれて一旦停止し、封止や検査が行われる。
【0003】
ここで、レーザー溶接によって管ガラスの端部を封止する場合、レーザー溶接機より溶射されるレーザー光に対して管ガラスの停止精度および姿勢精度を確保することは、管ガラスの品質向上を図るためにも重要である。
この点、管ガラスの停止精度については、従来から、例えばサーボモータ等のような高精度な位置決めを可能とするアクチュエータをインデックステーブルの駆動機構として用いることで、確保することが可能であった。
【0004】
しかしながら、管ガラスの姿勢精度については、従来のインデックステーブルに備えられるチャック装置では常に高度な姿勢精度を確保することが困難であった。
具体的には、従来のチャック装置は、管ガラスの軸心と平行な平面部を有する固定アーム、および該軸心に沿って延出しつつ該平面部と対向するV溝部を有する可動アームなどを有して構成されており、これらの固定アームおよび可動アームによって予め直立姿勢で待機された管ガラスを挟持することにより、当該管ガラスの直立姿勢が保持される構成となっていた。
従って、これらの固定アームおよび可動アームによって管ガラスを挟持する最中において、例えば不意に当該管ガラスの直立姿勢が崩れて傾いたとしても、固定アームの平面部、および可動アームのV溝部からなる三箇所の平面によって、前記管ガラスは傾いた状態のまま挟持されることとなり、結果的に高度な姿勢精度を確保することは困難であった。
【0005】
そこで、このような問題を解決するための技術が「特許文献1」によって開示されている。
即ち、前記「特許文献1」においては、自転車用傘立てに関する技術であるが、補助アームの他端に、可動杆の一端を上下に回動可能に取付け、その可動杆の他端には、対の挟み板の中ほどを上下方向の支軸によりヒンジ結合するとともに、その両挟み板に内接させたバネにより挟み板の一端把持部が引離された状態となる傘把持部材を、前後方向に回動可能に取付けることを特徴とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭63−189891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記「特許文献1」における自転車用傘立てに関する技術を応用し、例えば管ガラスの軸心方向視にて円弧状に湾曲する曲面部を有する固定アーム、および該軸心に沿って延出しつつ該曲面部と対向するV溝部を有する可動アームなどによってチャック装置を構成することとすれば、これらの固定アームおよび可動アームによって待機中の管ガラスを挟持する最中において、たとえ当該管ガラスの直立姿勢が崩れて待機位置がずれていたとしても、前記管ガラスの位置は固定アームの曲面部によって規制され、正規の待機位置に案内されることとなる。
【0008】
しかしながら、このような固定アームの曲面部、および可動アームのV溝部によって管ガラスを挟持したとしても、固定アームの曲面部によって管ガラスの直立姿勢を補正することは困難であり、当該管ガラスは従来と同じく傾いた状態のまま挟持されることとなり、高度な姿勢精度を確保することは困難であった。
【0009】
本発明は、以上に示した現状の問題点を鑑みてなされたものであり、直立姿勢の管状物を挟持する際の姿勢精度の向上を図ることができる管状物のチャック方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、本発明に係る管状物のチャック方法は、直立姿勢の管状物を保持するための管状物のチャック方法であって、前記管状物の軸心と平行な平面を有する第一当接部と、前記軸心に沿って円弧状に湾曲しつつ前記管状物に向かって膨出する曲面を有する第二当接部と、により前記管状物を水平方向に挟持することを特徴とする。
このような構成からなる第一当接部および第二当接部によって管状物が挟持される場合、当該管状物は、第一当接部と線接触するとともに、第二当接部と膨出端部にて点接触した状態となる。
