特許第6635729号(P6635729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大川原製作所の特許一覧

特許6635729回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造 並びにこの回転ドラム型処理機 並びにこのリフタ板の組立保守方法
<>
  • 特許6635729-回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造  並びにこの回転ドラム型処理機  並びにこのリフタ板の組立保守方法 図000002
  • 特許6635729-回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造  並びにこの回転ドラム型処理機  並びにこのリフタ板の組立保守方法 図000003
  • 特許6635729-回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造  並びにこの回転ドラム型処理機  並びにこのリフタ板の組立保守方法 図000004
  • 特許6635729-回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造  並びにこの回転ドラム型処理機  並びにこのリフタ板の組立保守方法 図000005
  • 特許6635729-回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造  並びにこの回転ドラム型処理機  並びにこのリフタ板の組立保守方法 図000006
  • 特許6635729-回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造  並びにこの回転ドラム型処理機  並びにこのリフタ板の組立保守方法 図000007
  • 特許6635729-回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造  並びにこの回転ドラム型処理機  並びにこのリフタ板の組立保守方法 図000008
  • 特許6635729-回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造  並びにこの回転ドラム型処理機  並びにこのリフタ板の組立保守方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6635729
(24)【登録日】2019年12月27日
(45)【発行日】2020年1月29日
(54)【発明の名称】回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造 並びにこの回転ドラム型処理機 並びにこのリフタ板の組立保守方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20200120BHJP
   F16B 23/00 20060101ALI20200120BHJP
   F26B 11/04 20060101ALI20200120BHJP
   D06F 37/06 20060101ALI20200120BHJP
【FI】
   F16B5/02 R
   F16B5/02 U
   F16B23/00 J
   F26B11/04
   D06F37/06
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-177435(P2015-177435)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-53427(P2017-53427A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(72)【発明者】
【氏名】大川原 平典
(72)【発明者】
【氏名】増田 行雄
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−185624(JP,A)
【文献】 特開平11−210094(JP,A)
【文献】 実開昭54−061957(JP,U)
【文献】 特開2011−251207(JP,A)
【文献】 実開昭47−015859(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00− 5/12,
23/00− 43/02
D06F 21/00− 39/14
F26B 1/00− 25/22
E04B 1/00− 1/36,
1/38− 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ドラムと、回転ドラムの骨格を形成するフレーム部材と、回転ドラムの内周面を覆うようにフレーム部材に張設されるリフタ板とを具え、
回転ドラムの内側に投入された被処理物を、回転に伴いリフタ板で上昇・撹拌させながら、被処理物の投入側から排出側に移送し、被処理物に適宜の処理を施すようにした回転ドラム型処理機において、フレーム部材に対し、ボルトとナットとを用いた締結手段によってリフタ板を固定する組立構造であって、
前記ボルトには、ネジ先端に、ボルトを回転させるための捻じ込み操作部が、ボルト頭部とは別に形成され、
また、フレーム部材にはボルト受入孔にサポート用のメネジ部が形成され、
前記リフタ板をフレーム部材に固定する前の状態では、リフタ板の取付け方向の反対側からフレーム部材のボルト受入孔に捻じ込まれたボルトは、そのネジ先端をリフタ板の取付け方向に臨ませた状態に組立てられ、
またリフタ板をフレーム部材にセットした状態では、前記ボルトを回転させてボルトの軸部をリフタ板よりも突出させ、この突出させたボルトの軸部にナットを捻じ込んで締結して、リフタ板をフレーム部材に固定する構造であり、
且つ前記リフタ板は、フレーム部材に対して複数枚固定されるものであり、少なくとも隣り合うリフタ板同士が羽重ね状態でフレーム部材に張設される重ね合わせ部が存在するものであり、
且つまた一枚のリフタ板は、複数のボルトでフレーム部材に固定され、なお且つ重ね合わせ部もボルトで固定され、
前記一枚のリフタ板を固定する複数のボルトは、周方向においてボルトの向きが不均一であることを特徴とする、回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造。
【請求項2】
前記ボルトに螺合させるナットは、ダブルナットであることを特徴とする請求項記載の、回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造。
【請求項3】
前記ボルトに螺合させるナットは、袋ナットであることを特徴とする請求項1または2記載の、回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造。
【請求項4】
