特許第6635243号(P6635243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6635243無線通信機、作業車、および、作業車の無線通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6635243
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】無線通信機、作業車、および、作業車の無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 8/26 20090101AFI20200109BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20200109BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20200109BHJP
【FI】
   H04W8/26
   H04W4/40
   H04W88/08
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-557876(P2019-557876)
(86)(22)【出願日】2019年1月24日
(86)【国際出願番号】JP2019002224
(87)【国際公開番号】WO2019146679
(87)【国際公開日】20190801
【審査請求日】2019年10月24日
(31)【優先権主張番号】特願2018-11078(P2018-11078)
(32)【優先日】2018年1月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 一寿
(72)【発明者】
【氏名】篠原 大亮
【審査官】 ▲高▼木 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−192330(JP,A)
【文献】 特開2014−194603(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0025766(US,A1)
【文献】 特開2017−216744(JP,A)
【文献】 特開2004−161255(JP,A)
【文献】 特開2014−175822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信機であって、
作業車と携帯端末とを無線接続する通信制御部と、
前記作業車の車載ネットワークに接続され、前記作業車を識別するための作業車識別情報を、前記作業車から取得する取得部と、
前記作業車識別情報に基づいて第1文字列データを生成する生成部と、
生成された前記第1文字列データをネットワーク名として前記通信制御部に設定する設定部と、
前記無線通信機を識別するための第2文字列データを記憶する記憶部と、
生成された前記第1文字列データを前記ネットワーク名として前記通信制御部に設定する第1モードと、記憶された前記第2文字列データを前記ネットワーク名として前記通信制御部に設定する第2モードと、を選択可能な選択部と、を備え、
前記設定部は、前記選択部において前記第1モードが選択されている場合に、生成された前記第1文字列データを前記ネットワーク名として前記通信制御部に設定する、
線通信機。
【請求項2】
作業車と携帯端末とを無線接続する通信制御部と、
前記作業車の車載ネットワークに接続され、前記作業車を識別するための作業車識別情報を、前記作業車の始動後に前記作業車から取得する取得部と、
取得された前記作業車識別情報に基づいて第1文字列データを生成する生成部と、
生成された前記第1文字列データが、すでに前記通信制御部に設定されたネットワーク名と異なる場合に、生成された前記第1文字列データをネットワーク名として前記通信制御部に設定する設定部と、を備える無線通信機。
【請求項3】
前記作業車にコネクタを介して着脱可能に接続される無線ユニットである、請求項1または2に記載の無線通信機。
【請求項4】
前記取得部は、前記作業車識別情報を取得する前、前記車載ネットワークを介して前記作業車の作業車情報制御器に、前記作業車識別情報の送信を要求するための要求信号を送信する、請求項1〜の何れか一項に記載の無線通信機。
【請求項5】
前記取得部は、前記作業車の作業車情報制御器から前記車載ネットワークに定期的に送信される前記作業車識別情報を取得する、請求項1〜の何れか一項に記載の無線通信機。