従って、例え不意に管状物の直立姿勢が崩れて傾いたとしても、第一当接部および第二当接部によって当該管状物が挟持されるのに従って、前記管状物は、第二当接部上の点接触する箇所を支点として揺らされながら、徐々に正規の直立姿勢に立て直されることとなり、直立姿勢の管状物を挟持する際の姿勢精度の向上を図ることができる。また、円弧状に湾曲しつつ前記管状物に向かって膨出する曲面を有するため、管状物に傷が付着するのを低減させることができる。
【0012】
また、本発明に係る管状物のチャック方法において、前記第一当接部は、水平方向に延出する第一アームにおいて、その延出方向の一方の端部に設けられるとともに、前記延出方向に対して平行な第一平面部と、前記延出方向に対して直交し、且つ前記第一平面部と前記延出方向の他方の端部にて連結する第二平面部と、により構成されることが好ましい。
このように、水平方向に延出する第一アームの一端部において、第一平面部および第二平面部からなる平面視「L」字状の切欠きによって第一当接部を構成することとすれば、例えば、前記延出方向に向かって第一当接部より管状物を着脱させる場合であっても、当該管状物の妨げとなる部位が存在せず、スムーズに着脱作業を行うことができる。
【0013】
また、本発明に係る管状物のチャック方法において、前記第二当接部は、水平方向に延出しつつ前記第一アームと平行に配置される第二アームにおいて、その延出方向の一方の端部に前記第一当接部と対向して設けられるとともに、前記延出方向の一方に向かって徐々に前記第一アーム側に傾斜するように構成されることが好ましい。
このように、水平方向に延出する第二アームの一端部において、前記延出方向の一方に向かって徐々に前記第一アーム側に傾斜するように第二当接部を構成することとすれば、第一当接部および第二当接部によって管状物挟持する際、当該管状物が第二当接部によって前方から覆われるようにして保持されることとなり、脱落等発生することなく、安定して管状物を挟持することができる。
【0014】
また、本発明に係る管状物のチャック方法において、前記第二アームにはカム機構が備えられ、該カム機構によって前記第二アームを可動させることにより、前記第二当接部が前記第一当接部に対して近接離間することが好ましい。
このような構成を有することにより、例えば、平面からなる第一当接部を可動させることなく、曲面からなる第二当接部のみを可動させて管状物を挟持させることが可能となるため、第一当接部の平面に当接させて管状物の位置決めを行った後に、第二当接部を可動させて管状物を挟持させることで、直立姿勢の管状物を挟持する際の姿勢精度をより確実に向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明に係る管状物のチャック方法によれば、直立姿勢の管状物を挟持する際の姿勢精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】管ガラスの生産ラインにおいて、封止作業を行う際の各々の工程を経時的に示した工程系統図。
図2】本発明の一実施形態に係るチャック装置の全体的な構成を示した図であって、(a)はその平面図、(b)は(a)の矢視A方向に見た側面図、(c)は(a)の矢視B方向に見た正面図。
図3】チャック装置における挟持アームの先端部近傍を示した図であって、(a)は管ガラスを保持した状態を示した平面図、(b)は(a)の矢視C方向に見た断面図、(c)は管ガラスを着脱する際の状態を示した平面図。
図4】従来のチャック装置における挟持アームの先端部の構成を示した図であって、(a)はその平面図、(b)は(a)の矢視D方向に見た断面図、(c)は(a)の矢視E方向に見た断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、図1乃至図4を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、図2乃至図4に示した矢印の方向によって、チャック装置1または従来のチャック装置201の上下方向、前後方向、左右方向を規定して記述する。
【0018】
[封止工程]
先ず、後述するチャック装置1(図2を参照)を用いて管ガラスGの封止加工を行うための、封止工程S100の全体的な流れについて、図1を用いて説明する。