前記ボルトの捻じ込み操作部は、ボルトの軸部先端から突出して形成されることを特徴とする請求項1からのいずれか1項記載の、回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造。
【請求項5】
回転ドラムと、回転ドラムの骨格を形成するフレーム部材と、回転ドラムの内周面を覆うようにフレーム部材に張設されるリフタ板とを具え、
回転ドラムの内側に投入された被処理物を、回転に伴いリフタ板で上昇・撹拌させながら、被処理物の投入側から排出側に移送し、被処理物に適宜の処理を施すようにした回転ドラム型処理機において、
前記リフタ板は、請求項1からのいずれか1項に記載されたネジ組立構造によって、回転ドラムのフレーム部材に取り付けられていることを特徴とする回転ドラム型処理機。
【請求項6】
回転ドラムと、回転ドラムの骨格を形成するフレーム部材と、回転ドラムの内周面を覆うようにフレーム部材に張設されるリフタ板とを具え、
回転ドラムの内側に投入された被処理物を、回転に伴いリフタ板で上昇・撹拌させながら、被処理物の投入側から排出側に移送し、被処理物に適宜の処理を施すようにした回転ドラム型処理機においてリフタ板を交換する組立保守方法であって、
前記リフタ板は、フレーム部材に対し、ボルトとナットとを用いた締結手段による組立構造で固定されて成り、
交換対象となるリフタ板を回転ドラムのフレーム部材から取り外す際には、ボルトのフレーム部材からの突出量をほぼ0にした状態で、交換対象となるリフタ板をフレーム部材から取り外し、取り外した部位に新たなリフタ板を、請求項1からのいずれか1項に記載されたネジ組立構造によって取り付けて、リフタ板を交換するようにしたことを特徴とする、回転ドラム型処理機におけるリフタ板の組立保守方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば回転型通気乾燥機等の回転ドラム型処理機において、ドラムの内側からその内周側に張設されるリフタ板を、ボルト・ナットによる締結手段を用いてフレーム部材に固定するのに適したネジ組立手法に関するものであり、特にボルトの先端(ネジ先端)に捻じ込み操作部を形成し、リフタ板の組付け時にはこのボルトのネジ先端をドラムの内側に臨むようにし、ドラム内側から回転操作(捻じ込み操作)が行えるようにした新規な、回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造、並びにこの回転ドラム型処理機、並びにこのリフタ板の組立保守方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、回転ドラム型処理機の一つとして回転型通気乾燥機が知られている。
この回転型通気乾燥機Dは、一例として図1図2に示すように、固定設置されるケーシング4の内部に回転ドラム5を設けて成り、回転ドラム5は、円筒状を成すドラム本体51と、ドラム本体51の骨格を成すフレーム部材52と、ドラム本体51の内周面を覆うようにフレーム部材52に張設されるリフタ板53とを具えて成る。
またケーシング4は、回転ドラム5に熱風Hを送る吸気ダクト41と、作用後の熱風Hを排出する排気ダクト42とを具えて成り、熱風Hは、回転ドラム5の側面下部からドラム本体51内の被処理物Wの層を通して、上方に排気される。
またドラム本体51には、被処理物投入側(以下、単に「投入側」とする)から製品排出側(以下、単に「排出側」とする)に向かって、緩やかな下り勾配が付与されている。
【0003】
またリフタ板53は、複数のものがドラム本体51の内側からその内周面に沿って張設されるものであり、リフタ板53の表面には、断面視でドラム内側に三角形状に張り出す突出部532が形成される。すなわち、ドラム本体51内に投入された被処理物Wは、回転ドラム5の回転に伴いリフタ板53により上昇・撹拌されながら(いわゆるキルンアクションであり、前記突出部532がこの作用を担う)、前記勾配により投入側から排出側に移送されるものであり、この移送中に熱風Hに晒されて乾燥される。
このように回転型通気乾燥機Dは、回転ドラム5の回転による穏やかな混合作用と熱風Hの通気により、ムラのない高品質な乾燥品W1が得られるようにした乾燥機である。
【0004】
また、リフタ板53は、円筒状に配列されて成るフレーム部材52に止め付けられるため、リフタ板53もまた円筒状に配列されており、リフタ板53を固定する複数のボルト11は、全てが一定方向を向くわけではなく、なお且つ全てが同一平面上に設けられるものでもなかった。
更に、リフタ板53は、ドラム内周面を隙間なく覆うために、前後周辺のものが、その端縁を羽重ね状に重ね合わせるように張設されていた。
【0005】
そして、このようなリフタ板53をフレーム部材52に固定するにあたっては、従来、例えば図8(a)に示すように、フレーム部材52にリフタ板53′(以下、従来仕様の部材に「′」を付す)をセットした後、ここにボルト(例えば一般的な六角ボルト)11′をドラム本体51の内側(中心側)から捻じ込み、更に液体のネジ緩み止め用接着剤(いわゆるロックタイト(登録商標))を用いて固定していた。しかしながら、ボルト11′(主に頭部)は、乾燥処理中、絶えず被処理材Wと接触し、また熱風Hにも晒され、更にはドラム本体51の回転に伴い、繰返し天地が反転すること等から、このような固定手法では、経年使用に伴いボルト11′が抜け落ちるトラブルが発生した。
【0006】
このため新たな固定手法が案出され、この手法は一例として図8(b)に示すように、ボルト11′の向き(捻じ込み方向)を逆にしたものであり、まずリフタ板53′の取り付け方向の反対側つまりドラム本体51の外周側からフレーム部材52のボルト受入孔521にボルト11′を捻じ込み、ボルト11′の軸部113′をドラム本体51の内側に突出させた状態とするものである。
その後、この状態でリフタ板53′のボルト取付孔531′に、突出させたボルト11′の軸部113′を貫通させるように、リフタ板53′を被せた後、ドラム本体51の内側からボルト11′にナット12′を締め付けて、リフタ板53′を固定するものである。
【0007】
しかしながら、このような取付け手法においても、以下のような問題があった。
まず上記のように予めボルト11′をフレーム部材52に対し捻じ込んでしまうと、ボルト11′の先端がドラム本体51の中心側(内側)に大きく突出した状態となる。より具体的には、円筒状に配列した各フレーム部材52から突出している各ボルト11′もまた円周上に配列され、これらボルト11′の軸部113′の方向は、ドラム本体51の中心を向く。つまり円周上に配列された各ボルト11′の軸部113′の方向は、全てが平行ではない状態でフレーム部材52から大きく突出する。そして、このような状態で隣り合うボルト11′の軸部113′に、リフタ板53′のボルト取付孔531′を通すためには、ボルト取付孔531′として通常のキリ孔の口径は採用できなかった。この対策として、リフタ板53′のボルト取付孔531′を長孔もしくは非常に大きな口径のキリ孔とすることで先端が大きく突出したボルト11′にリフタ板リフタ板53′を差し込むことは可能になったが、その一方で、長孔(ボルト取付孔531′)をカバーするために大径の座金13′で覆う必要が生じた。