【請求項6】
前記通信制御部は、前記設定部により前記ネットワーク名が設定された後、設定された前記ネットワーク名を含む情報を、前記携帯端末が受信可能な情報として、定期的にブロードキャストする、請求項1〜の何れか一項に記載の無線通信機。
【請求項7】
車載ネットワークと、前記車載ネットワークに接続され、作業車を識別するための作業車識別情報を記憶する記憶部と、を有する作業車本体と、
請求項1〜の何れか一項に記載の無線通信機と、を備える作業車。
【請求項8】
請求項に記載の作業車と、
前記無線通信機を介して、前記作業車に無線接続される携帯端末と、を備える作業車の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機、作業車、および、作業車の無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業機と携帯端末との間で無線通信を行うシステムが開示されている。このシステムは、作業機に設けられたアクセスポイント装置と携帯端末との間で無線通信を確立する。アクセスポイント装置には、ネットワーク名(SSID)が設定されている。使用者が携帯端末においてSSIDを指定することで、このSSIDに対応するアクセスポイント装置と携帯端末との無線通信を確立できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−42508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムでは、携帯端末の使用者が、目的の作業機に設けられたアクセスポイント装置のSSIDを知っている必要がある。使用者がSSIDを知らなければ、作業機と携帯端末との間の無線通信を確立できず、システムを利用できない。
【0005】
また、一般にSSIDにはアクセスポイント装置自体を識別する文字列が設定される。それゆえ、SSIDからはアクセスポイント装置が設けられた作業機を特定できない。したがって、特に複数の作業機が存在する場合、目的の作業機と無線通信するためにはいずれのSSIDを選択すればよいのか、使用者にとって分かりづらい。
【0006】
本発明の目的は、作業車と携帯端末との無線通信の設定を容易に行うことができる無線通信機、作業車、および、作業車の無線通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無線通信機の一態様は、作業車と携帯端末とを無線接続する通信制御部と、作業車の車載ネットワークに接続され、作業車を識別するための作業車識別情報を、作業車から取得する取得部と、作業車識別情報に基づいて第1文字列データを生成する生成部と、生成された第1文字列データをネットワーク名として通信制御部に設定する設定部と、を備える。
【0008】
本発明に係る作業車の一態様は、車載ネットワークと、車載ネットワークに接続され、作業車を識別するための作業車識別情報を記憶する記憶部と、を有する作業車本体と、上述の無線通信機と、を備える。
【0009】
本発明に係る作業車の無線通信システムの一態様は、上述の作業車と、無線通信機を介して、作業車に無線接続される携帯端末と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業車と携帯端末との無線通信の設定を容易に行うことができる無線通信機、作業車、および、作業車の無線通信システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る無線通信システムのブロック図である。
図2図2は、第1実施形態における、無線通信機によるネットワーク名の設定処理を示すフローチャートである。
図3図3は、第2実施形態における、無線通信機によるネットワーク名の設定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る無線通信システムAは作業車1と携帯端末3との間で無線通信を行うシステムである。作業車1として移動式クレーン、高所作業車、軌陸車、および、油圧ショベルなどの建設機械が挙げられる。
【0013】
(作業車)
まず、作業車1の構成を説明する。
作業車1は、車載ネットワーク11を有する。作業車1の車載ネットワーク11の数は、特に限定されず、1つでもよいし複数でもよい。なお、作業車1における、後述の無線通信機2のエレメント以外の部分は、作業車本体の一例に該当すると捉えてもよい。
