特許第6635529号(P6635529)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6635529-監視システム及び移動ロボット装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6635529
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】監視システム及び移動ロボット装置
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20200120BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
   H04Q9/00 301B
   G08B25/00 510M
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-548532(P2018-548532)
(86)(22)【出願日】2016年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2016082972
(87)【国際公開番号】WO2018083798
(87)【国際公開日】20180511
【審査請求日】2019年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】512022479
【氏名又は名称】株式会社ラムロック
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】藤本 隆二
【審査官】 吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−189114(JP,A)
【文献】 特開2011−128911(JP,A)
【文献】 特開2010−029314(JP,A)
【文献】 特開2005−269413(JP,A)
【文献】 米国特許第9422139(US,B1)
【文献】 特開2002−293298(JP,A)
【文献】 特開2014−192784(JP,A)
【文献】 特開2007−058530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B1/00−5/00
35/00−99/00
A62C2/00−99/00
B64C13/20
B64D47/08
G08B17/00−31/00
H03J9/00−9/06
H04N7/18
H04Q9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立移動が可能であると共に、所定の目標位置に移動を開始する発進情報を受信する発進情報受信部と、目標位置に到達した際に所定の作業を行う制御情報が記録された制御情報記録部とを有する移動ロボット装置と、
監視対象エリア内の撮像情報を取得する第1の撮像手段と、
該第1の撮像手段が取得した撮像情報の撮像領域内に異常が検知された際に、前記移動ロボット装置を目標位置へと移動せしめる発進情報を送信する発進情報送信部を有する監視センター部とを備え、
前記移動ロボット装置は位置情報を送信する飛行位置情報送信部を有し、
前記監視センター部は、監視対象エリアの地形情報を記録した地形情報記録部を有すると共に、前記飛行位置情報送信部から送信された位置情報を受信し、前記移動ロボット装置が目的位置に到達せずに停止した位置の位置情報を記録する停止位置情報記録部と、前記停止位置情報及び前記地形情報に基づき、前記発進情報に同停止位置情報に該当する位置を回避する旨の回避情報を加える回避情報処理部を有する
監視システム。
【請求項2】
前記移動ロボット装置は飛行が可能なドローン装置である
請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記移動ロボット装置は、所定の物体を把持する物体把持部を有し、
前記制御情報記録部には、前記物体把持部が把持した物体を目標位置で解放する情報が記録された
請求項1又は請求項2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記移動ロボット装置は、撮像情報を取得する第2の撮像手段と、該第2の撮像手段が取得した撮像情報を外部の端末画面に表示可能にせしめる信号を送信する撮像情報表示信号送信部を有する