本実施形態における封止工程S100は、例えばリードスイッチやトランスポンダなどの電子部品に用いられる、管状物の一例としての管ガラスGの生産ラインにおいて、管ガラスGの端部の封止を実施するための工程である。
【0019】
ここで、本実施形態において取扱われる管ガラスGは、例えば直径が5[mm]程度であり、且つ全長が10〜50[mm]程度である小型サイズのものである。
そして、このような小型サイズの管ガラスGに対して、後述するチャック装置1によれば、挟持される際の管ガラスの姿勢を崩すことなく、高度な姿勢精度を確保することが可能であることから、封止加工が行われた後の管ガラスの品質向上を図ることができる。
【0020】
封止工程S100は、主に取出し工程S101、第一移送工程S102、起立工程S103、封止・検査工程S104、傾倒工程S105、第二移送工程S106、および保管工程S107により構成される。
【0021】
取出し工程S101は、保管ラック110内に保管された管ガラスGの取出しを行う工程である。
ここで、封止工程S100の前段階において、溶融ガラスより管状に形成された複数の管ガラスG・G・・・は、保管ラック110によって一時的に保管される。
この際、これらの管ガラスG・G・・・は、保管ラック110内にて、互いに水平方向に平行に近接して配置されるとともに、垂直方向に平行且つ千鳥状にずらして積上げられた状態にて保管される。
【0022】
そして、取出し工程S101には、図示せぬ取出し装置が設けられており、当該取出し装置に備えられる吸着パッドを介して、複数の管ガラスG・G・・・は、保管ラック110内の最上段に位置するものから順にまとめて取出され、次工程の移送工程S102へと搬出される。
【0023】
次に、第一移送工程S102について説明する。
第一移送工程S102は、取出し工程S101において保管ラック110より取出された複数の管ガラスG・G・・・を、次工程の起立工程S103へと移送する工程である。
第一移送工程S102には、例えば、図示せぬターンテーブルが設けられており、当該ターンテーブル上には、複数(本実施形態においては二個)の載置プレート120・120が配設されている。
【0024】
そして、保管ラック110より取出された複数の管ガラスG・G・・・は、互いに水平方向に平行な状態にて載置プレート120上に載置され、このような状態において、ターンテーブル(図示せず)が所定角度だけ回転することにより、これらの管ガラスG・G・・・が、次工程の起立工程S103へと移送される。
【0025】
次に、起立工程S103について説明する。
起立工程S103は、第一移送工程S102によって移送されて受け渡された、水平姿勢の管ガラスGを、直立姿勢に起立させる工程である。
起立工程S103には、起立装置130が設けられる。
【0026】
起立装置130は、例えば、一方に延出するアーム部131、アーム部131の延出方向中央部にて直交方向に貫設される回動軸132、およびアーム部131の双方の延出端部に配設される吸着部133・133などにより構成される。
【0027】
吸着部133は、管ガラスGを一本毎に吸着して保持するための部位である。
ここで、一方の吸着部133によって保持される管ガラスGの軸心と、他方の吸着部133によって保持される管ガラスGの軸心とは、互いに直角方向に交差するように構成されている。
また、これらの管ガラスG・Gの軸心は、回動軸132の軸心に対してともに45°にて交差するように構成されている。
【0028】
このような構成からなる起立装置130は、仮想水平面に対して回転軸132の軸心が45°傾倒した状態にて配設される。
そして、最下位置において、水平姿勢の状態にて吸着部133に保持された管ガラスGは、回転軸132を中心にして当該吸着部133が回動するに従い、徐々に上方へと移動されるとともに起立され、最上位置において直立姿勢の状態となって、次工程の封止・検査工程S104へと受け渡される。
【0029】
次に、封止・検査工程S104について説明する。
封止・検査工程S104は、管ガラスGの端部の封止を行うとともに、封止された管ガラスGの品質検査を行う工程である。