【0014】
車載ネットワーク11には、作業車1に搭載された種々の車載機器が接続されている。車載ネットワーク11は、複数の車載機器を相互に接続する通信線などで構成されている。車載ネットワーク11の通信プロトコルは、特に限定されないが、CAN(Controller AreaNetwork)、LIN(Local Interconnect Network)、および、FlexRayなどが挙げられる。
【0015】
車載ネットワーク11に接続される車載機器として、制御器12、操作器13、および、表示器14が挙げられる。このほかの車載機器として、各種のセンサなども挙げられる。
【0016】
制御器12は、CPUおよびメモリなどで構成された車載コンピュータである。制御器12は、作業車1に搭載された装置などを制御する機能を有する。制御器12の数は、1つに限定されない。制御器12は、機能ごとに複数設けられてもよい。制御器12として、例えば、移動式クレーンのクレーン装置を制御する制御器、移動式クレーンの車両駆動用のエンジンを制御する制御器、および、過負荷防止装置を構成する制御器が挙げられる。
【0017】
操作器13は、作業車1に搭載された装置などを操作するのに用いられるスイッチ、レバー、および、ペダルなどである。操作器13は、作業車1の運転室などに設けられる。操作器13の数は、特に限定されず、1つでもよいし複数でもよい。操作器13として、例えば、クレーン装置を操作するのに用いられるレバー、車両走行を操作するのに用いられるアクセルペダル、ブレーキペダル、および、車両系スイッチが挙げられる。車両系スイッチには、サスペンションレベルの設定スイッチ、駆動の切り換えスイッチ、および、ステアリングモードの切り換えスイッチなどが含まれる。
【0018】
表示器14は、液晶ディスプレイなどで構成される。表示器14は、作業車1の運転室などに設けられる。表示器14の数は、特に限定されず、1つでもよいし複数でもよい。表示器14として、例えば、過負荷防止装置のディスプレイおよび車両走行用のコンビネーションメータが挙げられる。
【0019】
操作器13は、車載ネットワーク11を介して制御器12と接続されている。作業員が操作器13を操作すると、操作器13から特定の操作信号が車載ネットワーク11に出力される。操作信号は、車載ネットワーク11を介して制御器12に入力される。制御器12は、操作信号に基づき作業車1に搭載された装置などを制御する。これにより、作業員が操作器13を用いて作業車1を操作できる。
【0020】
表示器14は、車載ネットワーク11を介して制御器12と接続されている。制御器12は、作業車1の各種情報を示す情報信号を車載ネットワーク11に出力する。情報信号は、車載ネットワーク11を介して表示器14に入力される。表示器14は、情報信号に基づき作業車1の各種情報を表示する。これにより、作業員は、表示器14を通じて作業車1の状態を把握できる。
【0021】
このように、車載ネットワーク11に接続された複数の車載機器は、相互に信号を送受信して各種の制御および処理を行う。ここで、車載ネットワーク11を介して送受信される信号を「車内信号」と称する。車内信号には、上述の操作信号、情報信号、および、その他の信号が含まれる。
【0022】
車載ネットワーク11には、作業車情報制御器15が接続されている。作業車情報制御器15は、CPUおよびメモリなどで構成された車載コンピュータである。作業車情報制御器15は、少なくとも、後述の作業車識別文字列を送信する機能を有する。作業車情報制御器15はこの機能のみを有してもよいし、この機能に加えて他の機能を有してもよい。制御器12に作業車情報制御器15としての機能を持たせてもよい。
【0023】
作業車情報制御器15には、予め作業車識別文字列が記憶されている。ここで、「作業車識別文字列」とは、作業車1を識別するのに用いられる文字列である。作業車識別文字列は、識別情報の一例に該当する。作業車識別文字列として、作業車1の製造番号、製品名、製品型式、スペック番号、車両識別番号(VIN)、顧客番号、および、登録番号などが挙げられる。ここで、製造番号とは作業車1の製造時に付与される固有の番号(シリアルナンバー)である。製品名とは、作業車1のモデルを特定する名称である。製品型式とは、構造、装置、および、性能などが同一の製品に対して付与される記号である。スペック番号とは、製品を性能ごとにグルーピングし、各グループに付与される記号である。車両識別番号(VIN)とは、作業車1の車両に付与される車両に固有の番号である。顧客番号とは、顧客が作業車1に対して任意に設定した番号である。登録番号とは、作業車1のナンバープレートの番号である。