請求項1、請求項2又は請求項3に記載の監視システム。
【請求項5】
監視対象エリア内から得られた所定のパラメーターの情報を取得するパラメーター情報取得手段と、
該パラメーター情報取得手段が取得したパラメーター情報が所定の条件を満たすか否かを判断すべく構成されたパラメーター情報判定部と、該パラメーター情報判定部が取得したパラメーター情報が所定の条件を満たすと判断した場合に、前記移動ロボット装置を目標位置へと移動せしめる発進情報を送信する発進情報送信部を有する監視センター部とを備える
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の監視システム。
【請求項6】
前記パラメーター情報は、温度情報、湿度情報、圧力情報、輝度情報、音量情報、色調情報、臭気情報から選択される少なくとも1つの情報である
請求項5に記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は監視システム及び移動ロボット装置に関する。詳しくは、異常発生時に迅速な対応が可能であり、広範囲の監視対象エリアにも適用可能な監視システム及び移動ロボット装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自走式の移動ロボットを用いた監視システムや警報装置の利用が広がってきている。監視に関わる人手が減らせる点や、危険が伴う現場でも確認作業が行えること等から、様々な用途への活用が期待されている。
【0003】
移動ロボットは規定されたプログラムに沿って所定の監視エリアを見回り、侵入者の検知や火災等、何等かの異常を検知した場合に、映像の情報を外部に送信したり、警報音を発したりする等の機能を備えている。
【0004】
こうしたなか、家電機器の制御機能を備えた掃除ロボットで、侵入者を検知した際に、テレビをリモコン信号で操作して侵入者を威嚇する警報システムが存在し、特許文献1に記載されたような警報システムが提案されている。
【0005】
また、保護したい被監視者を、三次元的な移動が可能な無線操縦無人機(以下、「ドローン装置」と称する。)にて監視する監視システムも存在し、例えば、特許文献2に記載の監視システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−153972号公報
【特許文献2】特開2015−207149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1に記載された警報システムは、監視対象が、掃除ロボットが設置された住宅内という非常に限定的なものであり、広範囲なエリアの監視に適用されないものとなっている。
【0008】
特許文献2に記載された監視システムでは、飛行可能なドローン装置を用いるため、広範囲なエリアの監視が可能となるが、個別の被監視者の保護が目的であり用途が限定されている。即ち、例えば、事故や災害等が発生した際に迅速に対応しうるような監視システムとはなっていない。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、異常発生時に迅速な対応が可能であり、広範囲の監視対象エリアにも適用可能な監視システム及び移動ロボット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の監視システムは、自立移動が可能であると共に、所定の目標位置に移動を開始する発進情報を受信する発進情報受信部と、目標位置に到達した際に所定の作業を行う制御情報が記録された制御情報記録部とを有する移動ロボット装置と、監視対象エリア内の撮像情報を取得する第1の撮像手段と、該第1の撮像手段が取得した撮像情報の撮像領域内に異常が検知された際に、前記移動ロボット装置を目標位置へと移動せしめる発進情報を送信する発進情報送信部を有する監視センター部とを備える。
【0011】
ここで、自立移動が可能である移動ロボット装置によって、移動ロボット装置が移動可能な範囲を監視対象にすることができる。
【0012】
また、移動ロボット装置が、所定の目標位置に移動を開始する発進情報を受信する発進情報受信部を有することによって、発進情報に基づき移動ロボット装置が目標位置に向けて迅速に動き出すものとなる。
