特許第6635689号(P6635689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6635689照明装置、そのコントロール回路、制御方法、ならびにそれを用いたディスプレイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6635689
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】照明装置、そのコントロール回路、制御方法、ならびにそれを用いたディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/00 20200101AFI20200120BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
   H05B37/02 L
   H02M3/00 P
【請求項の数】18
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-125801(P2015-125801)
(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2017-10810(P2017-10810A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】萩野 淳一
【審査官】 田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0283397(US,A1)
【文献】 特開2014−79043(JP,A)
【文献】 特開2015−56974(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0327772(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0238387(US,A1)
【文献】 特開2013−109921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明装置のコントロール回路であって、
前記照明装置は、
出力ラインに出力電圧を発生するスイッチングコンバータと、
それぞれの一端が前記スイッチングコンバータの出力ラインと接続される複数の発光素子と、
前記複数の発光素子に対応し、それぞれが対応する前記発光素子の他端と接続される複数の電流ドライバと、
前記複数の発光素子の複数の前記他端に生ずる複数の第1検出電圧と、前記出力ラインの前記出力電圧に応じた第2検出電圧と、にもとづき、前記スイッチングコンバータを制御する前記コントロール回路と、
を備え、
前記コントロール回路は、
(i)キャリブレーション期間に、前記複数の第1検出電圧のうち最も低い電圧と所定の第1基準電圧との誤差を増幅して誤差信号を生成する第1状態となり、(ii)前記キャリブレーション期間の終了後、前記第2検出電圧と第2基準電圧との誤差を増幅して前記誤差信号を生成する第2状態となる誤差信号生成部と、
前記誤差信号に応じてパルス信号を生成するパルス変調器と、
前記パルス信号に応じて前記スイッチングコンバータを駆動するドライバと、
パルス変調された複数の調光パルスを生成し、前記複数の調光パルスに応じて前記複数の電流ドライバのオン、オフを制御する調光コントローラと、
前記キャリブレーション期間中における前記第2検出電圧の最大値を、前記第2基準電圧として保持する基準電圧設定部と、
を備え、
前記調光コントローラは、前記キャリブレーション期間において前記発光素子の順方向電圧が最大となるデューティ比を有する複数の調光パルスを生成することを特徴とするコントロール回路。
【請求項2】
前記調光コントローラは、前記キャリブレーション期間において、前記複数の発光素子が同時点灯するように、前記複数の調光パルスを生成することを特徴とする請求項1に記載のコントロール回路。
【請求項3】
前記誤差信号生成部は、前記キャリブレーション期間の終了後において、前記第1状態と前記第2状態が切りかえ可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のコントロール回路。
【請求項4】
照明装置のコントロール回路であって、
前記照明装置は、
出力ラインに出力電圧を発生するスイッチングコンバータと、
それぞれの一端が前記スイッチングコンバータの出力ラインと接続される複数の発光素子と、
前記複数の発光素子に対応し、それぞれが対応する前記発光素子の他端と接続される複数の電流ドライバと、
前記複数の発光素子の複数の前記他端に生ずる複数の第1検出電圧と、前記出力ラインの前記出力電圧に応じた第2検出電圧と、にもとづき、前記スイッチングコンバータを制御する前記コントロール回路と、
を備え、
前記コントロール回路は、
(i)キャリブレーション期間に、前記複数の第1検出電圧のうち最も低い電圧と所定の第1基準電圧との誤差を増幅して誤差信号を生成する第1状態となり、(ii)前記キャリブレーション期間の終了後、前記第2検出電圧と第2基準電圧との誤差を増幅して前記誤差信号を生成する第2状態となる誤差信号生成部と、
前記誤差信号に応じてパルス信号を生成するパルス変調器と、
前記パルス信号に応じて前記スイッチングコンバータを駆動するドライバと、
パルス変調された複数の調光パルスを生成し、前記複数の調光パルスに応じて前記複数の電流ドライバのオン、オフを制御する調光コントローラと、
前記キャリブレーション期間中における前記第2検出電圧の最大値を、前記第2基準電圧として保持する基準電圧設定部と、
を備え、
前記誤差信号生成部は、前記キャリブレーション期間の終了後において、前記第1状態と前記第2状態が切りかえ可能であり、
前記キャリブレーション期間の終了後において、前記複数の調光パルスのデューティ比に応じて、前記誤差信号生成部の前記第1状態と前記第2状態の一方が選択されることを特徴とするコントロール回路。
【請求項5】
前記誤差信号生成部は、前記複数の調光パルスのデューティ比のうち最も小さい最小デューティ比が所定のしきい値より大きいとき前記第1状態となり、前記最小デューティ比が前記しきい値より小さいとき前記第2状態となることを特徴とする請求項3または4に記載のコントロール回路。
【請求項6】
前記誤差信号生成部は、
前記複数の第1検出電圧のうち最も低い電圧と前記第1基準電圧との誤差を増幅し、第1誤差信号を生成する第1エラーアンプと、
前記第2検出電圧と前記第2基準電圧との誤差を増幅し、第2誤差信号を生成する第2エラーアンプと、