【0024】
(無線通信機)
次に、作業車1に設けられる無線通信機2の構成を説明する。
無線通信機2は、作業車1の車載ネットワーク11に接続されている。作業車1が複数の車載ネットワーク11を有する場合、無線通信機2を複数の車載ネットワーク11に接続してもよい。なお、無線通信機2を作業車1が有する全ての車載ネットワーク11に接続する必要はない。作業車1が有する複数の車載ネットワーク11の一部に無線通信機2を接続してもよい。
【0025】
無線通信機2は、車載ネットワーク11に対して物理的に着脱可能であり、必要時にのみ車載ネットワーク11に接続される。例えば、無線通信機2は、コネクタを有する。無線通信機2側のコネクタと車載ネットワーク11側のコネクタとを着脱することで、無線通信機2を着脱できる。なお、無線通信機2を着脱不可能とし、車載ネットワーク11に常に接続してもよい。つまり、無線通信機2は、作業車1に組み込まれた構成であってもよい。
【0026】
無線通信機2に電力を供給する電源ラインとして、例えば、作業車1のアクセサリーラインを用いることができる。そうすれば、エンジン始動を行うキー操作によって、作業車1に搭載されたバッテリーの電力が無線通信機2に供給される。
【0027】
無線通信機2は、信号処理部21および通信制御部22を備える。信号処理部21および通信制御部22はそれぞれ、電子回路などのハードウエアで構成されてもよいし、その機能の一部をソフトウエアで構成されてもよい。
【0028】
信号処理部21は、車載ネットワーク11に接続される。信号処理部21は、車載ネットワーク11を介して種々の車載機器(制御器12、操作器13、表示器14、および、作業車情報制御器15)と信号の送受信を行う。
【0029】
通信制御部22は、携帯端末3との無線通信を制御する。通信制御部22は、無線LAN(Local Area Network)におけるアクセスポイントとしての機能を有する。通信制御部22には、無線通信に用いられるネットワーク名(SSID:Service Set Identifier)および暗号化キー(ネットワークキー)などが設定されている。
【0030】
通信制御部22と携帯端末3との間で通信を確立することで、無線通信機2と携帯端末3とが無線接続される。以下、無線通信機2と携帯端末3との間に確立されるネットワークを無線ネットワーク4と称する。
【0031】
通信制御部22は、携帯端末3との間で信号の送受信を行う。この際、通信制御部22は、車載ネットワーク11の通信プロトコルと無線ネットワーク4の通信プロトコルとの変換処理などを行う。
【0032】
例えば、通信制御部22は、信号処理部21が車載ネットワーク11から取得した車内信号を携帯端末3に送信する。また、通信制御部22は、携帯端末3から受信した信号を、信号処理部21を介して車載ネットワーク11に出力する。
【0033】
(携帯端末)
次に、携帯端末3の構成を説明する。
携帯端末3は、CPUおよびメモリなどで構成された汎用コンピュータである。携帯端末3は、無線通信の機能を有する。携帯端末3は、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット端末、および、高機能携帯電話(スマートフォン)である。携帯端末3は、作業車1の運転室の外部に配置できる。携帯端末3は、表示部31を有する。表示部31は、液晶ディスプレイなどである。
【0034】
携帯端末3には、作業車1との無線通信を利用したアプリケーションがインストールされている。この種のアプリケーションとして、受信した車内信号に基づいて作業車1の情報を表示する表示アプリケーションが挙げられる。作業車1の情報は、表示部31に表示される。また、携帯端末3に作業車1を遠隔操作する操作アプリケーションをインストールしてもよい。作業員は、携帯端末3を操作し操作アプリケーションを実行することで、作業車1を遠隔操作できる。
【0035】
(無線通信システムの動作)
次に、無線通信システムAの動作を説明する。
無線通信システムAは、携帯端末3との無線通信に用いられるネットワーク名として作業車識別文字列を用いるところに特徴を有する。以下、図2に示すフローチャートに基づいて、その詳細を説明する。
【0036】