【0008】
また、リフタ板53′は、上述したように前後周辺のリフタ板53′と端縁を重ね合わせて取り付けられるため、リフタ板53′を交換するには、傷んだリフタ板53′のみならず、その周辺のリフタ板53′を固定しているボルト11′も緩める必要があるが、従来の取り付け方では、リフタ板53′はドラム本体51の内周面全体に隙間なく張設されていたため、ドラム外側方向からボルト11′(ボルト頭部112′)にアクセスして、ボルト11′をドラム内側から引っ込める(ドラム内側への突出寸法をなくす)作業を行わねばならず、ドラム本体51の内外からの作業を要するという点で、傷んだリフタ板53′を一枚だけ交換するにしても非常に手間を要する作業となっていた。
【0009】
また、上述した長孔や口径の大きなキリ孔を採用しない場合、薄板のリフタ板53′であれば、ボルト11′の軸部113′がフレーム部材52から突出していても、リフタ板53′を作業者が大きく撓ませることによりボルト11′から抜き出すことができる。つまり交換を要する傷んだリフタ板53′(交換対象であるリフタ板53′)を固定しているボルト11′のナット12′を外すだけで、このリフタ板53′を取り外すことができるが、突出している軸部113′は作業の妨げになり、また交換用の新しいリフタ板53′を取り付ける際は、ボルト11′が突出しているため、このリフタ板53′を撓ませてから取り付けることになり、撓みの程度を誤ればリフタ板53′を永久変形させてしまうおそれが高かった。そのため薄板であっても取り付け作業としては難しいものであった。
また、例えば板厚が1mm程度のリフタ板53′であったり、剛性が高い構造のリフタ板53′であったりすると、ボルト11′から抜き出せるほどの撓み自体を起こさせることが難しかった。
そして、また隣り合うリフタ板53′同士が羽重ね状態で組み立てられていることも作業を難しくしていた。そのため、上述のように、ドラム本体51の外側からボルト11′をドラム内側から引っ込める作業に加えて、広範囲のリフタ板53′も同様にボルト11′による固定を緩め、必要に応じた範囲でこれらリフタ板53′のボルト11′もドラム内側から引っ込める作業を行い、広範囲のリフタ板53′をルーズなガタツキのある状態にした上で、交換対象であるリフタ板53′を抜き出すようにしなければならず、かなりの時間、手間、労力等を要することとなっていた。
【0010】
なお、ボルトの先端部に、ボルトを回転させるための操作部を別途設ける技術思想そのものは既に存在している(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、この特許文献1は、専ら鋼管柱の接合構造に特定された技術思想である。これに対し、本願発明では、上記のようにリフタ板を固定するボルトの向きが不均一であり、また前後周辺のもの同士が重なり合って張設されること、更にはドラム本体の回転に伴いボルトの向きが天地反転すること等、極めて過酷な取付状況である点で特許文献1とは大きく相違する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3179073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、回転ドラム型処理機においてドラムの内周側にリフタ板を能率的に張設でき、また経年使用に伴いリフタ板が傷んだ場合には、これを一枚だけでも容易に交換できるようにした、新規なネジ組立構造、並びにこれを利用した新規な回転ドラム型処理機、並びにこのリフタ板の組立保守方法の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち請求項1記載の、回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造は、
回転ドラムと、回転ドラムの骨格を形成するフレーム部材と、回転ドラムの内周面を覆うようにフレーム部材に張設されるリフタ板とを具え、
回転ドラムの内側に投入された被処理物を、回転に伴いリフタ板で上昇・撹拌させながら、被処理物の投入側から排出側に移送し、被処理物に適宜の処理を施すようにした回転ドラム型処理機において、フレーム部材に対し、ボルトとナットとを用いた締結手段によってリフタ板を固定する組立構造であって、
前記ボルトには、ネジ先端に、ボルトを回転させるための捻じ込み操作部が、ボルト頭部とは別に形成され、
また、フレーム部材にはボルト受入孔にサポート用のメネジ部が形成され、
前記リフタ板をフレーム部材に固定する前の状態では、リフタ板の取付け方向の反対側からフレーム部材のボルト受入孔に捻じ込まれたボルトは、そのネジ先端をリフタ板の取付け方向に臨ませた状態に組立てられ、
またリフタ板をフレーム部材にセットした状態では、前記ボルトを回転させてボルトの軸部をリフタ板よりも突出させ、この突出させたボルトの軸部にナットを捻じ込んで締結して、リフタ板をフレーム部材に固定する構造であり、
且つ前記リフタ板は、フレーム部材に対して複数枚固定されるものであり、少なくとも隣り合うリフタ板同士が羽重ね状態でフレーム部材に張設される重ね合わせ部が存在するものであり、
且つまた一枚のリフタ板は、複数のボルトでフレーム部材に固定され、なお且つ重ね合わせ部もボルトで固定され、
前記一枚のリフタ板を固定する複数のボルトは、周方向においてボルトの向きが不均一であることを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項記載の、回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造は、前記請求項記載の要件に加え、
前記ボルトに螺合させるナットは、ダブルナットであることを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項記載の、回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記ボルトに螺合させるナットは、袋ナットであることを特徴として成るものである。
【0016】
また請求項記載の、回転ドラム型処理機におけるリフタ板のネジ組立構造は、前記請求項1からのいずれか1項記載の要件に加え、
前記ボルトの捻じ込み操作部は、ボルトの軸部先端から突出して形成されることを特徴として成るものである。
【0017】
また請求項記載の、回転ドラム型処理機は、
回転ドラムと、回転ドラムの骨格を形成するフレーム部材と、回転ドラムの内周面を覆うようにフレーム部材に張設されるリフタ板とを具え、
回転ドラムの内側に投入された被処理物を、回転に伴いリフタ板で上昇・撹拌させながら、被処理物の投入側から排出側に移送し、被処理物に適宜の処理を施すようにした回転ドラム型処理機において、