前記第1誤差信号と前記第2誤差信号を受け、前記キャリブレーション期間において前記第1誤差信号を選択し、前記キャリブレーション期間の終了後に前記第2誤差信号を選択するセレクタと、
を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のコントロール回路。
【請求項7】
照明装置のコントロール回路であって、
前記照明装置は、
出力ラインに出力電圧を発生するスイッチングコンバータと、
それぞれの一端が前記スイッチングコンバータの出力ラインと接続される複数の発光素子と、
前記複数の発光素子に対応し、それぞれが対応する前記発光素子の他端と接続される複数の電流ドライバと、
前記複数の発光素子の複数の前記他端に生ずる複数の第1検出電圧と、前記出力ラインの前記出力電圧に応じた第2検出電圧と、にもとづき、前記スイッチングコンバータを制御する前記コントロール回路と、
を備え、
前記コントロール回路は、
(i)前記複数の第1検出電圧のうち最も低い電圧と所定の第1基準電圧との誤差を増幅して誤差信号を生成する第1状態と、(ii)前記第2検出電圧と第2基準電圧との誤差を増幅して前記誤差信号を生成する第2状態と、が切りかえ可能である誤差信号生成部と、
前記誤差信号に応じてパルス信号を生成するパルス変調器と、
前記パルス信号に応じて前記スイッチングコンバータを駆動するドライバと、
パルス変調された複数の調光パルスを生成し、前記複数の調光パルスに応じて前記複数の電流ドライバのオン、オフを制御する調光コントローラと、
を備え、
前記誤差信号生成部は、通常の点灯期間中に、前記複数の調光パルスのデューティ比に応じて、前記第1状態と前記第2状態の一方が選択されることを特徴とするコントロール回路。
【請求項8】
前記誤差信号生成部は、前記複数の調光パルスのデューティ比のうち最も小さい最小デューティ比が所定のしきい値より大きいとき前記第1状態となり、前記最小デューティ比が前記しきい値より小さいとき前記第2状態となることを特徴とする請求項7に記載のコントロール回路。
【請求項9】
前記誤差信号生成部は、(i)キャリブレーション期間に前記第1状態に設定され、
前記コントロール回路は、前記キャリブレーション期間中における前記第2検出電圧の最大値を、前記第2基準電圧として保持する基準電圧設定部をさらに備えることを特徴とする請求項7または8に記載のコントロール回路。
【請求項10】
複数の発光素子のそれぞれに対応する複数の電流ドライバを制御することにより前記複数の発光素子を発光させるコントロール回路であって、
キャリブレーション期間中に前記複数の発光素子を発光させた状態で、前記複数の発光素子に印加される出力電圧に応じた第2検出電圧の最大値を、第2基準電圧として保持する基準電圧設定部と、
通常点灯期間において前記第2検出電圧と前記第2基準電圧との誤差を増幅して誤差信号を生成する誤差信号生成部と、
前記誤差信号に応じてパルス信号を生成するパルス変調器と、
前記パルス信号に応じて前記出力電圧を調整するための駆動信号を生成するスイッチング用ドライバと、
複数の調光パルスを生成し、前記複数の調光パルスに応じて前記複数の電流ドライバのオン、オフを制御する調光コントローラと、
を備えることを特徴とするコントロール回路。
【請求項11】
前記基準電圧設定部は、前記発光素子の順方向電圧に基づいて第2基準電圧を設定することを特徴とする請求項10に記載のコントロール回路。
【請求項12】
ひとつの半導体基板に一体集積化されることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のコントロール回路。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載のコントロール回路を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項14】
前記複数の発光素子はそれぞれ、直列に接続された複数の発光ダイオードを含む発光ダイオードストリングであることを特徴とする請求項13に記載の照明装置。
【請求項15】
液晶パネルのバックライト用であることを特徴とする請求項13または14に記載の照明装置。
【請求項16】
液晶パネルと、
請求項15に記載の照明装置と、
を備えることを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項17】
照明装置の制御方法であって、
前記照明装置は、
出力ラインに出力電圧を発生するスイッチングコンバータと、
それぞれの一端が前記スイッチングコンバータの出力ラインと接続される複数の発光素子と、
前記複数の発光素子に対応し、それぞれが対応する前記発光素子の他端と接続される複数の電流ドライバと、
前記複数の発光素子の複数の前記他端に生ずる複数の第1検出電圧と、前記出力ラインの前記出力電圧に応じた第2検出電圧と、にもとづき、前記スイッチングコンバータを制御するコントロール回路と、
を備え、
前記制御方法は、
(i)キャリブレーション期間に、前記複数の第1検出電圧のうち最も低い電圧と所定の第1基準電圧との誤差を増幅して第1誤差信号を生成するステップと、
前記キャリブレーション期間に、前記誤差信号に応じてパルス変調された第1パルス信号を生成するステップと、
前記キャリブレーション期間に、前記第1パルス信号に応じて前記スイッチングコンバータを駆動するステップと、
前記キャリブレーション期間に複数の調光パルスを生成し、前記複数の調光パルスに応じて前記複数の電流ドライバのオン、オフを制御するステップと、
前記キャリブレーション期間中における前記第2検出電圧の最大値を、第2基準電圧として保持するステップと、
前記キャリブレーション期間の終了後、前記第2検出電圧と前記第2基準電圧との誤差を増幅して第2誤差信号を生成するステップと、
前記キャリブレーション期間の終了後、前記第2誤差信号に応じてパルス変調された第2パルス信号を生成するステップと、
前記キャリブレーション期間の終了後、前記第2パルス信号に応じて前記スイッチングコンバータを駆動するステップと、
を備え、
前記キャリブレーション期間において前記発光素子の順方向電圧が最大となるデューティ比を有する複数の調光パルスが生成されることを特徴とする制御方法。
【請求項18】
照明装置の制御方法であって、
前記照明装置は、
出力ラインに出力電圧を発生するスイッチングコンバータと、
それぞれの一端が前記スイッチングコンバータの出力ラインと接続される複数の発光素子と、
前記複数の発光素子に対応し、それぞれが対応する前記発光素子の他端と接続される複数の電流ドライバと、
前記複数の発光素子の複数の前記他端に生ずる複数の第1検出電圧と、前記出力ラインの前記出力電圧に応じた第2検出電圧と、にもとづき、前記スイッチングコンバータを制御するコントロール回路と、
