【実施例】
【0081】
以下、実施例に基づき本発明に係る電子デバイスに用いる感放射線性組成物を詳述するが、この実施例に限定的して解釈されるものではない。
【0082】
[GPC分析]
重合体(A)および重合体(PA)の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー(株)製、商品名:HLC−8220)法を用いて、テトラヒドロフラン(THF)溶媒の条件下、ポリスチレン換算で測定した。
【0083】
[
1H−NMRの測定]
1H−NMRは、核磁気共鳴装置(Bruker製 AVANCEIII AV400N)で25℃、CDCL3で測定した。
【0084】
本実施例では、上述した本発明に係る電子デバイスに用いられる感放射線性組成物に含まれる[A]酸解離性基を有する化合物の例である重合体(以下、[A]重合体という。)を合成した。
【0085】
<[A]重合体の合成>
[合成例1]
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)8質量部、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン2質量部、および、ジエチレングリコールジメチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸2−ヒドロキシエチル42質量部、メタクリル酸ベンジル58質量部を仕込み、窒素雰囲気下、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を4時間保持して重合することにより、共重合体である重合体(A−1)を含有する溶液を得た(固形分濃度=34.6質量%、Mw=26000、Mw/Mn=2.2)。尚、固形分濃度は共重合体溶液の全質量に占める共重合体質量の割合を意味する。
【0086】
次いで、得られた重合体(A−1)を含む溶液10質量部に、ジエチレングリコールジメチルエーテル13質量部、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−ビニルオキシオクタン4.8質量部を加え、十分に攪拌した後、トリフルオロ酢酸0.27質量部を加え、窒素雰囲気下、80℃で9時間反応させた。続いて反応溶液を室温まで冷却し、ピリジン0.3質量部を加え反応をクエンチした。得られた反応溶液を大過剰のメタノールに滴下することにより再沈殿精製を行い、続いて10質量部のジエチレングリコールジメチルエーテルに溶解させた後、大過剰のヘキサンに滴下することにより再沈殿精製を行い、乾燥後、白色固形状の共重合体として[A]重合体(P−1)が6.8質量部得られた。得られた[A]重合体(P−1)について1H−NMRを用いて分析を行い、アセタール化が進行していることを確認した(化学シフト:4.80ppm、アセタール基C−H)。
【0087】
[合成例2]
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)8質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)2質量部、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸2−ヒドロキシエチル75質量部、メタクリル酸ベンジル25質量部を仕込み、窒素置換した後、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を4時間保持して重合することにより、共重合体である重合体(A−2)を含有する溶液を得た。得られた溶液を大過剰のヘキサンに滴下し、乾燥後、白色固体状の重合体(A−2)を得た(Mw=28000、Mw/Mn=2.3)。
【0088】
次いで重合体(A−2)5質量部をテトラヒドロフラン42gに溶解させ、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−ビニルオキシオクタン12.4質量部を加え、十分に攪拌した後にトリフルオロ酢酸0.66質量部を加え、窒素雰囲気下、80℃で9時間反応させた。続いて反応溶液を室温まで冷却し、ピリジン0.7質量部を加え反応をクエンチした。得られた反応溶液を過剰量のメタノールに滴下することにより再沈殿精製を行い、続いて再度15質量部のジエチレングリコールジメチルエーテルに溶解させた後、ヘキサンに滴下することにより再沈殿精製を行い、白色固形状の共重合体として[A]重合体(P−2)が11.0質量部得られた。得られた[A]重合体(P−2)について1H−NMRを用いて分析を行い、アセタール化が進行していることを確認した(化学シフト:4.80ppm、アセタール基C−H)。
【0089】
[合成例3]
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)8質量部、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン2質量部、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸30質量部、メタクリル酸ベンジル70質量部を仕込み、窒素置換した後、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を4時間保持して重合することにより、共重合体である重合体(A−3)を含有する溶液を得た。得られた溶液を大過剰のヘキサンに滴下し、乾燥後、白色固体状の重合体(A−3)を得た(Mw=24000、Mw/Mn=2.2)。
【0090】
次いで、重合体(A−3)5質量部をジエチレングリコールジメチルエーテル34質量部に溶かし、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロ−1−ビニルオキシデカン9.4質量部を加え、十分に攪拌した後にパラトルエンスルホン酸ピリジニウム0.09質量部を加え、窒素雰囲気下、80℃で5時間反応させた。続いて反応溶液を室温まで冷却し、ピリジン0.04質量部を加え反応をクエンチした。得られた反応溶液を過剰量のメタノールに滴下することにより再沈殿精製を行い、続いて再度15質量部のジエチレングリコールジメチルエーテルに溶解させた後、ヘキサンに滴下することにより再沈殿精製を行い、白色固形状の共重合体として[A]重合体(P−3)が10.9質量部得られた。得られた[A]重合体(P−3)について1H−NMRを用いて分析を行い、アセタール化が進行していることを確認した(化学シフト:5.74ppm、アセタール基C−H)。
【0091】
<感放射線性組成物の調製>
実施例および比較例で用いた各成分の詳細を以下に示す。
【0092】
<[C]酸発生剤>
C−1:N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンスルホン酸エステル
C−2:4,7−ジ−n−ブトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウム トリフルオロメタンスルホネート
【0093】
<[D]増感剤>
D−1:2−イソプロピルチオキサントン
【0094】
<[E]クエンチャー>
E−1:2−フェニルベンゾイミダゾール
【0095】
<[F]重合性化合物>
F−1:フェノールノボラック型エポキシ樹脂
【0096】
<[G]感放射線性重合開始剤>
G−1:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア(登録商標)907、BASF社製)
【0097】
〔凹パターンを有する基材の製造方法〕
感放射線性組成物を用いた凹パターンを有する基材の製造方法は、下記の(i)〜(iii)
の工程を含み、現像工程を含まないことを特徴とする。
(i) 酸解離性基を有する化合物および酸発生剤を含む感放射線性組成物を基板に塗
布し、塗膜を形成する工程、
(ii) 前記塗膜の所定部分に放射線照射を行う工程、
(iii) 前記放射線照射後の塗膜を加熱する工程
【0098】
上述の(i)〜(ii)の工程(以下、工程(i)および工程(ii)ともいう。)、さらに、上述の(iii)の工程(以下、工程(iii)ともいう。)を用いることにより、従来パターニングに必要である現像工程を用いることなく凹パターンを形成することができ、凹パターンを有する下地膜を製造することができる。
【0099】
以下、感放射線性組成物を用いた凹パターンを有する下地膜の製造方法が有する各工程について説明する。
【0100】
[工程(i)]
図1(a)は、基板上に形成された感放射線性組成物の塗膜を模式的に示す図である。
【0101】
工程(i)は、基板上に酸解離性基を有する化合物および酸発生剤を含む組成物である感放射線性組成物を塗布した後、好ましくは塗布面を加熱(プレベーク)することにより、基板10上に塗膜2を形成する工程である。
【0102】