前記リフタ板は、請求項1からのいずれか1項に記載されたネジ組立構造によって、回転ドラムのフレーム部材に取り付けられていることを特徴として成るものである。
【0018】
また請求項記載の、回転ドラム型処理機におけるリフタ板の組立保守方法は、
回転ドラムと、回転ドラムの骨格を形成するフレーム部材と、回転ドラムの内周面を覆うようにフレーム部材に張設されるリフタ板とを具え、
回転ドラムの内側に投入された被処理物を、回転に伴いリフタ板で上昇・撹拌させながら、被処理物の投入側から排出側に移送し、被処理物に適宜の処理を施すようにした回転ドラム型処理機においてリフタ板を交換する組立保守方法であって、
前記リフタ板は、フレーム部材に対し、ボルトとナットとを用いた締結手段による組立構造で固定されて成り、
交換対象となるリフタ板を回転ドラムのフレーム部材から取り外す際には、ボルトのフレーム部材からの突出量をほぼ0にした状態で、交換対象となるリフタ板をフレーム部材から取り外し、取り外した部位に新たなリフタ板を、請求項1からのいずれか1項に記載されたネジ組立構造によって取り付けて、リフタ板を交換するようにしたことを特徴として成るものである。
なお、ボルトのフレーム部材からの突出量は、取り付け方向からの作業によりリフタ板の取り付け・取外しが可能な範囲において突出させても構わず、またボルトがフレーム部材から抜け落ちない範囲においてフレーム部材の表面より後退(取り付け方向から後退)させても構わない。そのため上記「突出量がほぼ0」という旨の記載は、このような範囲を便宜的に表したものである。また、本明細書においては、ボルトがフレーム部材から抜け落ちない範囲においてフレーム部材の表面より後退した状態でも、便宜的に突出量と称することがある。
【発明の効果】
【0019】
まず請求項1記載の発明によれば、フレーム部材のボルト受入孔には、ボルトをサポート保持するためのメネジ部が形成されるため、ボルト受入孔に嵌め込んだ状態でボルトを仮止めすることができ、その後のリフタ板の組立作業を能率的に且つ安定して行うことができる。すなわち、例えばフレーム部材のボルト受入孔が単にキリ孔として形成され、ここにボルトを差し込むだけの場合には、差し込んだボルトがぐらつき、その後の組立作業も安定して行えないことが懸念される。しかしながら、本発明では固定する前の状態において、捻じ込みによりボルトを仮止めするため、このようなぐらつきを防ぐことができ、その後のリフタ板のセットやナットの締め付け等が円滑に且つ確実に行える(作業性向上)。また、このような捻じ込みによる仮止めであれば、ボルトのネジ先を上方に向けてフレーム部材に仮止めした場合であっても、ボルトがフレーム部材から抜け落ちてしまうことがなく、より一層の作業性向上に寄与する。
また、本発明では、ボルトの向きは、ネジ先端がリフタ板の取り付け方向に臨むように設定され、且つこのネジ先端には、ボルトを回転させるための捻じ込み操作部が形成されるため、ボルトを前記取り付け方向に突出させる(せり出させる)作業や、ボルトを前記取り付け方向から引っ込める作業(取り付け方向への突出量を小さくする作業)、あるいはナットの締め付け作業が、前記取り付け方向からの作業となり(つまり前記取り付け方向の反対側からボルトを操作する作業は一切なくなり)、作業性向上に寄与する。
また、リフタ板が平面形状ではなく、そしてそれに対する取り付け面、すなわちフレーム部材の取り付け面の全てが同一平面に設けられていないが、ボルトがフレーム部材の取り付け面から突出しない仮止め状態であれば、リフタ板の取り付け作業を妨げることはなく、一層の作業性向上に寄与する。
また本発明によれば、複数枚のリフタ板がフレーム部材に対し羽重ね状に張設される部位(重ね合わせ部)が存在し、また一枚のリフタ板は複数のボルトで固定され、且つ重ね合わせ部もボルトで固定されるため、通常では極めてボルト・ナットによる固定は行いづらいが、リフタ板を固定する際には、取り付け方向にボルトの捻じ込み操作部をほぼ突出させないようにするため、このような状況であっても効率的にリフタ板を取り付けることができる。
なお、従来、このような状況に対し、例えばリフタ板のボルト取付孔を長孔あるいは大口径のキリ孔に形成しておき、取り付け方向にボルトのネジ先端が突出していても取り付け得るような対策を採っていたが、その場合には長孔またはキリ孔をカバーするために大きな座金が必要になっていた。これに対し本発明では、取り付け時にボルトのネジ先端をほぼ突出させないようにしており、これによりリフタ板のボルト取付孔も、ボルトの軸部が貫通できる程度のキリ孔(軸部とほぼ同じ径寸法)に形成することができ、大きな座金は要しないものである。もちろん大きな座金が不要になれば、汎用の座金が使用でき、またリフタ板に関する設計の自由度も高まり、より効率的なネジ組立構造が得られる。
【0020】
また請求項記載の発明によれば、ナットとしてダブルナットが適用されるため、ナットの緩み止めを強固に図ることができる。特に、リフタ板の取り付け方向が適宜の閉鎖空間(処理室)であり、ここで食材などの被処理物を処理(例えば乾燥)する場合には、ナットの混入(異物混入)は完全に回避する必要があり、このような場合に好適である。
なお、上記のようなダブルナットに加え、ナット間にクサビの原理を利用した構造を採用することにより、一層、緩み難い構成を採ることができ、例えばハードロック工業株式会社製のハードロックナット(登録商標)を用いることができる。
【0021】
また請求項記載の発明によれば、ナットとして袋ナットが適用されるため、例えばネジ先端の捻じ込み操作部が、六角穴のように凹陥状に形成されていても、ここに被処理物が溜まることを防止することができる。なお、捻じ込み操作部を凹陥状に形成し、ここを露出させた場合には(例えば袋ナットでない通常の六角ナットで締め込んだ場合には)、この凹陥状の捻じ込み操作部に被処理物が溜まることがあり、ここに溜まった古い被処理物が新たな被処理物を汚染・汚損してしまうことが考えられる(コンタミ)。このため本発明では袋ナットの適用により、このようなコンタミをほぼ完全に防止するものである。
【0022】
また請求項記載の発明によれば、ボルトの捻じ込み操作部は、軸部先端から突出して形成されるため(例えば六角棒状や四角柱状など)、捻じ込み操作部に被処理物が溜まり難い構造となる。
なお、捻じ込み操作部を上記のように軸部先端から突出して形成した場合には、ボルトに螺合させるナットとして捻じ込み操作部(軸部)を貫通する六角ナットを適用してもコンタミを防止できるが(クサビの原理を利用した緩み止めナットが好ましい)、袋ナットを適用することは何ら差し支えない。もちろん、捻じ込み操作部が軸部先端から突出形成される上記構造は、ナットのボルトへの螺合を妨げないように考慮される。また、ナットが袋ナットである場合も、突出形成されている捻じ込み操作部が袋ナット内部に隠れ、且つ捻じ込み操作部と袋ナット内部とは適宜のクリアランスを有した状態で所定の締結力が得られように締結されるため、袋ナットを用いる場合においても何ら支障はない。