を備え、
前記制御方法は、
通常の点灯期間中に、前記複数の発光素子の目標輝度に応じてパルス変調された複数の調光パルスを生成し、前記複数の調光パルスに応じて前記複数の電流ドライバのオン、オフを制御するステップと、
第1状態において前記複数の第1検出電圧のうち最も低い電圧と所定の第1基準電圧との誤差を増幅して誤差信号を生成し、第2状態において前記第2検出電圧と第2基準電圧との誤差を増幅して前記誤差信号を生成するステップと、
前記誤差信号に応じてパルス変調されたパルス信号を生成するステップと、
前記パルス信号に応じて前記スイッチングコンバータを駆動するステップと、
前記複数の調光パルスのデューティ比に応じて、前記第1状態と前記第2状態を選択するステップと、
を備えることを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードの駆動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)パネルのバックライト用照明装置として、長寿命化、低消費電力化、広色域化の観点で優れた特性を有する白色発光ダイオード(以下、単にLEDと略す)が用いられている。
【0003】
図1は、本発明者らが検討したバックライト用の照明装置2rを示す図である。図1には、照明装置2rに加えて、LCDパネル102が示される。照明装置2rは、直下型であり、LCDパネル102の背面に複数チャンネルCH1〜CH4ごとに設けられたLEDバー(LEDストリングともいう)10_1〜10_4と、LEDバー10_1〜10_4を駆動する、マルチチャネルの駆動回路20と、を備える。
【0004】
各LEDバー10は、直列に接続された複数のLEDを備える。LCDパネル102は、第1の方向に沿って、複数の領域104_1〜104_4に仮想的に分割されている。複数のLEDバー10_1〜10_4は、複数の領域104_1〜104_4ごとに設けられており、i番目のチャンネルCHiのLEDバー10_iは、対応するi番目の領域104_iに割り当てられ、その背面に配置される。
【0005】
駆動回路20は、複数の電流ドライバ22_1〜22_4、DC/DCコンバータ24、コントロール回路26を備える。電流ドライバ22_1〜22_4は、チャンネルごとに設けられ、対応するLEDバー10_1〜10_4と直接に接続される。各チャンネルのLEDバー10の輝度は、対応する電流ドライバ22が生成する駆動電流ILEDに応じて制御される。
【0006】
DC/DCコンバータ24は、各チャンネルのLEDバー10と電流ドライバ22の両端間に、駆動電圧VOUTを供給する。コントロール回路26は、DC/DCコンバータ24を制御することにより、駆動電圧VOUTを、各チャンネルのLEDバー10を所望の輝度で発光しうるレベルに安定化させるとともに、電流ドライバ22_1〜24_4が生成する駆動電流ILEDを制御する。
【0007】
バックライト用のLEDの輝度を制御する方式としては、電流調光(アナログ調光)と、PWM調光(パルス調光)が知られている。電流調光では、目標輝度に応じて、LEDバー10に流れる駆動電流ILEDの電流量を調節する。PWM調光では、駆動電流ILEDを数十〜数百Hzの周波数にてスイッチングし、駆動電流ILEDが流れる点灯期間と、駆動電流ILEDが遮断される消灯期間の時間比率(デューティ比)を調節することにより、LEDバー10の実効的な輝度を制御する。
【0008】
図2は、従来の照明装置2rの回路図である。従来のコントロール回路26(200r)は、エラーアンプ202、パルス幅変調器204、ドライバ206、調光コントローラ210を備える。複数のLEDバー10_Nそれぞれのカソード電圧(検出電圧ともいう)VLED1〜VLEDNは、コントロール回路200rにフィードバックされる。各チャンネルのカソード電圧VLEDは、電流ドライバ22の両端間電圧に相当する。
【0009】
エラーアンプ202は、複数のカソード電圧VLED1〜VLEDNのうち最も低い電圧と、所定の基準電圧VREFとの誤差を増幅する。パルス幅変調器204は、エラーアンプ202からの誤差電圧VERRに応じたデューティ比を有するパルス信号SPWMを生成する。ドライバ206は、パルス信号SPWMに応じてDC/DCコンバータ24をスイッチングする。
【0010】
調光コントローラ210はチャンネルごとに、LEDバー10の目標輝度に応じて、そのチャンネルの電流ドライバ22が生成する駆動電流ILEDを変化させる(アナログ調光)。また調光コントローラ210はチャンネルごとに、LEDバー10の目標輝度に応じて、そのチャンネルの電流ドライバ22が駆動電流ILEDを生成する時間比率を変化させる(PWM調光)。
【0011】
PWM調光を行う場合、非点灯状態であるチャンネルは、エラーアンプ202によるフィードバックの対象から除外され、点灯状態であるチャンネルのみがフィードバックの対象となる。ここでi番目のチャンネルのカソード電圧VLEDiは、以下の式で与えられる。
LEDi=VOUT−VFi
Fiはi番目のチャンネルのLEDバー10_iの順方向電圧VFiである。つまり図2の照明装置2rでは、カソード電圧VLEDが最も低いチャンネル、言い換えればLEDバー10の電圧降下(順方向電圧V)が最も大きいチャンネルがフィードバックの対象となり、DC/DCコンバータ24の出力電圧VOUTは、以下の電圧に安定化される。
OUT=VREF+VF_MAX
F_MAXは、点灯状態であるチャンネルのうちの最も大きな順方向電圧Vを表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−32875号公報
【特許文献2】特開2002−252971号公報
【特許文献3】特開2007−028784号公報
【特許文献4】特開2007−173813号公報
【特許文献5】特開2003−157986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
映像の輝度のダイナミックレンジを大きくするために、高機能なディスプレイ装置には、個別エリア調光の機能が実装される。個別エリア調光は、LCDパネル102に表示される画像に応じて、明るい領域104に設けられるLEDバー10を、長い点灯時間(大きいデューティ比)で点灯し、暗い領域104に設けられるLEDバー10を、短い点灯時間(小さいデューティ比)で点灯する。図3は、個別エリア調光を行ったときのコントロール回路200rの動作波形図である。
【0014】