【0013】
また、移動ロボット装置が、目標位置に到達した際に所定の作業を行う制御情報が記録された制御情報記録部を有することによって、移動ロボット装置が目標位置に到達した際に、予め規定した所定の作業を行わせることが可能となる。
【0014】
また、監視対象エリア内の撮像情報を取得する第1の撮像手段によって、監視対象エリアの撮像情報を元に、異常の有無の確認作業を行うことが可能となる。
【0015】
また、第1の撮像手段が取得した撮像情報の撮像領域内に異常が検知された際に、移動ロボット装置を目標位置へと移動せしめる発進情報を送信する発進情報送信部を有する監視センター部によって、監視センター部からの指示で移動ロボット装置を目標位置に発進させるものとなる。なお、ここでいう「撮像領域内に異常が検知された際」とは、例えば、監視作業者が第1の撮像手段によって得られた撮像情報を見ながら異常を確認した状態を意味するものである。
【0016】
また、監視センター部が監視対象エリアの地形情報を記録した地形情報記録部を有する場合には、監視対象エリアの地形情報に基づく発進情報を移動ロボット装置に送信することが可能となる。即ち、例えば、詳細な目標位置の情報の設定や、監視対処エリア内における移動ロボット装置が移動する最短ルートの情報の提供が可能となる。
【0017】
また、移動ロボット装置が、飛行が可能なドローン装置である場合には、より広範囲な地域を監視対象エリアとすることが可能となる。
【0018】
また、移動ロボット装置が、所定の物体を把持する物体把持部を有する場合には、移動ロボット装置に物体を把持させることが可能となる。ここでいう所定の物体とは、例えば、自動体外式除細動器(AED)、浮き輪、遭難時用の食糧、消火剤、カラーボール等、対応する用途に応じて種々選択しうるものである。
【0019】
また、移動ロボット装置が、所定の物体を把持する物体把持部を有し、制御情報記録部に、物体把持部が把持した物体を目標位置で解放する情報が記録された場合には、目標位置に物体を持っていくことが可能となる。
【0020】
また、移動ロボット装置が、撮像情報を取得する第2の撮像手段と、第2の撮像手段が取得した撮像情報を外部の端末画面に表示可能にせしめる信号を送信する撮像情報表示信号送信部を有する場合には、移動ロボット装置が撮影した撮像情報を外部の端末にて確認可能となる。この結果、移動ロボット装置の移動時に取得された撮像情報や、目標位置の撮像情報等を取得し、監視作業者がより詳細な状況確認を行うことが可能となる。
【0021】
また、移動ロボット装置が位置情報を送信する位置情報送信部を有し、監視センター部が位置情報送信部から送信された位置情報を受信し、移動ロボット装置が目的位置に到達せずに停止した位置の位置情報を記録する停止位置情報記録部と、停止位置情報及び地形情報に基づき、発進情報に停止位置情報に該当する位置を回避する旨の回避情報を加える回避情報処理部を有する場合には、移動ロボット装置が目標位置に滞りなく到達する精度を向上させることができる。即ち、例えば、移動ロボット装置が建造物にぶつかったり、強風に煽られたりして止まった際に、移動できなくなった場所の位置情報を次回の発進の際の参考情報として反映させることが可能となる。
【0022】
また、上記の目的を達成するために、本発明の監視システムは、自立移動が可能であると共に、所定の目標位置に移動を開始する発進情報を受信する発進情報受信部と、目標位置に到達した際に所定の作業を行う制御情報が記録された制御情報記録部とを有する移動ロボット装置と、監視対象エリア内から得られた所定のパラメーターの情報を取得するパラメーター情報取得手段と、該パラメーター情報取得手段が取得したパラメーター情報が所定の条件を満たすか否かを判断すべく構成されたパラメーター情報判定部と、該パラメーター情報判定部が取得したパラメーター情報が所定の条件を満たすと判断した場合に、前記移動ロボット装置を目標位置へと移動せしめる発進情報を送信する発進情報送信部を有する監視センター部とを備える。
【0023】
ここで、監視対象エリア内から得られた所定のパラメーターの情報を取得するパラメーター情報取得手段によって、監視対象エリアの状況を、所定のパラメーターに基づき確認することが可能となる。
【0024】