まず、無線通信機2の電源が投入される。例えば、作業車1のエンジン始動を行うキー操作によって、作業車1に搭載されたバッテリーの電力が無線通信機2に供給される。その後、無線通信機2はネットワーク名の設定処理を実行する。
【0037】
通信制御部22には、予めネットワーク名の自動設定を行うか否かが設定されている。この設定は、無線通信機2に設けられたスイッチ又はその他の選択手段により作業員が変更(選択)できる。作業員は、ネットワーク名として作業車識別文字列を使用したい場合、自動設定をONにする(無線通信機2の第1モードともいう)。一方、作業員は、独自に定めたネットワーク名(換言すれば、無線通信機2に予め設定された第2文字列データ)を使用したい場合、自動設定をOFFにする(無線通信機2の第2モードともいう)。
【0038】
換言すれば、無線通信機2は、作業車情報制御器15から取得した作業車識別文字列に基づいて生成した文字列(第1文字列データともいう。)をネットワーク名として使用する第1モードと、無線通信機2に予め設定された文字列(第2文字列データともいう。)をネットワーク名として使用する第2モードと、を有する。無線通信機2は、第1モードと第2モードとを選択可能な選択部(不図示)を有する。無線通信機2は、第1モードのみを有する構成でもよい。この場合、無線通信機2は、選択部を有していなくてもよい。
【0039】
また、無線通信機2は、第1モードと第2モードとを、自動的に切り換えてもよい。具体的には、無線通信機2は、作業車1(具体的には、作業車情報制御器15)から作業車識別文字列を受信できない場合に、第1モードから第2モードに自動的に切り換えてもよい。このような構成を採用した場合、上述の選択部は省略されてよい。
【0040】
なお、第1文字列データは、一例として、作業車情報制御器15から取得した作業車識別文字列のみのデータ、作業車情報制御器15から取得した作業車識別文字列に他の文字列を付加した文字列のデータ、又は、作業車情報制御器15から取得した作業車識別文字列から一部の文字列を除いた文字列のデータであってよい。通信制御部22は、自動設定のON/OFFを確認する(ステップS11)。
【0041】
自動設定がOFFの場合(ステップS11でNoの場合)、無線通信機2は、ネットワーク名の設定処理を終了する。この場合、通信制御部22は、予め設定されているネットワーク名を無線通信に用いる。
【0042】
自動設定がONの場合(ステップS11でYesの場合)、信号処理部21は、車載ネットワーク11を介して作業車情報制御器15に要求信号を送信する(ステップS12)。ここで要求信号とは、作業車情報制御器15に作業車識別文字列の送信を要求する信号である。信号処理部21は、取得部の一例に該当する。
【0043】
無線通信機2は、作業車識別文字列を取得する前、作業車情報制御器15に向けて、作業車識別文字列の送信を要求するための要求信号を送信する。作業車情報制御器15は、無線通信機2から要求信号を受信する。この場合、作業車情報制御器15は、記憶されている作業車識別文字列(応答信号ともいう。)を、車載ネットワーク11を介して無線通信機2に送信する。そうすると、信号処理部21は、作業車情報制御器15から作業車識別文字列を受信する(ステップS13)。このようにして、無線通信機2は、車載ネットワーク11を介して作業車情報制御器15から作業車識別文字列を取得する。
【0044】
信号処理部21は、受信した作業車識別文字列を通信制御部22に入力する。通信制御部22は、入力された作業車識別文字列に基づいて新たなネットワーク名を生成する(ステップS14)。一例として、新たなネットワーク名は作業車識別文字列を含む文字列であってよい。新たなネットワーク名は、作業車識別文字列そのものでもよいし、作業車識別文字列に他の文字列を付加したものでもよい。あるいは、新たなネットワーク名は、作業車識別文字列から一部の文字列を除いた文字列であってもよい。また、新たなネットワーク名は、作業員が、作業車をより識別し易いように、作業車識別文字列に基づいて生成された文字列であってもよい。なお、通信制御部22は、生成部の一例に該当すると捉えてもよい。
【0045】
次に、通信制御部22は、生成された新たなネットワーク名と、現在設定されているネットワーク名とを比較する(ステップS15)。例えば、無線通信機2を車載ネットワーク11に接続した後、初めて無線通信機2の電源を投入した場合、両ネットワーク名は一致しない。無線通信機2を車載ネットワーク11に接続した後、無線通信機2の電源の投入が2回目以降の場合、両ネットワーク名は一致する。