各チャンネルの電流ドライバ22のオン、オフは、LCDパネル102に表示される画像に応じて動的、適応的に変化する。ここで、LEDバー10の順方向電圧Vは、それを構成する複数のLEDの素子ばらつきに起因して大きく異なる場合がある。ここでは4チャンネルを例とし、VF1>VF2>VF3>VF4の関係が成り立つものとする。図3のPWMi信号(i=1,2,3,4)は、i番目のチャンネルの点灯状態(ハイレベル)、非点灯状態(ローレベル)を示す。
【0015】
図3に示すように、図2の照明装置2rでは、PWM信号に応じて、DC/DCコンバータ24の出力電圧VOUTが時々刻々と変動する。複数のチャンネルのVF1〜VF4のばらつきが大きいと、出力電圧VOUTの変動幅は大きくなる。
【0016】
フィードバック対象が、順方向電圧Vが小さいチャンネルから大きいチャンネルへと遷移する際、出力電圧VOUTは増大する。このときに出力電圧VOUTの上昇に遅れが生ずると、順方向電圧Vが大きなチャンネルの電流ドライバ22の両端間電圧VLEDが不足し、十分な駆動電流ILEDを供給できなくなり、そのチャンネルのLEDバー10の輝度が低下する。この輝度の低下は、ちらつきとなって視聴者に知覚される。
【0017】
この問題を解決するためには、コントロール回路200rの応答速度を高める必要がある。高い応答速度を実現するためには、DC/DCコンバータ24のスイッチング周波数を高める必要があるが、これは消費電力、発熱量の増加を招く。またフィードバックループの帯域を広げれば、位相特性が悪化してフィードバックループの安定性が低下する。また出力電圧VOUTが高速に変化させると、セラミックコンデンサやコイルの騒音を引き起こすという問題も生ずる。
【0018】
なおこれらの問題は、バックライト用の照明装置2rに限らず、その他の用途の照明装置においても生じうる。
【0019】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、複数チャンネルの発光素子の点消灯を独立に制御する際の問題を解決可能な照明装置、あるいはそのコントロール回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のある態様は、照明装置のコントロール回路に関する。照明装置は、出力ラインに出力電圧を発生するスイッチングコンバータと、それぞれの一端がスイッチングコンバータの出力ラインと接続される複数の発光素子と、複数の発光素子に対応し、それぞれが対応する発光素子の他端と接続される複数の電流ドライバと、複数の発光素子の他端に生ずる複数の第1検出電圧と、出力ラインの出力電圧に応じた第2検出電圧と、にもとづき、スイッチングコンバータを制御するコントロール回路と、を備える。コントロール回路は、(i)キャリブレーション期間に、複数の第1検出電圧のうち最も低い電圧と所定の第1基準電圧VREF1との誤差を増幅して誤差信号を生成する第1状態となり、(ii)キャリブレーション期間の終了後、第2検出電圧と第2基準電圧VREF2との誤差を増幅して誤差信号を生成する第2状態となる誤差信号生成部と、誤差信号に応じてパルス信号を生成するパルス変調器と、パルス信号に応じてスイッチングコンバータを駆動するドライバと、パルス変調された複数の調光パルスを生成し、複数の調光パルスに応じて複数の電流ドライバのオン、オフを制御する調光コントローラと、キャリブレーション期間中における第2検出電圧の最大値を、第2基準電圧として保持する基準電圧設定部と、を備える。
【0021】
複数の発光素子の電圧降下(順方向電圧)のうち、最も大きい電圧をVF_MAXとするとき、キャリブレーション期間において、出力電圧VOUTの最大値VOUT_MAXは、
OUT_MAX=VREF1+VF_MAX
となる。このときの第2検出電圧を第2基準電圧VREF2として保持することにより、キャリブレーション期間の終了後においても出力電圧はVOUT_MAXに安定化される。この出力電圧VOUT_MAXは、すべてのチャンネルの発光素子を確実に点灯しうる電圧範囲の下限に相当する。
この態様によれば、通常の点灯期間中において出力電圧VOUTが実質的に一定レベルに保たれるため、コントロール回路に要求される応答速度を下げることができ、上述の問題のひとつまたは複数を解決することができる。
【0022】
ある態様において、調光コントローラは、キャリブレーション期間において発光素子の順方向電圧が最大となるデューティ比を有する複数の調光パルスを生成してもよい。
LEDなどの発光素子に狭パルスの電圧が印加されると、その両端間の電圧(順方向電圧)は、定常的(静的)な順方向電圧Vよりも高くなる。このような発光素子を用いる場合に、この態様は有効である。
【0023】
ある態様において、調光コントローラは、キャリブレーション期間において、複数の発光素子が同時点灯するように複数の調光パルスを生成してもよい。
この場合、複数の発光素子が同時点灯する期間に、第2検出電圧をサンプルホールドすればよいため、基準電圧設定部の構成を簡素化できる。
【0024】
ある態様において、誤差信号生成部は、キャリブレーション期間の終了後において、第1状態と第2状態が切りかえ可能であってもよい。
キャリブレーション期間の終了後、すなわち通常の点灯期間において、第1状態を選択したとしても出力電圧VOUTの変動幅が小さい場合には、第1状態で動作させることにより、効率を高めることができる。
【0025】
ある態様において、キャリブレーション期間の終了後において、複数の調光パルスのデューティ比に応じて、誤差信号生成部の第1状態と第2状態の一方が選択されてもよい。
【0026】
ある態様において、誤差信号生成部は、複数の調光パルスのデューティ比のうち最も小さい最小デューティ比が所定のしきい値より大きいとき第1状態となり、最小デューティ比がしきい値より小さいとき第2状態となってもよい。
【0027】
ある態様において、誤差信号生成部は、複数の第1検出電圧のうち最も低い電圧と第1基準電圧との誤差を増幅し、第1誤差信号を生成する第1エラーアンプと、第2検出電圧と第2基準電圧との誤差を増幅し、第2誤差信号を生成する第2エラーアンプと、第1誤差信号と第2誤差信号を受け、キャリブレーション期間において第1誤差信号を選択し、キャリブレーション期間の終了後に第2誤差信号を選択するセレクタと、を含んでもよい。
【0028】