【0023】
また請求項記載の発明によれば、ボルトの向きは、ネジ先端がドラムの内側に臨むように設定され、且つこのネジ先端には、ボルトを回転させるための捻じ込み操作部が形成されるため、ボルトをドラム内側に突出させる(せり出させる)作業や、ボルトをドラム内側から引っ込める作業(ドラム内側への突出量を小さくする作業)、あるいはナットの締め付け作業が、ドラム内側からの作業となり(つまりドラム外側方向からボルトを操作する作業は一切なく)、作業性向上に寄与する。
また本発明では、回転ドラム型処理機のリフタ板を、ネジ先端に捻じ込み操作部が形成されたボルトを適用して固定し、また固定時にはボルトのドラム内側への突出寸法(せり出し寸法)をほぼ0に設定した状態で固定できるため、固定作業が円滑に且つ能率的に行える。すなわち、回転ドラムの内側に張設されるリフタ板は、全体で円筒状を成すように個々のリフタ板が配置・湾曲状に固定され、且つ被処理物に混合・撹拌作用等を与えるべく、個々のリフタ板がドラム内側に突出した状態に形成され、また互いに羽重ね状態に固定され得るものであり、しかも一枚のリフタ板を固定する複数のボルトは、突出方向が不均一となるため、従来はリフタ板の固定作業に多大な手間や時間を要していた。しかしながら、本発明では、ネジ先端に捻じ込み操作部が形成されたボルトを適用し、しかも固定時にはボルトのドラム内側への突出寸法をほぼ0にできるため、固定作業が極めて能率良く行えるものである。また、従来は、リフタ板に開口されるボルト取付孔を長孔状に形成しておき、ボルトのネジ先端がドラム内側に突出していても取り付け得るようにしていたが、本発明では、このボルト取付孔をボルトの軸部が貫通できる程度のキリ孔(軸部とほぼ同じ径寸法)に形成することができる。
また本発明では、回転ドラムの回転に伴い、リフタ板を固定するボルトもネジ先端が天地反転するが、フレーム部材のボルト取付孔にサポート用のメネジ部が設けられるため、万が一、ナットがボルトから外れ落ちてしまった状態で、ネジ先端が上方を向いた状態(ボルト頭部が下方を向いた状態)になっても、ボルトがフレーム部材から抜け落ちてしまうことがないものである。
【0024】
また請求項記載の発明によれば、例えば回転ドラム型処理機の経年使用に伴い傷んだリフタ板を交換する際、ネジ先端に捻じ込み操作部が形成されたボルトを用い、また交換時にはボルトのドラム内側への突出寸法をほぼ0にした状態で行うため、傷んだリフタ板一枚を交換するだけの場合でも、容易に交換作業を行うことができる。すなわち、リフタ板は前後周辺のものが重なり合って張設されているため、従来は、傷んだ一枚だけを取り外す(交換する)ことができず、傷んだリフタ板の前後周辺のリフタ板を固定しているボルトも緩める必要があった。特に、板厚が厚いリフタ板の場合には、リフタ板を取り外す際に、作業者が強制的にリフタ板を弾性変形させる(撓める)ことも困難であった。しかしながら本発明では、このような交換作業を行う際、ボルトのドラム内側への突出量をほぼ0にした状態で行うため、厚い板厚のリフタ板であっても撓めることなく、スライドさせるだけで傷んだリフタ板を一枚だけ取り外し、取り付けること(交換)ができる。
また、本発明では、ネジ先端からボルトを回転操作できるため、既に各現場や工場等に納入された既存の回転型通気乾燥機にも、このボルト(先端捻じ込み操作ボルト)が導入でき、次回以降のメンテナンス時における交換作業において、リフタ板の取り外しが容易になり、リフタ板の交換作業が短時間で行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る回転ドラム型処理機の一例である回転型通気乾燥機を骨格的に示す説明図(a)、並びにこの回転型通気乾燥機の回転ドラムの内周面に張設されるリフタ板の固定状況を骨格的に示す斜視図(b)、並びに拡大断面図(c)、並びにリフタ板をフレーム部材に固定するボルト周辺を拡大して示す断面図(d)である。
図2】回転型通気乾燥機を示す斜視図(a)、並びに回転ドラム内に投入した被処理物に熱風が供給される様子(乾燥状況)を骨格的に示す断面図(b)、並びに回転ドラムの軸方向におけるリフタ板の重ね方を示す断面図(c)である。
図3】本発明に係るネジ組立構造に適用されるボルト(先端捻じ込み操作ボルト)の一例と、このボルトをネジ先端(捻じ込み操作部)から回転させる治具(二種)とを併せ示す斜視図(a)、並びに捻じ込み操作部の他の実施例を三種示す斜視図(b)、並びにボルトをドラム内側から退去させる場合に回し過ぎてボルトを落下させてしまう様子と、これを回避するようにした治具を示す断面図(c)である。
図4】回転ドラムの内側からリフタ板を張設する工程を段階的に示す説明図である。
図5】捻じ込み操作部に被処理材を溜めないようにしたボルト(先端捻じ込み操作ボルト)の説明図(a)、並びにこのボルトを回転させる治具を示す斜視図(b)である。
図6】フレーム部材のボルト受入孔にメネジ部を形成する態様を二種示す説明図である。
図7】本発明に関連する参考例であって、ネジ組立構造を適用して適宜の被覆板を下見板張り状に固定する状況を概略的に示す斜視図である。
図8】回転型通気乾燥機におけるリフタ板の従来の固定手法を二種示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法を含むものである。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。説明にあたっては、本発明に適用される締結手段1から説明する。
【0028】
締結手段1は、上記リフタ板53をフレーム部材52に止め付ける際に用いられる固定手法であり、ボルト11とナット12とを主な構成部材とし、これに適宜、座金13を具えて成るものである。
ボルト11は、一例として図1(d)・図3(a)に示すように、例えば一般的な六角ボルトの先端(ネジ先端)に、ボルト11を回転させるための捻じ込み操作部111をボルト頭部112とは別に設けて成るものである。すなわち、一般的な六角ボルトは、専らボルト頭部(例えば平面から視て六角形を成す)にスパナやレンチ等を嵌めて(当てがって)、ナットとの相対的な回転操作を図るものである(六角ボルトを積極的に回転させて締結を図る以外に、六角ボルトを回転しないようにレンチ等で保持しておき、ナットを回転させる場合等を含む)。これに対し、本発明では、ネジ先端にボルト11の相対的回転を図る捻じ込み操作部111を形成し、ネジ先端(ボルト11の先端)からボルト11を捻じ込めるようにしたものである。このため通常の六角ボルトの適用を前提とし、そのネジ先端に捻じ込み操作部111を形成した場合には、ボルト11は両端二方向からの捻じ込みアクセスが可能となる。なお、本発明に係るボルト11を「先端捻じ込み操作ボルト11」と称することがある。
【0029】
また、捻じ込み操作部111の形状としては、例えば上記図3(a)では、六角穴状に形成しているが、図3(b)に示すように、十字溝(プラス溝)、マイナス溝、四角柱状突起など種々の形状が可能である。
