特許第6635296号(P6635296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6635296土石流発生予測システムおよび土石流発生予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6635296
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月22日
(54)【発明の名称】土石流発生予測システムおよび土石流発生予測方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20200109BHJP
   G01W 1/00 20060101ALI20200109BHJP
   G08B 31/00 20060101ALI20200109BHJP
   G08B 27/00 20060101ALI20200109BHJP
【FI】
   E02D17/20 106
   G01W1/00 Z
   G08B31/00 B
   G08B27/00 C
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-15929(P2016-15929)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-133302(P2017-133302A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107467
【弁理士】
【氏名又は名称】員見 正文
(72)【発明者】
【氏名】由利 厚樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄一
(72)【発明者】
【氏名】家島 大輔
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−208075(JP,A)
【文献】 特開2015−232537(JP,A)
【文献】 特開2010−271877(JP,A)
【文献】 特開2008−198073(JP,A)
【文献】 特開2011−047676(JP,A)
【文献】 特開2012−132794(JP,A)
【文献】 特開2000−283800(JP,A)
【文献】 特開2015−094122(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0056923(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
G08B 27/00
G08B 31/00
G01W 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土石流発生を予測するための土石流発生予測システム(10)であって、
渓流の下流域に設置された水位計(11)と、
該水位計によって計測された計測水位を送信するための通信装置(12)と、
該通信装置から送信されてくる前記計測水位のみに基づいて、発災から1時間以上前に土石流発生を予測するための予測装置(20)とを具備し、
前記予測装置が、
前記計測水位に基づいて水位が最高水位(HWL)に達した最高水位時点(t0)を検出し、
前記最高水位時点以降の前記計測水位に基づいて求めた所定の時間間隔毎の水位下降率(Rn)で水位が下降したときの予測水位(PWLn)が判定基準水位となる判定基準水位到達時点(T)を求め、
前記判定基準水位到達時点が前記最高水位時点から1時間以内であると「土石流が発生する」と判定する、
ことを特徴とする、土石流発生予測システム。
【請求項2】
前記水位計が、ロッド型の土壌水分計であり、
該土壌水分計のロッドの一部が、前記渓流の底の土壌に挿し込まれて固定される、
ことを特徴とする、請求項1記載の土石流発生予測システム。
【請求項3】
前記水位計が、前記渓流の他の河川との最終合流点と該渓流の前記下流域近傍の集落との間に設置されることを特徴とする、請求項1または2記載の土石流発生予測システム。
【請求項4】
前記予測装置が、
前記計測水位をリアルタイムで監視するとともに、該計測水位を水位メモリ(23)に格納するための水位監視部(22)と、
外部から動作開始指令信号(Sa)が入力されると、該動作開始指令信号が入力された時点以降の計測水位を前記水位メモリから読み出して、該読み出した計測水位に基づいて水位が最高水位(HWL)に達した時点である最高水位時点(t0)を検出するとともに、前記水位メモリから読み出した該最高水位時点以降の計測水位に基づいて所定の時間間隔毎に水位下降率(Rn)求め、該求めた水位下降率で水位が下降したときの予測水位(PWLn)が判定基準水位となる時点である判定基準水位到達時点(T)を求めたのち、該求めた判定基準水位到達時点が前記最高水位時点から1時間以内であると土石流警報を発するように指示する警報発生指示信号(Sb)を出力するための土石流発生予測部(24)と、