工程(i)において、感放射線性組成物を用いることにより下記工程(iii)等において現像工程を行うことなく、基板10上に凹部3bを形成することができる。
尚、感放射線性組成物については、以下で具体的に説明する。
【0103】
使用できる基板10の材質としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、樹脂等を挙げることができる。
【0104】
また、基板10としては、感放射線性組成物上に形成する配線の製造方法で最終的に得られる配線付基板をそのまま電子回路等に用いることが好ましいことから、従来より電子回路に用いられてきた、樹脂製基板、ガラス基板、半導体基板が好ましい。また、WO2014/178279記載の基板を用いることができる。
【0105】
尚、基板10に感放射線性組成物を塗布する前に、必要に応じて基板表面を洗浄、粗面化、微少な凹凸面の付与等の前処理を施しておいてもよい。
【0106】
感放射線性組成物の塗布方法としては特に限定されず、WO2014/178279記載の塗布方法を使用することができる。これらの塗布方法の中でも、特にスリットダイ塗布法またはスピンコート法が好ましい。
【0107】
工程(i)で形成される塗膜2の厚みは、所望の用途に応じ適宜調整すればよいが、好ましくは0.1μm〜20μm、より好ましくは0.2μm〜10μmである。
【0108】
プレベークの条件は、用いる感放射線性組成物の組成等によっても異なるが、好ましくは60℃〜120℃で1分間〜10分間程度である。
【0109】
[工程(ii)]
工程(ii)は、工程(i)で形成した塗膜2の少なくとも一部に放射線を照射して露光を行う。
【0110】
図1(b)は、基板上の感放射線性組成物の塗膜の露光を模式的に説明する図である。
【0111】
工程(ii)では、
図1(b)に示すように、基板10上の塗膜2の一部に放射線が照射され、放射線照射部2bと放射線未照射部2aとを有する塗膜が形成される。
【0112】
工程(ii)により、酸解離性基が酸発生剤の効果により脱離し揮発する。その結果、放射線照射部の膜厚が放射線未照射部の膜厚に比べ薄くなり、凹パターンが形成される。このとき、酸解離性基がフッ素原子を有していれば、工程(i)で得られた塗膜2および放射線未照射部2aは撥液性を示すが、放射線照射部2bは酸解離性基の消失に伴い、放射線未照射部2aに比べ親液性となる。
【0113】
したがって、工程(i)において、フッ素原子を有する酸解離性基を含有する化合物を含む組成物を用いる場合には、工程(ii)により、基板上に、撥液性の放射線未照射部と2a、該部分より親液性の凹パターンである放射線照射部2bとを有する塗膜が形成される。
【0114】
工程(ii)では、形成したい配線の形状と同様の形状の放射線照射部が形成されるように、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、または直描式露光装置を用いて所定のパターンを描画露光することができる。
【0115】
露光に使用される放射線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線、荷電粒子線、X線等を使用できる。これらの放射線の中でも、波長が190nm〜450nmの範囲にある放射線が好ましく、特に365nmの紫外線を含む放射線が好ましい。
【0116】
工程(ii)における露光量は、下記工程(iii)後に得られる凹部3bの膜厚が、下記範囲となるように放射線を露光することが好ましい。
【0117】
[工程(iii)]
図1(c)は、一部が露光された感放射線性組成物の塗膜2の加熱を模式的に説明する図である。
【0118】
工程(iii)では、工程(ii)で得られた塗膜2を加熱することで、工程(ii)の放射線照射部2bであった部分に相当する凹部3bと、工程(ii)の放射線未照射部2aであった部分に相当する凸部3aとを有する塗膜2を形成する。
【0119】
工程(iii)により、工程(ii)の放射線照射部2bにおいて生じた、酸解離性基が酸発生剤の効果により脱離した成分を更に揮発させることができる。その結果、放射線照射部における凹状のくぼみが更に深化し(凹部3bの膜厚が更に薄くなり)、凹部3bの膜厚が前記凸部3aの膜厚に対して10%以上薄い形状の塗膜を形成することができる。
【0120】
工程(i)において、フッ素原子を有する酸解離性基を含有する化合物を含む組成物を用いると、工程(iii)により、基板上に、撥液性の凸部3aと、該部分より親液性の凹部3bとを有する塗膜2が形成される。そして、このような塗膜2上に液状の膜形成材料を塗布すると、凸部3aと凹部3bの膜厚差が大きいため、塗膜表面の凹凸により凹部3b上に該材料が集まりやすくなるが、この塗膜表面形状の効果だけではなく、該表面の親液・撥液性により、凹部3b上に該材料が集まりやすくなり、より所望の形状の、具体的には微細なパターンを有する配線を形成しやすくなる。
【0121】
また、工程(i)において、フッ素原子を有する酸解離性基を含有する化合物を含む組成物を用いると、放射線照射により、フッ素原子を有する基が脱離することなる。この脱離基は比較的揮発し易いため、工程(iii)において、より簡便に、凸部3aと凹部3bの膜厚差の大きい塗膜2を形成することができる。
【0122】
工程(iii)における塗膜2を加熱する方法としては、例えば、該塗膜付基板を、ホットプレート、バッチ式オーブンまたはコンベア式オーブンを用いて加熱する方法、ドライヤー等を用いて熱風乾燥する方法、真空ベークする方法が挙げられる。
【0123】
前記加熱の条件は、工程(i)で用いる感放射線性組成物の組成や、工程(ii)で得られた塗膜の厚み等によっても異なるが、好ましくは60℃〜150℃で3分間〜30分間程度である。
【0124】
工程(iii)では、凹部3bの膜厚が前記凸部3aの膜厚に対して、好ましくは2%以上薄い、より好ましくは2%〜40%薄い、さらに好ましくは10%〜30%薄い形状の塗膜を形成することが望ましい。得られる塗膜がこのような形状を有していると、凹部3bに膜形成材料を塗布する際に、塗膜表面の凹凸の段差により、凹部3bから該材料が溢れ出にくく、また、凹部3b以外の箇所に該材料が残りにくくなるため、多量の膜形成材料を塗布することができ、多量の配線材料を用いても微細なパターンを有する配線を得ることができる。
【0125】
凹部3bおよび凸部3aの膜厚は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0126】
尚、工程(iii)で得られる凹部3bの膜厚は、所望の用途に応じ適宜調整すればよいが、好ましくは0.01μm〜18μm、より好ましくは0.05μm〜15μmである。
【0127】
前記凹部3b表面と凸部3a表面のテトラデカンに対する接触角差(凸部3a表面の接触角−凹部3b表面の接触角)は、好ましくは30°以上であり、より好ましくは40°以上、さらに好ましくは50°以上である。接触角差が前記範囲にあることにより、下記工程(iv)において、凸部3a表面にも液状の膜形成材料を塗布した場合であっても、撥液部である凸部3aにおいて、該材料をはじき、親液部である凹部3bに該材料が移動しやすくなることにより、凹部3bに沿った配線の形成が可能となる。
【0128】
前記接触角差は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
尚、凹部3b表面および凸部3a表面とは、それぞれ
図1(c)で示すように、基板10上に形成された塗膜の、基板10に接する側とは反対側の表面のことをいう。
【0129】
得られる凹部3bと凸部3aが、凹部3bの膜厚が前記凸部3aの膜厚に対して10%以上薄く、かつ、凹部3b表面と凸部3a表面のテトラデカンに対する接触角差が30°以上という条件を満たすと、前記と同様の理由から、多量の膜形成材料を凹部3b上のみに容易に塗布することが可能となる。
【0130】
〔凹部上に膜を形成する方法〕
本発明に係る製造方法は、前記工程(iii)で得られた凹部3b上に膜を形成する方法を含む。
【0131】
[工程(iv)]
図2(a)は、本発明の実施形態の膜形成方法における膜形成材料の塗布を模式的に説明する図である。
【0132】
工程(iv)では、前記凹部3b上に膜形成材料4を塗布する。
尚、膜形成材料4については、以下で具体的に説明する。
【0133】
前記塗布の方法としては、特に限定されず、WO2014/178279記載の塗布方法を使用することができる。
【0134】
また、微細で厚みがあり、低抵抗で断線しにくい配線を形成する観点からは、オフセット印刷が好ましい。オフセット印刷は、例えば、特開2010−159350号公報、特開2011−178006号公報の記載に基づいて行うことができる。
【0135】