また、監視対象エリア内から得られた所定のパラメーターの情報を取得するパラメーター情報取得手段と、パラメーター情報取得手段が取得したパラメーター情報が所定の条件を満たすか否かを判断すべく構成されたパラメーター情報判定部によって、監視対処エリアの状況を反映したパラメーターと、そのパラメーターの内容に応じた判定を行うことが可能となる。即ち、例えば、何等かのパラメーターの情報と、そのパラメーターの基準値を設定して、取得したパラメーターが基準値を超えたか否かを判定することで、異常を検知する構成とすることが可能となる。
【0025】
また、監視センター部が、パラメーター情報判定部が取得したパラメーター情報が所定の条件を満たすと判断した場合に、移動ロボット装置を目標位置へと移動せしめる発進情報を送信する発進情報送信部を有することによって、取得したパラメーターの情報をきっかけに異常を検知して、移動ロボット装置を発進させることが可能となる。
【0026】
また、パラメーター情報が、温度情報、湿度情報、圧力情報、輝度情報、音量情報、色調情報、臭気情報から選択される少なくとも1つの情報である場合には、各情報の取得した値を元に異常の有無を判定して、移動ロボット装置を発進させることが可能となる。
【0027】
また、上記の目的を達成するために、本発明の監視システムは、監視対象エリア内から取得された撮像情報の撮像領域内に異常が検知された際に、自立移動が可能かつ目標位置に到達した際に所定の作業を行う制御情報が記録された移動ロボット装置を、目標位置へと移動せしめる発進情報を同移動ロボット装置に送信する発進情報送信部を有する監視センター部とを備える。
【0028】
ここで、監視対象エリア内から取得された撮像情報の撮像領域内に異常が検知された際に、自立移動が可能かつ目標位置に到達した際に所定の作業を行う制御情報が記録された移動ロボット装置を、目標位置へと移動せしめる発進情報を移動ロボット装置に送信する発進情報送信部によって、移動ロボット装置を目標位置へと迅速に発進させることが可能となる。また、移動ロボット装置が目標位置に到達した際に、予め規定した所定の作業を行わせることが可能となる。
【0029】
また、上記の目的を達成するために、本発明の移動ロボット装置は、自立移動が可能であると共に、監視対象エリア内から取得された撮像情報の撮像領域内に異常が検知された際に、所定の目標位置に移動を開始する発進情報を受信する発進情報受信部と、目標位置に到達した際に所定の作業を行う制御情報が記録された制御情報記録部とを備える。
【0030】
ここで、監視対象エリア内から取得された撮像情報の撮像領域内に異常が検知された際に、所定の目標位置に移動を開始する発進情報を受信する発進情報受信部によって、発進情報に基づき移動ロボット装置が目標位置に向けて迅速に動き出すものとなる。
【0031】
また、目標位置に到達した際に所定の作業を行う制御情報が記録された制御情報記録部によって、移動ロボット装置が目標位置に到達した際に、予め規定した所定の作業を行わせることが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る監視システム及び移動ロボット装置は、異常発生時に迅速な対応が可能であり、広範囲の監視対象エリアにも適用可能なものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明を適用した監視システムの内容を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した監視システムの内容を示す概略ブロック図である。なお、以下に示す構造は本発明の一例であり、本発明の内容はこれに限定されるものではない。
【0035】
図1に示すように、本発明を適用した監視システムの一例である監視システム1は、監視センター部2と、監視カメラ3と、ドローン装置4を有している。なお、ここでいうドローン装置4とは、遠隔操縦または自律式飛行が可能な無人航空機を意味するものである。
【0036】
監視システム1は一定範囲の監視対象エリアの監視を行い、異常が検知された場合にドローン装置4を発進させて、発生した異常に対して対処するためのシステムである。
【0037】
監視カメラ3は映像情報を取得するためのツールであり、監視システム1の監視対象エリア内に設置される。監視カメラ3はリアルタイムの映像の情報を取得し、監視センター部2に映像情報を送信する。監視カメラ3は、例えば、監視対象エリアが広く見渡せる高台や、事故が発生する確率の高い場所等、エリア内の複数箇所に設置されている。