また、本発明に係る先端捻じ込み操作ボルト11は、捻じ込み操作部111とボルト頭部112の他、オネジが形成される軸部113を具えて成るものである。また、捻じ込み操作部111が形成される軸部113の先端をネジ先端と称している。
【0030】
なお、このような先端捻じ込み操作ボルト11をネジ先端(捻じ込み操作部111)から回転操作するにあたっては、捻じ込み操作部111の形状に応じた治具2を用いるものであり、例えば捻じ込み操作部111が十字溝として形成されている場合には、プラスのドライバーが治具2として適用できるし、捻じ込み操作部111がマイナス溝として形成されている場合には、マイナスのドライバーが治具2として適用できる。また、捻じ込み操作部111が六角穴として形成されている場合には、例えば上記図3(a)に併せ示すように、六角棒レンチを治具2として適用でき、必ずしも特殊な治具2を製作・適用する必要はない。
【0031】
もちろん、このような治具2は、先端捻じ込み操作ボルト11を回転させるための道具(工具)であるため、ボルト11をより回し易いこと(回転トルクをより確実に伝達できること)が好ましく、このような治具2としては、例えば図3(a)に併せ示すように、ボルト11の捻じ込み操作部111に嵌合する作用部21と、この作用部21を固定保持する保持部22と、作業者の把手となるグリップ部23とを具えた構成とすることが可能である。これにより作業者によるグリップ部23の回転操作を、保持部22を通して作用部21に伝達し、確実に捻じ込み操作部111(つまりボルト11)を回転させることができる。
【0032】
次に、回転ドラム型処理機の一例である回転型通気乾燥機Dについて説明する。
回転型通気乾燥機Dは、一例として図1図2に示すように、固定設置されるケーシング4の内部に回転ドラム5を設けて成り、回転ドラム5は、円筒状を成すドラム本体51と、ドラム本体51の骨格を成すフレーム部材52と、ドラム本体51の内周面を覆うようにフレーム部材52に張設されるリフタ板53とを具えて成る。
またケーシング4は、回転ドラム5に熱風Hを送る吸気ダクト41と、作用後(乾燥処理後)の熱風Hを排出する排気ダクト42とを具えて成り、熱風Hは、回転ドラム5の側面下部からドラム本体51内の被処理物Wの層を通して、上方に排気される。
またドラム本体51には、被処理物Wの投入側から製品(乾燥品)W1の排出側に向かって緩やかな下り勾配が付与されている。
【0033】
またリフタ板53は、複数のものがドラム本体51の内側からその内周面に沿って張設されるものであり、リフタ板53の表面には、ドラム内側に三角形状に張り出す突出部532が形成される(いわゆるトライアングルリフター)。また、この突出部532は、本実施例ではドラム本体51の軸方向に沿うように形成される。なお、リフタ板53には、熱風Hを通すための小さい通気孔が多数穿設される。
そして、上記構成により、ドラム本体51内に投入された被処理物Wは、回転ドラム5の回転に伴いリフタ板53により上昇・撹拌されながら(いわゆるキルンアクション)、前記勾配により投入側から排出側に移送されるものであり、この移送中に熱風Hに晒されて乾燥されるものである。
ここで図中符号43は、被処理物Wをドラム本体51内に投入する投入口であり、符号44は、このものが適宜、乾燥され、製品(乾燥品)W1となって排出される排出口である。
このように回転型通気乾燥機Dは、回転による穏やかな混合作用と熱風Hの通気により、ムラのない高品質な乾燥品W1が得られるようにした乾燥機である。
【0034】
以下、更にリフタ板53の設置態様や形状等について詳細に説明する。
リフタ板53は、前後周辺の隣り合うリフタ板53同士の端縁が羽重ね状態でフレーム部材52に張設されるものであり、ここを重ね合わせ部533とする。
なお、この重ね合わせ部533におけるリフタ板53の重なり枚数は、本実施例では、場所によって異なり、二枚重ねや四枚重ねになる部位がある(常に同じ枚数を重ね合わせることも可能)。
また、リフタ板53の重ね方について説明すると、ドラム本体51が上記のような勾配(排出口44に向かって下り勾配)を有するため、軸方向での重ね合わせ方としては、一例として図2(c)に示すように、投入側のリフタ板53が上、排出側のリフタ板53が下になるように重ね合わせる。これによりドラム本体51内に投入された被処理物Wが、例えばリフタ板53同士の継ぎ目に入ってしまうことなく、スムーズに排出口44に移送することができる。
また、ドラム本体51の回転方向におけるリフタ板53の重ね合わせ方としては、一例として図1(d)に示すように、回転方向において前方側に位置するリフタ板53が上、後方側に位置するリフタ板53が下になるように重ね合わせるものである。
【0035】
また、一枚のリフタ板53は、複数のボルト11でフレーム部材52に固定され、上記重ね合わせ部533もボルト11で固定される。
また、リフタ板53は、ドラム本体51の内周側に張設されることから、全体で円筒状を成すように、個々のリフタ板53が配置・湾曲状態に固定される。
また、このような取付状況から、リフタ板53を固定するボルト11は、その突出方向(捻じ込み方向)が不均一となり、またドラム本体51の回転に伴い、ボルト11も天地が反転するものである。
【0036】
また、リフタ板53には、ボルト11を貫通させるためのボルト取付孔531が開口されており、本発明においては、このボルト取付孔531をキリ孔で形成(開口)することが可能である。
因みに、従来のボルト取付孔531は、上述したように長孔または大口径のキリ孔に形成する必要があり、またそのため、この長孔もしくはキリ孔をカバーするために大きな座金13′が必要となっていた。この点、本願では小さな座金13で済むものである。
【0037】
次にフレーム部材52について説明する。
フレーム部材52は、上述したようにドラム本体51の骨格(骨組み)を成す部材であり、リフタ板53を固定するためのものである。フレーム部材52は、一例として図1(b)〜(d)に示すように、断面が「コ」の字状のチャンネル材522と、補強フランジ523と、リフタ取付枠525とを具えて成る。
まずチャンネル材522は、ドラム本体51の軸方向に沿って設けられる部材であり、ドラム本体51の投入口43側の端部から、排出口44側の端部にわたり直線状に設けられ、全体としてドラム本体51の軸方向の骨組みを成すように構成される。
このようなチャンネル材522は、ドラム本体51の周方向に複数等配状に設けられるものであり、これらの間にチャンネル材522の周方向間隔を一定に維持し、且つチャンネル材522と溶接等により接合される補強フランジ523が設けられ、これ(補強フランジ523)が、ドラム本体51の周方向の骨組みを形成している。また、この補強フランジ523は、適宜の間隔でドラム本体51の軸方向に設けられ、リフタ板53のドラム内側への突出部532(トライアングルリフター)に裏側から沿うように略三角形状に形成される。
【0038】