【0046】
新たなネットワーク名と現在設定されているネットワーク名とが一致する場合(ステップS15でYesの場合)、無線通信機2は、ネットワーク名の設定処理を終了する。
【0047】
新たなネットワーク名と現在設定されているネットワーク名とが一致しない場合(ステップS15でNoの場合)、通信制御部22は、ネットワーク名として、新たなネットワーク名(作業車識別文字列を含む文字列)を設定する(ステップS16)。通信制御部22は、設定部の一例に該当すると捉えてもよい。
【0048】
以上で説明したネットワーク名の設定処理の後、無線通信機2と携帯端末3とは、無線通信機2に設定されたネットワーク名を用いて無線通信を確立できる状態となる。この無線通信の確立は、例えば、次の手順で行われる。
【0049】
通信制御部22は、ビーコンを定期的にブロードキャスト送信する。ビーコンには、ネットワーク名など無線通信の確立に必要な各種情報が含まれる。携帯端末3は、電波をスキャンし、ビーコンを受信する。携帯端末3は、受信したビーコンからネットワーク名を取得し、表示部31に表示する。ここで、携帯端末3は、複数種類のビーコン(複数のアクセスポイントから送信されたビーコン)を受信した場合には、複数のネットワーク名を表示部31に表示する。
【0050】
携帯端末3の使用者が一のネットワーク名を指定すると、携帯端末3は、そのネットワーク名に対応する通信制御部22に対してプローブ要求を送信する。プローブ要求を受信した通信制御部22は、携帯端末3に対してプローブ応答を送信する。これにより、通信制御部22と携帯端末3との間で無線通信が確立される。
【0051】
ここで、無線通信機2のネットワーク名には、作業車識別文字列が含まれる。一般に、携帯端末3の使用者は、作業車識別文字列、すなわち作業車1の製造番号などを知っている。そのため、使用者は、ネットワーク名を特に記憶していなくても、作業車識別文字列から接続すべきネットワークを判別できる。なお、作業車1は、一例として、製造番号、及び、製品型式などが記載された銘板(不図示)を有してよい。このような銘板は、車体の外面などユーザから視認し易い位置に設けられているとよい。無線通信機2のネットワーク名に用いられる作業車識別文字列は、銘板に記載された情報に関する文字列だと好ましい。
【0052】
また、作業車識別文字列は、作業車1を識別する文字列であるから、使用者は、ネットワーク名からそれに対応する作業車1を特定できる。作業現場に複数の作業車1が存在する場合、携帯端末3の表示部31には、複数のネットワーク名が表示される。この場合でも、ネットワーク名と作業車1との対応関係が明らかであり、使用者にとって目的の作業車1に対応するネットワーク名が分かりやすい。そのため、作業車1と携帯端末3との無線通信の設定が容易である。
【0053】
無線通信機2は、作業車1に対して着脱可能であり、別の作業車1に搭載しなおすことがある。このような無線通信機2は、コネクタ(不図示)を介して作業車1に着脱可能な無線ユニットであってよい。このような作業車1に対して着脱可能な無線通信機2の場合、無線通信機2のネットワーク名は、無線通信機2が新たに搭載された作業車1の作業車識別文字列に基づいて生成された文字列(換言すれば、第1文字列データ)に自動変更される。そのため、作業員が特別の操作をしなくても、無線通信機2のネットワーク名と作業車1との対応関係を維持できる。
【0054】
なお、本実施形態に係る無線通信機2は、無線通信機2の第1モードに対応していない作業車に接続して使用することもできる。この場合には、無線通信機2に予め設定されたネットワーク名を使用する第2モードで、無線通信機2を使用すればよい。
【0055】
無線通信機2は、上述の要求信号を送信してから所定時間が経過した後、応答信号を受信しない場合には、無線通信に用いるネットワーク名として、無線通信機2に予め設定されたネットワーク名を設定してよい。このような構成を採用すれば、本実施形態に係る無線通信機2を、第1モードに対応していない作業車に接続して使用できる。
【0056】
なお、作業車1と携帯端末3との間で無線通信が確立された後、この無線通信を利用して種々の処理を行うことができる。例えば、無線通信機2は、車載ネットワーク11を流れる車内信号を携帯端末3に送信する。携帯端末3は、車内信号に基づいて作業車1の情報を表示する。そうすれば、携帯端末3で作業車1の情報を確認できる。携帯端末3を表示器14の代替手段として用いることができる。