【0038】
ドローン装置4は自律式の飛行装置であり、監視対象エリア内に設置されたドローン待機位置に配置される。監視センター部2からの発進情報に基づき、ドローン待機位置からドローン装置4が飛行を開始する。また、ドローン装置4は遠隔操縦も可能に構成されている。また、ドローン装置4及びドローン待機位置は、1つの監視対象エリア内に複数設けられる場合もある。
【0039】
ここで、本発明を適用した監視システム及び移動ロボット装置では、移動ロボット装置が飛行可能なドローン装置に限定されるものではなく、自立移動が可能であり、記録された制御情報または外部から受信した制御情報に基づき所定の対処作業が可能なロボットであれば充分である。例えば、車輪が駆動して地面を移動するタイプの地上を移動するロボットであっても採用可能である。但し、ドローン装置4を利用することで、監視対象エリアをより広範囲に設定することができ、目標位置への迅速な到達を実現することができる。
【0040】
また、必ずしもドローン待機位置が監視対象エリア内に設置される必要はなく、監視対象エリアに迅速に移動が可能な位置であれば、対象エリア外にドローン待機位置が設置されてよい。
【0041】
監視対象エリア内の地形情報データ、より詳細には3次元座標データに基づきドローン装置4の飛行は制御されている。即ち、監視対象エリア内のx軸、y軸の水平方向の座標データと、z軸の高さ方向の座標データに基づき、ドローン装置4の飛行が制御される。また、z軸の高さ方向の座標データは、地形の起伏だけでなく、監視対象エリア内の建造物等の一定の高さを有し、ドローン装置4の飛行の障害になりうるものも記録されている。これにより、ドローン装置4は障害物を回避しての飛行が可能となる。
【0042】
ここで、ドローン装置の飛行の制御が3次元座標データに基づくものに限定される必要はない。例えば、更なる機能として、既知の変位センサーや測長センサー等を設けて、物体との衝突を回避する構成にしてもよい。
【0043】
ドローン装置4は物体を把持可能なアーム部5を有している。アーム部5は、物体を把持した状態でドローン装置4が安定して飛行可能な重量の物体を把持して、目標位置に搬送するための部材である。アーム部5は、予め規定された制御情報または監視センター部2から送信された追加制御情報に基づき、物体の把持と解放が可能となっている。
【0044】
また、ドローン装置4は、搭載カメラ6を有しており、飛行するドローン装置4から撮影した映像情報を監視センター部2に送信可能に構成されている。
【0045】
また、ドローン装置4はGPS部7を有しており、既知のGPS(Global Positioning System)を利用して、自身の飛行位置情報を監視センター部2に送信可能に構成されている。なお、この位置情報は、監視対象エリア内における3次元座標データで示されるものである。
【0046】
また、ドローン装置4は音声発信部8を有している。音声発信部8を介して、予めドローン装置4に記録された音声情報や、監視センター部2に所在する監視作業者の音声情報を発することができる。また、音声発信部8からは警報音等を発することもできる。
【0047】
更に、ドローン装置4は音声受信部9を有している。音声受信部9は、ドローン装置4の近傍の音声、物音等の音を拾い、監視センター部9に音声情報を送信することができる。
【0048】
ドローン装置4は発進情報受信部10を有している。発進情報受信部10は、監視センター部2より送信される発進情報を受信し、目標位置への発進の起点となる。なお、発進情報の詳細な内容については後述する。
【0049】
ドローン装置4は制御情報記録部11を有しており、発生が想定される異常事態に応じた対処作業の情報が記録されている。ここで、異常事態とは、例えば、(1)海で溺れる人が発生、(2)病気等の何等かの原因で倒れる人が発生、(3)火事の発生、(4)車両や自転車等の事故の発生、(5)強盗等の犯罪の発生、(6)山での遭難の発生等が挙げられる。
【0050】
また、異常事態に応じた対処作業の情報とは、上述した例に対応する内容として、例えば以下のようなものである。
【0051】