そして、リフタ板53の重ね合わせ部533は、上記チャンネル材522を利用して固定されるものである(チャンネル材522でボルト11をサポート保持する)。もちろん、リフタ板53には、上述したようにドラム内側への突出部532がドラムの軸方向にわたって存在するため(トライアングルリフター)、この部位ではチャンネル材522が存在せず、このため当該部位での固定は、補強フランジ523とリフタ板53との間にリフタ取付枠525を設け、このリフタ取付枠525を利用してリフタ板53を固定するようにしている(リフタ取付枠525でボルト11をサポート保持する)。なお、このリフタ取付枠525と補強フランジ523も溶接等により接合される。
【0039】
また、チャンネル材522やリフタ取付枠525等のフレーム部材52には、ボルト受入孔521が開口され、ここにはボルト11をサポート保持するためのメネジ部が形成される。そして、リフタ板53をフレーム部材52に固定するにあたり(実質的な組み立てにあたり)、上記ボルト受入孔521にボルト11を捻じ込むことにより、ボルト11をフレーム部材52に仮止めでき(いわゆるサポート)、組立作業中にボルト11がフレーム部材52から抜け落ちてしまうことがなく、またぐらつくこともなく、組立作業が円滑に且つ確実に行えるものである。
因みに、フレーム部材52(チャンネル材522やリフタ取付枠525等)のボルト受入孔521にサポート用のメネジ部を形成するにあたっては、例えば図6(a)に示すように、ボルト受入孔521の内周面にメネジ加工(タッピング加工)を施すようにしても構わないし、図6(b)に示すように、ボルト受入孔521自体はキリ孔状に形成しながら、このボルト受入孔521に合致する位置にナットをフレーム部材52に溶接等で接合しておいても構わないものである。
【0040】
次に、リフタ板53の具体的な取り付け方を図4に基づいて説明する。
リフタ板53をフレーム部材52に固定するには、以下のような工程を経て行う。
(1)〔ボルトの仮止め工程〕
まずフレーム部材52には、上述したようにボルト受入孔521にサポート用のメネジ部が形成されている。ここではチャンネル材522におけるボルト受入孔521の内周にメネジ加工(タッピング加工)が施されており、一例として図4(a)に示すように、リフタ板53の取り付け方向となるドラム本体51の内側にネジ先端(捻じ込み操作部111)が臨むように、ボルト11がチャンネル材522に捻じ込まれ、仮止めされる。これがリフタ板53をフレーム部材52に固定する前の状態であり、この際、ボルト11のネジ先端は、ドラム本体51の内側に飛び出さない程度に仮止めされること(捻じ込まれること)が望ましい。
【0041】
(2)〔リフタ板のセッティング工程〕
その後、一例として図4(b)に示すように、リフタ板53をフレーム部材52に被せるようにセットするものであり、この際、リフタ板53のボルト取付孔531を、チャンネル材522に仮止めしたボルト11(ネジ先端)に合致させるように、リフタ板53をセッティングする(セットした状態)。なお、このようなセッティングを行うにあたり、ドラム本体51の周方向や軸方向に、既にリフタ板53がセットされている場合には、そのセット済みのリフタ板53に端縁を重ねるようにして、または、セット済みのリフタ板53(端縁)の下に、これからセットするリフタ板53の端縁を差し込むようにして、重ね合わせ部533を調整しながら当該セッティングを行う。
【0042】
(3)〔ボルトの突出工程〕
次いで、一例として図4(c)に示すように、ドラム本体51の内側からボルト11の捻じ込み操作部111に治具2を嵌めて回し、ボルト11の捻じ込み操作部111(軸部113)をリフタ板53よりも突出させる(せり出させる)。
【0043】
(4)〔ナットの締め付け工程〕
その後、一例として図4(d)に示すように、リフタ板53よりも突出させたボルト11の軸部113にナット12を捻じ込んで締結し、リフタ板53をフレーム部材52(ここではチャンネル材522)に固定する。なお、ナット12の捻じ込みには、スパナやレンチなど適宜の工具が使用される。また、このようなナット12の締め付けに合わせて、適宜、座金13を設けるものである。なお、座金13は、適宜の厚さのものを用いることにより、ネジ先端の突出寸法を1〜1.5mmに設定することができ、これはドラム本体51内で作業者がメンテナンス作業等を行う場合に衣服を引っ掛け難くするためである。
【0044】
次に、リフタ板53の取り外し方について説明する。
リフタ板53をフレーム部材52から取り外すには、基本的に上記説明(図4)と逆の手順で行うものである。すなわち、リフタ板53をフレーム部材52から取り外すには、以下のような工程を経て行う。
〈1〉〔ナットの取り外し工程〕
まずナット12をボルト11から取り外すものであり、この際、スパナやレンチなど適宜の工具をナット12に嵌め、緩み方向に回転させて、ナット12をボルト11から取り外すものである。もちろん、この際、座金13が設けられていれば、この座金13も一緒に取り外すものである。
【0045】
〈2〉〔ボルトの後退工程〕
次いで、ドラム本体51の内側からボルト11の捻じ込み操作部111に治具2を嵌めて回し、ボルト11(軸部113)のネジ先端をドラム内側から後退(退去)させる。この際、その後に行うリフタ板53のスライドにおいて(ドラム本体51の軸方向に引っ張ってずらす工程であり、後述するリフタ板の取り外し工程)、ボルト11のネジ先端がリフタ板53に引っ掛からない程度に、ボルト11を後退させることが望ましい。具体的にはボルト11のネジ先端を、フレーム部材52(チャンネル材522)におけるリフタ板53の取り付け面とほぼ同じ高さになるようにし、ボルト11のネジ先端がリフタ板53よりも潜り込んだ状態となることが好ましい。
なお、ここでは捻じ込み操作部111が、上記図3(a)・図3(b)−(i),(ii)に示すように、ネジ先端部(先端面)よりも軸部113の内部に穴や溝状として形成されたもの(凹陥構造)について説明しており、上記図3(b)−(iii) に示すように、捻じ込み操作部111が、ネジ先端部よりも突出した突起として形成されたボルト11である場合には(凸構造)、この突起がフレーム部材52の前記取り付け面よりも突出しないように後退させることになる。もちろん、リフタ板53の取り外しに支障がない限りにおいて、捻じ込み操作部111がフレーム部材52の前記取り付け面よりも幾らか突出しても構わない。
【0046】
〈3〉〔リフタ板の取り外し工程〕
その後、リフタ板53をフレーム部材52(チャンネル材522)から剥がすように除去する。この際、本実施例では、リフタ板53の端縁が、前後周辺のリフタ板53と重ね合わせられているため、通常は、取り外し対象のリフタ板53を、軸方向にスライドさせるように引っ張って、前後周辺のリフタ板53との重ね合わせを解消しながら、リフタ板53を除去する。もちろん、リフタ板53をフレーム部材52の上方に引き上げて、取り外すことができる場合には、そのままリフタ板53を引き上げれば良い。