該土石流発生予測部から前記警報発生指示信号が入力されると前記土石流警報を通知するための土石流警報発生部(25)と、
を備えることを特徴とする、請求項1乃至3いずれかに記載の土石流発生予測システム。
【請求項5】
前記動作開始指令信号が、気象庁から大雨注意報や豪雨注意報が発せられると、前記予測装置に入力されることを特徴とする、請求項4記載の土石流発生予測システム。
【請求項6】
前記水位監視部が、平常時の前記計測水位の平均値を求め、該求めた計測水位の平均値である平常時水位(NWL)を前記水位メモリに格納し、
前記判定基準水位が前記平常時水位とされる、
ことを特徴とする、請求項4または5記載の土石流発生予測システム。
【請求項7】
請求項4乃至6いずれかに記載の土石流発生予測システムを用いて、渓流の下流域の水位を計測し、該計測した水位である計測水位のみに基づいて、発災から1時間以上前に土石流発生を予測することを特徴とする、土石流発生予測方法。
【請求項8】
気象庁から大雨注意報や豪雨注意報が発せられると、外部から前記動作開始指令信号(Sa)を入力する第1のステップ(S11)と、
前記動作開始指令信号が入力されると、前記土石流発生予測部(24)が、前記水位メモリ(23)から該動作開始指令信号が入力された時点以降の計測水位を読み出したのち、該読み出した計測水位に基づいて水位が最高水位(HWL)に達した時点である最高水位時点(t0)を検出する第2のステップ(S12)と、
前記土石流発生予測部が、前記水位メモリから読み出した前記最高水位時点以降の計測水位に基づいて所定の時間間隔毎に水位下降率(Rn)求める第3のステップ(S13)と、
前記土石流発生予測部が、前記水位下降率で水位が下降したときの予測水位(PWLn)が前記判定基準水位となる時点である判定基準水位到達時点(T)を求める第4のステップ(S14)と、
前記求めた判定基準水位到達時点が前記最高水位時点から1時間以内であるか否かを判定する第5のステップ(S15)と、
前記土石流発生予測部が、前記判定基準水位到達時点が前記最高水位時点から1時間以内であると、「土石流が発生する」と判定して、前記警報発生指示信号を出力する第6のステップ(S16)と、
を具備することを特徴とする、請求項7記載の土石流発生予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土石流発生を早期に予測するのに好適な土石流発生予測システムおよび土石流発生予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人家に影響を及ぼす恐れのある土石流危険渓流は全国で約18万箇所あり、土砂災害防止のために、ハード面だけでなく、ソフト面の対策として土砂災害予測手法の開発が求められている。
【0003】
従来、土砂災害予測手法として、以下に示すものがある。
(1)下記の特許文献1記載の土砂災害危機管理システム
豪雨時等に、関係する行政機関が観測した情報(雨量計、土石流計および地すべり計による雨量、山体変位およびその加工データ等)を収集・管理し、インターネットを介して防災情報提供サイトや住民に提供する。
(2)下記の特許文献2記載の土砂災害監視システム
斜面崩壊の恐れのある山体をレーザー距離計および複数の反射板で監視し、相対変位から山体の変位量を確認する。
(3)下記の特許文献3記載の土砂災害予測システム
斜面崩壊の恐れのある山体をカメラで監視し、画像処理とGIS機能とを駆使して山体の変位量を立体的に確認する。
(4)下記の特許文献4記載の避難勧告判断支援システム
前兆現象による危険度レベルと降雨による危険度レベルとの組合せによって1kmメッシュ内の総合的な危険度レベルを求める。
(5)下記の特許文献5記載の河川観測システム
土石流発生を正確に検知するために、水位計測部によって計測された水位が設定水位に達し、かつ、流速計測部により計測された流速が設定流速に達した場合に、制御部の判定処理部で土石流が発生したと判定し、その旨を示す警報信号を通信I/F部から通信回線を介して管理センタへ送信するとともに、カメラで得られた河川状況を示す画像データを管理センタへ送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−247238号公報
【特許文献2】特開2003−315114号公報
【特許文献3】特開2002−365372号公報
【特許文献4】特開2008−198073号公報
【特許文献5】特開2001−248129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1〜3記載の土砂災害予測手法は、土石流は山体変位が生じたのち直ぐに発生するため、山体変位を検知してから避難するまでの時間的余裕がほとんどないという問題や、雨量計で正確に雨量を測定するには周囲に樹木等のない場所に設置する必要があるため、土石流危険渓流等に設置できない場合があり、局所的な豪雨に対応できないという問題がある。
【0006】