(1)溺れた人のいる位置まで飛行し、当該位置にてアーム部5で把持した浮き輪を解放する旨の情報。(2)倒れた人のいる位置まで飛行し、当該位置にてアーム部5で把持したAEDを解放する旨の情報。(3)火災の発生した現場に飛行し、火元に向けて消火剤を散布する旨の情報。火災現場の状況を搭載カメラ6で撮影する旨の情報。(4)事故の発生直後の現場状況を搭載カメラ6で撮影する旨の情報。事故現場周辺の道路交通状況を搭載カメラ6で撮影する旨の情報。(5)不審者や逃亡者を搭載カメラ6で撮影する旨の情報。犯行直後の犯人に向けてカラーボールを投げつける旨の情報。逃亡する犯人を上空から追跡する旨の情報。(6)登山ルート及びその周辺を飛行して、飛行する位置を搭載カメラで撮影する旨の情報。遭難位置が明確な場合には、目標位置に飛行し、当該位置にアーム部5で把持した食糧や救急道具等を搬送する旨の情報。
【0052】
また、ドローン装置4の制御情報記録部11は、監視センター部2より送信された追加制御情報を受信して、追加制御情報に基づいて対処作業を行うことが可能となっている。
【0053】
具体的には、例えば、上述した(1)の溺れた人の救助を行う場合、元々記録された制御情報が目標位置に到達後に浮き輪を提供するという対処作業であったとする。ここで、追加制御情報として、音声発信部8及び音声受信部9を介して要救助者に監視センター部2の監視作業者が呼びかけ可能にするといったように、ドローン装置4に異なる対処作業を行わせることができる。
【0054】
上記のような複数の対処作業をドローン装置4に行わせる構成は、追加制御情報を都度、監視センター部2から送信して行う態様や、予め複数の対処作業の情報をドローン装置4の制御情報記録部11に記録しておく態様を採用しうる。
【0055】
監視システム1の監視センター部2は、LAN制御部及び無線LANインターフェースを備え、無線LANに対するインターフェース機能を有している。監視センター部2は、無線LAN19を介して、監視カメラ3及びドローン装置4との間で情報を送受信する部分である。
【0056】
監視センター部2は、表示モニター12を有しており、監視カメラ3及びドローン装置4の搭載カメラ6からの映像情報を受信して表示可能となっている。また、監視センター部2は、発進情報送信部13を有している。
【0057】
発進情報受信部13は、発進情報を上述したドローン装置4の発進情報受信部10に送信し、ドローン装置4を目標位置に発進させる部分である。監視対象エリア内にて、後述する異常の検知がなされた場合に、発進情報が監視センター部2の発進情報送信部13から送信される。
【0058】
発進情報には、ドローン装置4が到達すべき目標位置の情報、ドローン装置4の飛行ルートの情報が含まれている。また、発進情報には、上述した、ドローン装置4が行う対処作業の情報である追加制御情報を含めることもできる。
【0059】
監視センター部2は、監視対象エリアの地形情報を記録した地形情報データベース部16を有している。記録された地形情報は3次元座標データに基づく情報であり、同情報には、複数のドローン待機位置の位置情報も含まれている。
【0060】
また、地形情報データベース部16は、後述するドローン位置情報データベース部と連動しており、ドローン装置4の位置情報に基づく、過去の飛行履歴のルート情報や、目標位置までの到達時間の情報も履歴情報として記録されている。飛行履歴の情報に基づく機能については後述する。
【0061】
(1)監視作業者の監視に基づく異常の検知
監視対象エリア内における異常の検知の1つとして、監視作業者が監視センター部2の表示モニター12を監視して、異常を確認する態様がある。監視作業者が監視する映像情報は、エリア内の複数箇所に設置された監視カメラ3からの情報及びドローン装置4の搭載カメラ6からの情報である。
【0062】
監視作業者は、表示モニター12の映像を監視し、映像内に何等かの異常が認められた場合に、監視センター部2の発進情報送信部13を介してドローン装置4に発進情報を送信する。映像内に何等かの異常が認められる場合とは、例えば、海で溺れている人や、倒れた人がいる等の要救助者が確認された場合、火災や地震、津波、竜巻等の発生が確認された場合、自動車の事故、自転車の事故等の発生が確認された場合、店舗での強盗等の犯罪の発生が確認された場合、侵入禁止区域への侵入者が確認された場合等である。なお、ここで挙げる監視作業者による異常の確認は、本願の請求項の「監視対象エリア内から取得された撮像情報の撮像領域内に異常が検知された際」の部分の異常の検知の一例である。