以上はチャンネル材522に関してのボルト11の仮止め工程からリフタ板53の取り外し工程を説明したものであるが、リフタ取付枠525に関してのボルト11の仮止め工程からリフタ板53の取り外し工程も同様の作業で進められるものである。
【0047】
なお、リフタ板53を取り外すにあたっては、上述したように、ボルト11をドラム内側から後退させる場合にも治具2を用いるものであるが、このとき一例として図3(c)−(i) に示すように、治具2によってはボルト11を緩め過ぎると(回し過ぎると)、ボルト11がフレーム部材52(チャンネル材522)から外れてしまう(抜け落ちしてしまう)ことが考えられる。
このため治具2には、一例として図3(c)−(ii)に示すように、ボルト11のネジ先端の突出量(フレーム部材52からドラム内側への突出寸法)がほぼ0になった際に、リフタ板53に当接し、治具2の回転を停止させる当たり面221を形成することが好ましい。
【0048】
また、本実施例では、例えば上記図4(d)に示したように、ドラム本体51の内側にナット12が取り付けられるため、例えばナット12がボルト11から抜け落ち、被処理物Wに混入する異物混入(コンタミ)が懸念されるが、これについては一例として図1(d)に併せ示すように、ナット12を二重にして施用するダブルナット構成、更に好ましくは本図において図示しているクサビの原理を利用した緩み止めナット(いわゆるハードロックナット(登録商標))を適用することが望ましい。
また、ドラム本体51の内側にナット12が取り付けられるため、ボルト11のネジ先端がナット11を貫通してドラム内側に突出し(飛び出し)、例えば作業者がドラム本体51内でメンテナンス作業等を行う場合に衣服を引っ掛けてしまうことが懸念される。これについては上述したように、ナット12の締め付けに合わせて適宜の厚さの座金13を設け、ネジ先端の突出寸法を1〜1.5mmになるように調整することが望ましい(この寸法であれば、作業者はボルト11に衣服を引っ掛け難くなる)。
【0049】
またボルト11の捻じ込み操作部111が、一例として図3(a)・図3(b)−(i),(ii)に示すように、穴や溝状の凹陥部として形成された場合、ここに被処理材Wが溜まることが考えられ、ここに溜まった古い被処理物Wが新たな被処理物Wを汚染・汚損してしまうことが懸念される(コンタミ)。これについては、例えばナット12を袋ナットとし、ネジ先端の捻じ込み操作部111(凹陥部)をカバーしてしまうことが望ましい。より望ましくは、ダブルナット構造の、捻じ込み操作部111側のナット12に袋ナットを採用し、更にこのダブルナット構造がクサビの原理を利用した緩み止めナットタイプである構造である。
また、捻じ込み操作部111が凹陥部として形成された場合の上記コンタミに対しては、一例として図3(b)−(iii) ・図5(a)に示すように、捻じ込み操作部111をボルト11(軸部113)の先端から突出させて形成することが望ましい。とりわけ上記図5(a)に示すように、軸部113と捻じ込み操作部111との境界部分(肩部111s)をテーパ状に形成すれば、当該部分にも被処理物Wを溜まり難くすることができ、より望ましい構造と言える。
更に、上記図5(a)に併せ示すように、捻じ込み操作部111を、平面から視て中央部がやや括れるように形成した場合には、一例として図5(b)に示すように、治具2の作用部21も捻じ込み操作部111に応じた形状となり、作用部21を捻じ込み操作部111により強固に嵌合させることができる。なお、図中符号111nが、捻じ込み操作部111に形成された括れである。
【0050】
次にリフタ板53の交換態様について説明する。
本実施例では、リフタ板53は、上述したように前後周辺のものと重なり合って固定されているため、従来は、例えば経年使用によって一個所だけ傷んだ場合、そのリフタ板53を一枚だけ交換するにも困難であったが、本発明ではこのような交換が格段に効率良く行える。すなわち、フレーム部材52に固定されていたリフタ板53を取り外すには、上述したようにボルト11をドラム本体51の内側から引っ込める(退去させる)ものであり、これによってリフタ板53をドラム本体51の軸方向にスライドさせて取り外すことができ、作業時間の短縮が達成できる。
また本発明では、リフタ板53の交換作業を行う際、ボルト11のドラム内側への出っ張り(突出)寸法をほぼ0にした状態で行えるため、リフタ板53を撓めることにより取り外す必要がなく、スライドさせるだけで交換することができる。
またボルト11をドラム内側から引っ込めた状態でリフタ板53の交換が行えることから、リフタ板53のボルト取付孔531を、一般的なキリ孔の口径で形成することができ(長孔や大口径のキリ孔にする必要がなくなり)、座金13を設ける場合であっても、通常の小型の座金13で対応できるものである。
【0051】
また、上述したネジ組立構造は、前記回転型通気乾燥機D以外にも適用可能であり、以下、この形態について説明するが、これは本発明に関連する参考例である。この場合、ネジ組立構造によってフレーム部材52に固定される板材としては、上記のようなリフタ板53ではなく、例えば表面がフラットな板材を適用することができる。ここで、このような板材を、本明細書では「被覆板」と称し、リフタ板53と同じ符号「53」を付す。
具体的には、例えば図7に示すように、フレーム部材52に被覆板53を張設して行く場合(住宅建築時等に外壁材を下見板張り(鎧張り)して行くようなイメージ)等にも上述したネジ組立構造を適用することができる。
もちろん、被覆板53は、必ずしも複数枚を重ね合わせるように張設して行く必要もなく、例えば被覆板53を一枚だけフレーム部材52に固定することもでき、このような場合にも上述したネジ組立構造が適用できる。因みに、本明細書に記載する「リフタ板の取り付け方向」とは、ドラム本体51の内側に相当する。
【符号の説明】
【0052】
1 締結手段
2 治具
D 回転型通気乾燥機(回転ドラム型処理機)

1 締結手段
11 ボルト(先端捻じ込み操作ボルト)
12 ナット
13 座金

11 ボルト(先端捻じ込み操作ボルト)
111 捻じ込み操作部
111s 肩部
111n 括れ
112 ボルト頭部
113 軸部

2 治具
21 作用部
22 保持部
221 当たり面
23 グリップ部

D 回転型通気乾燥機(回転ドラム型処理機)
4 ケーシング
5 回転ドラム

4 ケーシング
41 吸気ダクト
42 排気ダクト
43 投入口(被処理物の投入口)
44 排出口(製品の排出口)

5 回転ドラム
51 ドラム本体
52 フレーム部材
53 リフタ板(被覆板)

52 フレーム部材
521 ボルト受入孔
522 チャンネル材
523 補強フランジ
525 リフタ取付枠

53 リフタ板(被覆板)
531 ボルト取付孔
532 突出部
533 重ね合わせ部

W 被処理材
W1 製品(乾燥品)
H 熱風
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8