前記工程(iii)で得られた膜形成材料4の塗膜5は、撥液性の凸部3aとそれより親液性の凹部3bとを有するため、液状の膜形成材料4を用いる場合には、前記いずれの方法を用いても、凸部3aでは該材料がはじかれ、凹部3bに集まりやすいため、凹部3bに沿って膜形成材料4が塗布された状態となる。
【0136】
[工程(v)]
工程(v)では、工程(iv)で得られた膜形成材料付基板を加熱する。
【0137】
図2(b)は、基板上に形成された本発明の実施形態のパターンを模式的に示す図である。
【0138】
この工程(v)により、パターン5が形成される。
【0139】
前記加熱の温度としては特に限定されないが、190℃以下が好ましい。また、基板10として、ポリエチレンテレフタレートなどの耐熱性に乏しいフィルムを用いる場合には、該フィルムの耐熱温度以下、具体的には150℃以下が好ましい。
【0140】
また、加熱時間も特に制限されないが、1分間〜120分間が好ましく、3分間〜60分間がより好ましい。
【0141】
前記加熱の方法としては、例えば、ホットプレート、バッチ式オーブンまたはコンベア式オーブンを用いて加熱する方法、ドライヤー等を用いて熱風乾燥する方法、真空ベークする方法が挙げられる。
【0142】
〔導電性パターンの形成方法〕
本発明においては、本発明の実施形態である凹パターンを有する基材の製造方法の工程(i)、工程(ii)および工程(iii)により形成された基材を用い、膜形成材料として導電膜形成インクや導電膜形成ペーストを用いることにより、上述した本発明の実施形態の膜形成方法と同様の方法で、本発明の導電膜を形成することができる。
【0143】
〔電子回路および電子デバイス〕
本発明の電子回路は、前記導電性パターンの形成方法によって製造された配線を有し、好ましくは、前記導電性パターンの形成方法によって製造された配線と基板との積層体を有する。
【0144】
また、本発明の薄膜トランジスタ、MOS電界効果トランジスタを用いた電子デバイスは、前記電子回路を有する。このため、小型化、薄型化、高機能化された電子デバイスとなる。
【0145】
前記電子デバイスとしては、例えば、液晶ディスプレイ、携帯電話等の携帯情報機器、デジタルカメラ、有機ディスプレイ、有機EL照明、各種センサーやウェアラブルデバイスが挙げられる。
【0146】
[実施例1〜3および比較例1〜2]
表1に示す種類、含有量の各成分を混合し、界面活性剤としてポリフローNo75(共栄社化学(株)製)0.1質量部を加え、固形分濃度が20質量%となるように、それぞれ[B]溶剤として、ジエチレングリコールジメチルエーテルを加えた後、孔径0.5μmのミリポアフィルタでろ過することにより、各感放射線性組成物を調製した。尚、表1中の「−」は該当する成分を使用しなかったことを表す。
【0147】
【表1】
【0148】
<膜評価>
実施例1〜3および比較例1〜2で調製した各感放射線性組成物を用いて膜形成を行い、以下の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0149】
[接触角]
無アルカリガラス基板上に、実施例1〜3または比較例1〜2で調製した感放射線性組成物をそれぞれスピンナーで塗布した後、90℃のホットプレート上で2分間プレベークすることにより0.5μm厚の塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜に石英マスク(コンタクト)を介して高圧水銀ランプを用い(露光機:大日本科研社製MA−1400)、露光量を250mJ/cm
2として放射線照射を行った。その後、ホットプレートを用い110℃で5分ベークすることにより、露光部(凹部)が親液部となり、露光部分以外(凸部)が撥液部となった、親液部と撥液部とによりパターニングされた膜(以下、「親撥パターニング膜」と称することがある。)を形成した。形成された親撥パターニング膜において、接触角計(協和界面科学社製CA−X)を用い、親液部に相当する露光部の塗膜表面、撥液部に相当する未露光部分の塗膜表面それぞれにおける、水、デカンおよびテトラデカンの接触角を測定し、親撥性能を確認した。尚、表2中、露光部表面における水の接触角を「親液部 水」と示し、未露光部表面における水の接触角を「撥液部 水」と示す。デカンやテトラデカンの接触角についても同様に示す。
【0150】
[凹パターニング性確認]
前記[接触角]と同様の方法で得られた膜に関して、露光部(凹部)と未露光部(凸部)の膜厚を接触式膜厚計(キーエンス製:アルファステップIQ)で測定した。そして、未露光部の膜厚と露光部の膜厚との差を算出し、下記式からの膜厚減少率(%)を算出することにより凹形状形成性を確認した。
【0151】
【0152】
[親撥パターン上でのインク塗布アシスト性能評価]
図3は、実施例で使用した石英マスクを示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
【0153】
石英マスクとして、
図3に示すような石英マスク(L/S=50μm/450μm)を用いた以外は、前記[接触角]と同様の方法で親撥パターニング膜を形成し、得られた凹部付近に、自動極小接触角計(協和界面社製MCA−2)を用い、マイクロキャピラリーにてテトラデカンを60plを滴下し、5秒後に滴下部分を滴下方向から(上から)マイクロスコープにて観察した。
【0154】
図4aは、良好なパターニングの例を示す拡大写真である。
【0155】
図4bは、不良なパターニングの例を示す拡大写真である。
【0156】
その結果、親撥パターンに沿ってテトラデカンがパターニングできれば○、つまり、
図4aに示すように、形成された凹ラインがテトラデカンの液滴により乱れていない場合を○と評価し、テトラデカンが親撥パターンの凹部以外の場所に存在する場合には×、つまり、
図4bに示すように、凹ラインがテトラデカンの液滴により乱れた場合を×として評価した。
【0157】
その他幾つかのパターニング例を示す。
図5aから
図5dは、本実施例によって得られた感放射線性組成物の塗膜の一つに、各種親液性パターンを形成し、銅を含む膜形成インクを滴下した後を観察した写真である。
図5aは、50μm幅の直線状の親液性パターンを形成し、銅を含む膜形成インクを滴下した後を観察した写真である。
図5bは、一辺が200μmの正方形の親液性パターンを形成し、
図5aと同様の観察を行った写真である。
図5cは、50μm幅の直線が交差する親液性パターンを形成し、
図5aと同様の観察を行った写真である。
図5dは、50μm幅の直線を格子状に配置した親液性パターンを形成し、
図5aと同様の観察を行った写真である。親液性パターンに沿って、滴下したインクが濡れ広がって良好なパターンを形成していることがわかる。
【0158】
図6は、本実施例によって得られた感放射線性組成物の塗膜の一つに、線幅が10μm、8μm、6μm、5μmの直線状の親液性パターンを形成し、テトラデカンを滴下した後を観察した写真である。この内で最小線幅が5μmの親液性パターンにおいても良好なパターンを形成していることがわかる。
【0159】
図7aは、本実施例によって得られた感放射線性組成物の塗膜の一つに、線幅が5μm、6μm、7μm、8μm、10μm、12μmの直線状の親液性パターンを形成し、銀を含む膜形成インクをスピンコート法により塗布した後を観察した写真である。
図7bは、線幅が5μmの直線状の親液性パターン付近を拡大した写真である。
図7cは、線幅が7μmの直線状の親液性パターン付近を拡大した写真である。親液性のパターンに沿って、滴下したインクが濡れ広がって良好なパターンを形成し、特に、この内で最小線幅の5μmの直線状の親液性パターンにおいても良好なパターンを形成していることがわかる。
【0160】
図8は、本実施例によって得られた感放射線性組成物の塗膜の一つに、線幅が50μmの直線状の親液性パターンを形成し、銀を含む膜形成インクをディッピング法により塗布した後の基板外観及びパターンを観察した写真である。
【0161】
図9は、本実施例によって得られた感放射線性組成物の塗膜の一つに、線幅が5μm、6μm、7μm、8μm、10μm、12μm、14μmの直線状の親液性パターンを形成した直後と、銀を含む膜形成インクをディッピング法により塗布した後を観察した写真である。親液性パターンに沿って、滴下したインクが濡れ広がって良好なパターンを形成し、特に、この内で最小線幅の5μmの直線状の親液性パターンにおいても良好なパターンを形成していることがわかる。
【0162】
[親撥パターニング膜形成の露光感度評価]
石英マスクとして、
図3の石英マスク(L/S=50μm/450μm)を用い、露光量を50mJ/cm
2、100mJ/cm
2、150mJ/cm
2、200mJ/cm
2、250mJ/cm
2および300mJ/cm
2に変化させて親撥パターニング膜を形成し、前記[凹パターニング性確認]と同様の方法で、膜厚減少率を算出した。
【0163】
膜厚減少率は、露光量が大きくなれば、大きくなるが、膜厚減少率が、10%以上になった際の露光量を感度として感度評価を行った。