【0063】
また、監視作業者が異常を検知する際の映像の情報は固定された監視カメラ3及びドローン待機位置に待機したドローン装置4の搭載カメラ6の映像の情報に限られるものではない。
【0064】
例えば、警備や探索の目的で、ドローン装置4が一定のルートを飛行するように設定しておき、巡回する際に搭載カメラ6で撮影された映像の情報を監視して、異常を検知する方法であってもよい。このような警備や探索での飛行の際に、途中で山の遭難者を発見した場合や、火事が発生した場合、侵入者の確認をした場合等、そのタイミングでドローン装置4に制御情報を送信して、対処作業を行わせる構成であってもよい。
【0065】
(2)パラメーター情報に基づく異常の検知
監視対象エリア内における異常の検知の1つとして、一定のパラメーターとその基準値に基づく判定で異常を判断して、発進情報を送信する構成も採用しうる。一定のパラメーターとは、例えば、温度情報、湿度情報、圧力情報、輝度情報、音量情報、色調情報、臭気情報等、既存の測定装置でパラメーター情報の数値が測定可能な情報が対象となる。パラメーター情報に基づく異常の検知を行う構成としては、例えば、以下のような内容となる。
【0066】
監視対象エリア内の各所にパラメーター情報取得手段14を設置しておく。パラメーター情報取得手段とは、例えば、温度計、湿度系、圧力センサー、光度計、騒音計、色彩計、臭気計、震度計、遮光センサー等の測定機器が挙げられる。監視対象エリアの各種パラメーター情報を取得したい位置にパラメーター情報取得手段14を設置しておく。計測情報は、都度、監視センター部2に送信される。パラメーター情報取得手段14は無線LAN19にて監視センター部2との間で情報の送受信が可能となっている。
【0067】
監視センター部2には、パラメーター情報取得手段14が計測した情報を受信して、測定情報が設定した判定基準の条件を満たすか否かを判定するパラメーター情報判定部15を有している。パラメーター情報判定部15による判定で所定の条件を満たすと判定された場合に、発進情報送信部13からドローン装置4に発進情報が送信される流れとなる。また、発進情報は、パラメーターの種類や、満たした条件の種類に応じた対処作業の情報を含めておくことができる。
【0068】
例えば、パラメーター情報として温度情報を用いて、砂浜を含む監視対象エリアに温度計を配置しておく。温度計で測定対象エリアの気温を測定し、35℃を超えた場合にパラメーター情報判定部15が、事前に設定した35℃以上の気温という条件を満たしたと判断して、ドローン装置4を発進させる。発進情報には、目標位置に到達した際に、同エリアにて飛行しながら、音声発信部8を介して、熱中症の危険がある旨や、水分補給を促す音声アナウンスを発するように設定しておく。このような構成とすることで、熱中症の発生しやすい真夏日に、砂浜エリアで注意喚起を促すことができる。また、パラメーター情報のその他の例として、監視対象エリアの雨量や、更には、河川の水量や水位を目安として、設定した基準の量や水位を超えた場合に、パラメーター情報判定部15が条件を満たしたと判断する構成も採用しうる。パラメーター情報は、この他にも気象条件や、現場の環境条件に基づき設定するものであってよいものとする。
【0069】
また、例えば、侵入禁止区域となっている監視対象エリアに圧力センサーや、赤外線センサーを配置しておく。圧力センサーが一定の圧力を測定した状態や、赤外線センサーの赤外光の消失が確認された状態になった場合、パラメーター情報判定部15が、事前に設定した一定値以上の圧力情報の検知または赤外線センサーの消失という条件を満たしたと判断して、ドローン装置4を発進させる。発進情報には、目標位置に到達した際に、対象エリアの周辺を搭載カメラで撮影する、当該エリアで警報音を発する、侵入者が逃亡した場合には飛行して追跡するといった対処情報を設定しておく。このような構成とすることで、侵入者の侵入を防止したい監視対象エリアを効率的に警備することが可能となる。
【0070】