封止・検査工程S104には、円盤形状のインデックステーブル140、インデックステーブル140の外縁部に沿って等間隔に配設される複数の後述するチャック装置1・1・・・(図2を参照)、およびインデックステーブル140の外縁部の下方に位置するレーザー溶接機141などが設けられる。
【0030】
そして、起立工程S103において、直立姿勢に起立された管ガラスGは、起立装置130よりチャック装置1へと順に受け渡され、当該チャック装置1によって直立姿勢のまま保持される。
チャック装置1によって保持された管ガラスGは、インデックステーブル140によってインデックス送りされ、レーザー溶接機141が配置される所定位置へと運ばれる。
【0031】
そして、所定位置に到達した管ガラスGは、レーザー溶接機141によってレーザー溶接されることにより端部を封止される。
その後、任意の位置に設けられた検査位置において、例えば図示せぬ画像解析装置等を用いて、封止された管ガラスGの品質検査が行われ、次工程の傾倒工程S105へと受け渡される。
【0032】
次に、傾倒工程S105について説明する。
傾倒工程S105は、封止・検査工程S104より受け渡された直立姿勢の管ガラスGを、水平姿勢に傾倒させる工程である。
傾倒工程S105には、傾倒装置150が設けられる。
【0033】
傾倒装置150は、前述した起立装置130と同一構造からなり、仮想水平面に対して回動軸152の軸心が45°傾倒した状態にて配設される。
そして、最上位置において、直立姿勢の状態にて吸着部153に保持された管ガラスGは、回動軸152を中心にして当該吸着部153が回動するに従い、徐々に下方へと移動されるとともに傾倒され、最下位置において水平姿勢の状態となって、次工程の第二移送工程S106へと受け渡される。
【0034】
次に、第二移送工程S106について説明する
第二移送工程S106は、傾倒工程S105において水平姿勢に傾倒された管ガラスGを次工程の保管工程S107へと移送する工程である。
第二移送工程S106には、前述した第一移送工程S102と同様に、例えば、図示せぬターンテーブルが設けられており、当該ターンテーブル上には、複数(本実施形態においては二個)の載置プレート160・160が配設されている。
【0035】
そして、傾倒工程S105より順に受け渡される複数の管ガラスG・G・・・は、互いに水平方向に平行な状態にて載置プレート160上に載置され、当該載置プレート160上の管ガラスG・G・・・の個数が所定数に到達すると、ターンテーブル(図示せず)が所定角度だけ回転し、これらの管ガラスG・G・・・が、次工程の保管工程S107へと移送される。
【0036】
次に、保管工程について説明する。
保管工程S107は、第二移送工程S106によって移送されて受け渡された、端部の封止加工の行われた管ガラスGを、新たな保管ラック170内に保管する工程である。
保管工程S107には、前述した取出し工程S101と同様に、図示せぬ取出し装置が設けられており、当該取出し装置に備えられる吸着パッドを介して、端部の封止加工の行われた複数の管ガラスG・G・・・は、第二移送工程S106における載置プレート160よりまとめて取出され、保管ラック170内の最下段より順に載置され積上げられる。
【0037】
以上のような複数の工程S101乃至S107からなる封止工程S100によって、管ガラスGの端部の封止加工がおこなわれる。
【0038】
[チャック装置1]
次に、本発明に係る管状物のチャック方法を具現化するチャック装置1の構成について、図2乃至図4を用いて説明する。
本実施形態におけるチャック装置1は、例えば前述したように、封止・検査工程S104に設けられるインデックステーブル140の外縁部に配設され、管ガラスGを直立姿勢の状態にて挟持し、保持するためのものである。
【0039】
チャック装置1は、図2(a)に示すようにベースプレート10を備え、ベースプレート10の上面には第一アームの一例としての固定アーム20、第二アームの一例としての可動アーム30、付勢機構部40、およびカム機構部50などが配設される。
【0040】