【0164】
図10aは、実施例1で調製された感放射線性組成物の、露光量と露光後の測定された膜厚を示す図である。
図10bは、露光量と露光後の測定されたテトラデカンによる接触角を示す図である。
【0165】
【表2】
【0166】
表2の結果から実施例1〜実施例3で調製された感放射線性組成物を用いて形成された親撥パターニング膜は、比較例1〜比較例2で調製された感放射線性組成物を用いて形成された比較例の膜と比べ、良好な親撥性能、パターニング性を有することがわかった。
【0167】
[実施例4〜7]
<膜評価>
前記実施例1〜3とは独立に作製した各感放射線性組成物(実施例4〜7)を用いて膜形成を行い、以下の評価を実施した。結果を表3に示す。
【0168】
【表3】
[接触角]
実施例4〜7で調製した各感放射線性組成物に対し、前述の[実施例1〜3および比較例1〜2]と同様の方法で塗膜を形成した。形成された親撥パターニング膜において、接触角計(協和界面科学社製CA−X)を用い、親液部に相当する露光部の塗膜表面、撥液部に相当する未露光部分の塗膜表面それぞれにおける、水およびテトラデカンの接触角を測定し、親撥性能を確認した。特に露光前及び露光後の接触角の差を見ると、テトラデカンに対しては60°前後、水に対しては30°から60°の変化が見られた。形成された親撥パターニング膜において、微細なパターンを有する電極や配線を形成しやすくなる。
【0169】
[凹パターニング性確認]
前記[接触角]と同様の方法で得られた膜に関して、露光部(凹部)と未露光部(凸部)の膜厚を接触式膜厚計(キーエンス製:アルファステップIQ)で測定した。そして、未露光部の膜厚と露光部の膜厚との差を算出した。実施例5及び実施例6では露光によって膜厚がほぼ半減しているが、実施例7は露光によって膜厚はほぼ変わらない。つまり、感放射線性組成物の組成を調整することで、親液部・撥液部の境界を明確に保ちつつ、露光よる膜厚変化量の制御が可能であることを意味する。
[表面自由エネルギー]
前記[接触角]と同様の方法で得られた膜に関して、露光部(凹部)と未露光部(凸部)の表面自由エネルギーをYoung式及び拡張Fowkes式を用いて算出した。
図11には、露光の前後における表面自由エネルギー及びその各成分(水素結合成分、極性成分、分散成分)を示す。露光によって大幅な表面自由エネルギーの上昇が見られる。
【0170】
[屈折率]
実施例4〜7で調製した各感放射線性組成物に対し、膜厚を408nm、633nm、828nmのサンプルを用意した以外は前述の[実施例1〜3および比較例1〜2]と同様の方法で塗膜を形成した。形成された親撥パターニング膜において、屈折率を、プリズムカメラ(メトリコン社製:Model−2010)、分光エリプソメトリ法(J.A.Woollam社製:M−2000D)を用いて測定した。
【0171】
結果を表4に示す。表中において、プリズムカメラによる測定を測定1とし、分光エリプソメトリ法による測定を測定2として示した。感放射線性組成物により得られた塗膜は、露光後に屈折率が上昇することが分かった。
【0172】
【表4】
【0173】
[その他]
前記実施例1〜3とは独立に作製した各感放射線性組成物に対し、前述の[実施例1〜3および比較例1〜2]と同様の方法で塗膜を形成した。形成された塗膜において、露光部の透過率、比誘電率、降伏電圧及びリーク電流の測定を行った。結果を表5に示す。
図12は、測定された透過率と入射光の波長の関係を示す。感放射線性組成物から得られた塗膜は、高い透明性と、通常の架橋アクリル樹脂と同程度の絶縁耐性を有することがわかった。
【0174】
【表5】
【0175】
〔電子デバイス〕
<第1実施形態>
図13を用いて、本発明の第1実施形態に係る薄膜トランジスタの構成について詳細に説明する。
図13は、本発明の第1実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を説明する断面図である。本実施形態においては、半導体層12に対して下方にソース電極14b及びドレイン電極14cが設けられ、上方にゲート電極14aが設けられる所謂順スタガ型の薄膜トランジスタについて説明する。
【0176】
図13に示すように、本実施形態に係る薄膜トランジスタは、基板10上に設けられた第一の絶縁層11と、第一の絶縁層11にエネルギーを照射して形成された照射部11b上に設けられたソース電極14b及びドレイン電極14cと、第一の絶縁層11とソース電極14bとドレイン電極14cとを覆うように設けられた半導体層12と、半導体層12上に設けられた第二の絶縁層13と、第二の絶縁層13上に設けられたゲート電極14aとを具備する。本実施形態に係る薄膜トランジスタにおいては、ソース電極14b及びドレイン電極14cが親撥材から成る第一の絶縁層11上に位置し、それに埋め込まれるように設けられている。このためにソース電極14b及びドレイン電極14cによる凹凸を抑え、平坦性の高い薄膜トランジスタとなっている。
【0177】
図14及び
図15を用いて、本発明の第1実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法について詳細に説明する。
図14及び
図15は、本発明の第1実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。本実施形態においては、まず、基板10の第一面上に親撥材からなる第一の絶縁層11を形成する(
図14(a))。
【0178】
使用できる基板10の材質としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、樹脂等を挙げることができる。
【0179】
また、基板10としては、感放射線性組成物上に形成する配線の製造方法で最終的に得られる配線付基板をそのまま電子回路等に用いることが好ましいことから、従来電子回路に用いられてきた、樹脂製基板、ガラス基板、半導体基板が好ましい。
【0180】
尚、基板10に親撥材を形成する前に、必要に応じて基板表面を洗浄、粗面化、微少な凹凸面の付与等の前処理を施しておいてもよい。
【0181】
親撥材は感放射線性組成物から成る溶液を基板に塗布することで形成される。感放射線性組成物から成る溶液の塗布方法としては特に限定されず、WO2014/178279記載の塗布方法を用いることができる。これらの塗布方法の中でも、特にスリットダイ塗布法またはスピンコート法が好ましい。
【0182】
感放射線性組成物の塗布によって形成される親撥材の厚みは、所望の用途に応じ適宜調整すればよいが、好ましくは0.1μm〜20μm、より好ましくは0.2μm〜10μmである。
【0183】
感放射線性組成物の塗布後にプリベークを行ってもよい。プレベークの条件は、用いる感放射線性組成物の組成等によっても異なるが、好ましくは60℃〜120℃で1分間〜10分間程度である。
【0184】
次に、第一の絶縁層11上のソース電極を形成する領域(以下、ソース電極形成領域と呼ぶ。)及びドレイン電極を形成する領域(以下、ドレイン電極形成領域と呼ぶ。)に、それぞれソース電極14b及びドレイン電極14cを形成するが、本実施形態においては、塗布法を用いる。具体的には、第一の絶縁層11上のソース電極形成領域及びドレイン電極形成領域に特定波長のエネルギーを照射してソース電極形成領域及びドレイン電極形成領域を親液性にするとともに凹部を形成する(
図14(b))。
図14(b)に示すように、基板10上に形成された親撥材の所定の領域にエネルギーが照射され、照射部11bと未照射部11aとを有する塗膜が形成される。
【0185】
図14(b)の工程により、親撥材において酸解離性基が酸発生剤の効果により脱離し揮発する。その結果、照射部11bの膜厚が未照射部11aの膜厚に比べ薄くなり、凹部が形成される。このとき、酸解離性基がフッ素原子を有していれば、
図14(b)の工程で得られた未照射部11aは撥液性を示すが、照射部11bは酸解離性基の消失に伴い、未照射部11aに比べ親液性となる。
【0186】
したがって、
図14(b)の工程において、フッ素原子を有する酸解離性基を含有する化合物を含む組成物を用いると、この工程により、基板上に、撥液性の未照射部11aと、該部分より親液性の凹部である照射部11bとを有する塗膜が形成される。
【0187】
図14(b)の工程では、形成したい配線の形状と同様の形状の照射部が形成されるように、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、または直描式露光装置を用いて所定のパターンを描画露光することができる。
【0188】
本発明において、露光に使用される放射線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線、荷電粒子線、X線等を使用できる。これらの放射線の中でも、波長が190nm〜450nmの範囲にある放射線が好ましく、特に365nmの紫外線を含む放射線が好ましい。