上記の特許文献4記載の土砂災害予測手法は、前兆現象の内容に応じた配点を設定し、避難単位別に通報された前兆現象情報を用いて算出される点数に基づいて前兆現象による危険度レベルを判定するとともに、通報のあった地区と近隣の地区では同様の前兆現象が発生している可能性があるため、通報のあった地区からある程度のバッファを設け、バッファ内の地区にも同様の得点を与えることにより設定するので(公報の段落0023,0024参照)、前兆現象による危険度レベルの設定が必ずしも正確でないという問題がある。
【0007】
上記の特許文献5記載の土砂災害予測手法は、土石流発生を正確に検知するために、水位計測用の水位計測部、流速計測用の流速計測部および河川状況を示す画像データ取得用のカメラを設置する必要があるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、水位計を設置するだけで土石流発生を早期に予測することができる土石流発生予測システムおよび土石流発生予測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の土石流発生予測システムは、土石流発生を予測するための土石流発生予測システム(10)であって、渓流の下流域に設置された水位計(11)と、該水位計によって計測された計測水位を送信するための通信装置(12)と、該通信装置から送信されてくる前記計測水位のみに基づいて、発災から1時間以上前に土石流発生を予測するための予測装置(20)とを具備し、前記予測装置が、前記計測水位に基づいて水位が最高水位(HWL)に達した第1の時点(t0)を検出し、前記第1の時点以降の前記計測水位に基づいて求めた所定の時間間隔毎の水位下降率(Rn)で水位が下降したときの予測水位(PWLn)が判定基準水位となる第2の時点(T)を求め、前記第2の時点が前記第1の時点から1時間以内であると「土石流が発生する」と判定することを特徴とする。
ここで、前記水位計が、ロッド型の土壌水分計であり、該土壌水分計のロッドの一部が、前記渓流の底の土壌に挿し込まれて固定されてもよい。
前記水位計が、前記渓流の他の河川との最終合流点と該渓流の前記下流域近傍の集落との間に設置されてもよい。
前記予測装置が、前記計測水位をリアルタイムで監視するとともに、該計測水位を水位メモリ(23)に格納するための水位監視部(22)と、外部から動作開始指令信号(Sa)が入力されると、該動作開始指令信号が入力された時点以降の計測水位を前記水位メモリから読み出して、該読み出した計測水位に基づいて水位が最高水位(HWL)に達した時点である最高水位時点(t0)を検出するとともに、前記水位メモリから読み出した該最高水位時点以降の計測水位に基づいて所定の時間間隔毎に水位下降率(Rn)求め、該求めた水位下降率で水位が下降したときの予測水位(PWLn)が判定基準水位となる時点である判定基準水位到達時点(T)を求めたのち、該求めた判定基準水位到達時点が前記最高水位時点から1時間以内であると土石流警報を発するように指示する警報発生指示信号(Sb)を出力するための土石流発生予測部(24)と、該土石流発生予測部から前記警報発生指示信号が入力されると前記土石流警報を通知するための土石流警報発生部(25)とを備えてもよい。
前記動作開始指令信号が、気象庁から大雨注意報や豪雨注意報が発せられると、前記予測装置に入力されてもよい。
前記水位監視部が、平常時の前記計測水位の平均値を求め、該求めた計測水位の平均値である平常時水位(NWL)を前記水位メモリに格納し、前記判定基準水位が前記平常時水位とされてもよい。
本発明の土石流発生予測方法は、本発明の土石流発生予測システムを用いて、渓流の下流域の水位を計測し、該計測した水位である計測水位のみに基づいて、発災から1時間以上前に土石流発生を予測することを特徴とする。
ここで、気象庁から大雨注意報や豪雨注意報が発せられると、外部から前記動作開始指令信号(Sa)を入力する第1のステップ(S11)と、前記動作開始指令信号が入力されると、前記土石流発生予測部(24)が、前記水位メモリ(23)から該動作開始指令信号が入力された時点以降の計測水位を読み出したのち、該読み出した計測水位に基づいて水位が最高水位(HWL)に達した時点である最高水位時点(t0)を検出する第2のステップ(S12)と、前記土石流発生予測部が、前記水位メモリから読み出した前記最高水位時点以降の計測水位に基づいて所定の時間間隔毎に水位下降率(Rn)求める第3のステップ(S13)と、前記土石流発生予測部が、前記水位下降率で水位が下降したときの予測水位(PWLn)が前記判定基準水位となる時点である判定基準水位到達時点(T)を求める第4のステップ(S14)と、前記求めた判定基準水位到達時点が前記最高水位時点から1時間以内であるか否かを判定する第5のステップ(S15)と、前記土石流発生予測部が、前記判定基準水位到達時点が前記最高水位時点から1時間以内であると、「土石流が発生する」と判定して、前記警報発生指示信号を出力する第6のステップ(S16)とを具備してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の土石流発生予測システムおよび土石流発生予測方法は、以下に示す効果を奏する。