更に、例えば、火気厳禁の室内エリアや山間部等のエリアに、温度計や監視カメラとサーモグラフィーを設置しておく。温度計やサーモグラフィーの情報で、基準値以上の温度が測定された場合に、パラメーター情報判定部15が、事前に設定した一定値以上の温度情報の検知という条件を満たしたと判断して、ドローン装置4を発進させる。発進情報には、目標位置に到達した際に、把持させた消火剤を高温部分に散布する、当該エリアに所在する人に注意喚起の音声を聞かせる、現場の状況を搭載カメラで撮影するといった対処情報を設定しておく。このような構成とすることで、火災の発生を予防または被害を軽減させることができる。
【0071】
なお、上述した例では、単一のパラメーター情報と、その判定基準に基づき、発進情報が送信される構成を示したが、本発明の内容はこれに限定されるものではない。例えば、複数のパラメーター情報を組み合わせた結果の測定情報をもって判定を行い、異常を検知する構成であってもよい。
【0072】
また、パラメーター情報判定部15による異常の検知と、これに応じたドローン装置4の対処情報の組み合わせが複数規定される構成であってもよい。例えば、上述した温度情報に基づく火災への対応の例で説明する。計測した温度情報が、一定の温度範囲帯内にある場合の発進情報には、ドローン装置4による消火剤の散布を行い、更に高温の基準温度に到達したという温度情報を測定した場合に、周辺の人への避難すべき旨の音声情報の発進や、監視カメラによる撮影を開始するといった、段階的な対処情報の切り替えを行うことも可能である。
【0073】
また、必ずしも、パラメーター情報に基づく異常の検知において、監視センター部2にパラメーター情報判定部15が設けられる必要はない。例えば、パラメーター情報取得手段14にパラメーター情報の判定を行う機能を付して、異常の検知した情報を監視センター部2に送信する構成であってもよい。
【0074】
本発明を適用した監視システムの一例である監視システム1の飛行ルート修正機能について説明する。この飛行ルート修正機能は、ドローン装置4が発進後に、何等かのアクシデントで目標位置に到達しなかった場合に、その際の飛行ルートに基づき、その後の飛行に反映させる機能である。
【0075】
まず、上述したようにドローン装置4はGPS部7を有しており、自身の位置情報を監視センター部2に送信可能に構成されている。また、監視センター部2は、地形情報データベース部16と連動したドローン位置情報データベース部17を有している。ドローン位置情報データベース部17はドローンから送信される位置情報を蓄積して、飛行ルートの情報や、目標位置までの所要時間の情報等が記録されている。
【0076】
また、監視センター部2は、飛行情報更新部18を有している。飛行情報更新部18は、目標位置まで到達しなかったドローン装置4の停止位置情報を記録し、次回の発進情報に同停止位置情報に相当するエリアを回避した内容の飛行ルートを飛行するように発進情報を更新する部分である。
【0077】
なお、ここでいう停止位置情報とは、GPS部7の機能が有効に働いていた場合には、停止した位置の情報だけでなく、GPS部7から位置情報が得られない状態(例えば、ドローン装置4が破損してGPS部7も機能しない状態)での、位置情報が消失する直前に取得された位置情報も含むものである。
【0078】
また、回避すべき位置が目標位置であった場合には、発進情報には回避すべき位置である旨の情報が反映されない、または、目標位置から少し離れた場所を目標位置にする等、発進情報は適宜修正することが可能となっている。
【0079】
このように、ドローン装置4の位置情報と、飛行情報更新部18により実現される飛行ルート修正機能によって、ドローン装置4が目標位置に到達しうる精度を高めることができる。
【0080】
以上のように、本発明の監視システムは、異常発生時に迅速な対応が可能であり、広範囲の監視対象エリアにも適用可能なものとなっている。
また、本発明の移動ロボット装置は、異常発生時に迅速な対応が可能であり、広範囲の監視対象エリアにも適用可能なものとなっている。
【符号の説明】
【0081】
1 監視システム
2 監視センター部
3 監視カメラ
4 ドローン装置
5 アーム部
6 搭載カメラ
7 GPS部
8 音声発信部
9 音声受信部
10 発進情報受信部
11 制御情報記録部
12 表示モニター
13 発進情報送信部
14 パラメーター情報取得手段
15 パラメーター情報判定部
16 地形情報データベース部
17 ドローン位置情報データベース部
18 飛行情報更新部
19 無線LAN
図1