【0189】
図14(b)の工程における露光量は、凹部の膜厚が、下記範囲となるように放射線を露光することが好ましい。
【0190】
第一の絶縁層11における凹部の膜厚は、親撥材の組成にも依るが、第一の絶縁層21の凹部以外の領域の膜厚に比べて5〜30%程度薄くなる。本実施形態においては第一の絶縁層11の凹部以外の領域の膜厚に比べて10から30%程度薄い。
【0191】
図示はしないが、第一の絶縁層11のパターニング後にポストベークを行ってもよい。ポストベークの条件は、用いる親撥材の組成等によっても異なるが、好ましくは60℃〜120℃で1分間〜10分間程度である。ポストベークにより、照射部31において生じた酸解離性基が酸発生剤の効果により脱離した成分を更に揮発させることができる。その結果、照射部31における凹状のくぼみが更に深化し(凹部の膜厚が更に薄くなり)、凹部の膜厚が凹部以外の領域の膜厚に対して10%以上薄い形状の塗膜を形成することができる。
【0192】
親撥材として、フッ素原子を有する酸解離性基を含有する化合物を含む組成物を用いると、更にポストベークを組み合わせることにより、基板上に、撥液性の領域と、該領域より親液性の、更に深化した凹部とを有する塗膜が形成される。そして、このような塗膜上に液状の膜形成材料を塗布すると、未照射部11aと照射部11bの膜厚差が大きいため、塗膜表面の凹凸により凹部に該材料が集まりやすくなるが、この塗膜表面形状の効果だけではなく、該表面の親液・撥液性により、凹部上に該材料が集まりやすくなり、より所望の形状の、具体的には微細なパターンを有する配線を形成しやすくなる。
【0193】
また、親撥材において、フッ素原子を有する酸解離性基を含有する化合物を含む組成物を用いると、エネルギー照射により、フッ素原子を有する基が脱離することなる。更に、この脱離基は比較的揮発し易いため、ポストベークにおいて、より簡便に、凹部とそれ以外の領域の膜厚差の大きい塗膜を形成することができる。
【0194】
ポストベークにおける塗膜を加熱する方法としては、例えば、該塗膜付基板を、ホットプレート、バッチ式オーブンまたはコンベア式オーブンを用いて加熱する方法、ドライヤー等を用いて熱風乾燥する方法、真空ベークする方法が挙げられる。
【0195】
前記加熱の条件は、親撥材の組成や、塗膜の厚み等によっても異なるが、好ましくは60℃〜150℃で3分間〜30分間程度である。
【0196】
ポストベークでは、凹部の膜厚がそれ以外の領域の膜厚に対して、好ましくは2%以上薄い、より好ましくは2%〜40%薄い、さらに好ましくは10%〜30%薄い形状の塗膜を形成することが望ましい。得られる塗膜がこのような形状を有していると、凹部に膜形成材料を塗布する際に、塗膜表面の凹凸の段差により、凹部から該材料が溢れ出にくく、また、凹部以外の箇所に該材料が残りにくくなるため、多量の膜形成材料を塗布することができる。よって、凹部のくぼみの分だけ厚く形成できるために低抵抗の配線を得ることができ、更に、多量の配線材料を用いても直線性に優れ、微細なパターンを有する配線を得ることができる。
【0197】
尚、ポストベークで得られる凹部の膜厚は、所望の用途に応じ適宜調整すればよいが、好ましくは0.01μm〜18μm、より好ましくは0.05μm〜15μmである。
【0198】
そして、第一の絶縁層11上に金属を含む溶液を塗布してソース電極形成領域及びドレイン電極形成領域にそれぞれソース電極14b及びドレイン電極14cを形成する(
図14(c))。
【0199】
前記塗布の方法としては、特に限定されず、WO2014/178279記載の塗布方法を用いることができる。この中でも特にディッピング法、スプレー法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、オフセット印刷法、インクジェット印刷、ディスペンス法が好ましい。
【0200】
エネルギー照射で得られた親撥材は、撥液性の未照射部11aとそれより親液性の照射部11bとを有するため、液状の膜形成材料を用いる場合には、未照射部11aでは該材料がはじかれ、照射部11bに集まりやすいため、照射部11bに沿って電極材料が塗布された状態となる。
【0201】
また、本実施形態の親撥材上で形成された本実施形態の導電性パターンにおいては、導通性および密着性等の特性にも優れ、微細なパターンを有する配線や電極の形成に有効となる。
【0202】
更に、本実施形態においては、公知のフォトリソグラフィ工程を用いずとも、ソース電極14b及びドレイン電極14cを形成することができる。このため、作製工程数を削減することが可能である。
【0203】
更に、ソース電極14b及びドレイン電極14cをエネルギー照射によって形成された凹部へ埋め込むように形成すれば、これらの電極による凹凸を抑制することができ、平坦性の高い薄膜トランジスタを得ることができる。
【0204】
また、図示はしないが、ソース電極14b及びドレイン電極14cを形成した後に、基板の全面に第一面側より特定波長のエネルギーを照射して第一の絶縁層11の未照射部11aを親液性にするとともに薄膜化してもよい。これにより、工程終了後に外部から紫外線等が薄膜トランジスタ内に侵入することがあっても、当該紫外線によって親撥材の改質や薄膜化が生じることがなく、得られる薄膜トランジスタの安定性が向上する。
【0205】
次に、第一の絶縁層11とソース電極14bとドレイン電極14cとを覆うように半導体層12を形成する(
図15(a))。
【0206】
半導体層12としては、アモルファスシリコンまたは多結晶シリコンを用いることができる。また、半導体層40としては、酸化物半導体を用いてもよい。具体的には、InGaZnO系、InZnO系、InO系、GaO系、SnO系、あるいはそれらの混合物の酸化物半導体を用いることができる。あるいは、ガリウム砒素(GaAs)等の無機半導体や、ポリチオフェンやポリアリルアミン及びそれらの誘導体のような高分子有機半導体や、ペンタセンやテトラセンおよびそれらの誘導体のような低分子有機半導体を用いることができる。半導体層40の形成方法として、酸化物半導体では、スパッタリング法、真空蒸着法、レーザアブレーション法等を用いることができ、有機半導体では、インクジェットやを用いることができる。
【0207】
半導体層12上にゲート絶縁膜として機能する第二の絶縁層13を形成する(
図15(b))。第二の絶縁層13の材料は特に限定されるものではないが、具体的には、SiO2、SiN、SiON、Al2O3などの無機系材料や、フッ素樹脂、ポリエステル/メラミン樹脂系、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)などの有機系材料などを用いることができる。第二の絶縁層23の形成方法として、例えば、スピンコート法、凸版印刷法、インクジェット法、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0208】
次に、第二の絶縁層13上にゲート電極14aを形成する(
図15(c))。本実施形態においては、フォトリソグラフィ技術を用いてゲート電極14aを形成する。図示はしないが、先ず、第二の絶縁層13上に、導電膜を形成する。導電膜の形成には、スパッタ法、真空蒸着法、パルスレーザ堆積法、イオンプレーティング法、有機金属気相成長法などに代表される薄膜堆積法を用いることができる。次いで、導電膜上にフォトレジストを形成する。次いで、フォトレジストをマスクとして、導電膜を選択的にエッチングすることによりゲート電極14aを形成する。また、フォトレジストは、ゲート電極14a形成後に除去する。
【0209】
ゲート絶縁膜として機能する第二の絶縁層13としては、親撥材を用いてもよい。この場合、第二の絶縁層13は親撥材から成り、ゲート電極14aを形成することは、第二の絶縁層13上のゲート電極を形成する領域(以下、ゲート電極形成領域と呼ぶ。)に特定波長のエネルギーを照射してゲート電極形成領域を親液性にするとともに凹部を形成し、第二の絶縁層13上に金属を含む溶液を塗布してゲート電極形成領域にゲート電極を形成する。これにより、ゲート電極14aをエネルギー照射によって形成された凹部へ埋め込むように形成すれば、電極による凹凸を抑制することができ、平坦性の高い薄膜トランジスタを得ることができる。
【0210】
第二の絶縁層13における凹部の膜厚は、親撥材の組成にも依るが、第二の絶縁層13の凹部以外の領域の膜厚に比べて5〜30%程度薄くなる。本実施形態においては第二の絶縁層13の凹部以外の領域の膜厚に比べて10から30%程度薄い。
【0211】
ゲート電極14aを形成した後に、基板の全面に第一面側より特定波長のエネルギーを照射して第二の絶縁層13の未照射部を親液性にするとともに薄膜化してもよい。これにより、工程終了後に外部から紫外線等が薄膜トランジスタ内に侵入することがあっても、当該紫外線によって親撥材の改質や薄膜化が生じることのない、安定した薄膜トランジスタを得ることができる。