本発明の別の態様もまた、照明装置のコントロール回路に関する。照明装置は、出力ラインに出力電圧を発生するスイッチングコンバータと、それぞれの一端がスイッチングコンバータの出力ラインと接続される複数の発光素子と、複数の発光素子に対応し、それぞれが対応する発光素子の他端と接続される複数の電流ドライバと、複数の発光素子の他端に生ずる複数の第1検出電圧と、出力ラインの出力電圧に応じた第2検出電圧と、にもとづき、スイッチングコンバータを制御するコントロール回路と、を備える。コントロール回路は、(i)複数の第1検出電圧のうち最も低い電圧と所定の第1基準電圧との誤差を増幅して誤差信号を生成する第1状態と、(ii)第2検出電圧と第2基準電圧との誤差を増幅して誤差信号を生成する第2状態と、が切りかえ可能である誤差信号生成部と、誤差信号に応じてパルス信号を生成するパルス変調器と、パルス信号に応じてスイッチングコンバータを駆動するドライバと、パルス変調された複数の調光パルスを生成し、複数の調光パルスに応じて複数の電流ドライバのオン、オフを制御する調光コントローラと、を備える。誤差信号生成部は、通常の点灯期間中に、複数の調光パルスのデューティ比に応じて、第1状態と第2状態の一方が選択される。
【0029】
この態様によると、第1状態を選択したとしても出力電圧VOUTの変動幅が小さい場合には、第1状態で動作させることにより、効率を高めることができる。また第1状態を選択すると出力電圧VOUTの変動幅が大きくなる場合、もしくは変動速度が速くなる場合には、第2状態で動作させることにより、出力電圧VOUTの応答遅れによる不点灯を防止できる。
【0030】
ある態様において、誤差信号生成部は、複数の調光パルスのデューティ比のうち最も小さい最小デューティ比が所定のしきい値より大きいとき第1状態となり、最小デューティ比がしきい値より小さいとき第2状態となってもよい。
【0031】
ある態様において、誤差信号生成部は、(i)キャリブレーション期間に第1状態に設定され、コントロール回路は、キャリブレーション期間中における第2検出電圧の最大値を、第2基準電圧として保持する基準電圧設定部をさらに備えてもよい。
【0032】
ある態様において、コントロール回路は、一つの半導体基板に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0033】
本発明の別の態様は、照明装置に関する。照明装置は、上述のいずれかのコントロール回路を備える。
【0034】
複数の発光素子はそれぞれ、直列に接続された複数の発光ダイオードを含む発光ダイオードストリングであってもよい。
【0035】
照明装置は、液晶パネルのバックライト用であってもよい。
【0036】
本発明の別の態様はディスプレイ装置に関する。ディスプレイ装置は、液晶パネルと、上述のいずれかの照明装置と、を備える。
【0037】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0038】
本発明のある態様によれば、複数チャンネルの発光素子の点消灯を独立に制御する際の問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明者らが検討したバックライト用の照明装置を示す図である。
図2】従来の照明装置の回路図である。
図3】個別エリア調光を行ったときのコントロール回路の動作波形図である。
図4】実施の形態に係るコントロール回路を備える照明装置の回路図である。
図5図4の照明装置の動作波形図である。
図6図6(a)〜(c)は、基準電圧設定部の構成例を示す回路図である。
図7図7(a)は、調光パルスSDIMのパルス幅が狭い場合の、図7(b)はそのパルス幅が広い場合の、複数のLEDバーの順方向電圧Vを示す図である。
図8】第2の実施の形態に係る照明装置の通常の点灯期間の動作波形図である。
図9図9(a)、(b)は、図4の照明装置を備える電子機器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0041】
本明細書において、「部材Aが部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0042】
図4は、実施の形態に係るコントロール回路200を備える照明装置2の回路図である。照明装置2は、複数のLEDバー10_1〜10_N(Nは2以上の整数)、複数の電流ドライバ22_1〜22_N、DC/DCコンバータ(スイッチングコンバータ)24、フィードバック回路28およびコントロール回路200を備える。
【0043】
DC/DCコンバータ24は、その出力ライン25に出力電圧VOUTを発生する。DC/DCコンバータ24の構成は特に限定されず、昇圧コンバータ(Boostコンバータ)、降圧コンバータ(Buckコンバータ)、昇降圧コンバータ、フライバックコンバータ、フォワードコンバータなどの中から、用途に応じて最適なトポロジーのスイッチングコンバータを選択すればよい。
【0044】
LEDバー10は、駆動電流に応じた光量で発光する発光素子であり、直列に接続された複数のLEDを備える。LEDバー10の一端(アノード)は、出力ライン25と接続される。電流ドライバ22は、チャンネルごとに設けられ、対応するLEDバー10の他端(カソード)と接続される。各チャンネルのLEDバー10の輝度(光量)は、対応する電流ドライバ22が生成する駆動電流ILEDに応じて制御される。
【0045】
フィードバック回路28は、出力ライン25の出力電圧VOUTに応じた第2検出電圧VOUT2を生成する。第2検出電圧VOUT2は、出力電圧VOUTそのものであってもよいし、出力電圧VOUTを分圧した電圧であってもよいし、出力電圧VOUTをレベルシフトした電圧であってもよい。図4のフィードバック回路28は、抵抗R11,R12を含む分圧回路であり、第2検出電圧VOUT2は以下の式で表される。
OUT2=R12/(R11+R12)×VOUT
【0046】
コントロール回路200は、複数のLEDバー10_1〜10_Nのカソードに生ずる複数の第1検出電圧VLED1〜VLEDNと、第2検出電圧VOUT2を受ける。コントロール回路200は、複数の第1検出電圧VLED1〜VLEDNと、第2検出電圧VOUT2に応じてDC/DCコンバータ24を制御する。
【0047】
コントロール回路200は、誤差信号生成部220、パルス幅変調器204、ドライバ206、調光コントローラ210、基準電圧設定部230、制御ロジック240を備える。コントロール回路200は、ひとつの半導体基板に集積化された機能IC(Integrated Circuit)であってもよい。コントロール回路200には、電流ドライバ22の構成素子の一部、あるいは全部が集積化されてもよい。
【0048】
誤差信号生成部220は、第1状態φ1と第2状態φ2が切りかえ可能である。誤差信号生成部220は、キャリブレーション期間に第1状態φ1に設定され、複数の第1検出電圧VLED1〜VLEDNのうち最も低い電圧と所定の第1基準電圧VREF1との誤差を増幅して誤差信号VERRを生成する。
【0049】