【0057】
また、使用者が携帯端末3を操作すると、携帯端末3から操作信号が送信される。無線通信機2は、操作信号を車載ネットワーク11に出力する。車載ネットワーク11に接続された車載機器は、その操作信号に基づいて処理を行う。携帯端末3を用いて作業車1を遠隔操作できる。携帯端末3を操作器13の代替手段として用いることができる。
【0058】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る無線通信システムを説明する。本実施形態の無線通信システムの構成は第1実施形態の無線通信システムAと同様であるので、説明を省略する(図1参照)。
【0059】
本実施形態の無線通信機2が実行するネットワーク名の設定処理を、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、通信制御部22は、自動設定のON/OFFを確認する(ステップS21)。自動設定がOFFの場合、無線通信機2は、ネットワーク名の設定処理を終了する。この場合、通信制御部22は、予め設定されているネットワーク名を無線通信に用いる。
【0060】
自動設定がONの場合、信号処理部21は、車載ネットワーク11の作業車情報制御器15から作業車識別文字列を取得する(ステップS22)。本実施形態の場合、作業車情報制御器15は、定期的に作業車識別文字列を車載ネットワーク11に出力している。つまり、信号処理部21は、作業車情報制御器15から定期的に出力された作業車識別文字列を取得する。なお、無線通信機2は、無線通信機2の電源がON状態になってから所定時間が経過した後、作業車識別文字列を取得できていない場合には、無線通信機2に予め設定された文字列(換言すれば、第2文字列データ)を、無線通信に用いるネットワーク名として設定してもよい。
【0061】
本実施形態において、信号処理部21は、作業車情報制御器15に要求信号を送信する必要がない。また、作業車情報制御器15は、要求信号に基づく処理を行う必要がない。したがって、車載ネットワーク11の通信が、作業車情報制御器15から信号処理部21に向かう単方向通信であったとしても、信号処理部21は作業車識別文字列を取得できる。
【0062】
その後のステップS23、ステップS24、および、ステップS25の処理は、第1実施形態におけるステップS14、ステップS15、および、ステップS16の処理と同一である。
【0063】
(付記)
参考例1に係る無線通信システムは、
車載ネットワークを有する作業車と、
上記車載ネットワークに接続された作業車情報制御器と、
上記車載ネットワークに接続された無線通信機と、
上記無線通信機と無線接続される携帯端末と、を備える。
また、上記第1例に係る無線通信システムの場合、上記作業車情報制御器には上記作業車を識別する作業車識別文字列が記憶されている。また、上記無線通信機は、上記車載ネットワークを介して上記作業車情報制御器から上記作業車識別文字列を取得する。そして、上記無線通信機は、上記携帯端末との無線通信に用いられるネットワーク名として上記作業車識別文字列を含む文字列を設定する。
【0064】
また、参考例2に係る無線通信システムは、参考例1に係る無線通信システムにおいて、
上記無線通信機は、
上記作業車情報制御器に要求信号を送信し、
上記作業車情報制御器から上記作業車識別文字列を受信した場合に、上記ネットワーク名として上記作業車識別文字列を含む文字列を設定し、
上記作業車情報制御器は、
上記無線通信機から前記要求信号を受信した場合に、上記作業車識別文字列を上記無線通信機に送信する。
【0065】
また、参考例3に係る無線通信システムは、参考例1に係る無線通信システムにおいて、
上記作業車情報制御器は、上記作業車識別文字列を上記車載ネットワークに出力し、上記無線通信機は、上記車載ネットワークから上記作業車識別文字列を取得し、上記ネットワーク名として上記作業車識別文字列を含む文字列を設定する。
【0066】
2018年1月26日出願の特願2018−011078の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【符号の説明】
【0067】
A 無線通信システム
1 作業車
11 車載ネットワーク
15 作業車情報制御器
2 無線通信機
21 信号処理部
22 通信制御部
3 携帯端末
図1
図2
図3