【0212】
<第2実施形態>
図16を用いて、本発明の第2実施形態に係る薄膜トランジスタの構成について詳細に説明する。
図16は、本発明の第2実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を説明する断面図である。本実施形態においては、半導体層に対して上方にソース電極24b、ドレイン電極24c及びゲート電極24aが設けられる所謂プレーナ型の薄膜トランジスタについて説明する。
【0213】
図16に示すように、本実施形態に係る薄膜トランジスタは、基板10上に設けられた半導体層22と、半導体層上に設けられたソース電極24b及びドレイン電極24cと、半導体層22とソース電極24bとドレイン電極24cとを覆うように設けられた絶縁層23と、絶縁層23上に設けられたゲート電極24aとを具備する。本実施形態に係る薄膜トランジスタにおいては、ゲート電極24aが親撥材から成る絶縁層23上に位置し、それに埋め込まれるように設けられている。このためにゲート電極24aによる凹凸を抑え、平坦性の高い薄膜トランジスタとなっている。
【0214】
図17及び
図18を用いて、本発明の第2実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法について詳細に説明する。
図17及び
図18は、本発明の第2実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。本実施形態においては、まず、基板10の第一面上に下地膜となる絶縁層21を形成し、絶縁層21上に半導体層22を形成する(
図17(a))。半導体層22としては、第1実施形態で示した方法を用いることができるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0215】
次に、半導体層22上にソース電極24b及びドレイン電極24cを形成する(
図17(b))。本実施形態においては、フォトリソグラフィ技術を用いてソース電極24b及びドレイン電極24cを形成する。図示はしないが、先ず、基板10上に、導電膜を形成する。導電膜の形成には、スパッタ法、真空蒸着法、パルスレーザ堆積法、イオンプレーティング法、有機金属気相成長法などに代表される薄膜堆積法を用いることができる。次いで、導電膜上にフォトレジストを形成する。次いで、フォトレジストをマスクとして、導電膜を選択的にエッチングすることによりソース電極24b及びドレイン電極24cを形成する。また、フォトレジストは、ソース電極24b及びドレイン電極24c形成後に除去する。
【0216】
次に、半導体層22とソース電極24bとドレイン電極24cとを覆うように、親撥材からなり、ゲート絶縁膜として機能する絶縁層13を形成する(
図17(c))。親撥材からなる絶縁層13の形成方法は、第1実施形態で示した方法を用いることができるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0217】
次に、絶縁層23上のゲート電極を形成する領域(以下、ゲート電極形成領域と呼ぶ。)にゲート電極24aを形成するが、本実施形態においては、塗布法を用いる。具体的には、絶縁層23上のゲート電極形成領域に特定波長のエネルギーを照射してゲート電極形成領域を親液性にするとともに凹部を形成する(
図18(a))。そして、絶縁層23上に金属を含む溶液を塗布してゲート電極形成領域にゲート電極24aを形成する(
図18(b))。親撥材上のゲート電極24aの形成方法は、第1実施形態で示したソース電極24b及びドレイン電極24cの形成方法と同様の方法を用いることができるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0218】
絶縁層23における凹部の膜厚は、親撥材の組成にも依るが、絶縁層23の凹部以外の領域の膜厚に比べて5〜30%程度、好ましくは10〜20%程度薄くなる。本実施形態においては絶縁層21の凹部以外の領域の膜厚に比べて10から30%程度薄い。
【0219】
ゲート電極24aを形成した後に、基板の全面に第一面側より特定波長のエネルギーを照射して絶縁層23の未照射部23aを親液性にするとともに薄膜化してもよい。これにより、工程終了後に外部から紫外線等が薄膜トランジスタ内に侵入することがあっても、当該紫外線によって親撥材の改質や薄膜化が生じることがなく、得られる薄膜トランジスタの安定性が向上する。
【0220】
<第3実施形態>
図19を用いて、本発明の第3実施形態に係る薄膜トランジスタの構成について詳細に説明する。
図19は、本発明の第3実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を説明する断面図である。本実施形態においては、半導体層34に対して下方にソース電極32b、ドレイン電極32c及びゲート電極32aが設けられる所謂逆プレーナ型の薄膜トランジスタについて説明する。
【0221】
尚、本実施形態において前述の第1実施形態及び第2実施形態と同様の材料や工程については、特に断らない限りその繰り返しの説明は省略する。
【0222】
図19に示すように、本実施形態に係る薄膜トランジスタは、基板上に設けられた第一の絶縁層31と、第一の絶縁層31上に設けられたゲート電極32aと、第一の絶縁層31とゲート電極32aを覆うように設けられた第二の絶縁層33と、第二の絶縁層33上に設けられたソース電極32b及びドレイン電極32cと、第二の絶縁層33とソース電極32bとドレイン電極32cとを覆うように設けられた半導体層34とを具備する。本実施形態に係る薄膜トランジスタにおいては、ゲート電極32aが親撥材から成る絶縁層31上に位置し、それに埋め込まれるように設けられている。このためにゲート電極32aによる凹凸を抑え、平坦性の高い薄膜トランジスタとなっている。
【0223】
図20及び
図21を用いて本発明の第3実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法について詳細に説明する。
図20及び
図21は、本発明の第3実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。本実施形態においては、まず、基板10の第一面上に親撥材からなる第一の絶縁層31を形成する(
図20(a))。
【0224】
次に、第一の絶縁層31上の所定のゲート電極形成領域にゲート電極32aを形成するが、本実施形態においては、塗布法を用いる。具体的には、第一の絶縁層31上のゲート電極形成領域に特定波長のエネルギーを照射してゲート電極形成領域を親液性にするとともに凹部を形成する(
図20(b))。そして、第一の絶縁層31上に金属を含む溶液を塗布してゲート電極形成領域にゲート電極32aを形成する(
図20(c))。
【0225】
第一の絶縁層31における凹部の膜厚は、親撥材の組成にも依るが、第一の絶縁層31の凹部以外の領域の膜厚に比べて5〜30%程度、好ましくは10〜20%程度薄くなる。本実施形態においては第一の絶縁層31の凹部以外の領域の膜厚に比べて10から30%程度薄い。
【0226】
図示はしないが、ゲート電極32aを形成した後に、基板の全面に第一面側より特定波長のエネルギーを照射して第一の絶縁層31の未照射部31aを親液性にするとともに薄膜化してもよい。これにより、工程終了後に外部から紫外線等が薄膜トランジスタ内に侵入することがあっても、当該紫外線によって親撥材の改質や薄膜化が生じることがなく、得られる薄膜トランジスタの安定性が向上する。
【0227】
次に、第一の絶縁層31とゲート電極32とを覆うように、ゲート絶縁膜として機能する第二の絶縁層33を形成する(
図21(a))。
【0228】
第二の絶縁層33上にソース電極32b及びドレイン電極32cを形成する(
図21(b))。
【0229】
第二の絶縁層33とソース電極32bとドレイン電極32cとを覆うように半導体層34を形成する(
図21(c))。
【0230】
第二の絶縁層33として、親撥材を用いてもよい。この場合、第二の絶縁層33は親撥材から成り、ソース電極32b及びドレイン電極32cを形成することは、第二の絶縁層32上のソース電極形成領域及びドレイン電極形成領域に特定波長のエネルギーを照射してソース電極形成領域及びドレイン電極形成領域を親液性にするとともに凹部を形成し、第二の絶縁層33上に金属を含む溶液を塗布してソース電極形成領域及びドレイン電極形成領域にソース電極32b及びドレイン電極32cを形成する。
【0231】
第二の絶縁層における凹部の膜厚は、親撥材の組成にも依るが、第二の絶縁層の凹部以外の領域の膜厚に比べて5〜30%程度、好ましくは10〜20%程度薄くなる。本実施形態においては第二の絶縁層33の凹部以外の領域の膜厚に比べて10から30%程度薄い。