また誤差信号生成部220は、キャリブレーション期間の終了後、通常の点灯期間において第2状態φ2に設定される。誤差信号生成部220は第2状態φ2において、第2検出電圧VOUT2と第2基準電圧VREF2との誤差を増幅して誤差信号VERRを生成する。
【0050】
たとえば誤差信号生成部220は、第1エラーアンプ222、第2エラーアンプ224、セレクタ226を含む。第1エラーアンプ222は、複数の第1検出電圧VLED1〜VLEDNのうち最も低い電圧と第1基準電圧VREF1との誤差を増幅し、第1誤差信号VERR1を生成する。第1エラーアンプ222の前段には、複数の電圧VLED1〜VLEDNのうち、非点灯状態であるチャンネルを除外するためのスイッチ回路が設けられるが、ここでは省略している。また第1エラーアンプ222は、全チャンネルが非点灯状態である期間、言い換えれば、全チャンネルがフィードバック対象から除外される期間、その出力である第1誤差信号VERR1をホールド可能に構成されてもよい。
【0051】
第2エラーアンプ224は、第2検出電圧OUT2と第2基準電圧VREF2との誤差を増幅し、第2誤差信号VERR2を生成する。セレクタ226は、第1誤差信号VERR1と第2誤差信号VERRを受け、キャリブレーション期間において第1誤差信号VERR1を選択し、キャリブレーション期間の終了後に第2誤差信号VERR2を選択する。
【0052】
パルス幅変調器204は、誤差信号VERRに応じてパルス信号SPWMを生成する。パルス幅変調器204の変調方式、回路構成は特に限定されず、電圧モード、ピーク電流モード、平均電流モードなどを公知技術を用いることができる。ドライバ206は、パルス信号SPWMに応じてDC/DCコンバータ24のスイッチング素子を駆動する。
【0053】
調光コントローラ210は、パルス変調された複数の調光パルスSDIM1〜SDIMNを生成し、複数の調光パルスSDIM1〜SDIMNに応じて、複数の電流ドライバ22_1〜22_Nのオン、オフを制御する(PWM調光)。また調光コントローラ210は、PWM調光と併用して、複数の電流ドライバ22_1〜22_Nが生成する駆動電流ILED1〜ILEDNの電流量を変化させてもよい(アナログ調光)。
【0054】
調光コントローラ210は、通常の点灯期間において、図示しない上位のプロセッサ(ホストコントローラともいう)から、複数のLEDバー10_1〜10_Nの目標輝度を指示する制御データSCNTを受ける。制御データSCNTの形式は特に限定されない。たとえば制御データSCNTは、チャンネルごとにPWM調光のデューティ比を示すPWM調光用のデータと、チャンネルごとの駆動電流ILEDの振幅を示すアナログ調光用のデータを含んでもよい。あるいは制御データSCNTは、チャンネルごとの輝度の指令値を含み、調光コントローラ210は、各チャンネルの指令値に応じて、各チャンネルのデューティ比を求め、調光パルスSDIMを生成してもよい。
【0055】
調光コントローラ210は、キャリブレーション期間中において、所定の波形を有するキャリブレーション用の複数の調光パルスSDIM1〜SDIMNを生成する。
【0056】
LEDの順方向電圧Vは、ある量の静的な駆動電流ILEDが流れる場合に比べて、同一振幅の駆動電流ILEDが過渡的に流れるときの方が大きくなる。つまりある駆動電流ILEDが流れるときのLEDの順方向電圧Vは、調光パルスSDIMの周波数(周期)と、デューティ比に応じて変化する。そこで好ましくは調光コントローラ210は、キャリブレーション期間において、LEDバー10_1〜10_Nの順方向電圧VF1〜VFNが最大となるデューティ比を有するキャリブレーション用の複数の調光パルスSDIM1〜SDIMNを生成する。また調光コントローラ210は、キャリブレーション期間において、複数のLEDバー10_1〜10_Nが同時点灯するように、キャリブレーション用の複数の調光パルスSDIM1〜SDIMNを生成してもよい。
【0057】
基準電圧設定部230は、キャリブレーション期間中における第2検出電圧VOUT2の最大値を、第2基準電圧VREF2として保持する。
【0058】
制御ロジック240は、コントロール回路200全体の動作を統合的に制御する。具体的には、照明装置2の起動が指示されると、所定時間経過後にキャリブレーション期間とする。そして調光コントローラ210に、キャリブレーション用の調光パルスSDIM1〜SDIMNを生成させる。コントロール回路200がアナログ調光をサポートする場合、制御ロジック240は、LEDバー10の順方向電圧Vが最大となるように、電流ドライバ22_1〜22_Nに、最大の駆動電流ILED1〜ILEDNを発生させる。また基準電圧設定部230に、第2検出電圧VOUT2の最大値を記憶させる。また誤差信号生成部220を第1状態φ1で動作させる。
【0059】
キャリブレーション期間が終了すると、制御ロジック240は、通常の点灯期間に移行する。制御ロジック240は調光コントローラ210を通常モードに切りかえ、調光コントローラ210に、制御データSCNTに応じた調光パルスSDIM1〜SDIMNを発生させる。また誤差信号生成部220を第2状態φ2に設定する。また制御ロジック240は、基準電圧設定部230に、第2基準電圧VREF2を生成させる。
【0060】
以上がコントロール回路200の構成である。続いてその動作を説明する。図5は、図4の照明装置2の動作波形図である。
【0061】
時刻t0に、照明装置2の起動が指示される。コントロール回路200は、起動直後のソフトスタート期間TSSの間、そのソフトスタート機能によって、DC/DCコンバータ24の出力電圧VOUTを所定の電圧レベルまで緩やかに上昇させる。ソフトスタート機能の実現方法は特に限定されないが、たとえば誤差信号生成部220を第2状態φ2に設定し、第2基準電圧VREF2の代わりにソフトスタート電圧VSSを時間とともに緩やかに増大させてもよい。
【0062】
続いて、時刻t1にキャリブレーション期間TCALに移行する。キャリブレーション期間TCALにおいて誤差信号生成部220が第1状態φ1に設定される。また調光コントローラ210は、キャリブレーション用の調光パルスSDIM1〜SDIMNを生成する。調光パルスSDIMは、そのハイレベルが電流ドライバ22のオンに対応する。
【0063】
複数のLEDバー10_1〜10_Nの順方向電圧VF1〜VFNは、調光パルスSDIM1〜SDIMNに応じたパルス波形となり、ばらつきにより異なる振幅を有する。この例では第2チャンネルの順方向電圧VF2が最も大きい値VF_MAXを有しており、したがってDC/DCコンバータ24の出力電圧VOUTは、
OUT_MAX=VREF1+VF_MAX
に安定化される。
【0064】