(1)計測水位のみに基づいて発災から1時間以上前に土石流発生を予測することにより、水位計を設置するだけで土石流発生を早期に予測することができる。
(2)計測器として水位計のみを用いるため、設置が容易であるとともに、計測結果が樹木等に影響されないようにすることができる。
(3)土石流発生の前兆現象の定量的なリアルタイムモニタリングが可能である。
(4)現象のメカニズムや予測手法がシンプルであり、住民がシステムを理解し易い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例による土石流発生予測システム10について説明するための図であり、(a)は土石流発生予測システム10の構成を示すブロック図であり、(b)は土石流発生予測システム10の動作について説明するための土石流が発生する前の豪雨による水位の変化の一例を示す図である。
図2図1に示した土石流発生予測部24の動作について説明するためのフローチャートである。
図3】土石流が発生しないときの豪雨による水位の変化の一例を示す図である。
図4】土石流が発生する前の豪雨による水位の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記の目的を、渓流の下流域に設置した水位計によって計測した計測水位のみに基づいて発災から1時間以上前に土石流発生を予測することにより実現した。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の土石流発生予測システムおよび土石流発生予測方法の実施例について図面を参照して説明する。
本発明の土石流発生予測システムおよび土石流発生予測方法は、土石流が起こる際の前兆現象の一つに「降雨があるのに水位が急激に低下する」という水位の挙動があり、この前兆現象は山腹崩壊による天然ダムの形成によって引き起こされるとされている点と、図4に一例を示すように豪雨による水位の上昇は発災の2時間以上前に確認されているとともに天然ダムによる水位の急激な低下は発災の1時間前までに確認されている点と、発災の1時間前であれば避難するのに十分な時間的余裕がある点とに着目して、「豪雨で水位が上昇したのちに天然ダムで渓流が堰き止められて水位が急激に低下する」という水位のアップダウンを水位計で水位を計測することによって監視し、水位計で計測した水位のみに基づいて発災から1時間以上前に土石流発生を予測することを特徴とする。
【0014】
そのため、本発明の一実施例による土石流発生予測システム10は、図1(a)に示すように、水位計11と、水位計11に接続された通信装置12と、予測装置20とを具備する。
【0015】
ここで、水位計11としては、平常時には渓流に流水がない場合も想定されることから、ロッド型の土壌水分計(導電率測定型)を用いて、土壌水分計のロッドの一部を渓流の底の土壌に挿し込んで固定するのが好ましい。
また、水位計11は、雨量計のように計測結果が樹木等に影響されることを防止するために、渓流の下流域(好ましくは、他の河川との最終合流点と下流域近傍の集落との間)に設置する。
水位計11によって計測された水位(以下、「計測水位」と称する。)は、予測装置20において連続してリアルタイムにモニタリングするために、通信装置12を介して予測装置20に送信される。
【0016】
予測装置20は、水位計11によって計測された計測水位のみに基づいて発災から1時間以上前に土石流発生を予測するためのものであり、送受信部21と、水位監視部22と、水位メモリ23と、土石流発生予測部24と、土石流警報発生部25とを備える。
【0017】
ここで、送受信部21は、無線または有線等で通信装置12と相互接続されているとともに、インターネット通信網等を介して防災情報提供サイトや住民の携帯端末等と相互接続されている。
【0018】
水位監視部22は、水位計11から通信装置12および送受信部21を介して入力される計測水位をリアルタイムで監視するとともに、計測水位を水位メモリ23に格納するためのものである。
また、水位監視部22は、平常時の計測水位の平均値を例えば1日毎に求め、求めた計測水位の平均値(以下、「平常時水位NWL」と称する。)を水位メモリ23に格納する。
【0019】
土石流発生予測部24は、外部から動作開始指令信号Saが入力されると、水位メモリ23からその時点以降の計測水位および判定基準水位を水位メモリ23から読み出して、読み出した計測水位および判定基準水位(例えば、平常時水位NWL)に基づいて土石流の前兆現象を定量的に把握して、土石流が発生するか否かを判定するためのものである。
土石流発生予測部24は、「土石流が発生する」と判定すると、「土石流が発生する可能性がある」旨を示す土石流警報を発するように指示する警報発生指示信号Sbを土石流警報発生部25に出力する。
【0020】
土石流警報発生部25は、警報発生指示信号Sbが土石流発生予測部24から入力されると、土石流警報を防災情報提供サイトや住民の携帯端末等に送信するように送受信部21に指示する。
【0021】
次に、土石流発生予測部24の動作について、図1(b),図2および図3を参照して説明する。