固定アーム20は、後述する可動アーム30とともに管ガラスGを挟持して、当該管ガラスGを直立姿勢の状態にて保持するためのものである。
固定アーム20は、略矩形状の板状部材により構成される。
また、固定アーム20は、例えばベースプレート10の上面において、前後方向に延出しつつ、一方の延出端部(本実施形態においては前端部)がベースプレート10の縁部より外部にはみ出すようにして配置され、ボルト等を介して当該ベースプレート10に着脱可能に固設される。
【0041】
そして後述するように、固定アーム20の前端部には切欠き状の第一当接部20aが形成されており、当該第一当接部20aを介して、固定アーム20は管ガラスGを挟持する。
【0042】
次に、可動アーム30について説明する。
可動アーム30は、前述した固定アーム20とともに管ガラスGを挟持して、当該管ガラスGを直立姿勢の状態にて保持するためのものである。
可動アーム30は、略矩形状の板状部材により構成される。
【0043】
可動アーム30は、固定アーム20と平行に配置され、例えば固定アーム20と左右方向(固定アーム20の延出方向に対する平面視直交方向)に対向して配置される。
より具体的には、可動アーム30は、ベースプレート10の上面であって固定アーム20の左側において、前後方向に延出しつつ、一方の延出端部(前端部)がベースプレート10の縁部より外部にはみ出すとともに、その前端部が固定アーム20の前端部と対向するようにして配置される。
【0044】
そして、可動アーム30の延出方向(前後方向)の中央部には、回動軸31が図示せぬ軸受等を介して貫設されている。
これにより、可動アーム30は、ベースプレート10に対して回動軸31を中心にして水平方向に回動可能に支持される。
【0045】
ところで、水平方向(本実施形態においては、前後方向)に延出する可動アーム30において、その延出方向(前後方向)の一方の端部(本実施形態においては、前端部)には、第二当接部30aが設けられる。
前記第二当接部30aは、可動アーム30の前端部において、固定アーム20側(右側)の側面に形成される。
【0046】
第二当接部30aは、図2(c)に示すように、面視(または側面視)において、管ガラスGの軸心に沿って円弧状に湾曲しつつ当該管ガラスGに向かって膨出する曲面、即ち上下方向中央部にて最も膨出する円弧状の曲面として形成される。
また、第二当接部30aは、図2(a)に示すように、可動アーム30の延出方向(前後方向)の一方(前方)に向かって徐々に固定アーム20側(右側)に傾斜するように構成される。
【0047】
一方、図2(a)に示すように、水平方向(本実施形態においては、前後方向)に延出しつつ可動アーム30と平行に配置される固定アーム20において、その延出方向(前後方向)の一方の端部(本実施形態においては、前端部)には、第一当接部20aが、第二当接部30aと対向して設けられる。
前記第一当接部20aは、固定アーム20の前端部において、可動アーム30側(左側)の側面に形成される。
【0048】
第一当接部20aは、管ガラスGの軸心と平行な平面を有して構成される。
具体的には、第一当接部20aは、平面視にて前方に開口する「L」字状の切欠きによって構成され、図2(b)に示すように、固定アーム20の延出方向(前後方向)に対して平行な第一平面部の一例としての第一垂直面20a1と、前記延出方向(前後方向)に対して直交し、且つ第一垂直面20a1と前記延出方向(前後方向)の他方の端部(本実施形態においては、後端部)にて連結する第二平面部の一例としての第二垂直面20a2とにより構成される。
【0049】
このように、本実施形態において、固定アーム20および可動アーム30の前端部には第一当接部20aおよび第二当接部30aが各々形成されており、これらの第一当接部20aおよび第二当接部30aを介して、管ガラスGは、固定アーム20および可動アーム30によって挟持される。
つまり、管ガラスGは、第一当接部20aおよび第二当接部30aによって、水平方向に挟持される。
【0050】
このような構成からなるチャック装置1において、図3(a)に示すように、固定アーム20および可動アーム30によって管ガラスGが挟持される場合、当該管ガラスGは、第一当接部20aに対して、接触箇所T1にて第一垂直面20a1と線接触し、且つ接触箇所T2にて第二垂直面20a2と線接触した状態となる。