【0232】
ソース電極32b及びドレイン電極32cを形成した後に、基板の全面に第一面側より特定波長のエネルギーを照射して第二の絶縁層33の未照射部を親液性にするとともに薄膜化してもよい。これにより、工程終了後に外部から紫外線等が薄膜トランジスタ内に侵入することがあっても、当該紫外線によって親撥材の改質や薄膜化が生じることがなく、得られる薄膜トランジスタの安定性が向上する。
【0233】
<第4実施形態>
図22を用いて、本発明の第4実施形態に係る薄膜トランジスタの構成について詳細に説明する。
図22は、本発明の第4実施形態に係る薄膜トランジスタの構成を説明する断面図である。本実施形態においては、半導体層44に対して下方にゲート電極42aが設けられ、上方にソース電極42b及びドレイン電極42cが設けられる所謂逆スタガ型の薄膜トランジスタについて説明する。
【0234】
尚、本実施形態において前述の第1実施形態及び第2実施形態と同様の材料や工程については、特に断らない限りその繰り返しの説明は省略する。
【0235】
図22に示すように、本実施形態に係る薄膜トランジスタは、基板10上に設けられた第一の絶縁層41と、第一の絶縁層41上に設けられたゲート電極42aと、第一の絶縁層41とゲート電極42aを覆うように設けられた第二の絶縁層43と、第二の絶縁層43上に設けられた半導体層44と、半導体層上に設けられたソース電極42b及びドレイン電極42cとを具備する。本実施形態に係る薄膜トランジスタにおいては、ゲート電極42aが親撥材から成る絶縁層41上に位置し、それに埋め込まれるように設けられている。このためにゲート電極42aによる凹凸を抑え、平坦性の高い薄膜トランジスタとなっている。
【0236】
図23及び
図24を用いて、本発明の第4実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法について詳細に説明する。
図23及び
図24は、本発明の第4実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法を説明する断面図である。本実施形態においては、まず、基板10の第一面上に親撥材からなる第一の絶縁層41を形成する(
図23(a))。
【0237】
次に、第一の絶縁層41上の所定のゲート電極形成領域にゲート電極42aを形成するが、本実施形態においては、塗布法を用いる。具体的には、第一の絶縁層41上のゲート電極形成領域に特定波長のエネルギーを照射してゲート電極形成領域を親液性にするとともに凹部を形成する(
図23(b))。そして、第一の絶縁層41上に金属を含む溶液を塗布してゲート電極形成領域にゲート電極42aを形成する(
図23(c))。
【0238】
第一の絶縁41層における凹部の膜厚は、親撥材の組成にも依るが、第一の絶縁層41の凹部以外の領域の膜厚に比べて5〜30%程度、好ましくは10〜20%程度薄くなる。本実施形態においては第一の絶縁層41の凹部以外の領域の膜厚に比べて10から30%程度薄い。
【0239】
図示はしないが、ゲート電極42aを形成した後に、基板の全面に第一面側より特定波長のエネルギーを照射して第一の絶縁層41の未照射部41aを親液性にするとともに薄膜化してもよい。これにより、工程終了後に外部から紫外線等が薄膜トランジスタ内に侵入することがあっても、当該紫外線によって親撥材の改質や薄膜化が生じることがなく、得られる薄膜トランジスタの安定性が向上する。
【0240】
次に、第一の絶縁層41とゲート電極42aを覆うように第二の絶縁層43を形成する(
図24(a))。
【0241】
次に、第二の絶縁層43上に半導体層44を形成する(
図24(b))。
【0242】
次に、半導体層44上にソース電極42b及びドレイン電極43cを形成する(
図24(c))。
【0243】
<第5実施形態>
図25を用いて、本発明の第5実施形態に係るMOS電界効果トランジスタの構成について詳細に説明する。
図25は、本発明の第5実施形態に係るMOS電界効果トランジスタの構成を説明する断面図である。
【0244】
尚、本実施形態において前述の第1実施形態及び第2実施形態と同様の材料や工程については、特に断らない限りその繰り返しの説明は省略する。
【0245】
図25に示すように、本実施形態に係るMOS電界効果トランジスタは、活性層50と、活性層50を覆うように設けられたゲート絶縁膜52と、ゲート絶縁膜52上に設けられたゲート電極53aと、ゲート電極53aを覆うように設けられた層間絶縁膜54と、層間絶縁膜54に設けられたコンタクト開孔部70と、コンタクト開孔部70に金属を充填して設けられたソース電極53b及びドレイン電極53cとを具備し、層間絶縁膜54は、親撥材から成り、ソース電極形成領域及びドレイン電極形成領域に凹部を有する。。本実施形態に係るMOS電界効果トランジスタにおいては、ソース電極53b及びドレイン電極53cが親撥材から成る層間絶縁層54上に位置し、それに埋め込まれるように設けられている。このためにソース電極53b及びドレイン電極53cによる凹凸を抑え、平坦性の高いMOS電界効果トランジスタとなっている。
【0246】
図26及び
図27を用いて、本発明の第5実施形態に係るMOS電界効果トランジスタの製造方法について詳細に説明する。
図26及び
図27は、本発明の第5実施形態に係るMOS電界効果トランジスタの製造方法を説明する断面図である。本実施形態においては、まず、活性層51上にゲート絶縁膜として機能する絶縁膜52を形成し、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜52上にゲート電極53aを形成する(
図26(a))。活性層51としては、多結晶シリコン又は単結晶シリコンを用いることができる。また、活性層50はバルクシリコン基板であってもよいし、SOI基板であってもよい。次に、活性層51に拡散層51bを形成するが、ゲート電極51をマスクとしてドーピングによりリンを注入することで、n型の拡散層51bを形成することができる。
【0247】
次に、ゲート電極53aを覆うように親撥材から成る層間絶縁膜54を形成する(
図26(b))。
【0248】
次に、層間絶縁膜54上のソース電極形成領域及びドレイン電極形成領域に特定波長のエネルギーを照射してソース電極形成領域及びドレイン電極形成領域に凹部を形成する(
図26(c))。
【0249】
次に、凹部の一部の領域から、層間絶縁膜54と絶縁膜52を貫通して拡散層51bが露出するようにするように、コンタクト開孔部70を形成する(
図27(a))。コンタクト開孔部70の形成には、フォトリソグラフィ法を用いる。
【0250】
次に、層間絶縁膜54上に金属を含む溶液を塗布してコンタクト開孔部70に金属を充填し、凹部を埋めるようにソース電極53b及びドレイン電極53cを形成する(
図27(b))。
【0251】
前記塗布の方法としては、特に限定されず、例えば、はけやブラシを用いた塗布法、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、スキージ法、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、ディスペンス法等の適宜の方法を採用することができる。この中でも特にディッピング法、スプレー法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、オフセット印刷法、インクジェット印刷、ディスペンス法が好ましい。
【0252】
本実施形態によるMOS電界効果トランジスタにおいては、ソース電極53b及びドレイン電極53cを形成する際に、フォトリソグラフィ工程と、エネルギー照射によって親撥材を親液性にするとともに凹部を形成する工程とを組み合わせることにより、
図27(b)に示すようにソース電極53b及びドレイン電極53cを層間絶縁膜54に埋め込む構造とすることが可能となり、平坦性の高いMOS電界効果トランジスタが得られる。
【0253】
<第6実施形態>
本実施形態においては、上述した本発明に係る電子デバイスと配線とのコンタクト形成方法及びコンタクトの構造について
図28から
図30を用いて説明する。
図28から
図30は、第6実施形態に係る配線コンタクトを形成する工程を説明する断面図である。
【0254】
先ず、
図28(A1)−(A3)に示すように、親撥材上に第一配線61を形成する。配線形成方法は、前述した実施形態における薄膜トランジスタの電極形成方法と同様であるために詳細な説明は省略する。本実施形態においては親撥材へのエネルギー照射によって形成された凹部に配線を完全に埋め込まず、凸形状となるように設ける。凹部以外の領域は撥液性であり、親液性の凹部から配線材料が溢れ出にくく、また、凹部以外の箇所に該材料が残りにくくなるため、多量の膜形成材料を塗布することができる。よって、凹部のくぼみの分だけ厚く形成できるために低抵抗の配線を得ることができ、更に、多量の配線材料を用いても直線性に優れ、微細なパターンを有する配線を得ることができる。