なお、以下では、判定基準水位を平常時水位NWLとして説明する。
【0022】
気象庁等から大雨注意報や豪雨注意報等が発せられると、予測装置20と相互接続された端末装置等から動作開始指令信号Saが土石流発生予測部24に入力される(ステップS11)。
【0023】
土石流発生予測部24は、動作開始指令信号Saが入力されると、水位メモリ23からその時点以降の計測水位およびその時点の平常時水位NWLを読み出すとともに、読み出した計測水位に基づいて水位が最高値(以下、「最高水位HWL」と称する。)に達した時点t0(以下、「最高水位時点t0」と称する。)を検出する(ステップS12)。
【0024】
土石流発生予測部24は、最高水位時点t0を検出すると、水位メモリ23から読み出した最高水位時点t0以降の計測水位に基づいて3分(所定の時間間隔)毎の計測水位(以下、最高水位時点t0から3×n分(nは整数)経過後の計測水位を「第nの計測水位WLn」と称する。)の差分値を算出し、算出した差分値に基づいて第nの水位下降率Rnを求める(ステップS13)。
例えば、
第1の水位下降率R1=最高水位HWL−第1の計測水位WL1
第2の水位下降率R2=第2の計測水位WL2−第1の計測水位WL1
【0025】
続いて、土石流発生予測部24は、求めた第nの水位下降率Rnで水位が下降したときの第nの予測水位PWLnが平常時水位NWL(判定基準水位)となる時点T(以下、「判定基準水位到達時点T」と称する。)を求めたのち、求めた判定基準水位到達時点Tが最高水位時点t0から1時間以内であるか否かを判定する(ステップS14,S15)。
その結果、判定基準水位到達時点Tが最高水位時点t0から1時間以内でない場合には、ステップS13からの動作を繰り返す。
【0026】
一方、判定基準水位到達時点Tが最高水位時点t0から1時間以内である場合には、「土石流が発生する」と判定して、「土石流が発生する可能性がある」旨を示す土石流警報を発するように指示する警報発生指示信号Sbを土石流警報発生部25に出力する(ステップS16)。
【0027】
これにより、例えば図4に示したような土石流が発生する前の豪雨による水位の変化があった場合には、最高水位HWLと最高水位時点t0から3分後の第1の計測水位WL1との差分値(=HWL−WL1)に基づいて求めた第1の水位下降率R1で水位が下降したときの第1の予測水位PWL1が平常時水位NWL(判定基準水位)となる時点t1(=判定基準水位到達時点T)は最高水位時点t0から1時間以内とならないため(図1(b)に一点鎖線で示した直線参照)、最高水位時点t0から3分経過後には、土石流発生予測部24は「土石流が発生する」とは判定しない。
しかし、最高水位時点t0から3分後の第1の計測水位WL1と最高水位時点t0から6分後の第2の計測水位WL2との差分値(=WL1−WL2)に基づいて求めた第2の水位下降率R2で水位が下降したときの第2の予測水位PWL2が平常時水位NWL(判定基準水位)となる時点t2(=判定基準水位到達時点T)は最高水位時点t0から1時間以内になるため(図1(b)に二点鎖線で示した直線参照)、最高水位時点t0から6分経過後に、土石流発生予測部24は「土石流が発生する」と判定する。
その結果、計測水位のみに基づいて発災から1時間以上前に土石流発生を予測して、避難するのに十分な時間的余裕をもって「土石流が発生する可能性がある」旨を通知することができる。
【0028】
また、気象庁等から大雨注意報や豪雨注意報等が発せられても土石流が発生しない場合には、図3に一例を示すように水位は最高水位HWLに達したのち徐々に下降しながら平常時水位NWL(判定基準水位)になるため、判定基準水位到達時点Tが最高水位時点t0から1時間以内となることはない(図3に一点鎖線で示した直線参照)。
その結果、このような場合に予測装置20が「土石流が発生する可能性がある」旨を通知することはないため、誤警報を発することを防止できる。
【0029】
以上の説明では、気象庁等から大雨注意報や豪雨注意報等が発せられ際に動作開始指令信号Saを予測装置20の土石流発生予測部24に入力したが、気象庁等からの大雨注意報や豪雨注意報等に応答して動作開始指令信号Saを土石流発生予測部24に自動的に入力するようにしてもよい。
また、所定の時間間隔を3分間隔としたが、任意の秒単位または分単位間隔としてもよい。
さらに、判定基準水位を平常時水位NWLとしたが、これ以外の水位(例えば、水位=0)としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 土石流発生予測システム
11 水位計
12 通信装置
20 予測装置
21 送受信部
22 水位監視部
23 水位メモリ
24 土石流発生予測部
25 土石流警報発生部
HWL 最高水位
NWL 平常時水位
PWLn 第nの予測水位
WLn 第nの計測水位
n 第nの水位下降率
Sa 動作開始指令信号
Sb 警報発生指示信号
0 最高水位時点
1,t2 時点
T 判定基準水位到達時点
S11〜S16 ステップ
図1
図2
図3
図4