また同時に、図3(a)および図3(b)に示すように、管ガラスGは、接触箇所T3にて第二当接部30aの膨出端部と点接触した状態となる。
【0051】
その結果、本実施形態におけるチャック装置1においては、可動アーム30における管ガラスGとの接触状態を点接触とすることにより、直立姿勢の管ガラスGを挟持する際の姿勢精度の向上を図ることができる。また、第二当接部30aが円弧状に湾曲しつつ前記管状物に向かって膨出する曲面を有するため、管状物に傷が付着するのを低減させることができる。
【0052】
具体的には、図4(a)に示すように、例えば従来のチャック装置201において、可動アーム230の一端部(本実施形態においては前端部)には、第三当接部230aが形成されている。
第三当接部230aは、可動アーム230の前端部において、固定アーム220側(本実施形態においては右側)の側面に形成される。
【0053】
また、第三当接部230aは、平面視にて右方に開口するV溝によって構成される。
より具体的には、第三当接部230aは、前方に向かって徐々に固定アーム220側(右側)に傾斜する第三垂直面230a1、および後方に向かって徐々に固定アーム220側(右側)に傾斜する第四垂直面230a2により構成される。
【0054】
一方、固定アーム220の前端部には、特段当接部等が形成されておらず、固定アーム220の延出方向(前後方向)と平行に設けられる垂直面が存在するのみである。
【0055】
このような構成からなる従来のチャック装置201において、固定アーム220および可動アーム230によって管ガラスGが挟持される場合、当該管ガラスGは、図4(a)および図4(b)に示すように、接触箇所T4にて固定アーム220の前端部と線接触した状態となる。
また同時に、図4(a)および図4(c)に示すように、管ガラスGは、接触箇所T5および接触箇所T6にて、第三当接部230aの第三垂直面230a1および第四垂直面230a2と各々線接触した状態となる。
【0056】
従って、従来のチャック装置201においては、これらの固定アーム220および可動アーム230によって待機中の管ガラスGを挟持する際、例えば不意に当該管ガラスGの直立姿勢が崩れて傾いた場合、固定アーム220の前端部の垂直面、および可動アーム230の第三当接部230aからなる三箇所の平面部によって、前記管ガラスGは傾いた状態(例えば、図4中に示した管ガラスGaの状態)のまま挟持されることとなり、結果的に高度な姿勢精度を確保することは困難であった。
【0057】
これに対して、本実施形態におけるチャック装置1においては、前述したように、可動アーム30における管ガラスGとの接触状態が、点接触となるように構成されていることから、例え不意に管ガラスGの直立姿勢が崩れて傾いたとしても、可動アーム30が挟持方向(可動アーム30の第二当接部30aが、固定アーム20の第一当接部20aに近接する方向)に回動するのに従って、管ガラスGは、第二当接部30a上の接触箇所T3を支点として揺らされながら、徐々に正規の直立姿勢に立て直されることとなり、直立姿勢の管ガラスGを挟持する際の姿勢精度の向上を図ることができる。
【0058】
ところで、前述したように、本実施形態においては、固定アーム20の第一当接部20aを平面視「L」字状の切欠きによって構成することとしているが、これに限定されることはなく、例えば従来のようなV溝によって構成することとしてもよい。
但し、図3(c)に示すように、平面視「L」字状の切欠きによって第一当接部20aを構成することとすれば、チャック装置1に対して管ガラスGを着脱する際において、当該管ガラスGの妨げとなる部位が存在せず、スムーズに着脱作業を行うことができるため、より好ましい。
【0059】
また、前述したように、本実施形態においては、可動アーム30の第二当接部30aを前方に向かって徐々に固定アーム20側(右側)に傾斜するように構成しているが、これにより固定アームおよび可動アームによって管ガラスGを挟持する際、当該管ガラスGは第二当接部30aによって前方から覆われるようにして保持されることとなり、脱落等発生することなく、安定して管ガラスGを挟持することができる。