【0255】
次いで、
図28(B1)−(B3)に示すように、親撥材21を形成する。
【0256】
次いで、
図29(A1)−(A3)に示すように、第一配線61の一部が露出するまで親撥材21をエッチングする。
【0257】
次いで、
図29(B1)−(B3)に示すように、第二配線64を形成すべき領域63にエネルギーを照射して当該領域を親液性にするとともに凹部を形成する。ここでのエネルギー照射による凹部形成に伴い、第一配線61の露出部分は拡大する。
【0258】
次いで、
図30(A1)−(A3)に示すように、第二配線64を形成する。
【0259】
以上の工程により、公知のフォトリソグラフィ工程を用いずとも、配線間のコンタクトを形成することができる。このため、作製工程数を削減することが可能である。
【0260】
また、図示はしないが、第一配線61と第二配線64の接触部分を広くして接触抵抗を低減させるための設計が可能である。例えば、
図30に示した配線の交差部付近において、第一配線61がA−A´方向へ突出するような十字型の形状であってもよい。同様に、配線の交差部付近において、第二配線64がB−B´方向へ突出するような十字型の形状であってもよい。
【0261】
本実施形態において、第一配線61と第二配線64の材料は異なってもよい。第一配線61としては例えばMOS電界効果トランジスタにおけるゲート電極51が考えられ、第二配線64としては例えばゲート信号線が考えられる。第一配線としては所望の仕事関数を持つ金属材料を選択することができ、第二配線64としては導電率の高い金属材料を選択することができる。これによってゲート信号線の抵抗によるゲート遅延を考慮した設計が可能となる。
【0262】
<第7実施形態>
上述した本発明に係る電子デバイスは例えば表示装置に用いることができるが、親撥材を用い、フォトリソグラフィ工程を用いずにカラーフィルタを作製することが可能である。
図31から
図33を用いて、本実施形態に係るカラーフィルタの製造方法について詳細に説明する。
図31から
図33は、本実施形態に係るカラーフィルタの製造方法を説明する断面図である。
【0263】
図34から
図36は、本実施形態に係るカラーフィルタの製造方法の変形例を説明する断面図である。
【0264】
先ず、
図31(a)に示すように、基板10の上に親撥材21を形成する。次いで、赤色のカラーフィルタを形成すべき所定の領域34にエネルギー照射を行い、親液性にするとともに凹部を形成する(
図31(b))。そして、親撥材上に赤色のカラーインキを含む溶液を塗布して当該凹部に赤色カラーフィルタRを形成する(
図31(c))。
【0265】
次いで、赤色カラーフィルタRが形成されたピクセルの隣のピクセル領域に緑色のカラーフィルタを形成すべき所定の領域35にエネルギー照射を行い、親液性にするとともに凹部を形成する(
図32(a))。そして、親撥材上に緑色のカラーインキを含む溶液を塗布して当該凹部に緑色カラーフィルタGを形成する(
図32(b))。
【0266】
次いで、緑色カラーフィルタGが形成されたピクセルの隣のピクセル領域に青色のカラーフィルタを形成すべき所定の領域36にエネルギー照射を行い、親液性にするとともに凹部を形成する(
図32(c))。そして、親撥材上に青色のカラーインキを含む溶液を塗布して当該凹部に緑色カラーフィルタBを形成する(
図33)。
【0267】
本実施形態の変形例として、
図34から
図36に示すように、各カラーフィルタの形成後に親撥材を形成する工程を加えてもよい。
【0268】
つまり、
図34(a)から
図34(c)に示すように、上述の工程で赤色カラーフィルタRを形成する。
【0269】
次いで、基板10の全面に赤色カラーフィルタRを覆うように親撥材22を形成し、緑色カラーフィルタGを形成する領域35にエネルギー照射を行い、親液性にするとともに凹部を形成する(
図35(a))。そして、親撥材22上に緑色のカラーインキを含む溶液を塗布して当該凹部に緑色カラーフィルタGを形成する(
図35(b))。
【0270】
次いで、基板10の全面に緑色カラーフィルタGを覆うように親撥材23を形成し、青色カラーフィルタBを形成する領域36にエネルギー照射を行い、親液性にするとともに凹部を形成する(
図35(c))。そして、親撥材23上に青色のカラーインキを含む溶液を塗布して当該凹部に緑色カラーフィルタBを形成する(
図36)。
【0271】
また、図示はしないが、上述の変形例において、各々の親撥材を形成した後に、基板10の全面にエネルギー照射を行って親撥材の全域を親液性にするとともに薄膜化してもよい。これにより、工程終了後に外部から紫外線等がカラーフィルタ内に侵入することがあっても、当該紫外線によって親撥材の改質や薄膜化が生じることがなく、得られるカラーフィルタの安定性が向上する。
【0272】
カラーフィルタの形成過程は上述に限定されるものではなく、インキの吹付け手順及び位置は工程の便宜に応じて種々に変更可能である。
【0273】
それぞれの色を発色するカラーフィルタは種々の個所に形成可能であり、赤色、緑色及び青色カラーフィルタR、G及びBは、図示のごとく、それぞれの色のカラーフィルタが同寸法の間隔をあけて形成されてもよく、カラーフィルタの特性に応じて異なる厚さに形成されてもよい。
【0274】
本発明は、親液性の凹部が形成された親撥材を用いることにより、公知のフォトリソグラフィ工程を用いずとも、カラーフィルタを形成することができる。このため、作製工程数を削減することが可能である。
【0275】
<第8実施形態>
本発明に係る薄膜トランジスタは、薄膜トランジスタを用いた表示装置へも適用される。表示装置としては、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどが挙げられる。
図37は、本発明の第8実施形態に係る表示装置100の全体構成を示す図である。表示装置100は、基板101上に形成された、画素部(表示領域)102、走査線駆動回路103、データ線駆動回路104、及びドライバIC105を備えている。ドライバICは、走査線駆動回路103及びデータ線駆動回路104に信号を与える制御部として機能する。
【0276】
図37に示す画素部102には、複数の画素がマトリクス状に配置される。各画素には、データ線駆動回路104から画像データに応じたデータ信号が与えられる。それらデータ信号を、各画素に設けられたスイッチング素子を介して画素電極に与えることにより、画像データに応じた画面表示を行うことができる。スイッチング素子として、本発明による薄膜トランジスタを用いることができる。
【0277】
更に、例えば酸化物半導体や多結晶シリコンのような、アモルファスシリコンに比べて移動度の高い半導体を用いた薄膜トランジスタによれば、
図37に示す走査線駆動回路103、データ線駆動回路104、及びドライバIC105等の周辺回路に設けられる薄膜トランジスタにも、本発明による薄膜トランジスタを適用することができる。更にこの場合は、周辺回路に設けられる薄膜トランジスタは、画素に設ける薄膜トランジスタと同時に形成することができる。
【0278】
<第9実施形態>
近年、半導体基板への素子形成技術(半導体プロセス)を流路(液体や気体が流れる経路)の形成に応用したμ−TAS(Micro Total Analysis System)、Lab-on-a-chip、MEMS(Micro Electro Mechanical System)と呼ばれる流路デバイスが研究され、実用化されている。これらの流路デバイスは、数cm角の大きさの基板(チップ)の内部にマイクロメートルオーダーの幅を持つ流路を有し、そのような流路を合流させたり、分岐させたりする構造を有する。
【0279】
親撥材は、このような流路デバイスへ適用することが可能である。流路を形成する際、通常はフォトリソグラフィ工程が用いられてきた。しかし、親撥材を用い、そこにエネルギーを照射して凹パターンを形成する技術を応用すれば、公知のフォトリソグラフィ工程を用いずとも流路を形成することができるため、作製工程数を削減することが可能である。更に、微細化の面においても、マイクロメートルオーダーの幅を持つパターンの形成が可能であることは前述の実施形態で既に示してきた。
【0280】
以上、本発明の好ましい実施形態による親撥材を用いた薄膜トランジスタ及びその製造方法、MOS電界効果トランジスタ及びその製造方法、配線のコンタクト形成方法、カラーフィルタの製造方法について説明した。しかし、これらは単なる例示に過ぎず、本発明の技術的範囲はそれらには限定されない。実際、当業者であれば、特許請求の範囲において請求されている本発明の要旨を逸脱することなく、種々の変更が可能であろう。よって、それらの変更も当然に、本発明の技術的範囲に属すると解されるべきである。