キャリブレーション期間TCALにおいて、第2検出電圧VOUT2の最大値VOUT2_MAXは、VOUT_MAX×R12/(R11+R12)で与えられる。基準電圧設定部230は、この最大値VOUT2_MAXを記憶する。
【0065】
時刻t2にキャリブレーション期間TCALが終了し、通常の点灯期間TNORMに移行する。基準電圧設定部230は、記憶した電圧VOUT2_MAXを、第2基準電圧VREF2として生成する。また誤差信号生成部220が第2状態φ2に設定される。これにより、第2検出電圧VOUT2が第2基準電圧VREF2(=VOUT2_MAX)と一致するようにフィードバックがかかる。その結果、出力電圧VOUTは、キャリブレーション期間TCALと同じ電圧レベルVOUT_MAXに安定化される。通常の点灯期間TNORMにおいて、調光コントローラ210が生成する調光パルスSDIM1〜SDIMNは、制御データSCNTに応じて生成される。
【0066】
以上が照明装置2の動作である。この照明装置2によれば、キャリブレーション期間TCALの終了後の通常の点灯期間TNORMにおいて、出力電圧VOUTは最大電圧VOUT_MAXに安定化される。
【0067】
この照明装置2によれば、通常の点灯期間中において出力電圧VOUTが実質的に一定レベルに保たれるため、上述の問題のひとつまたは複数を解決することができる。具体的には、以下の効果の少なくともひとつを得ることができる。
【0068】
(1)出力電圧VOUTは、すべてのLEDバー10を所望の輝度(光量)で点灯させうる電圧範囲に安定化される。つまり応答遅延により出力電圧VOUTが不足する状況が生じないため、あるチャンネルのLEDバー10の輝度が、目標レベルより低くなるのを防止でき、ちらつきなどを抑えることができる。
【0069】
(2)また出力電圧VOUTが実質的に一定に保たれるため、出力電圧VOUTの変動に起因するセラミックコンデンサやコイルの騒音を抑制できる。
【0070】
(3)またコントロール回路200に要求される応答速度を下げることができる。これによりスイッチング周波数を高くする必要が無いため、消費電力の増加、発熱量の増加を抑制できあるいはフィードバックループの帯域を広げる必要が無いため、系の安定性を高めることができる。
【0071】
(4)さらに基準電圧設定部230により、第2基準電圧VREF2を決定するため、以下の効果が得られる。
別のアプローチ(比較技術)として、第2基準電圧^VREF2を、以下の式で規定することも考えられる。
^VREF2=VREF1+^VF_MAX+VMERG
^VF_MAXは、ばらつきを考慮したときのLEDバー10の順方向電圧の想定される最大値である。LEDバー10を構成する1個のLEDの順方向電圧Vfのばらつきを考慮した最大値は、LEDの仕様書から、あるいは事前の測定から知ることができ、したがってLEDバー10に含まれるLEDの個数がn個であるとき、^VF_MAX=n×Vfで求めることができる。VMERGはマージンである。
【0072】
この比較技術では、LEDバー10_1〜10_Nの順方向電圧の実際の最大値VF_MAXが、想定される最大値^VF_MAX=n×Vfよりも小さい場合に、それらの差分(^VF_MAX−VF_MAX)と、マージンVMERGの合計電圧VLOSSが損失となる。図5には比較のために^VREF2が示される。
【0073】
これに対して、図4のコントロール回路200によれば、基準電圧設定部230によって、第2基準電圧VREF2を、LEDバー10_1〜10_Nの順方向電圧VF1〜VFNの実際の値に基づいて設定することができるため、比較技術に比べて効率を高めることができる。
【0074】
本発明は、図4のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例を説明する。
【0075】
図6(a)〜(c)は、基準電圧設定部230の構成例を示す回路図である。図6(a)の基準電圧設定部230aは、A/Dコンバータ231、デジタル回路232a、D/Aコンバータ235を含む。A/Dコンバータ231は、キャリブレーション期間TCALにおいて、第2検出電圧VOUT2をデジタル値DOUT2に変換する。デジタル回路232aは、キャリブレーション期間TCALにおいて、デジタル値DOUT2の最大値DOUT2_MAXをホールドし、メモリ233に格納する。D/Aコンバータ235は、通常の点灯期間TNORMにおいて、メモリ233に格納されたデジタル値DOUT2_MAXを、アナログの第2基準電圧VREF2に変換する。またソフトスタート回路234は、ソフトスタート期間TSSにおいて、時間とともに緩やかに増大するデジタルのソフトスタート信号を生成する。D/Aコンバータ235は、ソフトスタート信号をアナログのソフトスタート電圧VSSに変換する。
【0076】
図6(b)の基準電圧設定部230は、A/Dコンバータ231の前段に設けられたサンプルホールド回路236を備える。サンプルホールド回路236は、キャリブレーション期間TCALにおいて、第2検出電圧VOUT2の最大値VOUT2_MAXをサンプルホールドする。サンプルホールド回路236は、ピークホールドで構成してもよい。A/Dコンバータ231は、最大値VOUT2_MAXをデジタル値DOUT2_MAXに変換し、メモリ233に格納する。
【0077】
図6(c)の基準電圧設定部230cでは、デジタル回路232cからソフトスタート回路234が省略されており、その代わりにD/Aコンバータ235の後段にアナログのソフトスタート回路237が設けられる。ソフトスタート回路237は、キャパシタ238と、ソフトスタート期間TSSにおいてキャパシタ238を充電する電流源239を含む。当業者によれば、図6(a)〜(c)の他にも、基準電圧設定部230を構成しうることが理解される。
【0078】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、キャリブレーション期間TCALの終了後の通常の点灯期間TNORMにおいて、誤差信号生成部220を第2状態φ2で固定し、出力電圧VOUTを一定に保つこととした。第2の実施の形態では、制御ロジック240は、通常の点灯期間TNORMにおいて、誤差信号生成部220を動的、適応的に、第1状態φ1と第2状態φ2で切りかえながら動作させる。
【0079】
より詳しくは、通常の点灯期間TNORMにおいても、第1状態φ1を選択したとしても出力電圧VOUTの変動幅が小さい場合には、第1状態φ1で動作させる。
【0080】