【0060】
次に、付勢機構部40について説明する。
付勢機構部40は、可動アーム30の第二当接部30aが、固定アーム20の第一当接部20aに対して近接する方向(挟持方向)に向かって、常に可動アーム30を付勢するためのものである。
付勢機構部40は、図2(a)に示すように、例えば市販の圧縮コイルバネ41、および当該圧縮コイルバネ41の一端部を固定する固定金具42などにより構成される。
【0061】
固定アーム20の後端部において、その可動アーム30側(本実施形態においては左側)の側面には、第一軸穴20bが、左右方向(固定アーム20および可動アーム30の対向方向)に延出するようにして形成される。
また、可動アーム30の後端部において、その固定アーム20側(本実施形態においては右側)の側面には、第二軸穴30bが、前記第一軸穴20bと同軸上に延出するようにして形成される。
【0062】
そして、これらの第一軸穴20bおよび第二軸穴30bに対して、圧縮コイルバネ41は、同軸上に内挿される。
また、圧縮コイルバネ41は、固定金具42によって右側の端部を固定アーム20に固定される。
【0063】
このような構成からなる付勢機構部40によって、可動アーム30の後端部は、固定アーム20との離間方向(本実施形態においては左方)に向かって常に付勢された状態となっている。
その結果、可動アーム30は、付勢機構部40によって、常に回動軸31を中心として時計回り方向に回動するように付勢されることとなり、可動アーム30の第二当接部30aと、固定アーム20の第一当接部20aとが近接した状態(挟持状態)が維持される。
【0064】
次に、カム機構部50について説明する。
カム機構部50は、可動アーム30の第二当接部30aが、固定アーム20の第一当接部20aに対して離間する方向(離間方向)に向かって可動アーム30を可動させるためのものである。
カム機構部50は、例えば、可動アーム30に対して固定アーム20側との反対側(本実施形態においては、左側)の後方に配置されるカム板51を備え、当該カム板51は、軸心Zを中心として水平方向に回動可能に構成される。
【0065】
そして、軸心Zを中心としてカム板51が可動アーム30側(右側)へと回動し、当該カム板51が可動アーム30の後端部と左方より当接することにより、可動アーム30は、付勢機構部40の付勢力に抗して、回動軸31を中心として反時計回り方向に回動されることとなり、可動アーム30の第二当接部30aと、固定アーム20の第一当接部20aとが離間した状態(離間状態)となる。
【0066】
一方、軸心Zを中心としてカム板51が可動アーム30側との反対側(左側)へと回動し、当該カム板51が可動アーム30の後端部と離間することにより、可動アーム30は、カム板51による規制から開放され、再び付勢機構部40による付勢力によって、可動アーム30の第二当接部30aと、固定アーム20の第一当接部20aとが離間した状態(離間状態)となる。
【0067】
このように、本実施形態において、可動アーム30にはカム機構部50が備えられ、当該カム機構部50によって可動アーム30を可動させることにより、第二当接部30aが第一当接部20aに対して近接離間するように構成されている。
その結果、例えば、第一垂直面20a1や第二垂直面20a2などの平面からなる第一当接部20aを可動させることなく、曲面からなる第二当接部30aのみを可動させて管ガラスGを挟持させることが可能となるため、第一当接部20aの平面に当接させて管ガラスGの位置決めを行った後に、第二当接部30aを可動させて管ガラスGを挟持させることで、直立姿勢の管ガラスGを挟持する際の姿勢精度をより確実に向上させることができる。
【符号の説明】
【0068】
20 固定アーム(第一アーム)
20a 第一当接部
20a1 第一垂直面(第一平面部)
20a2 第二垂直面(第二平面部)
30 可動アーム(第二アーム)
30a 第二当接部
50 カム機構部
G 管ガラス(管状物)
図1
図2
図3
図4