図7(a)は、調光パルスSDIMのパルス幅が狭い場合の、図7(b)はそのパルス幅が広い場合の、複数のLEDバーの順方向電圧Vを示す図である。LEDの過渡的な順方向電圧Vは、調光パルスSDIMのデューティ比(パルス幅)に依存し、デューティ比が小さいほど順方向電圧Vは大きく、デューティ比が大きいほど順方向電圧V’は小さくなる場合がある。
【0081】
そして順方向電圧Vの差ΔVが小さい状態では、誤差信号生成部220を第1状態φ1として出力電圧VOUTを変化させたとしても、出力電圧VOUTの変動幅が小さいため、高速な応答性が不要である。そして図7(b)に示すようにデューティ比がある程度大きな状態では出力電圧VOUTの変動幅ΔV’の変動幅は小さくなる。そこで第2の実施の形態においては、制御ロジック240は、複数の調光パルスSDIM1〜SDIMNのデューティ比(パルス幅)に応じて、誤差信号生成部220の第1状態φ1と第2状態φ2を切りかえる。
【0082】
たとえば誤差信号生成部220は、複数の調光パルスSDIM1〜SDIMNのデューティ比のうち最も小さい最小デューティ比が所定のしきい値(たとえば50%)より大きいとき、第1状態φ1とされる。これにより、出力電圧VOUTは、電流ドライバ22_1〜22_Nのオン、オフに応じて時々刻々と変化する。なおしきい値は、ダイオードの過渡応答特性に応じて定めればよい。
【0083】
反対に最小デューティ比がしきい値より小さいとき、つまり複数のLEDバー10の順方向電圧Vの差分ΔVが大きい場合には、第2状態φ2とされる。これにより、出力電圧VOUTは、電流ドライバ22_1〜22_Nのオン、オフにかかわらず、一定電圧に維持される。
【0084】
図8は、第2の実施の形態に係る照明装置2の通常の点灯期間の動作波形図である。ここでは理解の容易化のため、2チャンネルとする。波形の前半部分は、複数の調光パルスSDIM1〜SDIMNのデューティ比のうち最も小さい最小デューティ比が、所定のしきい値(たとえば50%)より小さい。このとき、各チャンネルの順方向電圧Vは大きくなっており、それらの差ΔV=VF2−VF1も大きくなっている。したがって第2状態φ2で動作させることにより、出力電圧VOUTを一定とし、応答遅れによる非点灯を防止している。
【0085】
波形の後半部分は、複数の調光パルスSDIM1〜SDIMNのデューティ比のうち最も小さい最小デューティ比が、所定のしきい値(たとえば50%)より大きい。このとき、各チャンネルの順方向電圧Vは小さくなっており、それらの差ΔV’=VF2’−VF1’も小さくなっている。したがって第1状態φ1で動作させ、出力電圧VOUTを変化させている。
【0086】
第2の実施の形態によれば、通常の点灯期間TNORMにおいても、第1状態φ1で動作させる期間が発生することにより、効率を改善することができる。
【0087】
続いて照明装置2の用途を説明する。図9(a)、(b)は、図4の直下型の照明装置2を備える電子機器の一例を示す図である。図9(a)の電子機器700はテレビ、カーナビゲーションシステム、PCなどのディスプレイ装置である。図9(b)は、電子機器700は、タブレットPC、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話端末などである。電子機器700は、筐体702およびLCDパネル102を備える。LEDバー10は、LCDパネル102の背面にバックライトとして配置される。これらの電子機器には、直下型の照明装置2に代えて、図3に示すようなエッジライト型の照明装置2を搭載してもよい。
【0088】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0089】
(第1変形例)
第1の実施の形態では、図5に示すようにキャリブレーション期間TCALにおいて、複数の調光パルスSDIM1〜SDIMNを同時にハイレベル(つまり電流ドライバ22を同時オン)としたが、本発明はそれには限定されない。複数の調光パルスSDIM1〜SDIMNを排他的に順にオンレベルとしてもよい。この場合も、第2検出電圧VOUT2の最大値を第2基準電圧VREF2とすればよい。たとえば基準電圧設定部230をピークホールド回路を用いて構成してもよい。
【0090】
(第2変形例)
第2の実施の形態において、基準電圧設定部230を省略し、第2基準電圧VREF2として、比較技術として説明した所定の電圧^VREF2を用いてもよい。この場合、第2の実施の形態と比べて効率は悪化するが、通常の点灯期間TNORMにおいて、第1状態φ1と第2状態φ2を切り替えることにより、効率を改善できる。
【0091】
(第3変形例)
誤差信号生成部220の構成は、図4のそれには限定されない。第1エラーアンプ222と第2エラーアンプ224を、単一のエラーアンプを共有するように構成してもよい。この場合、セレクタ226を省略し、エラーアンプの入力側に、基準電圧VREF1/VREF2を切りかえ、また検出電圧VOUT2/VLED1〜VLEDNを切りかえるセレクタ(スイッチ回路)を設ければよい。
【0092】
(第4変形例)
実施の形態では、すべてのLEDバー10が同じ発光素子(白色LED)であるものとしたが、本発明はそれには限定されない。たとえばあるLEDバー10は赤色LED、別のLEDバー10は緑色LED、さらに別のLEDバー10は青色LEDを含んでもよい。この場合、チャンネルごとの順方向電圧Vのばらつきはさらに大きくなるため、発明の効果を一層享受できる。また発光素子の種類はLEDには限定されず、有機ELやその他の半導体光源も利用しうる。
【0093】
(第5変形例)
照明装置2の用途は液晶のバックライトに限定されず、電飾装置などにも利用可能である。
【0094】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎないことはいうまでもなく、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0095】
2…照明装置、102…LCDパネル、104…領域、10…LEDバー、20…駆動回路、22…電流ドライバ、24…DC/DCコンバータ、25…出力ライン、26…コントロール回路、28…フィードバック回路、200…コントロール回路、202…エラーアンプ、204…パルス幅変調器、206…ドライバ、210…調光コントローラ、220…誤差信号生成部、222…第1エラーアンプ、224…第2エラーアンプ、226…セレクタ、230…基準電圧設定部、231…A/Dコンバータ、232…デジタル回路、233…メモリ、234…ソフトスタート回路、235…D/Aコンバータ、236…サンプルホールド回路、237…ソフトスタート回路、240…制御ロジック。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9